説明

検査装置および検査方法

【課題】レーザ計測装置を用いて複雑な形状を有する検査物の検査を行う際にも、短時間に高精度な測定を行うことが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】この外観検査装置100(検査装置)は、実装済み基板110を撮像する撮像部31と、実装済み基板110上の計測位置にレーザ光を照射して実装済み基板110からの反射光を受光することにより、実装済み基板110の形状を計測する第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34と、撮像部31による実装済み基板110の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれるレーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を判定し、レーザ計測除外領域を第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測対象から除外する演算処理部41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査装置および検査方法に関し、特に、検査物の形状をレーザ光により計測する検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査物の形状をレーザ光により計測するレーザ計測装置を備えた検査装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、BGA(Ball Grid Array)などのICチップのボール状端子(バンプという)を上方に向けて載置した状態で側方から照明光を照射する照明部と、照明光を用いて上方からバンプを撮像するカメラと、バンプの頂点部分の高さを測定するレーザ計測装置と、カメラによる撮像画像に基づいてバンプの頂点位置を算出する制御部とを備えたコプラナリティ検査装置が開示されている。このコプラナリティ検査装置では、ボール状端子(バンプ)に対して側方から照明光を照射して、上方に反射した反射光をカメラにより撮像することによって、BGAの各バンプ毎にボールの頂点部を取り囲む円環状の明部を有する画像が撮像される。制御部は、この円環状の明部の重心(中心)位置がバンプの頂点位置となることに基づいて各バンプの頂点座標を算出し、この頂点座標の高さをレーザ計測装置によって測定することによって、BGAの各バンプ毎のバンプ高さを測定するように構成されている。
【0004】
上記特許文献1のコプラナリティ検査装置に開示された技術を電子部品が基板に実装された実装済み基板などの検査物における電子部品の実装状態(半田接合部の硬化後の半田形状や接合状態)の検査に適用することが考えられる。しかしながら、上記特許文献1のコプラナリティ検査装置では、BGAのバンプが一様なボール状形状を有することに基づいてバンプの撮像画像から頂点座標を算出して、バンプ高さをレーザ計測装置によって測定するように構成されているため、硬化後の半田の形状のような複雑な半田接合部の形状の計測を行う場合には、撮像画像から頂点部の座標を算出して測定を行うことは困難である。したがって、上記特許文献1の技術を検査物における電子部品の実装状態の検査に適用するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−196625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような複雑な形状を有する半田接合部をレーザ計測装置によって検査する場合に、半田接合部の全体をレーザ計測装置によって測定する場合には、測定領域に含まれる座標の全てについてレーザ光を走査して計測を行う必要があるため、測定に時間がかかるという問題点がある。さらに、この場合、半田接合部の穴部や急傾斜部などの複雑な形状を有する部分ではレーザ計測装置によって照射したレーザの反射光を適切に受光できない場合があるため、測定精度が低下しやすいという問題点もある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、レーザ計測装置を用いて複雑な形状を有する検査物の検査を行う際にも、短時間に高精度な測定を行うことが可能な検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による検査装置は、検査物を撮像する撮像部と、検査物上の計測位置にレーザ光を照射して検査物からの反射光を受光することにより、検査物の形状を計測するレーザ計測装置と、撮像部による検査物の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれるレーザ計測装置による計測に不適な領域を判定し、レーザ計測装置による計測に不適な領域をレーザ計測装置による計測対象から除外する制御部とを備える。
【0009】
この第1の局面による検査装置では、上記のように、撮像部による検査物の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれるレーザ計測装置による計測に不適な領域を判定し、レーザ計測装置による計測に不適な領域をレーザ計測装置による計測対象から除外する制御部を設けることによって、撮像部による検査物の撮像画像に基づいて、形状が複雑な半田接合部の穴部や急傾斜部などのレーザ計測装置による計測に不適な領域を除外した上で、レーザ計測装置による計測を行うことができる。これにより、レーザ計測装置による計測対象領域として半田接合部などの複雑な形状を有する領域の全体をレーザ計測装置によって測定する場合と異なり、レーザ計測装置による計測に不適な領域を除外した分だけ実際の計測領域の面積を小さくすることができるので、実際にレーザ光を走査して計測する高さ測定ポイントが減り、短時間で計測を行うことができる。また、半田接合部の穴部や急傾斜部などのレーザ計測装置では測定できないまたは測定精度が低下するおそれのある計測に不適な領域を予め除外するので、残りの領域(測定対象領域)の一部または全部に対してレーザ計測装置による計測が行われる。この結果、計測結果に精度の低い計測値や計測エラーが混ざることがないので、レーザ計測装置を用いて電子部品の実装状態の検査を行う際にも、高精度な計測を行うことができる。
【0010】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、制御部は、除外されたレーザ計測装置による計測に不適な領域以外の領域のうち、少なくとも一部を指定して、レーザ計測装置による計測を実行するように構成されている。このように構成すれば、たとえばレーザ計測装置による計測に不適な領域を除外した上で、残りの全領域を計測することにより計測精度の向上を図ることもできるとともに、レーザ計測装置による計測に不適な領域を除外した上で、さらに半田接合部などの複雑な形状を有する部分のうち形状計測に必要な最小限の部分のみを測定することにより、実際の計測領域の面積をより小さくして計測時間のさらなる短縮化を図ることもできる。
【0011】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、レーザ計測装置による計測に不適な領域は、検査物の形状がレーザ計測装置による測定に不適な形状である領域を少なくとも含む。このように構成すれば、測定精度に影響を及ぼすおそれのある、レーザ計測装置による計測に不適な形状を撮像画像から検出することによって、レーザ計測装置による計測に不適な領域として除外することができる。
【0012】
この場合において、好ましくは、制御部は、レーザ計測装置による測定に不適な形状に関する情報を用いて、検査物の撮像画像中に含まれるレーザ計測装置による測定に不適な形状を検出するように構成されている。このように構成すれば、たとえばレーザ計測装置による測定に不適な形状に関する情報として、レーザ計測装置による測定に不適な形状を撮像した撮像画像例を用いれば、撮像部による検査物の撮像画像を撮像画像例と比較照合することによって、検査物の撮像画像中に含まれるレーザ計測装置による測定に不適な形状を容易に検出することができる。
【0013】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、制御部は、検査物の撮像画像における光の強度の差異(明暗)に基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている。撮像画像において半田接合部の穴部や急傾斜部などの領域では、周囲よりも光の強度が低く(暗く)なるとともに、高さの大きな電子部品の影に位置する(暗くなる)領域では、レーザ計測装置による計測を行う場合に高さの大きな電子部品によってレーザ光が遮られてしまい、測定できない場合もあるので、撮像画像における光の強度の差異に基づいてレーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成すれば、容易にレーザ計測装置による計測に不適な領域を判定することができる。
【0014】
この場合において、好ましくは、検査物の上方から照明光を照射可能な照明部をさらに備え、撮像部は、照明部による検査物の上方からの照明光を用いて、検査物の上方から撮像を行うように構成されている。このように上方からの照明光を用いて画像を撮像するように構成すれば、穴部や急傾斜部などのレーザ計測装置による計測に不適な領域の光の強度を低く(暗く)するとともに、レーザ計測装置による計測に適した平坦部の光の強度を高く(明るく)することができる。これにより、レーザ計測装置による計測に適した領域と、不適な領域との光の強度差を大きくすることができるので、より容易に、撮像画像における光の強度の差異に基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を容易に判定することができる。
【0015】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、検査物は、電子部品が基板上に実装された実装済み基板であり、制御部は、検査物のうち少なくとも基板上の電子部品の半田接合部について、撮像部による検査物の撮像画像に基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている。このように構成すれば、実装済み基板(検査物)における電子部品の実装状態(半田接合部の硬化後の半田形状や接合状態)の検査を行う場合に、測定精度に影響を及ぼす気泡などによる穴部や急傾斜部およびクラックなどが発生しやすい電子部品の半田接合部について、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定して除外することができるので、測定精度を高めながら測定時間を短縮することができる。
【0016】
この場合において、好ましくは、レーザ計測装置による計測に不適な領域は、検査物の形状がレーザ計測装置による測定に不適な形状である領域を少なくとも含み、レーザ計測装置による計測に不適な形状は、半田接合部に形成された穴部または急傾斜部のうち少なくとも1つを含む。このように構成すれば、特にレーザ計測装置による計測に不適な穴部または急傾斜部のうち少なくとも1つの形状を有する領域を除外することができる。
【0017】
上記電子部品が基板上に実装された実装済み基板が検査物である場合において、好ましくは、制御部は、さらに、基板上に実装された電子部品の形状に関する情報に基づいて、レーザ計測装置から検査物へのレーザ光の入射経路または検査物からの反射光の反射経路が電子部品により遮られる可能性のある領域を、レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている。このように構成すれば、レーザ計測装置による計測を行う場合に高さの大きな電子部品によって遮られてしまうことに起因して測定ができない場合などに、基板上に実装された電子部品の形状に関する情報に基づいて、高さの大きな電子部品の近傍の領域などのレーザ計測装置による計測に不適な領域を容易に判定することができる。
【0018】
上記電子部品が基板上に実装された実装済み基板が検査物である場合において、好ましくは、制御部は、撮像部による検査物の撮像画像に基づき、基板上に実装された電子部品の実装位置と、予め設定されている電子部品の設計実装位置との実装位置ずれを算出し、算出された電子部品の実装位置ずれにも基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている。このように構成すれば、基板上に実装された電子部品の実装位置がずれることによって、レーザ計測装置による計測を行う場合に電子部品によりレーザ光が遮られてしまうことに起因して、レーザ計測装置による計測を行うことができない領域についても、レーザ計測装置による計測領域から除外することができる。
【0019】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、レーザ計測装置は、検査物にレーザ光を出射する発光部と、検査物から反射された反射光を受光する受光部とを含み、制御部は、レーザ計測装置の発光部から受光部に向かう方向に基づいて、発光部から検査物へのレーザ光の入射経路または検査物から受光部への反射光の反射経路が遮られる可能性のある領域を、レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている。このように構成すれば、レーザ計測装置の発光部から受光部に向かう方向を考慮して、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定することができる。すなわち、発光部から受光部に向かう方向が、電子部品が有する段差の延びる方向と直交する方向である場合には、検査物からの反射光が段差によって遮られ易くなる一方、発光部から受光部に向かう方向が、段差の延びる方向と平行な方向である場合には、検査物からの反射光が段差によって遮られることはない。このように、発光部から受光部に向かう方向によってレーザ計測装置による計測に不適な領域が生じる場合に、この検査物の撮像画像に加えて発光部から受光部に向かう方向に基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を予め除外することができる。
【0020】
上記第1の局面による検査装置において、好ましくは、レーザ計測装置は、検査物から反射された反射光のうち、正反射成分を受光する正反射型計測装置と、拡散反射成分を受光する拡散反射型計測装置とを含み、制御部は、計測を行うレーザ計測装置が正反射型計測装置であるかまたは拡散反射型計測装置であるかのレーザ計測装置の種類に基づいて、発光部から検査物へのレーザ光の入射経路または検査物から受光部への反射光の反射経路が遮られる可能性のある領域を、レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている。このように構成すれば、正反射型計測装置と、拡散反射型計測装置とによって、レーザ光の入射経路および反射経路が異なる(入射光と反射光とのなす角が異なる)ため、レーザ計測装置の種類を考慮して、レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定することができる。一般的に、拡散反射成分を受光する場合よりも正反射成分を受光する場合の方が入射光と反射光とのなす角が大きくなるため、周囲の障害物にレーザ光が遮られる可能性が高い(測定に不適な領域が広い)。このように、レーザ計測装置の種類によってレーザ計測装置による計測に不適な領域に差異が生じる場合に、この検査物の撮像画像に加えてレーザ計測装置の種類に基づいて、レーザ計測装置による計測に不適な領域を予め判定して除外することができる。
【0021】
この発明の第2の局面による検査方法は、検査物を撮像するステップと、撮像された検査物の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれるレーザ光による計測に不適な領域を判定し、レーザ光による計測に不適な領域をレーザ光による計測対象から除外するステップと、検査物上の計測位置にレーザ光を照射して検査物からの反射光を受光することにより、検査物の形状を計測するステップとを備える。
【0022】
この第2の局面による検査方法では、上記のように、撮像された検査物の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれるレーザ光による計測に不適な領域を判定し、レーザ光による計測に不適な領域をレーザ光による計測対象から除外することによって、撮像された検査物の撮像画像に基づいて、形状が複雑な半田接合部の穴部や急傾斜部などのレーザ光による計測に不適な領域を除外した上で、レーザ光による計測を行うことができる。これにより、計測対象領域として半田接合部などの複雑な形状を有する領域の全体をレーザ光によって測定する場合と異なり、レーザ光による計測に不適な領域を除外した分だけ実際の計測領域の面積を小さくすることができるので、短時間に計測を行うことができる。また、半田接合部の穴部や急傾斜部などのレーザ光では測定できないまたは測定精度が低下する場合が生じるおそれのある計測に不適な領域を予め除外するので、残りの領域(測定対象領域)の一部または全部に対してレーザ光による計測が行われる。この結果、計測結果に精度の低い計測値や計測エラーが混ざることがないので、レーザ光を用いて電子部品の実装状態の検査を行う際にも、高精度な計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による外観検査装置を示す模式図である。
【図2】図1に示した一実施形態による外観検査装置による検査対象の実装済み基板を示す斜視図である。
【図3】図2に示した実装済み基板の半田接合部の状態を説明するための図である。
【図4】図1に示した一実施形態による外観検査装置の制御的な構造を説明するためのブロック図である。
【図5】図1に示した一実施形態による外観検査装置の撮像部および照明部を説明するための図である。
【図6】図1に示した一実施形態による外観検査装置の第1レーザ計測部を説明するための図である。
【図7】図1に示した一実施形態による外観検査装置の第2レーザ計測部を説明するための図である。
【図8】図1に示した一実施形態による外観検査装置のレーザ計測に不適な領域を説明するための図である。
【図9】図1に示した一実施形態による外観検査装置のレーザ計測に不適な形状を説明するための図である。
【図10】図1に示した一実施形態による外観検査装置のレーザ計測に不適な形状を説明するための図である。
【図11】図1に示した一実施形態による外観検査装置の第2レーザ計測部の向きによるレーザ計測に不適な領域の差異を説明するための図である。
【図12】図1に示した一実施形態による外観検査装置の第2レーザ計測部の向きによるレーザ計測に不適な領域の差異を説明するための図である。
【図13】図1に示した一実施形態による外観検査装置の実装済み基板の検査動作を説明するためのフロー図である。
【図14】図13に示したレーザ計測除外領域の算出処理を説明するためのフロー図である。
【図15】本発明の一実施形態による外観検査装置のレーザ計測除外領域の算出処理を説明するための図である。
【図16】本発明の一実施形態による外観検査装置のレーザ計測除外領域の算出処理を説明するための図である。
【図17】本発明の一実施形態による外観検査装置のレーザ計測対象領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1〜図12を参照して、本発明の一実施形態による外観検査装置100の構造について説明する。なお、本実施形態では、「検査装置」の一例である外観検査装置100に本発明を適用した場合について説明する。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施形態による外観検査装置100は、部品120がプリント基板130に実装された検査物(実装済み基板110)に対して、部品120の実装状態を検査するための装置である。実装済み基板110には、配線パターン(図示せず)が形成されたプリント基板130上の所定位置に集積回路などの電子部品(部品120)が多数配置されている。これらの部品120は、プリント基板130上に所定のパターンで塗布(印刷)されたペースト状の半田140(図3参照)上に部品120の端子部121が配置されるように搭載(実装)される。その後、半田140(図3参照)の溶融および硬化(冷却)工程を経て部品120の端子部121がプリント基板130の配線に対して半田接合されることによって、部品120がプリント基板130の所定の配線に対して電気的に接続された状態でプリント基板130上に固定されるように構成されている。外観検査装置100は、部品120の実装状態として、部品120の実装位置および向きが適正か否か、部品120の設計位置に対する位置ずれの量が許容範囲内か、端子部121の半田接合部が正常か否かなどの検査を行うように構成されている。なお、実装済み基板110は、本発明の「検査物」の一例である。また、部品120およびプリント基板130は、それぞれ、本発明の「電子部品」および「基板」の一例である。
【0027】
また、図3に示すように、実装済み基板110において、端子部121の半田接合部は、部品120の実装位置精度や半田140の印刷(塗布)精度などの種々の要因によって、大別してA〜Hの状態を呈する。具体的には、状態Aは、半田量がやや少ないものの適正な半田形状を有する状態(良品)の例である。状態Bは、半田量および半田形状がいずれも適正で理想的な状態(良品)の例である。状態Cは、半田量が少なく、良否の境目となる例である。状態Dは、端子部121が半田接合されていない未半田の状態(不良)の例である。また、状態Eは、半田が塗布されているものの、半田位置(または部品120の位置)のずれに起因して未半田となっている状態(不良)の例である。状態Fおよび状態Gは、それぞれ端子部121(リード)がプリント基板130に対して浮いている状態(不良)の例である。また、状態Hは、半田量が過剰な状態の例であり、良否の境目となる例である。上記の状態Cおよび状態Hの例は、半田の不足(過剰)の程度や、実装済み基板110の用途などによって、良否の判定が分かれることになる。外観検査装置100は、半田接合部について、上記の状態A〜Hを判別して半田接合部の良否を判定するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、外観検査装置100は、実装済み基板110を搬送するための基板搬送コンベア10と、基板搬送コンベア10の上方をXY方向(水平方向)に移動可能なXYロボット20と、XYロボット20によって保持された検査ユニット30と制御装置40(図4参照)とを備えている。以下、外観検査装置100の具体的な構造を説明する。
【0029】
基板搬送コンベア10は、実装済み基板110をX方向に搬送するとともに、所定の検査位置で実装済み基板110を停止させて保持することが可能なように構成されている。また、基板搬送コンベア10は、検査が終了した実装済み基板110を所定の検査位置からX方向に搬送して、外観検査装置100から実装済み基板110を搬出することが可能なように構成されている。
【0030】
また、XYロボット20は、基板搬送コンベア10の上方(矢印Z1方向)に設けられ、たとえばボールネジ軸とサーボモータとを用いた直交2軸ロボットにより構成されている。すなわち、XYロボット20は、X方向に延びる検査ユニット支持部21のX方向の両端を、それぞれY方向に延びる一対のレール部(図示せず)によってY方向に移動可能に支持する構成を有する。具体的には、レール部に設けられたボールネジ軸(Y軸)(図示せず)をY軸モータ22(図4参照)により駆動することよって、ボールネジ軸(Y軸)に螺合するボールナット(図示せず)を有する検査ユニット支持部21をY方向に移動させるように構成されている。また、検査ユニット支持部21には、ボールネジ軸(X軸)(図示せず)およびX軸モータ23(図4参照)が設けられている。そして、ボールネジ軸(X軸)(図示せず)をX軸モータ23により駆動することによって、ボールネジ軸(X軸)に螺合するボールナット(図示せず)を有する検査ユニット30がX方向に移動可能となるように構成されている。このような構成により、XYロボット20は、検査ユニット支持部21に保持された検査ユニット30を、基板搬送コンベア10(実装済み基板110)の上方(矢印Z1方向)でXY方向(水平方向)に移動させることが可能なように構成されている。
【0031】
また、検査ユニット30は、撮像部31と、照明部32と、第1レーザ計測部33と、第2レーザ計測部34(図4参照)とを備えている。この検査ユニット30がXYロボット20によって実装済み基板110の上方の所定位置に移動されるとともに、撮像部31や第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34などを用いることによって、検査ユニット30が実装済み基板110上の部品120の実装状態の検査のための撮像や計測を行うように構成されている。なお、第1レーザ計測部33は、本発明の「レーザ計測装置」および「正反射型計測装置」の一例である。また、第2レーザ計測部34は、本発明の「レーザ計測装置」および「拡散反射型計測装置」の一例である。
【0032】
撮像部31は、レンズ31aが設けられたCCDカメラなどから構成されている。撮像部31は、実装済み基板110(基板搬送コンベア10)に対して上方(矢印Z1方向)に設けられるとともに、撮像方向が実装済み基板110に対して略垂直となるように、下方(矢印Z2方向)を向けて設けられている。これにより、撮像部31は、照明部32から実装済み基板110に対して照射された照明光を用いて、実装済み基板110の上面の2次元(平面)画像を直上の位置から撮像するように構成されている。この撮像部31による撮影で、後述する白色LEDによる照明光の下では赤色R、緑色G、青色Bに対応したRGBの各画像が得られ、赤外線照明光の下では赤外画像が得られる。
【0033】
また、図5に示すように、照明部32は、頂部に開口部321が形成されたドーム状形状を有し、ドームの内面側に設けられた複数の照明を有している。開口部321の上方(矢印Z1方向)には撮像部31が配置され、撮像部31がこの開口部321を介して実装済み基板110の撮像を行うように構成されている。照明部32の内面側には、開口部321の設けられた頂点側(矢印Z1方向側)から順に、上段照明322と、中段照明323と、下段照明324とが、それぞれ複数設けられている。具体的には、上段照明322は、照明部32において最も上方(矢印Z1方向)の位置に、開口部321の外周を取り囲むように複数設けられている。中段照明323は、上段照明322よりも下方(矢印Z2方向)の位置であって、下段照明324よりも上方(矢印Z1方向)の位置で、上段照明322を取り囲むように複数設けられている。そして、下段照明324が、中段照明323よりも下方(矢印Z2方向)の位置で、中段照明323を取り囲むように複数設けられている。
【0034】
なお、照明部32がドーム状形状を有するため、図5に示すように、上段照明322から下方(矢印Z2方向)に向かうにしたがって照明の位置が撮像部31(開口部321)から離間する。このため、上段照明322は、撮像対象(実装済み基板110上の所定領域)に対して略直上(矢印Z1方向)の位置から照明光を照射するように構成されている。したがって、上段照明322の照射方向と撮像部31の撮像方向とが略同一方向となるように構成されている。また、中段照明323は、斜め方向(約45度)から撮像対象に対して照明光を照射するように構成されている。そして、下段照明324は、撮像対象に対して約30度の照射角度で照明光を照射するように構成されている。これにより、撮像部31は、同一の撮像対象に対して、異なる高さ(角度)から照射された照明光を用いて撮像を行うことが可能なように構成されている。なお、図5では省略しているが、上段照明322と略同じ高さ位置に赤外LEDによる赤外線照明325(図4参照)も複数設けられている。これらの上段照明322および赤外線照明325と、中段照明323と、下段照明324とは、それぞれ白色LEDなどから構成されている。
【0035】
また、図6に示すように、第1レーザ計測部33は、半導体レーザなどの発光素子を有する発光部33aと、光位置検出素子を有する受光部33bとを含んでいる。第1レーザ計測部33は、実装済み基板110上の計測位置に対して発光部33aからレーザ光を照射するとともに、計測位置で反射された反射光のうちの正反射成分を受光部33bにより受光するように構成されている。このとき、受光部33bにより受光された反射光は、光位置検出素子上でスポット(焦点)を結び、このスポット位置が検出される。検出されたスポット位置から三角測量の原理に基づいて、第1レーザ計測部33から計測位置までの距離d1を算出することができる。これにより、第1レーザ計測部33と実装済み基板110との既知の位置関係に基づいて、実装済み基板110の計測位置における高さH1を計測することが可能なように構成されている。なお、第1レーザ計測部33では、発光部33aから照射されたレーザの入射経路と受光部33bにより受光される反射光の反射経路とのなす角が角度αとなる。
【0036】
図7に示すように、第2レーザ計測部34は、半導体レーザなどの発光素子を有する発光部34aと、光位置検出素子を有する受光部34bとを含んでいる。第2レーザ計測部34は、実装済み基板110上の計測位置に対して発光部34aから略垂直(矢印Z2方向)にレーザ光を照射するとともに、計測位置で反射された反射光のうちの拡散反射成分を受光部34bにより受光するように構成されている。このため、第2レーザ計測部34では、発光部34aから照射されたレーザの入射経路と受光部34bにより受光される反射光の反射経路とのなす角が角度βとなる。なお、第2レーザ計測部34による高さ計測方法は、第1レーザ計測部33と同様である。これらのレーザ計測部は、実装済み基板110上の測定部分の表面状態(光沢の少ないものか、鏡面体あるいは鏡面に近いものであるか)や、必要な測定範囲や測定精度などを勘案しながら適宜選択される。
【0037】
また、図4に示すように、外観検査装置100には、上記の検査ユニット30に加えてX線撮像装置35およびX線照明35aが設けられている。X線撮像装置35およびX線照明35aは、実装済み基板110を上下方向(Z方向)に挟むように配置され、互いに対向するように設けられている。そして、X線照明35aから照射され、実装済み基板110を透過したX線をX線撮像装置35により検出することによって、実装済み基板110のX線像を撮像するように構成されている。このX線像によって、たとえば部品120の端子部121の下面側にある半田の状態を取得することが可能である。
【0038】
図4に示すように、外観検査装置100は、制御装置40によって制御されるように構成されている。制御装置40は、演算処理部41と、記憶部42と、モータ制御部43と、外部入出力部44と、画像処理部45と、計測処理部46と、照明制御部47とを含んでいる。また、制御装置40には、表示ユニット50および図示しない入力機器(タッチパネルやキーボードなど)が接続され、ユーザからの操作入力を受け付けるように構成されている。なお、演算処理部41は、本発明の「制御部」の一例である。
【0039】
演算処理部41は、論理演算を実行するCPU、CPUを制御するプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)および装置の動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などから構成されている。演算処理部41は、ROMに記憶されているプログラムに従って、モータ制御部43、画像処理部45、計測処理部46および照明制御部47を介して、外観検査装置100の各部を制御するように構成されている。そして、演算処理部41は、撮像部31や第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34などを用いて、部品120の実装状態の検査を行い、部品120の端子部121の半田接合部について、図3の状態A〜Hに示した各状態を判別して半田接合部の良否判定などを行うように構成されている。
【0040】
また、本実施形態では、演算処理部41は、撮像部31による実装済み基板110の撮像画像に基づいて、撮像画像中に含まれる第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を判定するように構成されている。そして、演算処理部41は、このレーザ計測除外領域を第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測対象(領域)から除外するように構成されている。なお、「レーザ計測除外領域」は、本発明の「レーザ計測装置による計測に不適な領域」の一例である。
【0041】
ここで、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)について説明する。ここでは、第2レーザ計測部34による計測を例として説明する。図7に示したように、レーザ計測は、発光部34aから照射されたレーザ光が計測位置で反射され、反射光(拡散反射光)が受光部34bによって受光されることにより行われる。このため、レーザ光の入射経路または反射経路上に遮蔽物が存在する場合には、計測不能となるか、または計測精度が低下する。具体的には、図8に示すように、実装された部品などの遮蔽物F1によってレーザ光が遮られる場合や、図9に示すように、半田接合部の半田140に形成された穴部(凹部)F2によってレーザ光が遮られる場合などが該当する。これらの遮蔽物F1および穴部(凹部)F2を計測する場合には、いずれも所定角度(角度β)で反射するレーザ光が途中で遮られてしまったり、遮蔽物F1および穴部F2で反射された不要な乱反射光などにより、測定不能や計測精度が低下するおそれがある。なお、穴部(凹部)F2は、本発明の「レーザ計測装置による測定に不適な形状」の一例である。
【0042】
ただし、遮蔽物F1の場合、計測位置から遮蔽物F1までの距離d3が等しい場合であっても、図11および図12に示すように、第2レーザ計測部34の向き(発光部34aから受光部34bに向かう方向)によっては、計測可能な場合と計測不可能な(または計測精度が低下する)場合とが存在する。つまり、図12に示すように、遮蔽物F1の近傍領域において、発光部34aから受光部34bに向かう方向Aに沿う方向に延びる辺E1およびE2側では、レーザ光が遮られることなく計測を行うことが可能である。一方、図11に示すように、発光部34aから受光部34bに向かう方向Aと直交する方向に延びる辺E3側では、レーザ光が遮蔽物F1に遮られることによって計測不能となるか、または計測精度が低下する。このとき、辺E3近傍で計測不能となる(計測精度が低下する)領域の範囲は、遮蔽物F1(部品120など)の高さ、および、レーザ光の入射経路と反射経路とのなす角(角度βまたは角度α)によって異なる。なお、拡散反射型の第2レーザ計測部34の場合には、辺E4側には入射経路上および反射経路上に遮蔽物が存在しないので計測可能となるが、正反射型の第1レーザ計測部33の場合には、辺E3側および辺E4側の両方に計測不可能な領域が存在する。
【0043】
また、図10に示すように、計測位置が半田接合部(半田140)に形成された急傾斜部F3などの場合には、計測位置が不明確となって計測精度が低下する。また、急傾斜部F3の傾斜角度が入射経路と略平行となる場合には、計測不能となる。なお、この急傾斜部F3においても、第2レーザ計測部34の向きが斜面の傾き方向と直交する場合(第2レーザ計測部34の向きが図10の奥行き方向に向く場合)には、レーザ計測可能となる場合がある。本実施形態では、演算処理部41は、レーザ計測部(第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34)の向きなども考慮して、実装済み基板上110上において上記の遮蔽物F1近傍の領域、穴部(凹部)F2が存在する領域、および、急傾斜部F3が存在する領域などを判別して、レーザ計測除外領域としてレーザ計測対象(領域)から除外する。なお、急傾斜部F3は、本発明の「レーザ計測装置による測定に不適な形状」の一例である。
【0044】
記憶部42は、各種データの記憶および演算処理部41による読み出しが可能な不揮発性の記憶装置からなる。記憶部42には、撮像部31によって撮像された撮像画像データ、実装済み基板110に実装される部品120の設計上の位置情報(位置および向きなどの)を定めた基板データ、実装済み基板110に実装される部品120の形状を定めた部品形状データベース、レーザ計測除外領域を算出するための穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例などが記憶されている。演算処理部41は、撮像部31によって撮像された撮像画像データと、穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例とを照合することによって、撮像画像に含まれるレーザ計測除外領域(穴部(凹部)F2および急傾斜部F3)を判別するように構成されている。また、演算処理部41は、基板データおよび部品形状データベースとを用いて撮像画像データから画像認識を行うことにより、実装済み基板110に実装された部品120を認識して、その部品120の形状、高さ、位置および向きなどを取得する。そして、演算処理部41は、取得した部品120の形状、高さ、実装位置および向きなどのデータと、既知の第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34の向きおよび入射経路と反射経路とに基づいて、遮蔽物F1近傍のレーザ計測除外領域を算出するように構成されている。なお、「穴部(凹部)形状撮像例」および「急傾斜部形状撮像例」は、それぞれ、本発明の「レーザ計測装置による測定に不適な形状に関する情報」の一例である。また、「部品形状データベース」は、本発明の「基板上に実装された電子部品の形状に関する情報」の一例である。
【0045】
モータ制御部43は、演算処理部41から出力される制御信号に基づいて、外観検査装置100の各サーボモータ(XYロボット20をY方向に移動するためのY軸モータ22、XYロボット20をX方向に移動するためのX軸モータ23、基板搬送コンベア10を駆動するためのモータ(図示せず)などの駆動を制御するように構成されている。また、モータ制御部43は、各サーボモータのエンコーダ(図示せず)からの信号に基づいて、検査ユニット30(撮像部31の撮像位置や、第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34の各計測位置)および実装済み基板110などの位置を取得するように構成されている。
【0046】
外部入出力部44は、有線または無線LANなどのネットワークを構築するためのインターフェースなどからなる。外部入出力部44は、実装済み基板110の製造ライン上の他の装置(図示せず)および製造ライン全体の制御を行うホストコンピュータ(図示せず)などとネットワーク接続し、情報通信を行う機能を有する。
【0047】
画像処理部45は、演算処理部41から出力される制御信号に基づいて、撮像部31およびX線撮像装置35から所定のタイミングで撮像信号の読み出しを行うとともに、読み出した撮像信号に所定の画像処理を行うことにより、実装済み基板110の部品120や半田接合部(半田140)を認識(画像認識)するのに適した画像データを生成するように構成されている。
【0048】
計測処理部46は、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34によって検出されたスポット位置から、第1レーザ計測部33から計測位置までの距離d1または第2レーザ計測部34から計測位置までの距離d2を算出し、実装済み基板110上の計測位置における高さH1を取得するように構成されている。
【0049】
照明制御部47は、演算処理部41から出力される制御信号に基づいて、照明部32の上段照明322、赤外線照明325、中段照明323および下段照明324や、X線照明35aの各々を、所定のタイミングで点灯させるように構成されている。
【0050】
次に、図2、図3、図5および図13〜図17を参照して、本発明の一実施形態の外観検査装置100による実装済み基板110の検査動作について説明する。なお、以下に示す検査動作においては、制御装置40の演算処理部41が外観検査装置100の各部を制御することにより行われる。また、以下では、主として第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34によるレーザ計測(高さ計測)およびレーザ計測除外領域の算出処理について説明する。
【0051】
まず、図13に示すように、ステップS1において、実装済み基板110が基板搬送コンベア10によって所定の検査位置まで搬送され、固定される。次に、ステップS2において、演算処理部41により、XYロボット20が駆動され、撮像部31が実装済み基板110上の所定のフィデューシャルマーク(基準マーク)位置の上方に移動される。そして、所定位置に形成された図示しないフィデューシャルマークが撮像部31によって撮像される。ステップS3では、フィデューシャルマーク(基準マーク)の撮像画像データが演算処理部41により画像認識されることによって、実装済み基板110の位置補正が行われる。これにより、外観検査装置100の位置座標と実装済み基板110(基板データ)上の位置とが対応付けられ、検査処理を行う準備が完了する。以下、ステップS4〜ステップS9において、撮像部31による実装済み基板110の撮像画像を用いた実装状態の検査処理が行われる。
【0052】
ステップS4では、演算処理部41によって、撮像部31による撮像が行われていない領域(未撮像領域)が実装済み基板110上に存在するか否かが判断される。すなわち、撮像部31の撮像範囲(視野)は一定範囲に限られているので、実装済み基板110の撮像は所定領域毎に分割して複数回に分けて行われる。そこで、ステップS4で未撮像領域が存在するか否かが判断され、未撮像領域が存在する場合には、ステップS5に進む。一方、実装済み基板110上の全領域が撮像された場合(未撮像領域が存在しない場合)には、ステップS10に移行する。
【0053】
未撮像領域が存在する場合には、ステップS5において、演算処理部41により、記憶部42に格納された基板データに基づいてXYロボット20が駆動され、撮像部31が次の撮像領域を撮像するための所定の撮像位置に移動される。
【0054】
そして、ステップS6において、撮像部31によって実装済み基板110上の所定領域(検査領域)が撮像される。撮像部31による撮像は、照明部32の上段照明322、赤外線照明325、中段照明323および下段照明324のそれぞれを用いて、同一撮像領域について合計4回行われる。撮像画像は画像処理部45によって認識(画像認識)するのに適した画像データとなるように処理され、演算処理部41に出力される。
【0055】
次に、ステップS7において、演算処理部41が画像データの画像認識を行うことによって、撮像画像データ(撮像領域)内に写った部品120や半田接合部などの検査対象となる部位(検査部位)が認識される。そして、検査部位毎に、記憶部42に格納された基板データに基づいて、部品120の実装位置ずれ(実装位置の設計位置からの位置ずれ)や向き、および端子部121の曲がりや立ち上がりの有無などが検出される。また、半田接合部の位置や形状が検出される。画像認識が完了すると、撮像画像データは記憶部42に格納される。
【0056】
そして、ステップS8において、撮像領域内の検査部位について、検出された部品120の位置ずれおよび向きや、半田接合部の位置および形状などに基づいて、検査判定(良否の判定)が行われる。半田接合部については、画像認識によって、図3の状態D、状態E、状態Fおよび状態Gに示した不良状態(未半田や半田位置ずれ、リード浮きなどの不良状態)が判別される。一方、図3の状態A、状態B、状態Cおよび状態Hに示した各状態は、実装済み基板110に対して略垂直上方(矢印Z1方向)から撮像した撮像画像データから判別することは困難である。このため、状態A、状態B、状態Cおよび状態Hに示した各状態に相当する検査部位(半田接合部)については、良品と判定されて後述するステップS10以降のレーザ計測の対象となる。したがって、この画像検査判定によって、検査部位の良否についての1次判定が行われるとともに、良品と判定された部品120の位置情報(位置、向きおよび位置ずれ量など)および半田接合部の位置情報などが、後続するレーザ計測のために画像処理結果として生成される。
【0057】
その後、ステップS9において、演算処理部41により、撮像領域(撮像画像データ)内の検査部位について、未検査部位が存在するか否かが判定される。撮像領域(撮像画像データ)内に検査が終了していない検査部位が残っている場合には、ステップS7に戻り、その検査部位について画像認識および検査判定が行われる。撮像領域(撮像画像データ)内の全ての検査部位について検査が終了した場合(未検査部位が存在しない場合)には、ステップS4に移行して、再び未撮像領域が存在するか否かが判定される。このようにステップS4〜ステップS9までが繰り返されることによって、実装済み基板110上の撮像領域毎に撮像が行われ、撮像領域内の検査部位毎に撮像画像データに基づく検査が行われる。この結果、ステップS4で未撮像領域なしと判定された場合(ステップS10に進む場合)には、実装済み基板110の全体において、レーザ計測の対象となる部品120のおよびその部品120の半田接合部の位置情報が画像処理結果(ステップS8参照)として特定される。以降のステップS10〜S15において、画像検査により良品と判定された各検査部位に対して、レーザ計測が行われる。
【0058】
そこで、ステップS10では、演算処理部41によって、レーザ計測対象の部品120(半田接合部)が存在するか否かが判定される。レーザ計測対象の部品120(半田接合部)が存在する場合には、ステップS11に進む。
【0059】
ステップS11では、レーザ計測対象の部品120の内から1つの部品120に着目して、レーザ計測が行われていない検査部位(未レーザ計測部位)が存在するか否かが判定される。すなわち、図2に示すように、部品120に端子部121が多数存在する場合には、それぞれの端子部121の半田接合部(検査部位)に対してレーザ計測が行われる。未レーザ計測部位が存在する場合には、ステップS12に進み、レーザ計測部位(未レーザ計測部位)の内からさらに1つのレーザ計測部位に着目して、そのレーザ計測部位におけるレーザ計測除外領域の算出が行われる。ここで、図14を参照して、レーザ計測除外領域の算出処理(サブルーチン)について詳細に説明する。
【0060】
図14に示すように、まず、ステップS21において、演算処理部41により、レーザ計測部位の位置情報が取得される。具体的には、着目している検査部位(レーザ計測部位)についての画像検査判定(ステップS8参照)によって生成された画像処理結果の情報と、図示しないエンコーダから取得したモータ位置情報(撮像部31の位置情報)と、着目しているレーザ計測部位(検査部位)を撮像した撮像画像データとに基づいて、レーザ計測を行うための正確な位置情報が算出される。このとき、たとえば図15に示すように、基板データにおける部品120の位置(部品120の設計位置、破線参照)ではレーザ計測が可能である位置であっても、部品120に実装位置ずれが生じている場合には計測できない場合が発生する。このため、算出された部品120の実装位置ずれ(または、半田の塗布位置のずれ)を含む正確な位置情報に基づいて、レーザ計測除外領域の算出が行われる。
【0061】
次に、ステップS22において、演算処理部41により、着目しているレーザ計測部位(検査部位)についての明暗(光の強度値の差異)が判定される。この際、明暗の判定には、上段照明322を用いて撮像したRGBの各画像データが用いられる。図5に示したように、上段照明322を用いる場合には撮像対象の直上に配置された撮像部31の撮像方向と略同一方向から照明光を照射するので、平坦な領域で反射された反射光が最も撮像部31に届き易く、穴部や急傾斜部などの平坦でない領域に照射された照明光は側方に向けて反射されやすい。このため、上段照明322による上方からの照明光を用いて撮像された画像データを用いることによって、穴部や急傾斜部などの領域の光の強度が低く(暗く)なるとともに、平坦部の光の強度が高く(明るく)なる。ステップS22では、このような撮像画像中のレーザ計測部位における光の強度の差異(コントラスト)に基づき、光の強度の差異が一定以上となる領域を検出して、レーザ計測に不適な領域である可能性がある領域(光の強度の低い領域)とレーザ計測に適した領域(光の強度の高い領域)とが判定される。本実施形態では、この上段照明322を用いて撮像した画像データに対して、さらに中段照明323および下段照明324を用いて撮像されたそれぞれの画像データを用いて画像データを組み合わせて差分を取るなどの画像処理を行うことにより、各領域の明暗(光の強度の差異)がより明瞭となる。
【0062】
ここで、図16に示すように、撮像画像データに含まれるレーザ計測部位の内、半田接合部J1に着目した場合について説明する。ステップS22における半田接合部J1についての明暗(光の強度値の差異)の判定によって、半田接合部J1の中から、強度値の高い明領域R1およびR2と、強度値の低い暗領域D1〜D4とが取得される。なお、図15〜図17では明領域を白色(無地)で示し、暗領域を斜線(ハッチング)で示しているが、実際の撮像画像は、たとえば256階調の強度分布を有する。このため、実際の撮像画像では、明領域内および暗領域内にもそれぞれ強度の分布が存在し、以降のステップS23〜S28までの判定では、領域内の強度の分布に基づいて判定が行われる。
【0063】
次に、ステップS23において、判定された各領域(明領域R1およびR2と、暗領域D1〜D4)の内から1つの領域に着目して、周囲よりも暗い領域(暗領域)か否かが判定される。着目した領域(たとえば、明領域R1)が周囲よりも暗い領域(暗領域)ではない場合(明領域)には、ステップS24に進み、レーザ計測可能領域と判定される。一方、着目した領域(たとえば、暗領域D1)が周囲よりも暗い領域(暗領域)である場合には、ステップS25に進む。
【0064】
ステップS25では、演算処理部41により、着目した領域(暗領域D1)が穴部(凹部)であるか否かが判定される。具体的には、演算処理部41により、着目した領域(暗領域D1)の画像データと記憶部42に格納された穴部(凹部)形状撮像例(撮像データ)とが比較照合されて穴部(凹部)形状撮像例と一致または近似するか否かを判定することにより、着目した領域(暗領域D1)が穴部(凹部)であるか否かが判定される。たとえば、半田接合部に気泡などによって形成された穴部などでは、典型的には略円形の暗領域として撮像されるため、このような暗領域は穴部と判定される。着目した領域(暗領域D1)が穴部(凹部)であると判定された場合には、ステップS28に進み、レーザ計測除外領域と判定される。一方、着目した領域(暗領域D1)が穴部(凹部)でないと判定された場合には、ステップS26に進む。
【0065】
ステップS26では、演算処理部41により、着目した領域(暗領域D1)が急傾斜部であるか否かが判定される。具体的には、演算処理部41により、着目した領域(暗領域D1)の画像データと記憶部42に格納された急傾斜部形状撮像例(撮像データ)とが比較照合されて急傾斜部形状撮像例と一致または近似するか否かを判定することにより、着目した領域(暗領域D1)が急傾斜部であるか否かが判定される。たとえば、半田接合部に形成された急傾斜部では、強度値の低い部分(急傾斜部分)から所定方向(斜面の下る方向)に向かって強度値が徐々に高くなっていくような暗領域として撮像されるので、このような暗領域は急傾斜部と判定される。また、このような急傾斜部の傾斜方向と第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34の向きとに基づいて、レーザ計測可能か否かを判定することができる。着目した領域(暗領域D1)が急傾斜部であると判定された場合には、ステップS28に進み、レーザ計測除外領域と判定される。一方、着目した領域(暗領域D1)が急傾斜部でないと判定された場合(または計測可能な急傾斜部と判定された場合)には、ステップS27に進む。
【0066】
ステップS27では、演算処理部41により、着目した領域(暗領域D1)の近傍に遮蔽物が存在するか否かが判定される。この際、演算処理部41により、ステップS21で取得された部品120の位置ずれや画像処理結果、部品形状データベースおよび基板データが参照される。そして、これらのデータと第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34の向きおよび入射経路と反射経路とのなす角(αまたはβ)とに基づいて、遮蔽物近傍のレーザ計測除外領域が判定される。たとえば、図16に示すように、半田接合部J1の明領域R2は、部品120の一部であることが分かる。したがって、この明領域R2の近傍の領域では、部品120の高さと、使用されるレーザ計測部の種類および向きによっては計測できない場合がある。このような場合に、近傍に遮蔽物ありと判定されて、ステップS28に進み、レーザ計測除外領域と判定される。一方、近傍に遮蔽物が存在しない場合には、暗領域ではあるものの、ステップS25〜S27において穴部(凹部)でなく、急傾斜部でもなく、かつ、近傍に障害物もないと判定されたことにより、ステップS24に移行して、レーザ計測可能領域と判定される。
【0067】
以上のようにして、着目した領域(たとえば、暗領域D1)について、ステップS24でレーザ計測可能領域と判定されるか、またはステップS28でレーザ計測除外領域と判定されると、次にステップS29に進む。ステップS29では、演算処理部41により、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)内の全領域(明領域R1およびR2と、暗領域D1〜D4)について判定済みか否かが判断される。未判定の領域が存在する場合には、ステップS23に進み、次の領域(たとえば、暗領域D2)に着目してステップS23〜S28までの処理が行われる(レーザ計測可能領域か、またはレーザ計測除外領域かの判定が行われる)。一方、半田接合部J1の明領域R1およびR2と、暗領域D1〜D4との全ての領域について判定が行われた場合には、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)についてのレーザ計測除外領域の算出処理が終了して、図13のステップS13以降の処理に戻る。
【0068】
図13に示すように、ステップS13では、演算処理部41によってXYロボット20が駆動され、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34がレーザ計測を行うためのレーザ計測部位に移動される。なお、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34の内いずれが用いられるかは、部品120の種類などに応じて予め設定されている。したがって、たとえば着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)について第2レーザ計測部34により計測が行われるように設定されている場合には、第2レーザ計測部34が、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)に移動される。
【0069】
次に、ステップS14において、たとえば第2レーザ計測部34により、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)の計測が行われる。この際、実際に計測対象となるのは、ステップS12で算出されたレーザ計測除外領域を除く領域となる。したがって、図17に示すように、半田接合部J1の暗領域D1〜D4が全てレーザ計測除外領域と判定された場合には、これらの暗領域D1〜D4(レーザ計測除外領域)を除く明領域R1の全領域がレーザ計測対象領域となる。なお、明領域R1中に表示したドットは、レーザ計測位置を模式的に示したものである。また、明領域R2は部品120の一部であるため、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)の計測対象からは除外される。このように、ステップS12で算出されたレーザ計測除外領域をレーザ計測対象から除くことによって、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)の内でレーザ計測対象領域の面積は略半分となっている。このレーザ計測によって、半田接合部J1の計測対象領域(明領域)についての最大高さが取得される。また、レーザ計測によって取得された計測対象領域(明領域)の各計測位置の高さ情報(外形形状)に基づいて、半田接合部J1の半田容積が推定される。
【0070】
ステップS14でレーザ計測が終了すると、ステップS15において、演算処理部41によって計測値に基づく判定処理が行われる。すなわち、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)について、計測対象領域(明領域)の最大高さや推定された半田容積に基づいて、図3の状態A(適正形状、半田量多少少なめ)、状態B(適正形状、半田量適正)、状態C(半田量少)および状態H(半田量多)のいずれに該当するかが判定される。これにより、撮像画像データに基づく検査判定(ステップS8参照)で良品と判定された半田接合部について、レーザ計測によって状態A、状態B、状態Cおよび状態Hの状態のそれぞれに、さらに詳細に判定することが可能となる。また、これにより、良否の境目である状態C(半田量少)および状態H(半田量多)を検出して、それぞれ良否を判別することが可能となる。
【0071】
その後、ステップS11に戻り、着目している部品120(図15参照)について、未レーザ計測部位が存在するか否かが判定される。これにより、図15に示した部品120において半田接合部J2についてレーザ計測が行われていない場合には、次に半田接合部J2に着目して、ステップS12〜S15までの処理が行われる。一方、着目している部品120について、未レーザ計測部位が存在しない場合には、ステップS10に戻る。
【0072】
そして、ステップS10において、演算処理部41によって、他にレーザ計測対象の部品120(半田接合部)が存在するか否かが判定される。レーザ計測対象の部品120(半田接合部)が存在する場合には、ステップS11に進む。このようにして全てのレーザ計測対象の部品120(半田接合部)について、レーザ計測部位毎にそれぞれレーザ計測除外領域が算出されるとともに、レーザ計測が行われる。一方、全てのレーザ計測対象の部品120(半田接合部)について、レーザ計測が終了すると、ステップS10でレーザ計測対象の部品なしと判断されて、外観検査装置100による実装済み基板110の検査動作が終了する。そして、検査が終了した実装済み基板110は、基板搬送コンベア10によって搬出され、次の検査物(実装済み基板110)が搬入される。このようにして、外観検査装置100による検査物(実装済み基板110)の検査動作が行われる。
【0073】
本実施形態では、上記のように、撮像部31による検査物(実装済み基板110)の撮像画像に基づいて、撮像画像中のレーザ計測除外領域を判定し、レーザ計測除外領域を第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測対象から除外することによって、撮像部31による検査物(実装済み基板110)の撮像画像に基づいて、半田接合部の穴部F2や急傾斜部F3などのレーザ計測除外領域を除外した上で、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測を行うことができる。これにより、半田接合部(J1およびJ2)などのレーザ計測部位の全体を第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34によって測定する場合と異なり、レーザ計測除外領域を除外した分だけ実際の計測領域の面積を小さくすることができるので、実際にレーザ光を走査して計測する高さ測定ポイントが減り、短時間で計測を行うことができる。また、半田接合部(J1およびJ2)の穴部F2や急傾斜部F3などのレーザ計測では計測不能または計測精度が低下するおそれのある計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を予め除外するので、残りの領域(レーザ計測対象領域、明領域R1)にのみ第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測が行われる。この結果、計測結果に精度の低い計測値や計測エラーが混ざることがないので、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34を用いて電子部品(部品120)の実装状態の検査を行う際にも、高精度な計測を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、レーザ計測除外領域を除いた領域(明領域R1)の全体を指定して、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測を実行することによって、レーザ計測除外領域を除外した上で、残りの全領域(明領域R1)を計測することにより計測精度の向上を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、検査物(実装済み基板110)のうち少なくともプリント基板130上の部品120の半田接合部J1(J2)について、撮像部31による実装済み基板110の撮像画像に基づいて、レーザ計測除外領域を判定することによって、測定精度に影響を及ぼす気泡などによる穴部F2や、急傾斜部F3およびクラックなどが発生しやすい部品120の半田接合部J1(J2)について、レーザ計測除外領域を判定して除外することができるので、測定精度を高めながら測定時間を短縮することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、レーザ計測除外領域が、実装済み基板110の計測部位(半田接合部J1)の形状が第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による測定に不適な形状(穴部F2および急傾斜部F3)である領域を少なくとも含むことによって、測定精度に影響を及ぼすおそれのある、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測に不適な形状(穴部F2および急傾斜部F3)を撮像画像から検出することによって、レーザ計測除外領域として除外することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、演算処理部41を、穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例を用いて、実装済み基板110の撮像画像中に含まれる第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による測定に不適な形状を検出するように構成することによって、撮像部31による実装済み基板110の撮像画像データを撮像画像例と比較照合して撮像例(穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例)と一致または近似するか否かを判定することによって、実装済み基板110の撮像画像中に含まれる第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による測定に不適な形状を容易に検出することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、演算処理部41を、撮像部31による実装済み基板110(検査部位)の撮像画像と基盤データとに基づき、部品120の実装位置ずれを算出し、算出された部品120の実装位置ずれにも基づいて、レーザ計測除外領域を判定するように構成することによって、プリント基板130上に実装された部品120の実装位置がずれることによって、レーザ計測を行う場合に部品120(遮蔽物)によりレーザ光が遮られてしまうことに起因して、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34による計測を行うことができない領域についても、レーザ計測除外領域として除外することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、実装済み基板110の撮像画像における光の強度の差異(コントラスト)に基づいて、レーザ計測除外領域を判定することによって、撮像画像において半田接合部の穴部F2や急傾斜部F3などの領域では、周囲よりも強度が低く(暗く)なるとともに、高さの大きな部品120の影に位置する(暗くなる)領域では、レーザ計測を行う場合に高さの大きな部品120によって遮られてしまい、測定できない場合もあるので、撮像画像における強度の差異に基づいてレーザ計測除外領域を判定することによって、容易にレーザ計測除外領域を判定することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、撮像部31を、上段照明322の照明光を用いて、実装済み基板110の上方から撮像を行うように構成することによって、穴部F2や急傾斜部F3などのレーザ計測に不適な領域の強度を低く(暗く)するとともに、レーザ計測に適した平坦部の強度を高く(明るく)することができる。これにより、レーザ計測に適した領域と、不適な領域との強度差(コントラスト)を大きくすることができるので、より容易に、撮像画像における強度の差異に基づいて、レーザ計測除外領域を判定することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、半田接合部に形成された穴部F2および急傾斜部F3をレーザ計測に不適な形状として除外することによって、特にレーザ計測に不適な形状が形成され易く、測定精度に影響を及ぼし易い部品120の半田接合部(J1およびJ2)について、レーザ計測に不適な穴部F2および急傾斜部F3の形状を有する領域をレーザ計測除外領域として除外することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、記憶部42に格納された部品形状データベースに基づいて、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34から実装済み基板110上の測定位置へのレーザ光の入射経路または反射経路が部品120などの遮蔽物F1により遮られる可能性のある領域(遮蔽物F1近傍の領域)を、レーザ計測除外領域として判定することによって、たとえばレーザ計測を行う場合に高さの大きな部品120によって遮られてしまうことに起因して計測不能となる場合などに、部品形状データベースに基づいて、部品120の近傍の領域などのレーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を容易に判定することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、第2レーザ計測部34(第1レーザ計測部33)の発光部34a(33a)から受光部34b(33b)に向かう方向A(第2レーザ計測部34(第1レーザ計測部33)の向き)に基づいて、レーザ光の入射経路または反射経路が遮られる可能性のある領域を、レーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)として判定することによって、外観検査装置100における発光部34a(33a)から受光部34b(33b)に向かう方向Aを考慮して、レーザ計測除外領域を判定することができる。すなわち、図11および図12に示したように、発光部34a(33a)から受光部34b(33b)に向かう方向A(第2レーザ計測部34(第1レーザ計測部33)の向き)によってレーザ計測に不適な領域が生じる場合に、この実装済み基板110の撮像画像に加えて既知の第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34の向きに基づいて、レーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を予め除外することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、計測を行うレーザ計測部が正反射型の第1レーザ計測部33であるかまたは拡散反射型の第2レーザ計測部34であるかのレーザ計測部の種類に基づいて、レーザ光の入射経路または反射経路が遮られる可能性のある領域を、レーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)として判定する。このように構成することによって、図6および図7に示したように、第1レーザ計測部33(入射経路および反射経路のなす角α)と第2レーザ計測部34(入射経路および反射経路のなす角β)とによって、レーザ光の入射経路および反射経路が異なるため、レーザ計測部の種類を考慮して、レーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を判定することができる。これにより、レーザ計測部の種類によってレーザ計測に不適な領域に差異が生じる場合(遮蔽物F1の辺E4近傍を計測する場合、図11参照)に、実装済み基板110の撮像画像に加えてレーザ計測部の種類に基づいて、レーザ計測に不適な領域(レーザ計測除外領域)を予め判定して除外することができる。
【0085】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、実装済み基板110の部品120の半田接合部(J1およびJ2)について、レーザ計測除外領域の判定を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半田接合部以外の端子部121、部品120、基板110自体の反りやうねり、接着樹脂や封止剤などの塗布状態などをレーザ計測する際にレーザ計測除外領域の判定を行ってもよい。検査物(実装済み基板110)の計測対象となる全ての部位に対して、レーザ計測除外領域の判定を行ってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、検査物として部品120がプリント基板130に半田接合された実装済み基板110の検査を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、部品が半田接合される前の状態の基板に対して、部品の実装状態の検査を行うように構成してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、撮像部31の撮像方向が実装済み基板110に対して略垂直となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、撮像部は、略垂直方向以外の斜め方向から検査物を撮像してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、外観検査装置100に正反射型の第1レーザ計測部33と拡散反射型の第2レーザ計測部34との2つのレーザ計測部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外観検査装置に正反射型の第1レーザ計測部33と拡散反射型の第2レーザ計測部34とのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、実装済み基板110の撮像画像と、穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例と、第1レーザ計測部33または第2レーザ計測部34の向きおよび入射経路と反射経路とのなす角と、部品120の位置ずれや画像処理結果、部品形状データベースおよび基板データなどの各種データとに基づいて、レーザ計測除外領域を判定するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも検査物(実装済み基板)の撮像画像に基づいてレーザ計測除外領域を判定すればよい。したがって、たとえばレーザ計測部の向きおよび入射経路と反射経路とのなす角に基づくことなくレーザ計測除外領域を判定してもよいし、部品120の実装位置ずれに基づくことなくレーザ計測除外領域を判定してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、着目しているレーザ計測部位(半田接合部J1)において、暗領域D1〜D4(レーザ計測除外領域)を除く明領域R1のみがレーザ計測対象となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、暗領域D1〜D4(レーザ計測除外領域)を除いた上で、さらに明領域R1の一部のみについてレーザ計測を行うように構成してもよい。この場合、レーザ計測対象領域の面積をさらに小さくすることができるので、さらに短時間にレーザ計測を行うことができる。
【0092】
また、上記実施形態では、半田接合部の穴部(凹部)F2および急傾斜部F3をレーザ計測に不適な形状として除外する(レーザ計測除外領域と判定する)ように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半田接合部の穴部(凹部)および急傾斜部のうち、いずれか一方のみをレーザ計測除外領域と判定してもよい。また、これらのレーザ計測に不適な形状をレーザ計測除外領域と判定しないように構成してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例に基づいて、半田接合部の穴部(凹部)F2および急傾斜部F3をレーザ計測に不適な形状として判定するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、穴部(凹部)や急傾斜部を撮像した場合の光の強度分布パターンのデータベースに基づいて、撮像画像中の着目した領域の強度分布がデータベースのパターンと一致または近似するか否かによってレーザ計測に不適な形状を判定するように構成してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、レーザ計測除外領域の判定を行う際の明暗の測定において、上段照明322を用いて撮像した画像データに対して、さらに中段照明323および下段照明324を用いて撮像されたそれぞれの画像データを用いて画像データを組み合わせて差分を取るなどの画像処理を行うことにより、各領域の明暗(光の強度の差異)がより明瞭となるようにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上段照明を用いて撮像した画像データのみを使用して、明暗の判定を行うように構成してもよい。また、中段照明、下段照明、または赤外照明を用いて撮像した画像データのみを使用して、明暗の判定を行うように構成してもよい。また、撮像したカラー画像の色調に基づいて判定を行うように構成してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、照明部32に上段照明322、中段照明323および下段照明324を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、照明部の照明を上段照明のみにより構成してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、基板データ、部品形状データベース、穴部(凹部)形状撮像例および急傾斜部形状撮像例などのレーザ計測除外領域の判定に用いる各種データを記憶部42に格納するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザ計測除外領域の判定に用いる各種データを、外部入出力部44を介してネットワーク接続されたホストコンピュータなどに格納して、必要に応じて取得するように構成してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、撮像部31、照明部32、第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34などを備える検査ユニット30を、XYロボット20によってXY方向(水平方向)に移動させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、検査ユニットをX方向にのみ移動可能に構成するとともに、Y方向に移動可能な基板テーブル上で実装済み基板をY方向に移動させるように構成してもよい。また、検査ユニットを実装済み基板上方の位置で固定的に設けるとともに、XY方向(水平方向)に移動可能な基板テーブル上で実装済み基板をXY方向に移動させるように構成してもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、第1レーザ計測部33および第2レーザ計測部34をスポットレーザを使用したレーザ計測装置により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ラインレーザを使用したレーザ計測装置により構成してもよい。この場合、ライン上でレーザ計測除外領域が存在しないか、もしくはレーザ計測除外領域が少ない領域を判定して高さを測定するとよい。また、高さを測定したラインデータ中から、レーザ測定除外領域の測定データを除いてデータを抽出するようにすると、データ処理が迅速化し、信頼性の高いデータを取得することができる。
【符号の説明】
【0099】
31 撮像部
32 照明部
33 第1レーザ計測部(レーザ計測装置、正反射型計測装置)
33a 発光部
33b 受光部
34 第2レーザ計測部(レーザ計測装置、拡散反射型計測装置)
34a 発光部
34b 受光部
41 演算処理部(制御部)
100 外観検査装置(検査装置)
110 実装済み基板(検査物)
120 部品(電子部品)
130 プリント基板(基板)
F2 穴部(レーザ計測装置による測定に不適な形状)
F3 急傾斜部(レーザ計測装置による測定に不適な形状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査物を撮像する撮像部と、
前記検査物上の計測位置にレーザ光を照射して前記検査物からの反射光を受光することにより、前記検査物の形状を計測するレーザ計測装置と、
前記撮像部による前記検査物の撮像画像に基づいて、前記撮像画像中に含まれる前記レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定し、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域を前記レーザ計測装置による計測対象から除外する制御部とを備える、検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、除外された前記レーザ計測装置による計測に不適な領域以外の領域のうち、少なくとも一部を指定して、前記レーザ計測装置による計測を実行するように構成されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記レーザ計測装置による計測に不適な領域は、前記検査物の形状が前記レーザ計測装置による測定に不適な形状である領域を少なくとも含む、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レーザ計測装置による測定に不適な形状に関する情報を用いて、前記検査物の撮像画像中に含まれる前記レーザ計測装置による測定に不適な形状を検出するように構成されている、請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検査物の撮像画像における光の強度の差異に基づいて、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査物の上方から照明光を照射可能な照明部をさらに備え、
前記撮像部は、前記照明部による前記検査物の上方からの照明光を用いて、前記検査物の上方から撮像を行うように構成されている、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査物は、電子部品が基板上に実装された実装済み基板であり、
前記制御部は、前記検査物のうち少なくとも前記基板上の電子部品の半田接合部について、前記撮像部による前記検査物の撮像画像に基づいて、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記レーザ計測装置による計測に不適な領域は、前記検査物の形状が前記レーザ計測装置による測定に不適な形状である領域を少なくとも含み、
前記レーザ計測装置による計測に不適な形状は、半田接合部に形成された穴部または急傾斜部のうち少なくとも1つを含む、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記制御部は、さらに、前記基板上に実装された電子部品の形状に関する情報に基づいて、前記レーザ計測装置から前記検査物へのレーザ光の入射経路または前記検査物からの反射光の反射経路が前記電子部品により遮られる可能性のある領域を、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている、請求項7または8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記撮像部による前記検査物の撮像画像に基づき、前記基板上に実装された電子部品の実装位置と、予め設定されている電子部品の設計実装位置との実装位置ずれを算出し、算出された電子部品の前記実装位置ずれにも基づいて、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域を判定するように構成されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項11】
前記レーザ計測装置は、前記検査物にレーザ光を出射する発光部と、前記検査物から反射された反射光を受光する受光部とを含み、
前記制御部は、前記レーザ計測装置の前記発光部から前記受光部に向かう方向に基づいて、前記発光部から前記検査物へのレーザ光の入射経路または前記検査物から前記受光部への反射光の反射経路が遮られる可能性のある領域を、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項12】
前記レーザ計測装置は、前記検査物から反射された反射光のうち、正反射成分を受光する正反射型計測装置と、拡散反射成分を受光する拡散反射型計測装置とを含み、
前記制御部は、計測を行う前記レーザ計測装置が正反射型計測装置であるかまたは前記拡散反射型計測装置であるかの前記レーザ計測装置の種類に基づいて、前記発光部から前記検査物へのレーザ光の入射経路または前記検査物から前記受光部への反射光の反射経路が遮られる可能性のある領域を、前記レーザ計測装置による計測に不適な領域として判定するように構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項13】
検査物を撮像するステップと、
撮像された前記検査物の撮像画像に基づいて、前記撮像画像中に含まれるレーザ光による計測に不適な領域を判定し、前記レーザ光による計測に不適な領域を前記レーザ光による計測対象から除外するステップと、
前記検査物上の計測位置にレーザ光を照射して前記検査物からの反射光を受光することにより、前記検査物の形状を計測するステップとを備える、検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−133306(P2011−133306A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292111(P2009−292111)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】