説明

液晶装置および液晶装置の製造方法、並びに電子機器

【課題】横方向電界で液晶分子を回転させる方式を用いた場合、液晶は電極に対して基板から離れた方向に配置される。つまり、基板側に生じる電界は液晶分子の回転に寄与しない。そのため、電界の利用率が低下する。また、電気抵抗が低い結晶型ITOを用いた場合、ドライエッチングでは残渣が残り、ウェットエッチングでは寸法精度が出せないという課題がある。
【解決手段】電極間に位置する誘電体をエッチングして逆テーパー状に窪ませることで、電界強度が強い電極間に液晶が入る領域を設けた。窪ませた部分の液晶分子も電界により回転するため電界の利用率を向上させることができる。また、逆テーパー状に誘電体が形成されているため、スパッター法等で結晶型ITO膜を形成した場合、自己整合的にITO膜が分離されるため、ITOをエッチングすることなく所望のパターンを形成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および液晶装置の製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のTN(Twisted Nematic)方式などの液晶装置は、一対の基板間に液晶を封入した構成を有しており、各基板が備える電極を用いて基板面に垂直な方向に電界を印加することによって液晶分子の配向を制御し、光透過率を変調している。これに対し、液晶装置の広視野角化を図る一つの手段として、近年では液晶に印加する電界の方向を基板面に沿った方向(以下、「横方向」とも記載する)とし、この電界によって液晶を基板に沿った方向に回転させる方式が知られている。この種の液晶装置では、片方の基板に一対の電極を配置して電界を発生させる方式として、イン・プレイン・スイッチング(In Plane Switching:以下、IPSとも記載する)方式、フリンジ・フィールド・スイッチング(Fringe Field Switching:以下、FFSとも記載する)方式等が知られている。
【0003】
FFS方式とIPS方式との相違は、IPS方式の場合は一対の、例えば櫛歯状電極が同層に配置されているのに対し、FFS方式の場合は一対の電極が異なる層に配置されている点である。すなわち、FFS方式ではベタ状電極に対して層間絶縁層を介して、例えばスリットが複数配置された形状を備える電極が積層されている点である。FFS方式を用いる場合、2つの電極が重なる構成を持つため、一般的なIPS方式と比べ大きな液晶容量が得られる。そのため、電荷保持用の容量を省略、あるいは小型化することが可能となり、高い開口率を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−178177号公報
【特許文献2】特開2002−23185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FFS方式やIPS方式等、横方向電界で液晶分子を回転させる方式を用いた場合、液晶を駆動する電極は配向層等に埋め込まれる。つまり、電極の横や基板側には液晶は配置されない。そのため、基板側に生じる電界は液晶分子の回転に寄与しない。従って、電界の利用率が低下し、高い駆動電圧をかけて液晶を駆動する必要が生じ、消費電力が大きくなるという課題が生じる。特許文献2には段差のあるIPS方式を用いた場合の構造が記載されているが、2つの電極の間および基板側には誘電体が形成されており、この部分の電界は液晶分子の回転には寄与しない。そのため、電界利用率が低く、コントラストの向上が困難であるという課題がある。
【0006】
また、FFS方式やIPS方式を用いて横方向電界で液晶分子を回転させるためには、例えば櫛歯状に透明電極を形成する必要があるが、透明電極として電気抵抗が低い結晶型ITO(インジウム・錫・酸化物)を用いた場合、ドライエッチングでは残渣が残ることで不良が発生するという課題がある。また、特許文献1に示すウェットエッチングを用いた場合、寸法精度が低下し、高精細な画像を表示させることが困難となる課題がある。また、透明電極としてインジウム・亜鉛・酸化物(IZO:登録商標)や、酸化亜鉛、酸化錫等を用いた場合でも、同様の問題が生じるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。なお、「透明」とは400nm以上800nm以下の波長全域で60%以上の透過率を備えた状態と定義する。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる、基板の第1面に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置であって、前記基板は、前記第1面に設けられた第1電極と、前記第1電極の一部に重ねて設けられた透明な層間絶縁層を備える凸部と、前記凸部の少なくとも一部と重ねて設けられ、前記第1電極と電気的に分離された透明な第2電極と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これによれば、第1電極の一部に凸状の領域が備えられていることから、残りの部分には第1電極が配置された凹状の領域が得られる。そして、この凹状の領域にも液晶を保持することが可能となる。横方向電界で階調制御を行う動作としてのフリンジ・フィールド・スィッチングモード動作では第1電極と第2電極との間の電界により液晶分子を配向させる。凹状の領域には第1電極と第2電極による電界が供給される。従って凹状の領域に充填された液晶分子を電界により配向させることが可能とある。そのため従来と同じ駆動電圧を印加した場合に比べ、より広い領域で液晶分子の配向を制御できることから、より高いコントラストを得ることが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる液晶装置であって、前記第1電極は、平面的に前記凸部と重なる領域と比べ、前記凸部と隣接する領域で厚みが大きいことを特徴とする。
【0011】
上記した適用例によれば、絶縁層を平面的に囲う領域の少なくとも一部で第1電極の厚みは大きくされている。そのため、第1電極の電気的な抵抗による電圧降下を抑制できるため、画質に優れた液晶装置を提供することが可能となる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる液晶装置であって、前記第1電極の下層の層間絶縁層を貫通し、前記第1電極の電位を制御する制御電極に達するよう開口したコンタクトホール内の導通部の厚さは、平面的に前記凸部と重なる領域にある前記第1電極と比べ厚みが大きいことを特徴とする。
【0013】
上記した適用例によれば、電流が集中するコンタクトホール内での導通部の層厚は凸部と重なる領域にある第1電極と比べ厚くなっている。そのため、コンタクトホール内での寄生抵抗による電圧降下を抑制できるため、画質に優れた液晶装置を提供することが可能となる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる液晶装置であって、前記凸部に隣接する前記第1電極が、前記層間絶縁層よりも薄い透明な絶縁層で覆われ、前記第2電極の一部が前記絶縁層を覆う位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】
上記した適用例によれば、凸部と隣接する領域を介して第1電極と短絡させることなく第2電極同士を接続することができ、第2電極のレイアウトパターンの自由度を大きくすることが可能となる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかる、基板の第1面に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置であって、前記基板は、前記第1面に設けられた透明な層間絶縁層と、前記層間絶縁層と平面的に重なり、互いに電気的に分離された透明な第1電極と透明な第2電極とを備え、前記層間絶縁層は、前記第1電極と前記第2電極との間で、少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極と平面的に重なる領域と比べ前記基板側に窪んでいることを特徴とする。
【0017】
これによれば、第1電極と第2電極との間に位置する絶縁層の少なくとも一部は基板側に窪んでいる。そのため、この窪んだ領域に液晶を充填させることができる。横方向電界で階調制御を行う動作としてのイン・プレイン・スィッチングモード動作では第1電極と第2電極との間の電界により液晶分子を配向させる。第1電極と第2電極との間に位置する領域では、基板側の領域でも電界が発生するため、ここに液晶を充填することで、高い効率を持って液晶分子を配向させることが可能となり、従来と同じ駆動電圧を印加した場合に比べ、より高いコントラストを得ることが可能となる。
【0018】
[適用例6]本適用例にかかる、基板の平面方向に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置の製造方法であって、前記基板を構成する基板本体の第1面側に第1電極を形成する工程と、前記第1面側に透明な層間絶縁層前駆体を形成する工程と、前記第1面側にレジスト層を形成し、前記レジスト層をマスクとして前記層間絶縁層前駆体を前記基板本体側で幅が狭い形状にエッチングし、前記第1電極の一部を露出させる、あるいは露出前に当該エッチングを止めて、層間絶縁層を形成する工程と、前記第1面側に前記エッチング量よりも薄い厚さを備え、前記層間絶縁層により分断された透明な第2電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
これによれば、ウェットエッチングを用いて透明な第2電極を加工する場合と比べ、第2電極の微細加工が可能となる。また、特に電気抵抗が低い、結晶性のITOを(インジウム・錫・酸化物)電極として用いた場合に生じる、エッチングに伴う残渣による不良発生を防止することが可能となる。
【0020】
[適用例7]本適用例にかかる、基板の平面方向に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置の製造方法であって、前記基板の前記第1面側に透明な層間絶縁層前駆体を形成する工程と、前記第1面側にレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層をマスクとして前記層間絶縁層前駆体を前記基板本体側で幅が狭い形状にエッチングし、前記層間絶縁層前駆体を貫通させる、あるいは貫通前に当該エッチングを止めることで層間絶縁層を形成する工程と、前記第1面側に前記エッチング量よりも薄い厚さを備え、前記層間絶縁層により分断された透明な第1電極および透明な第2電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
これによれば、ウェットエッチングを用いて透明な第1電極および第2電極を加工する場合と比べ、微細加工が可能となる。また、特に電気抵抗が低い、結晶性のITOを用いた場合に生じる、エッチングに伴う残渣による不良発生を防止することが可能となる。また、基板側にエッチング速度が速い絶縁体を配置することで互いに分断された第1電極および第2電極を得ることが可能となり、絶縁層のエッチング条件選定が容易となる。
【0022】
[適用例8]上記適用例にかかる液晶装置の製造方法であって、前記層間絶縁層は単層構造であり、前記幅が狭い形状は、逆テーパー形状であることを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、複数の層を形成する場合と比べ製造工程を短縮することが可能となる。また、簡素な構成を用いるため、高い再現性を持った液晶装置の製造方法を提供することが可能となる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる液晶装置の製造方法であって、前記層間絶縁層は複層構造であり、前記幅が狭い形状は、ひさし形状であることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、基板側にエッチング速度が速い絶縁体を配置することで分断された電極を得ることが可能となり、層間絶縁層のエッチング条件選定が容易となる。
【0026】
[適用例10]上記適用例にかかる液晶装置の製造方法であって、前記第2電極を形成した後、前記第2電極の層厚に対して1%以上20%以下のエッチング量を備えるライトエッチングを行うことを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、ライトエッチングを、第2電極の層厚に対して1%以上20%以下程度の量で行うことで、層間絶縁層の端部での短絡をより確実に防ぐことが可能となる。また、第2電極の層厚減少が抑えられるため、電気抵抗の増加による影響を抑えることが可能となる。ここで、ライトエッチングは、ウェットとドライのどちらを用いても良い。
【0028】
[適用例11]本適用例にかかる電子機器は、上記に記載の液晶装置または上記に記載の液晶装置の製造方法で形成された液晶装置を備えたことを特徴とする。
【0029】
これによれば、従来と同じ駆動電圧を印加した場合に比べ、より広い領域で液晶分子の配向を制御できることから、より高いコントラストを得ることが可能となる。また、エッチングに伴う残渣による不良発生が防止できることから、高いコントラストと信頼性を兼ね備えた電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】FFS方式の液晶装置の平面構造を示す平面図。
【図2】図1に示す平面図のA−A’線断面図。
【図3】共通電極に設けるストライプ状のスリットを走査線に対して傾けた構造を示す平面図。
【図4】マルチドメイン化させたスリットを設けた構造を示す平面図。
【図5】IPS方式の液晶装置の平面構造を示す平面図。
【図6】図5に示す平面図のA−A’線断面図。
【図7】(a)〜(c)は、FFS方式の液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図8】(a)〜(c)は、FFS方式の液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図9】(a)〜(c)はIPS方式の液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図10】(a)〜(c)は液晶装置を搭載した電子機器について説明するための概略図。
【図11】従来例を示すFFSモードの液晶装置の断面図。
【図12】従来例を示すIPSモードの液晶装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態:横電界方式の液晶装置−1)
以下、横電界方式の液晶装置としてのFFS方式の液晶装置について図面を用いて説明する。図1は、FFS方式の液晶装置の平面構造を示す平面図、図2は、図1に示す平面図のA−A’線断面図である。この構造は、後述する液晶装置の製造方法を用いることで形成することが可能である。
【0032】
このFFSモードの液晶装置70Aは、基板としてのアレイ基板ARと、液晶LC、カラーフィルター基板CFとを備えている。アレイ基板ARは、透明基板71を備えている。そして、基板としてのアレイ基板ARの第1面側に対応する透明基板71の液晶LC側に、それぞれ平行に複数の走査線72及び共通配線73が設けられ、これら走査線72及び共通配線73に直交する方向に複数の信号線74が設けられている。そして、各画素の表面全体を覆うように共通配線73に接続され、ストライプ状に複数のスリット77Aを備えたITOやIZO(登録商標)、酸化亜鉛、酸化錫等の透明材料を用いた透明な第2電極としての共通電極78Aが設けられている。また、ITOに代表される透明導体としては、結晶型のものが電気的抵抗が低く、電圧降下を起こしにくいことから好適である。
【0033】
そして、走査線72と信号線74との交点近傍にはスイッチング素子としてのTFTが備えられている。このTFTは、走査線72の表面に半導体層79が配置され、半導体層79の表面の一部を覆うように信号線74の一部が延在されてTFTのソース電極Sを構成し、半導体層79の下部の走査線部分がゲート電極Gを構成し、また、半導体層79の一部分と平面的に重なる第1電極としての画素電極75とが平面的に重なる領域に、制御電極としてのドレイン電極Dが備えられている。
【0034】
そして、半導体層79とゲート電極Gの厚み方向に対して挟まれる領域には、ゲート絶縁層93が備えられている。そして、コンタクトホール94を介してTFTのドレイン電極Dから画素電極75と接続されることで、TFTはドレイン電極Dを介しての画素電極75の電位制御を行っている。平坦化層95は、例えば窒化酸化珪素(SiOxNy:x,yどちらかが0の場合を含む)、や有機層、またはそれらの多層構造を用いることができる。ここで、コンタクトホール94の内側の導通部98には、後述する製造方法により画素電極75と同時に形成される導電層100と導電補助層75Aが重ねて形成されている。電流が集中するコンタクトホール94の内側での導通部98の層厚は凸部99と重なる領域にある画素電極75と比べ厚くなっている。そのため、コンタクトホール94内の導通部98での寄生抵抗による電圧降下を抑制できるため、画質に優れた液晶装置を提供することが可能となる。このように、導電補助層75Aを設けることは好適であるが、これは必須の条件ではない。
【0035】
画素電極75は、透明な層間絶縁層97を介して共通電極78Aと電気的に分離され、TFTのドレイン電極Dからの電位供給を受け、共通電極78Aと協働して電界を発生させることで液晶LCの配向状態を制御している。層間絶縁層97は、例えば窒化酸化珪素SiOxNy(x=0、またはy=0を含む)を用いることができる。また、有機物を用いても良い。さらには、これらの多層構造を用いても良い。層間絶縁層97が存在する領域では、アレイ基板ARは液晶LCが存在する方向に向けて凸となる凸部99が構成される。また、アレイ基板ARには、液晶LCとの界面に配向層91が備えられており、液晶LCの初期配向方向を制御している。配向層91は例えばポリイミド等の有機層をラビング処理することで形成される。
【0036】
また、カラーフィルター基板CFは、透明基板80の液晶LC側の面にカラーフィルター層81が設けられた構成を有している。また、カラーフィルター基板CFには、液晶LCとの界面に配向層92が配置されており、液晶LCの配向状態を制御している。そして、アレイ基板ARの配向層91と、カラーフィルター基板CFの配向層92とが、互いに対向するように液晶LCを挟んでアレイ基板AR及びカラーフィルター基板CFがそれぞれ対向するように配置されている。そして、両基板のそれぞれ外側に偏光板82及び偏光板83を偏光方向が互いに直交する方向となるように配置された構成をFFSモードの液晶装置70Aは備えている。
【0037】
このFFSモードの液晶装置70Aは、共通電極78Aと画素電極75の間で電界が掛けられると、この電界は共通電極78Aの両側で画素電極75に向かうため、共通電極78A同士の間隙に存在する液晶分子だけでなく共通電極78Aと平面的に重なる領域に存在する液晶分子も動くことができる。そのため、FFSモードの液晶装置70Aは、一般的なIPSモードの液晶装置よりも広視野角かつ高コントラストであり、更に高透過率であるため明るい表示が可能となるという特徴を備えている。加えて、FFSモードの液晶装置70Aは、一般的なIPSモードの液晶装置よりも平面視で共通電極78Aと画素電極75との重複面積が大きいためにより大きな保持容量が副次的に生じ、別途補助容量線を設ける必要がなくなるという長所が存在する。また、補助容量線を設ける場合でも、この副次的な保持容量により補助容量線の面積を小さくすることができるため、開口率を高く保つことができる。
【0038】
また、アレイ基板ARには、液晶LCとの界面に配向層91が配置されている。ここで、FFSモードの液晶装置においては、表示特性上、配向層91のラビング方向は信号線と直交するのがよく、また画素電極とラビング方向とは微小角度の傾きを設けた方がよいことから、図3に示したFFSモードの液晶装置70Bのように共通電極78Bに設けるストライプ状のスリット77Bを走査線72や共通配線73に対して傾いた構造とすることが行われている。
【0039】
同じく、視角によって色変化が認められなくなるようにするため、図4に示したFFSモードの液晶装置70Cのように、共通電極78Cに設けるストライプ状のスリット77Cの傾き方向を中央近傍で反転させるよう配置して複数(図4では2つ)の配向方向に分割(マルチドメイン化)することも行われている。
【0040】
なお、図3及び図4に示したFFSモードの液晶装置70B及び液晶装置70Cは、図1に示したFFSモードの液晶装置70Aとは共通電極78Bまたは共通電極78Cに設けるスリット77Bやスリット77Cの傾きが相違するのみであるので、図1に示したFFSモードの液晶装置70Aと同一の構成部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略するが、応用技術等については液晶装置70Aについて記述した場合、液晶装置70B及び液晶装置70Cについても類型のものとして扱えるものとする。
【0041】
なお、ここではTFTとしてボトムゲート型のものを用いているが、これはトップゲート型のTFTを用いても良い。また、配向層91と共通電極78との間に保護層を挟むことも好適であり、液晶装置70の信頼性を向上させることが可能となる。
【0042】
図2に示すように、図11に示す従来用いられていたFFSモードの液晶装置70Dと比べ、有効電界領域96に示す領域にある液晶LCに対しても配向に有効な電界を供給することが可能となる。そのため、低い電界強度でも液晶LCの配向を制御することが可能となる。即ち、駆動電圧を下げても液晶LCを効果的に駆動でき、液晶装置70Dと比べ消費電力を下げることが可能となる。
【0043】
また、図2に示すように、画素電極75には、後述する製造方法により形成される導電補助層75Aが重ねて設けられ、電気的には画素電極75と導電補助層75Aは一体化して画素電極75(第1電極)として機能している。そのため、画素電極75の電気的な抵抗による電圧降下を抑制できるため、画質に優れた液晶装置70Aを提供することが可能となる。加えて、液晶装置70Aは、表示領域内では常に共通電極78Aと画素電極75とが光学的に重なった状態で構成されることとなる。層間絶縁層97等と比べ、比較的透明度が低い電極が光学的に重なることで、表示素子内の光透過率が均質化する。そのため、表示むらの少ない液晶装置70Aを提供することが可能となる。このように、導電補助層75Aを設けることは好適であるが、これは必須の条件ではない。
【0044】
また、図2に示すように、凸部99は後述する製造方法を用いる場合には、逆テーパー状の形状を設けることが好ましいが、別の製造方法を用いる場合には、逆テーパー以外の形状(例えば順テーパー形状)を備えていても良い。また、画素電極75と導電補助層75Aは電気的に一体化しているが、これは凸部99を構成する層間絶縁層97よりも薄い層厚を備えた透明な絶縁層を備えていても良い。この場合、凸部99と隣接する領域を介して画素電極75と短絡させることなく共通電極78Aを接続することができ、共通電極78Aのレイアウトパターンの自由度を大きくすることが可能となる。また、画素電極75は、FFSモードの液晶装置70Aが透過型の場合は透明であることが必要となるが、反射型の場合には遮光性の材質を用いることも可能である。
【0045】
(第2の実施形態:横電界方式の液晶装置−2)
以下、横電界方式の液晶装置としてのIPS方式の液晶装置について図面を用いて説明する。図5は、IPS方式の液晶装置の平面構造を示す平面図、図6は、図5に示す平面図のA−A’線断面図である。この構造は、後述する液晶装置の製造方法を用いることで形成することが可能である。ここで、配向層91のラビング方法や、マルチドメイン化方法等の基本的構成は、上記した第1の実施形態とほぼ同様の条件が適用されるため、説明を省略し重複を避ける。
【0046】
IPS方式とは、液晶に電界を印加する方向が基板に対してほぼ平行な方向とする方式である。すなわち、液晶層を挟持する2枚の基板の一方に咬合した櫛形状の電極を配置し、その櫛形電極間に電界を印加して液晶分子の配列方向を制御するものであり、この分子の配列状態により、液晶を透過してくる光の偏光状態が変わり、光の透過率が変調されるものである。
【0047】
図5に示すように、IPS方式の液晶装置50は、基板としてのアレイ基板ARと、液晶LC、カラーフィルター基板CFとを備えている。アレイ基板ARは透明基板71の第1面としての表面に複数の走査線72及び信号線74が直交するように配置され、走査線72と信号線74の各交差点に対応してスイッチング素子であるTFTが設けられている。TFTは、信号線74の一部が延在されてTFTのソース電極Sを構成し、半導体層79の下部の走査線部分がゲート電極Gを構成し、また、半導体層79の一部分と重なる第1電極としての透明な画素電極75の部分がドレイン電極Dと接続されている。
【0048】
また、隣接する2つの走査線72の間に、走査線72と平行に共通配線73が配置され、共通配線73に電気的に接続された櫛形の第2電極としての透明な共通電極78が配置されている。そして、TFTに接続した櫛形の画素電極75が共通電極78と咬合するように配置され、また画素電極75と走査線72とが絶縁膜を介して交差する領域に蓄積容量部90が配置されている。なお、寄生層75Bは後述する製造工程を用いた場合に、副次的に形成されるもので、液晶装置50の動作に影響を与えるものではない。
【0049】
基板としてのアレイ基板ARは、第1面側としての透明基板71の液晶LC側の面に逆テーパー型の透明な層間絶縁層97を備え、層間絶縁層97の液晶LC側には共通電極78と画素電極75とが交互に配置されている。そして、アレイ基板ARは、液晶LCと接触する領域に配向層91を備えている。
【0050】
カラーフィルター基板CFは、透明基板80の液晶LC側の面にカラーフィルター層81が設けられた構成を有している。そして、液晶LCと接触する領域に配向層92が配置されている。そして、アレイ基板ARの配向層91とカラーフィルター基板CFの配向層92とが互いに対向するようにアレイ基板AR及びカラーフィルター基板CFを対向させ、その間に液晶LCを封入するとともに、両基板のそれぞれ外側に偏光板82及び偏光板83を偏光方向が互いに直交する方向となるように配置されることで、IPSモードの液晶装置50が構成される。
【0051】
図6に示すように、図12に示す従来用いられていたIPSモードの液晶装置50Aと比べ、有効電界領域96に示す領域にある液晶LCに対しても配向に有効な電界を供給することが可能となる。そのため、低い電界強度でも液晶LCの配向を制御することが可能となる。即ち、駆動電圧を下げても液晶CLを効果的に駆動でき、液晶装置50Aと比べ消費電力を下げることが可能となる。
【0052】
なお、層間絶縁層97が逆テーパー状の形状をしていることは必須ではなく、後述する製造方法以外の方法(例えば従来のウェットエッチング法を用いて共通電極78と画素電極75を形成する場合)を用いる場合には、順テーパー状の形状を備えていても良い。この場合、寄生層75Bを備える必要はない。また、共通電極78と画素電極75の間が窪んでいれば良く、例えば共通電極78と画素電極75の間に層間絶縁層97よりも薄い層間絶縁層があっても良く、また、透明基板71の一部が削れた形状としても良い。
【0053】
(第3の実施形態:横電界方式の液晶装置の製造方法−1)
以下、横電界方式の液晶装置としてのFFS方式の液晶装置の製造方法について図面を用いて説明する。図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)は、FFS方式の液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。ここでは、図1に示す平面図のA−A’線に沿った断面図を用いて説明する。
まず、工程1として、基板本体としての透明基板71の第1面側としての液晶LC側の面にTFTを形成する。以下、特に明示しない場合には、上記した面側を加工するものとする。TFTとしてはここでは製造工程が短く面内均一性が高いボトムゲート型のTFTを用いる場合について説明する。ゲート電極Gを例えばMoやAlを主成分とした金属を用いて形成した後、ゲート絶縁層93をプラズマCVD(化学気相堆積)法等を用いて形成し、続けてアモルファスシリコンをプラズマCVD法で堆積して後、パターニングして半導体層79を形成し、ドレイン電極Dを構成する電極とチャネル(ゲート電極Gと平面的に重なる領域)を形成する。ここまでの工程を終了したものを図7(a)に示す。
【0054】
次に、工程2として、平坦化層95を形成した後、パターニングしてコンタクトホール94を開口する。この工程では、平坦化層95を感光性のある樹脂を用いて形成し、フォトリソグラフ工程を用いてコンタクトホール94を開口しても良い。ここまでの工程を終了したものを図7(b)に示す。
【0055】
次に、工程3として、第1電極としての画素電極75と同時に導電層100を形成する。具体的にはITO等の透明な導電体をECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッター法等を用いて形成した後、図1に示す領域を除いてエッチングする。この場合、画素電極75は大きな面積を持つ矩形の平面構造が用いられていることからパターン精度が低くても差し支えないため、例えばウェットエッチングを用いることで対応できる。また、金属等を用いたハードマスク(物理蒸着粒子の一部を遮断する)により、画素電極75のパターンを直接形成しても良い。ドライエッチングを用いる場合には、RIE(反応性イオンエッチング)法を例示することができる。エッチング条件の一例としては、水素化ヨウ素をエッチングガスとして用い、流量を100sccm、基板温度80℃、パワー密度1.0W/cm2程度の条件を用いることでエッチングを可能としている。ここまでの工程を終了したものを図7(c)に示す。
【0056】
次に、工程4として、層間絶縁層前駆体97Aを形成する。層間絶縁層前駆体97Aは、透明な有機物層や、窒化酸化珪素SiOxNy(x=0、またはy=0を含む)層を用いることができる。ここでは窒化酸化珪素層を用いる例について説明する。ここまでの工程を終了したものを図8(a)に示す。
【0057】
次に、工程5として、レジスト層PRを形成し、層間絶縁層前駆体97Aを逆テーパー状(基板本体側で幅が狭い形状)にエッチングし、層間絶縁層97を形成する。エッチング条件としては、例えばICP(誘導結合プラズマ)法を用い、エッチングガスとしては6フッ化硫黄150ccm、酸素50ccm程度の流量で混合したガスを用い、基板温度60℃、パワー密度1.5W/cm2程度の条件を用いることでエッチングを可能としている。ここで、層間絶縁層前駆体97Aを貫通させてエッチングさせることで画素電極75が実質的に低抵抗化するため好適である。また、図2に示す共通電極78Aのレイアウトパターンの自由度を上げるためには、層間絶縁層前駆体97Aを少し残しておくことが好適である。この場合、例えば画素電極75と短絡させること無く、画素電極75を横切るような共通電極78Aのレイアウトパターンを用いることが可能となる。ここまでの工程を終了したものを図8(b)に示す。エッチング終了後、レジスト層PRは除去する。
【0058】
次に、工程6として、ITO等の透明な導電体をECRスパッター法等を用いたPVD(物理蒸着)法を用いて、透明な第2電極としての共通電極78Aを形成する。層間絶縁層97が逆テーパー形状を備えていることから、層間絶縁層前駆体97Aのエッチング量よりも薄い厚さを備えることで、自己整合的に層間絶縁層97と重なる共通電極78Aが形成される。ここまでの工程を終了したものを図8(c)に示す。
後の工程は、公知技術を用いて配向層91を形成して得られたアレイ基板ARと、カラーフィルター基板CFと対向させて液晶LCを注入し、両基板のそれぞれ外側に偏光板82及び偏光板83を偏光方向が互いに直交する方向となるように配置することで図1、図2に示す液晶装置70Aが形成される。
【0059】
自己整合的に層間絶縁層97と重なる共通電極78Aが形成されるため、エッチングの制御では困難となる微細なストライプ状に複数のスリット77Aを備える精密なパターンを容易に形成することが可能となる。微細なストライプ状に複数のスリット77Aを備える精密なパターン形状を持つ共通電極78Aを、ITO等の透明な導電体をエッチングする工程無しに形成することができる。従って、精密なエッチングが困難であるITO等の透明な導電体を用いても、精密なパターンを形成することが可能となる。特に、結晶性ITOは、光透過率が高く電気抵抗が低いという利点があるが、エッチング加工が極めて困難であるという特性を備えている。本実施形態の製造方法を用いることで、このような結晶性ITOを電極として用いることが可能となる。なお、ここでは透過型の液晶装置70Aの製造方法について説明したが、これは、反射層を設けることで、容易に反射型への適用が可能である。
【0060】
(第4の実施形態:横電界方式の液晶装置の製造方法−2)
以下、横電界方式の液晶装置としてのIPS方式の液晶装置の製造方法について図面を用いて説明する。図9(a)〜(c)はIPS方式の液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。ここでは、図5に示す平面図のA−A’線に沿った断面図を用いて説明する。本実施形態は、第3の実施形態と類似している部分が多いため、類似している部分については適宜引用し、説明の重複を避けるものとする。
【0061】
まず、工程1から工程3を第3の実施形態と同様に行う。ここで、コンタクトホール94中に導電層100を形成する工程等、コンタクトホールにかかる工程は省略しても良い。
【0062】
次に、工程4Aとして、層間絶縁層前駆体97Aを形成する。層間絶縁層前駆体97Aは、透明な有機物層や、窒化酸化珪素SiOxNy(x=0、またはy=0を含む)層を用いることができる。ここでは窒化酸化珪素層を用いる例について説明する。ここまでの工程を終了したものを図9(a)に示す。
【0063】
次に、工程5Aとして、レジスト層PRを形成し、層間絶縁層前駆体97Aを逆テーパー状(基板本体側で幅が狭い形状)にエッチングし、層間絶縁層97を形成する。エッチング条件としては、前述した条件を用いることができる。ここまでの工程を終了したものを図9(b)に示す。エッチング終了後、レジスト層PRは除去する。
【0064】
次に、工程6Aとして、ITO等の透明な導電体をECRスパッター法等を用いたPVD(物理蒸着)法を用いて、透明な第1電極としての画素電極75と、透明な第2電極としての共通電極78と、を形成する。層間絶縁層97が逆テーパー形状を備えていることから、層間絶縁層前駆体97Aのエッチング量よりも薄い厚さを備えることで、自己整合的に層間絶縁層97と重なる画素電極75と、共通電極78と、が形成される。ここまでの工程を終了したものを図9(c)に示す。
後の工程は、公知技術を用いて配向層91を形成して得られたアレイ基板ARと、カラーフィルター基板CFと対向させて液晶LCを注入し、両基板のそれぞれ外側に偏光板82及び偏光板83を偏光方向が互いに直交する方向となるように配置することで図5、図6に示す液晶装置50が形成される。
【0065】
自己整合的に層間絶縁層97と重なる画素電極75と、共通電極78と、が形成されることから、互いに咬合した櫛形状の電極形状等の精密なパターン形状を、ITO等の透明な導電体をエッチングする工程無しに形成することができる。従って、精密なエッチングが困難であるITO等の透明な導電体を用いても、精密なパターンを形成することが可能となる。特に、結晶性ITOは、光透過率が高く電気抵抗が低いという利点があるが、エッチング加工が極めて困難であるという特性を備えている。本実施形態の製造方法を用いることで、このような結晶性ITOを電極として用いることが可能となる。なお、ここでは透過型の液晶装置50の製造方法について説明したが、これは、反射層を設けることで、容易に反射型への適用が可能である。
【0066】
(第3、第4の実施形態の変形例)
以下、第3、第4の実施形態の変形例について説明する。工程5、工程5Aでは、「レジスト層PRを形成し、層間絶縁層前駆体97Aを逆テーパー状(基板本体側で幅が狭い形状)にエッチングし、層間絶縁層97を形成する」とあるが、これは複数の層を用いた層間絶縁層前駆体97Aを用い、基板本体側にエッチング速度が大きい材質の層を形成してエッチングを行い、ひさし形状を備えるよう加工する工程と代えても良い。
【0067】
例えば、透明基板71に近い側に窒化珪素層を堆積し、窒化珪素層に重ねて酸化珪素層を堆積した後、例えばICP(誘導結合プラズマ)法を用い、エッチングガスとしては6フッ化硫黄150ccm、酸素50ccm程度の流量で混合したガスを用い、基板温度60℃、パワー密度1.5W/cm2程度の条件を用いることでひさし形状が得られる。
【0068】
なお、ここでは2つの層を重ねた場合について説明したが、これは3層以上の多層構造を用いても良く、この場合においても透明基板71に近い側にエッチング速度が大きい層を積層することができる。また、この場合、透明基板71に近い側にエッチング速度が小さい層を形成し、この層に重ねてエッチング速度の大きい層を重ね、さらにエッチング速度の小さい層を用いることで、層間絶縁層97の一部を残した、ひさし形状を容易に得ることが可能となる。
【0069】
また、工程6、工程6Aを終えた後、画素電極75と、共通電極78(78A)と、をライトエッチングすることも好適である。ライトエッチングは、ウェットでもドライでも良く、共通電極78(78A)の層厚に対して1%以上20%以下程度の量でライトエッチングすることで、層間絶縁層97の端部での短絡をより確実に防ぐことが可能となる。
【0070】
(第5の実施形態:電子機器への応用例)
以下、第1、第2の実施形態に記載した液晶装置、および第3、第4の実施形態及び変形例で説明した液晶装置の製造方法で得られた液晶装置を備えた電子機器への応用例について図10を参照して説明する。図10(a)〜(c)は液晶装置を搭載した電子機器について説明するための概略図である。
【0071】
まず、図10(a)に、液晶装置70A(50)を備えたモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての液晶装置70A(50)と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。そして、図10(b)に、液晶装置70A(50)を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての液晶装置70A(50)を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、液晶装置70A(50)に表示される画面がスクロールされる。
【0072】
次に、上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えたプロジェクター(投写型表示装置)の構成について、図10(c)を参照して説明する。図10(c)は、上記実施形態の液晶装置を光変調装置として用いたプロジェクター700の要部を示す概略構成図である。プロジェクター700は、光源710、ダイクロイックミラー713、ダイクロイックミラー714、反射ミラー715、反射ミラー716、反射ミラー717、入射レンズ718、リレーレンズ719、出射レンズ720、液晶装置70A(50)、クロスダイクロイックプリズム725、投写レンズ726を含む。
【0073】
光源710はメタルハライド等のランプ711とランプの光を反射するリフレクター712とからなる。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー713は、光源710からの光束のうちの赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー717で反射されて、液晶装置70A(50)に入射される。
【0074】
一方、ダイクロイックミラー713で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー714によって反射され、液晶装置70A(50)に入射される。なお、青色光は第2のダイクロイックミラー714も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ718、リレーレンズ719、出射レンズ720を含むリレーレンズ系からなる導光手段721が設けられ、これを介して青色光が液晶装置70A(50)に入射される。
【0075】
各光変調装置により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム725に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ726によってスクリーン727上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0076】
本実施形態によれば、低電界強度で効率良く配向可能な液晶装置70A(50)を搭載したので、低い駆動電圧(即ち低電力)で表示が可能なプロジェクター700を得ることができる。なお、ここでは光の三原色(RGB)に対応したプロジェクター700について説明したが、例えば黄色や、白色を加えた4色、5色に対応した光学系を用いても良い。
【0077】
なお、液晶装置70A(50)が搭載される電子機器としては、図10に示すものの他、デジタルスチールカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のブルーレイレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0078】
50…液晶装置、50A…液晶装置、70A…液晶装置、70B…液晶装置、70C…液晶装置、70D…液晶装置、71…透明基板、72…走査線、73…共通配線、74…信号線、75…画素電極、75A…導電補助層、75B…寄生層、77A…スリット、77B…スリット、77C…スリット、78…共通電極、78A…共通電極、78B…共通電極、78C…共通電極、79…半導体層、80…透明基板、81…カラーフィルター層、82…偏光板、83…偏光板、90…蓄積容量部、91…配向層、92…配向層、93…ゲート絶縁層、94…コンタクトホール、95…平坦化層、96…有効電界領域、97…層間絶縁層、97A…層間絶縁層前駆体、98…導通部、99…凸部、100…導電層、700…プロジェクター、710…光源、711…ランプ、712…リフレクター、713…ダイクロイックミラー、714…ダイクロイックミラー、715…反射ミラー、717…反射ミラー、718…入射レンズ、719…リレーレンズ、720…出射レンズ、721…導光手段、725…クロスダイクロイックプリズム、726…投写レンズ、727…スクリーン、2000…パーソナルコンピューター、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2010…本体部、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1面に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置であって、前記基板は、
前記第1面に設けられた第1電極と、
前記第1電極の一部に重ねて設けられた透明な層間絶縁層を備える凸部と、
前記凸部の少なくとも一部と重ねて設けられ、前記第1電極と電気的に分離された透明な第2電極と、
を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、前記第1電極は、平面的に前記凸部と重なる領域の厚みと比べ、前記凸部と隣接する領域で厚みが大きいことを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶装置であって、前記第1電極の下層の層間絶縁層を貫通し、前記第1電極の電位を制御する制御電極に達するよう開口したコンタクトホール内の導通部の厚さは、平面的に前記凸部と重なる領域にある前記第1電極と比べ厚みが大きいことを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、前記凸部に隣接する前記第1電極が、前記層間絶縁層よりも薄い透明な絶縁層で覆われ、前記第2電極の一部が前記絶縁層を覆う位置に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
基板の第1面に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置であって、前記基板は、
前記第1面に設けられた透明な層間絶縁層と、
前記層間絶縁層と平面的に重なり、互いに電気的に分離された透明な第1電極と透明な第2電極とを備え、
前記層間絶縁層は、前記第1電極と前記第2電極との間で、少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極と平面的に重なる領域と比べ前記基板側に窪んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
基板の平面方向に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置の製造方法であって、
前記基板を構成する基板本体の第1面側に第1電極を形成する工程と、
前記第1面側に透明な層間絶縁層前駆体を形成する工程と、
前記第1面側にレジスト層を形成し、前記レジスト層をマスクとして前記層間絶縁層前駆体を前記基板本体側で幅が狭い形状にエッチングし、前記第1電極の一部を露出させる、あるいは露出前に当該エッチングを止めて、層間絶縁層を形成する工程と、
前記第1面側に前記エッチング量よりも薄い厚さを備え、前記層間絶縁層により分断された透明な第2電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項7】
基板の第1面に沿った方向の電界で階調制御を行う液晶装置の製造方法であって、
前記基板の前記第1面側に透明な層間絶縁層前駆体を形成する工程と、
前記第1面側にレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層をマスクとして前記層間絶縁層前駆体を前記基板本体側で幅が狭い形状にエッチングし、前記層間絶縁層前駆体を貫通させる、あるいは貫通前に当該エッチングを止めることで層間絶縁層を形成する工程と、
前記第1面側に前記エッチング量よりも薄い厚さを備え、前記層間絶縁層により分断された透明な第1電極および透明な第2電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の液晶装置の製造方法であって、前記層間絶縁層は単層構造であり、前記幅が狭い形状は、逆テーパー形状であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の液晶装置の製造方法であって、前記層間絶縁層は複層構造であり、前記幅が狭い形状は、ひさし形状であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、前記第2電極を形成した後、前記第2電極の層厚に対して1%以上20%以下のエッチング量を備えるライトエッチングを行うことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶装置、または請求項6から10のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法で形成された液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−39314(P2011−39314A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187079(P2009−187079)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】