説明

炭化珪素除去装置、及び炭化珪素の除去方法

【課題】本発明は、炭化珪素に含まれる炭素成分及び珪素成分を精度よく除去可能な炭化珪素除去装置、及び炭化珪素の除去方法を提供することを課題とする。
【解決手段】炭化珪素が付着した炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバー内に、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素に含まれる珪素成分を除去する第1のステップと、処理チャンバー内に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、炭化珪素に含まれる炭素成分を除去する第2のステップと、を含み、第1のステップと、第2のステップと、を交互に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素除去装置、及び炭化珪素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪素と炭素とからなる炭化珪素は、重要なセラミックス材料として多方面で使用されている。特に、半導体としての性質を有し、低消費電力、高温で動作する素子を製造できることから、例えば、自動車用の電子部品の基幹材料として用いられることが期待されている。
【0003】
上記炭化珪素を形成する際に使用する炭化珪素形成装置では、炭化珪素を形成後、炭化珪素形成装置の部材のうちの1つである処理容器(反応容器)の内壁にも炭化珪素が堆積し、該炭化珪素がパーティクルの発生源となる虞があった。
このため、定期的なガスクリーニングによって処理容器の内壁に堆積した炭化珪素(堆積層)を除去する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、炭化珪素形成装置の処理容器の内壁に付着した炭化珪素を三フッ化塩素ガスにより除去することが開示されている。
特許文献2には、上記炭素を選択的に除去する方法として、酸素含有ガスを用いて、炭化珪素に含まれる炭素を二酸化炭素又は一酸化炭素として除去することが開示されている。
特許文献3,4には、リモートプラズマを使用した成膜装置のクリーニング方法が開示されている。
【0005】
一方、クリーニングの終点を検出する方法としては、発光モニターを使用した方法がある。例えば、特許文献5には、クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比D/Iを求め、その時間変化から終点の検出を行なうことが開示されている。
【0006】
また、他のクリーニングの終点を検出する方法として、特許文献6には、堆積層の厚さを計測する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−129724号公報
【特許文献2】特開2009−117399号公報
【特許文献3】特開2002−280376号公報
【特許文献4】特許3693798号公報
【特許文献5】特開2006−86325号公報
【特許文献6】特表2008−536306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、炭化珪素に含まれる珪素(珪素成分)を効率よく除去することは可能であるが、炭素(炭素成分)が残留してしまうという問題があった。
【0009】
また、特許文献1,2に記載の方法を組み合わせて、炭化珪素の除去を行なったとしても炭化珪素に含まれる珪素と炭素とを同じように除去することは困難であった。
また、特許文献1,2に記載の方法では、炭化珪素の除去ができたか否かの判断ができない(言い換えれば、終点検知のシステムがない)ため、処理時間を長くして炭化珪素の除去処理を行なった場合、処理容器が破損する虞があった。
【0010】
また、炭化珪素形成装置の場合、1500℃程度の高温で成膜するため、装置部材の大部分が炭化珪素や炭素等の高耐熱材料が使用されている。そのため、炭化珪素形成装置内において、例えば、特許文献3,4に記載のリモートプラズマを用いて、炭化珪素が付着した部材のクリーニングを行なうと、炭化珪素が付着していない部材が損傷する虞があった。
【0011】
また、特許文献5,6に記載の方法では、炭化珪素に含まれる珪素と炭素とを別々に検出することは困難であり、炭化珪素の終点検出方法としては不向きであった。
【0012】
そこで、本発明は、炭化珪素形成装置の部材に堆積した炭化珪素に含まれる炭素成分及び珪素成分を精度よく除去可能な炭化珪素除去装置、及び炭化珪素の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、炭化珪素形成装置の部材に付着した炭化珪素を除去する炭化珪素除去装置であって、前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバーと、フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給手段と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、前記フッ素含有ガス供給手段、及び前記酸素含有ガス供給手段と接続され、前記フッ素含有ガス及び/又は前記酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化した前記フッ素含有ガス、及びプラズマ化した前記酸素含有ガスを前記処理チャンバー内に供給するプラズマ発生手段と、前記処理チャンバーの排ガスを分析する排ガス分析手段と、前記排ガス分析手段の分析結果に基づき、前記フッ素含有ガス供給手段、前記酸素含有ガス供給手段、及び前記プラズマ発生手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする炭化珪素除去装置が提供される。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、前記フッ素含有ガスが、フッ素、フッ化水素、ハイドロフルオロカーボンのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0015】
また、請求項3に係る発明によれば、前記酸素含有ガスが、酸素、オゾン、窒素酸化物、水蒸気のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0016】
また、請求項4に係る発明によれば、前記排ガス分析手段は、非分散式赤外線式分析計であることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0017】
また、請求項5に係る発明によれば、前記プラズマ発生手段は、プラズマ化した前記フッ素含有ガスと、プラズマ化した前記酸素含有ガスとを混合させることなく、別々に前記処理チャンバー内に供給することを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0018】
また、請求項6に係る発明によれば、前記プラズマ発生手段は、プラズマ化した前記フッ素含有ガスと、プラズマ化した前記酸素含有ガスとを混合させた混合ガスとして、前記処理チャンバー内に供給することを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0019】
また、請求項7に係る発明によれば、前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置が提供される。
【0020】
また、請求項8に係る発明によれば、炭化珪素形成装置の部材に付着した炭化珪素を除去する炭化珪素の除去方法であって、前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバー内に、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、前記炭化珪素に含まれる珪素を除去する第1のステップと、前記処理チャンバー内に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、前記炭化珪素に含まれる炭素を除去する第2のステップと、を含み、前記第1のステップと、前記第2のステップと、を交互に行なうことを特徴とする炭化珪素の除去方法が提供される。
【0021】
また、請求項9に係る発明によれば、前記排ガスのうち、四フッ化珪素の濃度の時間変化を測定し、前記四フッ化珪素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して前記四フッ化珪素の濃度がマイナスの変化となった段階で、前記第1及び第2のステップを終了させることを特徴とする請求項8記載の炭化珪素の除去方法が提供される。
【0022】
また、請求項10に係る発明によれば、前記排ガスのうち、二酸化炭素の濃度の時間変化を測定し、前記二酸化炭素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して前記二酸化炭素の濃度がマイナスの変化となった段階で、前記第1及び第2のステップを終了させることを特徴とする請求項8記載の炭化珪素の除去方法が提供される。
【0023】
また、請求項11に係る発明によれば、前記四フッ化珪素の濃度、又は前記二酸化炭素素の濃度が、予め設定した閾値以下になった段階で、前記第1及び第2のステップの処理を停止することを特徴とする請求項8ないし10もうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法が提供される。
【0024】
また、請求項12に係る発明によれば、前記四フッ化珪素の濃度、及び前記二酸化炭素の濃度の測定を、非分散式赤外線式分析計で行なうことを特徴とする請求項8ないし11のうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法が提供される。
【0025】
また、請求項13に係る発明によれば、前記第1及び第2のステップは、前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を加熱して行なうことを特徴とする請求項8ないし12のうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の炭化珪素除去装置によれば、炭化珪素が付着した炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバーと、フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給手段と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、フッ素含有ガス供給手段、及び酸素含有ガス供給手段と接続され、フッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを前記処理チャンバー内に供給するプラズマ発生手段と、を有することにより、プラズマ化したフッ素含有ガスにより炭化珪素に含まれる珪素を除去し、プラズマ化した酸素含有ガスにより炭化珪素に含まれる炭素を除去することが可能となるので、炭化珪素に含まれる炭素及び珪素を精度よく除去できる。
【0027】
また、炭化珪素形成装置とは、別の装置である炭化珪素除去装置内において、炭化珪素が付着した炭化珪素形成装置の部材のみをクリーニングすることが可能となるので、炭化珪素形成装置の部材のうち、炭化珪素が付着していない部材が該クリーニングにより損傷することを防止できる。
【0028】
また、処理チャンバーの排ガスを分析する排ガス分析手段と、排ガス分析手段の分析結果に基づき、フッ素含有ガス供給手段、酸素含有ガス供給手段、及プラズマ発生手段を制御する制御手段と、を有することにより、炭化珪素の除去が完了したか否かについて検知することが可能となるので、炭化珪素の除去に起因する炭化珪素形成装置の部材の損傷を抑制できる。
【0029】
また、本発明の炭化珪素の除去方法によれば、炭化珪素が付着した炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバー内に、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素に含まれる珪素を除去する第1のステップと、処理チャンバー内に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、炭化珪素に含まれる炭素を除去する第2のステップと、を含み、第1のステップと、第2のステップと、を交互に行なうことにより、炭化珪素に含まれる炭素及び珪素を精度よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の変形例に係る炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る炭化珪素の除去の様子を模式的に示す図である。
【図4】フッ素含有ガスのみによる炭化珪素の除去の様子を模式的に示す図である。
【図5】本実施の形態の炭化珪素の除去方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図6】第1及び第2のステップを交互に行なった際の、排ガス中の四フッ化珪素の濃度と二酸化炭素の濃度との経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の炭化珪素除去装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0032】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
図1を参照するに、本実施の形態の炭化珪素除去装置10は、処理チャンバー11と、図示していない加熱手段と、フッ素含有ガス供給手段13と、酸素含有ガス供給手段14と、プラズマ発生手段15と、真空ポンプ16と、ガス管17と、排ガス分析手段19と、制御手段21と、を有する。炭化珪素除去装置10は、炭化珪素を成膜する炭化珪素形成装置とは、別の装置である。
【0033】
処理チャンバー11は、図示していない炭化珪素(以下、「炭化珪素B」という)が付着した炭化珪素形成装置の部材(以下、「炭化珪素形成装置の部材A」という)を収容する。
この処理チャンバー11内に、プラズマ化されたフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスが炭化珪素形成装置の部材Aに付着した炭化珪素と接触するように供給されることで、炭化珪素形成装置の部材Aに付着した炭化珪素Bを除去する。
【0034】
このため、処理チャンバー11は、フッ素含有ガスに対して十分な耐性のある材料により構成されている。上記炭化珪素形成装置の部材Aとしては、例えば、炭化珪素形成装置の処理容器を例に挙げることができる。
【0035】
加熱手段(図示せず)は、処理チャンバー11内に収容された炭化珪素形成装置の部材Aを加熱するための加熱器(例えば、ヒーター)である。
炭化珪素は化学的に非常に安定しているため、単にプラズマ化したフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスと接触しただけでは十分な除去能力がない。
そこで、炭化珪素形成装置の部材Aを加熱する加熱手段(図示せず)を設けることで、プラズマ化したフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスと炭化珪素Bとの反応を促進させることができる。
【0036】
炭化珪素形成装置の部材Aの加熱温度としては、300℃以上が好ましい。なお、あまり高い温度で炭化珪素形成装置の部材Aを加熱すると、炭化珪素形成装置の部材Aが熱変化するため、好ましくない。
また、あまり高い温度で炭化珪素形成装置の部材Aを加熱すると、処理チャンバー11とフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガス(クリーニングガス)とが反応するため好ましくない。
【0037】
フッ素含有ガス供給手段13は、プラズマ発生手段15と接続されている。フッ素含有ガス供給手段13は、プラズマ発生手段15にフッ素含有ガスを供給する。フッ素含有ガスは、炭化珪素に含まれる珪素(珪素成分)を除去する。
フッ素含有ガスとしては、フッ素(F−GWP:0)、フッ化水素(HF−GWP:0)、ハイドロフルオロカーボン(CxHyFz(x,y,zは1以上の整数)、例えば、CHF−GWP−97)のうち、少なくとも1つを含むものを用いることができる。
【0038】
なお、フッ素含有ガスとしては、例えば、フルオロカーボン(CF−GWP:7,390,C−GWP:12,200)や六フッ化硫黄(SF−GWP:22,800)、三フッ化窒素(NF−GWP:17,200)、三フッ化塩素(ClF−GWP:0)、二フッ化カルボニル(COF−GWP:1)等を使用することも可能である、
しかしながら、これらのガスは温暖化係数(GWP)の大きなガスであるため、温暖化の観点からあまり好ましくない。GWP値の小さいFやHF等の低環境負荷ガスが好ましい。
【0039】
酸素含有ガス供給手段14は、プラズマ発生手段15と接続されている。酸素含有ガス供給手段14は、プラズマ発生手段15に酸素含有ガスを供給する。
酸素含有ガス供給手段14は、酸素含有ガスのみ、或いは、フッ素含有ガス供給手段13から供給されたフッ素含有ガスと混合された酸素含有ガスを供給可能な状態で、プラズマ発生手段15と接続されている。酸素含有ガスは、炭化珪素に含まれる炭素(炭素成分)を除去するガスである。
【0040】
酸素含有ガスとしては、酸素(O)、オゾン(O)、窒素酸化物(NxOy(x,yは1以上の整数))、水蒸気(HO)のうち、少なくとも1つのガスを含むガスを用いることができる。
【0041】
プラズマ発生手段15は、フッ素含有ガス供給手段13、及び酸素含有ガス供給手段14と接続されており、フッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスが供給される。プラズマ発生手段15は、上記フッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスを処理チャンバー11内に供給する。
【0042】
なお、クリーニングガスであるフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスを効率よくプラズマ化させるために、フッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスに放電ガスとして、Ar,He,Ne等の不活性ガスを添加してもよい。
【0043】
真空ポンプ16は、処理チャンバー11及びガス管17と接続されている。真空ポンプ16は、処理チャンバー11内のガスを排気して、ガス管17に排ガスを導出させる。ガス管17は、真空ポンプ16及び排ガス分析手段19と接続されている。
【0044】
排ガス分析手段19は、ガス管17と接続されている。排ガス分析手段19は、排ガスに含まれる四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度を測定するガス分析装置である。排ガス分析手段19は、制御手段21と接続されており、測定した四フッ化珪素の濃度及び/又は二酸化炭素の濃度を制御手段21に送信する。
【0045】
排ガス分析手段19として、例えば、非分散型赤外線式分析計を用いるとよい。このように、排ガス分析手段19として非分散型赤外線式分析計を用いることにより、簡便、かつ低コストで四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定することができる。
なお、排ガス分析手段19として、例えば、フーリエ変換型赤外分光計、紫外線吸収計、質量分析計、ガスクロマトグラフ等の分析計を用いてもよい。
【0046】
制御手段21は、加熱手段(図示せず)、フッ素含有ガス供給手段13、酸素含有ガス供給手段14、プラズマ発生手段15、及び排ガス分析手段19と電気的に接続されている。
【0047】
制御手段21は、炭化珪素除去装置10の制御全般を行なう。例えば、制御手段21は、排ガス分析手段19から送信された四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度に基づいて、プラズマ発生手段15、加熱手段(図示せず)、フッ素含有ガス供給手段13、及び酸素含有ガス供給手段14の制御を行なう。
制御手段21は、図示していない記憶部や演算部を有している。該記憶部には、予め入力された四フッ化珪素の濃度の閾値、または二酸化炭素の濃度の閾値が格納されている。
【0048】
また、演算部(図示せず)では、予め入力された四フッ化珪素の濃度の閾値、または二酸化炭素の濃度の閾値と、後述する第1及び第2のステップにおいて発生する四フッ化珪素の濃度、または二酸化炭素の濃度との比較が行なわれ、濃度が閾値以下になった際、第1及び第2のステップの処理を停止するように、処理チャンバー11、加熱手段(図示せず)、フッ素含有ガス供給手段13、及び酸素含有ガス供給手段14の制御を行なう。
【0049】
本実施の形態の炭化珪素除去装置によれば、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aを収容する処理チャンバー11と、フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給手段13と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段14と、フッ素含有ガス供給手段13、及び酸素含有ガス供給手段14と接続され、フッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス及び/又は酸素含有ガスを処理チャンバー11内に供給するプラズマ発生手段15と、を有することで、プラズマ化させたフッ素含有ガスにより炭化珪素Bに含まれる珪素を除去し、プラズマ化させた酸素含有ガスにより炭化珪素Bに含まれる炭素を除去することが可能となるので、炭化珪素に含まれる炭素及び珪素を精度よく除去できる。
【0050】
また、炭化珪素形成装置とは、別の装置である炭化珪素除去装置10内において、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aのみをクリーニングすることが可能となるので、炭化珪素形成装置の部材のうち、炭化珪素が付着していない部材が該クリーニングにより損傷することを防止できる。
【0051】
また、処理チャンバー11の排ガスを分析する排ガス分析手段19と、排ガス分析手段19の分析結果に基づき、フッ素含有ガス供給手段13、酸素含有ガス供給手段14、及びプラズマ発生手段15を制御する制御手段21と、を有することにより、炭化珪素形成装置の部材Aに炭化珪素Bが残存しているか否かをモニターしながら、炭化珪素Bに含まれる炭素及び珪素を除去することが可能となるので、炭化珪素形成装置の部材Aに炭化珪素Bが残存することを抑制できる。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態の変形例に係る炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。図2において、図1に示す本実施の形態の炭化珪素除去装置10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0053】
図2を参照するに、本実施の形態の変形例に係る炭化珪素除去装置25は、本実施の形態の炭化珪素除去装置10に設けられたプラズマ発生手段15を処理チャンバー11に設けた以外は、炭化珪素除去装置10と同様に構成される。
このような構成とされた本実施の形態の変形例に係る炭化珪素除去装置25は、本実施の形態の炭化珪素除去装置10と同様な効果を得ることができる。
【0054】
図3は、本発明の実施の形態に係る炭化珪素の除去の様子を模式的に示す図であり、図4は、フッ素含有ガスのみによる炭化珪素の除去の様子を模式的に示す図である。
本発明では、炭化珪素Bの除去を、炭化珪素Bに含まれる珪素と、炭化珪素Bに含まれる炭素と、に分けて除去を行なう。図3に示すように、炭化珪素Bに含まれる珪素成分は、フッ素含有ガスにより選択的に除去され、炭化珪素Bに含まれる炭素成分は、酸素含有ガスにより選択的に除去される。
【0055】
ここで、例えば、図4に示すように、フッ素含有ガスのみで炭化珪素Bの除去を行っていくと、珪素のみが除去されて炭素が残り、また、珪素も一様に除去することができない。
そこで、本発明では、一定の条件を設けて、フッ素含有ガスと、酸素含有ガスとを切り替えて炭化珪素Bの除去を行う。
【0056】
図5は、本実施の形態の炭化珪素の除去方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
次に、図1及び図5を参照して、本実施の形態の炭化珪素の除去方法について説明する。
始めに、STEP1では、図1に示す炭化珪素除去装置10の処理チャンバー11内に、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aを収容する。その後、処理は、STEP2へと続く。
【0057】
次いで、STEP2では、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aに、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素Bに含まれる珪素を選択的に除去する第1のステップを行なう。このとき、炭化珪素Bに含まれる珪素がフッ素含有ガスと反応して四フッ化珪素となり、脱離、除去される。
【0058】
また、第1のステップは、処理チャンバー11から排出される排ガスである四フッ化珪素の濃度の時間変化を排ガス分析手段19で測定し、四フッ化珪素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して四フッ化珪素の濃度がマイナスの変化となった段階で終了させる。その後、処理は、STEP3へと続く。
なお、四フッ化珪素の濃度が徐々に減少する理由としては、炭化珪素B表面の珪素が減少し、炭素が増加することで、その反応が妨げられるからである。
【0059】
次いで、STEP3では、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aに、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、炭化珪素Bに含まれる炭素を選択的に除去する第2のステップを行なう。このとき、炭化珪素Bに含まれる炭素は、酸素含有ガスと反応して二酸化炭素となり、脱離、除去される。
【0060】
また、第2のステップは、処理チャンバー11から排出される二酸化炭素の濃度の時間変化を排ガス分析手段19で測定し、二酸化炭素の濃度が最大値となった時点から5〜10測定時間区間で連続して二酸化炭素の濃度がマイナスの変化となった段階で終了させる。次いで、処理は、STEP4へと続く。
【0061】
なお、二酸化炭素の濃度が徐々に減少してくる理由としては、炭化珪素Bの表面の炭素が減少し、珪素が増加することで、その反応が妨げられるからである。
また、上記四フッ化珪素の濃度、及び二酸化炭素の濃度としては、移動平均等の算術処理を加えた値を用いるとよい。これにより、安定した濃度の挙動変化を掴むことが可能となる。
【0062】
次いで、STEP4では、第1及び第2のステップの処理後に、処理チャンバー11から排出される四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になったか否かの判定が行なわれる。
STEP4において、四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になったと肯定判定(Yesと判定)された場合、図5に示す処理は終了する。また、STEP4において、四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になっていない否定判定(Noと判定)された場合、処理は、STEP2に戻り、第1及び第2のステップの処理(STEP2,3の処理)が行なわれ、再度、STEP4へと処理が進む。
【0063】
つまり、STEP4において、肯定判定されるまで、第1及び第2のステップの処理を繰り返し行なうことで、炭化珪素Bに含まれる珪素の除去、及び炭化珪素Bに含まれる炭素の除去を繰り返し行う。言い換えれば、第1及び第2のステップを繰り返し行うことで、炭化珪素形成装置の部材Aに付着した炭化珪素Bの除去を行なう。
【0064】
ところで、炭化珪素Bの除去が終了に近づくと、第1のステップで発生する四フッ化珪素の濃度、及び第2のステップで発生する二酸化炭素の濃度が徐々に減少する。
そこで、上記STEP4で説明したように、四フッ化珪素の濃度が予め設定した閾値以下になった際に、第1及び第2のステップの処理を終了することで、炭化珪素形成装置の部材Aにダメージを与えることなく、炭化珪素形成装置の部材Aに付着した炭化珪素Bを精度よく除去することができる。
【0065】
また、四フッ化珪素の濃度の上記閾値(予め設定した閾値)としては、例えば、第1のステップで検出される四フッ化珪素の濃度の最大値に対して、四フッ化珪素の濃度が1/10以下の値を用いることができる。
また、四フッ化珪素の濃度の上記閾値は、予め、一定量の炭化珪素量と除去処理速度の関係(第1のステップの四フッ化珪素の濃度の最大値と、第1及び第2のステップを繰り返し行った際の四フッ化珪素の濃度の関係)を把握した上で、初期段階の炭化珪素の量と目標とする炭化珪素の除去処理量に応じて任意に設定することができる。
【0066】
また、上記四フッ化珪素の濃度の閾値は、予め図1に示す制御手段21(具体的には、記憶部(図示せず))に格納されており、制御手段21内において、排ガス分析手段19が検出する四フッ化珪素の濃度と、上記四フッ化珪素の濃度の閾値との比較が行なわれ、この結果に基づいて、制御手段21は処理チャンバー11、フッ素含有ガス供給手段13、酸素含有ガス供給手段14、及びプラズマ発生手段15の制御を行なう。
【0067】
なお、図5では、STEP4において、四フッ化珪素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なう場合を例に挙げて説明したが、STEP4において、二酸化炭素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なってもよい。この場合、STEP4において、四フッ化珪素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なう場合と同様な効果を得ることができる。
【0068】
また、上記四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定する排ガス分析手段19としては、非分散式赤外線式分析計を用いるとよい。
このように、四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定する排ガス分析手段19として非分散式赤外線式分析計を用いることで、1つのデータの採取に要する時間が、短い場合には数秒、長くても数十秒となるため、データの採取時間が短い場合には10測定時間区間、データの採取時間が長い場合には5測定区間の応答時間を設けることで効率よく炭化珪素Bの除去処理を行なうことができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、炭化珪素Bから発生する成分を四フッ化珪素と二酸化炭素とに特定したが、これは、1つには、四フッ化珪素及び二酸化炭素が、その発生物の大部分を占めるからである。
また、もう1つの理由としては、四フッ化珪素及び二酸化炭素が、主に発生するための除去反応条件が、フッ素含有ガス成分の濃度が低く、加熱温度も低く設定でき、かつ、本実施の形態の炭化珪素除去装置10で炭化珪素Bの除去を行なうことで、良好な除去性能を得ることができるからである。
【0070】
但し、例えば、炭化珪素Bとフッ素含有ガスとの反応により、四フッ化炭素も相当量発生する場合は、炭化珪素起因の炭素として、二酸化炭素に四フッ化珪素も加えて終点検出、及び終点検出の制御機構を調整することで、より高性能の炭化珪素除去装置を得ることができると共に、より高精度の炭化珪素Bの除去を行なうことができる。
【0071】
本実施の形態の炭化珪素の除去方法によれば、炭化珪素Bが付着した炭化珪素形成装置の部材Aを収容する処理チャンバー11内に、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素Bに含まれる珪素を除去する第1のステップと、処理チャンバー11内に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、炭化珪素Bに含まれる炭素を除去する第2のステップと、を交互に行なうことにより、炭化珪素Bに含まれる炭素及び珪素を精度よく除去できる。
【0072】
また、先に説明した本実施の形態の変形例に係る炭化珪素除去装置25を用いて炭化珪素Bの除去を行なう場合、図5で説明した本実施の形態の炭化珪素の除去方法と同様な手法により、炭化珪素Bの除去を行なうことができる。
さらに、図1及び図2に示す炭化珪素除去装置10,25を炭化珪素形成装置(図示せず)に適用してもよい。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
(実施例1)
図1に示す炭化珪素除去装置10を用いて、炭化珪素の除去試験を行った。具体的には、処理チャンバー11内に炭化珪素基板(縦10mm×横10mm×厚さ0.75mm)を配置し、該炭化珪素基板を400℃の温度に加熱保持した。
【0075】
第1のステップでは、フッ素(100sccm)にアルゴン(500sccm)を添加したガスをクリーニングガス(フッ素含有ガス)として使用した。また、第1のステップでは、高周波印加電力を1000W(2.56GHz)、処理チャンバー11内の圧力を2torr、処理時間を3分間とした。
【0076】
第2のステップでは、酸素(700sccm)に、フッ素(100sccm)及びアルゴン(100sccm)を添加したガスをクリーニングガス(酸素含有ガス)として使用した。また、第2のステップでは、高周波印加電力を1000W(2.56GHz)、処理チャンバー11内の圧力を1torr、処理時間を3分間とした。
【0077】
第1及び第2のステップをそれぞれ一回ずつ行い、第1及び第2のステップのそれぞれのプロセス中における四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度と、各ステップ終了後の膜厚の変化量(実測値)と、各ステップ終了後の膜厚の変化量(排ガスの濃度から算出した計測値)と、膜厚変化比(膜厚変化量の実測値/膜厚変化量の計算値)と、を取得した。
【0078】
表1に、実施例1の第1のステップの結果を示す。また、表2に、実施例1の第2のステップの結果を示す。なお、膜厚の変化量の実測には、レーザマイクロスコープを使用した。
【0079】
【表1】

【0080】
(参考例1)
上記実施例1で使用した炭化珪素基板の替わりに、珪素基板(縦10mm×横10mm×厚さ0.75mm)、及び炭素基板(縦10mm×横10mm×厚さ0.75mm)を用いて、実施例1と同様な実験を行い、データを取得した。
参考例1(珪素基板及び炭素基板)の第1のステップの処理を行なった際のデータを表1に示す。また、参考例1(珪素基板及び炭素基板)の第2のステップの処理を行なった際のデータを表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(表1及び表2の結果について)
表1及び表2を参照するに、珪素(Si)は、第1のステップで使用するフッ素含有ガス(クリーニングガス)で多く除去され、また、炭素(C)は第2のステップで使用する酸素含有ガス(クリーニングガス)で多く除去されることが確認できた。
【0083】
また、表1及び表2を参照するに、炭化珪素(SiC)は、第1及び第2のステップのどちらでも除去されたが、排ガス濃度から推定した膜厚には至っていなかった。
これは、第1のステップの場合、炭化珪素基板の表面の珪素だけではなく、炭化珪素基板の表面よりも内側(内部)の珪素とも反応して四フッ化珪素となって脱離するが、炭化珪素の表面の炭素は脱離せずにそのまま残留することに起因すると推測される。
【0084】
実際に、例えば、第1のステップ後の珪素と炭素の原子数比を、炭化珪素基板の表面、中間、裏面上で蛍光X線分析により測定したところ、表面が(Si:C=40.7:59.3)、中間が(Si:C=37.0:63.0)、裏面が(Si:C=48.6:51.4)であった。このことから、珪素の脱離は、内部まで至っているが、表層は炭素が残留していることが確認できた。これが、膜厚を厚くしている理由と考えられる。
【0085】
(実施例2)
先に説明した実施例1及び参考例1の結果から、炭化珪素を効率良く除去するためには、珪素を除去する第1のステップと、炭素を除去する第2のステップと、を組み合わせていく必要があることが確認できた。
【0086】
そこで、実施例2では、実施例1で説明した条件を用いて、第1のステップと、第2のステップと、を交互に2回ずつ実施し、第1及び第2のステップのプロセス中における四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度を測定すると共に、第1及び第2のステップ終了後の膜厚の変化量を求めた。この結果を、表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
(参考例2)
参考例2として、炭化珪素基板を用いて第1のステップ(実施例1と同じ条件)のみを4回行なって、第1のステップのプロセス中における四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度を測定すると共に、第1のステップが4回終了した後の膜厚の変化量を求めた。この結果を、表4に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
また、炭化珪素基板を用いて第2のステップのみを4回行なって、第2のステップ(実施例1と同じ条件)のプロセス中における四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度を測定すると共に、第2のステップが4回終了した後の膜厚の変化量を求めた。この結果を、表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
(表3〜表5の結果について)
表3〜表5を参照するに、第1のステップと第2のステップとを交互に組み合わせた場合が最も多く炭化珪素が除去できることが確認できた。
また、上記除去処理後の炭化珪素基板の表面、中間、裏面に存在する珪素と炭素との原子数比を測定したところ、表面が(Si:C=48.1:51.9)、中間が(Si:C=48.5:51.5)、裏面が(Si:C=49.6:50.4)であった。この結果から、炭化珪素に含まれる炭素及び珪素を精度よく除去できたことが確認できた。
【0093】
(実施例3)
第1のステップ(実施例1と同じ条件)と第2のステップ(実施例1と同じ条件)とを交互に行い、排ガス中炭化珪素が75μm程度堆積した部材を90%以上(炭化珪素の厚さが7.5μm以下)除去する処理を行ない、排ガス中に含まれる四フッ化珪素の濃度及び二酸化炭素の濃度を測定した。この結果を図6に示す。
【0094】
図6は、第1及び第2のステップを交互に行なった際の、排ガス中の四フッ化珪素の濃度と二酸化炭素の濃度との経時変化を示す図である。
ここでの閾値としては、これとは別の評価において取得された二酸化炭素の排ガス濃度が10ppm以下という値を採用した。この閾値は、炭化珪素の膜厚が10μm程度堆積した部材を第2のステップで除去処理した場合の二酸化炭素の濃度の挙動から決定した値である。
【0095】
図6に示すように、第1のステップの3回目まで通常通り処理を行い、第2のステップの3回目において、このステップにおける二酸化炭素の濃度の最大値58ppmを検出してから閾値(二酸化炭素の濃度10ppm)以下に到達した後、処理を終了した。
処理終了後に、炭化珪素の実際の膜厚を測定した結果、7.1μmであった。また、この最表面の炭化珪素の珪素と炭素の原子数比を蛍光X線分析により測定したところ、表面は(Si:C=47.9:52.1)であり、炭化珪素を精度よく除去できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、炭化珪素に含まれる炭素成分及び珪素成分を精度よく除去可能な炭化珪素除去装置、及び炭化珪素の除去方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10,25…炭化珪素除去装置、11…処理チャンバー、13…フッ素含有ガス供給手段、14…酸素含有ガス供給手段、15…プラズマ発生手段、16…真空ポンプ、17…ガス管、19…排ガス分析手段、21…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素形成装置の部材に付着した炭化珪素を除去する炭化珪素除去装置であって、
前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバーと、
フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給手段と、
酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、
前記フッ素含有ガス供給手段、及び前記酸素含有ガス供給手段と接続され、前記フッ素含有ガス及び/又は前記酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化した前記フッ素含有ガス、及びプラズマ化した前記酸素含有ガスを前記処理チャンバー内に供給するプラズマ発生手段と、
前記処理チャンバーの排ガスを分析する排ガス分析手段と、
前記排ガス分析手段の分析結果に基づき、前記フッ素含有ガス供給手段、前記酸素含有ガス供給手段、及び前記プラズマ発生手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする炭化珪素除去装置。
【請求項2】
前記フッ素含有ガスが、フッ素、フッ化水素、ハイドロフルオロカーボンのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の炭化珪素除去装置。
【請求項3】
前記酸素含有ガスが、酸素、オゾン、窒素酸化物、水蒸気のうち、少なくとも1つのガスを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の炭化珪素除去装置。
【請求項4】
前記排ガス分析手段は、非分散式赤外線式分析計であることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置。
【請求項5】
前記プラズマ発生手段は、プラズマ化した前記フッ素含有ガスと、プラズマ化した前記酸素含有ガスとを混合させることなく、別々に前記処理チャンバー内に供給することを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生手段は、プラズマ化した前記フッ素含有ガスと、プラズマ化した前記酸素含有ガスとを混合させた混合ガスとして、前記処理チャンバー内に供給することを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置。
【請求項7】
前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載の炭化珪素除去装置。
【請求項8】
炭化珪素形成装置の部材に付着した炭化珪素を除去する炭化珪素の除去方法であって、
前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を収容する処理チャンバー内に、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、前記炭化珪素に含まれる珪素を除去する第1のステップと、
前記処理チャンバー内に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、前記炭化珪素に含まれる炭素を除去する第2のステップと、を含み、
前記第1のステップと、前記第2のステップと、を交互に行なうことを特徴とする炭化珪素の除去方法。
【請求項9】
前記排ガスのうち、四フッ化珪素の濃度の時間変化を測定し、前記四フッ化珪素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して前記四フッ化珪素の濃度がマイナスの変化となった段階で、前記第1及び第2のステップを終了させることを特徴とする請求項8記載の炭化珪素の除去方法。
【請求項10】
前記排ガスのうち、二酸化炭素の濃度の時間変化を測定し、前記二酸化炭素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して前記二酸化炭素の濃度がマイナスの変化となった段階で、前記第1及び第2のステップを終了させることを特徴とする請求項8記載の炭化珪素の除去方法。
【請求項11】
前記四フッ化珪素の濃度、又は前記二酸化炭素素の濃度が、予め設定した閾値以下になった段階で、前記第1及び第2のステップの処理を停止することを特徴とする請求項8ないし10もうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法。
【請求項12】
前記四フッ化珪素の濃度、及び前記二酸化炭素の濃度の測定を、非分散式赤外線式分析計で行なうことを特徴とする請求項8ないし11のうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のステップは、前記炭化珪素が付着した前記炭化珪素形成装置の部材を加熱して行なうことを特徴とする請求項8ないし12のうち、いずれか1項記載の炭化珪素の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182373(P2012−182373A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45239(P2011−45239)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】