説明

無線ICタグ、タグ情報遠隔取得システム、地図配信システム

【課題】予め現在位置を記憶させることなく、自身の設置位置を外部に送信することができるICタグを提供する。
【解決手段】ICチップ23とループアンテナ21とを備え、ICチップ23に記憶されたタグ情報をループアンテナ21から外部に送信するICタグ20において、自身の現在位置を検出するGPSセンサ22を備え、そのGPSセンサ22によって検出された現在位置を表す現在位置情報をタグ情報とともにループアンテナ21から外部に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグ(以下、単にICタグという)と、そのICタグに記憶されているタグ情報を遠隔的に取得するタグ情報遠隔取得システムと、そのタグ情報遠隔取得システムを利用する地図配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップとアンテナとを備え、ICチップに記憶された情報をアンテナから外部に送信するICタグが広く知られている。ICタグには、いろいろな利用方法が提案されている。たとえば、特許文献1には、ICタグを用いて自車の駐車位置情報を遠隔より取得できるシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のシステムは、設置位置情報が予め記憶されたICタグを駐車位置路面に埋め込んでおき、また、車両にICタグ読取装置を設けている。そして、ユーザは携帯電話から駐車位置情報取得要求信号を送信する。この信号を車載端末装置が受信すると、車載端末装置は、ICタグ読取装置を用いて、自車が駐車している駐車位置の路面に埋め込まれたICタグから、そのICタグに記憶されている設置位置情報を読み取る。そして、読み取った設置位置情報を車載端末装置から携帯電話網を介して上記携帯電話へ返信している。
【特許文献1】特開2004−192513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムにおいては、設置位置情報を取得したい駐車位置にはすべてICタグを埋め込む必要があるが、それだけではなく、駐車位置毎にそれぞれ異なる設置位置情報を予めICタグに記憶させておかなければならない。そのため、設置位置情報を取得したい駐車位置が膨大になると、各ICタグに異なる設置位置情報を記憶させる手間が膨大となってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予め現在位置を記憶させることなく、自身の設置位置を外部に送信することができるICタグ、そのICタグからのタグ情報を遠隔的に取得するタグ情報遠隔取得システム、そのタグ情報遠隔取得システムを利用する地図配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、ICチップとアンテナとを備え、そのICチップに記憶されたタグ情報をアンテナから外部に送信するICタグにおいて、 自身の現在位置を検出するGPSセンサを備え、そのGPSセンサによって検出された現在位置を表す現在位置情報を前記アンテナから外部に送信することを特徴とする。
【0007】
このように、ICタグにGPSセンサを備えて、GPSセンサによって現在位置を検出し、その検出した現在位置を表す現在位置情報をアンテナから外部に送信するようにすれば、ICタグの設置位置を都度ICチップに記憶させなくても、ICタグの位置を外部に送信することができる。
【0008】
請求項2は、請求項1のICタグであって、外部からの電波を前記アンテナで受信して、その受信した電波から送信電力を発生させるパッシブ型であることを特徴とする。パッシブ型とすることで、外部へ情報を送信するための電源を備える必要がなくなるので、ICタグを小型化できる。また、電池寿命を考慮する必要もなくなる。
【0009】
GPSセンサも、外部から送信される電波によって発生させた電力によって駆動することとしてもよいが、請求項3のように、GPSセンサを駆動させるための電池を備えることも好ましい。このようにすれば、事前にGPSセンサを動作させて、現在位置を事前に検出しておくことができる。また、外部からの電波が弱いために発生する電力が弱すぎて、GPSセンサを動作させることができない事態となることを抑制できる。
【0010】
また、その電池として、請求項4のように、太陽電池を用いることができる。太陽電池を用いることにより、ICタグの寿命が電池寿命の制約を受けないというパッシブ型ICタグのメリットを維持できる。
【0011】
また、請求項5のように、GPSセンサは、複数回の位置検出動作に基づいて現在位置を決定する固定位置検出用のGPSセンサであることが好ましい。この固定位置検出用のGPSセンサを用いることにより、正確な現在位置を検出することができるので、正確なICタグの位置を外部に送信することができる。
【0012】
請求項6以下はICタグを利用したタグ情報遠隔取得システムの発明である。請求項6のタグ情報遠隔取得システムは、請求項1〜5のいずれかのICタグと、移動体に設けられ、前記現在位置情報および前記タグ情報を前記ICタグから送信させるための送信指示信号を前記ICタグに送信する情報送信指示装置と、前記ICタグから送信された情報を公衆通信回線を介して受信する受信装置とを含むことを特徴とする。
【0013】
このタグ情報遠隔取得システムはたとえば次のように利用される。すなわち、ICタグを任意の物体に固定するとともに、受信装置を地図会社に設置し、タグ情報としてICタグが固定される物体の情報を記憶させておく。このようにすることにより、地図会社に設置された受信装置は、ICタグが固定された物体の情報とその物体の現在位置情報とを遠隔的に取得できる。そのため、地図会社は、ICタグが固定された物体の情報を迅速に地図に反映させることができる。
【0014】
このタグ情報遠隔取得システムに用いるICタグはアクティブ型でもパッシブ型でもよいが、パッシブ型を用いて請求項7のようにシステムを構成することが好ましい。
【0015】
その請求項7記載の発明は、請求項6において、前記ICタグはパッシブ型であり、前記送信指示信号に応じて前記ICタグから送信される前記現在位置情報および前記タグ情報を取得して、その取得した現在位置情報およびタグ情報を公衆通信回線を介して送信する情報中継装置をさらに備え、その情報中継装置および前記情報送信指示装置が同一の移動体に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この請求項7記載のシステムによれば、パッシブ型のICタグを用いているのでICタグを小型且つ安価にすることができる。また、情報送信指示装置および情報中継装置を移動体に設けているので、固定物にそれら情報送信指示装置および情報中継装置を設ける場合よりもそれらの装置の設置数を少なくすることができる。
【0017】
請求項8は、上記タグ情報遠隔取得システムを地図更新に利用するものである。すなわち、請求項8は、前記情報中継装置は、前記現在位置情報およびタグ情報に加えて、前記情報中継装置が設けられている移動体の情報を公衆通信回線を介して地図配信会社に設けられた受信装置へ送信する事を特徴とする。
【0018】
この請求項8のタグ情報遠隔取得システムは請求項9のように地図配信システムに利用できる。その請求項9は、請求項8において、前記受信装置が受信した現在位置情報、タグ情報、移動体の情報から、その現在位置情報が示す位置の施設の利用度を算出して地図データの更新に利用する地図配信システムである。
【0019】
また、請求項10記載のように、前記情報中継装置および前記情報送信指示装置が設けられている移動体は車両であることが好ましい。車両は移動範囲が広いので、車両にそれらの装置を設けることにより、それらの装置の設置数を特に少なくすることができる。
【0020】
上記タグ情報遠隔取得システムにおいて、ICタグは、たとえば、請求項11乃至15の物体に固定等される。請求項11は、前記ICタグが建物またはその建物の駐車場に設置されることを特徴とする。この場合、ICタグのICチップ内に、タグ情報としてそのICタグを設置する建物の情報だけを予め記憶しておくだけで、情報送信指示装置からの情報送信指示信号をICタグが受信すると、ICタグからタグ情報およびICタグが設置されている現在位置情報が送信される。そして、公衆通信回線を介してそのタグ情報および現在位置情報が受信装置によって受信されることになる。従って、受信装置を地図会社に設置しておけば、ICタグが設置された建物の位置および建物の情報を地図会社において迅速に知ることができる。その結果、建物の情報を地図に迅速に反映することが可能となる。
【0021】
ICタグが設置される建物は、請求項12記載のように、店舗とすることができる。この場合、タグ情報として店舗の情報を記憶しておけば、店舗の情報を地図に迅速に反映することが可能となる。
【0022】
また、請求項13のように、ICタグが設置される店舗が移動店舗であってもよい。移動店舗の場合、ICチップ内にタグ情報として予め店舗の位置を記憶させておくことができない。そのため、地図に移動店舗の位置を反映させることが困難であるが、本システムによれば、移動店舗がどこに位置していても、ICタグに備えられているGPSセンサによって移動店舗の位置を検出することができ、且つ、検出された位置が受信装置に受信される。そのため、移動店舗の情報を迅速に地図に反映することが可能となる。
【0023】
また、請求項14のように、前記ICタグが道路工事の際に道路に使用される設置物に固定されてもよい。道路工事はある期間のみで行われるため、従来の技術では、道路工事を地図に反映させることも困難であるが、本システムを用いれば、地図会社は道路工事の情報を迅速に知ることができるので、道路工事の情報を地図に反映することもできる。
【0024】
また、請求項15のように、前記ICタグが人の衣類または携帯物に固定されてもよい。このようにすれば、人の位置を迅速に地図に反映することができる。従って、たとえば、子供や老人の衣類や携帯物に固定することによって、その子供や老人の位置をリアルタイムで把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用されたタグ情報遠隔取得システム1の構成を示す図である。本実施形態のタグ情報遠隔取得システム1は、ICタグ20と、車載ナビゲーション装置(以下、単にナビゲーション装置という)30と、地図会社40に設置されたコンピュータ41とを備えて構成されている。
【0026】
ICタグ20は、ループアンテナ21と、GPSセンサ22と、ICチップ23と、太陽電池24とを備えており、それらがタグ(荷札)状の筐体内に収容されている。ループアンテナ21は外部から電波を使って電磁誘導によって電力を発生させる。そして、その電力をGPSセンサ22およびICチップ23に供給する。また、ループアンテナ21は、GPSセンサ22から供給される現在位置情報およびICチップ23から供給されるタグ情報を外部に無線送信する。
【0027】
GPSセンサ22は、太陽電池24からも電力が供給されるようになっており、その電力によって位置検出作動を実行して自身の位置を検出し、検出した位置をEEPROM(図示せず)などの書き換え可能な不揮発性メモリに記憶しておく。上記EEPROMは、GPSセンサ22内に内蔵されていてもよいし、ICタグ20内に別途設けられていてもよい。本実施形態のGPSセンサ22は固定位置検出用のセンサであり、複数回の位置測定結果の平均値を最終的な現在位置として記憶する。さらに、GPSセンサ22は、ループアンテナ21から電力が供給されたときには、情報出力作動を実行して、予め記憶しておいた現在位置を表す現在位置情報をループアンテナ21へ出力する。
【0028】
ICチップ23にはタグ情報が記憶されており、ループアンテナ21から電力が供給されると、タグ情報をループアンテナ21へ出力する。このタグ情報は、地図会社40内または他の施設に設置された図示しない書き込み装置によって予め記憶させることができる。太陽電池24は、太陽光によって発電した電力をGPSセンサ22に供給する。
【0029】
このICタグ20は、ユーザ50の希望に応じたタグ情報を予め記憶させた上で、地図販売会社がユーザ50に販売する。ユーザ50は、購入したICタグ20を種々の施設等に貼り付ける。
【0030】
図2は、上記ICタグ20の取り付け例を示す図である。(A)はICタグ20が店舗の駐車場の車止め60に貼り付けられた例であり、(B)はICタグ20が道路工事の際に使用されるラバーコーン61に貼り付けられた例であり、(C)はICタグ20が移動店舗62に貼り付けられた例であり、(D)は個人宅の門柱63に貼り付けられた例である。これらの貼り付け例の利用方法は後述する。
【0031】
図1に戻って、ナビゲーション装置30は、制御装置31、送受信装置32、メモリ33を備えており、これらの装置等と図示しない位置検出器、入力装置、表示装置などによって、経路案内機能など、通常のナビゲーション装置としての機能を実行する。
【0032】
さらに、このナビゲーション装置30はリーダ34を備えている。リーダ34は所定周期で外部にラジオ波の電波を出力している。ICタグ20がリーダ34の近傍に位置する場合、ループアンテナ21にて電力が発生し、その電力によってICタグ20はリーダ34との通信作動を開始する。通信作動においては、まず、通信確立のための信号の授受が行われ、その後、リーダ34からICタグ20へ送信指示信号が送信される。従って、リーダ34は、請求項の情報送信指示装置として機能している。
【0033】
この送信指示信号を受信すると、ICタグ20は、タグ情報および現在位置情報をリーダ34へ送信する。リーダ34は、その現在位置情報およびタグ情報を受信すると、それらの情報を制御装置31へ出力する。制御装置31は、その現在位置情報およびタグ情報をメモリ33に記憶するとともに、その現在位置情報およびタグ情報を送受信装置32からインターネット回線70を介して地図会社40に設置されたコンピュータ41へ送信する。このように、ICタグ20からの情報がナビゲーション装置30によって中継され、地図会社40のコンピュータ41がその情報を受信することから、ナビゲーション装置30は請求項の情報中継装置として機能し、地図会社40のコンピュータ41は請求項の受信装置として機能する。
【0034】
図3は、ICタグ20とナビゲーション装置30と地図会社40のコンピュータ41との間の情報の送受信を示す図である。ナビゲーション装置30を搭載した車両が店舗の駐車場等に貼り付けられたICタグ20に接近すると、ナビゲーション装置30のリーダ34から逐次送信されている電波によってループアンテナ21に電力が発生する。これによって図3に示す一連の処理が開始される。
【0035】
ループアンテナ21に発生した電力はICチップ23に供給される。この電力によってICチップ23は予め記憶されているタグ情報のうち、属性情報をループアンテナ21へ出力する。この属性情報はループアンテナ21からナビゲーション装置30のリーダ34へ送信される(S1)。
【0036】
ナビゲーション装置30では、リーダ34によって、ICタグ20から送信される属性情報を受信する(S2)。そして、リーダ34から制御装置31へその属性情報が送信され、その属性情報が予め登録された属性情報であるか否かが判定される(S3)。属性情報が予め登録されたものでない場合には処理を終了する。一方、属性情報が予め登録されたものである場合には、制御装置31は、リーダ34に、ICタグ20へ向けて送信指示信号を送信させる(S4)。
【0037】
その送信指示信号を受信したICタグ20は、現在位置情報とタグ情報とをリーダ34に送信する(S5)。リーダ34はそれら現在位置情報とタグ情報とを受信して、制御装置31へ出力する(S6)。そして、ICタグ20へ取得終了信号を送信する(S7)。これによってICタグ20とナビゲーション装置30との間の通信は終了する。
【0038】
ナビゲーション装置30は、ICタグ20から取得した現在位置情報とタグ情報とに加えて、ナビゲーション装置30のID情報を、送受信装置32からインターネット回線70を介して地図会社40に設置されたコンピュータ41へ送信する。地図会社40のコンピュータ41はナビゲーション装置30から送信されるそれらの情報を受信する(S9)。
【0039】
このようにして、地図会社40のコンピュータ41には、ナビゲーション装置30を搭載した車両が、そのナビゲーション装置30とICタグ20とが通信可能なほどに接近する度に、ICタグ20の現在位置情報、タグ情報、ナビゲーション装置30のID情報が送信される。地図会社40では、このようにして送信されてくる情報に基づいて、逐次、地図を更新する。
【0040】
次に、図2(A)〜(D)に示した貼り付け例の場合の地図更新態様を説明する。図2(A)の場合には、タグ情報として店舗の情報を予め記憶しておくことになる。店舗の駐車場にナビゲーション装置30を搭載した車両が駐車すると、ナビゲーション装置30によって、車止め60に貼り付けられたICタグ20からタグ情報および現在位置情報が読み取られる。そして、これらの情報と、ナビゲーション装置30のユーザがその店舗を利用したことを意味する情報としてのナビゲーション装置30のID情報とが、地図会社40のコンピュータ41に送信される。なお、ナビゲーション装置30を搭載した車両が車止め60の近くを通過しただけで、上記情報が地図会社40のコンピュータ41に送信されてしまうことを防止するために、ナビゲーション装置30を搭載した車両が車止め60が設けられた位置に駐車した場合にのみ、上記情報が送信されることが好ましい。駐車したかどうかは、たとえば、イグニッションスイッチのオフ時間に基づく判断等、公知の種々の手法を用いることができる。
【0041】
地図会社40では、ナビゲーション装置30から送信される店舗の情報および現在位置情報を用いて、その店舗の名称および位置が分かることから、その店舗を地図に追加することができる。また、店舗の情報として、店舗の詳細情報(たとえば、店舗の種別、取り扱い商品、営業時間等)を記憶させておけば、その店舗の詳細情報を地図に追加することもできる。また、近隣に類似した店舗がある場合、その類似した店舗と区別するための情報(たとえば、店舗の外観特徴など)を含ませておくことにより、ユーザに、その類似した店舗と自店とを明確に区別してもらうことが可能となる。
【0042】
さらに、その店舗の情報が送信されてくる回数から、地図会社40において、その店舗の繁盛状況(利用頻度)を知ることも可能となるので、店舗の利用頻度情報を地図に加えることもできる。そして、場合によっては、利用頻度が低い店舗を地図から削除することも可能となる。このようにすることにより、閉店した店舗を迅速に地図から削除することができる。また、開店日の情報から地図に新店舗としてのアイコン表示を行う事もできる。
さらに、開店日から一定期間経過しても利用頻度が低い店舗を削除の対象とするなど、地図から店舗を削除する条件を追加することもできる。
【0043】
このようにして店舗の情報を反映させて地図を更新する頻度は、たとえば、3ヶ月毎とすることができ、更新した最新の地図は光ディスク80(図1参照)などの記憶媒体に格納して販売することができる。また、その最新の地図を、インターネット回線70を利用してナビゲーション装置30に配信してもよい。その最新の地図を取得したユーザは、その地図から、店舗の利用頻度を知ることも可能となる。
【0044】
また、ナビゲーション装置30がタグ情報を記憶するように設定されている場合には、そのナビゲーション装置30を利用するユーザは、前に利用した店舗の情報をリスト表示させることも可能となる。
【0045】
次に図2(B)の場合の地図更新態様を説明する。図2(B)の場合には、タグ情報として、道路工事中であることを予め記憶しておくことになる。加えて、工事会社名、問い合わせ先、工事内容、工事期間などの工事の詳細情報を記憶させておいてもよい。このようなタグ情報を予め記憶させておいたICタグ20をラバーコーン61に貼り付けておき、そのラバーコーン61を道路工事現場に設置する。
【0046】
設置後、ICタグ20は、GPSセンサ22によって現在位置すなわち設置位置を検出することになる。従って、道路工事がどこで行われているかを予め書き込んでおく必要がないので、場所を変えて同種の道路工事を行う場合に特に便利である。
【0047】
GPSセンサ22によって現在位置を検出した後、ナビゲーション装置30を搭載した車両が道路工事現場に設置されたラバーコーン61の近くを通過すると、そのナビゲーション装置30によって、ICタグ20からタグ情報(すなわち道路工事中であることなど)および現在位置情報が読み取られる。そして、これらの情報とナビゲーション装置30のID情報とが、地図会社40のコンピュータ41に送信される。
【0048】
地図会社40では、ナビゲーション装置30から送信される道路工事に関する情報および現在位置情報を用いて道路工事の場所が分かることから、道路工事中であることを地図に反映することができる。
【0049】
このようにして道路工事中であることを反映させて地図を更新する更新間隔は、たとえば8時間間隔や2時間間隔など、比較的短いことが好ましい。そして、更新した最新の地図を、インターネット回線70を利用して多数のナビゲーション装置30に配信することにより、そのナビゲーション装置30を利用しているユーザは、道路工事の情報を迅速に知ることができる。従って、道路工事が行われている道路を避けることも可能となる。そして、多くのユーザが道路工事が行われている道路を避けることにより、道路工事による交通渋滞も緩和することができる。
【0050】
次に図2(C)の場合の地図更新態様を説明する。図2(C)の場合には、移動店舗62の名称をタグ情報として予め記憶させておくことになる。加えて、予定ルートを予め記憶させておいてもよい。また、固定店舗の場合と同様に、店舗の詳細情報を記憶させておいてもよい。上記タグ情報が記憶されたICタグ20を移動店舗62に貼り付けておけば、GPSセンサ22によって、逐次、移動店舗62の現在位置が検出されることになる。
【0051】
そして、ナビゲーション装置30を搭載した車両が移動店舗62の近くを通過すると、そのナビゲーション装置30によって、ICタグ20からタグ情報(すなわち移動店舗62の名称など)および現在位置情報が読み取られる。そして、これらの情報とナビゲーション装置30のID情報とが、地図会社40のコンピュータ41に送信される。
【0052】
地図会社40では、ナビゲーション装置30から送信される移動店舗62の情報および現在位置情報を用いて移動店舗62の位置が分かることから、移動店舗62を地図に反映することができる。
【0053】
このようにして移動店舗62を反映させて地図を更新する更新間隔は、たとえば2時間間隔など、比較的短いことが好ましい。そして、更新した最新の地図を、インターネット回線70を利用して多数のナビゲーション装置30に配信することにより、そのナビゲーション装置30を利用しているユーザは、移動店舗62の位置を即時に知ることができる。このことは、移動店舗62のオーナーにとっては、ナビゲーション装置30を利用しているユーザを顧客にすることができる可能性があることを意味する。
【0054】
また、タグ情報に予定ルートを含ませておけば、地図に移動店舗62の予定ルートを反映させることも可能となるので、ユーザは、先回りして移動店舗62を待つことも可能となる。
【0055】
次に図2(D)の場合の地図更新態様を説明する。図2(D)の場合には、家の住人の苗字をタグ情報として予め記憶させておくことになる。また、大きな家の場合には、家の入り口であることタグ情報として記憶させておいてもよい。上記タグ情報が記憶されたICタグ20を家の門柱63に貼り付けておけば、GPSセンサ22によって、その家の現在位置はGPSセンサ22によって自動的に検出されることになる。
【0056】
そして、ナビゲーション装置30を搭載した車両が移動店舗の近くを通過すると、そのナビゲーション装置30によって、ICタグ20からタグ情報(すなわち家の住人の苗字など)および現在位置情報が読み取られる。そして、これらの情報とナビゲーション装置30のID情報とが、地図会社40のコンピュータ41に送信される。
【0057】
地図会社40では、ナビゲーション装置30から送信される苗字等の情報および現在位置情報を用いてその家の正確な位置が分かることから、その家の正確な位置を地図に反映することができる。
【0058】
このようにして家の情報を反映させて地図を更新する更新間隔は、たとえば、3ヶ月毎とすることができ、更新した最新の地図は光ディスク80などの記憶媒体に格納して販売することができる。また、その最新の地図を、インターネット回線70を利用してナビゲーション装置30に配信してもよい。その最新の地図を取得したユーザは、その地図およびナビゲーション装置30の検索機能を利用して、その家を目的地に設定することもできる。
【0059】
また、通常のナビゲーション装置は、目的地付近で案内動作が終了してしまうが、ナビゲーション装置30とICタグ20との通信により、ピンポイントで目的地かどうかを検出することも可能となる。従って、敷地が広い家であっても、ICタグ20を家の入り口に貼り付けておけば、ナビゲーション装置30を利用するユーザを家の入り口まで案内することが可能となる。また、現在位置情報が逐次更新されるので、家の入り口位置を変更したとしても、その変更が地図情報に反映されるので、入り口が変更になっても、変更後の入り口までの経路案内が可能となる。
【0060】
さらに、ナビゲーション装置30は、ICタグ20から現在位置情報を取得することにより、その現在位置情報を用いて自車の位置を補正することも可能である。このように、ICタグ20の現在位置情報をナビゲーション装置30が検出した位置の補正に用いる場合には、GPSセンサ22として、位置検出精度がよい固定位置検出用のものを用いることが好ましい。
【0061】
以上、説明した本実施形態によれば、ICタグ20はGPSセンサ22を備えており、そのGPSセンサ22によって検出した現在位置を表す現在位置情報をループアンテナ21からタグ情報とともに送信している。そのため、ICタグ20の設置位置を都度ICチップ23に記憶させなくても、ICタグ20の位置を外部に送信することができる。
【0062】
そして、このICタグ20を、貼り付ける物体に関する情報を予め記憶させておいた上で、たとえば、店舗またはその駐車場の車止め60、道路工事の際に用いるラバーコーン61、移動店舗62、門柱63などに貼り付ければ、貼り付ける位置を予め記憶させておかなくても、ナビゲーション装置30を介して、ICタグ20の貼り付けられている位置およびそのICタグ20のタグ情報が地図会社40のコンピュータ41に送信される。従って、地図会社40において、ICタグ20が貼り付けられた物体に関する情報とその物体の現在位置情報とを遠隔的に取得できる。その結果、地図会社40は、ICタグ20が貼り付けられた物体の情報を迅速に地図に反映させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0064】
たとえば、ICタグ20を、人の衣類または携帯物(たとえば鞄など)に貼り付けてもよい。なお、この場合、タグ情報として、その人の名前や特徴など、その人を特定できる情報を予め記憶させておく。このようにすれば、ICタグ20が衣類または携帯物に貼り付けられた人の近くをナビゲーション装置30を搭載した車両が通過する毎に、その人の現在位置が地図会社に送信されることになる。従って、その人が、今どこにいるかを逐次把握することができることから、誘拐などの犯罪を防止するのに利用できる。この場合、現在位置情報を送信する送信先を警察やその関係機関に設定してもよい。情報の送信先の設定は、たとえば、タグ情報内に情報の送信先を記憶させておけばよい。
【0065】
さらに、地図会社40または上記タグ情報が送信される警察などから、ナビゲーション装置30に、捜索人に関する情報が配信され、ナビゲーション装置30は、その捜索人に関する情報と合致するタグ情報が得られた場合のみ、そのタグ情報が記憶されたICタグ20の現在位置情報を送信するようにしてもよい。このようにすることにより、不要な情報が多数送信されてくることを抑制できる。さらに、捜索人の現在位置情報を提供(送信)したユーザには、料金が還元されるようにしてもよい。なお、前述の実施形態のICタグ20はパッシブ型であり、パッシブ型は非常に小型化できることから、人の衣類や携帯物に貼り付けるのに好適である。
【0066】
また、タグ情報として建物の情報が記憶されている場合には、逐次、地図会社40のコンピュータ41に送信される現在位置情報に基づいて、そのICタグ20の故障判定を行ってもよい。建物やその駐車場にICタグ20が固定されている場合には、ICタグ20の位置は不変と考えられる。そのため、現在位置情報が所定値以上変化した場合には、ICタグ20が故障したと判定することができる。上記所定値は、たとえば、建物の大きさに計測誤差(たとえば、10m)を加えた値に設定する。
【0067】
また、前述の実施形態では、パッシブ型のICタグ20を用いていたが、アクティブ型のICタグを用いてもよい。アクティブ型のICタグの場合、情報を送信することができる範囲が広いので、公衆通信回線網の中継局まで電波を送信することができる。従って、情報中継装置としてのナビゲーション装置30を介さずに情報を地図会社40のコンピュータ41へ送信するようにしてもよい。また、パッシブ型で太陽電池による充電が十分な場合のみアクティブ型となる様に設定してもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、情報送信指示装置は車両に搭載されていたが、携帯電話に搭載されるなど、情報送信指示装置を人が携帯するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明が適用されたタグ情報遠隔取得システム1の構成を示す図である。
【図2】図1のICタグ20の取り付け例を示す図である。
【図3】ICタグ20とナビゲーション装置30と地図会社40のコンピュータ41との間の情報の送受信を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1:タグ情報遠隔取得システム、 20:ICタグ、 21:ループアンテナ、 22:GPSセンサ、 23:ICチップ、 24:太陽電池、 30:ナビゲーション装置(情報中継装置)、 31:制御装置、 32:送受信装置、 33:メモリ、 34:リーダ(情報送信指示装置)、 40:地図会社、 41:コンピュータ(受信装置)、 50:ユーザ、 60:車止め、 61:ラバーコーン、 62:移動店舗、 63:門柱、 70:インターネット回線、 80:光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナとを備え、そのICチップに記憶されたタグ情報をアンテナから外部に送信するICタグにおいて、
自身の現在位置を検出するGPSセンサを備え、そのGPSセンサによって検出された現在位置を表す現在位置情報を前記アンテナから外部に送信することを特徴とするICタグ。
【請求項2】
外部からの電波を前記アンテナで受信して、その受信した電波から送信電力を発生させるパッシブ型であることを特徴とする請求項1のICタグ。
【請求項3】
請求項2において、前記GPSセンサに電力を供給する電池を備えていることを特徴とするICタグ。
【請求項4】
前記電池は太陽電池であることを特徴とする請求項3に記載のICタグ。
【請求項5】
前記GPSセンサが、複数回の位置検出動作に基づいて現在位置を決定する固定位置検出用のGPSセンサであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のICタグ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかのICタグと、
移動体に設けられ、前記現在位置情報および前記タグ情報を前記ICタグから送信させるための送信指示信号を前記ICタグに送信する情報送信指示装置と、
前記ICタグから送信された情報を公衆通信回線を介して受信する受信装置と
を含むことを特徴とするタグ情報遠隔取得システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記ICタグはパッシブ型であり、
前記送信指示信号に応じて前記ICタグから送信される前記現在位置情報および前記タグ情報を取得して、その取得した現在位置情報およびタグ情報を公衆通信回線を介して送信する情報中継装置をさらに備え、
その情報中継装置および前記情報送信指示装置が同一の移動体に設けられていることを特徴とするタグ情報遠隔取得システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記情報中継装置は、前記現在位置情報およびタグ情報に加えて、前記情報中継装置が設けられている移動体の情報を公衆通信回線を介して地図配信会社に設けられた受信装置へ送信する事を特徴とするタグ情報遠隔取得システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記受信装置が受信した現在位置情報、タグ情報、移動体の情報から、その現在位置情報が示す位置の施設の利用度を算出して地図データの更新に利用する地図配信システム。
【請求項10】
請求項7または8において、
前記情報中継装置および前記情報送信指示装置が設けられている移動体が、車両であることを特徴とするタグ情報遠隔取得システム。
【請求項11】
前記ICタグが建物またはその建物の駐車場に設置されることを特徴とする請求項6乃至8、10のいずれかに記載のタグ情報遠隔取得システム。
【請求項12】
前記ICタグが店舗またはその店舗の駐車場に設置されることを特徴とする請求項11記載のタグ情報遠隔取得システム。
【請求項13】
前記ICタグが設置される店舗が移動店舗であることを特徴とする請求項11記載のタグ情報遠隔取得システム。
【請求項14】
前記ICタグが道路工事の際に道路に使用される設置物に固定されることを特徴とする請求項6乃至8、10のいずれかに記載のタグ情報遠隔取得システム。
【請求項15】
前記ICタグが人の衣類または携帯物に固定されることを特徴とする請求項6乃至8、10のいずれかに記載のタグ情報遠隔取得システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−175913(P2008−175913A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7472(P2007−7472)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】