説明

熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板

【課題】特に低熱膨張性、高ガラス転移温度、低誘電性を有し、かつ銅箔接着性、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、難燃性、ドリル加工性の全てにバランスよく優れ、また、毒性が低く安全性や作業環境に優れる熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供する。
【解決手段】特定の化学式で表されるマレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、及び難燃剤として熱分解温度が300℃以上である金属水和物(D)、或いは更に硬化促進剤(E)、エポキシ樹脂(F)、無機充填剤(G)を必要に応じて含有する熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板に関し、低熱膨張性、高ガラス転移温度、低誘電性を有し、かつ銅箔接着性、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、難燃性、ドリル加工性の全てにバランスよく優れ、また、毒性が低く安全性や作業環境に優れる、電子部品等に好適な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂に特有な架橋構造が高い耐熱性や寸法安定性を発現するため、電子部品等の分野において広く使われている。特に、銅張積層板や層間絶縁材料においては、近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や耐熱性(高ガラス転移温度)、良好な低熱膨張性等の特性が強く要求されている。
また、近年の環境問題から、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載やハロゲンフリーによる難燃化が要求され、そのため従来のものよりも高い耐熱性及び難燃性が必要とされる。
さらに、製品の安全性や作業環境の向上化のため、毒性の低い成分のみで構成され、毒性ガス等が発生しない熱硬化性樹脂が望まれている。
【0003】
シアネート化合物は、良好な誘電特性、難燃性に優れる熱硬化性樹脂となるものであるが、このシアネート化合物をエポキシ硬化系の熱硬化性樹脂にそのまま使用した場合、耐熱性や強靭性が不足するという問題や、次世代の絶縁材料に対応するような低熱膨張性が不足するという問題があった。
低熱膨張性を発現する樹脂としては、シアネート化合物と無機充填剤とを含む樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、シアネート化合物と無機充填剤とエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、シアネート化合物と無機充填剤とエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを含む樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)、シアネート樹脂とアラルキル変性エポキシ樹脂を必須成分として含有する熱硬化性樹脂(例えば、特許文献4および5参照)などが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1〜3に記載の樹脂組成物は靭性に劣る樹脂であるため、、銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合、ドリル加工性や成形性が不足することがある。
また、特許文献4および5に記載の熱硬化性樹脂は、必須成分であるシアネート樹脂が靭性や硬化反応性に劣る樹脂であり、この熱硬化性樹脂の硬化反応性や強靭性が依然不足しており、これらを銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合も、耐熱性や信頼性、加工性等が不足することがある。
【0005】
前記のように、積層板材料には近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や高ガラス転移温度、良好な低熱膨張性等が必要とされている。
例えば、微細配線形成のため銅箔接着性としては、銅箔ピール強度が1.0kN/m以上であること、特に1.2kN/m以上であることが望まれている。
また、高密度化に伴い基材はより薄型化される方向にあり、熱処理時における基材のそりが小さいことが必要となる。低そり化のためには基材が低熱膨張性であることが有効であり、その熱膨張係数は25ppm/℃以下であること、特に20ppm/℃以下であることが望まれている。
さらに、高密度化のためビルドアップ材等を用いてより高多層化することも必要であり、高いリフロー耐熱性が必要であるが、リフロー耐熱性評価の指針となる銅付き耐熱性(T−300)は、30分以上ふくれ等が生じないことが望まれている。
【0006】
また、高密度化に伴い基材はより信頼性が要求される方向にあり、ドリル加工時のドリル穴の内壁粗さも小さいことが必要となる。ドリル穴の内壁粗さの評価は、めっき銅の染み込み性により評価され、めっき染み込み長さの最大が20μm以下であること、特に15μm以下であることが望まれている。
さらに、高速応答性の要求も増え続けており、基材の比誘電率は5.0以下であること、また誘電正接は0.020以下であることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−285015号公報
【特許文献2】特開2003−73543号公報
【特許文献3】特開2003−268136号公報
【特許文献4】特開2002−309085号公報
【特許文献5】特開2002−348469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、特に低熱膨張性、高ガラス転移温度、低誘電性を有し、かつ銅箔接着性、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、難燃性、ドリル加工性の全てにバランス良く優れる熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、特定のビスマレイミド化合物、アミノ化合物、アルデヒド化合物および金属水和物を含有する熱硬化性樹脂組成物が優れた低熱膨張性、高ガラス転移温度、低誘電性やドリル加工性等が得られ、上記の目的を達成しうること見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供するものである。
【0010】
1.下記一般式(I)で表される1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(A)、下記一般式(II)で表される1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミノ化合物(B)、一般式(III)で表される1分子中に2個のアルデヒド基を有するアルデヒド化合物(C)及び難燃剤として熱分解温度が300℃以上である金属水和物(D)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化1】

(式中、Ar1は一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)又は(I−4)で表される残基である。)
【0012】
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、pは0〜4の整数である)
【0013】
【化3】

(式中、R4及びR5は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、q、rは各々独立に0〜4の整数であり、A1は炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基で表される残基である。)
【0014】
【化4】

(式中、rは1〜10の整数である。)
【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

(式中、Ar2は一般式(II−1)又は(II−2)で示される残基である。
【0017】
【化7】

(式中、R6及びR7は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、メトキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、s、tは各々独立に0〜4の整数であり、A2は単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基、ケトン基、フルオレン基、又はフェニレンジオキシ基で表される残基である。)
【0018】
【化8】

(式中、A3は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基である。)
【0019】
【化9】

【0020】
2.更に、硬化促進剤(E)を含有する上記1の熱硬化性樹脂組成物。
3.更に、エポキシ樹脂(F)を含有する上記1又は2の熱硬化性樹脂組成物。
4.更に、無機充填剤(G)を含有する上記1〜3のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
5.上記1〜4のいずれかの熱硬化性絶縁樹脂組成物がシート状補強基材中に含侵又は塗工されていることを特徴とするプリプレグ。
6.絶縁樹脂層が、上記1〜4のいずれかの熱硬化性絶縁樹脂組成物又は上記5のプリプレグを用いて形成されたものであることを特徴とする積層板。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に銅箔接着性、低熱膨張性、高ガラス転移温度を有し、かつ低誘電性、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、難燃性、ドリル加工性の全てにバランスよく優れ、更に毒性が低く安全性や作業環境に優れる。従って、該熱硬化性樹脂組成物やそのプリプレグを用いて積層成形して得られた積層板は、多層プリント配線板として、電子部品等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、一般式(I)で表される1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(A)、一般式(II)で表される1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミノ化合物(B)、一般式(III)で表される1分子中に2個のアルデヒド基を有するアルデヒド化合物(C)及び難燃剤として熱分解温度が300℃以上である金属水和物(D)を含有することを特徴とするものである。
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0023】
先ず(A)成分のマレイミド化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【化10】

(式中、Ar1は一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)又は(I−4)で表される残基である。)
【0024】
【化11】

(式中、R3は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、pは0〜4の整数である)
【0025】
【化12】

(式中、R4及びR5は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、q、rは各々独立に0〜4の整数であり、A1は炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基で表される残基である。)
【0026】
【化13】

(式中、rは1〜10の整数である。)
【0027】
【化14】

【0028】
一般式(I)で表される1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(A)としては、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、下記一般式(IV)で表されるポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0029】
【化15】

(式中、rは1〜10の整数である。)
【0030】
これらの中で、反応性が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の点から、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0031】
(B)成分のアミノ化合物は一般式(II)で表される1分子中に2個の1級アミノ基を有する化合物である。
【化16】

(式中、Ar2は一般式(II−1)又は(II−2)で示される残基である。
【0032】
【化17】

(式中、R6及びR7は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、メトキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、s、tは各々独立に0〜4の整数であり、A2は単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基、ケトン基、フルオレン基、又はフェニレンジオキシ基で表される残基である。)
【0033】
【化18】

(式中、A3は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基である。)
【0034】
上記の一般式(II)で表されるに示す1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミノ化合物(B)としては、例えば4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0035】
1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミノ化合物(B)として、これらの中で、合成時の反応率が高く、より高耐熱性化できる4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等がより好ましく、安価であることや溶剤への溶解性の点から4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタンが特に好ましい。
【0036】
(C)成分のアルデヒド化合物は、下記一般式(III)で表される1分子中に2個のアルデヒド基を有する化合物である。
【化19】

【0037】
一般式(III)で表される1分子中に2個のアルデヒド基を有するアルデヒド化合物(C)としては、例えばテレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、o−フタルアルデヒドが挙げられる。これらの中で、より低熱膨張化が可能であり、合成時の反応率が高く、溶剤溶解性にも優れ、商業的にも入手し易いテレフタルアルデヒドが特に好ましい。
【0038】
(D)成分の熱分解温度が300℃以上である金属水和物としては、例えばベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)、水酸化マグネシウム、あるいはギブサイト型水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を熱処理によりその熱分解温度を300℃以上に調整した化合物等が挙げられる。これらの中で、ベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)は、350℃以上の特に高い熱分解温度を有するため、特に高い耐熱性が難燃性と両立することや、耐酸性等の耐薬液性、低吸水率性等に優れるため、特に好ましい。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、マレイミド化合物(A)とアミノ化合物(B)の使用量は、マレイミド化合物(A)のマレイミド基の数〔即ち、マレイミド化合物(A)の使用量/(マレイミド化合物(A)のマレイミド基当量〕NAと、アミノ化合物(B)の一級アミノ基の数〔即ち、アミノ化合物(B)の使用量/アミノ化合物(B)の一級アミノ基当量〕NBの比率が、5.0≧NA/NB≧1.5である範囲になるように使用されることが望ましい。NA/NBが5.0を超えると耐熱性や銅箔接着性が不足することがあり、1.5未満であるとガラス転移温度が低下することがある。
また、アルデヒド化合物(C)の使用量は、アルデヒド化合物(C)のアルデヒド基の数〔即ち、アルデヒド化合物(C)の使用量/アルデヒド化合物(C)のアルデヒド基当量〕NCと、アミノ化合物(B)の一級アミノ基の数〔即ち、アミノ化合物(B)の使用量/アミノ化合物(B)の一級アミノ基当量〕NBの比率が、3.0≧NC/NB≧0.1である範囲になるように使用されることが望ましい。NC/NBが3.0を超えると耐熱性や低熱膨張性が不足することがあり、NC/NBが0.1未満であるとガラス転移温度や弾性率が低下することがある。
【0040】
金属水和物(D)の使用量は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部当たり、10〜300質量部とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましく、30〜200質量部とすることが特に好ましい。金属水和物の配合量が10重量部未満であると難燃性や弾性率が不足することがあり、300質量部を超えると耐めっき液性等の耐薬品性や成形性が低下することがある。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その取り扱い上、有機溶剤を用いても良い。使用される有機溶媒は特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
使用される有機溶媒は、これらの中で溶解性の点からジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残り難いジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
有機溶媒の使用量は、溶解性と生産性の観点から、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部当たり、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましい。
【0042】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要により、硬化促進剤(E)、エポキシ樹脂(F)および熱分解温度が無機充填剤(G)を含有させても良い。本発明の熱硬化性樹脂組成物にこれらの材料を適切に配合することにより、積層板に用いられるプレプリグや絶縁層の諸特性を向上させることができる。
【0043】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられる硬化促進剤(E)としては、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。その中でもイミダゾール類及びその誘導体が耐熱性や難燃性、銅箔接着性等の点から好ましい。
また、更に下記一般式(V)で表されるイミダゾール基がエポキシ樹脂によって置換された化合物や、下記一般式(VI)で表されるイミダゾール基がイソシアネート樹脂によって置換された化合物を使用すると、200℃以下での比較的低温での硬化成形性とワニスやプリプレグの経日安定性に優れるためにより好ましく、一般式(VII)や一般式(VIII)で表される化合物が少量の配合でよく、また商業的にも安価であることから特に好ましい。
【0044】
【化20】

(式中、R6、R7、R8、R9は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、フェニル基のいずれかを示し、Bは単結合、アルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基のいずれかを示す。)
【0045】
【化21】

(式中、R6、R7、R8、R9は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、フェニル基のいずれかを示し、Dはアルキレン基、芳香族炭化水素基等のイソシアネート樹脂の残基である。)
【0046】
【化22】

【0047】
【化23】

【0048】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(F)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるものが耐熱性の点から好ましく、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中で、誘電特性、耐熱性、耐湿性及び銅箔接着性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好ましく、難燃性や成形加工性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、ドリル加工性が良好となる点や高難燃性となる点から、下記一般式(IX)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が特に好ましい。なお、該一般式(IX)のmは1以上の正数である。
【0049】
【化24】

【0050】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、低熱膨張率性や高弾性率性、耐熱性、難燃性を向上させることを目的に、無機充填剤(G)を任意に使用することできる。無機充填剤(G)の例としては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末等が挙げられるが、これらの中で、銅箔接着性、耐熱性、難燃性の点からシリカ、アルミナ、マイカ、タルク等が好ましく、高放熱性の点からシリカ、アルミナが特に好ましい。
【0051】
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物に、難燃性を向上させることを目的に、(D)成分の金属水和物以外の難燃剤を併用してもよい。適切な難燃剤を併用することにより、耐熱性や銅箔接着性、高弾性率、低熱膨張率性等の諸特性の低下が少なく、高難燃性を付与することができる。(D)成分の金属水和物以外の難燃剤の例としては、熱分解温度が300℃未満の水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水和物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤等が挙げられる。臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤は、近年の環境問題から本発明の目的にそぐわない。水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水和物が、高いガラス転移温度や銅箔接着性を発現することができ、またリンを含有しないことから安全性や環境適応性もかなり高いので好ましい。
【0052】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において硬化促進剤(E)を併用する場合、その使用量(固形分換算)は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部(固形分換算)当たり、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましい。硬化促進剤(E)を配合することにより耐熱性や難燃性、銅箔接着性等が向上し、また、硬化促進剤(E)が10質量部を超えると耐熱性や経日安定性が低下することがある。
【0053】
同様に、エポキシ樹脂(F)を併用する場合、その使用量(固形分換算)は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部(固形分換算)当たり、10〜200質量部とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましく、20〜100質量部とすることが特に好ましい。エポキシ樹脂(F)を配合することにより銅箔接着性や耐薬品性が向上し、また、エポキシ樹脂(F)が200質量部を超えると耐熱性、低熱膨張率性、高弾性率性が低下することがある。
【0054】
同様に、無機充填剤(G)を併用する場合、その使用量は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部(固形分換算)当たり、10〜300質量部とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましく、30〜200質量部とすることが特に好ましい。無機充填剤を併用することにより、低熱膨張率性や高弾性率性、耐熱性、難燃性を向上させることができるが、その配合量が300質量部を超えると耐めっき液性等の耐薬品性や成形性が低下することがある。
【0055】
難燃剤としてリン系難燃剤を併用する場合、その使用量は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部(固形分換算)当たり、リン原子の含有量が0.1〜10.0質量部となるように配合することが好ましく、1.0〜10.0質量部となるように配合することがより好ましく、1.0〜8.0質量部となるように配合することが特に好ましい。リン原子の含有量が10.0質量部を越えると耐めっき液性等の耐薬品性や耐熱性、銅箔接着性が低下することがある。
また、難燃助剤として、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤を併用する場合、その使用量は、マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)の合計量100質量部(固形分換算)当たり、0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。20質量部を越えると耐めっき液性等の耐薬品性が低下することがある。
【0056】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲で、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填剤等を併用することができる。
熱可塑性樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0057】
エラストマーとしては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
有機充填剤としては、シリコーンパウダー、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等の有機物粉末等が挙げられる。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、任意に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等を含有させることができる。例えば、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
【0059】
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、シート状補強基材に含浸又は塗工し、Bステージ化して得られるものである。本発明のプリプレグは、上記の熱硬化性樹脂組成物を、シート状補強基材に含浸・塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
プリプレグのシート状補強基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
シート状補強基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0060】
本発明の積層板は、前述の熱硬化性樹脂組成物又はプリプレグを用いて積層成形して得られたものである。例えば、プリプレグを1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。
成形条件は、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例で得られた銅張積層板は、以下の方法により性能を測定・評価した。
【0062】
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
【0063】
(2)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の厚み方向(Z方向)の熱膨張特性から測定した。
【0064】
(3)はんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atmの条件で4時間プレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。(外観にふくれがあったものを「ふくれ」と記す。)
【0065】
(4)線熱膨張係数
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の厚み方向(Z方向)の30〜100℃の線熱膨張率を測定した。
【0066】
(5)難燃性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
【0067】
(6)銅付き耐熱性(T−300)
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、300℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。(昇温時にふくれがあったものを「昇温時ふくれ」と記す。)
【0068】
(7)誘電特性(比誘電率及び誘電正接)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、Hewllet・Packerd社製比誘電率測定装置(製品名:HP4291B)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0069】
(8)ドリル加工性
ドリルに径0.105mm(ユニオンツールMV J676)を用い、回転数:160000rpm、送り速度:0.8m/min、重ね枚数:1枚の条件でドリル加工を行い、6000ヒットさせて評価基板を作製し、ドリル穴の内壁粗さを評価した。内壁粗さの評価は、無電解銅めっきを行い(めっき厚:15μm)、穴壁へのめっき染み込み長さの最大値を測定することにより評価した。
【0070】
実施例1〜9、比較例1〜3
マレイミド化合物(A)、アミノ化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、難燃剤(D)、及び必要により硬化促進剤(E)、エポキシ樹脂(F)、無機充填剤(G)を併用し、希釈溶剤にシクロヘキサノンを使用して第1表および第2表に示す配合割合(質量部)で混合して樹脂分60質量%の均一なワニスを得た。
次に、上記ワニスを厚さ0.2mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量55質量%のプリプレグを製造した。
さらに、これらのプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度230℃で120分間プレスを行って銅張積層板を製造した。
このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、耐熱性〔ガラス転移温度(Tg)、はんだ耐熱性及び銅付き耐熱性〕、難燃性、誘電特性〔比誘電率(1GHz)及び誘電正接(1GHz)〕、ドリル加工性を前記の方法で測定・評価した。結果を第1表および第2表に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
なお、第1表および第2表におけるマレイミド化合物(A)、難燃剤(D)、硬化促進剤(E)エポキシ樹脂(F)および無機充填剤(G)は以下の通りである。
(A)マレイミド化合物
・BMI:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成社製;商品名、マレイミド当量179)
・BMI−70:3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイアイ化成社製;商品名、マレイミド当量221)
・BMI−80:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(ケイアイ化成社製;商品名、マレイミド当量285)
(D)難燃剤
・AlOOH:ベーマイト型水酸化アルミニウム(河合石灰社製:商品名BMT−3L、熱分解温度:400℃)
・Mg(OH)2:水酸化マグネシウム(関東化学社製、熱分解温度:350℃)
・TPP:トリフェニルホスフェート(関東化学社製、リン含有量:9.6〜9.7質量%)
(E)硬化促進剤
・P200:前記の式(VII)の化学式で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂と2−フェニルイミダゾールの付加反応物
・G−8009L:前記の式(VIII)で示されるヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物
(F)エポキシ樹脂
・MC-3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製;商品名、エポキシ当量290)
・N−770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名,エポキシ当量190)
(G)無機充填剤
・溶融シリカ(アドマテックス社製:商品名SO−25R)
【0074】
第1表および第2表から明らかなように、本発明の実施例においては、銅箔接着性、高ガラス転移温度、はんだ耐熱性、低熱膨張性、銅付き耐熱性、難燃性、低誘電特性、ドリル加工性の全てにバランス良く優れているプレプリグ及び積層板が得られている。
これに対し、難燃剤として熱分解温度が300℃以上である金属水和物(D)を含有しない比較例1〜3は、銅箔接着性、高ガラス転移温度、はんだ耐熱性、低熱膨張性、銅付き耐熱性、難燃性、低誘電特性、ドリル加工性において実施例より劣るものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、特に顕著な銅箔接着性、低熱膨張性、高ガラス転移温度を有し、また低誘電特性、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、難燃性、ドリル加工性の全てにバランスよく優れ、また、毒性が低く安全性や作業環境に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られ、プリプレグ及び積層板を提供することができ、多層プリント配線板として電子機器などに有利に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(A)、下記一般式(II)で表される1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミノ化合物(B)、一般式(III)で表される1分子中に2個のアルデヒド基を有するアルデヒド化合物(C)及び、難燃剤として熱分解温度が300℃以上である金属水和物(D)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Ar1は一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)又は(I−4)で表される残基である。)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、pは0〜4の整数である)
【化3】

(式中、R4及びR5は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、q、rは各々独立に0〜4の整数であり、A1は炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基で表される残基である。)
【化4】

(式中、rは1〜10の整数である。)
【化5】

【化6】

(式中、Ar2は一般式(II−1)又は(II−2)で示される残基である。
【化7】

(式中、R6及びR7は各々独立に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、メトキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、s、tは各々独立に0〜4の整数であり、A2は単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基、ケトン基、フルオレン基、又はフェニレンジオキシ基で表される残基である。)
【化8】

(式中、A3は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、又はスルフォニル基である。)
【化9】

【請求項2】
更に、硬化促進剤(E)を含有する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、エポキシ樹脂(F)を含有する請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、無機充填剤(G)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物がシート状補強基材中に含侵又は塗工されていることを特徴とするプリプレグ。
【請求項6】
絶縁樹脂層が、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物又は請求項5に記載のプリプレグを用いて形成されたものであることを特徴とする積層板。

【公開番号】特開2012−31341(P2012−31341A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173958(P2010−173958)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】