説明

物体検出ユニット、物体検出装置、横断路の移動物体検知装置及びプログラム

【課題】表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置、形状を正確に検出する物体検出ユニットを提供する。
【解決手段】物体検出部20a〜20dが読み出された固定物体の位置データ中から距離の測定値を示す信号のあるレーザ光線の照射角度ごとに、そのレーザ光線の照射角度に対応する監視領域内に存在する物体の位置データ中から受光なしを示す信号のあるレーザ光線の照射角度を抽出する(S125)。そして、抽出されたレーザ光線の照射角度がある場合には、物体検出部20a〜20dがそのレーザ光線の照射角度の位置には、レーザ光線を反射しない移動物体が存在すると判断する。一方、抽出されたレーザ光線の照射角度がない場合には、物体検出部20a〜20dが監視領域内にレーザ光線を反射しない移動物体が存在しない、と判断する(S130)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道などの走行路に設置された横断路を横断する物体の位置、形状を検出する技術に関し、特に表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置・形状を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、踏切に列車が接近している場合に、踏切道に存在する自動車や歩行者などを検出して警報を発生させる踏切障害物検知装置が知られている。このような踏切障害物検知装置においては、踏切道にレーザ光線を走査しながら送信するとともに、踏切道内の障害物によって反射したレーザ光線を受光するよう構成されており、反射されたレーザ光線を受光した場合には、踏切道内に障害物が存在すると認定するとともに、障害物が自動車か歩行者や自転車などかを識別する(例えば、特許文献1参照。)。なお、このような障害物の識別については、上述の特許文献1中に明記はされていないが、レーザ光線の照射角度およびそのレーザ光線を受光するまでの所要時間から障害物の位置を特定すると推測される。また、踏切道にレーザ光線を走査する一周期の間にレーザ光線を受光した受光結果に基づき、障害物の大きさを推定してその障害物が自動車か歩行者や自転車などかを識別すると推測される。
【0003】
また、上述の踏切障害物検知装置においては、反射されたレーザ光線を一定時間受光し続けている場合には、踏切道から退避するよう注意喚起するため、障害物に対して警報を発生させる。
【特許文献1】特開2002−37078号公報(第3,4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような踏切障害物検知装置においては、踏切道に存在する表面が滑らかで光沢のある黒色や濃紺色の車などを正確に検出できないといった問題があった。すなわち、表面が滑らかで光沢のある黒色や濃紺色の物体にレーザ光線を発射するとこの物体から反射されるレーザ光線の強度が低くなり物体を検出できない場合がある。これは、黒色や濃紺色の物体から反射されるレーザ光線の強度は、白色系の物体に比べて低い。さらに表面が滑らかで光沢のある物体から反射されるレーザ光線は、例えば鏡面のように反射されるため、入射方向へは散乱しにくい。したがって、レーザ光線を発射する装置とレーザ光線を受光する装置とが一体化されているような障害物体検知装置においては、物体の面に垂直すなわち物体の表面から90度の角度の方向に比べ角度の少ない方向からレーザ光線を発射する場合には、受光されるレーザ光線の強度は角度が少なくなると低くなる。
【0005】
このような問題を解決する方法として、レーザ光線の発射出力を高める方法が考えられるが歩行者の目にレーザ光線が当たると目を傷める危険性がある。
なお、このような問題は、軌道に設置された踏切道だけでなく、例えば道路に設置された横断歩道や、工場などの構内道路に設置された横断路などの走行路に設置された横断路においても同様の問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置、形状を正確に検出することにより、走行路に設置された横断路を横断する物体の位置、形状を正確に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題点を解決するためになされた本発明の物体検出ユニット(3:なお、この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄において説明した構成要素を括弧内に示すが、この記載によって特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、横断路を含むよう設定された監視領域内へレーザ光線を走査しながら発射し、監視領域内の物体によって反射されたレーザ光線を受光した場合には前記物体からレーザ光線を受光した位置までの距離を計測し、この距離の計測値を示す距離データをレーザ光線の走査位置に関連付けて出力し、受光しない場合には受光なしを示す距離データをレーザ光線の走査位置に関連付けて出力可能なレーザ光線発射・受光手段(10)と、レーザ光線発射・受光手段(10)を制御して前記監視領域内へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記反射されたレーザ光線を受光させ、レーザ光線発射・受光手段(10)から出力された前記監視領域内の距離データに基づいて物体の位置を検出する制御手段(20)と、を備えている。
【0008】
そして、制御手段(20)は、以下の処理を実行する。
(イ)レーザ光線発射・受光手段(10)を制御して前記監視領域内の固定物体へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記固定物体によって反射されたレーザ光線を受光させ、レーザ光線発射・受光手段(10)から出力された第1の距離データを記憶部(20)へ記憶する。
【0009】
(ロ)レーザ光線発射・受光手段(10)を制御して前記監視領域内の物体へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記物体によって反射されたレーザ光線を受光させ、レーザ光線発射・受光手段(10)から出力された第2の距離データを前記記憶部(20)へ記憶する。
【0010】
(ハ)記憶部(20)に記憶された前記第1の距離データを読み出し、その読み出した第1の距離データ中から距離の計測値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する前記第2の距離データを記憶部(20)から読み出し、その読み出した第2の距離データ中から受光なしが示されている走査位置を選定する。
【0011】
(ニ)前記選定された走査位置に基づいて移動物体の位置を検出する。
上述のように、本発明の物体検出ユニット(3)は、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出できる。
【0012】
すなわち、上述の(イ)の処理において、監視領域内に移動物体がない状態における基準データとしての第1の距離データが記憶される。また、上述の(ロ)の処理において、監視領域内の移動物体がある状態やない状態における検出対象データとしての第2の距離データが記憶される。
【0013】
そして、上述の(ハ)の処理において、第1の距離データ中から距離の測定値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する第2の距離データ中から受光なしが示されている走査位置を選定する。ここで、監視領域内に移動物体がなければ、第1の距離データと第2の距離データとの差異はないので、第1の距離データ中から距離の測定値が示されている走査位置に対応する第2の距離データ中から受光なしの走査位置を選定することはない。この処理において、第2の距離データ中から受光なしの走査位置が選定された場合には、発射したレーザ光線が反射されにくい移動物体に当たったためレーザ光線が反射されにくく受光できなかったと考えられる。すなわち、レーザ光線の反射率の低い物体例えば黒い自動車の車体にレーザ光線が発射されたために反射されなかったと考えられる。そこで、発射したレーザ光線が反射されにくい走査位置を選定すれば、レーザ光線の反射率の低い物体例えば黒い自動車の車体を検出することができる。つまり、上述の(ニ)の処理において、選定された走査位置に基づいてレーザ光線の反射率の低い物体例えば自動車の車体などの移動物体の位置を検出できる。
【0014】
したがって、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出できる。なお、上述の「移動物体」の具体例としては、自動車や二輪車、歩行者等が挙げられる。また、上述の移動物体でない物体である固定物体の具体例としては、警報機や遮断機、標識、遮断棹、操作器、柵、縁石などが挙げられる。
【0015】
ここで、監視領域内の走査位置とは、レーザ光線発射・受光手段(10)がレーザ光線を走査する始点からの角度位置を指す。例えばレーザ光線を発射できる最大角度が180度の場合には、始点位置は「0度」の角度位置であり、終点位置は「180度」の角度位置となる。
【0016】
なお、上述のような表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出する場合には、発射したレーザ光線が反射されにくい走査位置を選定している。したがって、発射したレーザ光線が反射されにくい走査位置なので距離の測定値を示す距離データがない。そのため、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などの移動物体の位置を検出する検出精度が十分得られない場合も考えられる。
【0017】
しかし、例えば黒い自動車において、車体はレーザ光線の反射率が低い物体に相当するが、タイヤなどはレーザ光線を反射する。そこで、レーザ光線の反射率が低い物体であっても、一部にレーザ光線を反射する部位があれば、距離の測定値を示す距離データに基づいてその部位の位置を検出できる。つまり、発射したレーザ光線が反射されにくい走査位置を選定してレーザ光線の反射率の低い物体例えば自動車の車体の位置を検出するとともに、レーザ光線を反射する部位例えば自動車のタイヤについての距離の測定値を示す距離データに基づいて自動車のタイヤの位置を検出できれば、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。そこで、請求項2に記載のようにするとよい。
【0018】
すなわち、制御手段(20)は、さらに、以下の処理を実行するとよい。
(ホ)前記第2の距離データを読み出し、その読み出した第2の距離データ中から距離の計測値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する前記第1の距離データを読み出し、その読み出した第1の距離データが距離の計測値を示す場合には、前記第2の距離の計測値と前記第1の距離の計測値との差分を算出し、その差分が所定値以上ある走査位置を選定し、さらに前記読み出した第1の距離データが受光なしを示す場合には、その走査位置を選定する。
【0019】
(へ)前記選定された走査位置に対応する第2の距離データに基づいて移動物体の位置を検出する。
(ト)前記(ニ)による移動物体の検出結果と、前記(ヘ)による移動物体の検出結果とを統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出する。
【0020】
このように構成された本発明の物体検出ユニット(3)によれば、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出するとともに、レーザ光線を反射する部位例えば自動車のタイヤについての距離の測定値を示す距離データに基づいて自動車のタイヤの位置を検出できるので、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。
【0021】
すなわち、請求項1による表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出する処理に加えて、物体から反射されるレーザ光線による物体の位置を検出するために上述の(ホ)、(ヘ)及び(ト)の処理を実行する。
【0022】
上述の(ホ)の処理において、検出対象データとしての第2の距離データ中から距離の測定値が示されている監視領域内の走査位置ごとに、その走査位置に対応する基準データとしての第1の距離データが距離の計測値を示す場合には、第2の距離の計測値と第1の距離の計測値との差分を算出する。そして、その差分が所定値例えばレーザ光線発射・受光手段(10)固有の分解能の値より大きければ、その走査位置を選定する。さらに、その走査位置に対応する基準データとしての第1の距離データが受光なしを示す場合には、その走査位置を選定する。
【0023】
そして、上述の(へ)の処理において、選定された走査位置に対応する検出対象データとしての第2の距離データに基づいてレーザ光線を反射する物体例えば自動車のタイヤなどの移動物体の位置を検出できる。
【0024】
そして、上述の(ト)の処理において、前記(ニ)による移動物体の検出結果と、前記(ヘ)による移動物体の検出結果とを統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出する。すなわち、移動物体が例えば表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車などの場合には、前記(ニ)の処理によって黒い車体が検出され、前記(ト)の処理
によって、タイヤが検出される。つまり、例えば検出された黒い車体の検出結果とタイヤの検出結果とを統合すれば、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。
【0025】
したがって、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出するとともに、レーザ光線を反射する部位例えば自動車のタイヤについての距離の測定値を示す距離データに基づいて自動車のタイヤの位置を検出できるので、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。
【0026】
また、物体検出ユニット(3)によって検出された物体が移動物体であると判断された場合には、請求項3に記載のように、移動物体の位置変化から車両の走行を妨げるおそれがあるか否かを予測するとよい。
【0027】
すなわち、車両接近判断手段(40)が、走行路を走行する車両がその走行路に設置された横断路に接近しているか否かを判断する。また、物体検出ユニット(3)が、横断路を含むよう設定された監視領域内に存在する移動物体の少なくとも位置を検出する。ここで、車両接近判断手段(40)によって横断路へ車両が接近していると判断された場合には、移動物体判断手段(40)が、物体検出ユニット(3)によって検出された移動物体が移動中であるか否かを判断する。さらに、移動物体判断手段(40)によって移動物体が移動中であると判断された場合には、位置変化予測手段(51)がその移動物体の位置変化を予測し、妨害予測手段(53)が、位置変化予測手段(51)によって予測された移動物体の位置変化に基づき、その移動物体が車両の走行を妨げるおそれがあるか否かを予測するとよい。
【0028】
このような本発明によれば、走行路に設置された横断路を横断する表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出するとともに、レーザ光線を反射する部位例えば自動車のタイヤについての距離の測定値を示す距離データに基づいて自動車のタイヤの位置を検出できるので、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。そして、移動物体例えば黒い自動車の位置変化を予測することにより、その移動物体が接近中の車両の走行を妨げるおそれがあるか否かを正確に予測できる。
【0029】
この場合、上述の「走行路」の具体例としては、鉄道車両が走行する軌道や、自動車などの車両が走行する「道路」、工場などの構内で運搬車両が走行する「構内道路」などが挙げられる。また、横断路の具体例としては、軌道に設置された「踏切道」や、道路に設置された「横断歩道」、工場などの構内道路に設置された「横断路」などが挙げられる。
【0030】
なお、上述の物体検出ユニット(3)については、請求項4に記載のように、複数の物体検出ユニット(3)が存在してそれぞれによる移動物体の検出結果を統合してもよい。
この場合、物体検出統合手段(30)が、複数の物体検出ユニット(3)それぞれによる移動物体の検出結果を統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出するとともに、移動物体の形状を推定するとよい。
【0031】
このようにすれば、複数の物体検出ユニット(3)を異なる位置に設置することにより、死角が生じないように移動物体を検出できる。また、複数の物体検出ユニット(3)それぞれによるレーザ光線の走査面を同一面上に重ね合わせ統合することによって、移動物体の位置を検出するとともに、異なる方向からの移動物体の検出位置によって移動物体の形状を推定できるので移動物体の認識精度を高められる。したがって、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の位置を検出するとともに、黒い自動車の形状を推定できる。
【0032】
なお、請求項3に記載の横断路の移動物体検知装置(2)についても請求項5に記載のように、複数の物体検出ユニット(3)が存在してそれぞれによる物体の検出結果を統合してもよい。
【0033】
この場合も、物体検出統合手段(30)が、複数の物体検出ユニット(3)それぞれによる移動物体の検出結果を統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出するとともに、移動物体の形状を推定するとよい。
【0034】
このようにすれば、請求項3に記載の横断路の移動物体検知装置(2)についても請求項4と同様の効果を得ることができる。
なお、物体検出ユニット(3)が設置される横断路によっては、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場合がある。固定物体が少ない場合には、当然固定物体から反射されるレーザ光線も少なくなるため、距離の測定値を示す距離データが少なくなり、受光なしを示す距離データが多くなる。そのため、移動物体の受光なしと比較するための固定物体の距離の測定値を有する走査位置が減少し、表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体の検出精度が十分得られない場合も考えられる。そこで、請求項6に記載のようにするとよい。
【0035】
すなわち、レーザ光線発射・受光手段(10)から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定されているとよい。
【0036】
このようにすれば、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場所においても地面から反射されるレーザ光線を得られるので固定物体の距離の測定値を有する走査位置の数を確保でき、移動物体(表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体)をより正確に検出することができる。また、レーザ光線の光軸が地面方向に発射されるため、レーザ光線が横断路を歩行中の歩行者の目に入りにくい。
【0037】
また、請求項4に記載の物体検出装置(4)においても物体検出ユニット(3)が設置される横断路によっては、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場合がある。そこで、請求項7に記載のようにするとよい。
【0038】
すなわち、レーザ光線発射・受光手段(10)から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定され、物体検出統合手段(30)は、複数の物体検出ユニット(3)それぞれによる移動物体の検出結果に基づいて移動物体の位置を検出するとよい。
【0039】
このようにすれば、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場所においても地面から反射されるレーザ光線を得られるので、移動物体(表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体)をより正確に検出することができる。
【0040】
また、物体検出統合手段(30)は、複数の物体検出ユニット(3)がそれぞれ検出された物体が移動物体であるか否かを判断し、それぞれにより検出された物体の検出結果を統合しないので、統合するための処理負荷を軽減できる。そして、それぞれのレーザ光線発射・受光手段(10)から発射されるレーザ光線の光軸の高さと水平位置調整によりレーザ光線の走査面を同一面上に重ね合わせる必要がなくなり、物体検出装置(4)の設置と保守とが容易となる。さらに、レーザ光線の光軸が地面方向に発射されるため、レーザ光線が横断路を歩行中の歩行者の目に入りにくい。
【0041】
また、物体検出ユニット(3)のうちの何れかが故障しても他の物体検出ユニット(3)によって物体の検出を続行することができるので、当該物体検出装置(4)の信頼性を高めることができる。
【0042】
また、請求項5に記載の横断路の移動物体検知装置(2)においても物体検出ユニット(3)が設置される横断路によっては、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場合がある。そこで、請求項8に記載のようにするとよい。
【0043】
すなわち、レーザ光線発射・受光手段(10)から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定され、物体検出統合手段(30)は、複数の物体検出ユニット(3)それぞれによる移動物体の検出結果に基づいて移動物体の位置を検出するとよい。
【0044】
このようにすれば、請求項7と同様の効果を得ることができる。
なお、横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、請求項9に記載のように、物体検出ユニット(3)が走行路それぞれの間に、且つ横断路の側方に設置されているとよい。
【0045】
このようにすれば、例えば横断路を含む監視領域に2走行路ある場合、監視領域を2分割すれば、1走行路を列車が通過中であっても、他の1走行路を含む監視領域を監視できる。詳説すれば、例えば2走行路の間に、且つ横断路の側方に1つの物体検知装置(3)を設け、横断路を含む監視領域を各走行路に応じて監視領域を2分割する。すると、1走行路を列車が通過中であっても、他の1走行路の監視を続けられる。また、例えば横断路を含む監視領域に2走行路ある場合、横断路の4隅の1隅に1つの物体検知装置(3)を設置した場合では、2走行路の距離を監視しなければならないが、2走行路の間に、且つ横断路の側方に1つの物体検出ユニット(3)を設置した場合では、1走行路の距離を監視すればよい。つまり、2走行路の間に、且つ横断路の側方に1つの物体検出ユニット(3)を設置した場合の方が、同数の物体検出ユニット(3)で検出感度を向上させることができる。換言すれば、検出感度を同じになるようにすれば、物体検出ユニット(3)の数を削減できる。
【0046】
また、請求項3、請求項5及び請求項8の何れかに記載の横断路の移動物体検知装置(2)においても横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、請求項10に記載のように、物体検出装置(3)が走行路それぞれの間に、且つ横断路の側方に設置されているとよい。
【0047】
このようにすれば、請求項9と同様の効果を得ることができる。
また、請求項4または請求項7に記載の物体検出装置(4)においても横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、請求項11に記載のように、物体検出ユニット(3)が走行路それぞれの間に、且つ横断路の側方に設置されているとよい。
【0048】
このようにすれば、請求項9と同様の効果を得ることができる。
ところで、例えば踏切などに設置させる横断路の移動物体検知装置(2)においては、物体検出ユニット(3)などの当該横断路の移動物体検知装置(2)の各構成部位が正常に作動中であることを診断することにより、各構成部位の故障を検出して車両運行の安全性を確保している。このような診断手法としては、例えば柱などの固定物体を監視領域内に設置して物体検出ユニット(3)によって検出し、その検出した固定物体が同一位置に検出されるときには、当該横断路の移動物体検知装置(2)の各構成部位が正常に作動中であると判断する手法が知られている。しかし、このような判断手法においては、例えば柱などの診断用の固定物体を監視領域内に設置する必要がある、といった問題があった。
【0049】
そこで、請求項12に記載のように、既に監視領域内に設置されている固定物体を利用して当該横断路の移動物体検知装置(2)の各構成部位が正常に作動中であることを診断するとよい。
【0050】
すなわち、物体検出ユニット(3)によって検出された物体のうち移動物体以外の物体である固定物体の一つの位置を常時監視し、その監視結果に基づいてその特定の固定物体が同一位置に検出される場合には当該横断路の移動物体検知装置(2)の各構成部位が正常に作動中であると判断する自己診断手段(40)を備えるとよい。
【0051】
このようにすれば、例えば柱などの診断用の固定物体を監視領域内に設置しなくても、物体検出ユニット(3)などの当該横断路の移動物体検知装置(2)の各構成部位が正常に作動中であるか否かを診断することができる。
【0052】
なお、請求項13に記載のように、請求項3、請求項5、請求項8、及び請求項10の何れかに記載の横断路の移動物体検知装置(2)における移動物体判断手段(40)、位置変化予測手段(51)及び妨害予測手段(53)は、コンピュータを機能させるプログラムとして実現できる。または、請求項12に記載の横断路の移動物体検知装置(2)における移動物体判断手段(40)、位置変化予測手段(51)、妨害予測手段(53)及び自己診断手段(80)は、コンピュータを機能させるプログラムとして実現できる。したがって、本発明は、プログラムの発明として実現できる。また、このようなプログラムの場合、例えば、FD、MO、DVD−ROM、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として本プログラムを記録しておき、ROMあるいはバックアップRAMをコンピュータに組み込んで用いても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
なお、以下の説明において説明を容易とするために複数ある構成要素につては、例えば4つの物体検出ユニット3を物体検出ユニット3a〜3dのように、物体検出ユニット3の符号に「a〜d」を付加して区別する。
【0054】
図1は、警報発生装置1の概略構成図である。また、図2は、警報発生装置1と4つの物体検出ユニット3a〜3dとが設置された踏切を示す説明図であり、図3は、センサー10の構造を示す説明図であり、図4は、センサー10a〜10dによる監視領域を示す説明図であり、図5(a)は、センサー10によって障害物と背景とにレーザ光線を照射している状態を示す説明図であり、図5(b)は、障害物を挟んで互いに対向するように設置された2つのセンサー10a,10bによって障害物にレーザ光線を照射している状態を示す説明図である。
【0055】
図6(a)は、踏切に存在する障害物としての自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図であり、図6(b)は、踏切に存在する自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図であり、図6(c)は、踏切に存在する自動車91の4つのタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図であり、図6(d)は、上述した踏切に存在する自動車91の車体の検出位置と自動車91の4つのタイヤの検出位置を統合する状態を示す説明図であり、図6(e)は、その統合した検出位置に基づいて自動車91全体の位置を検出する状態を示す説明図である。
【0056】
図7(a)は、踏切に存在する障害物としての自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図であり、図7(b)は、踏切に存在する自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果を示す説明図であり、図7(c)は、踏切に存在する自動車91の4つのタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果と、上述した踏切に存在する自動車91の車体の検出結果とを統合した結果を示す説明図である。
【0057】
[警報発生装置1の構成の説明]
図1に示す警報発生装置1は、N個の物体検出ユニット3a〜3nと、情報統合部30と、識別部40と、位置・速度算出部51と、停滞・脱出予側部53と、発光制御部54と、音声制御部55と、特殊信号発光機60と、音声発生部70と、健全性自己診断部80と、から構成されている。なお、上述の情報統合部30には、N個の物体検出ユニット3a〜3nが接続可能である。そして、物体検出ユニット3a〜3nには、それぞれ1つのセンサー10a〜10nと、このセンサー10a〜10nに接続可能な物体検出部20a〜20nと、から構成されている。なお、本実施形態における警報発生装置1は、上述の情報統合部30に4個の物体検出ユニット3a〜3dが接続されており、踏切内に設置される(図2参照)。そして、物体検出ユニット3a〜3dには、それぞれ1つのセンサー10a〜10dと、このセンサー10a〜10dにはそれぞれ1つの物体検出部20a〜20dが接続されている。また、上述の識別部40、位置・速度算出部51、停滞・脱出予側部53、発光制御部54、音声制御部55および健全性自己診断部80は、それぞれCPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0058】
また、上述の警報発生装置1を構成する各部位のうち、N個の物体検出ユニット3a〜3nと、情報統合部30とは、物体検出装置4を構成する。
そして、上述の警報発生装置1を構成する各部位ののうち、N個の物体検出ユニット3a〜3nと、情報統合部30と、識別部40と、位置・速度算出部51と、停滞・脱出予側部53と、健全性自己診断部80とは、障害物検知装置2を構成する。
【0059】
なお、障害物検知装置2は、横断路の移動物体検知装置に該当する。また、センサー10は、レーザ光線発射・受光手段に該当し、物体検出部20は、制御手段に該当し、情報統合部30は、物体検出統合手段に該当する。さらに、識別部40は、車両接近判断手段と、移動物体判断手段とに該当し、位置・速度算出部51は、位置変化予測手段に該当し、停滞・脱出予側部53は、妨害予測手段に該当する。また、健全性自己診断部80は、自己診断手段に該当する。
【0060】
[センサー10の構成の説明]
センサー10は、図3(a)に例示するように、レーザ光線照射式のセンサーである。具体的には、センサー10は、踏切道を含む監視領域へ向けてレーザ光線を照射する照射部110aと、照射部110aを水平方向に回転させる駆動部110bと、照射部110aから照射されたレーザ光線の進行方向を変更するための反射ミラー110c,110d、照射部110aによって照射された後に物体によって反射されたレーザ光線を受光するための受光部110eと、を備えている。なお、反射ミラー110cは、物体によって反射されたレーザ光線を透過させて受光部110eに導く機能も有している。
【0061】
また、上述の監視領域については、図2に例示するように、列車が走行するための軌道(走行路)に設置された踏切道(横断路)に存在する通行人や自転車などの「物体」を検出するため、センサー10の個数や各センサー10の設置場所、各センサー10のレーザ光線の照射方向などを考慮することにより、少なくとも踏切道を含むよう設定されている。本実施形態では、図2に例示するように、4台のセンサー10a〜10bが物体検出ユニット3a〜3dに収納されて、監視領域の4隅に設置されている。
【0062】
なお、上述の監視領域に存在する「物体」は、「固定物体」および「移動物体」に分類される。このうち固定物体とは、建築限界内に設置されており、障害物検知の対象から除外すべき性質のものを云い、具体的には、種々の構造物や警報機、遮断機、標識、遮断桿、操作器、柵、縁石などが挙げられる。なお、本実施形態のようなレーザ光線による障害物検知では、警報発生装置1の起動時に一定時間以上動かない物体を固定物体として認識し、移動物体とは区別して処理を行うことが考えられる。このことにより、例えば、監視領域内に信号機や標識類、ATS地上子の制御器等の固定物が存在する場合についても、移動物体のみを選択的に検知対象とすることが可能となる。また、移動物体は、上述の物体のうち固定物体を除いたものを云い、具体例としては、自動車や二輪車、歩行者等が挙げられる。なお、移動物体が踏切内に落とした物体については、固定物体とは区別して識別する。また、踏切を通過する列車については、従来の障害物検知装置と同様に、信号条件を用いて特殊信号発光機60への出力をマスクすることで、障害物検知対象から排除している。
【0063】
このように構成されたセンサー10は、踏切の踏切道に存在する物体を検出することができる。すなわち、センサー10は、照射部110aが、踏切の踏切道を含む監視領域へ向けて、レーザ光線を水平方向に約180度の範囲で回転方位ごとに高速・高密度で照射し、その照射したレーザ光線が踏切の踏切道に存在する物体に当たって反射した場合には、受光部110eがその反射されたレーザ光線を受光し、物体から受光部110eまでの距離を計測する(図3(b)参照)。そして、センサー10は、照射したレーザ光線を受光した場合には、その受光したレーザ光線の照射角度および距離の測定値を示す出力信号を物体検出部20へ出力する。一方、センサー10は、照射したレーザ光線を受光しない場合には、その受光しないレーザ光線の照射角度および受光なしを示す出力信号を物体検出部20へ出力する。
【0064】
[物体検出部20a〜20dの構成の説明]
物体検出部20a〜20dは、センサー10a〜10dからの出力信号に基づき、踏切道に存在する移動物体の位置を検出する機能を有する。具体的には、物体検出部20a〜20dは、センサー10a〜10dからの出力信号である距離の測定値を示す信号もしくは受光なしを示す信号をレーザ光線の照射角度に関連付けて、物体検出部20a〜20dが有するメモリ(図示せず)に記録する。
【0065】
また、物体検出部20は、検出した移動物体の位置を示す情報を情報統合部30へ出力する。ここで、物体検出部20a〜20dが有するメモリは、記憶部に該当する。
[固定物体の位置データの記憶手法の説明]
物体検出部20a〜20dが、例えば数秒間などの所定時間の間、レーザ光線の照射角度に関連つけて記憶されている距離の測定値を示す信号もしくは受光なしを示す信号が変化するか否かを判断し、変化なしと判断された場合に「固定物体」と識別して、物体検出部20a〜20dが有するメモリに固定物体の位置データとして記憶する。
【0066】
[反射率の低い物体の検出手法の説明]
次に、反射率の低い物体の検出手法を説明する。
固定物体の位置データと監視領域内に存在する物体の位置データとは、物体検出部20a〜20dが有するメモリに記録されているのであるが、この物体検出部20a〜20dが有するメモリに記録されている固定物体の位置データと監視領域内に存在する物体の位置データとを物体検出部20a〜20dが読み出す。そして、物体検出部20a〜20dが読み出された固定物体の位置データ中から距離の測定値を示す信号のあるレーザ光線の照射角度ごとに、そのレーザ光線の照射角度に対応する監視領域内に存在する物体の位置データ中から受光なしを示す信号のあるレーザ光線の照射角度を選定する。そして、その選定されたレーザ光線の照射角度がある場合には、物体検出部20a〜20dがそのレーザ光線の照射角度の位置には、レーザ光線を反射しない移動物体が存在すると判断する。一方、選定されるレーザ光線の照射角度がない場合には、物体検出部20a〜20dが監視領域内にレーザ光線を反射しない移動物体が存在しないと判断する。
【0067】
[反射する物体の検出手法の説明]
次に、反射する物体の検出手法を説明する。
物体検出部20a〜20dが読み出された監視領域内に存在する物体の位置データ中から距離の測定値を示す信号のあるレーザ光線の照射角度ごとに、そのレーザ光線の照射角度に対応する固定物体の位置データが距離の測定値を示す信号の場合には、それぞれの距離の測定値を示す信号から距離の差分を計算する。そして、物体検出部20a〜20dがその差分が所定値例えばセンサー10a〜10dに固有の分解能の値より大きい場合には、そのレーザ光線の照射角度を選定する。一方、そのレーザ光線の照射角度に対応する固定物体の位置データが受光なしを示す信号の場合には、物体検出部20a〜20dがそのレーザ光線の照射角度を選定する。そして、選定されたレーザ光線の照射角度がある場合には、物体検出部20a〜20dがそのレーザ光線の照射角度の位置には、レーザ光線を反射する移動物体が存在すると判断する。また、物体検出部20a〜20dのセンサー10a〜10dから移動物体までの距離は、物体検出部20a〜20dがその選定されたレーザ光線の照射角度に対応する監視領域内に存在する物体の位置データ中の距離の測定値を示す信号から読み出す。一方、この処理によって選定されるレーザ光線の照射角度がない場合には、物体検出部20a〜20dが監視領域内にレーザ光線を反射する移動物体が存在しないと判断する。
【0068】
[移動物体の検出手法の説明]
上述した[反射率の低い物体の検出]によって選定された受光なしを示す信号のあるレーザ光線の照射角度がある場合や[反射する物体の検出処理]によって選定されたレーザ光線の照射角度がある場合には、物体検出部20a〜20dが監視領域に移動物体があると判断する。一方、「反射率の低い物体の検出処理」によって選定されるレーザ光線の照射角度がなく、且つ「反射する物体の検出処理」によって選定されるレーザ光線の照射角度もない場合には、物体検出部20a〜20dが監視領域に移動物体がないと判断する。
【0069】
[情報統合部30の構成の説明]
情報統合部30は、N個の物体検出部20a〜20nからの出力信号を統合し、その統合された物体の位置を示す情報を識別部40へ出力する機能を有する。なお、本実施形態のように警報発生装置1が4個のセンサー10a〜10dおよび4個の物体検出部20a〜20dを備える場合には、情報統合部30は、4個の物体検出部20からの出力信号を統合して識別部40へ出力する。
【0070】
[統合手法の説明]
上述した[反射率の低い物体の検出処理]によって選定された受光なしを示す信号のあるレーザ光線の照射角度がある場合には、情報統合部30が次のように移動物体の存在エリアの絞込みを行なう。図5(a)に例示するようにセンサー10によって照射したレーザ光線が反射率の少ない障害物に当たった場合には障害物に当たったレーザ光線が反射されにくいが、障害物を除いたレーザ光線を反射する背景にレーザ光線が当たった場合にはレーザ光線が反射される。したがって、レーザ光線が反射されにくいレーザ光線の照射角度には、反射率の少ない障害物が存在すると判断できる。しかし、反射率の少ない障害物が存在するレーザ光線の照射角度を検出できるが、距離を検出できないために正確な位置を検出できない。しかし、図5(b)に例示するように、反射率の少ない障害物を挟んで互いに対向するように設置された2つのセンサー10a,10bによって反射率の少ない障害物にレーザ光線を照射した場合には、センサー10aから反射率の少ない障害物の外縁を結んだ2つの直線とセンサー10bから反射率の少ない障害物の外縁を結んだ2つの直線が交差する間の領域に反射率の少ない障害物が存在すると絞り込める。また、図6(a)は、踏切に存在する障害物としての自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図である。そして、図6(b)は、踏切に存在する自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図である。この図6(b)において、自動車91の車体が反射率の少ない黒色の場合には、物体検出ユニット3bのセンサー10b(図示せず)によって照射されたレーザ光線は自動車91の車体から反射されにくい。しかし、背景となっている固定物体としての柵90dがレーザ光線を反射する物体の場合には、物体検出ユニット3bのセンサー10bによって照射されたレーザ光線は柵90dから反射される。そこで、物体検出ユニット3bのセンサー10bから反射されるレーザ光線の照射角度と反射されにくいレーザ光線の照射角度の境界を結んだ直線を2本引けばその直線の間のレーザ光線の照射角度間に反射率の少ない黒色の自動車91が存在すると判断する。同様に物体検出ユニット3cのセンサー10cから反射されるレーザ光線の照射角度と反射されにくいレーザ光線の照射角度の境界を結んだ直線を2本引けばその直線の間のレーザ光線の照射角度間に反射率の少ない黒色の自動車91が存在すると判断する。そして、物体検出ユニット3bのセンサー10bから引いた2本の直線と物体検出ユニット3cのセンサー10cから引いた2本の直線が交差する間の領域に反射率の少ない黒色の自動車91が存在すると判断する。
【0071】
[移動物体の位置・形状推定手法の説明]
上述した[反射する物体の検出]によって選定されたレーザ光線の照射角度がある場合には、情報統合部30が次のように移動物体の位置と形状を推定する。図6(c)は、踏切に存在する自動車91のタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図である。この図6(c)において、自動車91のタイヤがレーザ光線を反射する物体である場合には、物体検出ユニット3bのセンサー10bによって照射されたレーザ光線は自動車91のタイヤから反射される。そこで、読み出された監視領域内に存在する物体の位置データ中から選定されたレーザ光線の照射角度ごとの距離の測定値から物体検出ユニット3bのセンサー10bからの距離を読み出して自動車91のタイヤの位置を検出する。また、同様に物体検出ユニット3cのセンサー10cによって照射されたレーザ光線は自動車91のタイヤから反射されるので、読み出された監視領域内に存在する物体の位置データ中から選定されたレーザ光線の照射角度ごとの距離の測定値から物体検出ユニット3cのセンサー10cからの距離を読み出して自動車91のタイヤの位置を検出する。物体検出ユニット3bのセンサー10bと物体検出ユニット3cのセンサー10cとによって検出された自動車91のタイヤの位置は、異なる方向から検出されたものであるから例えば自動車91のタイヤの一方向からの形状だけなく他方向からの形状も検出できるので、自動車91のタイヤの位置と形状を推定できる。
【0072】
そして、図6(d)は、情報統合部30が以上説明した手法によって検出した自動車91の4つのタイヤの検出位置と上述した[統合手法の説明]において検出した自動車91の車体の検出位置とを統合したものである。さらに、図6(e)は、その統合した検出位置に基づいて自動車91全体の位置の検出と形状とを推定したものである。このように例えば反射率の少ない黒色の自動車91であってもその位置の検出と形状とを推定できる。
【0073】
なお、図7(a)は、上述した[移動物体の位置・形状推定手法]を実験した踏切に存在する障害物としての自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図である。図7(b)は、上述した[統合手法]によって踏切に存在する自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果を示す説明図である。図7(c)は、上述した[移動物体の位置・形状推定手法]によって踏切に存在する自動車91の4つのタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果と、上述した踏切に存在する自動車91の車体の検出結果とを統合した結果を示す説明図である。なお、図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、情報統合部30が物体検出部20a〜20dから出力された移動物体の位置を示す情報に基づき、監視領域に存在する物体の位置を2次元直交座標系に変換したものである。具体的には、X軸が軌道の延長方向に対してほぼ平行に設定され、Y軸が踏切道の延長方向に対してほぼ平行に設定されている。
【0074】
[識別部40の構成の説明]
識別部40は、遮断棹を上げ下ろしさせるなどの踏切制御を実行する外部の踏切制御装置100に接続されており、この踏切制御装置100から踏切が鳴動中であることを示す情報を取得可能である。そして、識別部40は、踏切制御装置100から踏切が鳴動中であることを示す情報を取得した場合には、監視領域に移動物体が存在するか否かを判断するとともに、その移動物体が小型の移動物体であるのか大型の移動物体であるのかを識別する機能を有する。そして、識別部40は、移動物体が小型の移動物体である場合にはその旨を位置・速度算出部51へ出力し、一方、移動物体が大型の移動物体である場合にはその旨を発光制御部54へ出力する機能を有する。
【0075】
[位置・速度算出部51の構成の説明]
位置・速度算出部51は、識別部40から出力された監視領域に存在する小型の移動物体に関する情報に基づき、その小型の移動物体の位置および移動速度を算出する機能を有する。また、算出した小型の移動物体の位置および移動速度に基づき、各小型の移動物体を追跡する機能を有する。また、小型の移動物体についての追跡結果を停滞・脱出予測部53へ出力する機能を有する。また、小型の移動物体が監視領域内で突然消失してから一定時間以上追跡できなくなった場合には、この小型の移動物体についての追跡を中断するとともに、この小型の移動物体についての追跡を中断した旨を発光制御部54へ出力する機能を有する。
【0076】
[停滞・脱出予測部53の構成の説明]
また、停滞・脱出予測部53は、位置・速度算出部51から出力された小型の移動物体についての追跡結果に基づき、その小型の移動物体が監視領域に停滞しているのか、または小型の移動物体が監視領域から脱出しようとしているのかを判断する機能を有する。また、停滞・脱出予測部53は、小型の移動物体が監視領域に停滞しているか、低速であるため脱出することが困難と予測する場合には、その旨を発光制御部54へ出力する機能および音声制御部55へ出力する機能を有する。
【0077】
なお、停滞・脱出予測部53は、妨害予測手段に該当する。
[特殊信号発光機60および音声発生部70の構成の説明]
特殊信号発光機60は、踏切道に接近中の列車の運転者に対して特殊信号を発光する機能を有する。また、音声発生部70は、踏切の踏切道に存在する通行人などに対して警報音を発生させる機能を有する。
【0078】
[発光制御部54および音声制御部55の構成の説明]
発光制御部54は、識別部40や位置・速度算出部51や停滞・脱出予測部53からの出力信号を受信した場合には、特殊信号発光機60を制御して特殊信号を発光させることにより、踏切に接近中の列車の運転者に対して、踏切の踏切道に障害物が存在する旨を知らせて注意喚起する機能を有する。
【0079】
また、音声制御部55は、停滞・脱出予測部53からの出力信号を受信した場合には、音声発生部70を制御して警報音を発生させることにより、踏切の踏切道に存在する通行人などに対して注意喚起する機能を有する。
【0080】
[健全性自己診断部80の構成の説明]
健全性自己診断部80は、警報発生装置1が正常に作動中であるか否かを判断する機能を有する。具体的には、健全性自己診断部80は、上述の固定物体の一つを常時監視し、その監視結果に基づいてその特定の固定物体が同一位置に検出される場合には警報発生装置1の各構成部位が正常に作動中であると判断する。
【0081】
[警報発生処理の説明]
次に、警報発生装置1の物体検出部20a〜20d、情報統合部30、識別部40、位置・速度算出部51、停滞・脱出予側部53、発光制御部54および音声制御部55が実行する警報発生処理を、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、この処理は、警報発生装置1が踏切に設置されてその電源が投入された際に実行される。なお、電源投入後の警報発生装置1については、メンテナンス時以外は停止させずに継続して作動させる。
【0082】
まず、物体検出部20a〜20dが、上述した[固定物体の位置データの記憶手法]に基づいて監視領域内に存在する固定物体の位置データを記憶する(S110)。
そして、識別部40が、踏切が鳴動中か否かを判断する(S112)。具体的には、踏切が鳴動中であることを示す情報を外部の踏切制御装置100から取得した場合には、識別部40が、踏切が鳴動中であると判断する。そして、踏切が鳴動中ではないと判断された場合には(S112:NO)、踏切が鳴動中であると判断されるまでS112の処理を繰り返し実行して待機する。一方、踏切が鳴動中であると判断された場合には(S112:YES)、監視領域の監視を開始する(S115)。
【0083】
そして、物体検出部20a〜20dが、監視領域内に存在する物体の位置データを記憶する(S120)。具体的には、物体検出部20a〜20dが、監視領域内におけるセンサー10a〜10dからの出力信号である距離の測定値を示す信号もしくはレーザ光線の受光なしを示す信号をレーザ光線の照射角度に関連付けて、物体検出部20a〜20dが有するメモリに記録する。
【0084】
次に、物体検出部20a〜20dが、上述した[反射率の低い物体の検出手法]及び[反射する物体の検出手法]に基づいてレーザ光線の照射角度ごとに、監視領域内に存在する物体の位置データと固定物体の位置データとの差を抽出する(S125)。S125の処理が終了したらS130の処理を行なう。
【0085】
S130の処理においては、物体検出部20a〜20dが、上述した[移動物体の検出手法]に基づいて監視領域に移動物体が存在するか否かを判断する。そして、監視領域に移動物体がないと判断された場合には(S130:NO)、S112へ戻り上述した処理を行なう。一方、監視領域に移動物体があると判断された場合には(S130:YES)、S140の処理を行なう。
【0086】
S140の処理においては、情報統合部30が上述した[統合手法]に基づいて移動物体の存在エリアの絞込みの処理を行なう。S140の処理が終了したらS145の処理を行なう。
【0087】
S145の処理においては、情報統合部30が上述した[移動物体の位置・形状推定手法]に基づいて移動物体の位置と形状を推定する。
次に、S145の処理にて推定した結果に基づいて識別部40がその移動物体が小型の移動物体であるのか大型の移動物体であるのかを識別する移動物体の大きさを推定する(S150)。
【0088】
そして、識別部40が推定された移動物体は大型か否かを判断する(S155)。移動物体が大きいと判断された場合には(S155:YES)、踏切に接近中の列車に対して踏切の踏切道に大型の移動物体が存在する旨を知らせて注意喚起するために後述するS160に移行する。一方、その障害物が大型ではないと判断された場合には(S155:NO)、その移動物体が小型の移動物体であると判断し、S162の処理を行なう。
【0089】
S162の処理において、音声制御部55が、音声発生部70を制御して警報音を発生させることにより、踏切の踏切道に存在する通行人などに注意喚起する。そして、S162の処理が終了したら、S165の処理及びS175の処理へ移行する。なお、S165以降の処理とS175以降の処理とは並行して処理される。
【0090】
S165の処理において、位置・速度算出部51が小型の移動物体の移動速度を計算する。続いて、S170の処理において、S165にて算出された小型の移動物体の移動速度が歩行者以上か否かを判断する(S170)。具体的には、S170の処理において、その小型の移動物体が監視領域に停滞しているのか、または小型の移動物体が監視領域から脱出しようとしているのかを判断する。そして、その小型の移動物体が監視領域に停滞していると判断された場合、すなわち、小型の移動物体の移動速度が歩行者以上ではないと判断された場合には(S170:NO)、後述するS160へ移行する。一方、小型の移動物体の移動速度が歩行者以上であると判断された場合には(S170:YES)、S185の処理を行なう。
【0091】
また、S175の処理において、位置・速度算出部51が小型の移動物体の位置を算出し、その小型の移動物体の追跡を行なう。続いて、S180の処理において、小型の移動物体の追跡結果は正常か否かを判断する。具体的には、S175にて位置・速度算出部51から出力された小型の移動物体についての追跡結果に基づき、レーザ光線の遮蔽や歩行者の転倒等により小型の移動物体を見失っていないか否かを判断する。そして、レーザ光線の遮蔽や歩行者の転倒等により小型の移動物体見失ったと判断された場合、すなわち追跡が正常でない場合には(S180:NO)、後述するS160へ移行する。一方、小型の移動物体が監視領域から脱出しようとしていると判断された場合、すなわち追跡が正常である場合には(S180:YES)、S185の処理を行なう。
【0092】
S185の処理において、警報発生装置1の健全性を判断する。具体的には、健全性自己診断部80が、先のS110にて認識した固定物体の一つ(例えば標識など)を常時監視し、その監視結果に基づいてその特定の固定物体が同一位置に検出される場合には警報発生装置1の各構成部位が正常に作動中であると判断する。警報発生装置1が正常に作動中であると判断された場合には(S185:YES)、S112へ移行してS112以下の処理を繰り返し実行する。一方、警報発生装置1が正常に作動中ではないと判断された場合には(S185:NO)、警報発生装置1が正常ではない旨を外部へ出力するとともに、本警報発生装置1を停止させる。そして、発光制御部54が、特殊信号発光機60を制御して特殊信号を発光させることにより、踏切の踏切道に通行人などが存在する旨を踏切に接近中の列車の運転者に知らせて注意喚起する(S190)。
【0093】
S160の処理においては、発光制御部54が、特殊信号発光機60を制御して特殊信号を発光させることにより、踏切の踏切道に通行人などが存在する旨を踏切に接近中の列車の運転者に知らせて注意喚起する。そして、S160の処理が終了したら、S112の処理へ戻り上述した処理を行なう。
【0094】
[効果]
従来の踏切障害物検知装置においては、踏切道に存在する表面が滑らかで光沢のある黒色や濃紺色の車などを正確に検出できないといった問題があった。
【0095】
それに対して、本実施形態の警報発生装置1によれば、以下の処理を実行することによって表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出できる。すなわち、(イ)監視領域内に移動物体がない状態での固定物体の位置データが記憶される。(ロ)監視領域内に存在する物体の位置データが記憶される。(ハ)固定物体の位置データ中から距離の測定値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する監視領域内に存在する物体の位置データ中から受光なしが示されている走査位置を選定する。(ニ)選定された走査位置に基づいてレーザ光線の反射率が低い物体の位置を検出する。
【0096】
また、本実施形態の警報発生装置1によれば、以下の処理をさらに実行することによって表面が滑らかで光沢のある黒い物体などレーザ光線の反射率が低い物体の位置と、一部の部位例えば自動車のタイヤなど反射物体の位置とを統合し、その統合結果を用いて移動物体の位置の検出と形状を推定できる。すなわち、(ホ)監視領域内に存在する物体の位置データ中から距離の測定値を示されている監視領域内の走査位置ごとに、その走査位置に対応する固定物体の位置データが距離の計測値を示す場合には、その走査位置を選定する。そして、その走査位置に対応する固定物体の位置データが受光なしを示す場合には、その走査位置を選定する。(へ)選定された走査位置に監視領域内に存在する物体の位置データに基づいてレーザ光線を反射する移動物体の位置を検出する。(ト)前記(ニ)による移動物体の検出結果と、前記(ヘ)による移動物体の検出結果とを統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出する。すなわち、移動物体が例えば表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車などの場合には、前記(ニ)の処理によって黒い車体が検出され、前記(ト)の処理によって、タイヤが検出される。つまり、例えば検出された黒い車体の検出結果とタイヤの検出結果とを統合すれば、移動物体例えば黒い自動車の位置をより正確に検出できる。
【0097】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0098】
(1)上記実施形態では、4台のセンサー10a〜10bが物体検出ユニット3a〜3dに収納されて、監視領域の4隅に設置されていたが、これには限らない。1台のセンサー10が物体検出ユニット3に収納されて、図9に例示するように2つの軌道の間で、且つ踏切道の側方に設置されてもよい。そして、センサー10が照射するレーザ光線の光軸を水平方向より踏切道の方向へ踏切道に入らない角度まで下げて設定されてもよい。また、情報統合部30の処理を物体検出部20で実行してもよい。
【0099】
このように構成された実施形態においては、例えば踏切道を含む監視領域に2軌道ある場合、監視領域を例えば監視領域Aと、監視領域Bとに2分割すれば、監視領域Bの1軌道を列車が通過中であっても、他の1軌道を含む監視領域Aを監視できる。また、例えば踏切道の4隅の1隅に1つの物体検出ユニット3を設置した場合では、2軌道の距離を監視しなければならないが、2つの軌道の間で、且つ踏切道の側方に設置されていれば、1軌道の距離を監視すればよい。つまり、2軌道の間に、且つ横断路の側方に1つの物体検出ユニット3を設置した場合の方が、同数の物体検出ユニットで検出感度を向上させることができる。換言すれば、検出感度を同じとすると物体検出ユニットの数を削減できる。
【0100】
また、このように構成された実施形態においては、固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場所においても地面から反射されるレーザ光線を得られるので、移動物体(表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体やレーザ光線を反射する物体例えば自動車のタイヤ)をより正確に検出することができる。
【0101】
さらに、物体検出部20から出力される移動物体の位置を示す情報を統合することがないので、情報統合部30の処理を物体検出部20で実行でき、物体検出装置4の構成が簡単になる。
【0102】
(2)上記実施形態では、4台のセンサー10a〜10bが照射するレーザ光線の光軸が水平方向に照射されたが、これには限らない。センサー10a〜10bが照射するレーザ光線の光軸を水平方向より踏切道の方向へ踏切道に入らない角度まで下げて設定されてもよい。そして、情報統合部30は、4つの物体検出部20a〜20dから出力される移動物体の位置を示す情報を統合しなくてもよい。
【0103】
このように構成された実施形態においては、上述した(1)と同様に固定物体となる標識、柵、縁石などが少ない場所においても地面から反射されるレーザ光線を得られるので、移動物体(表面が滑らかで光沢のある黒い物体例えば黒い自動車の車体などレーザ光線の反射率が低い物体やレーザ光線を反射する物体例えば自動車のタイヤ)をより正確に検出することができる。
【0104】
また、このように構成された実施形態においては、情報統合部30が4つの物体検出部20a〜20dから出力される移動物体の位置を示す情報を統合しないので、統合するための処理負荷を軽減できる。そして、センサー10a〜10dから照射されるレーザ光線の光軸の高さと水平位置調整によりレーザ光線の走査面を合わせる必要がなくなるので、物体検出装置4の設置と保守とが容易となる。さらに、レーザ光線の光軸が地面方向に発射されるため、レーザ光線が横断路を歩行中の歩行者の目に入りにくい。
【0105】
(3)上記実施形態では、警報発生装置1を鉄道車両が走行する軌道に設置された踏切に設置しているが、これには限られず、警報発生装置1を走行路の横断路に設置してもよい。一例を挙げると、警報発生装置1を自動車などの車両が走行する道路の横断歩道に設置するといった具合である。また、警報発生装置1を工場などの構内道路の横断路に設置するといった具合である。
【0106】
(4)上記実施形態では、4台のセンサー10a〜10dが監視領域の4隅に設置され、そのセンサー10a〜10dが監視領域へ向けてレーザ光線を照射しているが、これには限られず、上述の監視領域を、例えば単線を含む監視領域とし、1つのセンサー10によってこれら監視領域をそれぞれ監視するよう構成してもよい(図4(a)参照)。また、例えば上り線を含む監視領域と下り線を含む監視領域とに分割し、2つのセンサー10によってこれら監視領域をそれぞれ監視するよう構成してもよい(図4(b)参照)。さらに、軌道の数量に合わせて監視領域を分割し、監視領域の数量と同数のセンサー10によってこれら監視領域をそれぞれ監視するよう構成してもよい(図4(c)参照)。
【0107】
(5)上記実施形態では、4台のセンサー10a〜10dが監視領域の4隅に設置されていたが、これには限らない。これら複数のセンサー10のうちの少なくとも2つを、踏切道の中央部を挟んで互いに対向するよう設置させてもよい。このようにすれば、例えば複数の通行人などが接近して存在する場合でも、対向する2つの方向からその複数の通行人などをより正確に検出することができる。
【0108】
また、これら複数のセンサー10のうちの少なくとも2つを、軌道の側方(線路脇)のうちの何れか一方に設置させてもよい。このようにすれば、センサー10を接続するケーブルを、線路を横断するように敷設する必要がなく、センサー10の設置を容易にすることができる。
【0109】
(6)上記実施形態の警報発生装置1では、小型の移動物体が車両の走行を妨げるおそれがあると判断された場合には、発光制御部54が、特殊信号発光機60を制御して特殊信号を発光させることにより、踏切に接近中の列車の運転者に対して小型の移動物体が存在する旨を知らせて注意喚起しているが、これには限られず、車両の走行を妨げるおそれがある小型の移動物体が踏切の踏切道に存在する旨を、列車に通知するよう構成してもよい。一例を挙げると、送信制御部が、車両の走行を妨げるおそれがある小型の移動物体が踏切の踏切道に存在する旨を、送信部を制御して接近中の列車に送信させるといった具合である。このようにすれば、例えばその送信された情報を利用して接近中の列車に搭載されたATS装置を作動させることにより、事故などを未然に防ぐことができる。
【0110】
(7)上記実施形態の警報発生装置1では、情報統合部30と、識別部40と、位置・速度算出部51と、停滞・脱出予測部53とがそれぞれ別々のマイクロコンピュータとして構成されているが、これには限られず、情報統合部30が実行する機能、識別部40が実行する機能、位置・速度算出部51が実行する機能及び停滞・脱出予測部53が実行する機能を一つのマイクロコンピュータによって実行させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】警報発生装置1の概略構成図である。
【図2】警報発生装置1と4つの物体検出ユニット3a〜3dとが設置された踏切を示す説明図である。
【図3】(a)はセンサーの構造を示す説明図であり、(b)はセンサーが設置される高さを示す説明図である。
【図4】(a)はセンサー10による監視領域の他の実施形態を示す説明図であり、(b)はセンサー10a,10bによる監視領域の他の実施形態を示す説明図であり、(c)は複数のセンサー10a〜10nによる監視領域の他の実施形態を示す説明図である。
【図5】(a)はセンサー10によって障害物と背景とにレーザ光線を照射している状態を示す説明図であり、(b)は障害物を挟んで互いに対向するように設置された2つのセンサー10a,10bによって障害物にレーザ光線を照射している状態を示す説明図である。
【図6】(a)は踏切に存在する障害物としての自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図であり、(b)は自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図であり、(c)は自動車91の4つのタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出する状態を示す説明図であり、(d)は自動車91の車体の検出位置と自動車91の4つのタイヤの検出位置を統合する状態を示す説明図であり、(e)は統合した検出位置に基づいて自動車91全体の位置を検出する状態を示す説明図である。
【図7】(a)は自動車91と、軌道にそって設置されている固定物体としての柵90a〜90dとを上方から鳥瞰した様子を示す説明図であり、(b)は自動車91の車体を4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果を示す説明図であり、(c)は自動車91の4つのタイヤを4つの物体検出ユニット3a〜3dによって検出した結果と、自動車91の車体の検出結果とを統合した結果を示す説明図である。
【図8】警報発生処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】1台のセンサー10が物体検出ユニット3に収納されて、2つの軌道の間で、且つ踏切道の側方に設置された他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1…警報発生装置、2…障害物検知装置、3,3a〜3d…物体検出ユニット、4…物体検出装置、10,10a〜10d…センサー、110a…照射部、110b…駆動部、110c,110d…反射ミラー、110e…受光部、20、20a〜20d…物体検出部、30…情報統合部、40…識別部、51…位置・速度算出部、53…停滞・脱出予測部、54…発光制御部、55…音声制御部、60…特殊信号発光機、70…音声発生部、80…健全性自己診断部、90a〜90d…柵、91…自動車、100…踏切制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断路を含むよう設定された監視領域内へレーザ光線を走査しながら発射し、前記監視領域内の物体によって反射されたレーザ光線を受光した場合には前記物体からレーザ光線を受光した位置までの距離を計測し、この距離の計測値を示す距離データをレーザ光線の走査位置に関連付けて出力し、受光しない場合には受光なしを示す距離データをレーザ光線の走査位置に関連付けて出力可能なレーザ光線発射・受光手段と、
前記レーザ光線発射・受光手段を制御して前記監視領域内へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記反射されたレーザ光線を受光させ、前記レーザ光線発射・受光手段から出力された前記監視領域内の距離データに基づいて物体の位置を検出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
(イ)前記レーザ光線発射・受光手段を制御して前記監視領域内の固定物体へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記固定物体によって反射されたレーザ光線を受光させ、前記レーザ光線発射・受光手段から出力された第1の距離データを記憶部へ記憶し、
(ロ)前記レーザ光線発射・受光手段を制御して前記監視領域内の物体へレーザ光線を走査しながら発射させ、前記物体によって反射されたレーザ光線を受光させ、前記レーザ光線発射・受光手段から出力された第2の距離データを前記記憶部へ記憶し、
(ハ)前記記憶部に記憶された前記第1の距離データを読み出し、その読み出した第1の距離データ中から距離の計測値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する前記第2の距離データを前記記憶部から読み出し、その読み出した第2の距離データ中から受光なしが示されている走査位置を選定し、
(ニ)前記選定された走査位置に基づいて移動物体の位置を検出すること
を特徴とする物体検出ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出ユニットにおいて、
前記制御手段は、さらに、
(ホ)前記第2の距離データを読み出し、その読み出した第2の距離データ中から距離の計測値が示されている監視領域内の走査位置を抽出し、その抽出された走査位置ごとに、その走査位置に対応する前記第1の距離データを読み出し、その読み出した第1の距離データが距離の計測値を示す場合には、前記第2の距離の計測値と前記第1の距離の計測値との差分を算出し、その差分が所定値以上ある走査位置を選定し、さらに前記読み出した第1の距離データが受光なしを示す場合には、その走査位置を選定し、
(へ)前記選定された走査位置に対応する第2の距離データに基づいて移動物体の位置を検出し、
(ト)前記(ニ)による移動物体の検出結果と、前記(ヘ)による移動物体の検出結果とを統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出すること
を特徴とする物体検出ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の物体検出ユニットと、
走行路を走行する車両が前記走行路に設置された横断路に接近しているか否かを判断する車両接近判断手段と、
前記車両接近判断手段によって前記横断路へ前記車両が接近していると判断された場合には、前記物体検出ユニットによって検出された移動物体が移動中であるか否かを判断する移動物体判断手段と、
前記移動物体判断手段によって前記移動物体が移動中であると判断された場合には、その移動物体の位置変化を予測する位置変化予測手段と、
前記位置変化予測手段によって予測された移動物体の位置変化に基づき、前記移動物体が前記車両の走行を妨げるおそれがあるか否かを予測する妨害予測手段と、
を備えることを特徴とする横断路の移動物体検知装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の複数の物体検出ユニットと、
前記複数の物体検出ユニットそれぞれによる移動物体の検出結果を統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出するとともに、移動物体の形状を推定する物体検出統合手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の横断路の移動物体検知装置において、
前記物体検出ユニットは複数存在し、
前記複数の物体検出ユニットそれぞれによる移動物体の検出結果を統合し、統合した結果に基づいて移動物体の位置を検出するとともに、移動物体の形状を推定する物体検出統合手段と、
を備えることを特徴とする横断路の移動物体検知装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の物体検出ユニットにおいて、
レーザ光線発射・受光手段から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定されていることを特徴とする物体検出ユニット。
【請求項7】
請求項4に記載の物体検出装置において、
レーザ光線発射・受光手段から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定され、
前記物体検出統合手段は、前記複数の物体検出ユニットそれぞれによる移動物体の検出結果に基づいて移動物体の位置を検出することを特徴とする物体検出装置。
【請求項8】
請求項5に記載の横断路の移動物体検知装置において、
レーザ光線発射・受光手段から発射されるレーザ光線の光軸が横断路を含むよう設定された監視領域に平行な角度から、監視領域内の方向へ監視区域内に入らない角度までの間に設定され、
前記物体検出統合手段は、前記複数の物体検出ユニットそれぞれによる移動物体の検出結果に基づいて移動物体の位置を検出することを特徴とする横断路の移動物体検知装置。
【請求項9】
請求項1、請求項2及び請求項6の何れかに記載の物体検出ユニットにおいて、
前記横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、前記物体検出ユニットは、前記複数の走行路それぞれの間に、且つ前記横断路の側方に設置されていること
を特徴とする物体検出ユニット。
【請求項10】
請求項3、請求項5及び請求項8の何れかに記載の横断路の移動物体検知装置において、
前記横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、前記物体検出ユニットは、前記複数の走行路それぞれの間に、且つ前記横断路の側方に設置されていること
を特徴とする横断路の移動物体検知装置。
【請求項11】
請求項4または請求項7に記載の物体検出装置において、
前記横断路を含むよう設定された監視領域内に走行路が複数存在する場合には、前記物体検出ユニットは、前記複数の走行路それぞれの間に、且つ前記横断路の側方に設置されていること
を特徴とする物体検出装置。
【請求項12】
請求項3、請求項5及び請求項8の何れかに記載の横断路の移動物体検知装置において、
前記物体検出ユニットによって検出された物体のうち前記移動物体以外の物体である固定物体の一つの位置を常時監視し、その監視結果に基づいてその特定の固定物体が同一位置に検出される場合には当該横断路の移動物体検知装置の各構成部位が正常に作動中であると判断する自己診断手段を備えること
を特徴とする横断路の移動物体検知装置。
【請求項13】
請求項3、請求項5、請求項8、及び請求項10の何れかに記載の横断路の移動物体検知装置における移動物体判断手段、位置変化予測手段及び妨害予測手段として、または、請求項12に記載の横断路の移動物体検知装置における移動物体判断手段、位置変化予測手段、妨害予測手段及び自己診断手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−126025(P2007−126025A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320939(P2005−320939)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】