説明

物体検出装置および情報取得装置

【課題】コンパクトな構成にて、回折光学素子の劣化を検出可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供する。
【解決手段】情報取得装置1は、波長830nm程度のレーザ光を出射するレーザ光源111と、偏光ビームスプリッタ(PBS)113と、1/4波長板114と、DOE116と、PD117を備えている。DOE116は、レーザ光を所定のドットパターンにて目標領域に照射する。PD117は、DOE116によって回折および反射されたレーザ光の一部を受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域に光を投射したときの反射光の状態に基づいて目標領域内の物体を検出する物体検出装置およびこれに用いて好適な情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いた物体検出装置が種々の分野で開発されている。いわゆる距離画像センサを用いた物体検出装置では、2次元平面上の平面的な画像のみならず、検出対象物体の奥行き方向の形状や動きを検出することができる。かかる物体検出装置では、レーザ光源やLED(Light Emitting Device)から、予め決められた波長帯域の光が目標領域に投
射され、その反射光がCMOSイメージセンサ等の受光素子により受光される。距離画像センサとして、種々のタイプのものが知られている。
【0003】
所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの距離画像センサでは、各ドット位置におけるレーザ光の目標領域からの反射光が受光素子によって受光される。そして、各ドット位置のレーザ光の受光素子上の受光位置に基づいて、三角測量法を用いて、検出対象物体の各部(検出対象物体上の各ドット位置)までの距離が検出される(たとえば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記物体検出装置では、ドットパターンを持つレーザ光を生成するために、回折光学素子が用いられる。回折光学素子には、所定の回折パターンがホログラム等により形成され、この回折パターンによってレーザ光が回折される。かかる回折作用によって、所定のドットパターンを持つレーザ光が、目標領域に照射される。
【0006】
レーザ光がドットパターン化されると、レーザ光は、目標領域において、比較的広い範囲に分散される。しかしながら、経年変化等によって、回折光学素子の回折パターンが劣化すると、それに伴い、レーザ光に対する回折作用が変化し、分散されずに回折光学素子を透過するレーザ光が、狭い範囲に集中することも考えられる。このような場合、レーザ光の出射を中止するのが望ましい。
【0007】
回折光学素子の劣化は、たとえば、回折された光の状態をモニタすることにより検出可能である。この場合、回折光学素子よりもレーザ光の進行方向下流側にモニタ用の光学系が配置され得る。しかし、この構成では、レーザ光源、コリメータレンズ、回折光学素子およびモニタ用の光学系が直線的に並ぶため、これら部品の並び方向に装置が大型化する。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、コンパクトな構成にて、回折光学素子の劣化を検出可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置に関する。本態様に係る情報取得装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源の光軸から離れる方向に配置された回折光学素子と、前記光軸を挟んで前記回折光学素子に対向するように配置された光検出器と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記回折光学素子に導くとともに、前記回折光学素子によって反射された前記レーザ光を前記光検出器に導く光路分岐部とを備える。前記回折光学素子は、前記レーザ光を所定のパターンにて前記目標領域に照射する。また、前記光検出器は、前記回折光学素子によって回折および反射された前記レーザ光の一部を受光する。
【0010】
本発明の第2の態様は、物体検出装置に関する。この態様に係る物体検出装置は、上記第1の態様に係る情報取得装置を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンパクトな構成にて、回折光学素子の劣化を検出可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することができる。
【0012】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る物体検出装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る情報取得装置と情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る目標領域に対するレーザ光の照射状態とイメージセンサ上のレーザ光の受光状態を示す図である。
【図4】実施の形態に係る投射光学系と受光光学系の構成を示す図である。
【図5】実施の形態に係る回折光学素子の作用と光検出器の配置を示す図である。
【図6】実施の形態に係るレーザ光源の制御を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態に係る効果を検証するための投射光学系を示す図である。
【図8】実施の形態に係る効果を検証するための測定結果を示す図である。
【図9】変更例に係る光検出器の配置を示す図である。
【図10】他の変更例に係る発光ユニットと受光ユニットの光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態には、所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの情報取得装置が例示されている。
【0015】
まず、図1に本実施の形態に係る物体検出装置の概略構成を示す。図示の如く、物体検出装置は、情報取得装置1と、情報処理装置2とを備えている。テレビ3は、情報処理装置2からの信号によって制御される。
【0016】
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離(以下、「3次元距離情報」という)を取得する。取得された3次元距離情報は、ケーブル4を介して情報処理装置2に送られる。
【0017】
情報処理装置2は、たとえば、テレビ制御用のコントローラやゲーム機、パーソナルコンピュータ等である。情報処理装置2は、情報取得装置1から受信した3次元距離情報に基づき、目標領域における物体を検出し、検出結果に基づきテレビ3を制御する。
【0018】
たとえば、情報処理装置2は、受信した3次元距離情報に基づき人を検出するとともに、3次元距離情報の変化から、その人の動きを検出する。たとえば、情報処理装置2がテレビ制御用のコントローラである場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人のジャスチャーを検出するとともに、ジェスチャに応じてテレビ3に制御信号を出力するアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定のジェスチャをすることにより、チャンネル切り替えやボリュームのUp/Down等、所定の機能をテレビ3に実行させることができる。
【0019】
また、たとえば、情報処理装置2がゲーム機である場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人の動きを検出するとともに、検出した動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させ、ゲームの対戦状況を変化させるアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定の動きをすることにより、自身がテレビ画面上のキャラクタとしてゲームの対戦を行う臨場感を味わうことができる。
【0020】
図2は、情報取得装置1と情報処理装置2の構成を示す図である。
【0021】
情報取得装置1は、光学部の構成として、投射光学系11と受光光学系12とを備えている。この他、情報取得装置1は、回路部の構成として、CPU(Central Processing Unit)21と、レーザ駆動回路22と、撮像信号処理回路23と、入出力回路24と、メ
モリ25を備えている。
【0022】
投射光学系11は、ドットマトリックスパターンのレーザ光を、目標領域に照射する。受光光学系12は、目標領域から反射されたレーザ光を受光する。投射光学系11と受光光学系12の構成は、追って、図4を参照して説明する。
【0023】
CPU21は、メモリ25に格納された制御プログラムに従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU21には、投射光学系11内のレーザ光源111(後述)を制御するためのレーザ制御部21aと、3次元距離情報を生成するための3次元距離演算部21bの機能が付与される。
【0024】
レーザ駆動回路22は、CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源111(後述)を駆動する。撮像信号処理回路23は、受光光学系12内のCMOSイメージセンサ124(後述)を制御して、CMOSイメージセンサ124で生成された各画素の信号(電荷)をライン毎に順次取り込む。そして、取り込んだ信号を順次CPU21に出力する。
【0025】
CPU21は、撮像信号処理回路23から供給される信号(撮像信号)をもとに、情報取得装置1から検出対象物の各部までの距離を、3次元距離演算部21bによる処理によって算出する。入出力回路24は、情報処理装置2とのデータ通信を制御する。
【0026】
情報処理装置2は、CPU31と、入出力回路32と、メモリ33を備えている。なお、情報処理装置2には、同図に示す構成の他、テレビ3との通信を行うための構成や、CD−ROM等の外部メモリに格納された情報を読み取ってメモリ33にインストールするためのドライブ装置等が配されるが、便宜上、これら周辺回路の構成は図示省略されている。
【0027】
CPU31は、メモリ33に格納された制御プログラム(アプリケーションプログラム)に従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU31には、画像中の物体を検出するための物体検出部31aの機能が付与される。かかる制御プログラムは、
たとえば、図示しないドライブ装置によってCD−ROMから読み取られ、メモリ33にインストールされる。
【0028】
たとえば、制御プログラムがゲームプログラムである場合、物体検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動きを検出する。そして、検出された動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させるための処理が制御プログラムにより実行される。
【0029】
また、制御プログラムがテレビ3の機能を制御するためのプログラムである場合、物体検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動き(ジェスチャ)を検出する。そして、検出された動き(ジェスチャ)に応じて、テレビ1の機能(チャンネル切り替えやボリューム調整、等)を制御するための処理が制御プログラムにより実行される。
【0030】
入出力回路32は、情報取得装置1とのデータ通信を制御する。
【0031】
図3(a)は、目標領域に対するレーザ光の照射状態を模式的に示す図、図3(b)は、CMOSイメージセンサ124におけるレーザ光の受光状態を模式的に示す図である。なお、同図(b)には、便宜上、目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在するときの受光状態が示されている。
【0032】
同図(a)に示すように、投射光学系11からは、ドットマトリックスパターンを持ったレーザ光(以下、このパターンを持つレーザ光の全体を「DMP光」という)が、目標領域に向けて照射される。同図(a)には、DMP光の光束断面が破線の枠によって示されている。DMP光内の各ドットは、投射光学系11内の回折光学素子による回折作用によってレーザ光の強度が点在的に高められた領域を模式的に示している。DMP光の光束中には、レーザ光の強度が高められた領域が、所定のドットマトリックスパターンに従って点在している。
【0033】
目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在すると、これにより反射されたDMP光の各ドット位置の光は、同図(b)のように、CMOSイメージセンサ124上で分布する。たとえば、目標領域上におけるP0のドット位置の光は、CMOSイメージセンサ124上では、Ppのドット位置の光に対応する。
【0034】
上記3次元距離演算部21bでは、各ドットに対応する光がCMOSイメージセンサ124上のどの位置に入射したかが検出され、その受光位置から、三角測量法に基づいて、検出対象物体の各部(ドットマトリックスパターン上の各ドット位置)までの距離が検出される。かかる検出手法の詳細は、たとえば、上記非特許文献1(第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280)に示されている。
【0035】
図4(a)は、投射光学系11と受光光学系12の構成を示す図である。
【0036】
投射光学系11は、レーザ光源111と、コリメータレンズ112と、偏光ビームスプリッタ(PBS)113と、1/4波長板114と、アパーチャ115と、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)116と、光検出器(PD:PhotoDetector)117を備えている。また、受光光学系12は、アパーチャ121と、撮像レンズ122と、フィルタ123と、CMOSイメージセンサ124とを備えている。
【0037】
レーザ光源111は、波長830nm程度の狭波長帯域のレーザ光を出力する。コリメ
ータレンズ112は、レーザ光源111から出射されたレーザ光を平行光に変換する。PBS113は、コリメータレンズ112側から入射されたレーザ光を反射する。レーザ光源111は、PBS113の偏光面に対してレーザ光がS偏光となるように位置調整されている。
【0038】
1/4波長板114は、PBS113側から入射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、アパーチャ115側から入射されたレーザ光(DOE116からの反射回折光)を、PBS113側から入射されるときのレーザ光の偏光方向に直交する偏光方向に変換する。これにより、アパーチャ115側から入射されたレーザ光(DOE116からの反射回折光)は、PBS113に対してP偏光となり、PBS113を透過する。
【0039】
アパーチャ115は、レーザ光の光束断面を所定の形状(本実施の形態では円形)に調整する。DOE116は、入射面に回折パターンを有する。この回折パターンによる回折作用により、アパーチャ115からDOE116に入射したレーザ光は、ドットマトリックスパターンのレーザ光に変換されて、目標領域に照射される。
【0040】
なお、図4(b)に示すように、DOE116による回折光には、透過光と反射光がある。このうち、透過光(透過回折光)が、上記のように、DMP光として目標領域に投射される。DOE116によって回折および反射されたレーザ光(反射回折光)は、アパーチャ115を通って1/4波長板114に入射する。その後、反射回折光は、1/4波長板114により直線偏光に変換され、上記のようにPBS113を透過する。
【0041】
PD117は、PBS113を透過した反射回折光を受光する。PD117の配置については、追って、図5を参照して説明する。
【0042】
目標領域から反射されたレーザ光は、アパーチャ121を介して撮像レンズ122に入射する。アパーチャ121は、撮像レンズ122のFナンバーに合うように、外部からの光に絞りを掛ける。撮像レンズ122は、アパーチャ121を介して入射された光をCMOSイメージセンサ124上に集光する。
【0043】
フィルタ123は、レーザ光源111の出射波長(830nm程度)を含む波長帯域の光を透過し、その他の波長帯域をカットするバンドパスフィルタである。CMOSイメージセンサ124は、撮像レンズ122にて集光された光を受光して、画素毎に、受光光量に応じた信号(電荷)を撮像信号処理回路23に出力する。ここで、CMOSイメージセンサ124は、各画素における受光から高レスポンスでその画素の信号(電荷)を撮像信号処理回路23に出力できるよう、信号の出力速度が高速化されている。
【0044】
投射光学系11と受光光学系12は、ベース300に設置されている。ベース300には、さらに、回路基板200が設置され、この回路基板200から、レーザ光源111、PD117、CMOSイメージセンサ124に配線(フレキシブル基板)201〜203が接続されている。回路基板200には、図2に示すCPU21やレーザ駆動回路22等の情報取得装置1の回路部が実装されている。
【0045】
図5は、PD117の配置方法を説明する図である。同図(a)は、DOE116に対するレーザ光の入射状態を模式的に示し、同図(b)は、PD117に対するDOE116からの反射回折光の照射状態を模式的に示す。
【0046】
上記のように、レーザ光は、平行光の状態でDOE116に入射する。このため、DOE116からの反射回折光のうち、DOE116に回折されずに反射された0次の反射回折光も、略平行光の状態で、アパーチャ115へと戻る。よって、同図(a)のようにレ
ーザ光がDOE116に入射すると、0次の反射回折光は、同図(a)のビームサイズと略同じサイズで、PD117に向かって照射される。この他、DOE116によって回折された1次以上の反射回折光も、PD117に向かって照射される。1次以上の反射回折光は、回折により広がっているため、同図(b)のように、0次の反射回折光の領域を含む広い領域に照射される。なお、0次の反射回折光の領域にも1次以上の反射回折光が照射される。
【0047】
本実施の形態では、同図(b)に示すように、0次の反射回折光の照射領域に略含まれるように、PD117の受光面117aが配置される。したがって、PD117は、0次の反射回折光と、1次以上の反射回折光を受光する。1次以上の反射回折光は、広い範囲に分散しているため、PD117によって受光される光量は比較的小さい。このため、PD117によって受光される光量は、1次以上の反射回折光よりも0次の反射回折光の方が、数段多い。よって、PD117からの出力信号は、0次の反射回折光による影響を大きく受ける。
【0048】
DOE116が正常である場合、受光面117aには、所定の光量の0次の反射回折光が照射される。これに対し、DOE116が経年変化等によって劣化すると、回折作用の変化により、受光面117aに照射される0次の反射回折光の光量が増減し、これに伴い、PD117からの出力信号が増減する。よって、PD117からの出力をモニタすることで、DOE116の劣化を検知することができる。
【0049】
図6(a)は、PD117からの出力信号に基づくレーザ制御部21aの制御を示すフローチャートである。本実施の形態では、図6(b)に示すように、PD117からの出力信号(PD信号)を監視するために閾値S1、S2が設定される。PD信号がこの閾値S1、S2の範囲を外れたことによって、DOE116が劣化した(異常である)と判定される。
【0050】
同図(a)を参照して、レーザ光源111が点灯されると(S101)、PD信号がサンプリングされ(S102)、サンプリングされたPD信号の値が、閾値S1と閾値S2の間の範囲にあるかが判定される(S103)。PD信号の値が閾値S1と閾値S2の間の範囲にあれば、レーザ光源111の点灯が維持され、ステップS102、S103が繰り返される。
【0051】
しかる後、PD信号が閾値S1と閾値S2の間の範囲から外れると(S103:YES)、DOE116が劣化した(異常である)と判定され、レーザ光源111が停止される。これにより、目標領域に対するDMP光の照射が中止される。たとえば、図6(b)の例では、時間TEにおいて、PD信号が閾値S1と閾値S2の間の範囲から外れ、目標領域に対するDMP光の照射が中止される。これにより、たとえば、レーザ光のパワーが目標領域の一部に集中するのを防止でき、安全性を確保することができる。
【0052】
以上、本実施の形態によれば、図4(a)に示すように、レーザ光源111から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるよう投射光学系11が構成されているため、高さ方向(ベース300の設置面に垂直な方向)における投射光学系11のサイズを小さくでき、投射光学系11をコンパクトにすることができる。
【0053】
たとえば、図4(c)の比較例のように、DOE116の劣化を検出するためのモニタ光学系118を、DOE116の出射面側に配置すると、レーザ光源111、コリメータレンズ112、アパーチャ115およびDOE116と、モニタ光学系118が、高さ方向に一列に並ぶため、投射光学系11の高さHがかなり高くなる。この場合、モニタ光学系118は、DOE116を透過した透過回折光の一部を受光するよう構成される。
【0054】
これに対し、本実施の形態では、図4(a)に示すように、レーザ光源111から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるため、高さ方向(ベース300の設置面に垂直な方向)における投射光学系11のサイズを小さくでき、投射光学系11をコンパクトにすることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、図6を参照して説明したとおり、PD信号に基づきDOE116の劣化(異常)が検出されると、レーザ光源111が停止されるため、不安定な状態のレーザ光が目標領域に照射されるのを防止でき、情報取得装置の使用時の安全性を高めることができる。
【0056】
なお、本願発明者らは、PD信号に基づきDOE116の劣化(異常)を検出可能であることを、実際に測定を行うことにより検証した。以下、この検証について説明する。
【0057】
図7(a)は、検証に用いた投射光学系の構成を示す図である。同図の投射光学系は、図4に示す投射光学系11に比べて、アパーチャの位置が異なっている。すなわち、図4の投射光学系11では、アパーチャ115が1/4波長板114とDOE116との間に配置されたが、図7(a)の投射光学系では、アパーチャ115aが、レーザ光源111とコリメータレンズ112との間に配置されている。また、PD117は、パワーメータPMに配置されている。パワーメータPMは、PD117が受光したレーザ光のパワーを測定する。図7(a)の投射光学系のその他の構成は、図4と投射光学系11と同じである。
【0058】
アパーチャ115aは、レーザ光源111から出射された楕円形のレーザ光を略円形のレーザ光に整形する。測定において、コリメータレンズ112とPBS113との間のギャップは100mm、PBS113と1/4波長板114との間のギャップは1mm、1/4波長板114とDOE116との間のギャップは1mm未満、PBS113とパワーメータPMとの間のギャップは11mmに設定された。PBS113には、エドモンド・オプティックス社製47784−Kが用いられ、1/4波長板114には、エドモンド・オプティックス社製46412−Kが用いられ、パワーメータには、アドバンテスト社製Q8230が用いられた。
【0059】
レーザ光源111は、出射波長が830nmであり、同図Y軸方向にレーザ光を出射するように配置されている。レーザ光源111の光軸とコリメータレンズ112の光軸は一致し、コリメータレンズ112はレーザ光を略平行光に変換する位置に配置されている。PBS113は、コリメータレンズ112からのレーザ光がS偏光で入射するよう配置され、入射したレーザ光をZ軸方向に反射する。1/4波長板114とDOE116は、それぞれ、入射面がZ軸に垂直となるように配置され、PD117は、受光面がZ軸に垂直となるように配置されている。
【0060】
DOE116は、DOE116の前方(Z軸正方向)2mの位置に設定された仮想平面において、縦1.9m、横2.3mの長方形の領域に25000個のドットを均等に分散させるための回折パターンが、出射面に形成されている。この回折パターンは、マルチステップ型の回折構造により構成されている。
【0061】
測定時には、図7(a)の投射光学系において、レーザ光源111から出射パワー200mWでレーザ光を出射させ、パワーメータPMで受光強度を測定した。この測定では、まず、PD117の中心が、DOE116で回折および反射されたレーザ光(反射回折光)の中心に一致する位置(オフセット=0)にPD117を配置し、この状態で、上記パワーのレーザ光を出射させてPD117の受光パワーを測定した。さらに、レーザ光源1
11から上記パワーのレーザ光を出射させたまま、上記オフセット0の位置から同図左方向(Y軸負方向)に1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmに変位した位置にPD117を移動させ、これら各位置において、それぞれ、PD117の受光パワーを測定した。
【0062】
次に、DOE116の出射面のレーザ光出射位置に水を滴下し、当該出射面に、レーザ光の輪郭よりもやや大きめの輪郭の水滴を付着させた。この状態で、上記パワーのレーザ光を出射させ、上記と同様、オフセット=0mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmの各位置において、それぞれ、PD117の受光パワーを測定した。
【0063】
図8は、測定結果を示す図である。図中、“実験前”のグラフは水滴を付着させる前に上記測定を行ったときの測定結果を示し、“水滴付着時”のグラフは水滴を付着させた状態で上記測定をおこなったときの測定結果を示す。
【0064】
まず、“実験前”のグラフを参照すると、PD117の受光パワーは、PD117のオフセットが増えるに従って緩やかに減少し、オフセットが5mmを超えるあたりから、PD117の受光パワーが急激に低下することが分かる。ここで、オフセットが5mmの位置は、PD117の受光面のY軸負方向の端部が反射回折光の領域の境界に到達する位置であると推測され得る。したがって、反射回折光は、PD117の受光面を含む平面において、反射回折光の中心から左右に所定長さの広がりを持つことが分かる。かかる反射回折光の広がり具合は、DOE116を透過して目標領域に向かうレーザ光の広がり具合を反映するものであると推察され得る。
【0065】
次に、“水滴付着時”のグラフを参照すると、PD117の受光パワーは、PD117のオフセットに拘わらず、略1mW程度で推移している。また、PD117の受光パワーは、オフセットが10mmを超えてさらにオフセットが進んでも、0に接近しにくいことが分かる。このことから、反射回折光は、PD117の受光面を含む平面において、“実験前”の場合に比べてかなり広い範囲に広がっているものと推測され得る。この場合、DOE116を透過して目標領域に向かうレーザ光もまた、“実験前”の場合に比べてかなり広い範囲に広がるものと推察され得る。
【0066】
図8に示された2つのグラフを比較すると、DOE116の出射面に水滴が付着し、DOE116の出射面に形成された回折パターンに異常が生じると、PD117の受光パワーが大きく変化することが分かる。よって、DOE116が正常な状態において、PD117の中心が、反射回折光の中心付近(反射回折光の照射領域の範囲内)に位置づけられるように、PD117を配置することにより、PD117の検出信号(PD信号)をもとにDOE116の異常を検出することができ、また、この異常による投射レーザ光の異常を検出することができる。
【0067】
したがって、図6(a)のように、PD信号に基づきDOE116の劣化(異常)が検出されると、レーザ光源111が停止されるように制御を行うことにより、不安定な状態のレーザ光が目標領域に照射されるのを防止でき、情報取得装置の使用時の安全性を高めることができる。
【0068】
なお、上記測定では、“水滴付着時”のPD117の検出信号(PD信号)の値が“実験前”のPD信号の値よりも数段小さくなったが、DOE116に生じる劣化(異常)の種類によっては、異常時のPD信号の値が正常時のPD信号の値よりも大きくなることが想定され得る。この場合、DOE116から目標領域に向かうレーザ光は、狭い範囲に集中する。このような異常は、図6(b)のように、正常時のPD信号よりも低い閾値S1
の他、正常時の検出信号よりも高い閾値S2を設定し、PD信号が閾値S1、S2の範囲内にないときに異常と判定することにより検出され得る。したがって、図6(a)の制御によれば、多様な形態で起こり得るDOE116の異常を的確に検出することができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0070】
たとえば、上記実施の形態では、図5(b)に示すように、PD117の受光面117aを0次の反射回折光の照射領域に配置したが、図9(b)のように、0次の反射回折光の照射領域を除く反射回折光の照射領域に受光面117aを配置しても良い。この構成においても、DOE116が正常である場合には、受光面117aに、1次以上の反射回折光が所定の光量だけ照射される。また、DOE116が経年変化等によって劣化すると、回折作用の変化により、受光面117aに照射される1次以上の反射回折光の光量が増減し、これに伴い、PD117からの出力信号が増減する。よって、図5(b)の場合と同様、PD117からの出力をモニタすることで、DOE116の劣化を検知することができる。この他、0次の反射回折光の照射領域に一部が掛かるように、受光面117aを配置しても良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、図4(a)に示すように、キュービック状のPBS113を用いたが、図10(a)に示すように、板状のPBS121を用いても良い。この場合、偏光面がベース300の設置面に対して45度傾くように、PBS121が配置される。
【0072】
さらに、PBS113に代えて、図10(b)に示すように、ハーフミラー122を用いても良い。この場合、入射面がベース300の設置面に対して45度傾くように、ハーフミラー122が配置される。この構成では、レーザ光源111から出射されるレーザ光の半分がハーフミラー122を透過するため、上記実施の形態に比べ、目標領域に照射されるレーザ光の光量が低下する。反面、1/4波長板114が不要となるため、上記実施の形態に比べ、構成が簡素となる。なお、ハーフミラーに代えて、透過率と反射率が1:1でない他の無偏光のビームスプリッタを用いても良い。
【0073】
また、上記実施の形態では、受光素子として、CMOSイメージセンサ124を用いたが、これに替えて、CCDイメージセンサを用いることもできる。さらに、受光光学系12の構成も、適宜変更可能である。
【0074】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 情報取得装置
2 情報処理装置
11 投射光学系
111 レーザ光源
113 PBS(光路分岐部)
114 1/4波長板(光路分岐部)
116 DOE(回折光学素子)
117 PD(光検出器)
122 ハーフミラー(無偏光ビームスプリッタ)
21a レーザ制御部(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置において、
レーザ光源と、
前記レーザ光源の光軸から離れる方向に配置された回折光学素子と、
前記光軸を挟んで前記回折光学素子に対向するように配置された光検出器と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記回折光学素子に導くとともに、前記回折光学素子によって反射された前記レーザ光を前記光検出器に導く光路分岐部と、を備え、
前記回折光学素子は、前記レーザ光を所定のパターンにて前記目標領域に照射し、
前記光検出器は、前記回折光学素子によって回折および反射された前記レーザ光の一部を受光する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報取得装置において、
前記光路分岐部は、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を反射する偏光ビームスプリッタと、前記回折光学素子と前記偏光ビームスプリッタとの間に配置された1/4波長板とを有する、
ことを特徴とする情報読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報取得装置において、
前記光路分岐部は、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光の一部を反射し、一部を透過する無偏光ビームスプリッタを有し、
前記レーザ光源から出射された前記レーザ光は、前記無偏光ビームスプリッタにより反射されて、前記回折光学素子へ向かう、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報取得装置において、
前記無偏光ビームスプリッタは、ハーフミラーである、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の情報取得装置において、
前記レーザ光源を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記光検出器からの出力信号が所定の閾値範囲から外れると、前記レーザ光源を停止させる、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の情報取得装置を有する物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32379(P2012−32379A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88606(P2011−88606)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】