説明

端部検査装置

【課題】構造が簡単で安価な端部検査装置を提供する。
【解決手段】円盤状の被検物体1を、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダー2に載置し、被検物体1を回転させることにより被検物体1の端部付近の像を撮像し、被検物体1の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、一つの光源5と一つの撮像装置6を有し、被検物体1のほぼ接線方向に、照明光学系5と撮像光学系4の光軸を持ち、被検物体1の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材3a、3b、3cを配置して光軸をほぼ直角に曲げ、被検物体1の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、落射照明し、かつ、それらから反射される正反射光を、2次元の撮像素子6に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハやガラスウェハなどの基板の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの基板の端部を、表面、裏面、端面の3方向から観察して、異物や膜の剥離、膜内の気泡、膜の回り込みなどがないか検査するために、端部検査が用いられている。これらの検査装置は、基板の端の3方向から、それぞれ基板の表面、裏面、端面を照明光学系により照明し、基板の表面、裏面、端面の像を、それぞれ別の撮像装置により撮像し、それを画像処理することにより、端部検査を行うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら従来の端部検査装置では、3方向から照明を行い、かつ、3方向から撮像を行うために、照明光学系、撮像光学系を3セット必要とし、検査装置が複雑となり高価なものになるという問題点があった。1方向ずつ検査を行えば1セットの検査装置で済むが、その分検査に時間がかかるという問題点があった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡単で安価な端部検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための第1の手段は、披検物体の端部の状態を検査する検査装置であって、一つ又は複数の光源と一つの撮像装置を有し、前記披検物体の前記端部近傍に複数の反射部材を配置して、前記披検物体の前記端部の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を照明し、前記表面、裏面、端面で反射される反射光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置である。
【0006】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記被検査体が円盤状であり、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置され、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部付近の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、前記被検物体のほぼ接線方向に、照明光学系と撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、落射照明し、かつ、それらから反射される正反射光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、「ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置され(又は載置し)」とは、被検査体の中心とホルダの回転中心が完全に一致していなくてもよく、検査される部分に照明光が照射され、かつ、検査される部分が撮像光学系で撮像されるのであれば、その範囲でこれらの間に偏心があってもよいことを意味する。「ほぼ接線方向」とは、完全な接線方向でなくてもよく、検査される部分に照明光が照射され、かつ、検査される部分が撮像光学系で撮像されるのであれば、その範囲で、接線方向からのずれが許されることを意味する。「前記接線との接点近傍」とは、接点の近くであって、被検物体と接触せず、かつ、検査される部分に照明光が照射され、かつ、検査される部分が撮像光学系で撮像されるのであれば、その範囲の位置にあればよいことを意味する。又、「光軸をほぼ直角に曲げ」とは、完全な直角でなくても、検査される部分に照明光が落射照射され、かつ、検査される部分からの正反射光が、撮像光学系で撮像されるのであれば、その範囲で、直角からずれていてもよいことを意味する。さらに、「光路長がほぼ等しくなるように」とは、1つの撮像装置で撮像したとき、撮像される有効な視野内でピントが合っているような範囲を意味する。これらのことは、特許請求の範囲、及び各課題を解決するための手段において同じである。
【0008】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第2の手段であって、検査領域の接線方向の長さをW、検査領域の中心の光線が前記複数の反射部材のいずれかに当たるまでの距離をd、前記撮像光学系の開口数をNA、前記検査領域の光線が前記複数の反射部材で折り返される最も前記被検査体に近い点の前記被検査体からの距離をhとするとき、
d>W/2+h(1+NA)
であることを特徴とするものである。
【0009】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第2の手段又は第3の手段であって、前記被検査体の外周から内側uの距離までを検査領域とする場合、前記被検査体の半径をR、前記撮像光学系の開口数をNA、前記検査領域の接線方向の長さをWとしたとき、検査領域の中心の光線が前記複数の反射部材のいずれかに当たるまでの距離をdとするとき、
【数2】

を満たすことを特徴とするものである。
【0010】
前記課題を解決するための第5の手段は、円盤状の被検物体を、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置し、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部付近の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、一つの撮像装置を有し、前記被検物体のほぼ接線方向に、撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸を光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、それぞれに対応する光源により斜め照明し、かつ、それらから発する散乱光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置である。
【0011】
前記課題を解決するための第6の手段は、円盤状の被検物体を、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置し、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部付近の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、一つの第1種の光源と一つの撮像装置を有し、前記被検物体のほぼ接線方向に、照明光学系と撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸を光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、前記第1種の光源により落射照明し、かつ、それらから反射される正反射光を、前記撮像光学系に導くと共に、複数の第2種の光源を有し、前記第2種の光源により前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、それぞれに対応する光源により斜め照明し、かつ、それらから発する散乱光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置である。
【0012】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第2の手段であって、前記被検物体の表面と裏面の視野(検査対象領域)が重ならないことを特徴とするものである。
【0013】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第7の手段であって、前記検査対象領域の接線方向の長さをW、前記被検物体の表面の検査領域の中心の光線が、前記反射部材に当たるまでの距離をD、対物レンズの最終面から前記反射部材までの距離をL、前記被検物体の裏面の前記検査対象領域の中心の光線が、前記反射部材に当たるまでの距離をD’、対物レンズの最終面から前記反射部材までの距離をL’としたとき、以下の式(1)、(2)が成立することを特徴とするものである。
D+L=D’+L’ …(1)
|D−D’|≧W …(2)
【0014】
前記課題を解決する第9の手段は、前記第7の手段であって、照明光学系の、前記検査対象領域と共役な位置に照明視野絞りを設け、照明領域を限定したことを特徴とするものである。
【0015】
前記課題を解決するための第10の手段は、前記第9の手段であって、照明領域を前記検査対象領域に限定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造が簡単で安価な端部検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態の第1の例である端部検査装置の光学系の概要を示す図、図1(b)は、検査対象領域を示す図である。
【0018】
被検物体であるウェハ1は回転可能なホルダー2に載置され、前記ウェハ1の中心付近を軸に回転できるようになっている。ウェハ1の接線方向に光軸のある撮像光学系4は、物体側がテレセントリックな対物レンズ4aと結像光学系4bからなる。又、照明光学系5は、光源5aと光学系5bとを有し、光学系5bからの光は、ハーフミラー等により、撮像光学系4と光軸を同一にされる。よって、撮像光学系4と照明光学系5は、その一部の光学系を共有している。
【0019】
光源5aは、ハロゲンランプや放電ランプ、LED等からなり、光源5aからの光は、光学系5bよび対物レンズ4aを介して、前記光軸に平行な直線とウェハ1との接点の近傍に設けられたミラー3a、3b、3cで反射されウェハ1のそれぞれ表面の検査対象領域1a、裏面の検査対象領域1b、端面の検査対象領域1c(以下、単に検査対象領域と言う)を照明する。この照明光学系の光軸は、撮像光学系の光軸と同様、ウェハ1の接線方向とされている。そして、各ミラー3a、3b、3cは、この照明光の光路を直角に偏向し、それぞれ、検査対象領域1a、1b、1cを、この照明光で落射照明(ほぼ垂直な方向からの照明)する。
【0020】
照明されたウェハ1の検査対象領域1a、1b、1cからの正反射光は、それぞれミラー3a、3b、3cで反射され、再び対物レンズ4aを介して結像光学系4bで2次元の撮像素子6上に、検査対象領域1a、1b、1cの像を結像させる。1回の撮像が終了すると、ウェハ1を前述の撮像光学系の視野によって決まる所定の角度だけ回転させて撮像し、これを繰り返して、ウェハ1の一周分の画像を取り込み、不図示の画像処理系で画像処理することにより、ウェハ1の端部の異物や気泡、膜の剥離、膜の回り込みなどの欠陥を検出する。
【0021】
2次元の撮像素子6には図2に示すように、検査対象領域1a、1b、1cの像が形成されている。なお、図2を含め、以下の図においては、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略することがある。ウェハ1の回転により像は図2に示した矢印のようにそれぞれ異なる方向に移動することになる。このため、それぞれの検査対象領域の部分のみを切り出して画像をつなぎなおして画像処理をする。画像の取り込み回数はウェハ1の外周を接線方向の検査領域の長さで割ったものに等しいので、300mmφウェハを検査領域の長さ6mmで観察する場合には158回画像を取り込む必要がある。1回のウェハの回転と画像の取り込みを1秒で行ったとすると約2.6分かかる計算となる。この場合には、ウェハの回転時の画像が撮像されないように、ウェハの回転終了時に画像取り込みのトリガをかけるようにしてもよい。又、照明光学系にシャッタを設けるか、光源を間欠的に点灯させるようにしてもよい。
【0022】
ウェハ1は測定時に回転および検査位置に移動する際に振動する可能性があるので、ミラー3a、3b、3cはウェハ1から衝突の可能性のない距離まで離す必要がある。図3は、ミラー付近の拡大図である。図3に示すように、検査領域の接線方向の長さをW、検査領域の中心の光線がミラー3a、3b、3cのいずれかに当たるまでの距離をd(これをウェハ−ミラー間距離と呼ぶ)、撮像光学系の開口数をNAとしたとき、検査領域の光線がミラーで折り返される最もウェハ1に近い点のウェハ1からの距離をh(これをミラー最近接距離と呼ぶ)とすると、次のような式が成り立つ。
【数3】

【0023】
実際には製造誤差分を見込んで、ウェハ−ミラー間距離dは上式より大きな値となるようにする。またウェハとミラーが衝突しないためには、ミラー最近接距離hがウェハ1の回転フレ及びロード時、アンロード時の振動の大きさより大きい必要がある。接線方向の検査領域の大きさが6mmでミラー最近接距離hを1mm以上とるには、撮像光学系の対物レンズ4aの開口数NAが0.02のとき、ウェハ−ミラー間距離dは4.02mm以上必要となる。
【0024】
さらに、ウェハ1の外周がミラーで反射された検査領域の光束を蹴らないようにする必要がある。図4(a)は、上述の実施の形態である端部検査装置を上面から見た図である。又、図4(b)は、上述の実施の形態である端部検査装置を側面から見た図である。図4において、ウェハ1の外周から内側uの距離まで検査領域とする場合、ウェハ1の半径をR、撮像光学系の開口数をNA、検査領域の接線方向の長さをWとしたとき、ウェハ−ミラー間距離dは次の式を満たす必要がある。
【数4】

【0025】
NA=0.02の撮像光学系4で直径300mmのウェハの端6mm角の範囲を検査する場合(W=6mm、u=6mm)には、ウェハ−ミラー間距離dは3.92mm以上必要となる。
【0026】
以上のような条件で決められたウェハ−ミラー間距離dは表面観察用、裏面観察用、端面観察用の光学系では同じ値を用いるので、撮像光学系では、同じ面に検査対象領域1a、1b、1cの像が結像し、一つの撮像素子で像の取り込みが可能となる。
【0027】
図5は、図2に示した撮像素子6の変形例を示す図である。2次元の撮像素子6の代わりに図5に示すように、それぞれの検査対象領域の像の位置に一次元ラインセンサ6a、6b、6cを配置して、ウェハ1を回転させながら画像信号の取り込みをしてもよい。ウェハ1を一定速度で回転させる場合は一次元ラインセンサの画像信号の読み出しの間にウェハ1の検査対象領域がラインセンサの幅以上移動すると、ウェハ1上に検査していない領域ができてしまうので、ウェハの回転速度ωは、一次元ラインセンサの幅Dを一次元ラインセンサの読み出しの繰り返し時間tとウェハ1の半径Rと撮像光学系の倍率βとの積で割った値より小さい必要がある。式で書くと次のようになる。
【数5】

【0028】
例えば、14μmの幅で画像信号の読み出し繰返し周期1kHzを持つ一次元ラインセンサで、撮像光学系の撮像倍率が0.5倍で、300mmウェハの端部を検査する場合、ウェハ一回転を33.6秒以上で行う必要がある。
【0029】
図6は、本発明の第2の実施の形態である端部検査装置の光学系の概要を示す図である。図6(a)は、光学系全体の概要、図6(b)は、その暗視野系照明系の一部を側面から見た図を示すものである。異物や傷などは明視野観察より暗視野観察のほうが検出しやすいので、図6に示すように暗視野照明系を加えてもよい。図6においては、図1に示す光学系に加えて、それぞれの検出エリアに対応した暗視野照明系11a〜14a、11b〜14b、11c〜14cを独立に設けている。これらの照明系は、光源14a、14b、14cからの光をそれぞれ照明コレクタレンズ13a、13b、13cで集光して、検査領域に共役な位置に配置された視野絞り12a、12b、12cを透過させ、照明コンデンサレンズ11a、11b、11cを介して、検査対象領域1a、1b、1cを斜め照明する。
【0030】
このとき、照明光の入射角度の正弦は撮像光学系4の開口数よりも大きな値をとるようにしてある。このように配置することにより、検査対象領域1a、1b、1cで正反射した光は撮像光学系4には入射しないで、異物やキズなどの散乱光がある場合のみ撮像光学系4に入射する。図6では斜入射照明の簡単な例を示したが、輪帯状の照明等、照明光の正反射光が結像に寄与しないような配置をとることで暗視野照明法が実現できることは言うまでもない。
【0031】
この場合は、ウェハ1を2回転させて、明視野観察と暗視野観察とを切り換えて撮像する。
【0032】
図7は、図6に示す第2の実施の形態の変形例における、ミラー配置の概要を示す図である。検査において、ウェハ1の回転の回数を減らしたい場合には、図7に示すようにミラーをさらにもう一組追加して明視野用の光路と暗視野用の光路を設けて撮像してもよい。図7は、装置を側面から見た図で表面と裏面観察の光学系の例を示したものである。紙面に直交する方向に端面観察をする同様の光学系があるが、その図示を省略している。
【0033】
図7の例では、明視野光学系のミラー3a、3b、3cをハーフミラーとして明視野照明系の光源16a、16b、16c及び光学系15a、15b、15cを各ミラー3a、3b、3c毎に取り付けるようにした(ミラー3c、光源16c、光学系15cは図示せず)。この場合、表面と裏面などで反射率が著しく異なる場合、光源16a、16b、16cの光量を調整することによりそれぞれ適正な露光量で検査を行うことができる。一方、暗視野照明の反射光を受けるミラー3a’、3b’、3c’(3c’は図示せず)は、通常のミラーであり、検査対象領域からの散乱光を直角に折り曲げて、撮像光学系の光軸に一致させる。図7では、照明光学系を簡略化して記述したが、図6のように視野絞りなどを設けてもよいことは言うまでもない。
【0034】
また、図7においては、明視野照明での撮像位置と、暗視野照明での撮像位置(各々一点鎖線で囲んだ領域)にずれが生じるが、このずれは、画像処理により修正して、明視野照明での撮像位置と、暗視野照明での撮像位置を1つの画像の上に重ね合わせて観察することができる。
【0035】
なお、以上説明したいずれの実施の形態においても、被測定面から、撮像装置の撮像面までの光路長を、いずれの被測定面同士においても等しくしておくことが好ましい。これにより、撮像装置において、複数の被測定面の全てにピントが合った状態で被測定面を撮像することができる。
【0036】
図8(a)は、本発明の実施の形態の第3の例である端部検査装置の光学系の概要を示す図であり、図8(b)は、検査対象領域を示す図である。この実施の形態は図1に示した実施の形態とほとんど同じであるので、同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。
【0037】
図8(a)において、照明系の光学系5bには、照明コレクタレンズ5c、照明視野絞り5d、照明コンデンサレンズ5eを有している。すなわち、照明光学系では、光源5aからの光を照明コレクタレンズ5cで集光して、検査対象領域と共役な位置に配置された照明視野絞り5dを透過させ、照明コンデンサレンズ5e及び対物レンズ4aを介して、ミラー3a、3b、3cで反射させ、検査対象領域1a、1b、1c(又は、検査対象領域1a、1b、1cを含む領域)を照明する。このとき照明視野絞りの形状は図9のようになっており、斜線部は光が透過しない。検査に不必要な光はすべてカットすることにより、ウェハの表面、裏面に迷光を発生させないだけでなく、端面についても迷光の発生を抑えることが可能である。なお、透過する照明光が、検査対象領域1a、1b、1cのみを照明し、他の部分を照明しないようにしておけば、さらに効果を大きくすることができる。
【0038】
ウェハ1のように、被検物体が透明、又は半透明である場合には、検査対象領域1aと1bが重なると、検査対象領域1aを照明している光が被検物体を透過し、検査対象領域1bでの反射光と一緒になって、2次元の撮像素子6に検出されることになり、検出のS/N比を低下させてしまう。同様、検査対象領域1bを照明している光が被検物体を透過し、検査対象領域1aでの反射光と一緒になって、2次元の撮像素子6に検出されることになり、検出のS/N比を低下させてしまう。このようなことを防ぐためには、図8(b)に示すように、検査対象領域1aと1bとが、重ならないようにすることが好ましい。
【0039】
図10(a)にウェハを上面から見た図、図10(b)に、ミラー付近の拡大図を示す。図10(b)に示すように、検査領域の接線方向の長さをW、ウェハの表面の検査領域の中心の光線がミラー3aに当たるまでの距離をD、対物レンズ4aの最終面からミラー3aまでの距離をL、前記ウェハの裏面の検査領域の中心の光線が、ミラー3bに当たるまでの距離をD’、対物レンズ4aの最終面からミラー3bまでの距離をL’としたとき、表面と裏面の検査対象領域が重ならないようにするためには、以下の式(1)、(2)が成り立つような配置にする必要がある。
D+L=D’+L’ …(1)
|D−D’|≧W …(2)
【0040】
例えば、検査領域の接線方向の長さWが6mm、ウェハの表面の検査領域の中心の光線がミラー3aに当たるまでの距離Dが9mm、対物レンズ4aの最終面からミラー3aまでの距離Lが191mmのとき、上記の式(1)、(2)から、前記ウェハの裏面の検査領域の中心の光線がミラー3bに当たるまでの距離D’は、D’≦3mm、又は、D’≧15mmとなる。ミラー3bは、ウェハ1より衝突の可能性のない距離まで離す必要があることを考慮すると、D’≧15mmが現実的であり、D’=15mmとすると、対物レンズ4aの最終面からミラー3bまでの距離をL’は185mmとなる。なお、このとき、表面での撮像位置と、裏面での撮像位置にずれが生じるが、このずれは、画像処理により修正して、表面での撮像位置と、裏面での撮像位置を一つの画像の上に重ね合わせて観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態の第1の例である端部検査装置の光学系の概要を示す図、(b)は、検査対象領域を示す図である。
【図2】撮像素子上に形成された検査対象領域の像を示す図である。
【図3】図1に示す端部検査装置におけるミラー付近の拡大図である。
【図4】図1に示す端部検査装置を上面及び側面から見た図である。
【図5】図2に示した撮像素子6変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態である端部検査装置の光学系の概要を示す図である。
【図7】図6に示す第2の実施の形態の変形例における、ミラー配置の概要を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態の第3の例である端部検査装置の光学系の概要を示す図であり、(b)は、検査対象領域を示す図である。
【図9】照明視野絞りの形状を示す図である。
【図10】表面の検査対象領域を照明する光と、裏面の検査対象領域を照明する光が重ならないような関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ウェハ、1a…表面の検査対象領域、1b…裏面の検査対象領域、1c…端面の検査対象領域、2…ホルダー、3a…ミラー(表面観察用)、3b…ミラー(裏面観察用)、3c…ミラー(端面観察用)、3a’…ミラー(暗視野表面観察用)、3b’…ミラー(暗視野裏面観察用)、3c’…ミラー(暗視野端面観察用)、4…撮像光学系、4a…対物レンズ、4b…結像光学系、5…照明光学系、5a…光源、5b…光学系、5c…照明コレクタレンズ、5d…照明視野絞り、5e…照明コンデンサレンズ、6…2次元の撮像素子、11a…照明コンデンサレンズ(表面観察用)、11b…照明コンデンサレンズ(裏面観察用)、11c…照明コンデンサレンズ(端面観察用)、12a…視野絞り(表面観察用)、12b…視野絞り(裏面観察用)、12c…視野絞り(端面観察用)、13a…照明コレクタレンズ(表面観察用)、13b…照明コレクタレンズ(裏面観察用)、13c…照明コレクタレンズ(端面観察用)、14a…光源(暗視野照明系表面観察用)、光源14b…光源(暗視野照明系裏面観察用)、14c…光源(暗視野照明系端面観察用)、15a…光学系(表面観察用)、光学系15b…光学系(裏面観察用)、光学系15c…光学系(端面観察用)、16a…光源(暗視野照明系表面観察用)、16b…光源(暗視野照明系裏面観察用)、16c…光源(暗視野照明系端面観察用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
披検物体の端部の状態を検査する検査装置であって、一つ又は複数の光源と一つの撮像装置を有し、前記披検物体の前記端部近傍に複数の反射部材を配置して、前記披検物体の前記端部の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を照明し、前記表面、裏面、端面で反射される反射光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置。
【請求項2】
前記被検査体が円盤状であり、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置され、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、前記被検物体のほぼ接線方向に、照明光学系と撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、落射照明し、かつ、それらから反射される正反射光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の端部検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の端部検査装置であって、検査領域の接線方向の長さをW、検査領域の中心の光線が前記複数の反射部材のいずれかに当たるまでの距離をd、前記撮像光学系の開口数をNA、前記検査領域の光線が前記複数の反射部材で折り返される最も前記被検査体に近い点の前記被検査体からの距離をhとするとき、
d>W/2+h(1+NA)
であることを特徴とする端部検査装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の端部検査装置であって、前記被検査体の外周から内側uの距離までを検査領域とする場合、前記被検査体の半径をR、前記撮像光学系の開口数をNA、前記検査領域の接線方向の長さをWとしたとき、検査領域の中心の光線が前記複数の反射部材のいずれかに当たるまでの距離をdとするとき、
【数1】

を満たすことを特徴とする端部検査装置。
【請求項5】
円盤状の被検物体を、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置し、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、一つの撮像装置を有し、前記被検物体のほぼ接線方向に、撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、それぞれに対応する光源により斜め照明し、かつ、それらから発する散乱光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置。
【請求項6】
円盤状の被検物体を、ほぼその中心を中心として回転するように、回転可能なホルダーに載置し、前記被検物体を回転させることにより前記被検物体の端部付近の像を撮像し、前記被検物体の端部付近の状態を検査する端部検査装置であって、一つの第1種の光源と一つの撮像装置を有し、前記被検物体のほぼ接線方向に、照明光学系と撮像光学系の光軸を持ち、前記被検物体の、前記接線との接点近傍に複数の反射部材を配置して、前記複数の反射部材により、それぞれの光路長がほぼ等しくなるように光軸をほぼ直角に曲げ、前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、前記第1種の光源により落射照明し、かつ、それらから反射される正反射光を、前記撮像光学系に導くと共に、複数の第2種の光源を有し、前記第2種の光源により前記被検物体の表面、裏面、端面のうちいずれか2つ、又は全部を、それぞれに対応する光源により斜め照明し、かつ、それらから発する散乱光を、前記撮像光学系に導くようにしたことを特徴とする端部検査装置。
【請求項7】
請求項2に記載の端部検査装置であって、前記被検物体の表面と裏面の視野(検査対象領域)が重ならないことを特徴とする端面検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の端面検査装置であって、前記検査対象領域の接線方向の長さをW、前記被検物体の表面の検査領域の中心の光線が、前記反射部材に当たるまでの距離をD、対物レンズの最終面から前記反射部材までの距離をL、前記被検物体の裏面の前記検査対象領域の中心の光線が、前記反射部材に当たるまでの距離をD’、対物レンズの最終面から前記反射部材までの距離をL’としたとき、以下の式(1)、(2)が成立することを特徴とする端面検査装置。
D+L=D’+L’ …(1)
|D−D’|≧W … (2)
【請求項9】
請求項7に記載の端面検査装置であって、照明光学系の、前記検査対象領域と共役な位置に照明視野絞りを設け、照明領域を限定したことを特徴とする端面検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の端面検査装置であって、照明領域を前記検査対象領域に限定したことを特徴とする端面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−292703(P2007−292703A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129022(P2006−129022)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】