説明

紫外線照射装置

【課題】
本発明の目的は、センサで受光される真空紫外線の強度と、被照射物へ照射される真空紫外線の強度とを近似させる紫外線照射装置を提供することにある。
【解決手段】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、被照射物に対して真空紫外光を出射するエキシマランプと、この真空紫外光を受光すると共に光取込部を備えた光センサと、エキシマランプを取り囲む筐体と、からなる紫外線照射装置において、前記光取込部と前記エキシマランプとの間に、不活性ガスと酸素との混合ガスを吹き出すブロー管を有し、前記光取込部と前記エキシマランプとの距離をY1、その間の酸素濃度をP1とし、前記エキシマランプと前記被照射物との距離をY2、その間の酸素濃度をP2とするとき、以下の関係を満たすことを特徴とする。
0.8≦Y2×P2/Y1×P1≦1.2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外光を出射するエキシマランプを備え、この真空紫外光を受光する光センサを備えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば、液晶表示パネルのガラス基板を紫外線照射によって洗浄する工程においては、波長200nm以下の真空紫外光を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置が使用されている。このような紫外線照射装置には、エキシマランプからの真空紫外光の強度を検査するため、紫外線強度センサが設けられる。このことが、例えば特開2004−097986公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−097986公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、紫外線強度センサが、搬送された被照射物とエキシマランプとが対向されたとき、真空紫外光の強度を測定しようとすると、搬送された被照射物によって対流が生じ、この対流によってエキシマランプと紫外線強度センサのフォトダイオードとの間に、酸素が流入してしまう。しかも、この酸素の流入量は一定ではないので、エキシマランプとフォトダイオードとの間における酸素量は変動してしまい、エキシマランプと被処理物との間における酸素量と殆んど一致しない。すなわち、エキシマランプとフォトダイオードとの間で酸素に吸収される真空紫外光の変動量と、エキシマランプと被処理物との間で吸収される真空紫外光の量とが殆んど一致しないので、紫外線センサのフォトダイオードで受光される真空紫外光の量と、被処理物へ照射される真空紫外光の量とが殆んど一致しない。このため、従来に係る紫外線照射装置では、紫外線強度センサでの受強度によって電力を制御しても、被処理物への真空紫外光の強度を所期のものにすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、センサで受光される真空紫外光の強度と、被照射物へ照射される真空紫外光の強度とを近似させる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、被照射物に対して真空紫外光を出射するエキシマランプと、この真空紫外光を受光すると共に光取込部を備えた光センサと、エキシマランプを取り囲む筐体と、からなる紫外線照射装置において、前記光取込部と前記エキシマランプとの間に、不活性ガスと酸素との混合ガスを吹き出すブロー管を有し、前記光取込部と前記エキシマランプとの距離をY1、その間の酸素濃度をP1とし、前記エキシマランプと前記被照射物との距離をY2、その間の酸素濃度をP2とするとき、以下の関係を満たすことを特徴とする。
0.8≦Y2×P2/Y1×P1≦1.2
第2の発明に係る紫外線照射装置は、第1の発明において、前記装置は、前記エキシマランプと前記光取込部との距離Y1を調整する調整手段を有することを特徴とする。
第3の発明に係る紫外線照射装置は、第1又は2の発明において、光取込部に真空紫外光の波長を変換する波長変換手段が設けられたことを特徴とする。
第4の発明に係る紫外線照射装置は、第3の発明において、前記波長変換手段と前記光取込部との間には、不活性ガスが導入されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、光センサとエキシマランプとの間の酸素量と、被照射物とエキシマランプとの間の酸素量とを、近似させることができるので、それぞれの間での真空紫外光の酸素吸収量を近似させることができ、光センサで受光される真空紫外光の強度と、被照射物へ照射される真空紫外光の強度とを近似させることができる。
第2の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、0.8≦Y2×P2/Y1×P1≦1.2を満たすように、調整手段によって距離Y1を調整することができる。
第3の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、光取込部に設けた波長変換手段によって真空紫外光の波長を変換することができ、その波長が200nmより長い場合、酸素に吸収されることがないので、変換された光が受光部に到達するときまでに酸素に吸収されることを抑制できる。
第4の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、波長変換手段と光取込部との間での酸素量が抑制でき、この間での真空紫外光の強度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図2】本発明に係る紫外線照射装置に具備されるエキシマランプの説明図である。
【図3】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図4】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図5】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図6】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図7】本発明に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図8】実験の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1及び2は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図1は、装置1に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。
【0010】
紫外線照射装置1は、真空紫外光を出射するエキシマランプ5と、エキシマランプ5を保持する筐体2と、エキシマランプ5からの真空紫外光を受光する光センサ3と、を備える。
【0011】
筐体2は、搬入口231と搬出口232とが設けられており、この搬入口231に搬入された被照射物Wは、図示しない搬送手段によって、エキシマランプ5に直接対向するように搬送され、エキシマランプ5からの真空紫外光が照射された後、搬出口232から筐体2の外部に搬出される。
この筐体2は、その内部でオゾンが生じるため、このオゾンへの耐性を有する部材が採用され、例えばアルミニウムからなる金属部材により構成される。
【0012】
筐体2の上壁(エキシマランプ5の上面(被照射物Wに対向する面と反対側の面)に対向する壁)には、取付口24が設けられ、この取付口24に光センサ3が設けられる。
【0013】
光センサ3は、受光部31を取り囲む箱体34と、箱体34を載置すると共に筐体2に取り付けられる基台35と、基台35に保持される光取込体36と、を備える。
【0014】
光センサ3の基台35は、内部に貫通孔355を有する筒状であり、この筒状は、筐体2の取付口24に挿通される挿通部351と、挿通部351の外径より大きな外径を有し、筐体2の上面に載置される載置部352と、により構成される。
基台35の載置部352には、内部の貫通孔355に連通する流路353が設けられ、この流路353に不活性ガスN2を導入する導入管354が設けられる。
基台35の挿通部351の一端(エキシマランプ5側の端部)には、貫通孔355側に突出する保持部356が設けられる。
【0015】
この保持部356には、筒状の光取込体36の他端に設けたつば部361が当接することで架かり、保持される。
光取込体36には、その内部を貫通する中空部364が設けられており、この中空部364は、基台35の貫通孔355に連通する。光取込体36の一端には、内部の中空部364に向かって突出する突出部362が設けられ、この突出部362の中心には、中空部364に連通する光取込部363が設けられる。
【0016】
基台35の載置部352の上面(図1における基台35の紙面上側の面)には、受光部31を取り囲む箱体34が設けられる。
箱体34の下面(図1における箱体34の紙面下側の面)には、基台35の貫通孔355と箱体34の内部とを連通するように、開口部341が設けられる。この開口部341には、箱体34の内部から蓋をするように波長変換手段33が設けられ、この波長変換手段33の上面(図1における波長変換手段33の紙面上側の面)には、例えば色ガラスからなるフィルタ32が設けられる。
このように箱体34の内部には、開口部341に蓋をする波長変換手段33と、波長変換手段33の上面に設けられたフィルタ32とが、例えばかしめられるなどして設けられる。
さらに箱体34の内部には、フィルタ32の上側(図1におけるフィルタ32の紙面上側)に、例えばフォトダイオードからなる受光部31が、フィルタ32と波長変換手段33とを介して開口部341に対向するように配置される。
【0017】
光センサ3を構成する部材について、例示すると、基台35は、例えばアルミニウムのような金属部材からなり、耐オゾン性を有する部材が用いられる。さらに、光取込体36は、例えばステアタイトのようなセラミック部材からなり、オゾンに曝されることから、耐オゾン性を有すると共に、エキシマランプ5の電極521,522に例えば5mmに近接されることから、電気絶縁性を有する部材が用いられる。箱体34を構成する部材としては、ステンレスのような金属部材が用いられる。受光部31は、例えば可視光を受光するフォトダイオードやフォトレジスタが用いられる。波長変換手段33は、真空紫外光を受光部31で受光できる波長(例えば可視光)に変換するため、例えば400nm〜700nmの波長領域に変換する蛍光体や、例えば400nm〜700nmの波長領域に変換する蛍光ガラスが用いられる。この蛍光体の例としては、LaPO4:Ce,Tbや(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Euのような燐酸塩蛍光体が挙げられる。
【0018】
次に、光センサ3に具備されるフィルタ32の機能と部材について説明する。
フォトダイオードでは、例えば300nm〜1000nmの受光領域を有しているのに対し、波長変換手段33で得られる波長領域は、400nm〜700nmであるとき、両者の波長領域は不一致である。概してフォトダイオードの受光領域は、波長変換手段33で変換される波長領域よりも大きい。エキシマランプ5から出射される光は、真空紫外光以外に可視光も出射されているため、フィルタ32を設けていない場合、フォトダイオードでは、波長変換手段33で変換された波長領域の強度と、エキシマランプ5からの可視光の波長領域の強度とを受光してしまい、波長変換手段33で変換された光の強度(すなわち、真空紫外光の強度)が正確にはわからなくなってしまう。
このため、フィルタ32では、真空紫外光の強度を検知するための波長領域(波長変換手段33で変換された波長領域の一部又は全て)を透過するが、波長変換手段33で変換されていない波長領域を遮光する。このようなフィルタ32としては、例えば400nm〜550nmの波長を透過する場合、例えば酸化クロム(Cr)が添加された色ガラスや、透明ガラスの外面に例えば二酸化ケイ素(SiO)からなるペーストを塗布したものが用いられる。
【0019】
筐体2には、光センサ3の光取込部363とエキシマランプ5の外面(図1におけるエキシマランプ5の紙面上側の面)との間に、酸素と不活性ガスとの混合ガスNOを吹き付けるため、ガス導入口211が設けられ、このガス導入口211に連通するブロー管212が設けられる。ブロー管212の吹出し口213は、エキシマランプ5と光センサ3の光取込部363との間にガスを吹き付けられる位置に設けられる。
【0020】
また、筐体2の外面(図1においては、紙面下側)には、筐体2の内部に導入されたガスや、被照射物Wを処理したときに生じたガスを排気するため、排気口22が設けられる。
【0021】
第1の実施例においては、図1に示すように、エキシマランプ5の外面と光センサ3の光取込部363との距離(最も近い距離)をY1とし、エキシマランプ5の外面とこの外面の近接されたときの被照射物Wとの距離をY2とする。また、距離Y1での酸素濃度をP1とし、距離Y2での酸素濃度をP2とする。
なお、この酸素濃度P1,P2は、エキシマランプ5の点灯を開始したときの酸素濃度のことであり、距離Y1,Y2の任意の一点で測定したときの値である。
距離Y1,Y2及び酸素濃度P1,P2の数値の一例を示すと、Y1=5mm,Y2=4mm,P1=0.8酸素濃度%,P2=1酸素濃度%である。
【0022】
図2は、図1の紫外線照射装置1に具備されるエキシマランプ5の説明図であり、(a)がエキシマランプ5の斜視図であり、(b)が(a)のB−B断面図であり、(c)が(a)のC−C断面図である。
【0023】
エキシマランプ5は、内部に密閉された放電空間511を有する放電容器51と、この放電容器51の外面に離隔して設けた一対の電極521,522と、を備える。
【0024】
放電容器51は、真空紫外光を透過する部材である例えば石英ガラスで構成され、内部に密閉された放電空間511を有する長い管状である。放電容器51の横断面は、横長の方形であり、放電容器51の長手方向の外面は、直方体状である。
放電容器51の放電空間511には、例えばキセノンガスのような発光ガスが封入されている。
【0025】
放電容器51の放電空間511を介した平坦な外面には、それぞれ網状に形成した電極521,522が設けられる。
この電極521,522は、例えば銅と低融点ガラスとを混合した導電性ペーストを放電容器51の外面に網状に塗布して焼成することで形成したものである。
【0026】
放電容器51の内面には、真空紫外光を反射する例えばシリカ膜からなる反射膜53が設けられる。この反射膜53は、一方の電極521側の内面に設けられ、放電容器51の長手方向に亘って設けられる。放電容器51の長手方向における一端(図2(a)における紙面奥側の端部)では、反射膜53の中央を削除した光取出口531が設けられる。
この光取出口531には、図1で示す光センサ3の光取込部363が位置するように配置される。
【0027】
エキシマランプ5の一対の電極521,522には、高周波電源が接続され、高周波・高電圧が入力される。
エキシマランプ5は、給電されることで、放電容器51の内部で発光ガスが励起され、エキシマ放電を生じ、このエキシマ放電によって200nm以下の真空紫外光を放射する。
放電容器51の内部に封入された発光ガスが、例えばキセノンガスの場合、172nmにピーク波長を有する真空紫外光が放射される。この真空紫外光は、図2(b)に示すように、放電容器51の上面に反射膜53に反射され、放電容器51の下面を透過して放電容器51の外方に放射される。図2(b)でいう放電容器51の下面は、図1においては、被照射物Wに直接対向する面であるので、放射された真空紫外光が被照射物Wに向かって照射される。
【0028】
筐体2の内部は、被照射物Wを搬送する際に、酸素が流入するため、エキシマランプ5と被照射物Wとの間には、酸素が存在する。被照射物Wは、エキシマランプ5の直下に搬送されると、エキシマランプ5と被照射物Wとの間を例えば4mmのように近接配置されることなり、エキシマランプ5から放射された真空紫外光は、その一部が酸素に吸収されることでオゾンを形成し、このオゾンと残った真空紫外光が相俟って被照射物Wの照射面上の不純物を分解して洗浄することができる。このとき、エキシマランプ5と被照射物Wとの間では、オゾンを生じた状態で、その酸素濃度P2が例えば1酸素濃度%となる。
【0029】
エキシマランプ5と光センサ3との間には、ブロー管212の吹出し口213から、例えば窒素ガスのような不活性ガスと酸素とかなる混合ガスNOが吹き込まれている。
被照射物Wの搬送によって、酸素の対流が起こってエキシマランプ5と光センサ3との間に酸素が流入しようとするが、ブロー管212からの混合ガスの吹き込みによって、エキシマランプ5と光センサ3との間では気圧が高まるので、搬送による酸素流入が抑制される。このため、エキシマランプ5と光センサ3との間の酸素濃度P2は、ブロー管212の吹出しにより制御できる。
光センサ3の光取込部363は、エキシマランプ5の反射膜53の光取出口531に、エキシマランプ5の放電容器51を介して対向配置される。このとき、光取込部363とエキシマランプ5との距離は、例えば4mmである。
エキシマランプ5の内部で生じた真空紫外光は、エキシマランプ5の一端(図2においては、紙面奥側の端部)においては、反射膜53に光取出口531が設けられていることから、光取出口531を通った真空紫外光が放電容器51を通り、図1に示す、光センサ3の光取込部363に向かって放射される。このとき、光取込部363とエキシマランプ5との間には、不活性ガスと酸素との混合ガスNOが吹き込まれているので、放電容器51を通った真空紫外光は、その一部が酸素に吸収されることでオゾンを形成し、残った真空紫外光が光取込部363に取り込まれる。このとき、光取込部363とエキシマランプ5との間では、オゾンを生じた状態で、その酸素濃度P1が例えば0.8酸素濃度%となる。
【0030】
基台35に設けた導入管354からは、真空紫外光を吸収しない不活性ガスN2として例えば窒素ガスが導入され、基台35の流路353を介して、基台35の貫通孔355から光取込体36の中空部364に窒素ガスが充填される。このため、光取込体36の光取込部363から取り込まれた後、真空紫外光は、光センサ3の内部で殆んど吸収されることがないので、その強度低下を抑制しつつ、箱体34の開口部341に到達する。箱体34の開口部341を通過した真空紫外光は、開口部341に蓋をする波長変換手段33を照射する。波長変換手段33は、真空紫外光を受けて励起され、例えば400nm〜700nmの可視光に変換し、フィルタ32に放射される。前述のようにエキシマランプ5からは、真空紫外光以外に可視光も放射されていることから、フィルタ32で必要な波長である例えば400nm〜550nmの波長を透過し、この波長領域の強度をフォトダイオードで検知することができる。
【0031】
上述の第1の実施例においては、ランプ点灯時において、エキシマランプ5と被照射物Wとの距離Y2=4mm、その間での酸素濃度P2=1酸素濃度%とし、エキシマランプ5と光取込部363との距離Y1=5mmと、その間の酸素濃度をP1=0.8酸素濃度%とするとき、これらの関係が次式を満たしている。
0.8≦Y2×P2/Y1×P1≦1.2 (1)
これにより、エキシマランプ5と被照射物Wとの間に存在する酸素量と、エキシマランプ5と光取込部363との間に存在する酸素量とを近似(本発明の数値例では一致)させることができるので、エキシマランプ5からの真空紫外光が酸素に吸収される量を被照射物W側と光取込部363側とで近似(本発明の数値例では一致)させることができる。このため、光取込部363から取り込み、受光部31で検知した真空紫外光の強度は、エキシマランプ5に照射された真空紫外光の強度に近似(本発明の数値例では一致)させることができる。
【0032】
このため、光センサ3で検知した真空紫外光の強度に基づいてエキシマランプ5を制御することにより、被照射物Wへの真空紫外光の強度を所期のものに維持することができる。
また、光センサ3で検知した真空紫外光の強度によって、エキシマランプ5の交換時期を従来の技術に比して正しく知ることができるので、不所望に早いランプ交換を抑制することができる。
【0033】
なお、ブロー管212から導入される不活性ガスと酸素ガスの混合ガスNOにおいて、この不活性ガスは、真空紫外光を吸収しないものであれば用いることができ、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどを用いることができる。
また、光センサ3内に充填される不活性ガスN2も同じく、真空紫外光を吸収しないものであれば用いることができ、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどを用いることができる。
【0034】
上記式(1)の上下限値について説明すると、エキシマランプ5を構成する放電容器51は、石英ガラスで形成されており、この外面形状は、平坦な面を形成しても完全なものは形成できず、微細な波打った形状を有している。この波打った外面と被照射物Wとを対向させたとき、波打った外面と被照射物Wとの距離が変動してしまい、この変動に比例して真空紫外線の酸素吸収量が変動してしまう。
上記式(1)は、これらの点を考慮して、その波打った外面による距離変動を許容するために、上下限値を設けた。なお、この上下限値の根拠は、後述の実験で示す。
【0035】
上述の本発明は、光センサ3の内部に真空紫外光を取り込むために、光取込体36の中空部364に連通する光取込部363を設けたが、次に、中空部364に連通しない光取込部363の例を示す。
【0036】
図3は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図3は、装置1に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。
なお、図3には、図1及び2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0037】
図3は、光取込体36の中空部364に連通しない光取込部363を設けた点で、図1及び2の例と相違する。
図3の説明として、図1及び2と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0038】
光取込体36には、その内部に中空部364が設けられており、この中空部364は、基台35の貫通孔355に連通する。光取込体36の一端は、閉じられるように、板状の光取込部363が設けられる。この光取込体36は、真空紫外光を透過させる例えば石英ガラスで構成される。
【0039】
この例の場合、板状の光取込部363から真空紫外光が透過されて、光センサ3の内部に取り込まれる。取り込まれた真空紫外光は、上述の第1の実施例で説明したように、受光部31で検知される。
【0040】
図3で示した紫外線照射装置1は、光センサ3の内部に真空紫外光を取り込めるため、図1で示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
図1及び図3においては、光センサ3の内部に不活性ガスN2を充填させるため、導入管354から不活性ガスN2を導入し続ける構成を示したが、次に、不活性ガスN2を導入し続けなくてかまわない例を示す。
【0042】
図4は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図4は、装置に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。
なお、図4には、図1及び2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0043】
図4は、不活性ガスN2を連続的に導入しない点で、図1及び2と相違する。
図4の説明として、図1及び2と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0044】
光取込体36は、その一端に板状の光取込部363が設けられ、その他端に板状の蓋部365が設けられることで、その内部に密閉された中空部364が設けられる。この中空部364には、真空紫外光を吸収しない不活性ガスとして例えば窒素ガスが封入されている。光取込体36を構成する部材としては、真空紫外光を透過させる例えば石英ガラスで構成される。
光取込体36は、図示しない樹脂接着剤によって基台35に接着・固定される。
【0045】
この第3の実施例の場合、板状の光取込部363から真空紫外光が透過されて、光センサ3の内部に取り込まれる。取り込まれた真空紫外光は、中空部364で吸収されず蓋部365を透過し、箱体34の開口部341から取り込まれた後、上述の図1の例で説明したように、受光部31で検知される。
【0046】
図4に示した紫外線照射装置1は、光取込体36の内部に取り込むことができ、その上で中空部364に封入した不活性ガスで吸収されず、光取込体36から受光部31に向かって出射できるので、図1で示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、光取込体36は、図4で示す中空部364を石英ガラスで埋めた、すなわち石英ガラス棒であっても、不活性ガスN2を連続的に導入する必要が無く、図1で示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。また、この場合、真空紫外光を吸収しない不活性ガスを用いる必要が無い。
【0048】
光取込体36を石英ガラス棒で構成する以外で、真空紫外光を吸収しない不活性ガスを用いない例を示す。
【0049】
図5は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図5は、装置に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。
なお、図5には、図1及び2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0050】
図5は、不活性ガスを用いない点で、図1及び2の第2の実施例と相違する。
図5の説明として、図1及び2と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0051】
光取込体36の突出部362には、光取込部363に蓋をするように波長変換手段33が設けられ、その上面(図5における紙面上側の面)には、例えば色ガラスからなるフィルタ32が設けられる。
【0052】
この例の場合、光取込部363を通過した真空紫外光が、すぐに波長変換手段33で可視光に変換される。可視光は、酸素へ吸収されないことから、波長変換手段33と受光部31までの間に窒素を設けなくても、その強度を低下させることなく、受光部31に到達することができる。このため、第4の実施例においては、光センサ3の内部に不活性ガスを導入しなくてもかまわない。
なお、フィルタ32は、図5においては、波長変換手段33の上面に配置したが、必ずしもこの位置ではなくてもかまわなく、波長変換手段33と受光部31の間であって、波長変換手段33で変換された可視光を受光部31に到達するまでに所望の光を透過できる位置に配置されれば良い。
【0053】
紫外線照射装置1は、光取込部363に取り込まれた際に、すぐに光取込部363に設けた波長変換手段33によって、真空紫外光の波長を200nmより長い波長に変換できるので、変換された光が受光部31に到達するときまでに酸素に吸収されることを抑制できる。このため、図5に示した紫外線照射装置1は、図1に示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
図1及び図3〜5に示した真空紫外光装置は、エキシマランプ5と光センサ3とを固定した後に、光取込体36を移動させて距離Y1を変更することができない。次に、この距離Y1を光取込体36の位置を調整することで変更可能にした例を示す。
【0055】
図6は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図6は、装置に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。
なお、図6には、図1及び2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0056】
図6は、エキシマランプ5と光取込体36との距離Y1を調整する調整手段4を設けた点で、図1及び2と相違する。
図6の説明として、図1及び2と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0057】
基台35の挿通部351には、少なくとも一対のスリット357(図6においては、基台35の左右のスリット357)が、エキシマランプ5の短手方向(図6における紙面上下方向)に沿って伸びるように設けられる。基台35の外面からこのスリット357にボルト41を挿通し、基台35の貫通孔355側の内面からナット42を設けられ、ボルト41とナット42が基台35に固定される。このボルト41とナット42は、基台35に固定される位置が、スリット357に沿って調整できる調整手段4である。
この調整手段4には、光取込体36のつば部361が載置される。このため、調整手段4は、その固定される位置によって、エキシマランプ5と光取込体36との間の距離が調整できる。
【0058】
図6に示した紫外線照射装置1は、調整手段4によって、前述の式(1)を満たすように距離Y1を調整することができるので、図1に示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、図6で示した調整手段4は、図3や図5のように光取込体36につば部361を有するものに組み合わせて位置を調整することもできる。
【0060】
図6では、調整手段4を基台35に固定したが、次に、調整手段4を筐体2に固定した例を示す。
【0061】
図7は、本発明に係る紫外線照射装置1の説明図である。
図7は、装置に具備されるエキシマランプ5の長手方向に対して直交する断面図である。図7は、紫外線照射装置1のうち、光センサ3とエキシマランプ5とを示した一部拡大図である。
なお、図7には、図1及び2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0062】
図7は、筐体2に調整手段4を固定した点で、図6と相違する。
図7の説明として、図6と共通する部分は省略し、相違する部分について述べる。
【0063】
まず、図7(a)の例から説明する。図7(a)の場合、取付口24を、エキシマランプ5に向かって突出する筒状に構成される。この筒状の取付口24には、ネジ切りされた貫通孔が設けられ、その貫通孔から取付口24の内方に向かって突出するように止めネジ43が設けられる。止めネジ43は、複数本設けられ、光センサ3の基台35の挿通部351の外周面を挟持する。これにより、光センサ3は、取付口24に螺合された止めネジ43を介して筐体2に固定される。
基台35の長手方向(エキシマランプ5に向かう方向)において、止めネジ43によって挟持される位置を調整することで、光取込部363とエキシマランプ5との距離Y1が調整できることから、止めネジ43と取付口24とが調整手段4となる。
【0064】
次に、図7(b)の例を説明する。図7(b)の場合、図7(a)と比較して、光取付口の突出する方向が、エキシマランプ5とは逆の方向(光センサ3の受光部31に向かう方向)に設けられた点で相違する。図7(b)に示す方向に光取付口を設けても、図7(a)の場合と同様に、止めネジ43と光取付口とが調整手段4として機能する。
【0065】
図7(a)及び図7(b)で示した紫外線照射装置1は、止めネジ43と取付口24とを調整手段4として設けることで、前述の式(1)を満たすように距離Y1を調整することができるので、図1で示した紫外線照射装置1と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、図7(a)及び図7(b)で示した調整手段4は、図1,図3及び図5に示す基台35を挟持することで、エキシマランプ5と光取込部363との距離Y1を調整することもできる。
また、図7(a)及び図7(b)で示した調整手段4は、エキシマランプ5と光取込口との距離を調整できれば良いので、図1,図3及び図5においては、必ずしも基台35を挟持しなくても、光取込体36の外周面を挟持して、距離を調整してもかまわない。
【0067】
最後に、上述した式(1)の上下限値について、説明する。
前述のように、エキシマランプ5の放電容器51は、例えば石英ガラスのようにその外面形状が波打った状態であり、この波打った外面に起因して対流が生じ、この対流によって酸素濃度が変動する。このエキシマランプ5に起因する酸素濃度の変動量を求めたのが、次の実験である。
【0068】
実験では、本発明に係る紫外線照射装置1として図1に示す構成のものを用いた。実験に用いたエキシマランプ5では、放電空間511に400Torrのキセノンガスを封入し、一対の電極521,522に60KHz・3KVを入力して点灯させた。ランプ点灯中にブロー管212からは、窒素が99.5%と酸素が0.5%の混合ガスを導入し、一方排気口22からは、2m/minで筐体2内のガスを排気させた。この状態で、搬送口からステンレスからなる平板状の被照射物Wを搬入させた。酸素濃度を測定するために、酸素濃度計の測定部をエキシマランプ5下方のP2の位置に配置した。
このとき、図8(a)に示すように、エキシマランプ5の短手方向の幅は43mmであり、その中央の位置の下方にP2が位置する。実験では、このP2の下方位置を0mmとし、この0mmの位置から被照射物Wの先端の位置までの相対距離を順次測定し、相対距離の変動に伴って位置P2の測定値の変動を計測した。例えば、図8(a)での被照射物の位置は−80mmの位置である。
【0069】
その実験結果が図8(b)である。P2の位置が、エキシマランプ5と被照射物5とに対向されるのは、0mmの位置から+80mmの範囲である。なお、被照射物Wの長さ(図8(a)における紙面左右方向の長さ)は1000mmあり、エキシマランプ5と被照射物Wとが対向される範囲は、0mmの位置から+1000mmの位置までであるが、図8(b)の実験結果ではその一部である+80mmの位置までの結果を示している。
図8(b)に示すように、0mmの位置から+80mmの範囲では、エキシマランプ5の外面の波打った形状に起因して、酸素濃度が0.8%〜1.2%の変動が生じる。このため、上述した式(1)では、この変動を許容するように、Y2×P2/Y1×P1の酸素濃度の範囲を0.8%〜1.2%とした。
【0070】
この変動範囲は、エキシマランプ5の形状に起因し、妨げられないものであるが、上述した式(1)を満たせば、光センサ3で検知した真空紫外光の強度に基づいて、エキシマランプ5への入力電力を制御しても、被照射物Wを十分に処理することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 紫外線照射装置
2 筐体
211 ガス導入口
212 ブロー管
213 吹出し口
22 排気口
231 搬入口
232 搬出口
24 取付口
3 光センサ
31 受光部
32 フィルタ
33 波長変換手段
34 箱体
341 開口部
35 基台
351 挿通部
352 載置部
353 流路
354 導入管
355 貫通孔
356 保持部
357 スリット
36 光取込体
361 つば部
362 突出部
363 光取込部
364 中空部
365 蓋部
4 調整手段
41 ボルト
42 ナット
43 止めネジ
5 エキシマランプ
51 放電容器
511 放電空間
521 一方の電極
522 他方の電極
53 反射膜
531 光取出口
N2 不活性ガス
NO 不活性ガス及び酸素ガス
Y1 光取込部からランプ外面までの距離
Y2 ランプ外面から被照射物までの距離
P1 光取込部からランプ外面までの酸素濃度
P2 ランプ外面から被照射物までの酸素濃度
W 被照射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に対して真空紫外光を出射するエキシマランプと、この真空紫外光を受光すると共に光取込部を備えた光センサと、エキシマランプを取り囲む筐体と、からなる紫外線照射装置において、
前記光取込部と前記エキシマランプとの間に、不活性ガスと酸素との混合ガスを吹き出すブロー管を有し、
前記光取込部と前記エキシマランプとの距離をY1、その間の酸素濃度をP1とし、
前記エキシマランプと前記被照射物との距離をY2、その間の酸素濃度をP2とするとき、
以下の関係を満たす
ことを特徴とする紫外線照射装置。
0.8≦Y2×P2/Y1×P1≦1.2
【請求項2】
前記装置は、前記エキシマランプと前記光取込部との距離Y1を調整する調整手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記光取込部に真空紫外光の波長を変換する波長変換手段が設けられた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記波長変換手段と前記光取込部との間には、不活性ガスが導入された
ことを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214294(P2010−214294A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64261(P2009−64261)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】