説明

自動ランドマーク情報作成方法及びシステム

【課題】立体画像によるビジュアルなランドマークを自動生成し、地図上の所定位置に配置させることのできる自動ランドマーク情報作成方法及びシステムを提供する。
【解決手段】対象物を複数の方向から撮像した撮像画像を用いて立体画像からなるランドマークを生成し、この生成したランドマークを地図上の所定位置に配置させる際に、特定の場所から特定の方向に向けて撮像した対象物の撮像画像を複数枚用い、該複数の撮像画像から対象物の外観形状を特定する形状設定ステップと、この形状設定ステップで求めた外観形状からランドマークを生成するランドマーク生成ステップと、複数の撮像画像から対象物の位置を検出する位置設定ステップと、地図上における検出した対象物の位置に、生成したランドマークを配置するランドマーク配置ステップと、を有してランドマーク情報を自動形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D等の立体画像からなるランドマーク(地図上の目印)を自動生成して所定の位置に自動で配置させる自動ランドマーク情報作成装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図案内のために、地図上にランドマークを配置して表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−333562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、多種多彩なランドマークの図形を作成するためには、膨大な手間と時間を要する。例えば、ランドマークの図形は、目印となる建物等の形状等を的確に反映したものであるのが望ましいが、そのようなランドマークを作成するためには、その建物等の写真を撮影し、分析する必要があり、データの収集だけでも、膨大な時間と手間、費用がかかる。
また、ランドマークを3Dの立体画像で表現する場合には、さらに種々のアングルから写真を撮る必要が生じ、ランドマーク作成時の負担が増大する。さらに、著名な建物等のランドマークを作成するのは、比較的簡単といえるが、例えば、特定のローカルエリア(特定の地方のごく狭い区域等)における、具体性のある詳細な地図を作成する場合には、小路(木々に覆われた山道、抜け道、高層ビルの陰になって上空から見えにくいビル間の細い道等)沿いにある小さな建物等は、航空写真等では対象の存在自体が不明であることがあり、まして、3D画像によるビジュアルなランドマークを作成しようとすると、専従の者がその地域をくまなく探索し、目印となる建物等の写真を撮るといった、地道な作業が必要となる。
【0004】
また、地図作成後においても地形の変化や、建物の新築、撤去などによって絶えず状況が変化しており、特に、狭い地域内で微視的にみれば、建築中の家屋が完成した、古いビルが取り壊され、跡地に新しいビルが建った、バスの停留所が移動して設置された、というような小さな状況の変化は、日常的に生じる。
したがって、このような状況変化に追従できないと、地図の用途によっては、その地図の情報の陳腐化が懸念される場合がある。つまり、地図に表示されるランドマークも、状況の変化に追従して更新する必要があり、その更新のためにも、膨大な時間と手間、費用が必要となる。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、立体画像によるビジュアルなランドマークを自動生成し、地図上の所定位置に自動配置させることのできる自動ランドマーク情報作成方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 対象物を複数の方向から撮像した撮像画像を用いて立体画像からなるランドマークを生成し、この生成したランドマークを地図上の所定位置に配置させる自動ランドマーク情報作成方法であって、特定の場所から特定の方向に向けて撮像した前記対象物の撮像画像を複数枚用い、該複数の撮像画像から前記対象物の外観形状を特定する形状設定ステップと、前記形状設定ステップで求めた外観形状から前記ランドマークを生成するランドマーク生成ステップと、前記複数の撮像画像から前記対象物の位置を検出する位置設定ステップと、前記地図上における前記検出した対象物の位置に、前記生成したランドマークを配置するランドマーク配置ステップと、を有することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【0007】
この自動ランドマーク情報作成方法によれば、特定の場所から特定の方向に向けて撮像した対象物の撮像画像を複数枚用い、これら複数の撮像画像から対象物の外観形状を特定し、得られた外観形状から立体画像のランドマークを生成し、また、複数の撮像画像から対象物の位置を検出し、生成したランドマークを、その検出した地図上の位置に配置することにより、ランドマークを自動的に生成して自動的に地図上の所定位置に配置することができる。これによって、3D画像によるビジュアルなランドマークを含む最新の地図を、少ない労力、少ない費用で無理なく自動的に作成することが可能となる。
例えば、所定条件の下で撮像画像を絞り込み、その絞込みの後の複数枚の画像の中から共通の目印となる建物等(所定の大きさ以上の大きさをもつもの、例えば、3階建ての家、ホテル、神社等)を抽出し、その建物等について、画像(他の付加情報を含む)を解析して、その建物等の位置と形状を検出し、さらに、その形状検出に基づいて、コンピュータグラフィックス(CG)により3D画像化し、その3D画像をランドマークとして地図面上に配置することができる。
【0008】
(2) (1)記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、前記形状設定ステップが、前記対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、前記地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用い、前記撮像画像の中に共通に撮像されている前記対象物の立体形状を検出することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【0009】
この自動ランドマーク情報作成方法によれば、対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用いることで、撮像画像の中に共通に撮像されている対象物の立体形状を幾何学的に検出することができる。
【0010】
(3) (1)又は(2)記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、前記位置設定ステップが、前記対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、前記地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用い、前記撮像画像の中に共通に撮像されている前記対象物の位置を検出することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【0011】
この自動ランドマーク情報作成方法によれば、対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用いることで、撮像画像の中に共通に撮像されている対象物の位置を幾何学的に検出することができる。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、前記撮像画像が、複数の移動体それぞれに取り付けた各撮像部から得られる複数の撮像画像であることを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【0013】
この自動ランドマーク情報作成方法によれば、複数の移動体それぞれに取り付けた各撮像部がそれぞれ撮像画像を提供することにより、移動体の数に相応する情報源が存在することになり、複数の場所における複数の撮像画像等の情報が効率よく短時間で得られることになる。
【0014】
(5) (1)〜(4)のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、前記撮像画像に撮像時点を示す撮像日時情報を付加し、前記生成したランドマークのうち、予め用意された既存地図の作成時点から、その作成時点以降の所定時点までの間に作成された特定ランドマークを抽出し、前記既存地図に存在する既存ランドマークと前記特定ランドマークを対比して、前記特定ランドマークに相当する既存ランドマークが存在しない場合には、この存在しない特定ランドマークを既存地図に新たに配置し、前記既存ランドマークに相当する前記特定ランドマークが存在しない場合には、この存在しない既存ランドマークを既存地図から削除することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【0015】
この自動ランドマーク情報作成方法によれば、生成した特定ランドマークと、既存地図に存在する既存ランドマークとを対比して、新規に配置するランドマークと削除するランドマークを判定し、地図を更新することで、新しい情報を地図に盛り込むことができる。
【0016】
(6) (1)〜(4)のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法に基づいて前記ランドマークを所定の位置に配置する自動ランドマーク情報作成システムであって、前記撮像画像から前記対象物の位置を検出する位置検出部と、前記撮像画像から前記対象物の形状を検出する形状検出部と、検出した前記対象物の形状からランドマークを生成するランドマーク生成部と、前記ランドマーク生成部で得られたランドマークを前記位置検出部で検出した位置に配置するランドマーク配置部と、を備えたことを特徴とする自動ランドマーク情報作成システム。
【0017】
この自動ランドマーク情報作成システムによれば、位置検出部により撮像画像から対象物の位置を検出し、形状検出部により撮像画像から対象物の形状を検出し、ランドマーク生成部が、検出した対象物の形状からランドマークが生成され、このランドマーク生成部で得られたランドマークをランドマーク配置部により位置検出部で検出した位置に配置することで、立体画像によるビジュアルなランドマークを自動生成し、地図上の所定位置に配置させることができる。
【0018】
(7) (6)記載の自動ランドマーク情報作成システムであって、(5)記載の自動ランドマーク情報作成方法に基づいて前記既存地図を更新する地図修正部を備えたことを特徴とする自動ランドマーク情報作成システム。
【0019】
この自動ランドマーク情報作成システムによれば、生成した特定ランドマークと、既存地図に存在する既存ランドマークとを対比して、新規に配置するランドマークと削除するランドマークを判定し、地図を更新することで、新しい情報を地図に盛り込むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る自動ランドマーク情報作成方法及びシステムによれば、立体画像によるビジュアルなランドマークを自動生成し、地図上の所定位置に配置させて、このランドマークを含む最新の地図を、少ない労力、少ない費用で無理なく自動的に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に係る自動ランドマーク情報作成方法及びシステムの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の自動ランドマーク情報作成方法は、対象物を複数の方向から撮像した撮像画像を用いて立体画像からなるランドマークを生成し、この生成したランドマークを地図上の所定位置に配置させる際に、特定の場所から特定の方向に向けて撮像した前記対象物の撮像画像を複数枚用い、該複数の撮像画像から前記対象物の外観形状を特定する形状設定ステップと、形状設定ステップで求めた外観形状から前記ランドマークを生成するランドマーク生成ステップと、複数の撮像画像から前記対象物の位置を検出する位置設定ステップと、生成したランドマークを前記地図上で前記検出した前記対象物の位置に配置するランドマーク配置ステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
(第1実施形態)
以下、上記各ステップとそのシステムの構成例についての詳細を説明する。
図1は、本発明の自動ランドマーク情報作成システムの一例を示す概略構成図である。
図示されるように、移動体としての宅配業者等の搬送車14a、タクシー等の車両14bには、各々、移動情報収集装置16a,16bが取り付けられ、この移動情報収集装置16a,16bには、撮像部、三軸地磁気センサ、GPS受信機ならびに無線通信機等が搭載されている。
【0023】
搬送車14aやタクシーの車両14b、あるいは公共のバスは、共通の地域の道路12を、ほぼ毎日、繰り返し走行する可能性のある移動体であり、この移動体14a,14b上に移動情報収集装置16a,16bを設置することによって、特に意識しなくても、日常的に、道路12の周辺の画像を撮像することができる。
【0024】
本発明において、移動体は、上記のような車の他、バイク、自転車であってもよく、その他、人や人の頭を覆うヘルメット等、人と共に移動する物品、ペット動物(例えば、ペット動物の首輪にカメラを装着する)等も移動体として取り扱うことができる。そして、移動体は図示例のように2台に限らず、多数の移動体を同時に用いることが好ましい。移動情報収集装置が複数存在することにより、情報収集量が増大して短期間で効率よく必要な情報の収集が可能となる。
【0025】
ここで、画像撮像する地域や撮像の対象、撮像タイミング等は、予め、設定することができる。例えば、道路12を進行しているとき、その道路12沿いの建造物10近辺の画像は必ず撮像するという条件を移動情報収集装置16a,16bに設定し、内蔵するGPS受信機により、自機(移動情報収集装置16a,16b)が建造物10に近づいたことが検出されると、自動的に撮像する。このときの撮像画像は、動画像であってもよく、また、静止画であってもよい。これにより、搬送車14aやタクシーの車両14bのドライバーにドライバーに意識させることなく、また、何らの負担をかけずに、所望の画像の撮像が可能となる。
【0026】
搬送車14aやタクシーの車両14bに取り付けられている移動情報収集装置16a,16bは、撮像部により撮像した画像情報に、三軸地磁気センサで検出した各撮像部の姿勢角(水平面上の方向を表す方位角、鉛直面内おける傾斜角度を表すロール角、水平面から上下方向の傾斜角度であるピッチ角)情報と、GPS受信機で計測した移動情報収集装置の現在位置情報とを付加し、これを地図作成情報として無線送信する。
【0027】
送信された画像情報(姿勢角情報ならびに現在位置情報を含む)は、中継局18,通信ネットワーク(インターネット等)19を経由して、地図作成装置(地図サーバ)20に送られる。
【0028】
地図サーバ20は、通信部21と、画像蓄積部22と、条件設定部23と、位置検出部24と、形状検出・3D画像作成部(形状検出部、ランドマーク生成部)26と、ランドマーク情報データベース27と、ランドマーク配置部28と、出力部29と、地図データベース30と、地図修正部31と、を有する。
【0029】
画像蓄積部22は、移動情報収集装置16a,16bから送られてきた画像情報を蓄積する。また、ランドマーク情報データベース27は、3D画像ランドマークの位置や形状の情報を蓄積する。地図データベース30は、作成された地図(あるいは更新された地図)を格納する。
【0030】
条件設定部23は、ランドマークの作成エリアや、ランドマーク作成の対象となる被写体の種類、形状等を絞り込むための条件を設定するために使用される。すなわち、画像蓄積部22に蓄積される画像には、無数の被写体が記録されており、それらの被写体全部を対象物とし、3D画像のランドマークとして表現することは現実的ではない。そこで、ランドマーク作成となるエリア、および、対象となる被写体の種類や大きさ、形状等を、条件設定部23を介して設定することによって、ランドマークの候補となる対象物を絞り込むことを可能とするものである。この点については、後に具体的に説明する。
【0031】
対象物の位置検出部24は、通信部21にて受信された、移動情報収集装置16a,16bからの地図作成情報(撮像画像、姿勢角情報ならびに現在位置情報を含む)を解析して、ランドマークの候補となる対象物の位置を検出する。この位置検出動作については、図4,図5を参照して後述する。
【0032】
形状検出・3D画像作成部26は、各移動情報収集装置16a,16bにより撮像された画像および各移動情報収集装置16a,16bの撮像部の方位角,ロール角、ピッチ角からランドマーク候補となる被写体(対象物)の形状を検出して、コンピュータグラフィックス(CG)技術により3D画像を作成する。作成された3D画像は、ランドマーク情報データベース27に蓄積され、また、ランドマーク配置部28に送られる。
【0033】
ランドマーク配置部28は、CG技術による立体画像化されたランドマークを、地図面上の、位置検出部24によって検出された位置に配置し、最新の地図を自動的に作成する。
【0034】
作成された地図は、地図データベース30に蓄積されると共に、出力部29を介して、ディスプレイ(不図示)上に表示されたり、プリンタ(不図示)により印刷されたりする。図1中、参照符号100は、印刷された地図を示し、また、LMは、建造物10についての、3D画像によるランドマークを示す。
【0035】
なお、地図修正部31は、地図の修正を実施する。この地図修正部31の動作については、実施形態2で説明する。
【0036】
このように、本実施形態の自動ランドマーク情報作成システムでは、共通の地域を繰り返し走行する可能性がある移動体14a,14bに移動情報収集装置16a,16bを装着し、所定地域の日常的な風景等を、ほぼ定期的に撮像することによって、特定の人物に負担をかけることなく、所定地域(注目エリア)について、多数の画像を、無理なく収集することが可能となる。
【0037】
そして、地図サーバ20によって画像を解析して、ランドマーク候補となる対象物である被写体の抽出、位置と形状の検出、CGによる形状の3D画像化を実施し、その3D画像からなるランドマークを地図面上に自動的に配置することによって、新規な地図(特に、地域の生活者の視点からみた具体性ある詳細な地図)を、少ない労力、少ない費用で無理なく自動的に作成することができる。
【0038】
図2は、図1の移動情報収集装置の内部構成を示すブロック図である。
図示されるように、移動体14(14a,14b)に搭載される移動情報収集装置16(16a,16b)は、無線アンテナANと、送受信部40と、データ処理部42と、撮像部(CCDカメラ等)44と、画像処理部46と、制御部48と、GPS受信機50と、計時部51と、三軸地磁気センサ(三軸ジャイロ)52と、姿勢角算出部54と、を有する。なお、計時部51は、撮像時点を検出する目的で設けられている。
【0039】
図3は、図1の地図サーバの内部構成を示すブロック図である。図3において、前述の図面と共通する部分には、同じ参照符号を付してある。
【0040】
図示されるように、通信部21は、通信フロントエンド60と、データ処理部61と、を備える。制御部63は、地図サーバ20の動作を統括的に制御する。
【0041】
その他、画像蓄積部22と、ランドマーク情報データベース27と、出力部29(表示部37と、印刷部39を具備する)と、地図データベース30と、ROM35(ランドマーク作成・配置プログラム38を搭載する)と、操作キー62と、が設けられている。操作キー62は、オペレータが、図1の条件設定部23に対して所望の条件を入力するための手段として機能する。
【0042】
次に、ランドマークの候補となる対象物の位置と形状の検出の方法について、図4〜図6を参照して、具体的に説明する。
【0043】
図4(a)は、2台のカメラの位置と各カメラの姿勢角(方位角,ロール角,ピッチ角)とから、対象物の位置を特定する方法を説明するための図、(b)は、各カメラによる撮像画像と各カメラの姿勢角(方位角,ロール角,ピッチ角)とから、対象物の形状を特定する方法を説明するための図である。
【0044】
先に説明したように、移動情報収集装置16a,16bから送られてくる地図作成情報は、撮像画像と、カメラ自体の位置および姿勢角情報であって、対象物の位置と形状は不明である。そのため、演算処理や画像処理によって対象物を認識する必要がある。
【0045】
まず、対象物の位置は次のように算出することができる。
なお、図4(a)において、2台の移動体それぞれの撮像部は、図1の移動情報収集装置16a,16bに相当するが、ここでは、簡単なモデルで説明する。2つの撮像部をそれぞれA,Bとし、また、対象物となる建造物をCとする。
【0046】
図4(a)において、ランドマーク候補としての対象物を抽出した後、まず、GPS受信機(図2の参照符号50)により計測された各撮像部A,Bの位置情報から、線分ABの長さ(カメラ間の距離)Xと、その線分ABの向きを算出する。次に、三軸地磁気センサ(図2の参照符号52)によって計測された、各撮像部A,Bの方位,ロール角,ピッチ角より、各撮像部A,Bと対象物Cとを結ぶ線分の角度AθとBθを算出する。これによって、Xを底辺とする三角形の頂点(対象物C上の一点)が一意的に定まり、これによって、対象物Cの絶対位置が求まる。
【0047】
以上の位置検出のための手順をまとめると、図5のようになる。図5は、ランドマークとなる対象物の位置検出のための処理手順を示すフロー図である。
【0048】
すなわち、まず、撮像部Aと撮像部Bからの撮像画像の特徴量から共通の対象物を抽出し(ステップ201:S201)、次に、撮像部Aと撮像部Bの位置情報より、撮像部Aと撮像部Bとの間の距離Xと、線分ABの向きを求める(S202)。
【0049】
次に、撮像部Aの方位角(方向)、ロール角、ピッチ角より、対象物Cと撮像部Aとの向きACを決定し(S203)、同様に、撮像部Bの方位角(方向)、ロール角、ピッチ角より、対象物Cと撮像部Bとの向きBCを決定する(S204)。
【0050】
次に、ベクトルABと向きACより、角度BAC(Aθ)を決定し(S205)、同様に、ベクトルABと向きBCより、角度ABC(Bθ)を決定する(S206)。
【0051】
次に、距離Xと、向きABと、角度BAC(Aθ)と、角度ABC(Bθ)とから、対象物Cの位置を特定する(S207)。そして、同一の対象物Cが映出されている、他の一組の画像があるか否かを検出し(S208)、検出ありならば、S201に戻って上記の処理を実行して位置検出精度を高め、検出なしならば、位置検出処理を終了する。
【0052】
次に、対象物Cの形状の検出の手順について説明する。対象物Cの形状は、以下のように求めることができる。
【0053】
図4(b)において、P,Qは各々、2台の移動情報収集装置の撮像部A,Bで撮像された画像を示している。図示されるように、どちらの画像(P,Q)にも共通の建造物C(図1の参照符号10)が写っているが、各撮像部の対象物に対する姿勢が異なるために、見える形状が異なる。したがって、各撮像部の撮像画像を、各撮像部A,Bの方位,ロール角,ピッチ角を参照して修正し、その後に、輪郭抽出等の画像処理を行うことによって、対象物Cの外観形状を検出することができる。そして、検出された対象物Cの形状を、コンピュータグラフィックス(CG)を用いて、ポリゴンからなる3D画像にて表現し、その3D画像を保存する。
【0054】
ランドマーク(対象物)Cの形状検出ならびに3D画像化の手順をまとめると、図6のようになる。図6は、ランドマーク(対象物)の形状検出ならびに3D画像化のための処理手順を示すフロー図である。
【0055】
まず、複数の画像の特徴量から共通の対象物を抽出し(S301)、抽出された対象物の画像の位置、方向、ロール角、ピッチ角を取得し(S302)、対象物の形状を分析する(S303)。
【0056】
同一の対象物が撮像されている他の画像があれば、その画像を用いて同様の処理を繰り返し実施して、形状検出の精度を高める(S304)。
【0057】
そして、検出された対象物Cの形状を、コンピュータグラフィックス(CG)を用いて、ポリゴンにて表現して3D画像を作成し(S305)、作成された3D画像の向きと大きさを、ランドマーク情報データベース27に記録する(S306)。
【0058】
このように、GPS受信機(図2の参照符号50)によって計測された各撮像部A,Bの位置情報を参照して、複数枚の画像に基づいて対象物の位置を特定することができ、また、各撮像部A,Bの撮像画像および各撮像部A,Bの方位角,ロール角、ピッチ角の情報に基づいて対象物の形状を特定することができる。したがって、地図に掲載するために必要なランドマークとなる対象物Cの位置情報と形状情報を、撮像部から送られてくる画像情報を基にして自動的に取得し、3D画像からなるランドマークを作成することができる。
【0059】
次に、図1の自動ランドマーク情報作成システム全体について、一連の動作手順を説明する。
図7は、移動情報収集装置の撮像部による撮像から、3D画像からなるランドマークの地図面上への配置までの一連の手順の一例を示すフロー図である。
【0060】
まず、移動体に取り付けた移動情報収集装置16a,16bの撮像部から画像情報が転送され(S101)、この画像と共に、撮影情報(現在位置情報、方位角、ロール角ならびにピッチ角の各情報)が併せて転送される(S102)。そして、ネットワーク上の地図サーバ20に、画像と撮影情報を蓄積する(S103)。
【0061】
一方、上記処理と並行して、地図サーバ20のオペレータは、作成・配置するランドマークの条件を、図1に示す条件設定部23を介して設定する(S104)。すなわち、撮像部によって撮像された画像には無数の被写体が写っており、それら全てについてランドマークを撮像するのは現実的ではないため、ランドマークの候補となる対象物を絞るために、条件設定を行うものである。図7では、ランドマークを作成すべき地点(あるいは、エリア)と、ランドマークの種類を指定している。例えば、「既存の地図上で特定の駅の建物を、3D画像のランドマークの作成対象として指定する」、あるいは、「特定の交差点を中心とした半径200mの円内にある地域にある、3階建て以上の高さをもつ建物を3D画像のランドマークの作成対象として指定する」等の指定を行う。
【0062】
地図サーバ20の、位置検出部24は、撮像部の位置座標を参照して、S104にて指定された地点(エリア付近の撮像画像を抽出し(S105)、抽出された複数の画像から、共通のランドマーク(一定以上の大きさ、所定の特徴をもつ対象)の候補となる対象物を抽出する(S106)。
【0063】
次に、図5,図6を用いて説明した方法により、抽出されたランドマーク候補の対象物の位置と形状を特定する(S107)。そして、CGにより3D画像を生成する(S108)。生成された3D画像のランドマークは、ランドマーク情報データベース27内に保存する。
【0064】
そして、同様の処理を、次のランドマーク候補の対象物について実施する(S109)。
【0065】
S110では、生成された複数の3D画像のランドマークを取り出し、S104にて指定された条件に合致するか否かを再判定し、条件に合致するランドマークのみを抽出する。
【0066】
そして、地図上に、3D画像からなるランドマークを配置(S111)する。このようにして、3D画像からなるランドマークを含む、ビジュアルな最新地図が、自動的に作成される。
【0067】
以上説明したように、本自動ランドマーク情報作成システムにおいては、宅配業者や郵便の集配業者の搬送車、タクシー、公共のバスのような、共通の地域を繰り返し走行する可能性のある移動体に取り付けた移動情報収集装置の撮像部から、通信ネットワークに接続された地図サーバに向けて、撮像した画像を、その撮像部の姿勢情報や位置情報と共に送信する。そして、地図サーバにて、例えば、所定条件の下で撮像画像を絞り込み、その絞込みの後の複数枚の画像の中から共通の目印となる建物等を抽出し、その建物等について画像を解析し、その建物等の位置と形状を検出する。さらに、その形状検出に基づいて、コンピュータグラフィックス(CG)により3D画像化し、その3D画像をランドマークとして地図面上に配置する。これにより、3D画像によるビジュアルなランドマークを含む最新の地図を作成することができる。
【0068】
また、本システムによれば、カメラに搭載された三軸地磁気センサ等によって計測された各カメラの方位角,ロール角、ピッチ角の情報、ならびに、GPS受信機等によって計測されたカメラの位置情報を参照して、複数枚の画像に基づき、例えば、三角測量の原理を用いて対象物の位置を特定することができ、また、各カメラの撮像画像および各カメラの方位角,ロール角、ピッチ角の情報に基づいて対象物の形状を特定することができ、さらに、コンピュータグラフィクス(CG)を用いて、建物等の形状を3D画像化することができ、したがって、3D画像によるビジュアルなランドマークを、カメラから送られてくる画像情報を基にして自動的に作成することができる。
【0069】
(第2実施形態)
図1の地図作成システムでは、地図の新規作成処理に加えて、既存の地図の更新処理も実施可能である。地図の更新処理は、地図修正部31が行う。
【0070】
移動体の移動情報収集装置16a,16bには、図2に示すように、計時部51が設けられており、画像を撮像した時点(撮像時刻情報)を検出することができるようになっている。移動情報収集装置16a,16bは、撮像時刻情報を撮像画像に付加して無線送信する。
【0071】
地図サーバ20における地図修正部31は、作成済みの地図(図1の地図データベース30に格納されている)を更新するために、以下のような処理を行う。
【0072】
すなわち、ランドマーク情報データベース27に保存されている多数の3D画像からなるランドマークを検索し、撮像時刻情報を参照して、既存地図の作成時点から、その作成時点以降の所定時点(例えば、現時点)までに作成されたランドマークのみを抽出する。
【0073】
次に、抽出されたランドマークと、地図データベース30に保存されている既存の地図との比較・対比を行い、そのランドマークが既存の地図上にも存在していたかを判定し、また、既存の地図に存在していた被写体の中で、今は存在しなくなっているランドマークがあるか否かを判定する。
【0074】
そして、既存の地図上には存在しないランドマークが検出された場合には、そのランドマークを地図面上に新たに配置する。また、既存の地図に存在していたランドマークの中で、今は存在しなくなっているランドマークがある場合には、そのランドマークを地図面から削除する。これにより、既存の地図が更新される。
【0075】
このように、撮像画像に撮像時点を示す撮像日時情報を付加し、生成したランドマークのうち、予め用意された既存地図の作成時点から、その作成時点以降の所定時点までの間に作成された特定ランドマークを抽出し、既存地図に存在する既存ランドマークと特定ランドマークを対比して、特定ランドマークに相当する既存ランドマークが存在しない場合には、この存在しない特定ランドマークを既存地図に新たに配置し、既存ランドマークに相当する特定ランドマークが存在しない場合には、この存在しない既存ランドマークを既存地図から削除する。これにより、ランドマークの検出結果を正確に地図に反映させることができ、即時性のある地図更新を自動的に実施することが可能となる。
【0076】
上記の地図の更新処理の手順をまとめると、図8のようになる。図8は、地図の更新処理の主要な手順を示すフロー図である。
図示したように、まず、多数のランドマークの中から、既存の地図の作成時点からその作成時点以降の所定時点までに作成されたランドマークを抽出する(S401)。
【0077】
次に、その抽出されたランドマークと既存の地図のランドマークとの比較判定を実施して、新規に追加されるべきランドマーク、ならびに、既に存在しなくなっているランドマークを検出する(S402)。そして、その検出結果を地図に反映させて、地図を自動的に更新する(S403)。
【0078】
以上説明したように、本自動ランドマーク情報作成システムによれば、画像情報に撮像時点情報を付加しておき、多数のランドマークの中から、既存の地図の作成時点からその作成時点以降の所定時点までに撮影された画像の解析によって位置と形状が検出された特定ランドマークを抽出し、その抽出された特定ランドマークと既存の地図の既存ランドマークとの比較判定を実施して、新規に追加されるべきランドマーク、ならびに、既に存在しなくなっているランドマークを検出し、その検出結果を地図に反映させることによって、即時性のある地図更新(ランドマークの新設と廃棄)を自動的に実施することができる。
【0079】
また、本システムによれば、画像を撮像する任務を負う専従者を設けることなく、共通の地域における、複数枚の対象物の画像を、無理なく、自動的に収集することができる。
【0080】
以上、本発明を各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、種々、変形可能である。例えば、撮像部は、移動体の外に設置するだけでなく、内部に設置してもよい。また、上記各実施形態においては、収集した地図作成情報を無線通信により地図サーバに送信しているが、専用の無線通信機を用いることなく、一般的な携帯電話や携帯型端末機器のようなインターネットに接続可能な機器を介して送信することでもよい。さらにこれに限らず、例えば移動情報収集装置が、収集した地図作成情報をメモリやハードディスク、光記録媒体等の情報記録媒体に一旦蓄積して、この情報記録媒体を地図サーバ側に持ち込んで、サーバの入力機器を介して入力する方式としてもよい。この場合には、無線通信手段が不要となるため、インフラのコストを低減でき。システムをより簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の自動ランドマーク情報作成システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の移動情報収集装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1の地図サーバの内部構成を示すブロック図である。
【図4】(a)は、2台の移動情報収集装置の撮像部の位置と各撮像部の姿勢角(方位角,ロール角,ピッチ角)とから、対象物の位置を特定する方法を説明するための図、(b)は、各撮像部による撮像画像と各撮像部の姿勢角(方位角,ロール角,ピッチ角)とから、対象物の形状を特定する方法を説明するための図である。
【図5】ランドマークとなる対象物の位置検出のための処理手順を示すフロー図である。
【図6】ランドマーク(対象物)の形状検出ならびに3D画像化のための処理手順を示すフロー図である。
【図7】撮像部による撮像から、3D画像からなるランドマークの地図面上への配置までの一連の手順の一例を示すフロー図である。
【図8】地図の更新処理の主要な手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0082】
10 建造物(対象物)
16(16a,16b) 移動情報収集装置
18 中継局
19 通信ネットワーク
20 地図作成装置(地図サーバ)
23 通信フロントエンド
21 通信部
22 画像蓄積部
23 条件設定部
24 位置検出部
26 形状検出・3D画像作成部
27 ランドマーク情報データベース
28 ランドマーク配置部
29 出力部
30 地図データベース
31 地図修正部
35 ROM
38 ランドマーク作成・配置プログラム
39 印刷部
40 送受信部
42 データ処理部
46 画像処理部
48 制御部
51 計時部
52 三軸地磁気センサ
54 姿勢角算出部
60 通信フロントエンド
61 データ処理部
63 制御部
64 RAM
AN 無線アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を複数の方向から撮像した撮像画像を用いて立体画像からなるランドマークを生成し、この生成したランドマークを地図上の所定位置に配置させる自動ランドマーク情報作成方法であって、
特定の場所から特定の方向に向けて撮像した前記対象物の撮像画像を複数枚用い、該複数の撮像画像から前記対象物の外観形状を特定する形状設定ステップと、
前記形状設定ステップで求めた外観形状から前記ランドマークを生成するランドマーク生成ステップと、
前記複数の撮像画像から前記対象物の位置を検出する位置設定ステップと、
前記地図上における前記検出した対象物の位置に、前記生成したランドマークを配置するランドマーク配置ステップと、
を有することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【請求項2】
請求項1記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、
前記形状設定ステップが、前記対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、前記地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用い、前記撮像画像の中に共通に撮像されている前記対象物の立体形状を検出することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、
前記位置設定ステップが、前記対象物を撮像した複数の撮像画像それぞれに対する、前記地図上の撮像位置、撮像方向を表す方位角、ロール角、ピッチ角を用い、前記撮像画像の中に共通に撮像されている前記対象物の位置を検出することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、
前記撮像画像が、複数の移動体それぞれに取り付けた各撮像部から得られる複数の撮像画像であることを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法であって、
前記撮像画像に撮像時点を示す撮像日時情報を付加し、
前記生成したランドマークのうち、予め用意された既存地図の作成時点から、その作成時点以降の所定時点までの間に作成された特定ランドマークを抽出し、
前記既存地図に存在する既存ランドマークと前記特定ランドマークを対比して、前記特定ランドマークに相当する既存ランドマークが存在しない場合には、この存在しない特定ランドマークを既存地図に新たに配置し、前記既存ランドマークに相当する前記特定ランドマークが存在しない場合には、この存在しない既存ランドマークを既存地図から削除することを特徴とする自動ランドマーク情報作成方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の自動ランドマーク情報作成方法に基づいて前記ランドマークを所定の位置に配置する自動ランドマーク情報作成システムであって、
前記撮像画像から前記対象物の位置を検出する位置検出部と、
前記撮像画像から前記対象物の形状を検出する形状検出部と、
検出した前記対象物の形状からランドマークを生成するランドマーク生成部と、
前記ランドマーク生成部で得られたランドマークを前記位置検出部で検出した位置に配置するランドマーク配置部と、
を備えたことを特徴とする自動ランドマーク情報作成システム。
【請求項7】
請求項6記載の自動ランドマーク情報作成システムであって、
請求項5記載の自動ランドマーク情報作成方法に基づいて前記既存地図を更新する地図修正部を備えたことを特徴とする自動ランドマーク情報作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−122247(P2007−122247A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311359(P2005−311359)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】