説明

表面処理装置

【課題】処理ガス中に雰囲気ガスより重い成分が含まれていても、ほぼ垂直に立てた被処理物の処理を過不足無く均一に行なう。
【解決手段】被処理物9の被処理面9aを略垂直に向ける。略垂直に分布する吹出し口21aを有するノズル20を被処理物9と対向させる。雰囲気ガスより重い反応成分を含む処理ガスをノズル20に導入する。吹出し口21aの近傍で流速調節用の窒素ガスを処理ガスに混入する。混入後の処理ガスを吹出し口21aから吹き出す。吹き出し時の処理ガスの流速が0.1m/s〜0.5m/sになるよう、流速調節用ガスの混入流量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物に対しエッチング、CVD、洗浄等の表面処理を行なう方法及び装置に関し、特に、被処理物の被処理面が略垂直に立てられ、かつ処理ガスが雰囲気ガスより重い成分を含む場合に適した表面処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、被処理物を垂直にした状態で処理する装置が開示されている。
特許文献2には、水を添加したフッ素系原料ガスを大気圧近傍のプラズマ空間に導入して、COF、HF等を含むフッ素系反応性ガスを生成し、このフッ素系反応性ガスを被処理物のシリコンに接触させ、シリコンをエッチングすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−15895号公報
【特許文献2】特開2007−294642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほぼ垂直に立てた被処理物に処理ガスを横方向から吹き付ける場合、処理ガス中に雰囲気ガスより重い成分が含まれていると、該成分が垂れる傾向がある。特に、処理ガスの吹出し流速が小さい場合に、上記重い成分が垂れ易い。そのため、縦方向の均一性を確保するのが容易でない。処理ガスの流量を増やせば、吹出し流速を大きくできるが、そうすると、処理が過剰になるおそれがある。また、処理ガスのロスが多くなる。
本発明は、上記事情に鑑み、ほぼ垂直になった被処理面に処理ガスを横方向から吹き付ける際、処理ガス中に雰囲気ガスより重い成分が含まれていても、処理を過不足無く、しかも均一に行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明方法は、被処理面を略垂直に向けた被処理物に、雰囲気ガスより重い反応成分を含む処理ガスを吹き付け、前記被処理面を処理する方法であって、
略垂直に分布する吹出し口を有するノズルを、前記被処理面と対向させ、
前記吹出し口の近傍で流速調節用ガスを前記処理ガスに混入し、
前記混入後の処理ガスを前記吹出し口から吹き出し、該吹き出し時の処理ガスの流速が0.1〜0.5m/sになるよう、前記流速調節用ガスの混入流量を調節することを特徴とする。
本発明装置は、被処理面を略垂直に向けた被処理物に、雰囲気ガスより重い反応成分を含む処理ガスを吹き付け、前記被処理面を処理する装置であって、
前記処理ガスを通す処理ガス吹出し路と、流速調節用ガスを通す流速調節用ガス混入路と、被処理面と対向する先端面を有するノズルを備え、
前記処理ガス吹出し路の先端部が、前記先端面に達し、かつ前記先端面内において略垂直方向に分布する吹出し口を構成し、
前記流速調節用ガス混入路が、前記吹出し口の近傍で前記処理ガス吹出し路に合流しており、
前記吹出し口からの処理ガスの吹出し流速が、0.1〜0.5m/sになるよう、前記流速調節用ガスの流量を調節する流量調節手段を、さらに備えたことを特徴とする。
これによって、処理ガス中に雰囲気ガスより重い成分が含まれていても、処理を過不足無く均一に行なうことができる。
流速調節用ガスとしては、不活性ガスを用いるとよく、好ましくは窒素ガス(N)を用いるとよい。
【0006】
前記ノズルの吹出し口の周辺部を温度調節することが好ましい。
前記ノズルの吹出し口の周辺部に、該吹出し口周辺部を温度調節する温度調節手段を熱的に接続するのが好ましい。
これによって、前記処理ガスが例えば水等の水素含有添加物を含んでいる場合、ノズルの先端面に水等の凝縮体が生成されるのを防止できる。したがって、処理ガス中の反応成分が凝縮体に吸収されるのを防止でき、処理を一層良好かつ均一に行なうことができる。また、凝縮体が表面処理装置や被処理物に付着するのを防止でき、表面処理装置や被処理物が腐蝕等のダメージを受けるのを防止できる。
水素含有添加成分として、水に代えて、過酸化水素水を用いてもよく、アルコール等のOH基含有化合物を用いてもよい。 前記処理ガスが例えば水等の水素含有添加物を含んでいない場合でも、前記ノズルの吹出し口の周辺部を温度調節してもよい。
【0007】
前記ノズルの吹出し口の周辺部の温度を30℃〜35℃に調節することが好ましい。
温調範囲を30℃以上にすることによって、ノズルの先端面に凝縮体が形成されるのを確実に防止できる。温調範囲を35℃以下にすることによって、温度調節手段に過度の負担がかかるのを防止できる。
【0008】
略垂直とは、完全な鉛直の他、鉛直に対しやや傾斜した角度を含む。好ましくは、略垂直とは、鉛直に対し±20°以内の角度範囲を言う。
前記ノズルの前記吹出し口が開口する先端面及び前記被処理面を、互いに平行になるように、鉛直にし又は鉛直に対し±20°以内の範囲で傾斜させることが好ましい。
前記表面処理装置が、前記被処理面の鉛直に対する角度が±20°以内になるように、前記被処理物を支持する被処理物支持手段と、前記先端面が前記被処理面と平行になるように、前記ノズルを支持するノズル支持手段と、を備えていることが好ましい。
被処理面が下向きに傾斜し、ノズル先端面が上向きに傾斜していてもよく、被処理面が上向きに傾斜し、ノズル先端面が下向きに傾斜していてもよい。
さらに、前記表面処理装置が、前記被処理物とノズルの一方を他方に対し前記被処理面又は前記先端面に沿って相対移動させる移動手段を備えていることが好ましい。
【0009】
前記反応成分は、たとえばフッ素系の反応成分である。これにより、シリコン酸化物、シリコン窒化物等をエッチングすることができる。フッ素系反応成分として、HF、COF、F等が挙げられる。フッ素系反応成分は、フッ素系原料を含む原料ガスをプラズマ化(分解、励起、活性化、ラジカル化、イオン化を含む)することによって生成できる。フッ素系原料としては、CF、C、C、C等のパーフルオロカーボン(PFC)、CHF、C、CHF等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、SF、NF、XeF等が挙げられる。プラズマは、大気圧近傍(略常圧)下で生成することが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被処理物のほぼ垂直な被処理面に処理ガスを横方向から吹き付ける際、処理ガス中に雰囲気ガスより重い成分が含まれていても、処理の均一性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置を解説的に示す側面図である。
【図2】上記表面処理装置の原料ガス供給部及びプラズマソースを含む処理ガス生成部を、原料ガス供給部を回路構成にて示し、プラズマソースを断面にて示す解説図である。
【図3】上記表面処理装置のノズル等の構造を、ノズルを図1のIII-III線に沿う断面にして示す解説図である。
【図4】上記表面処理装置のノズル及び温調構造を、ノズルを図1のIV-IV線に沿って矢視した解説図である。
【図5】本発明の温調構造の変形例に係る第2実施形態を示し、ノズルの断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るプラズマソース及びノズル一体型の表面処理装置を、一体型ノズルを図7のVI-VI線に沿う断面にして示す解説図である。
【図7】上記第3実施形態に係る表面処理装置を、一体型ノズルを側面視にて示す解説図である。
【図8】ノズル及び被処理物の傾斜態様の変形例を示す解説図である。
【図9】実施例1、及び実施例1に対しN混入流量を変えた参考実施例における、処理ガスの吹出し位置に対する吹出し流速の分布の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例2及び3、並びにこれら実施例に対しN混入流量を変えた参考実施例における、処理ガスの吹出し位置に対する吹出し流速の分布の測定結果を示すグラフである。
【図11】ノズル温調を無しにした参考実施例における、処理ガスの吹出し位置に対する吹出し流速の分布の測定結果を示すグラフである。
【図12】比較例2〜5に用いた表面処理装置の概略構成を示す図1対応の解説図である。
【図13】比較例1〜4における、処理ガスの吹出し位置に対する吹出し流速の分布の測定結果を示すグラフである。
【図14】比較例5、及び比較例5に対しN混入流量を変えた比較例における、処理ガスの吹出し位置に対する吹出し流速の分布の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示したものである。この実施形態の被処理物9は、例えば太陽電池の表面パネルとして用いられるガラス基板である。ガラス基板9は長方形の平板になっている。このガラス基板9の被処理面9aを表面処理装置1によってエッチングし粗化する。
【0013】
図1に示すように、表面処理装置1は、被処理物支持手段2と、常圧プラズマソース10と、ノズル20を備えている。図1において簡略化して図示するが、支持手段2は、例えば被処理物9の周縁を嵌め込んだり、把持したり、引っ掛けたりする縁係合機構を有し、被処理物9をほぼ垂直に立てて支持している。これにより、被処理面9aが、略垂直に向けられている。この支持状態において、被処理物9の長手方向は図1の紙面と直交する水平方向に向けられている。被処理物9の短手方向がほぼ垂直に向けられている(図4参照)。
支持手段2が、被処理物9の背面(被処理面9aとは反対側の面)を吸着したり、押さえたりして支持していてもよい。
【0014】
ここで、ほぼ垂直とは、垂直(鉛直)に対し例えば±20°以内の角度範囲を云い、完全な垂直を含む。本実施形態の被処理物9は、表面処理装置1にて処理されるべき被処理面9aが下向きになるように、垂直に対し10°傾斜して支持されている。被処理物9を傾斜させることによって、大型の被処理物9であっても、取り回しスペースをコンパクトにできる。被処理物9を斜めにして搬送しながら各種の処理又は操作を行なう工場では、被処理物9の搬送ラインに表面処理装置1を容易に組み込むことができる。
【0015】
さらに、支持手段2は、被処理物9を該被処理物9の長手方向(図1の紙面と直交する方向)に沿う水平方向にスライド可能に支持している。このような支持手段2として、ガイド溝を有するレールや、複数のコロからなるコロ機構を用いることができる。
【0016】
図3に示すように、被処理物9に移動手段8が接続されている。被処理物9は、略垂直の角度を維持しながら移動手段8によって被処理面9aに沿う水平方向(図1の紙面直交方向、図3の上下方向)に移動される。移動手段8として、直動モータ等を含む直動機構、エアシリンダ、油圧シリンダ等を用いてもよい。移動手段8が支持手段2に接続され、直接的には支持手段2を移動させることで、被処理物9が移動されるようになっていてもよい。支持手段2がコロ機構にて構成されている場合、コロが駆動機構によって回転駆動され、これにより、被処理物9が移動されるようになっていてもよい。この場合、コロ機構は、支持手段2と移動手段8を兼ねる。
【0017】
図2に示すように、表面処理装置1は、原料ガス供給部4及び常圧プラズマソース10を含むプラズマ生成部を備えている。
原料ガス供給部4は、フッ素系原料供給部4aと、希釈ガス供給部4bを含み、処理ガス生成用の原料ガスをプラズマソース10へ供給する。原料ガスは、フッ素系原料供給部4aから供給されるフッ素系原料と、希釈ガス供給部4bから供給される希釈ガスを含む。この実施形態では、フッ素系原料として、CFが用いられている。希釈ガスとしてArが用いられている。フッ素系原料供給部4aによるフッ素系原料(CF)の供給流量は、フッ素系原料流量調手段4avにて調節される。希釈ガス供給部4bによる希釈ガス(Ar)の供給流量は、希釈ガス流量調節手段4bvにて調節される。流量調節手段4av,4bvは、マスフローコントローラにて構成されているが、流量制御弁にて構成されていてもよい。
原料ガス流量(CFとArの合計流量)は、なるべく小量に設定するのが好ましく、例えば後記吹出し口21aの上下方向の長さが400mmのとき、2slm〜6slm程度が好ましい。
CFとArの流量比は、例えばCF:Ar=1:100〜1:19程度である。
【0018】
さらに、原料ガス供給部4には加湿器4cが設けられている。加湿器4cは、CFとArの混合ガスからなる原料ガスに水素含有添加成分として水(HO)を添加する。例えば、供給部4a,4bからの原料ガス(CF+Ar)の一部又は全部が、加湿器4cの水面より上側の空間に導入される。これにより、上記加湿器4cの上側空間の飽和水蒸気が原料ガスに混合される。原料ガスを加湿器4c内の液相の水中にバブリングすることにしてもよい。加湿器4cを加熱して水の蒸発を促進してもよい。供給部4a,4bからの原料ガスのうち、加湿器4cに通すガスと加湿器4cを通さないガスとの比率を調節することで、水の添加量を調節できる。
水の添加量は、原料ガスの露点が例えば12℃〜24℃程度になるように設定する。
【0019】
フッ素系原料として、CFに代えてC、C、C等の他のPFCを用いてもよく、CHF、C、CHF等のHFCを用いてもよく、その他、SF、NF、XeF等を用いてもよい。
希釈ガス(Ar)は、フッ素系原料を希釈し、かつキャリアする役目に加え、後記放電空間13において安定的なプラズマを生成する役目をも有している。希釈ガスとして、Arに代えて、He、N等の他の不活性ガスを用いてもよい。
水素含有添加成分として、水に代えて、過酸化水素水を用いてもよく、アルコール等のOH基含有化合物を用いてもよい。
【0020】
図2に示すように、常圧プラズマソース10は、複数の電極11と、これら電極11を収容して保持するボディ15を有している。電極11は、アルミニウムやステンレス等の金属にて構成されている。電極11は、例えば長手方向を図2の紙面と直交する方向に向けた長方形の平板状になっている。複数の電極11が間隔を置いて平行に並べられている。1つ置きの電極11が、電源3に接続されている。他の1つ置きの電極11が電気的に接地されている。電源3は、例えばパルス波状の電圧を隣接電極11,11間に印加する。印加電圧は、パルス波に限られず、連続波でもよい。各電極11における隣の電極11との対向面(放電面)に固体誘電体12が設けられている。固体誘電体12は、アルミナ等のセラミックの板でもよく、アルミナ等の溶射膜でもよい。隣り合う電極11,11の互いに対向する固体誘電体12,12どうし間が略大気圧の放電空間13になる。
【0021】
ボディ15は、導入側ボディ部16と、導出側ボディ部17を含む。これらボディ部16,17が、電極11の並び方向と直交する方向の両側から電極11を挟み付けている。導入側ボディ部16には、複数の導入路16aが形成されている。各導入路16aは、導入側ボディ部16の外面から延び、放電空間13の上流端に連なっている。原料ガス供給部4からの原料ガス供給路4dが複数に分岐し、各導入路16aに連なっている。
【0022】
原料ガス供給部4からの原料ガス(CF+Ar+HO)は、供給路4dにてプラズマソース10の各導入路16aに分配され、各放電空間13に導入される。これによって、原料ガスが、放電空間13内でプラズマ化され、HF等のフッ素系反応成分を含む処理ガスが生成される。処理ガスには、放電空間13内で分解されなかった原料ガス成分(CF、Ar、HO)も含まれている。処理ガス中のHF、CF、Ar等の主要成分は、空気(雰囲気ガス)より重い。
【0023】
導出側ボディ部17には導出路17bが設けられている。導出路17bは、各放電空間13の下流端から延び、1つに合流している。合流後の導出路17bが、導出側ボディ部17の外面に達している。導出路17bの下流端から接続管5がノズル20へ延びている。
各放電空間13で生成された処理ガスが、導出路17bを通って互いに合流した後、接続管5によってノズル20へ送られる。
【0024】
図1及び図4に示すように、ノズル20は、例えば直方体形状になっている。このノズル20が、ノズル支持手段29によって長手方向を略上下に向けて支持されている。図1において簡略して図示された支持手段29は、台座やフレーム等を含む。ノズル20の先端面20aは、長手方向を略上下に向けた長方形(図4参照)になっている。ノズル先端面20aは、被処理物9の傾斜に合わせて、鉛直に対しやや仰向けになるように例えば10°傾けられている。これにより、ノズル先端面20aが被処理物9の被処理面9aと平行に対向する。図3に示すように、ノズル先端面20aと被処理物9の間の距離dは、例えばd=3mm〜9mm程度が好ましい。
ノズル20及び被処理物9は、大気中に配置されている。ノズル20及び被処理物9の周辺の雰囲気ガスは空気である。
【0025】
図3に示すように、ノズル20の内部には、処理ガス吹出し路21と、流速調節用ガス混入路22と、一対の吸引路24,24が形成されている。これら路21,22,24の一端部がノズル20の背面20b(先端面20aとは反対側の面)に開口している。接続管5が、処理ガス吹出し路21のノズル背面20b側の端部に連なっている。プラズマソース10からの処理ガスが、接続管5を経て吹出し路21に導入される。詳細な図示は省略するが、ノズル20内の処理ガス吹出し路21には、ガスの流れをノズル20の長手方向(上下方向)に均質化する整流部が設けられている。整流部は、チャンバー、スリット、複数の小孔の列等のガスコンダクタンスを増減させる要素を含む。
【0026】
図1に示すように、ノズル20には流速調節用ガス供給部6が接続されている。流速調節用ガス供給部6には、流量調節用ガスとして窒素ガス(N)が蓄えられている。供給部6から流速調節用ガス供給路6aが延びている。供給路6aに流速調節用ガス流量調節手段6vが設けられている。供給部6からの窒素ガスの供給流量が、調節手段6vにて調節される。流量調節手段6vは、マスフローコントローラにて構成されているが、流量制御弁にて構成されていてもよい。流速調節用ガス供給路6aの先端部が、流速調節用ガス混入路22のノズル背面20b側の端部に連なっている。供給部6からの窒素ガスが、供給路6aを経て混入路22に導入される。ノズル20内の流速調節用ガス混入路22には、上記処理ガス吹出し路21と同様に、ガスの流れをノズル20の長手方向に均一化する整流部(図示省略)が設けられている。
流速調節用ガスとして、窒素ガスに代えて、空気等を用いてもよい。
【0027】
図3に示すように、処理ガス吹出し路21及び流速調節用ガス混入路22は、それぞれノズル20の背面20bから先端面20aへ向けて延びている。先端面20aの近傍のノズル20内において、2つの路21,22が互いに接近し、合流している。これにより、流速調節用ガス混入路22の窒素ガスが、処理ガス吹出し路21の処理ガスに混入される。
合流前の処理ガス流量ひいては原料ガス(CF+Ar+HO)の流量と、流速調節用ガス混入路22の窒素ガスの流量との比は、好ましくは(CF+Ar+HO):N=2:5〜2:15程度である。
【0028】
ノズル20内の2つの路21,22の合流部23から処理ガス吹出し路21が更にノズル先端面20aへ延びている。処理ガス吹出し路21の先端部が、先端面20aに達して開口し、処理ガス吹出し口21aを構成している。窒素ガスと合流後の処理ガスが、吹出し口21aから吹き出される。上記整流部によって処理ガスの吹出し流が吹出し口21aの長手方向に均一になる。
合流部23から処理ガス吹出し口21aまでの距離Lは、好ましくはL=1mm〜15mm程度である。
【0029】
図4に示すように、処理ガス吹出し口21aは、ノズル20の幅方向の中央部に配置され、かつノズル20の長手方向に沿って延びるスリット状になっている。すなわち、処理ガス吹出し口21aは、ノズル先端面20a内において略垂直方向に分布している。処理ガス吹出し口21aの長さ(図4の上下方向の寸法)は、図4において二点鎖線で示す被処理物9の幅方向の寸法(図4の上下方向の寸法)と略同じか、若干長い。処理ガス吹出し口21aの幅wは、w=1mm〜6mm程度が好ましい。
【0030】
図3に示すように、各吸引路24のノズル先端面20a側の端部は、先端面20aに達して開口し、吸引口24eを構成している。図4に示すように、吸引口24eは、ノズル20の長手方向に延びるスリット状になっている。吸引口24eの長さ(図4の上下方向の寸法)は、処理ガス吹出し口21aと略同じ大きさになっている。一対の吸引口24e,24eが、処理ガス吹出し口21aを挟んで両側に配置されている。図3に示すように、吸引路24のノズル背面20b側の端部から排気路7eが延びている。排気路7eが排気手段7に連なっている。排気手段7は、排気ポンプや除害設備を含む。
【0031】
図1に示すように、ノズル20に温度調節手段30が熱的に接続されている。図4に示すように、温度調節手段30は、温調媒体供給部31と、ノズル20の内部に形成された温調路33を含む。温調媒体供給部31は、所定の温度に調節した温調媒体を、温調媒体供給路32を介して温調路33へ導入する。温調媒体として、例えば水が用いられている。
【0032】
図3に示すように、温調路33は、ノズル20の内部における先端面20aの近傍部分、かつ処理ガス吹出し口21aの周辺部分に配置されている。図4に示すように、温調路33は、往路33aと、折り返し路33bと、復路33cを有し、処理ガス吹出し口21aを囲んでいる。往復路33a,33cは、互いの間に処理ガス吹出し口21aを挟み、それぞれ処理ガス吹出し口21aと平行に延びている。往路33aの上流端が、ノズル20の下端面に達し、温調媒体供給路32に連なっている。折り返し路33bは、処理ガス吹出し口21aの上端部より上に配置され、往復路33a,33cどうしを連ねている。復路33cの下流端から温調媒体排出路34が延びている。温調媒体排出路34は、温調媒体供給部31に接続されている。これにより、温調媒体が、温調媒体供給部31、温調媒体供給路32、温調路33、温調媒体排出路34の順に循環される。
温調媒体の設定温度は、30℃〜35℃程度が好ましい。
ノズル20の先端側の部分は、熱伝導性が良好な金属等の部材にて形成されていることが好ましい。この良熱伝導部材に処理ガス吹出し口21a及び温調路33が形成されていることが好ましい。
【0033】
上記のように構成された表面処理装置1によって被処理物9の表面を粗化処理する方法を説明する。
被処理物9を、支持手段2にて略垂直(傾斜角度10°)に支持しながら、移動手段8にて、ノズル20の先端面20aの前方を横切るように、被処理面9aに沿う水平方向(図1の紙面と直交する方向)に移動させる。
【0034】
原料ガス供給部4において、CFとArの混合ガスに水を添加し、原料ガス(CF+Ar+HO)を生成する。流量調節手段4av,4bvにより原料ガスの流量及び各原料成分の流量比を調節する。さらに、加湿器4cにおいて水の添加量を調節する。この原料ガスを、供給路4dからプラズマソース10の各導入路16aに分配し、各空間13に導入する。併行して、電源3からの電圧供給によって、隣接する電極11,11間に電界を印加し、各空間13内に大気圧プラズマ放電を生成する。これによって、原料ガスを放電空間13でプラズマ化し、HF等のフッ素系反応成分を含む処理ガスを生成できる。
【0035】
各放電空間13で生成した処理ガスを、導出路17bにおいて互いに合流させる。この処理ガスを、接続管5を経てノズル20の処理ガス吹出し路21に導入する。
更に、流速調節用ガス供給部6の窒素ガス(流速調節用ガス)を、流速調節用ガス供給路6aを経てノズル20の流速調節用ガス混入路22に導入する。この窒素ガスが、処理ガス吹出し口21aの近傍の合流部23において処理ガス吹出し路21からの処理ガスに混入する。流量調節手段6vにより窒素ガスの混入流量を調節する。窒素混入後の処理ガスを、処理ガス吹出し口21aから吹き出す。吹出し時の処理ガスは、処理ガス吹出し口21aの長手方向に均一になっている。この処理ガスが被処理物9に接触し、処理ガス中のHF等の反応成分と被処理物9とが反応を起こし、被処理物9の表面が粗化される。
【0036】
流量調節手段4av,4bvにて原料ガス流量ひいては処理ガス流量を十分に小さくすることで、処理が過度になるのを防止できる。
処理ガスに窒素ガス(流速調節用ガス)を混入することで、処理ガスの吹出し流速を増大させることができ、処理ガスを被処理物9に確実に到達させることができる。流量調節手段6vにて窒素ガスの混入流量を調節することで、処理ガスの吹出し流速を調節できる。処理ガスの吹出し流速は、0.1〜0.5m/sの範囲内になるようにする。吹出し流速を必要最小限に抑えることで、処理ガス成分の無駄を防止できる。
処理済みのガスは、吸引口24eに吸い込まれ、吸引路24、排気路7eを経て、排気手段7から排気される。
【0037】
さらに、温調媒体供給部31の温調媒体を、供給路32を経て、温調路33に導入する。温調媒体は、往路33a、折り返し路33b、復路33cの順に流れる。この温調媒体によって、ノズル20の処理ガス吹出し口21aの周辺部を温調でき、ひいては処理ガスが吹出し口21aから吹出される時の温度(以下「吹出し温度」と称す)を例えば30℃〜35℃に温調できる。
【0038】
これによって、処理ガスの吹出し流が緩やかで、かつ処理ガス中に空気より重い成分(HF、CF、Ar等)が含まれていても、処理ガスを被処理物9の上下方向に略均一に吹き付けることができる。したがって、被処理物9を上下方向にほぼ均一に表面処理できる。さらに、吹出し後の処理ガス中の水分が凝縮するのを防止できる。したがって、処理ガス吹出し口21aの内壁や先端面20aに結露が付着するのを防止でき、処理を安定的に連続して行なうことができる。また、凝縮した水に反応成分のHFが吸収されるのを防止できる。よって、処理の均一性を一層確実に確保できる。さらに、装置1や被処理物9が凝縮体によって腐蝕等のダメージを受けるのを防止できる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図5は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態は、温度調節手段30の変形例に係る。ノズル20の内部には、該ノズル20の先端面20aの近傍の温調路33に加えて、ノズル20の中央部ないしは背面20b寄りの部分にも温調路33Xが設けられている。温調路33Xは、温調路33と同様に、往路33a、折り返し路33b(図示省略)、復路33cを有し、先端面20a側の温調路33と平行になっている。温調路33Xの往復路33a,33cは、ガス路21,22の近くに配置されている。2つの温調路33,33Xに温調媒体をそれぞれ通すことによって、ノズル20のほぼ全体を温調できる。特に温調路33Xに温調媒体を通すことによって、処理ガス吹出し路21及び流速調節用ガス混入路22の中間部分を温調できる。したがって、互いに混合される前の処理ガス及び流速調節用ガスをそれぞれ温調することができる。流速調節用ガスを温調したうえで、処理ガスに合流させることができる。これにより、処理ガスの吹出し温度を確実に所望の温度になるよう調節することができる。処理ガス吹出し路21の内部での結露を確実に防止できる。
【0040】
図6及び図7は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、プラズマソースとノズルが一体になっている。すなわち、図6に示すように、プラズマソース一体型ノズル20Xの内部に一対の電極11,11が収容されている。一方の電極11が電源3に接続され、他方の電極11が電気的に接地されている。各電極11の他方の電極11との対向面に固体誘電体12が設けられている。一対の電極11の固体誘電体12どうし間に放電空間13が形成されている。放電空間13が、処理ガス吹出し路21の途中に介在されている。図7に示すように、原料ガス供給部4が、供給路4dを介してノズル20Xに接続されている。図6に示すように、供給路4dは、処理ガス吹出し路21の基端部に連なっている。
【0041】
第3実施形態においては、原料ガス(CF+Ar+HO)が、供給路4dを経て、処理ガス吹出し路21に導入される。この原料ガスが、処理ガス吹出し路21の途中の放電空間13に導入され、プラズマ化される。これにより、HF等のフッ素系反応成分を含む処理ガスが生成される。この処理ガスが、放電空間13より下流の処理ガス吹出し路21を通り、かつ流速調節用ガス混入路22からのNと混合されたうえで、処理ガス吹出し口21aから吹き出される。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その要旨の範囲内において種々の態様を採用できる。
例えば、被処理物9は略垂直であればよい。被処理物9の傾斜角度は、鉛直に対し10°に限られず、鉛直に対し例えば±20°の範囲であればよい。被処理物9の傾斜方向は、被処理面9aが下向きになる側に限られない。図8に示すように、被処理面9aが上向きになる側に傾斜されていてもよい。この場合、ノズル20の先端面20aが、被処理物9の被処理面9aと平行に対向するように、下向きに傾斜して配置される。
被処理物9が、まっすぐ鉛直になっていてもよい。この場合、ノズル20の先端面20aが被処理物9の被処理面9aと平行に対向するようにまっすぐ垂直に配置される。
【0043】
被処理物9の位置が固定され、移動手段8がノズル20に接続され、ノズル20が先端面20aに沿う水平方向に移動されるようになっていてもよい。
被処理物9とノズル20を相対移動させず、両者の相対位置を固定した状態で処理を行なってもよい。
【0044】
処理ガス吹出し口21aは、ノズル20の先端面20aの上下方向(略垂直方向)に分布していればよく、スリット状に限られず、ノズル20の長手方向に間隔を置いて並べられた複数の小孔の列によって構成されていてもよい。
【0045】
ノズル20の内部や先端部に温度調節手段30として電熱ヒータ等の加熱手段を設けてもよい。
ノズル20と被処理物9の間の空間を含むノズル20の周辺の雰囲気ガスが、空気に代えて窒素等の不活性ガスに置換されていてもよい。本発明は、雰囲気ガスより重い成分を含む処理ガスを用いた表面処理に好適である。
【0046】
被処理物9の形状は、平板状に限られず、連続シート状でもよく、立体形状でもよい。
被処理物9は、太陽電池用のガラスに限定されず、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板でもよく、更にはガラスに限られず、半導体ウェハ、樹脂フィルム等の種々の被処理物に適用できる。
本発明は、ガラス基板の粗化エッチングだけでなく、半導体膜や絶縁膜等のエッチングにも適用でき、エッチングに限られず、CVD、洗浄、表面改質(疎水化、親水化等)、アッシング等の他の表面処理にも適用できる。処理内容に応じて処理ガスの反応成分等を適宜選択する。
例えば、アモルファスシリコンや結晶シリコンをエッチングする場合、処理ガスが、フッ素系反応成分の他、オゾン等の酸化性反応成分を含むことが好ましい。
プラズマ表面処理に限られず、フッ酸ベーパー、熱CVD等のプラズマを用いない表面処理にも適用できる。
【実施例1】
【0047】
実施例を説明する。本発明が当該実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
第1実施形態(図1〜図4)に示す表面処理装置1と実質的に同じ構造の装置を用いた。
原料ガス供給部4において、CF 0.1slm、Ar 3.9slmの混合ガスに露点が18℃になる量の水を添加した。この原料ガス 4.0slmを、常圧プラズマソース10に導入してプラズマ化し、HFを含む処理ガスを生成した。
常圧プラズマソース10の各電極11の長さは400mmであった。電極11の表面の固体誘電体12はアルミナ99.5wt%であった。固体誘電体12の厚さは、1mmであった。隣接する2つの電極11,11どうしの間隔は、1mmとした。電源3にて印加されるパルス電圧の立ち上がり速度は10μsとし、ピーク間電圧はVpp=160Vとし、 周波数は30kHzとした。
【0048】
常圧プラズマソース10にて生成した処理ガス 4.0slmを、接続管5を経てノズル20へ供給した。併行して、流速調節用ガス供給部6からN 15slmをノズル20へ供給した。ノズル20内の合流部23において上記処理ガスに上記流速調節用のNを混入した。混入後の処理ガス 19slmを吹出し口21aから吹出し、被処理物9に接触させた。処理ガスの吹出し流速は図9を参照のこと。
合流部23から吹出し口21aまでの距離Lは、L=10mmであった。吹出し口21aの長さは400mm、幅wは、w=2mmであった。吸引口24eの幅は、0.7mmであった。左右一対の吸引口24e,24eどうしの間隔は、40mmであった。
温度調節手段30によって、ノズル20を35℃に温調した。
【0049】
被処理物9は、ガラスであり、処理前の表面粗さRaは、Ra=0.1〜0.2nmであった。表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)にて計測した(処理後の計測手段も同様)。被処理物9は、被処理面9aが下向きになる側へ鉛直に対し10°傾斜させた。被処理物9の上下方向の寸法は、400mmであった。ノズル20は、先端面20aが被処理面9aと平行に対向するように、鉛直に対し10°傾斜させた。ノズル先端面20aと被処理物9との間の距離dは、d=7mmとした。被処理物9とノズル20の相対移動速度は、7700 mm/minとした。ノズル20及び被処理物9の周辺の雰囲気ガスは空気であり、雰囲気温度は25℃であった。
【0050】
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から上端(高さ400mm)までの全域において所望範囲の0.5nm<Ra<0.8nmになった。処理後のノズル先端面20aに結露等の生成物は確認されなかった。処理ガスに空気より重い成分が含まれていても、均一で良好な処理を行なうことができることが確認された。
【0051】
図9は、吹出し口21aの長手方向の各位置から吹き出される処理ガスの流速の測定結果を示したものである。同図のグラフの横軸の吹出し位置(mm)は、吹出し口21aの下端(0mm)から吹出し口21a上の測定点までの距離に対応する(図10〜図14において同じ)。実施例1では、流速調節用のNガスの混入流量を15slmにすることより、吹出し口21aの長手方向の全域で処理ガスの吹出し流速を0.3m/s〜0.4m/sの範囲内に収めることができた。しかも、処理ガスが、吹出し口21aの長手方向の全域から略均一な流速で吹き出されることが確認できた。
【0052】
更に、参考として、流速調節用のNガスの混入流量をそれぞれ10slm、5slm、0slmとし、他の条件はすべて実施例1と同じにした場合の吹出し流速をも測定した。図9に示すように、流速調節用のNガスを混入しない場合(N=0slm)、吹出し流速が0.1m/s未満になった。この流速では、処理ガスを被処理物9に到達させ接触させるのは困難である。流速調節用のNガスの混入流量を5slm以上にすることで、処理ガスの吹出し流速を0.1m/s以上にできた。流速調節用のNガスの混入流量が大きいほど、処理ガスの吹出し流速が大きくなった。流速調節用のNガスの混入流量を5slm〜15slmにすれば、処理ガスの吹出し流速を0.1m/s〜0.5m/sの範囲内に十分収めることができることが確認できた。
【実施例2】
【0053】
ノズル20の温度を30℃にした点を除き、実施例1と同一の条件で処理を行なった。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から上端(高さ400mm)までの全域において所望範囲の0.5nm<Ra<0.8nmになった。処理後のノズル先端面20aに結露等の生成物は確認されなかった。処理ガスに空気より重い成分が含まれていても、均一で良好な処理を行なうことができることが確認された。
【実施例3】
【0054】
吹出し口21a近傍の合流部23におけるNの混入流量を10slmとした。したがって、処理ガスの吹出し流量は、14slmであった。さらにノズル20の温度を30℃にした。以上の点を除き、実施例1と同一の条件で処理を行なった。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ300mmまでの区間では、所望範囲の0.5nm<Ra<0.8nmになった。高さ300mmから高さ330mmまでの区間は、Ra<0.5nmになった。高さ330mmから上端(高さ400mm)までの区間では、所望範囲の0.5nm<Ra<0.8nmになった。処理後のノズル先端面20aに結露等の生成物は確認されなかった。中間に処理量が所望範囲を下回る区間があったが全体的には良好な処理を行なうことができた。処理ガスに空気より重い成分が含まれていても、吹出し口21aの上端付近に対応する部分(高さ330mm〜400mm)の処理を所望範囲にできることが確認された。
【0055】
図10は、実施例2及び実施例3において、吹出し口21aの長手方向の各位置から吹き出される処理ガスの流速の測定結果を示したものである。実施例2、3によれば、流速調節用のNガスの混入流量をそれぞれ15slm、10slmにすることより、吹出し口21aの長手方向の全域で処理ガスの吹出し流速を0.1m/s〜0.5m/sの範囲内に収めることができた。
【0056】
更に、参考として、流速調節用のNガスの混入流量をそれぞれ5slm、0slmとし、他の条件はすべて実施例2、3と同じにした場合の吹出し流速をも測定した。図10に示すように、Nガスの混入流量が5slm以下では、処理ガスの吹出し流速を所望範囲(0.1m/s〜0.5m/s)にすることができなかった。
図9及び図10から明らかなように、ノズル20の調節温度によって、処理ガスの流速分布が変化することが確認された。ノズル20の温度を35℃にした場合(図9)のほうが、30℃にした場合(図10)より、吹出し流速が大きくなり、しかも吹出しの均一性が良好であった。
【0057】
更に、図11は、ノズル20の温調を行なわず、かつNの混入流量をそれぞれ15slm、10slm、5slm、0slmとし、他の条件はすべて実施例1と同じにした場合の吹出し流速の測定結果である。Nの混入流量を10slm〜15slmにすれば、処理ガスの吹出し流速を吹出し位置の全域で所望範囲内(0.1m/s〜0.5m/s)にできることが確認された。
【0058】
[比較例1]
比較例1では、処理ガスへのN混入を行なわなかった。したがって、処理ガスの吹出し流量は、4slmであった。かつノズル20の温調は行なわなかった。それ以外の条件は実施例1と同一にして処理を行なった。
図13に示すように、処理ガスの吹出し流速は、吹出し位置が高くなるにしたがって低下した。吹出し位置の略全域で、吹出し流速が所望範囲の下限(0.1m/s)を下回った。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ150mmまでの区間では、Ra>0.5nmになった。高さ150mmから上端(高さ400mm)までの区間では、Ra<0.5nmになった。処理後のノズル先端面20aに微小な水滴状態の生成物が多量に付着していた。
【0059】
[比較例2]
比較例2では、図12に示すように、流速調節用ガス供給路6aをノズル20ではなく接続管5の基端部に接続した装置を用いた。これにより、プラズマソース10で生成された直後の処理ガスにNを混入した。Nの混入流量は5slmとした。したがって、処理ガスの吹出し流量は、9slmであった。ノズル20の温調は行なわなかった。それ以外の条件は実施例1と同一にして処理を行なった。
図13に示すように、処理ガスの吹出し流速は、吹出し位置が高くなるにしたがって顕著に低下した。吹出し口21aの下端部(吹出し位置0mm)付近では、吹出し流速が0.2m/s程度になったが、100mm以上の吹出し位置では、吹出し流速が所望範囲の下限(0.1m/s)を下回った。処理ガス中の空気より重い成分が垂れるためと考えられる。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ210mmまでの区間では、0.5nm<Ra<0.8nmになった。高さ210mmから上端(高さ400mm)までの区間では、Ra<0.5nmになった。処理後のノズル先端面20aに微小な水滴状態の生成物が多量に付着していた。
【0060】
[比較例3]
図12に示す比較例2と同じ装置を用い、生成直後の処理ガスにNを混入した。Nの混入流量は10slmとした。したがって、処理ガスの吹出し流量は、14slmであった。ノズル20の温調は行なわなかった。それ以外の条件は実施例1と同一にして処理を行なった。
図13に示すように、処理ガスの吹出し流速は、比較例2と同様に、吹出し位置が高くなるにしたがって顕著に低下した。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ300mmまでの区間では、0.5nm<Ra<0.8nmになった。高さ300mmから上端(高さ400mm)までの区間では、Ra<0.5nmになった。処理後のノズル先端面20aに微小な水滴状態の生成物が多量に付着していた。
【0061】
[比較例4]
図12に示す比較例2と同じ装置を用い、生成直後の処理ガスにNを混入した。ノズル20の温調は行なわなかった。それ以外の条件は実施例1と同一にして処理を行なった。Nの混入流量は、実施例1と同じく15slmとした。したがって、処理ガスの吹出し流量は、19slmであった。処理ガスの吹出し流速は、図13を参照のこと。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ360mmまでの区間では、0.5nm<Ra<0.8nmになった。高さ360mmから上端(高さ400mm)までの区間では、Ra<0.5nmになった。処理後のノズル先端面20aに微小な水滴状態の生成物が多量に付着していた。
【0062】
[比較例5]
図12に示す比較例2と同じ装置を用い、生成直後の処理ガスに流速調節用のN 15slmを混入した。ノズル20の温度を30℃にした。それ以外の条件は実施例1と同一にして処理を行なった。処理ガスの吹出し流速は、図14を参照のこと。図14には、流速調節用のNの混入流量を10slm、5slm、0slmとした場合の処理ガスの吹出し流速をも示す。
処理後の被処理物9の表面粗さRaは、被処理物9の下端(高さ0mm)から高さ340mmまでの区間では、0.5nm<Ra<0.8nmになった。高さ340mmから上端(高さ400mm)までの区間では、Ra<0.5nmになった。処理後のノズル先端面20aに結露等の生成物は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば太陽電池用の表面ガラスを粗化するのに適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 表面処理装置
2 被処理物支持手段
3 電源
4 原料ガス供給部
4a フッ素系原料供給部
4av フッ素系原料流量調手段
4b 希釈ガス供給部
4bv 希釈ガス流量調節手段
4c 加湿器
4d 供給路
5 接続管
6 流速調節用ガス供給部
6a 流速調節用ガス供給路
6v 流速調節用ガス流量調節手段
7 排気手段
7e 排気路
8 移動手段
9 被処理物
9a 被処理面
10 プラズマソース
11 電極
12 固体誘電体
13 放電空間
15 ボディ
16 導入側ボディ部
16a 導入路
17 導出側ボディ部
17b 導出路
20 ノズル
20X プラズマソース一体型ノズル
20a 先端面(吹出し面)
20b 背面
21 処理ガス吹出し路
21a 処理ガス吹出し口
22 流速調節用ガス混入路
23 合流部
24 吸引路
24e 吸引口
29 ノズル支持手段
30 温度調節手段
31 温調媒体供給部
32 温調媒体供給路
33 温調路
33a 往路
33b 折り返し路
33c 復路
33X 温調路
34 温調媒体排出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理面を略垂直に向けた被処理物に、雰囲気ガスより重い反応成分を含む処理ガスを吹き付け、前記被処理面を処理する方法であって、
略垂直に分布する吹出し口を有するノズルを、前記被処理面と対向させ、
前記吹出し口の近傍で流速調節用ガスを前記処理ガスに混入し、
前記混入後の処理ガスを前記吹出し口から吹き出し、該吹き出し時の処理ガスの流速が0.1〜0.5m/sになるよう、前記流速調節用ガスの混入流量を調節することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記処理ガスが、水素を含有する添加成分を含み、
前記ノズルの吹出し口の周辺部を温度調節することを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記ノズルの吹出し口の周辺部の温度を30℃〜35℃に調節することを特徴とする請求項2に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記ノズルの前記吹出し口が開口する先端面及び前記被処理面を、互いに平行になるように、鉛直にし又は鉛直に対し±20°以内の範囲で傾斜させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記反応成分が、フッ素系の反応成分であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理方法。
【請求項6】
被処理面を略垂直に向けた被処理物に、雰囲気ガスより重い反応成分を含む処理ガスを吹き付け、前記被処理面を処理する装置であって、
前記処理ガスを通す処理ガス吹出し路と、流速調節用ガスを通す流速調節用ガス混入路と、被処理面と対向する先端面を有するノズルを備え、
前記処理ガス吹出し路の先端部が、前記先端面に達し、かつ前記先端面内において略垂直方向に分布する吹出し口を構成し、
前記流速調節用ガス混入路が、前記吹出し口の近傍で前記処理ガス吹出し路に合流しており、
前記吹出し口からの処理ガスの吹出し流速が、0.1〜0.5m/sになるよう、前記流速調節用ガスの流量を調節する流量調節手段を、さらに備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項7】
前記ノズルの吹出し口の周辺部に、該吹出し口周辺部を温度調節する温度調節手段を熱的に接続したことを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記温度調節手段が、前記吹出し口周辺部の温度を30℃〜35℃に調節することを特徴とする請求項7に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記被処理面の鉛直に対する角度が±20°以内になるように、前記被処理物を支持する被処理物支持手段と、
前記先端面が前記被処理面と平行になるように、前記ノズルを支持するノズル支持手段と、
前記被処理物とノズルの一方を他方に対し前記被処理面又は前記先端面に沿って相対移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−245404(P2010−245404A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94294(P2009−94294)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】