説明

角度検出装置

【課題】角度検出の際の角度分解能を高分解能にすることができる角度検出装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール等に連結固定された主動ギアに連動回転する各従動ギア4,5をライトガイドとすべくこれらを透明樹脂で形成し、その外周肉厚部6b,7bを肉厚が直線的に変化するような形状とする。各従動ギア4,5の中心位置下部にLED9,10を各々配置し、これらの入射光を従動ギア4,5を介してリニアイメージセンサ11に導く。リニアイメージセンサ11は、光の照射幅を検知してこの照射幅に応じて変化する、即ちギア回転に伴って直線的に変化する撮像データDpiを演算装置12に出力する。演算装置12は、リニアイメージセンサ11から得た撮像データDpiを用いて各従動ギア4,5の回転角度を算出し、これらギア4,5の回転角度の組み合わせを見て主動ギアの回転角度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部品が動いた際のその回転角度を検出する角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばステアリングホイール等の回転部品が回転した際のその回転角度や回転方向を検出し得る角度検出装置が広く開発されている。この種の角度検出装置としては、例えば特許文献1に開示されるような光学式ロータリエンコーダがある。一般的な光学式ロータリエンコーダの構成としては、回転部品と同一軸心に連動回転する回転板の外周寄りの部位に周方向に沿って等間隔で複数並ぶスリットが形成され、発光素子及び受光素子をそのスリットの回転軌跡を挟んだ状態で対向配置されて成るフォトカプラが複数個配置されている。
【0003】
回転部品の操作に伴い回転板が回転した際、フォトカプラからは各々位相の異なるパルス信号が出力される。光学式ロータリエンコーダは、これらパルス信号のエッジ立ち上がりやエッジ立ち下がりをカウントすることにより回転部品の回転角度を検出し、またエッジ立ち上がりや立ち下がりの検出順を見ることにより回転部品の回転方向を検出する。光学式ロータリエンコーダの角度分解能は、回転板が1回転する際に検出できるパルス信号のエッジカウント数によって決まり、一般的には角度分解能が約5度程度のものが広く流通している。
【特許文献1】特開2000−46536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、角度検出対象となる回転部品の種類によっては、5度よりも小さい角度分解能が必要となる場合もあることから、一層の高分解能の角度検出装置の開発が望まれていた。また、角度検出装置が回転角度を算出するに際し、例えば最小の分解能を2倍や3倍してこれを新たな分解能として回転角度を算出する演算も場合によっては可能であるが、元となる最小分解能がこの時に懸念する低分解能の場合は、倍掛けで設定した新たな分解能はその値自体が大きくなってしまうので、角度検出に際して使用対象が限られることになり、これは汎用性が乏しくなる問題にも繋がる。
【0005】
本発明の目的は、角度検出の際の角度分解能を高分解能にすることができる角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、支持部材に移動可能に支持された可動部材が当該支持部材に対して移動する際、当該可動部材の移動角を検出する角度検出装置において、検出した像に応じた検出値を出力するイメージセンシング手段と、前記可動部材に連れ動き可能であり、前記可動部材の移動位置に応じた前記像を前記イメージセンシング手段に出力する像出力手段と、前記イメージセンシング手段が出力する前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出する算出手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、可動部材が支持部材に対して移動したとき、その移動位置に応じた像が、像出力手段からイメージセンシング手段に出力される。イメージセンシング手段は、像出力手段から像を検出すると、その像に応じた検出値を算出手段に出力する。算出手段は、像出力手段から検出値を入力すると、その検出値を用いて可動部材が移動した際のその移動角を算出する。ところで、この種のイメージセンシング手段には細かいレベルで像を取得可能なものが広く普及してきているが、イメージセンシング手段の像検出が高レベルになれば、これを角度検出に用いた時はそれに伴って可動部材の移動角算出を高分解能で行うことができることに繋がる。よって、イメージセンシング手段を用いて可動部材の移動角を算出するに際し、この種のイメージセンシング手段を用いれば、可動部材の移動角算出の際の角度分解能を高分解能にすることが可能となる。
【0008】
本発明では、前記像出力手段は、前記可動部材の移動位置に応じた光範囲で光を前記イメージセンシング手段に出力する光学式であり、前記イメージセンシング手段は、検出した前記光範囲に応じた前記検出値を出力する撮像手段であり、前記算出手段は、前記撮像手段が取得した前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、イメージセンシング手段を用いて可動部材の移動角を算出する際の移動角検出方式として光学式を用いているので、非接触方式により可動部材の移動角を求めることが可能となり、部品摩擦が原因で生じ得る部品劣化等の問題を考えずに済む。
【0010】
本発明では、前記像出力手段は、前記可動部材の移動位置に応じた接触面積で前記イメージセンシング手段に当接する誘電体であり、前記イメージセンシング手段は、前記誘電体との接触面積に応じた値で前記検出値を出力する静電容量検出手段であり、前記算出手段は、前記静電容量検出手段が取得した前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、イメージセンシング手段を用いて可動部材の移動角を算出する際の移動角検出方式として静電容量式を用いる。ここで、例えば移動角検出方式として光学式を用いた場合は光透過部位に汚れが付着すると、それによって光が遮られて移動角の誤検出に繋がる可能性もあるが、本構成のように移動角検出方式として静電容量式を用いれば、この種の汚れが移動角検出用の各種部品に付着しても光学式ほどの影響は出難いので、移動角検出に際して汚れによる角度誤検出が生じ難くなる。
【0012】
本発明では、前記像出力手段は、前記可動部材に連れ動きするに際して前記イメージセンシング手段の検出値が直線的な値を取り得るような前記像を、前記イメージセンシング手段に出力するように形成されていることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、イメージセンシング手段が直線的に変化する検出値を出力するのであれば、直線的に変化する値を用いて角度算出する処理は簡単な算出処理で済むことになるので、移動角演算に際して簡素な処理でこれを行うことが可能となる。
【0014】
本発明では、前記像出力手段は、前記可動部材と共に連れ動きする状態で複数設けられるとともに、共用する前記イメージセンシング手段に対して前記像を各々異なる値で出力し、前記算出手段は、1つのイメージセンシング手段で得られる複数の前記像を用いて前記可動部材の前記移動角を算出することを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、算出手段が像を用いて可動部材の移動角を検出する際に移動角算出の際の演算パラメータとなる像を複数取得可能となるので、移動角演算の高分解能化に効果が高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、角度検出の際の角度分解能を高分解能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した角度検出装置の第1実施形態を図1〜図9に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、車両には、ステアリングホイールの操舵角度を検出するステアリングアングルセンサ(SAS:steering−angle sensors)1が搭載されている。ステアリングアングルセンサ1には、ステアリングホイールと操舵輪とを連結するステアリングシャフト2に固着された主動ギア3が設けられている。主動ギア3は、ギア外周面に周方向に沿って等間隔に配置された複数の歯が形成され、ステアリングシャフト2の軸心Laに対して同一軸心位置に配置されている。主動ギア3は、ステアリングホイールが操舵操作された際、ステアリングシャフト2に同期して回動する。なお、ステアリングシャフト2が可動部材に相当する。
【0019】
主動ギア3には、この主動ギア3と連れ回り可能な2つの従動ギア4,5が噛み合い係合されている。第1従動ギア4は、その外周面上の歯で主動ギア3に噛み合い、主動ギア3の軸心Laに対し平行に沿う軸心Lb回りに回動可能である。また、第2従動ギア5は、第1従動ギア4よりも径が小さく形成され、その外周面上の歯で主動ギア3に噛み合い、主動ギア3の軸心Laに対し平行に沿う軸心Lc回りに回動可能である。
【0020】
各ギア3〜5は、歯数が各々異なるように形成されている。ここで、例えば主動ギア3の歯数がm、第1従動ギア4の歯数がn(<m)、第2従動ギア5の歯数がl(<m)であるとすると、主動ギア3が1回転した際には、第1従動ギア4はm/n回転し、第2従動ギア5はm/l回転する。即ち、主動ギア3が回転した際には、各従動ギア4,5は各々異なる回転位置をとった状態となる。
【0021】
図3に示すように、本例のステアリングアングルセンサ1は、回転角度検出方式として主動ギア3の回転角度θmを光で検出する光学式が採用されている。これを以下に説明すると、各従動ギア4,5は、材質として透明樹脂で形成され、外部から取り込んだ光を照射先まで通過させるライトガイドとして機能する。各従動ギア4,5は、底面側が開口した略椀形状を成し、肉付き部分がそれぞれ光路6,7となる。第1従動ギア4の第1光路6は、第1従動ギア4の中央部においてその軸心Lb方向に延びる中央部6aと、半径方向の外端部に位置して周方向全域に亘り存在する外周肉厚部6bと、中央部6a及び外周肉厚部6bをギア上部で繋ぐ円板状の連結部6cとから成る。なお、第2従動ギア5の第2光路7も第1従動ギア4の第1光路6と同様の形状から成り、中央部7a、外周肉厚部7b及び連結部7cを有する。なお、回転角度θmが移動角に相当する。
【0022】
両従動ギア4,5の底面側(図2の下方位置)には、ステアリングホイールの操舵角度検出系の基板8が設けられている。基板8には、各従動ギア4,5に向けて各々光を照射する複数(本例は2つ)のLED9,10が設けられている。本例においては、第1従動ギア4に光を照射する第1LED9と、第2従動ギア5に光を照射する第2LED10とがあり、第1LED9が第1従動ギア4の軸心位置に配置され、第2LED10が第2従動ギア5の軸心位置に配置されている。
【0023】
基板8には、像を撮影してその画像を電気信号に変換して出力するリニアイメージセンサ(CCDイメージセンサとも言う)11と、リニアイメージセンサ11からの出力を用いてステアリングホイールの操舵角度を演算する演算装置12とが設けられている。リニアイメージセンサ11は、撮影対象物から発した光をレンズ等の光学系により検知面の受光平面に結像させ、その像の光による明暗を電荷量に変換し、それを順次読み出して電気信号に変換して出力する撮像デバイスである。リニアイメージセンサ11は、図2に示すように、撮像した光の照射幅Wに応じた撮像データDpiを電気信号で演算装置12に出力する。第1LED9,第2LED10及びリニアイメージセンサ11は、同一基板8上に設けられることにより、同一平面上に位置した配置状態をとる。なお、リニアイメージセンサ11がイメージセンシング手段(撮像手段)を構成し、照射幅W(W1,W2)が光範囲に相当する。
【0024】
図3に示すように、演算装置12は、例えばCPU、ROM、RAM及びA/D変換回路等の各種デバイスから成り、ROMに書き込まれた制御プログラムに基づきRAMを作業領域として作動する。演算装置12は、例えば車両のイグニッションスイッチがオン位置に操作された時などに操舵角度算出処理を開始し、リニアイメージセンサ11から取得した撮像データDpiを用い、主動ギア3の回転角度θm、即ちステアリングホイールの操舵角度を逐次演算する。なお、演算装置12が算出手段に相当する。
【0025】
第1従動ギア4の外周肉厚部6bは、第1LED9から取り込んだ光を案内してリニアイメージセンサ11に出射する際、ギア回動位置の変化に伴いその時の出射光の光量が直線的(リニア)に変化する形状に形成されている。即ち、第1従動ギア4の外周肉厚部6bは、第1LED9から第1従動ギア4に案内されてリニアイメージセンサ11に照射される光の照射幅W1が、第1従動ギア4の回動に伴って比例関係を持って直線的に変化する値をとるような形状に形成されている。本例の外周肉厚部6bは、図4に示すように環状を成す外周肉厚部6bを直線に展開すると、これが直線傾斜する形状をとっている。なお、以上の事柄は第2従動ギア5の外周肉厚部7bについても同様に言える事である。
【0026】
リニアイメージセンサ11は、図5に示すように、撮像の最小一単位である撮像画素(受光素子)13が、1列に検知面の長手方向に沿って複数(例えば数十万画素〜数百万画素)並んだ構造をとる。リニアイメージセンサ11は、1列に並ぶ各撮像画素13,13…に照射される光量を例えば0〜255の中のデジタル値で検出するセンサであって、その撮像データDpiを電気信号で演算装置12に出力する。即ち、リニアイメージセンサ11は、1ラインの撮像画素13においてどれだけの照射幅W1,W2で自身に光が当たっているかを取得し、それを撮像データDpiとして演算装置12に出力する。
【0027】
リニアイメージセンサ11は、図3に示すように、第1従動ギア4の軸心Lbと第2従動ギア5の軸心Lcとを結ぶ線を軸基準線Lxとし、リニアイメージセンサ11の撮像画素13の並び方向をセンサ検出ラインLzとすると、センサ検出ラインLzが軸基準線Lx上に位置するように配置されている。これは、本例のようにリニアイメージセンサ11を第1従動ギア4と第2従動ギア5とで共用する場合に、そのセンサ共用に必要となるリニアイメージセンサ11の配置条件である。
【0028】
演算装置12は、リニアイメージセンサ11から取得した撮像データDpiを用いて主動ギア3の回転角度θnを算出するが、この撮像データDpiには、第1LED9から第1従動ギア4の第1光路6を経由してリニアイメージセンサ11に至った第1光C1の照射幅W1と、第2LED10から第2従動ギア5の第2光路7を経由してリニアイメージセンサ11に至った第2光C2の照射幅W2との両方の光照射幅情報が含まれていることから、これら照射幅W1,W2がどれだけかを見ることで主動ギア3の回転角度θmを算出する。即ち、演算装置12は、照射幅W1から第1従動ギア4の回転角度θnを求めるとともに、照射幅W2から第2従動ギア5の回転角度θlを求め、これら回転角度θn,θlの組み合わせを見ることにより、主動ギア3の回転角度θm、即ちステアリングホイールの操舵角度を演算する。
【0029】
さて、ステアリングホイールが操舵されて主動ギア3が回転すると、この主動ギア3の回転に伴って第1従動ギア4及び第2従動ギア5も連れ回りする。このとき、第1LED9から第1従動ギア4を経てリニアイメージセンサ11に至る第1光C1は、その照射幅W1が直線的な変化で増加し、第2LED10から第2従動ギア5を経てリニアイメージセンサ11に照射される第2光C2も、その照射幅W2が直線的な変化で増加する。このとき、主動ギア3が回転する際の第1従動ギア4と第2従動ギア5との各回転量は各々異なることから、第1光C1の照射幅W1と第2光C2の照射幅W2とは各々異なる光幅をとった状態となる。
【0030】
このとき、リニアイメージセンサ11は、図6に示すような1ラインにおいて各撮像画素13,13…の検出光量をデジタル値Kxで表した撮像データDpiを演算装置12に出力する。演算装置12は、これらデジタル値Kxを読み取り、その中でデジタル値Kxが所定の判定閾値Ka以上となる画素を光照射有り部分として認識し、それの連なる列群を照射幅W(W1,W2)として認識する。演算装置12は、光照射有りと認識した画素があった時、その光照射有りと認定できる画素が複数個続くことを条件として、それを照射幅Wの境界線と認識する。即ち、図7に示すように、光照射有りの画素があっても、それが例えば数画素のみの部分的なものであれば、それは誤射の可能性が高いことから、これを光照射有りの画素から省く。
【0031】
また、演算装置12は、リニアイメージセンサ11の撮像データDpiから回転角度θn,θlを算出するに際し、撮像データDpiにおいて光照射有りと判定した列群の中で光照射無しと判定される画素が存在していても、光照射無しと判定された画素の前後に光照射有りの画素が複数個存在することをもって、光照射無しの部分を無視する。これは、例えば第1従動ギア4や第2従動ギア5に汚れがついて、図7に示すようにLED9,10の光照射部位の中でこの部分が部分的に暗くなったとしても、それに対応するためである。
【0032】
演算装置12は、図8に示すように、照射幅W1の増加に伴いその演算角度が正傾きの直線を取る関係性に従って第1従動ギア4の回転角度θnを求め、同じく照射幅W2の増加に伴いその演算角度が正傾きの直線を取る関係性に従って第2従動ギア5の回転角度θlを求め、これら回転角度θn,θlを0度〜360度の範囲で角度算出する。演算装置12は、図9に示すように、これら回転角度θn,θlの組み合わせを見ることにより主動ギア3の回転角度θmを算出する。
【0033】
ところで、この種のリニアイメージセンサ11は、高画素のものが手に入り易いコストで広く普及してきている。リニアイメージセンサ11で光の照射幅Wを検出するに際しては、高画質のリニアイメージセンサを使用すれば、画質が高画質である程、照射幅測定を細かいレベルで行うことが可能である。照射幅測定の高レベル化は第1従動ギア4及び第2従動ギア5の角度検出の高分解能化に直結することから、このように照射幅測定を細かいレベルで行うことが可能となれば、これに伴って主動ギア3の角度検出を高分解能で行うことが可能になる。従って、リニアイメージセンサ11を用いて角度検出を行う構造を用いれば、主動ギア3の角度検出を高分解能で行うことが可能となる。
【0034】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)リニアイメージセンサ11として高画素のものを採用した場合、リニアイメージセンサ11が像を撮影する際のその像撮影領域における画素の総ドット数が増えることになるので、この種の高画素のリニアイメージセンサ11を角度検出に用いれば、その時の角度分解能も細かいレベルで検出することが可能となり、これは高分解能で角度検出できることに結び付く。従って、この種のリニアイメージセンサ11を主動ギア3の角度検出に用いれば、主動ギア3の回転角度θmを高分解能で算出することができるようになる。
【0035】
(2)主動ギア3の回転角度θmを算出する際の回転角度検出方式として、LED9,10が照射した光を、従動ギア4,5を経由してリニアイメージセンサ11で検出する光学式を用いているので、主動ギア3の回転角度を非接触で検出することができる。このため、主動ギア3の回転角度を検出するに際して検出系部品がその検知面で接触摩擦を生じるなどの動きを取らずに済み、部品間摩擦が原因で生じ得る部品劣化や製品劣化等の問題を考えずに済む。
【0036】
(3)リニアイメージセンサ11が従動ギア4,5の回転角度θn,θlを検出する際、この時のリニアイメージセンサ11は、従動ギア回転に対して直線的な変化を取る照射幅W(W1,W2)の値を検出し、これを照射幅変化に対して比例的な値を取る撮像データDpiとして出力する。ところで、この種の演算装置12は正確な角度検出のために、入力値としては直線変化する波形を取るデータで行うことが一般的であるが、本例においては直線的変化を取る撮像データDpiで主動ギア3の回転角度演算が行われている。よって、このように直線的変化を取る入力データで回転角度演算が可能となれば、データ値が曲線波形を取る場合に必要となる補正等の処理が不要となることから、主動ギア3の回転角度演算を複雑ではない簡素な演算方法で行うことができる。
【0037】
(4)主動ギア3の回転角度θmの角度検出は、第1LED9から第1従動ギア4を経由してリニアイメージセンサ11に照射される第1光C1の照射幅W1と、第2LED10から第2従動ギア5を経由してリニアイメージセンサ11に照射される第2光C2の照射幅W2との2パラメータを用いて行われる。このように、主動ギア3の角度検出に際してその時の入力パラメータが多くなれば、その分だけ角度演算を高分解能で行えることになるので、2つの従動ギア4、5を用いて主動ギア3の角度検出を行えば、これも主動ギア3の角度演算の高分解能化に効果が高い。
【0038】
(5)主動ギア3の回転角度θmの回転角度検出方式として光学式を用いれば、回転角度検出系が高磁界下に配置されていても、回転角度検出に際してこれに影響を受けなくなるので、例えばモータマグネット等の近くの高磁界下でも使用することができる。よって、この種の回転角度検出部品を配置するに際してその配置レイアウトの選択肢が多くなる。
【0039】
(6)リニアイメージセンサ11が第1従動ギア4と第2従動ギア5とで共用されるので、用意するリニアイメージセンサ11の個数を少なく済ませることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図10に従って説明する。なお、第2実施形態は、主動ギア3の回転角度検出方式を第1実施形態に記載の光学式から、静電容量センサを用いた静電容量式に変更したのみの構成であるため、同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
図10に示すように、第1従動ギア4及び第2従動ギア5は、例えばプラスティックやセラミック等の誘電体から形成されている。また、基板8には、自身に加わる静電容量を検出してその値に応じた電気信号を出力する静電容量センサ21が設けられている。本例の静電容量センサ21は、第1従動ギア4用に設けた第1静電容量センサ21aと、第2従動ギア5用に設けた第2静電容量センサ21bとから成り、第1静電容量センサ21aが第1従動ギア4に接触した配置状態をとり、第2静電容量センサ21bが第2従動ギア5に接触した配置状態をとる。
【0041】
第1静電容量センサ21aは、第1従動ギア4との間の接触面積Saに応じて検出静電容量が変化することから、その接触面積変化に対して比例する検出静電容量を電気信号に変換し、それを第1静電容量データDs1として演算装置12に出力する。また、第2静電容量センサ21bも第1静電容量センサ21aと同様の処理内容を経て第2静電容量データDs2を演算装置12に出力する。演算装置12は、第1静電容量データDs1から第1従動ギア4の回転角度θnを算出し、第2静電容量データDs2から第2従動ギア5の回転角度θlを算出し、これら回転角度θn,θlの組み合わせから主動ギア3の回転角度θmを演算する。なお、静電容量データDs1,Ds2が検出値を構成する。
【0042】
さて、ステアリングホイールが操舵されて主動ギア3が回転すると、それに伴って各従動ギア4,5も連れて回転する。このとき、第1従動ギア4と第1静電容量センサ21aとの間の接触面積Saは第1従動ギア4の回転位置に応じて変わり、第1静電容量センサ21aはその時の接触面積Saに応じた第1静電容量データDs1を検出する。これは第2従動ギア5についても同様であり、第2静電容量センサ21bはその時の第2従動ギア5との間の接触面積Sbに応じた第2静電容量データDs2を演算装置12に出力する。このとき、第1静電容量センサ21a及び第2静電容量センサ21bは、値が各々異なるデータ値で静電容量データDs1,Ds2を演算装置12に各々出力する。
【0043】
演算装置12は、各々値が異なる静電容量データDs1,Ds2のうち第1静電容量データDs1から第1従動ギア4の回転角度θnを演算する。このとき、演算装置12は、第1静電容量データDs1から読み出し可能である第1静電容量センサ21aの検出静電容量についてこの値がどれだけかを見ることにより、第1従動ギア4の回転角度θnを導出する。演算装置12は、同様に第2静電容量データDs2から第2従動ギア5の回転角度θlを演算し、以上のように求めた回転角度θn,θlの組み合わせを見て主動ギア3の回転角度θmを演算する。
【0044】
ところで、この種の静電容量センサ21a,21bでは、検出が細かいレベルでできるものを使用すれば、その検出レベルが高いほど静電容量検出を細かいレベルで行うことが可能である。静電容量検出の高精度化は第1従動ギア4及び第2従動ギア5の角度検出の高分解能化に直結することから、このように静電容量検出が高精度化できれば、これに伴って主動ギア3の角度検出を高分解能で行うことが可能となる。従って、静電容量センサ21a,21bを用いて角度検出を行う構造を用いれば、リニアイメージセンサ11を用いた場合と同様に、主動ギア3の角度検出の高分解能化が可能となる。
【0045】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)及び(3)〜(5)と同様の効果が得られることに加え、以下の効果を得ることができる。
(7)回転角度検出方式として静電容量式を用いた場合であっても、リニアエンコーダ等に比べて高分解能で主動ギア3の回転角度θmを算出することができる。
【0046】
なお、実施形態はこれまでの構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・ 第1実施形態においては、図3に示すように、リニアイメージセンサ11に対して周方向に沿って並ぶ位置に、リニアイメージセンサ11と同様構成から成る増設センサ31を配置することにより、角度演算処理にフェールセーフ対策を施してもよい。このフェールセーフ動作としては、リニアイメージセンサ11から求まる第1従動ギア4の回転角度θnが、増設センサ31から求まる第1従動ギア角度からずれた際、リニアイメージセンサ11が正常に起動していないと認識して角度演算を強制的に終了する動作がある。なお、このフェールセーフ対策は第2従動ギア5にも採用してもよいし、第2実施形態の静電容量式に採用してもよい。
【0047】
・ 第1実施形態において、必ずしも第1従動ギア4と第2従動ギア5との間でリニアイメージセンサ11を共用することに限定されず、第1従動ギア4と第2従動ギア5との各々に個別のリニアイメージセンサを設けてもよい。なお、第1従動ギア用のリニアイメージセンサは、そのセンサ検出ラインが第1従動ギア4の軸心Lbを通る位置に配置する必要があり、第2従動ギア用のリニアイメージセンサは、そのセンサ検出ラインが第2従動ギア5の軸心Lcを通る位置に配置する必要がある。
【0048】
・ 第1実施形態において、リニアイメージセンサ11は、1列のものに限定されず、複数列でもよい。
・ 第1実施形態において、第1LED9、第2LED10及びリニアイメージセンサ11は、同一基板8上に設けられることで同一平面上に位置することに限らず、例えばLED系基板とセンサ系基板とを別々とすることにより、これらの配置位置を別平面上としてもよい。
【0049】
・ 第1実施形態において、光照射部材は、必ずしもLEDに限定されず、これは例えばランプでもよい。
・ 第2実施形態において、必ずしも従動ギア4,5ごとに静電容量センサ21a,21bを設けることに限らず、2つの従動ギア4,5で1つの静電容量センサを共用してもよい。この場合、角度検出の分解能が若干低下する懸念はあるが、用意する静電容量センサ21が1つで済み、部品コストの低減を図ることができる。
【0050】
・ 第1及び第2実施形態において、従動ギア4,5のギア数は、必ずしも第1従動ギア4及び第2従動ギア5の2つに限らず、これは3つ以上でもよい。
・ 第1及び第2実施形態において、第1従動ギア4及び第2従動ギア5の形状は、必ずしも略椀形状のものに限定されず、これは例えば円柱形状でもよい。
【0051】
・ 第1及び第2実施形態において、ギア部材と像出力手段とは必ずしも一体の部品として構成されることに限定されず、例えばギア部材に対してこれとは別工程で製造された像出力手段を後工程でギア部材に固着することで従動ギア4,5を形成してもよい。
【0052】
・ 第1及び第2実施形態において、従動ギア4,5の外周肉厚部6b,7bは、その周方向において肉厚が直線的に変化する形状に限定されず、センサ出力波形が直線的に変化する波形をとるものであれば、この形状は自由に変更してもよい。
【0053】
・ 第1及び第2実施形態において、本例の角度検出装置は、必ずしも車両のステアリングホイールの回転角度検出装置として用いられることに限らず、操作部材の操作に伴って可動部材がその支持部材に対して角度を持って移動するものであれば、その搭載先は特に限定されない。
【0054】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1〜5のいずれか一項において、前記像出力手段は、前記可動部材に連れ動きするに際して前記イメージセンシング手段に直線的に変化する前記像を出力するように形成され、前記イメージセンシング手段は、前記像出力手段から前記像を検出した際はその直線的変化に対応して同じく直線的に変化する前記検出値を出力する構造であって、前記イメージセンシング手段は、像検知面の長手方向に延びる検出ライン線が、回動運動する前記可動部材のその回動軸心を通る向きに配置されている。この場合、簡素な構造で移動角検出の高分解能化を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態における角度検出装置の概略構成を示す構成図。
【図2】光が照射された際のリニアイメージセンサの平面図。
【図3】角度検出装置の具体構成を平断面図及び側視図を用いて説明した説明図。
【図4】従動ギアの具体構成を平断面及びセンサ出力波形図を用いて説明した説明図。
【図5】リニアイメージセンサの具体構成を説明する平面図。
【図6】リニアイメージセンサが出力する撮像データのイメージ図。
【図7】角度演算処理を説明する際に用いたリニアイメージセンサの斜視図。
【図8】光照射幅と従動ギアの演算角度との関係を示す波形図。
【図9】従動ギアの演算角度と主動ギアの演算角度との関係を示す波形図。
【図10】第2実施形態における角度検出装置の概略構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0056】
2…可動部材としてのステアリングシャフト、11…イメージセンシング手段(撮像手段)を構成するリニアイメージセンサ、12…算出手段としての演算装置、21(21a,21b)…イメージセンシング手段(静電容量検出手段)を構成する静電容量センサ、θm…移動角としての回転角度、Dpi…検出値を構成する撮像データ、W(W1,W2)…光範囲としての照射幅、Sa,Sb…接触面積、Ds1,Ds2…検出値を構成する静電容量データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に移動可能に支持された可動部材が当該支持部材に対して移動する際、当該可動部材の移動角を検出する角度検出装置において、
検出した像に応じた検出値を出力するイメージセンシング手段と、
前記可動部材に連れ動き可能であり、前記可動部材の移動位置に応じた前記像を前記イメージセンシング手段に出力する像出力手段と、
前記イメージセンシング手段が出力する前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出する算出手段と
を備えたことを特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
前記像出力手段は、前記可動部材の移動位置に応じた光範囲で光を前記イメージセンシング手段に出力する光学式であり、前記イメージセンシング手段は、検出した前記光範囲に応じた前記検出値を出力する撮像手段であり、前記算出手段は、前記撮像手段が取得した前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出することを特徴とする請求項1に記載の角度検出装置。
【請求項3】
前記像出力手段は、前記可動部材の移動位置に応じた接触面積で前記イメージセンシング手段に当接する誘電体であり、前記イメージセンシング手段は、前記誘電体との接触面積に応じた値で前記検出値を出力する静電容量検出手段であり、前記算出手段は、前記静電容量検出手段が取得した前記検出値を用い、前記可動部材の前記移動角を算出することを特徴とする請求項1に記載の角度検出装置。
【請求項4】
前記像出力手段は、前記可動部材に連れ動きするに際して前記イメージセンシング手段の検出値が直線的な値を取り得るような前記像を、前記イメージセンシング手段に出力するように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の角度検出装置。
【請求項5】
前記像出力手段は、前記可動部材と共に連れ動きする状態で複数設けられるとともに、共用する前記イメージセンシング手段に対して前記像を各々異なる値で出力し、前記算出手段は、1つのイメージセンシング手段で得られる複数の前記像を用いて前記可動部材の前記移動角を算出することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−128731(P2008−128731A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311811(P2006−311811)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】