説明

警備ロボット

【課題】車などの移動体に搭乗可能なロボットであって、ロボット自ら異常の度合を判定し、それに応じて動作するようにした警備ロボットを提供する。
【解決手段】加速度センサ(内界センサ)およびCCDカメラ、マイクロフォンなどの外界センサを備え、それらの出力から得られる情報に基づいて車Vに生じつつある異常の度合をSMALL,MEDIUM,LARGEと判定し(S10から16)、判定された異常の度合に応じて注意、警告、制止のいずれかからなる防止動作を行う(S18から28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は警備ロボットに関し、より具体的には車などの移動体に乗車(搭乗)し、移動体を盗難から守るようにした警備ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
警備ロボットとしては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。その技術にあっては、マイクロフォンやCCDカメラからなる外界センサを備えた、屋内を移動自在なペット型のロボットにおいて、ロボットが得た周辺の環境情報とオーナ情報などを警備会社などの外部に送信し、外部において送信された情報から周辺の環境に異常があると判断されるとき、オーナに通知するように構成している。
【特許文献1】特開2001−222317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、車などの移動体に搭乗可能なロボットではないことは勿論として、ロボットはセンサとして機能するに止まり、自ら異常の度合を判定して動作するものではなかった。即ち、ロボットは周辺の環境情報などを外部に送信し、外部側がそれに応じて動作するように構成されているため、異常事態に対処するに際して迅速性や即効性に欠ける憾みがあった。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、移動体に搭乗可能なロボットであってロボット自ら異常の度合を判定し、それに応じて動作するようにした警備ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、移動体に搭乗可能なロボットであって、前記ロボットの内部状態を検出する少なくとも1個の内界センサ、前記ロボットの外部状態を検出する少なくとも1個の外界センサ、前記内界センサおよび外界センサの出力から得られる情報に基づいて前記移動体に生じつつある異常の度合を判定する異常度合判定手段、および前記判定された異常の度合に応じて防止動作を行う防止動作手段を備える如く構成した。
【0006】
請求項2に係る警備ロボットにあっては、さらに、少なくとも前記外界センサの出力から得られる情報を前記移動体の外部に送信する送信手段を備える如く構成した。
【0007】
請求項3に係る警備ロボットにあっては、前記内界センサが、前記ロボットに作用する加速度を検出する加速度センサである如く構成した。
【0008】
請求項4に係る警備ロボットにあっては、前記外界センサが、視覚センサである如く構成した。
【0009】
請求項5に係る警備ロボットにあっては、前記視覚センサが保護カバーの内側に収容されると共に、前記保護カバーの、前記視覚センサの受光孔に対応する位置に、前記受光孔と略同径の孔が穿設される如く構成した。
【0010】
請求項6に係る警備ロボットにあっては、前記外界センサが、聴覚センサである如く構成した。
【0011】
請求項7に係る警備ロボットにあっては、前記ロボットが、2足歩行して移動する2足歩行ロボットである如く構成した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にあっては、移動体に搭乗可能なロボットであって、その内部状態と外部状態を検出する少なくとも内界センサおよび外界センサの出力から得られる情報に基づいて移動体に生じつつある異常の度合を判定し、判定された異常の度合に応じて防止動作を行う如く構成したので、盗難などの異常事態に対して迅速に対処できると共に,異常の度合に応じて動作することで、その状況で最も適切な対策をとることができる。
【0013】
請求項2に係る警備ロボットにあっては、さらに、少なくとも外界センサの出力から得られる情報を移動体の外部に送信する如く構成したので、上記した効果に加え、移動体の外部、例えばオーナに送信することで、外部側にあっては、離間した位置から移動体を監視できると共に、状況に応じて必要な対策を講じることができる。
【0014】
請求項3に係る警備ロボットにあっては、内界センサがロボットに作用する加速度を検出する加速度センサである如く構成したので、上記した効果に加え、移動体に作用する振動を検出することができて移動体が盗難に遭遇する状況などを迅速に検知することができる。
【0015】
請求項4に係る警備ロボットにあっては、外界センサが視覚センサである如く構成したので、上記した効果に加え、移動体の周囲環境を視覚的に検出することができ、不審者が存在する状況などを的確に検出して必要な対策を講じることができる。
【0016】
請求項5に係る警備ロボットにあっては、視覚センサが保護カバーの内側に収容されると共に、それの視覚センサの受光孔に対応する位置に受光孔と略同径の孔が穿設される如く構成したので、上記した効果に加え、保護カバーの外側にシールドを設けるときも、視覚センサの移動によってシールドを透過する光の屈折率が変化することがないことから、視覚センサから得られる撮影画像に歪みが生じることがなく、常に鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0017】
請求項6に係る警備ロボットにあっては、外界センサが聴覚センサである如く構成したので、上記した効果に加え、移動体の周囲環境を聴覚的に検出することができ、移動体をこじ開けようとする異音などを的確に検出して必要な対策を講じることができる。
【0018】
請求項7に係る警備ロボットにあっては、ロボットが2足歩行して移動する2足歩行ロボットである如く構成したので、上記した効果に加え、車などの移動体に乗車(搭乗)するのが容易であると共に、腕部などを動作させて警告することも可能となり、警備効果を一層上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に即してこの発明に係る警備ロボットを実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、添付図面を参照してこの発明の第1実施例に係る警備ロボットを説明する。
【0021】
図1はこの実施の形態に係る警備ロボットの正面図、図2はその側面図である。尚、警備ロボットとしては、2個の脚部と2個の腕部を備え、2足歩行して移動するヒューマノイド型(人間型)の脚式移動ロボットを例にとる。
【0022】
図1に示すように、警備ロボット(以下「ロボット」という)1は、複数個(本)、より具体的には2個(本)の脚部2を備えると共に、その上方には基体(上体)3が設けられる。基体3のさらに上方には頭部4が形成されると共に、基体3の両側には2個(本)の腕部5が連結される。また、図2に示すように、基体3の背部には格納部6が設けられ、その内部には電子制御ユニット(後述)およびバッテリなどが収容される。
【0023】
尚、図1および図2に示すロボット1は、内部構造を保護するためのカバーで被覆される。
【0024】
図3はロボット1をスケルトンで示す説明図である。同図を参照してその内部構造を関節を中心に説明すると、図示の如く、ロボット1は、左右それぞれの脚部2および腕部5に、11個の電動モータで動力化された6個の関節を備える。
【0025】
即ち、ロボット1は、腰部(股部)の股関節に、脚部2を鉛直軸(Z軸あるいは鉛直軸)まわりに回転させる関節を駆動する電動モータ10R,10L(右側をR、左側をLとする。左右対称であることから、以下R,Lの表記を省略する)と、脚部2をピッチ(進行)方向(Y軸まわり)に揺動させる関節を駆動する電動モータ12と、脚部2をロール(左右)方向(X軸まわり)に回転させる関節を駆動する電動モータ14を備えると共に、膝部に脚部2の下部をピッチ方向(Y軸まわり)に回転させる膝関節を駆動する電動モータ16を備え、さらに足首に脚部2の先端側をピッチ方向(Y軸まわり)に回転させる足(足首)関節を駆動する電動モータ18とロール方向(X軸まわり)に回転させる足(足首)関節を駆動する電動モータ20を備える。
【0026】
上記したように、図3において、関節はそれを駆動する電動モータ(あるいは電動モータに接続されてその動力を伝動するプーリなどの伝動要素)の回転軸線で示す。尚、脚部2の先端には足部22が取着される。
【0027】
このように、脚部2の股関節には電動モータ10,12,14がそれらの回転軸線が直交するように配置されると共に、足関節(足首関節)には電動モータ18,20がそれらの回転軸線が直交するように配置される。尚、股関節と膝関節は大腿リンク24で、膝関節と足関節は下腿リンク26で連結される。
【0028】
脚部2は股関節を介して基体3に連結されるが、図3では基体3を基体リンク28として簡略的に示す。前記したように、基体3には腕部5が連結される。
【0029】
腕部5も、脚部2と同様に構成される。即ち、ロボット1は、肩部の肩関節に、腕部5をピッチ方向に回転させる関節を駆動する電動モータ30とロール方向に回転させる関節を駆動する電動モータ32を備えると共に、その自由端側を回転させる関節を駆動する電動モータ34と、肘部にそれ以降の部位を回転させる関節を駆動する電動モータ36を備え、さらにその先端側にそれを回転させる手首関節を駆動する電動モータ38を備える。手首の先にはハンド(エンドエフェクタ)40が取着される。
【0030】
即ち、腕部5の肩関節には電動モータ30,32,34がそれらの回転軸線が直交するように配置される。尚、肩関節と肘関節とは上腕リンク42で、肘関節と手首関節とは下腕リンク44で連結される。
【0031】
図示は省略するが、ハンド40は5本のフィンガ(指)40aの駆動機構を備え、フィンガ40aで物を把持するなどの作業ができるように構成される。
【0032】
また、頭部4は、鉛直軸まわりの電動モータ(首関節を構成)46と、それと直交する軸まわりに頭部4を回転させる頭部揺動機構48を介して基体3に連結される。図3に示す如く、頭部4の内部には2個のCCDカメラ(外界センサ)50がステレオ視自在に配置されると共に、音声入出力装置52が配置される。音声入出力装置52は、後で図6に示す如く、マイクロフォン(外界センサ)52aおよびスピーカ52bを備える。
【0033】
上記の構成により、脚部2は左右の足について6個の関節を備えて合計12の自由度を与えられ、6個の関節を適宜な角度で駆動(関節変位)することで、脚部2に所望の動きを与えることができ、ロボット1を任意に3次元空間において歩行させることができる。また、腕部5も左右の腕について5個の関節を備えて合計10の自由度を与えられ、5個の関節を適宜な角度で駆動(関節変位)することで所望の作業を行わせることができる。さらに、頭部4は2つの自由度からなる関節あるいは揺動機構を与えられ、これらを適宜な角度で駆動することにより所望の方向に頭部4を向けることができる。
【0034】
図4は、ロボット1が車(移動体)Vの助手席に着座した状態を示す側面図である。このように、ロボット1は上記した関節を駆動することで、車Vなどの移動体に搭乗可能に構成される。この実施例にあっては、ロボット1は、車Vが駐車されていて運転者が不在な夜間などに助手席に乗車し、その警備を行う。
【0035】
電動モータ10などのそれぞれにはロータリエンコーダ(図示せず)が設けられ、電動モータの回転軸の回転を通じて対応する関節の角度、角速度、および角加速度の少なくともいずれかを示す信号を出力する。
【0036】
足部22には公知の6軸力センサ(内界センサ。以下「力センサ」という)56が取着され、ロボットに作用する外力の内、接地面からロボット1に作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。
【0037】
手首関節とハンド40の間には同種の力センサ(6軸力センサ)58が取着され、ロボット1に作用する床反力以外の外力、具体的にはハンド40に対象物から作用する外力(対象物反力)の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。
【0038】
基体3には傾斜センサ(内界センサ)60が設置され、鉛直軸に対する基体3の傾き(傾斜角度)とその角速度の少なくともいずれか、即ち、ロボット1の基体3の傾斜(姿勢)などの状態量を示す信号を出力する。
【0039】
頭部4の内部には、上記したCCDカメラ50および音声入出力装置52に加え、GPS(Global Positioning System)からの信号を受信するGPS受信器62およびジャイロ64が配置される。また、傾斜センサ60の付近のロボット1の重心位置の付近には加速度センサ(内界センサ)66が配置され、ロボット1に作用する加速度に応じた信号を出力する。
【0040】
ここで、図5を参照して頭部4の頭部揺動機構48とCCDカメラ50の取り付けについて説明すると、頭部揺動機構48は、鉛直軸まわりに回転自在な第1の支持台48aと、ロール軸まわりに回転自在な第2の支持台48bとからなる。
【0041】
頭部揺動機構48は、その第1の支持台48aを電動モータ(首関節)46に結合しつつ、第2の支持台48bを第1の支持台48aに結合してなり、CCDカメラ50は第2の支持台48bに取り付けられる。そして、ロータリアクチュエータ48c(および図示しない残りの1個)を含む、それら第1、第2の支持台48a,48bを覆う、頭部4を構成するヘルメット部4aを、第2の支持台48bと実質的に一体をなすステー48dに紙面の前後方向において結合することで、頭部4が完成される。尚、図5で音声入出力装置52の図示は省略した。
【0042】
頭部4のヘルメット部4aは、前面側でバイザ(保護カバー)4bに取り付けられると共に、その外側において透明のアクリル樹脂で曲面に形成されたシールド4cが同様にヘルメット部4aに取り付けられる。CCDカメラ50はバイザ4bの内側に収容され、バイザ4bのCCDカメラ50の受光孔が対応する位置、即ち、CCDカメラ50のレンズ窓50aが覗く位置に対応するには、それと略同形の孔4b1が穿設される。図示は省略するが、CCDカメラは2個設けられることから、孔4b1も、人の眼窩と同様、2個穿設される。
【0043】
かかる構成により、頭部4を構成するヘルメット部4aは第2の支持台48bと実質的に一体をなしているので、第2の支持台48bに固定されるCCDカメラ50の受光方向とヘルメット部4aの動きは常に一致する。さらに、シールド4cはヘルメット部4aに取り付けられているので、CCDカメラ50がどの方向を向いても、シールド4cを透過する光は常に同一の部位を通ることになる。その結果、シールド4cの曲面が厳密に均一でなくても、シールド4cを透過する光の屈折率が変化することがないことから、CCDカメラ50から得られる撮影画像に歪みが生じることがなく、常に鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0044】
図3の説明に戻ると、これら力センサ56などの出力群は、格納部6に収容されたマイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(Electric Control Unit 。以下「ECU」という)70に送られる(図示の便宜のためロボット1の右側についてのみ、入出力を図示する)。
【0045】
図6は、ECU70の構成を示すブロック図である。
【0046】
図示の如く、ECU70はCPU100a、記憶装置100bおよび入出力インターフェース100cからなるマイクロコンピュータ100を備え、ロボット1が安定な姿勢で移動できるように、関節角変位指令を算出して各関節を構成する電動モータ10などの駆動を制御する。また、ECU70は、後述するように警備に必要な種々の処理を行うが、それについては後述する。
【0047】
図7は、ECU70のマイクロコンピュータ100においてCPU100aが行う処理をブロック化して示すブロック図である。尚、図7でセンサなどの図示は多く省略した。
【0048】
図7から明らかな如く、CPU100aは、画像認識部102、音声認識部104、自己位置推定部106、地図データベース108、それらが出力する情報に基づいてロボット1の行動を決定する行動決定部110、および行動決定部110によって決定された行動に基づいてロボット1の行動を制御する動作制御部112などを備える。
【0049】
以下、それぞれ説明すると、画像認識部102は、距離認識部1102a、移動体認識部102b、ジェスチャ認識部102c、姿勢認識部102d、顔領域認識部102e、指示領域認識部102f、不審者判別部102gならびに顔データベース102hからなる。尚、2個のCCDカメラ50で周囲の環境をステレオ視して得られた撮影画像は、画像入力部114から距離認識部102aに入力される。
【0050】
距離認識部102aは入力した撮影画像の視差から撮影対象までの距離情報を算出し、距離画像を生成する。移動体認識部102bは、距離画像を入力し、複数フレーム間の撮像画像の差分を算出して人や車などの移動するものを認識(検出)する。
【0051】
ジェスチャ認識部102cは、先に提案した特開2003−077673号公報に記載される技術に基づいて人の手の動きを認識し、予め記憶されている手の特徴的な動きと比較して人が発話と共に行う、ジェスチャによる指示を認識する。
【0052】
姿勢認識部102dは、同様に先に提案した特開2003−039365号に開示される技術に基づいて人の姿勢を認識する。また、顔領域認識部102eは、同様に先に提案した特開2002−216129号に記載される技術に基づいて人の顔領域を認識する。また、指示領域認識部102fは、同様に先に提案した特開2003−094288号に開示される技術に基づいて人が手などで指示する方向を認識する。
【0053】
不審者判別部102gは、認識された顔領域の顔を顔データベース102hに登録された顔と比較し、一致しないとき、撮影された人は不審者と判別する。顔データベース102hには、車Vのオーナ、その家族など、ロボット1が車Vの助手席に乗車している状態において車Vに接近しても、後述する警告などの防止動作を行う必要のない人の顔が予め登録される。
【0054】
音声認識部104は指示範囲特定部104aを備える。指示範囲特定部104aは、音声入出力装置のマイクロフォン52aから入力された人の音声を入力し、記憶装置100bに予め記憶された語彙に基づき、人の指示を認識する。尚、マイクロフォン52aから入力された音声は音源特定部116にも入力され、そこで音源の位置が特定されると共に、人の音声か、あるいはそれ以外のドアをこじ開けようとする異音などであるか否かが判別される。
【0055】
自己位置推定部106は、GPS受信器62を介して受信されたGPS信号などを入力し、ロボット1の現在位置と、向いている方向を推定(検出)する。
【0056】
地図データベース108は記憶装置100bに格納されてなり、そこには周囲環境について障害物の位置が登録された地図データが予め作成されて記憶される。
【0057】
行動決定部110は、特定位置決定部110a、移動容易度判断部110bおよび異常度合判定部110cを備える。
【0058】
特定位置決定部110aは、画像認識部102で認識された人の指示領域と、音声認識部104で絞り込まれた指示領域とから、移動の目標値として人が特定した位置を決定する。
【0059】
移動容易度判断部110bは、地図データ108から読み出されたロボット1の現在位置の周辺の地図データ上において障害物の位置を認識し、その付近を警戒領域として設定すると共に、設定された警戒領域から所定距離離れるまでの領域をマージン領域として設定し、それらから移動の容易度を「困難」、「要注意」などと判断する。
【0060】
行動決定部110は、画像認識部102および音声認識部104の認識結果に基づき、特定位置決定部110aによって決定された特定位置への移動が必要か否か判断する。さらに、行動決定部110は、移動容易度判断部110bによって判断された容易度に基づき、例えば「困難」と判断された場合、歩行速度を低下させるなどの決定を行うと共に、画像認識部102や音声認識部104などから入力される情報に応じてロボット1の次の行動を決定、例えば音源特定部116から音源の位置情報が出力された場合、ロボット1の向きを音源の方向に変えるなどの行動を決定する。
【0061】
尚、異常度合判定部110cについては後述する。
【0062】
行動決定部110で決定された行動は、動作制御部112に送られる。動作制御部112は、決定された行動に応じ、移動制御部130や発話生成部132に行動の指示を出力する。
【0063】
移動制御部130は、動作制御部112の指示に応じ、脚部2、頭部4、腕部5の電動モータ10などに駆動信号を出力し、ロボット1を移動(動作)させる。
【0064】
発話生成部132は、動作制御部112の指示に従って記憶装置100bに記憶された発話すべき文字列データから発話すべき音声信号を合成し、音声入出力装置52のスピーカ52bを駆動する。尚、発話すべき文字列データとしては、警備の都合上、「止めなさい。警察に通報するぞ」などのデータを含む。また、発話生成部132は、人の音声のみならず、警告音からなる音声信号も合成し、スピーカ52bを駆動して発生させる。
【0065】
次いで、異常度合判定部110cについて説明する。
【0066】
上に述べた如く、この発明の目的は、移動体に搭乗可能なロボットであって、ロボット自ら異常の度合を判定し、それに応じて動作するようにした警備ロボットを提供することにある。
【0067】
その意図から、この実施例にあっては、ロボット1の内部状態を検出する加速度センサ(内界センサ)66と、ロボット1の外部状態を検出するCCDカメラ(外界センサ)50とマイクロフォン(外界センサ)52aと、それらセンサ群の出力から得られる情報、具体的にはロボット1に作用する加速度情報、画像認識部102で得られる画像情報および音声認識部104で得られる音声情報を入力し、入力した情報に基づいて車(移動体)Vに生じつつある異常の度合を判定する異常度合判定部(異常度合判定手段)110cを備えると共に、動作制御部112を、判定された異常の度合に応じて防止動作を行う防止動作手段として動作させる如く構成した。
【0068】
さらに、ECU70は、無線装置(送信手段)140を備え、無線装置140を介して外部、例えば車Vのオーナが所持するパーソナルコンピュータ200(あるいは車Vのオーナが所持する携帯電話)に、図示しないその無線通信端末を介してと通信自在に構成され、少なくとも上記した外界センサ50,52aの出力から得られる画像情報および音声認識情報を車(移動体)Vの外部に送信するように構成した。尚、車Vのオーナに代え、車Vの販売店あるいは警備会社などであっても良い。
【0069】
図8に、異常度合判定部110cが入力した情報に基づいて行う異常の度合と、それに応じて移動制御部130などが行う防止動作を示す。図示の如く、異常の度合は、SMALL(軽微)、MEDIUM(中程度)およびLARGE(重大)の3種に区分され、それに応じて注意、警告、制止からなる3種の防止動作が行われる。
【0070】
尚、図8の検出加速度に関し、第1、第2、第3の所定値はそれぞれ、例えば、0.05G,0.1G,0.2Gとする(G:重力加速度)。加速度センサ66を設けてロボット1に作用する加速度を検出するようにしたのは、不審者が車Vのドアをこじ開けるなどして侵入し、運転席に座ってエンジンを始動させて車Vを移動させた場合、乗車しているロボット1にX,Y軸(図3に示す)方向の加速度が作用、即ち、振動が作用することから、その検出値から車Vが移動されたか否か推定できるためである。
【0071】
次いで、図9フロー・チャートを参照して図1に示すロボット1の動作を説明する。これは具体的には、ECU70のマイクロコンピュータ100においてCPU100aが行う動作である。
【0072】
尚、図9に示す処理は、車Vが駐車されて停止しており、運転者は不在であって、助手席にロボット1が警備ロボットとして乗車している状況を前提とする。
【0073】
以下説明すると、S10において加速度センサ66の出力、および画像認識部102と音声認識部104の処理結果、即ち、それらの出力を読み出す。次いで、S12に進み、車Vのオーナなどのパーソナルコンピュータ200からその無線通信端末およびECU70側の無線装置140を介して送信リクエストがなされているか否か判断し、肯定されるときはS14に進み、無線装置140などを介してパーソナルコンピュータ200に得られた出力の中、画像認識部102の処理結果を送信する。
【0074】
これにより、オーナなどは、離れた位置から車Vを監視することができる。尚、S12で否定されるとき、S14をスキップする。
【0075】
次いでS16に進み、読み出された出力(情報)に基づいて上記したように異常の度合を判定し、S18に進み、判定された度合がSMALLか否か判断する。S18で肯定されるときはS20に進み、防止動作として図8に示す注意を実行する。この動作は具体的には、CPU100aにおいて動作制御部112は、異常度合判定部110cの判定結果から発話生成部132で警告音を合成させ、音声入出力装置52のスピーカ52bを駆動して警告音を発生させることで行う。
【0076】
S18で否定されるときはS22に進み、判定された度合がMEDIUMか否か判断し、肯定されるときはS24に進み、防止動作として図8に示す警告を実行する。この動作は具体的には、CPU100aにおいて動作制御部112は、異常度合判定部110cの判定結果から発話生成部132で音声信号を合成させ、音声入出力装置52のスピーカ52bを駆動して発話させると共に、移動制御部130で腕部5を構成する電動モータ30などの駆動を制御させることで行う。
【0077】
また、S22で否定されるときはS26に進み、判定された度合がLARGEか否か判断し、肯定されるときはS28に進み、防止動作として図8に示す制止を実行する。この動作は具体的には、CPU100aにおいて動作制御部112は、異常度合判定部110cの判定結果から発話生成部132で音声信号を合成させ、音声入出力装置52のスピーカ52bを駆動して発話させると共に、移動制御部130で脚部2を構成する電動モータ10など種々の電動モータの駆動を制御させることで行う。
【0078】
尚、上記のS16からS28までの処理、特にS28の処理をECU70のマイクロコンピュータ100の記憶装置100bに記憶しておき、盗難などの異常の発生の経過を記録しておくものとする。
【0079】
上記した如く、この実施例に係る警備ロボット1は車(移動体)Vに搭乗可能なロボットであって、ロボット1の内部状態を検出する少なくとも1個の加速度センサ(内界センサ)66、ロボット1の外部状態を検出する少なくとも1個の外界センサ、より具体的にはCCDカメラ50とマイクロフォン52aと、加速度センサ(内界センサ)66およびCCDカメラ50とマイクロフォン52a(外界センサ)の出力から得られる情報に基づいて車Vに生じつつある異常の度合をSMALL,MEDIUM,LARGEと判定する異常度合判定手段(CPU100a、異常度合判定部110c,S10から16)、および判定された異常の度合に応じて注意、警告、制止のいずれかからなる防止動作を行う防止動作手段(CPU100a、動作制御部112,S18から28)を備える如く構成したので、盗難などの異常事態に対して迅速に対処できると共に、異常の度合に応じて動作することで、その状況で最も適切な対策をとることができる。
【0080】
さらに、少なくとも外界センサの出力から得られる情報、より具体的にはCCDカメラ50の出力を入力する画像認識部102の処理結果から得られる情報を車V(移動体)の外部、より具体的にはオーナのパーソナルコンピュータ200などに送信する無線装置(送信手段)140を備える如く構成したので、上記した効果に加え、車の外部に所在するオーナ側にあっては、離間した位置から車Vを監視できると共に、状況に応じて必要な対策を講じることができる。
【0081】
また、内界センサがロボット1に作用する加速度を検出する加速度センサ66である如く構成したので、上記した効果に加え、車Vに作用する振動などを検出することができて車Vが盗難に遭遇する状況などを迅速に検知することができる。
【0082】
また、外界センサがCCDカメラ(視覚センサ)50である如く構成したので、上記した効果に加え、車Vの周囲環境を視覚的に検出することができ、不審者が存在する状況などを的確に検出して警告するなど必要な対策を講じることができる。
【0083】
また、CCDカメラ(視覚センサ)50がバイザ(保護カバー)4bの内側に収容されると共に、バイザ(保護カバー)4bの、CCDカメラ(視覚センサ)50のレンズ窓(受光孔)50aに対応する位置に、受光孔と略同径の孔4b1が穿設される如く構成したので、上記した効果に加え、バイザ(保護カバー)4bの外側にシールド4cを設けるときも、CCDカメラ(視覚センサ)50の移動によってシールド4cを透過する光の屈折率が変化することがないことから、CCDカメラ(視覚センサ)50から得られる撮影画像に歪みが生じることがなく、常に鮮明な撮影画像を得ることができる。
【0084】
また、外界センサがマイクロフォン(聴覚センサ)52aである如く構成したので、上記した効果に加え、車Vの周囲環境を聴覚的に検出することができ、車Vをこじ開けようとする異音などを的確に検出して警告するなど必要な対策を講じることができる。
【0085】
また、ロボット1が2足歩行して移動する2足歩行ロボットである如く構成したので、上記した効果に加え、車Vなどの移動体に搭乗するのが容易であると共に、腕部5などを動作させて警告することも可能となり、警備効果を一層上げることができる。
【0086】
尚、上記において、移動体の例として車Vを例にとったが、この発明はそれに限られるものではなく、移動体は船舶、航空機などであっても良い。
【0087】
また、上記においてロボットとして2足歩行ロボットを例示したが、それに限られるものではなく、3足以上のロボットであっても良い。さらには、脚式移動ロボットに限られるものではなく、車輪式やクローラ式のロボットであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の第1実施例に係る警備ロボットの正面図である。
【図2】図1に示す警備ロボットの側面図である。
【図3】図1に示す警備ロボットをスケルトンで示す説明図である。
【図4】図1に示す警備ロボットが車(移動体)に乗車した状態を示す説明図である。
【図5】図1に示す警備ロボットの頭部の内部構造を示す断面図である。
【図6】図3に示す電子制御ユニット(ECU)の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す電子制御ユニット(ECU)のマイクロコンピュータの処理を構成として機能的に示すブロック図である。
【図8】図7に示す異常度合判定部が判別する異常の度合などを示す説明図である。
【図9】図1に示す警備ロボットの動作を示すフロー・チャートである。
【符号の説明】
【0089】
1 ロボット(脚式移動ロボット、警備ロボット)
50 CCDカメラ(外界センサ)
52a マイクロフォン(外界センサ)
66 加速度センサ(内界センサ)
70 電子制御ユニット(ECU)
100 マイクロコンピュータ
100a CPU
102 画像認識部
104 音声認識部
110 行動決定部
110c 異常度合判定部
112 動作制御部
140 無線装置
200 パーソナルコンピュータ
V 車(移動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭乗可能なロボットであって、
a.前記ロボットの内部状態を検出する少なくとも1個の内界センサ、
b.前記ロボットの外部状態を検出する少なくとも1個の外界センサ、
c.前記内界センサおよび外界センサの出力から得られる情報に基づいて前記移動体に生じつつある異常の度合を判定する異常度合判定手段、
および
d.前記判定された異常の度合に応じて防止動作を行う防止動作手段、
を備えたことを特徴とする警備ロボット。
【請求項2】
さらに、
e.少なくとも前記外界センサの出力から得られる情報を前記移動体の外部に送信する送信手段、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の警備ロボット。
【請求項3】
前記内界センサが、前記ロボットに作用する加速度を検出する加速度センサであることを特徴とする請求項1または2記載の警備ロボット。
【請求項4】
前記外界センサが、視覚センサであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の警備ロボット。
【請求項5】
前記視覚センサが保護カバーの内側に収容されると共に、前記保護カバーの、前記視覚センサの受光孔に対応する位置に、前記受光孔と略同径の孔が穿設されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の警備ロボット。
【請求項6】
前記外界センサが、聴覚センサであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の警備ロボット。
【請求項7】
前記ロボットが、2足歩行して移動する2足歩行ロボットであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の警備ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−15435(P2006−15435A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193756(P2004−193756)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】