説明

負荷運搬車両用制御システム

【課題】負荷運搬車両用制御システムを提供する。
【解決手段】負荷運搬車両用制御システムは、車両のパラメータを測定し、測定したパラメータを示すセンサ信号を伝達するように構成されたセンサを備える。また、制御システムは、センサからセンサ信号を受信し、センサ信号に基づき適切なエンジン動力レベルを決定するように構成された制御モジュールを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、負荷運搬車両用制御システムに関し、より詳しくは、負荷運搬車両の性能を向上するための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
負荷運搬トラックなどの車両の中には、露天掘り鉱山で見られるような急勾配を上下して重い積載量を搬送するのに用いられるものがある。操作者は、斜面を下る際に、ブレーキに過度に依存せずにトラックの速度を遅らせるギヤを選択し得る。操作者が高すぎるギヤを選択してしまうと、トラックは加速し、操作者がブレーキに過度に依存する必要が生じる。また、操作者が低すぎるギヤを選択すると、このギヤが不適当にトラックの移動を遅らせてしまい、トラックがゆっくりと効率悪く斜面を走行することになる。
【0003】
また、車両の中には、操作者がギヤを選択するのに役立つようにするため、特定の勾配範囲に対して特定のギヤを識別するチャートを、作業機械の操作者運転室内に備えるものがある。例えば、勾配が8%〜10%の範囲内である場合には、チャートは、第3のギヤが最も効率的であるとして識別し得る。しかしながら、地形が起伏のあるところでは、ギヤ用のチャートを参照することがかえって冗長になる可能性がある。このようなチャートは、幅広い範囲の状況に基づいて開発され得るが、天候などのブレーキ能に影響する変数の変化に対して最適化されていない。
【0004】
また、負荷運搬トラックの中には、トラックが積載量を斜面を登って運搬可能とする高馬力のエンジンを搭載するように設計されたものもある。しかしながら、例えば、平坦な地面を横断する際などの抵抗の少ない領域や、トラックが積載量の一部しか運搬しない、又は全く運搬しない上り坂の状況では、トラックを動かすのに、同じような高馬力が必要でないことがある。そこで、既存のシステムによっては、操作者が、トラックの最大馬力を用いた全出力モードと、低馬力を用いた節約モードとの間で自動車の燃料モードを手動で選択可能とするものがある。かかる既存のシステムでは、操作者は、燃料モード間を手動で切り換えねばならない。このため、操作者により選択された燃料モードが、必ずしも最も効率的な利用可能なモードであるとは限らない。操作者は、場合によっては、全出力モードなどの単一モードで車両を連続的に適当に操作していると、平坦な地面においてさえも、完全にモードを切り替え忘れることがある。これにより、結果的に、燃料の浪費や不必要な排気や操作費用の上昇につながり得る。
【0005】
ステファン(Stephan)らによる(特許文献1)では、車両の負荷に関連してギヤをシフトするシステムを開示している。この(特許文献1)は、エンジン速度、エンジントルク、及び車両速度を測定する計測センサを開示している。運転者は、0、1/2、及び1などの選択可能な範囲を有するスイッチを通して、質量値を手動で入力し得る。この質量値は、ギヤシフト信号が所定値範囲を超えるか又はそれ未満となった際にそのギヤシフト信号を生成する制御装置に対して送出される。しかしながら、(特許文献1)に開示されたシステムでは、操作者は、スイッチを手動で操作し、負荷量を把握し続ける必要がある。このようなシステムは、厄介なものとなり、操作者によって十分利用されないことがある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,564,906号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示内容は、従来技術の欠点のうちの1つ以上を克服する制御システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一例示的形態において、負荷運搬車両用の制御システムが開示される。この制御システムは、車両のパラメータを測定し、測定したパラメータを示すセンサ信号を伝達するように構成されたセンサを備え得る。また、この制御システムは、センサからセンサ信号を受信し、センサ信号に基づき適切なエンジン動力レベルを決定するように構成された制御モジュールをも備え得る。
【0009】
他の例示的形態においては、制御システムを備える負荷運搬車両を制御する方法が開示される。本方法は、車両のパラメータを測定するステップと、測定したパラメータを示すセンサ信号を伝達するステップとを含み得る。センサ信号は、制御モジュールで受信され得るものであり、適切なエンジン動力レベルが、このセンサ信号に基づいて制御モジュールで決定され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、例示的実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。可能な限り、同一又は類似部分を参照するのに、全図面を通して同一参照番号を用いるものとする。
【0011】
図1に、負荷運搬車両100の一例示的実施形態を示す。車両100は、図示したようなオフハイウェイトラック、又はオンハイウェイトラック、連結式トラック、オフハイウェイトラクタ又はその他車両などの作業機械、或いは他の車両とし得る。例示的車両100は、フロントエンド102と、フレーム104と、積載量コンテナ106とを備え得る。フロントエンド102は、エンジン室108と、操作者運転室110とを備え得る。エンジン室108は、エンジン、変速機、及び/又は車両100に動力を供給するのに用いる他の構成部材を収容し得る。操作者運転室110は、例えば、足踏み式ペダルなどのスロットル装置を含む車両100を動作及び駆動するための制御装置を備え得る。このエンジン室108内のエンジンは、当該技術分野で知られた方法でフレーム104に取り付けられた車輪111を駆動する。
【0012】
積載量コンテナ106は、フレーム104に取り付けられ支持される。また、積載量コンテナ106の一部として、キャノピ112が操作者運転室110に亘って延設され得る。このキャノピ112は、キャノピ112自体を含む積載量コンテナ106に投げ込まれる土壌、がれき、及び他の材料から操作者運転室110を保護するように構成され得る。
【0013】
図2は、車両100と動作可能に関連し得る制御システム200を示している。この制御システム200は、一連のセンサ202と、制御モジュール204と、機械構成部材206とを備え得る。本実施形態では、一連のセンサ202は、自動車のパラメータを測定するように構成され得るものであり、オイル温度センサ208、エンジン速度センサ210、スロットルセンサ212、積載量センサ214、及び傾斜計216などの勾配検出器を備え得る。これらのセンサは、1つ以上の制御モジュールを表わし得る制御モジュール204と電気的に接続し、この制御モジュール204に測定したパラメータを示すセンサ信号を送出するように構成され得る。制御モジュール204は、1つ以上の一連のセンサ202から通信信号を受信し、車両100の機械構成部材206のいずれかに伝達し得る指令信号を生成し得る。また、車両の機械構成部材206は、例えば、表示装置222、燃料システム224、変速機226、及びブレーキシステム228を備え得る。なお、当然のことながら、他の構成部材も含み得る。
【0014】
オイル温度センサ208は、車両100におけるブレーキシステムのオイル温度を監視するように構成され得る。また、オイル温度センサ208は、温度を表わす温度信号を、制御モジュール204に伝達するように構成され得る。一例示的実施形態では、オイル温度センサ208は、オイルパン内に配置され、ブレーキ自体におけるオイルの温度を監視し得る。
【0015】
エンジン速度センサ210は、車両100のエンジンに動作可能に関連し、エンジン速度を検出するように構成され得る。一例示的実施形態では、エンジン速度センサ210は、入力軸又はカム軸の回転数を測定するように構成され得る。他の例示的実施形態では、エンジン速度センサは、変速機内の軸速度を測定するように構成される。このセンサは、エンジン速度の測定又は決定を可能とする他の構成部品と関連し得る。
【0016】
スロットルセンサ212は、車両100の入力装置と関連し得る。幾つかの例示的実施形態では、入力装置は、車両100の操作者運転室110の床面上の足踏み式ペダル、或いは、その代わりに手動レバーである。スロットルセンサ212は、例えば、ペダルの位置を監視する位置又は回転センサとし得る。スロットルセンサ212は、レバー、ダイヤル、又は他のスロットル装置などの車両上の任意のスロットルと関連し得ることに留意すべきである。また、このスロットルセンサ212は、操作者からの入力を検出すると、スロットル信号を制御モジュール204に伝達し得る。
【0017】
積載量センサ214は、車両100により運搬されている積載量の重量を検出するように車両100と関連し得る。一例示的実施形態では、積載量センサ214は、トルクセンサ、重量センサ、圧力センサ、及び/又は当該技術分野で知られた積載荷重を監視するように構成された他のセンサなどの幾つかのセンサを備え得る。一例示的実施形態では、積載量センサ214は、懸架システムの支柱の圧力を監視することにより、間接的に積載量を監視し得る。また、他の公知なシステムも用い得る。積載量センサ214は、積載量信号を生成し、この信号を制御モジュール204に伝達するように構成され得る。また、一例示的実施形態では、積載量センサは、積載量の重量を連続的に検出する。
【0018】
傾斜計216は、車両100と関連する勾配検出器とし、車両100の傾斜を連続的に検出するように構成され得る。一例示的実施形態では、傾斜計216は、車両100のフレーム104に関連して、またはこれに固定的に接続される。なお、傾斜計216は、車両100の任意の安定面に接続され得る。一例示的実施形態では、傾斜計216は、前方から後方に向かう方向を含む任意の方向において傾斜を検出するように構成され得る。傾斜計216は、傾斜信号を生成し制御モジュール204に送出するように構成され得る。なお、本開示内容は、傾斜計を勾配検出器として記載しているが、他の勾配検出器を用いても良いことに留意すべきである。一例示的実施形態では、勾配検出器が2つのGPS受信機を備え、1つずつ車両100の各端部に置かれている。そして、車両の傾斜は、受信機の位置差を知ることにより計算され得る。また、他の勾配検出器も用い得る。
【0019】
制御モジュール204は、処理装置218と、メモリ構成部材220とを備え得る。処理装置218は、一連のセンサ202から信号を受信し、メモリ構成部材220に記憶された情報を処理し、1つ以上の機械構成部材206に送出される指令信号を生成するように構成され得る。また、メモリ構成部材220は、一連のセンサ202からの信号を処理するのに用いられ得るコンピュータ符号などのコンピュータプログラムを含む、処理、データ、及び/又は追加情報を記憶するように構成され得る。
【0020】
メモリ構成部材220は、一連のエンジン動力レベルを表わすデータを含み得るものであり、スロットル位置に基づくスロットル信号と、車両100のエンジンからの出力動力との間の動力比率を、スロットル信号の範囲に亘って制御するように構成され得る。一例示的実施形態では、この動力比率は、エンジンに送出され得る燃料の量を調整することにより制御され、これによりエンジンサイクル当たり燃焼する燃料量、またこのためエンジンにより発生する馬力量を制御する。
【0021】
図3は、例示的な第1のエンジン動力レベル302と例示的な第2のエンジン動力レベル304とを示す例示的グラフ300を示している。このグラフ300は、スロットル信号軸306と出力動力軸308とにより画定される。スロットル信号軸306は、取り得るスロットル信号の範囲を画定し、一方、出力動力軸308は、取り得る出力動力の一例示的範囲を示している。なお、スロットル信号は、スロットル入力装置の位置に基づいて決定され得ることに留意するべきである。本例示的実施形態では、第1のエンジン動力レベル302は、取り得るスロットル信号の範囲に亘って動力比率を画定するものであり、最大スロットル信号で得られる出力動力100%でエンジンを動作させるように構成される。第2のエンジン動力レベル304は、取り得るスロットル信号の範囲に亘って動力比率を画定し、最大スロットル信号で得られる100%の出力動力よりも少ない動力量で、例えば、最大約90%の出力動力で、エンジンを動作するように構成される。したがって、単独のスロットル信号の場合には、単独のスロットル位置に基づき、エンジンからの動力出力量は、選択したエンジン動力レベルに依存して異なり得る。本例示的実施形態では、エンジン動力レベル302及び304は、直線で示される。ただし、エンジン動力レベルは、スロットル位置に基づくスロットル信号と出力動力との間の任意の所望の関係を提供するように構成され得る。したがって、動力比率は、非線形関係を有するエンジン動力レベルにより画定され得る。図3に示す第1及び第2のエンジン動力レベル302及び304は、取り得るスロットル信号の実質的に完全な範囲に亘って異なる動力比率を提供する。しかしながら、エンジン動力レベルは、取り得るスロットル信号の完全な範囲より小さい範囲に亘って、同じ入力に対する異なる動力比率を提供し得ることも留意すべきである。例えば、一例示的実施形態では、2つの異なるエンジン動力レベルが、取り得るスロットル信号の範囲の半分を超える範囲に対して、異なる動力比率を提供し得る。
【0022】
また、エンジン動力レベルデータは、車両100が動作する地形に基づいて、適切なレベルを選択するためのデータを含み得る。例えば、傾斜計216に示されるような上り坂を走行する場合には、エンジンは、第1のエンジン動力レベル302により示されるような適切なエンジン動力レベルによって、利用可能な馬力100%で動作し得る。一方、比較的平坦な地面や下り坂を走行する場合には、エンジンは、第2のエンジン動力レベル304により示されるような適切なエンジン動力レベルによってのみ、利用可能な馬力の90%で動作し得る。エンジン動力レベルは、例えば、メモリ構成部材220内に記憶された参照テーブルとし得るものであり、制御モジュール204は、センサ202からの一連の信号に対して、使用に適したエンジン動力レベルを識別し選択し得る。なお、図3では、2つのエンジン動力レベルのみを図示しているが、メモリ構成部材220は、動力出力を制御するのに用い得る任意数のレベルを含み得ることに留意すべきである。
【0023】
加えて、メモリ構成部材220は、車両100の走行ギヤを表わすデータを含み得る。走行ギヤ情報は、車両が動作している地形に基づいて、適切なギヤを選択するためのデータを含み得る。例えば、適切なギヤを決定するのに考慮され得る要因としては、傾斜計216により測定されるような車両100により走行される傾斜であり得る。かかる走行ギヤデータは、例えば、特定の信号、又は特定の一連の信号に対して、適切なギヤを識別し選択するための参照テーブルとし得る。他の例示的実施形態では、走行ギヤデータは、一連のセンサ202からの入力に基づいて、特定のギヤを検出し出力するように構成されたアルゴリズムである。
【0024】
制御モジュール204は、1つ以上のセンサ202からの情報や、メモリ構成部材220に記憶された情報に基づいて、1つ以上の機械構成部材206に伝達され得る指令信号を生成するように構成され得る。上述した例示的実施形態では、指令信号は、表示装置222、燃料システム224、変速機226、及び/又はブレーキシステム228の各々に伝達し得る表示信号、燃料システム信号、変速機信号、及び/又はブレーキシステム信号とし得る。
【0025】
表示装置222は、操作者の視認用であり、車両100の操作者運転室110内部に配置され得る。また、表示装置222は、例えば、一連のセンサ202により検出された情報などの情報を、操作者に伝達するように構成され得る。一例示的実施形態では、表示装置222は、傾斜計216から受信した情報を伝達するように構成され得る。本実施形態では、表示装置222は、車両100により走行されている勾配度に関する情報を伝達し得る。また、表示装置222は、積載量センサ214から受け取った情報に基づいて、現在の積載量に関する情報をも伝達するように構成され得る。また、表示装置は、各センサにより検出される、スロットル量、エンジンの現在速度、及び/又はオイル温度などの情報をも伝達し得る。
【0026】
燃料システム224は、エンジンと動作可能に関連し、燃料システム内で使用される燃料量について所定の制御を可能とし得る。一例示的実施形態では、燃料システム224は、エンジンに噴射された燃料量を制御するように調整される噴射器を備え得る。燃焼された燃料の馬力及び量は、燃料量を制御することにより調整され得る。燃料システム224は、制御モジュール204からの燃料信号を受信し得る。
【0027】
変速機226は、車両100上のエンジン構成部品108内に収納され得るものであり、当該技術分野で知られた異なる動作ギヤを備え得る。変速機226は、制御モジュール204からの変速機信号に基づいて、適当なギヤに切り替わるように構成され得る。変速機信号は、他の構成部材の中でも、傾斜計216、積載量センサ214、エンジン速度センサ210、及び/又はオイル温度センサ208からの信号に基づいて生成され得る。
【0028】
ブレーキシステム228は、地面に亘って車両100の動きを摩擦で遅らせるようなブレーキ抵抗をかけるように構成され得る。一例示的実施形態では、ブレーキシステム228は、エンジン速度センサ210により監視されるエンジン速度を、予め設定した速度に限定又は維持するように、ブレーキ抵抗を自動的に制御し得る。したがって、ブレーキシステム228は、特に、傾斜計216により決定されるような下り坂を走行する場合に有効となり得る。
【0029】
一例示的実施形態では、制御モジュール204は、変速機226の切替点を調整するように構成され得る。本文で用いられているように、切替点は、変速機226が1つのギヤから他のギヤへと切り替え得る回転数値又は回転範囲である。制御モジュール204は、エンジン速度センサ210により検出されたエンジン速度、傾斜計216により検出された車両100の傾斜、及び/又は積載量センサにより検出された車両100の積載量に基づき、隣接するギヤ間の切替点を予め設定した回転数に合うように調整するよう構成され得る。例えば、一例示的実施形態では、車両の3番目及び4番目のギヤ間の切替用の切替点は、傾斜計により検出された緩やかな平坦地を横断する場合には約1800rpmとし得る。しかしながら、車両100が下り坂を走行していると制御モジュール204が判断した場合には、制御モジュール204は、切替点を約1650rpmに調整し得る。これにより、下り坂を走行する場合などの高い動力が必要でない場合には、ギヤを比較的低い回転数に切り替え可能とすることによって、燃料経済性がより良くなり得る。また、制御モジュール204は、車両100が上り坂を走行していると判断すると、切替点を約1950rpmに調整し得る。これにより、上り坂を走行する場合や重い積載量を運搬する場合などの高い動力が必要な場合には、ギヤを比較的高い回転数に切り替え可能とすることによって、切り替え中により高い動力が提供され得る。
【0030】
車両100の傾斜に加えて、車両100の積載量の重量もまた、切替点を調整するのに用い得る。例えば、積載量センサ214により検出されたように、車両100が重い積載量を運搬している場合、制御モジュール204は、上り坂を走行する際には切替点を比較的高い回転数に調整し、下り坂を走行する際には切替点を比較的低い回転数に調整し得る。一例示的実施形態では、切替点の調整は、参照テーブルとしてメモリ構成部材220に記憶され得る。なお、切替点を決定する他の方法を用いても良い。このように、切替点を調整することにより、ギヤ間の円滑な移行が提供され得る。
【0031】
また、制御モジュール204は、1つ以上のセンサ202により検出された情報に基づいて、適切なエンジン動力レベル、車両100用の適切な走行ギヤ、及び/又は適切な切替点を決定するように構成され得る。そして、制御モジュール204は、適切なエンジン動力レベル、走行ギヤ、及び/又は切替点に基づいて、1つ以上の機械構成部材206を制御し得る。車両100は、車両が動作する勾配を検出し、積載量を検出することにより、比較的効果的に動作し得る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本文開示の制御システムは、適切な走行ギヤの自動的な認識及び選択を助長し得るものであり、また、車両100にとって適切なエンジン動力レベルの自動的な認識及び実施を助長し得るものである。このように、適切な走行ギヤを認識し選択することによって、積載量を運搬して勾配を下りながら走行する場合に効率が良く、これによりコスト節約となる。加えて、適当なエンジン動力レベルを自動的に認識し実施することにより、燃料を節約し、不要な排気を抑え、運転コストを低減し得る。
【0033】
制御モジュール204は、1つ以上のセンサ202からの信号を受信し検討することにより、どの動作ギヤが車両動作中に適当であるかを決定し得る。例えば、ある1つのギヤが、平坦な地面を横断する場合に選択され得るとともに、また別の低いギヤが、下りの速度を過度に限定することなく勾配を下るのを遅らせるように選択され得る。さらに、制御モジュール204は、一連のセンサ202からの信号を受信し検討することにより、車両100が丘を登る場合などの全馬力で動作すべき場合を判断し、また、平坦な地形や丘を下って走行する場合などの必要な馬力が全馬力よりも少ない場合をも判断し得る。その後、制御モジュール204は、メモリ構成部材220に記憶されたエンジン動力レベルから適当なエンジン動力レベルを選択し得る。
【0034】
図4及び図5は各々、車両100を制御する方法を示している。図4の方法は、適切な動作ギヤ又は走行ギヤを選択することに関連し、一方、図5の方法は、適切なエンジン動力レベルを選択することに関連する。これら2つの方法は、個別に開示するが、両方を合わせて用いても良いことは明らかである。
【0035】
図4中のフローチャート400には、車両の走行ギヤを制御する一例示的方法が開示されている。フローチャート400は、開始ステップ402で開始される。ステップ404では、走行ギヤデータが制御モジュール204に記憶される。走行ギヤデータは、下降する勾配、車両により運搬された積載量の重量、ブレーキオイルの温度、及びエンジン速度などの1つ以上の要因に基づく、車両用の適切な走行ギヤなどの情報を含み得る。一例示的実施形態では、走行ギヤデータは、参照テーブルの形態とし得るものであり、他の例示的実施形態では、走行ギヤデータは、情報を受け取り特定のギヤを出力するように構成されたアルゴリズムである。
【0036】
ステップ406では、傾斜計216は、車両100の傾斜を検出し、検出した傾斜を勾配信号として制御モジュール204に伝達する。検出した傾斜は、車両100により走行されている勾配を示し得る。制御モジュール204は、表示信号を生成し表示装置222に送出し得るものであり、ステップ408では、表示装置222は、この傾斜を車両操作者に伝達し得る。表示装置222は、この傾斜を、数値やパーセンテージや画像や文字メッセージや他の視覚的又は音響的指標として伝達され得る勾配として伝達するように構成され得る。
【0037】
ステップ410では、積載量センサ214は、車両100により運搬された積載量を検出し、この検出した積載量を積載量信号として制御モジュール204に伝達する。積載量センサ214は、支柱の圧力を監視することにより、又は他の方法を用いて積載量を検出し得る。一例示的実施形態において、検出された積載量は、表示装置222に伝達され、操作者により視認され得る。
【0038】
ステップ412では、オイル温度センサ208は、車両100のブレーキオイル温度を検出し、この検出した温度を温度信号として制御モジュール204に伝達する。ステップ414では、エンジン速度センサ210は、エンジン速度を検出し、エンジン速度をエンジン速度信号として制御モジュール204に伝達する。また、オイル温度及びエンジン速度も、表示装置222に表示され得る。
【0039】
ステップ416では、制御モジュールは、記憶された走行ギヤデータと同様に、勾配信号、積載量信号、ブレーキオイル温度信号、及び/又はエンジン速度信号に基づいて、適当なギヤを決定する。例えば、車両が穏やかに平坦な地面に亘って特定の重量の負荷を運搬している場合には、制御モジュール204は、第1の比較的高い走行ギヤを選択し得る。その後、車両が平坦な地面から下降する勾配に移動すると、制御モジュール204は、ブレーキに過度に重く依存せずに車両速度を遅らせる第2の比較的低い走行ギヤを選択し得る。加えて、制御モジュール204は、ブレーキオイルの温度が上昇するにつれて、ブレーキへの依存を緩和するように、車両100の速度をさらに遅らせる更なる低い走行ギヤを選択し得る。車両100が勾配の端部に達し、平坦な地面に再び到ると、制御モジュール204は、比較的高い走行ギヤが適切であると判定し得る。一例示的実施形態では、制御モジュール204はまた、車両100の積載量の重量及び傾斜に基づいて、切替点を制御し得る。したがって、制御モジュール204は、追加的な動力が正当である場合には、より高い回転数に切替点を調整し、より少ない動力が正当である場合には、より低い回転数に切替点を調整し得る。
【0040】
ステップ418では、制御モジュール204は、決定した適当なギヤと対応するように、変速機226を切り替えるための変速機信号を、変速機226に対して生成し送出する。ステップ420において、本方法は終了する。車両100の動作は、傾斜、積載量、及び/又は他の要因を自動的に考慮することにより、適切な動作ギヤが操作者からの入力なく選択され得るため、簡素化され得る。さらに、本システムは、全体のコストを削減しながら、車両の効率を向上し得る。
【0041】
図5に、負荷運搬車両の出力電力を制御する例示的方法が開示されている。本方法500は、ステップ502で開始され得る。ステップ504では、エンジン動力レベルデータが、制御モジュール204のメモリ構成部材220に記憶される。このエンジン動力レベルデータは、スロットル信号とエンジンからの出力動力との間の動力比率を含み得る。スロットル信号は、関連する入力装置の位置に基づいて、スロットルセンサ212から伝達され得るものであり、一方、実際の動力出力は、例えば、燃料システム224を通して制御され得る。本実施形態では、制御モジュール204は、スロットル信号に対して燃料出力を制御することにより、多様な馬力レベルで車両100を動作するように構成され得る。例えば、制御モジュール204は、丘を登って走行する場合には、1000馬力で車両を駆動し得る。その後、丘の頂上では、エンジン動力レベルデータは、制御モジュール204が、例えば、900馬力などのより低いレベルに馬力を低減することができることを示し得る。この動力の低減は、同一のスロットル入力に対してより少ない燃料を提供し得る個別のエンジン動力レベルに切り替えることにより実現され得る。
【0042】
ステップ506では、傾斜計216は、車両100の傾斜を検出し、この検出した傾斜を勾配信号として制御モジュール204に伝達する。ステップ508では、表示装置222は、上述したように、勾配を示す情報を操作者に伝達する。ステップ510では、積載量センサ214は、上述したように、車両100により運搬された積載量を検出し、この検出した積載量を積載量信号として制御モジュール204に伝達する。
【0043】
ステップ512では、スロットルセンサ212は、操作者からのスロットル入力を検出し、この検出された入力をスロットル信号として伝達する。このスロットル信号は、ペダル、レバー、又は他の入力装置の位置を表わし得るものであり、エンジンから要求された動力量を示し得る。
【0044】
ステップ514では、制御モジュール204は、記憶されたエンジン動力レベル情報に加えて、勾配信号、積載量信号、及び/又はスロットル信号に基づき、車両100用の適切なエンジン動力レベルを自動的に決定し得る。一例示的実施形態では、適切なエンジン動力レベルは、エンジンに送られた燃料を調整することにより、出力動力を制御し得る。したがって、特定の入力に対して、比較的多量な燃料がエンジンに供給され、これにより、比較的高い馬力を生成し得る。これは、車両100が積載量を運搬しながら上り坂を走行していることを、傾斜計216が検出した場合に適合され得る。他の例示的実施形態では、同一の特定の入力に対して、適切なエンジン動力レベルにより比較的低量の燃料をエンジンに送出し、これにより比較的低い馬力を生成し得る。これは、車両100が平坦な地面を横断するか、基準よりも少ない積載量を運搬して上り坂を登るか、又は下り坂を降りながら走行することを、傾斜計216が検出した場合に適合され得る。メモリ構成部材220は、異なるシナリオに対応する任意数のエンジン動力レベルを含み得ることに留意すべきである。一例示的実施形態では、エンジン動力レベルは、メモリ構成部材220に記憶された参照テーブルである。
【0045】
ステップ516では、制御モジュール204は、決定されたエンジン動力レベルに基づいて燃料信号を生成し、この燃料信号を燃料システム224に送出する。その後、燃料システム224は、決定されたエンジン動力レベルに基づいて、車両100を制御する。ステップ518にて、本方法は終了する。車両100の動作は、傾斜、積載量、及び/又は他の要因を自動的に考慮することにより、適切なエンジン動力レベルが操作者からの入力なく選択され得るため、簡素化され得る。さらに、本システムは、適当なエンジン動力レベルが用いられていることを確実にすることで、全体のコストを削減しながら車両効率を向上し得る。
【0046】
なお、本方法は、オフハイウェイトラックなどの負荷運搬車両を参照して開示されているが、オンハイウェイトラック、連結式トラック、オフハイウェイトラクタ、又は他の作業機械などの任意の車両にも用い得るものである。さらに、車両は、動作ギヤデータ及びエンジン動力レベルデータの両方を有している必要はないが、いずれか、或いはその代わりに両者を有していると良いことは明らかである。
【0047】
なお、本開示の実施形態においては、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の修正及び変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。また、本発明の他の実施形態は、本開示の本発明に関する明細書及びその実施を検討することにより、当業者にとって明らかであろう。また、明細書及び例は、あくまでも例示的なものとして考慮されるべきものであり、本発明の本来の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれと等価な内容により示されるものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】例示的車両を示す図である。
【図2】例示的制御システムを示すブロック図である。
【図3】例示的エンジン動力レベルを示すグラフである。
【図4】負荷運搬車両を制御する例示的方法を示すフローチャートである。
【図5】負荷運搬車両を制御する例示的方法を示す他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
100 車両
102 フロントエンド
104 フレーム
106 積載量コンテナ
108 エンジン室
110 操作者運転室
111 車輪
112 キャノピ
200 制御システム
202 一連のセンサ
204 制御モジュール
206 機械構成部材
208 オイル温度センサ
210 エンジン速度センサ
212 スロットルセンサ
214 積載量センサ
216 傾斜計
218 処理装置
220 メモリ構成部材
222 表示装置
224 燃料システム
226 変速機
228 ブレーキシステム
300 グラフ
302 第1のエンジン動力レベル
304 第2のエンジン動力レベル
306 スロットル信号軸
308 出力動力軸
400 フローチャート
402 開始ステップ
404 走行ギヤデータを制御モジュールに記憶するステップ
406 車両の傾斜を検出し、検出した傾斜を勾配信号として伝達するステップ
408 車両の傾斜を勾配として車両操作者に伝達するステップ
410 車両により運搬された積載量を検出し、検出した積載量を積載量信号として伝達するステップ
412 車両のブレーキオイル温度を検出し、検出した温度を温度信号として伝達するステップ
414 車両のエンジン速度を検出し、検出したエンジン速度をエンジ速度信号として伝達するステップ
416 受信した信号及び走行ギヤデータに基づき、適切な走行ギヤを決定するステップ
418 適切な走行ギヤに対応するように変速機を切り替えるステップ
420 終了ステップ
500 フローチャート
502 開始ステップ
504 エンジン動力レベルデータを制御モジュールに記憶するステップ
506 車両の傾斜を検出し、検出した傾斜を勾配信号として伝達するステップ
508 車両の傾斜を勾配として車両操作者に伝達するステップ
510 車両により運搬された積載量を検出し、検出した積載量を積載量信号として伝達するステップ
512 操作者のスロットル入力を検出し、検出した入力をスロットル信号として伝達するステップ
514 受信した信号及びエンジン動力レベルデータに基づき、適切なエンジン動力レベルを決定するステップ
516 決定した適切なエンジン動力レベルに基づいて車両を動作させるように、燃料システムを制御するステップ
518 終了ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷運搬車両用の制御システムであって、
車両のパラメータを測定し、測定したパラメータを示すセンサ信号を伝達するように構成されたセンサと、
センサからセンサ信号を受信し、センサ信号に基づき適切なエンジン動力レベルを決定するように構成された制御モジュールとを備える制御システム。
【請求項2】
センサは、車両により運搬された積載量の重量を測定するように構成された積載量センサと、車両の傾斜を測定するように構成された勾配検出器のうちの1つである請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
燃料システムを備え、
決定した適切なエンジン動力レベルは、車両がセンサ信号に基づいて上方に傾斜している場合には、比較的多量の燃料を用いるように燃料システムを制御するよう構成されるとともに、
決定した適切なエンジン動力レベルは、車両がセンサ信号に基づいて下方に傾斜している場合には、比較的低量の燃料を用いるように燃料システムを制御するよう構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
エンジン動力レベルは、スロットル信号の範囲に亘って、スロットル信号と車両のエンジンからの出力動力との間の所定の比率を含んでいる請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
操作者入力装置に関連するスロットルセンサを備え、スロットルセンサは、スロットル信号を制御モジュールに伝達するように構成され、制御モジュールは、スロットル信号及びセンサ信号に基づいて、適切なエンジン動力レベルを決定するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
制御モジュールは、センサ信号に基づいて、適切な走行ギヤを決定するように構成され、決定された適切な走行ギヤにギヤを切り替えるための変換機信号を出力するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
制御モジュールは、センサ信号に基づいて、切替点を調整するように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
制御システムを備える負荷運搬車両を制御する方法であって、
車両のパラメータを測定するステップと、
測定したパラメータを示すセンサ信号を伝達するステップと、
制御モジュールでセンサ信号を受信するステップと、
センサ信号に基づいて、制御モジュールで適切なエンジン動力レベルを決定するステップとを含む方法。
【請求項9】
車両のパラメータを測定するステップは、車両により運搬された積載量の重量を検出するステップと、車両の傾斜を監視するステップのうちの少なくとも1つを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エンジン動力レベルは、スロットル信号の範囲に亘って、スロットル信号と車両のエンジンからの出力動力との間の所定の比率を含む請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−189054(P2006−189054A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2702(P2006−2702)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】