貼り合わせウェーハの製造方法
【課題】貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面に、結晶面が異なる領域を簡単に形成可能な貼り合わせウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】高エネルギ光を、活性層用ウェーハの素材は溶融しないが、吸光係数が高いアモルファスシリコンは溶融する条件で貼り合わせ基板の活性層用ウェーハ側の面に照射し、この窓部内のシリコンを溶融させて固化させる。このとき、アモルファスシリコンを単結晶シリコンに液相エピタキシーにより変質させれば、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面に、結晶面が異なる領域を簡単に形成できる。
【解決手段】高エネルギ光を、活性層用ウェーハの素材は溶融しないが、吸光係数が高いアモルファスシリコンは溶融する条件で貼り合わせ基板の活性層用ウェーハ側の面に照射し、この窓部内のシリコンを溶融させて固化させる。このとき、アモルファスシリコンを単結晶シリコンに液相エピタキシーにより変質させれば、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面に、結晶面が異なる領域を簡単に形成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貼り合わせウェーハの製造方法、詳しくは活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを、素材(単結晶)と結晶面と結晶方位とのうち、少なくとも1つを異ならせて貼り合わせたウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide
Semiconductor Field Effect Transistor)によって構成されたLSI(Large Scale Integrated circuit)の基板には、一般に(100)面のシリコンウェーハが使用されている。
【0003】
シリコンウェーハにおいては、MOSFETのキャリアのうち、電子は(100)面ウェーハの結晶方位<110>方向で高い移動度を示す一方、正孔は(110)面ウェーハの結晶方位<110>方向で高い移動度を示す。そこで、結晶面が異なるウェーハを貼り合わせたHOT(Hybrid Orientation Technology)基板が開発されている。HOT基板では、支持基板の表面に異なる結晶面の領域(ウェーハ片)が存在する。具体的には、(100)面の領域上にnMOSFETが形成され、(110)面の領域上にpMOSFETが形成されることで、高性能で高集積化されたLSIが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、nMOSFETおよびpMOSFETは、例えば、チャネル方向を互いに直交させた2種類の方向を混在させてレイアウトした方が、半導体装置の省スペース化が図れて好ましい。そのため、従来のHOT基板では、それぞれ所定サイズの(110)面のウェーハ片と(110)面のウェーハ片とを、支持基板の表面の予め設定された位置に、nMOSFETおよびpMOSFETの各チャネル方向を考慮し、正確に位置合わせして貼り合わせる必要があった。
また、ウェーハ表面上に部分的に窓部を形成し、窓部を通してエッチングされた孔部にシリコンをエピタキシャル成長させる方法が開発されている。しかしながら、狭面積の孔部に均一なエピタキシャル膜を成長させるには、減圧下での低温加熱という困難な条件での成膜が必要となる。そのため、良質なエピタキシャル膜を形成することは困難であった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを、素材(単結晶)と結晶面と結晶方位とのうち、少なくとも1つを異ならせて貼り合わせた貼り合わせ基板において、活性層用ウェーハの表面の一部に支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成し、この孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積後、この貼り合わせ基板を熱処理して堆積物を単結晶化すれば、活性層用ウェーハの表面の一部に、素材、結晶面、結晶方位のうち、少なくとも1つが異なる異種領域を簡単に形成できることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
なお、孔部内のアモルファスシリコン、および支持基板用ウェーハのアモルファスシリコンとの界面付近に非ドーパント、例えばシリコンやアルゴンなどをドーズ量5×1014〜1×1017atoms/cm2でイオン注入すれば、アモルファス化が促進され、熱処理による結晶回復を速めることも可能である。すなわち、アモルファスシリコンは単結晶シリコンと比較して特定波長領域で光吸収係数が1桁以上程高いため、高エネルギ光、例えばレーザ光を特定領域に照射加熱することで、周りの単結晶は維持したまま、アモルファス領域のみを容易に結晶改質することが可能となる。これにより、上述の問題は解消することを知見した。
この発明は、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハに起因した素材、結晶面、結晶方位のうち、少なくとも1つが異なる異種領域を簡単に形成することができる貼り合わせウェーハの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、前記異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて前記第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、前記活性層用ウェーハの一部をエッチングし、前記支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する開孔工程と、前記孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる堆積工程と、該堆積工程後、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの一部をエッチングし、支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する。その後、孔部にアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを、例えばCVD(化学的気相成長)法などの薄膜成長法により堆積させ、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜とする。
【0010】
次に、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハと同じ結晶面、結晶方位の単結晶シリコンに改質する。このとき、活性層用ウェーハの素材には、アモルファスシリコンの溶融温度以上の融点を有するものを採用している。例えば、活性層用ウェーハの素材に、融点が1412℃の単結晶シリコンなどを用いる。単結晶シリコンに比べて、アモルファスシリコンや多結晶シリコンは融点が低い。特に、アモルファスシリコンの場合は融点が1150℃前後で、単結晶シリコンより約260℃も低い。そこで、貼り合わせ基板を例えばレーザアニール炉内に挿入し、1150℃以上1412℃未満の温度で熱処理すれば、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が支持基板用ウェーハと同じ結晶性(結晶面および結晶方位など)の単結晶シリコンに変質する(液相エピタキシー;Liquid Phase Epitaxy)。
【0011】
また、光吸収係数に関しても、アモルファスシリコンと多結晶シリコン、特にアモルファスシリコンは、単結晶シリコンと比較して特定波長領域では光吸収係数が1桁以上高いと言われている。そのため、光加熱式のアニール炉を使用し、貼り合わせ基板を1150℃以上1412℃未満の温度で熱処理すれば、活性層用ウェーハの素材が融点に達する前に、アモルファスシリコン膜が溶融する。その後、これを冷却、固化することで、単結晶シリコン膜が形成される。
これは、孔部内の光加熱により溶融したアモルファスシリコン膜(または多結晶シリコン膜)が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面(固液界面)を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶性を引き継いで単結晶化するためである。これにより、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハと同じ結晶性の領域を簡単に形成することができる。
【0012】
次に、アモルファスシリコン膜に対する溶融を伴わない固相エピタキシー(Solid Phase Epitaxy)の場合について説明する。活性層用ウェーハの素材には、融点が1412℃の単結晶シリコンなどを用い、貼り合わせ基板に対してアモルファスシリコンの融点を若干下回る温度(例えば1100℃)のレーザ照射を行う。これにより、アモルファスシリコン膜が、溶融することなく、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、支持基板用ウェーハの結晶性(結晶面および結晶方位など)を引き継いで単結晶化される。その後、これを冷却、固化することで、単結晶シリコン膜が形成される。
【0013】
加熱方法は、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を溶融する条件での加熱としてもよい。このとき、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶面を含む結晶性を引き継いで単結晶化する(液相エピタキシー)。
一方、固相エピタキシーの場合には、アモルファスシリコン膜を溶融させず、溶融温度付近までの例えばレーザ照射光により加熱させる。これにより、アモルファスシリコン膜が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶面を含む結晶性を引き継いで単結晶化する。特に、イオン注入など用いてアモルファス膜や多結晶シリコン膜および支持基板界面を通過した領域までアモルファス化させれば、レーザ照射後に良好な単結晶を得ることができる。
【0014】
支持基板用ウェーハの素材は、単結晶シリコンである。
活性層用ウェーハの素材としては、単結晶シリコンまたは異種単結晶を採用することができる。ここでの異種単結晶とは、融点が単結晶シリコンの融点以上で、かつ単結晶シリコンと異なる半導体素材の単結晶をいう。この半導体素材としては、例えば炭化珪素(SiC)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムガリウム砒素(InGaAs)、ガリウムナイトライド(GaN)、サファイアなどを採用することができる。活性層用ウェーハの素材に、シリコンとは異なる半導体素材を採用した場合には、熱処理工程において、ヘテロエピタキシーを伴うアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンの単結晶シリコンへの変質が行われる。
【0015】
第1の結晶面および第2の結晶面としては、例えば(100)面、(110)面、(111)面、(211)面、(511)面などを採用することができる。ただし、第1の結晶面と第2の結晶面とは、総称では同じ結晶面であってもよいが、単独の結晶面としては同一の結晶方位とならないように選択する必要がある。具体的には、第1の結晶面と第2の結晶面とが、総称では同じ{100}面であっても、第1の結晶面の結晶方位<110>に対して第2の結晶面の結晶方位<110>を45°ずらして貼り合わせを選択する必要がある。
【0016】
貼り合わせ基板としては、(1)単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面である支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせたもの、(2)単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面である支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が第1の結晶面であるが結晶方位は異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせたもの、(3)支持基板用ウェーハと、異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせたものの何れかを採用することができる。
【0017】
貼り合わせ基板の種類は任意である。例えば、(1)支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを直接貼り合わせた貼り合わせ基板、(2)支持基板用ウェーハに埋め込み酸化膜(埋め込み絶縁膜)を介して、活性層用ウェーハを貼り合わせた貼り合わせSOI基板でもよい。埋め込み酸化膜としては、例えばシリコン酸化膜、窒化シリコンなどを採用することができる。埋め込み酸化膜の厚さは、例えば0.01〜2.0μmである。
【0018】
貼り合わせ基板の形成後、活性層用ウェーハは減厚されて活性層となる。ただし、必ずしも減厚する必要はない。この減厚方法が採用される貼り合わせ基板としては、例えば、活性層用ウェーハの薄膜化に選択エッチングを採用したELTRAN方式のSOI基板、活性層用ウェーハの薄膜化に水素イオン剥離を採用したスマートカット方式のSOI基板、活性層用ウェーハの薄膜化に局所プラズマエッチングを採用したPACE方式のSOI基板を採用することができる。
【0019】
活性層用ウェーハの一部にエッチングにより孔部を形成する方法としては、例えば、まず貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面に保護膜を形成し(保護膜形成工程)、次に保護膜を部分的に除去する。その後、保護膜に活性層用ウェーハの一部を露出させる窓部を形成(窓部形成工程)し、それからこの窓部を通して、活性層用ウェーハの一部に孔部をエッチングする方法などを採用することができる。
この場合の保護膜としては、例えばシリコン酸化膜、窒化膜などを採用することができる。
保護膜の形成方法としては、例えば熱酸化膜、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、スパッタリング法、エピタキシャル成長法などを採用することができる。
【0020】
保護膜の除去は、例えば、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積する前に行うことができる。その他、堆積工程後から熱処理工程の前までの間や、熱処理工程後に保護膜を除去してもよい。
窓部の形成方法としては、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、保護膜を部分的に溶失させる方法を採用することができる。窓部形成用のエッチング液は、保護膜の素材に応じて適宜変更される。例えば、保護膜がシリコン酸化膜の場合には、HF溶液などを採用することができる。または、RIE(Reactive Ion Etching)によるドライエッチング法などを用いてもよい。
【0021】
開孔工程で使用される活性層用ウェーハ用のエッチング液は、活性層用ウェーハの素材に応じて適宜選択される。開孔工程でのエッチング方法としては、ドライエッチング法、ウェット法、スパッタリング法などを採用することができる。また、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ用のエッチング液としては、例えばウェットエッチング法ではTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)やHF:HNO3:CH3COOHの混酸液などを採用することができる。電子サイクロトロン共鳴(ECR)または反応性イオンエッチング(RIE)によるドライエッチング法では、SF6などをエッチャントに採用することができる。
孔部の深さは、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの界面に達する程度でもよいものの、その界面を超えて支持基板用ウェーハの内部まで達する程度が好ましい。
【0022】
熱処理工程では、支持基板用ウェーハ上で溶融したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が、支持基板用ウェーハの単結晶シリコン構造に反映した液相エピタキシャル成長または固相エピタキシャル成長を行い、単結晶シリコンとなる。
また、液相エピタキシャル成長されたシリコン膜の比抵抗の調整は、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコン中に予めドーパントを規定量導入することで対応できる。
【0023】
ここでいう「堆積」とは、エピタキシャル成長を含むアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンの成長をいう。
アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを堆積させる方法としては、例えば気相成長法を採用すればよい。その他、スパッタリング法などでもよい。
気相成長法としては、例えば常圧気相成長法、減圧気相成長法、有機金属気相成長法等を採用することができる。
気相成長装置としては、貼り合わせ基板を1枚ずつ処理する枚葉型、複数枚の貼り合わせ基板を同時に処理可能なパンケーキ型、バレル型、ホットウォール型、クラスタ型でもよい。
気相成長法で使用される反応ガス(ソースガス)の成分としては、例えばSiH4を採用することができる。また、キャリアガスの成分としては、水素を採用することができる。
【0024】
高エネルギ光としては、例えばランプ光、レーザ光などを採用することができる。高エネルギ光の照射エネルギは、装置仕様により大きく変わるものの、可能な限りエネルギの高いものの方が処理時間の短縮が図れて好ましい。例えば、レーザ光の照射エネルギ密度は0.1〜20J/cm2である。0.1J/cm2未満では、溶融時間が長くなりすぎて生産性が低下する。また、20J/cm2を超えれば、生産性は高まるが装置コストの問題が生じる。高エネルギ光の好ましい照射エネルギは、0.5〜5J/cm2である。この範囲であれば、市販のレーザ装置を使用することができる。
また、レーザ種はエキシマレーザ、固体レーザ、半導体レーザなどシリコン内部に侵入できる波長のレーザが適用される。また、2種類以上の波長のレーザ光をシリコン表面から照射してもよい。
【0025】
なお、レーザ照射方法としては、以下のものが好ましい。すなわち、まず平面視して窓部の形成領域(面積)より小さなビームまでレーザ光を集光させ、その後、このレーザ光を窓部の中央部付近から照射し、窓部内に堆積されたアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜(堆積物)の支持基板用ウェーハ側まで十分加熱する。次に、レーザ光を走査し、最終的に活性層とアモルファスシリコン膜の界面付近にレーザ光を照射するという方法である。その理由は、窓部の形成壁付近からレーザ光の照射を開始し、引き続いてレーザ光を横方向(窓部の開口面方向)へ走査すれば、前記堆積物に対して活性層用ウェーハ側からの単結晶成長も同時に発生し、横方向と縦方向(窓部の深さ方向)という2方向から同時に単結晶化するためである。この2方向からの単結晶化が発生すれば、実質的に支持基板用ウェーハからの縦方向の成長が阻害される。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記固相エピタキシーを伴う熱処理工程では、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、非ドーパントを5×1014〜1×1017atoms/cm2のドーズ量で、前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜に対して、前記支持基板用ウェーハとの界面までもしくは該界面を通過して前記支持基板用ウェーハに達する領域までイオン注入する請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、固相エピタキシーを伴う熱処理工程において、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、支持基板用ウェーハとの界面までまたはこの界面を通過して支持基板用ウェーハに達する領域まで、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜に非ドーパントをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜のアモルファス化の促進が図れる。その結果、良好な単結晶シリコンが得られる。
【0028】
非ドーパントとしては、例えばシリコンまたはアルゴンを採用することができる。非ドーパントのイオン注入量が5×1014atoms/cm2未満では、イオンドーズ量が少なく、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜のアモルファス化の促進が図れない。また、1×1017atoms/cm2を超えれば、イオン注入時間が長くなり、生産性が低下する。好ましいイオン注入量は、5×1015〜5×1016atoms/cm2である。この範囲であれば、生産性低下を抑制可能で、かつアモルファス化の促進を確実に実現することができる。
非ドーパントのイオン注入エネルギは、活性層用ウェーハの厚みに依存するものの、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの界面を通過し、支持基板用ウェーハの界面近傍をもアモルファス化されるように設定してもよい。
【0029】
請求項3に記載の発明は、前記熱処理工程後、前記孔部内で単結晶化した前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項1または請求項2に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で単結晶化(固化)したアモルファスシリコン膜の表面または多結晶シリコン膜の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0031】
活性層用ウェーハなどの表面の研磨量は、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜の高さ(孔部の深さ)より少なくするのは当然であるが、研磨による平坦度劣化を防ぐため、できるだけ研磨量は少なくした方が好ましい。すなわち、研磨代は固化後のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜の表面(露出面)の凹凸欠陥を除去できるだけの量があればよい。例えば、活性層の厚みに依存するものの5〜500nmである。5nm未満では、現状のCMP(Crystal Originated Particle)装置では表面を均一に研磨するのが困難で、逆に平坦度を劣化させる可能性がある。
【0032】
請求項4に記載の発明は、単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、前記活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、前記活性層用ウェーハの前記支持基板用ウェーハとの界面まで、または該界面を通過して前記支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させて、アモルファスシリコン層とするアモルファス化工程と、前記イオン注入後、前記アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン層を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハとの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させ、アモルファスシリコン層とする(アモルファス化工程)。すなわち、イオン注入された部分のシリコンの単結晶構造が崩れ、この部分がアモルファスシリコンとなる。イオン注入後、アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、アモルファスシリコン層を、表面が支持基板用ウェーハと同じ第1の結晶面の単結晶シリコンに改質する(熱処理工程)。
【0034】
ここでいう「イオン注入」とは、イオン注入装置によるシリコン、ゲルマニウム、またはアルゴンのようなシリコンウェーハに対する非ドーパントのイオン注入を採用することができる。その他、イオンドーピング装置によるイオン注入でもよい。イオンドーピングとは、イオン生成室で生成されたイオン種を質量分離せず、例えば、シリコンウェーハの表面に高速で注入する技術である。
シリコン単結晶にドーパントをイオン注入することで、層状に整列したシリコンの単結晶が無秩序に崩れ、非晶質となる。
【0035】
非ドーパントのイオン注入量は、5×1014〜1×1017atoms/cm2である。5×1014atoms/cm2未満では、イオンドーズ量が少なくて、窓部内の単結晶シリコンのアモルファス化の促進が図れない。また、1×1017atoms/cm2を超えれば、イオン注入時間が長くなり生産性が低下する。好ましいイオン注入量は、1×1015〜5×1016atoms/cm2である。この範囲であれば、生産性低下を抑制しながら、アモルファスシリコン層を確実に形成することができる。
ドーパントのイオン注入エネルギは、活性層用ウェーハの厚みに依存するものの、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせ界面、あるいはこの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面近傍をもアモルファス化できるように設定することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、前記アモルファス化工程では、非ドーパントがイオン注入される請求項4に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0037】
請求項5に記載の発明によれば、アモルファス化工程において、非ドーパントをイオン注入するので、アモルファス化領域(アモルファス化される領域)の単結晶後の比抵抗が低下することはなく、かつシリコン単結晶より低温でアモルファスシリコン層を溶融・加熱することができる。そのため、レーザ照射装置の出力を高める必要がなく、装置コストを低下することができる。
【0038】
請求項6に記載の発明は、前記高エネルギ光がレーザ光またはランプ光である請求項1〜請求項5のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0039】
特に、支持基板用ウェーハの一部(界面付近)まで到達するアモルファスシリコン層をレーザ光により加熱する場合には、レーザ光の焦点を絞り込むことで、アモルファスシリコン層の支持基板用ウェーハ側の領域を先ず優先的に溶融させる。これにより、支持基板用ウェーハの結晶性を効率よく引き継ぐことが可能である。また、レーザスキャン速度を任意に変更すれば、アモルファスシリコン層の固化速度などを変更可能で、製品化された貼り合わせウェーハの品質を改善することができる。
【0040】
レーザ光としては、例えば、エキシマレーザやYAGレーザの第3高調波(波長355nm)のパルスレーザ光、Nd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:ガラスファイバレーザ、Nd:YV04レーザ、Yb:YAGレーザなどの第2高調波、第3高調波、第4高調波や固体レーザなど、アモルファスシリコン層の深さ(厚さ)に対応したレーザ波長を採用すればよい。また、レーザ光はパルス照射でも連続照射の何れでもよく、レーザ光の照射エネルギ、レーザ光の照射パルス数、レーザ光のパルス幅は、レーザ光の種類に応じてそれぞれ選択される。
【0041】
請求項7に記載の発明は、前記熱処理工程後、前記単結晶化した前記アモルファスシリコン層を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で単結晶化したアモルファスシリコン層を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で単結晶化(固化)したアモルファスシリコン層の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
請求項1に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの一部に孔部を形成し、その後、この孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる。次に、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、表面が支持基板用ウェーハと同じ素材、同じ結晶面および同じ結晶方位の単結晶シリコンに改質することができる。
【0044】
特に、請求項2に記載の発明によれば、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜に非ドーパントをイオン注入するので、シリコン単結晶の溶融に必要な高いレーザ出力は不要で、レーザアニール装置のコスト低減が図れ、良好な単結晶シリコンを得やすい。
【0045】
請求項3に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜の表面または多結晶シリコン膜の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0046】
請求項4に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハとの界面までまたはこの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させる。これにより、活性層用ウェーハに孔部をエッチングし、その後、孔部にアモルファスシリコン層を堆積させる場合に比べて、工程数が削減できるので低コスト化が可能になる。
【0047】
請求項5に記載の発明によれば、アモルファス化工程において、非ドーパントをイオン注入するので、単結晶化されたアモルファスシリコン層の比抵抗が低下せず、かつシリコン単結晶より低温でアモルファスシリコン層を溶融・加熱することができ、これにより低エネルギのレーザ光でも良好な単結晶を得ることが可能になる。
【0048】
請求項7に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン層を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で固化したアモルファスシリコン層の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法において使用される支持基板用ウェーハの要部拡大断面図である。
【図1b】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法において使用される活性層用ウェーハの要部拡大断面図である。
【図1c】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における活性層用ウェーハの表層への水素イオン注入工程を示す要部拡大断面図である。
【図1d】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとの貼り合わせ工程を示す要部拡大断面図である。
【図1e】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法におけるスマートカット法に準じた活性層形成工程を示す要部拡大断面図である。
【図1f】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜形成工程および窓部形成工程を示す要部拡大断面図である。
【図1g】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における開孔工程を示す要部拡大断面図である。
【図1h】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における堆積工程を示す要部拡大断面図である。
【図1i】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜除去工程を示す要部拡大断面図である。
【図1j】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【図1k】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における研磨工程を示す要部拡大断面図である。
【図2a】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における貼り合わせウェーハの活性層側への非ドーパントのイオン注入工程を示す要部拡大断面図である。
【図2b】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜除去工程を示す要部拡大断面図である。
【図2c】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【図2d】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における別の熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0051】
この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法を説明する。
まず、単結晶シリコンからなり、表面が{100}面の支持基板用ウェーハ10と、単結晶シリコンからなり、表面が{110}面の活性層用ウェーハ20とを貼り合わせた張り合わせ基板30を用意する(図1a,図1b)。
【0052】
この支持基板用ウェーハ10の具体的な製造方法は、以下の通りである。
{100}面の種結晶を使用し、チョクラルスキー法により直径200mm、初期酸素濃度1.0×1018atoms/cm3のシリコン単結晶インゴットを引き上げる。その際、ドーパントとしてボロンを、シリコン単結晶インゴットの比抵抗が10Ω・cmとなるまで添加する。得られたシリコン単結晶インゴットには、ブロック切断、外径研削、スライス、面取り、ラッピング、エッチングおよび研磨の各工程が順次施される。これにより、厚さ725μm、{100}面の単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ(シリコンウェーハ)10が作製される(図1a)。
【0053】
また、活性層用ウェーハ20の具体的な製造方法は、以下の通りである。
{110}面の種結晶を使用し、チョクラルスキー法により直径200mm、初期酸素濃度1.0×1018atoms/cm3のシリコン単結晶インゴットを引き上げる。その際、ドーパントとしてボロンを、シリコン単結晶インゴットの比抵抗が10Ω・cmとなるまで添加する。得られたシリコン単結晶インゴットには、ブロック切断、外径研削、スライス、面取り、ラッピング、エッチングおよび研磨の各工程が順次施される。これにより、厚さ725μm、{110}面の単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハ20が作製される(図1b)。活性層用ウェーハ20は、単結晶シリコンではなく、シリコンとは異種単結晶となるシリコンカーバイドやガリウムナイトライドを採用してもよい。
【0054】
次に、前記貼り合わせ基板30の製造方法を詳しく説明する。
活性層用ウェーハ20に対して、そのウェーハ表面から、ドーズ量1×1016atoms/cm2で水素をイオン注入し、ウェーハ表層にイオン注入領域部21を形成する(図1c)。その後、支持基板用ウェーハ10と活性層用ウェーハ20とをSC−1(Standard Cleaning 1)洗浄し、表面上に付着したパーティクルを除去後、さらに希フッ酸水溶液を使用して両ウェーハ10,20の表面の自然酸化膜を除去する。
そして、クリーンルームまたは貼り合わせ装置の室温下で、支持基板用ウェーハ10と活性層用ウェーハ20とを重ね合わせ、貼り合わせ基板30とする(図1d)。活性層用ウェーハ20の貼り合わせ面は、水素のイオン注入側の面である。次に、貼り合わせ基板30を500℃前後で熱処理し、前記イオン注入領域部21から活性層用ウェーハ20の一部を剥離し、この剥離後に残った活性層用ウェーハ20の部分を活性層20Aとする(Smart Cut法、図1e)。その後、貼り合わせ強度を増加させるため、1100℃程度、1時間程の熱処理を施してもよい。それから、活性層20Aを外周研削および外周研磨し、その後、CMPにより活性層20Aを表面研磨することで、活性層20Aの厚みを200nmとする。
【0055】
次に、研磨後の貼り合わせ基板30に、シリコン酸化膜(保護膜)14を形成する(保護膜形成工程、図1f)。具体的には、貼り合わせ基板30をCVD炉に投入し、シリコン酸化膜14を堆積させる。シリコン酸化膜14の厚さは400nm程度である。
そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、貼り合わせ基板30の活性層20A側のシリコン酸化膜14に、所定ピッチで多数の窓部14aを形成する(窓部形成工程、同じく図1f)。具体的には、まず活性層20A側のシリコン酸化膜14にレジストを塗布する。次に、露光、現像することで、レジストに所定ピッチで多数の開口部を形成する。続いて、所定濃度のHF溶液(室温)により、各開口部を介して前記各窓部14aを形成する。
【0056】
次に、各窓部14aを通して、活性層20Aの一部をエッチングし、支持基板用ウェーハ10まで達する深さ200nm以上の孔部15を多数形成する(開孔工程、図1g)。具体的には、まず各窓部14aを通して、TMAH溶液、液温75℃を使用し、活性層20Aの一部を溶失させる。
図示しないが、例えば熱処理炉内に貼り合わせ基板30を挿入し、ここで900℃、30分の熱処理条件で酸化熱処理を行い、窓部14aの領域内に数nm〜数十nmの酸化膜を形成し、その後、スパッタリング装置などで窓部14aの底部分内の酸化膜を除去してもよい。
【0057】
次に、各孔部15内にアモルファスシリコン膜16を堆積させ、各孔部15を埋める(堆積工程、図1h)。
具体的には、200〜400℃に設定された炉内に貼り合わせ基板30を投入し、水素ガスをベースにして、シランガス、必要に応じてジボロランガスを導入し、貼り合わせ基板30の活性層20A側の面に、アモルファスシリコンを約0.25μm堆積し、アモルファスシリコン膜16とする。このとき、アモルファスシリコンはシリコン酸化膜の表面にも堆積する。
なお、アモルファスシリコン膜16に代えて、多結晶シリコン膜を堆積させてもよい。多結晶シリコン膜の堆積方法としては、例えばCVD装置に温度500℃〜750℃程度の温度域で、減圧化によりモノシランガスを導入し、多結晶シリコンを堆積し、多結晶シリコン膜とする方法などを採用することができる。
【0058】
また、必要に応じて、アモルファスシリコンの堆積時に、ドーパントガスを炉内へ供給し、アモルファスシリコン膜16に所定濃度のドーパント(リン、ボロンなど)を添加してもよい。またはドーパントを添加するのではなく、堆積工程後から熱処理工程までの間に、アモルファスシリコン膜16の内部に、その表面からドーパントをイオン注入してもよい。
【0059】
この場合には、以下のイオン注入工程が行われる。
まず、アモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置の炉内に挿入し、40keVの加速電圧で所定濃度となるようにドーパントをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜16の表面から深さ150nm付近の位置に注入ピーク領域を有したイオン注入領域部が形成される。ドーパントのイオン注入を採用した場合、熱処理工程において、アモルファスシリコン膜16の全域にドーパントが均一に拡散される。
【0060】
また、例えばアモルファスシリコン膜16にシリコン(非ドーパント)をイオン注入し、アモルファスシリコン膜16のアモルファス化を促進させてもよい。具体的なイオン注入条件は、貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置内に挿入し、200keV以上の加速電圧で所定濃度となるように、アモルファスシリコン膜16にシリコンをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜16の膜中および支持基板用ウェーハ10との界面を超えた深さまでシリコンがイオン注入され、支持基板用ウェーハ10のアモルファスシリコン膜16との界面付近もアモルファス化される。
【0061】
次に、こうしてアモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30の表面を、化学的機械的研磨(CMP)によりシリコン酸化膜14が露出するまで研磨する。その後、HFが5重量%のHF洗浄液(室温)に10分間浸漬し、シリコン表面に成長させたシリコン酸化膜14を除去する(図1i)。
次いで、アモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30を、炉内がヘリウムガス雰囲気に保たれたレーザアニール炉(パルス方式)に挿入する。ここで、YAGレーザ光を、アモルファスシリコン膜16の表面の中央部付近に照射し、アモルファスシリコン膜16直下の支持基板用ウェーハ10との界面付近までを溶融させる(熱処理工程、図1j)。エキシマレーザ光の照射条件は、波長248nm、エネルギ密度2.5J/cm2、パルス幅270nsである。
【0062】
孔部15内には、単結晶シリコンに比べて融点が低いアモルファスシリコン膜16が堆積されている。そのため、レーザアニール炉を使用し、単結晶シリコンは溶融しないがアモルファスシリコンは溶融する液相エピタキシーの熱処理条件(例えば1350℃)で、活性層20Aの表面全域にレーザ光を走査して照射すれば、活性層20Aの単結晶シリコンが融点に達する前に、アモルファスシリコン膜16が溶融する。
【0063】
その後、溶融したアモルファスシリコン膜16を冷却し、固化する。これにより、溶融された固液界面(支持基板用ウェーハ10の表面)において、支持基板用ウェーハ10の固体領域の結晶性({100}面)を引き継ぎ、アモルファスシリコン膜16が支持基板用ウェーハ10と同じ{100}面の単結晶シリコン16Aに変質する(同じく図1j)。その結果、{110}面である活性層20Aの表面に、{110}面とは結晶面が異なる{100}面の領域を、簡単に多数形成することができる。また、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の一部も溶融させるので、より結晶性の優れた単結晶ができる。
なお、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の面(第1の結晶面)と、活性層20Aの表面(第2の結晶面)とを、同じ{100}面としてもよい。その場合、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の面は(100)面であり、活性層20Aの表面は結晶方位をずらして貼り合わせる(例えば45°)。これにより、活性層20Aの表面を、総称では同じ結晶面だが、単独の結晶面としては2つの異なる結晶面からなる複合結晶面とすることができる。
【0064】
また、熱処理工程は、レーザ光加熱の代わりにハロゲンランプを熱源に利用したランプ光加熱(RTA:急速加熱・急速降温熱処理)や、キセノンランプを熱光源としたフラッシュランプアニール炉を採用してもよい。具体的には、まず貼り合わせ基板30をフラッシュランプ炉に挿入し、その炉内において、室温から液相エピタキシーが可能な設定温度(1150℃以上1412℃未満)まで昇温し、それからこの設定温度に数ミリ秒保持した後、降温する熱処理である。
【0065】
次に、貼り合わせ基板30を、その活性層20A側を下に向け、キャリアプレートを介して、枚葉式の研磨装置の研磨ヘッドの下面に貼着し、ウェーハ表層を例えば研磨量0.05μm程度で化学的機械的研磨する(図1k)。これにより、表面が加工研磨された貼り合わせウェーハ40が作製される。
また、熱処理工程後、孔部15内で固化したアモルファスシリコン膜16を含む活性層20Aの表面を研磨するので、仮に孔部15内で固化したアモルファスシリコン膜16の表面に微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0066】
次に、図2のフローシートを参照して、この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法を説明する。
この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法の特徴は、シリコン酸化膜14の窓部14aを通して、活性層20Aおよびこれを通過して支持基板用ウェーハ10の界面付近までの領域にシリコンをイオン注入し(図2a)、この領域をアモルファス化してアモルファスシリコン層16Bとする(図2b)。具体的なイオン注入条件は、貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置内に挿入し、例えば、200keV以上の加速電圧でドーズ量が5×1015atoms/cm2となるように、アモルファスシリコン膜16にシリコンをイオン注入する。
【0067】
次いで、アモルファスシリコン層16Bが形成された貼り合わせ基板30を、HFが5重量%のHF洗浄液(室温)に10分間浸漬し、活性層20Aの表面に成長させたシリコン酸化膜14を除去する。
その後、貼り合わせ基板30を、炉内がヘリウムガス雰囲気に保たれたレーザアニール炉(パルス方式)に挿入する。ここで、YAGレーザ光を、アモルファスシリコン層16Bの表面の中央部付近に照射し、アモルファスシリコン層16Bのみを溶融させる(熱処理工程、図2c)。エキシマレーザ光の照射条件は、波長248nm、エネルギ密度2.5J/cm2、パルス幅270nsである。
【0068】
このように、単結晶シリコンは溶融しないがアモルファスシリコンは溶融する液相エピタキシーの熱処理条件(1350℃)で、活性層20Aの表面全域にレーザ光を走査して照射することで、活性層20Aの単結晶シリコンが融点に達する前に、アモルファスシリコン層16Bが溶融する。その後、これを冷却し、固化することで、溶融された固液界面において、支持基板用ウェーハ10の固体領域の結晶性を引き継いだ単結晶シリコン16Aが形成される。これにより、{110}面である活性層20Aの表面に、{110}面とは結晶面が異なる{100}面の領域を、簡単に多数形成することができる。しかも、このような方法を採用したので、実施例1のように窓部14aを通して活性層用ウェーハ10に孔部15をエッチングし、その後、孔部15にアモルファスシリコン膜16を堆積させる場合に比べて、工程数が削減できるので低コスト化が可能になる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な程度であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0069】
10 支持基板用ウェーハ、
10A 単結晶シリコン、
14 保護膜、
14a 窓部、
15 孔部、
16 アモルファスシリコン膜、
16B アモルファスシリコン層、
20 活性層用ウェーハ、
30 貼り合わせ基板。
【技術分野】
【0001】
この発明は貼り合わせウェーハの製造方法、詳しくは活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを、素材(単結晶)と結晶面と結晶方位とのうち、少なくとも1つを異ならせて貼り合わせたウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide
Semiconductor Field Effect Transistor)によって構成されたLSI(Large Scale Integrated circuit)の基板には、一般に(100)面のシリコンウェーハが使用されている。
【0003】
シリコンウェーハにおいては、MOSFETのキャリアのうち、電子は(100)面ウェーハの結晶方位<110>方向で高い移動度を示す一方、正孔は(110)面ウェーハの結晶方位<110>方向で高い移動度を示す。そこで、結晶面が異なるウェーハを貼り合わせたHOT(Hybrid Orientation Technology)基板が開発されている。HOT基板では、支持基板の表面に異なる結晶面の領域(ウェーハ片)が存在する。具体的には、(100)面の領域上にnMOSFETが形成され、(110)面の領域上にpMOSFETが形成されることで、高性能で高集積化されたLSIが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、nMOSFETおよびpMOSFETは、例えば、チャネル方向を互いに直交させた2種類の方向を混在させてレイアウトした方が、半導体装置の省スペース化が図れて好ましい。そのため、従来のHOT基板では、それぞれ所定サイズの(110)面のウェーハ片と(110)面のウェーハ片とを、支持基板の表面の予め設定された位置に、nMOSFETおよびpMOSFETの各チャネル方向を考慮し、正確に位置合わせして貼り合わせる必要があった。
また、ウェーハ表面上に部分的に窓部を形成し、窓部を通してエッチングされた孔部にシリコンをエピタキシャル成長させる方法が開発されている。しかしながら、狭面積の孔部に均一なエピタキシャル膜を成長させるには、減圧下での低温加熱という困難な条件での成膜が必要となる。そのため、良質なエピタキシャル膜を形成することは困難であった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを、素材(単結晶)と結晶面と結晶方位とのうち、少なくとも1つを異ならせて貼り合わせた貼り合わせ基板において、活性層用ウェーハの表面の一部に支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成し、この孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積後、この貼り合わせ基板を熱処理して堆積物を単結晶化すれば、活性層用ウェーハの表面の一部に、素材、結晶面、結晶方位のうち、少なくとも1つが異なる異種領域を簡単に形成できることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
なお、孔部内のアモルファスシリコン、および支持基板用ウェーハのアモルファスシリコンとの界面付近に非ドーパント、例えばシリコンやアルゴンなどをドーズ量5×1014〜1×1017atoms/cm2でイオン注入すれば、アモルファス化が促進され、熱処理による結晶回復を速めることも可能である。すなわち、アモルファスシリコンは単結晶シリコンと比較して特定波長領域で光吸収係数が1桁以上程高いため、高エネルギ光、例えばレーザ光を特定領域に照射加熱することで、周りの単結晶は維持したまま、アモルファス領域のみを容易に結晶改質することが可能となる。これにより、上述の問題は解消することを知見した。
この発明は、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハに起因した素材、結晶面、結晶方位のうち、少なくとも1つが異なる異種領域を簡単に形成することができる貼り合わせウェーハの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、前記異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて前記第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、前記活性層用ウェーハの一部をエッチングし、前記支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する開孔工程と、前記孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる堆積工程と、該堆積工程後、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの一部をエッチングし、支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する。その後、孔部にアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを、例えばCVD(化学的気相成長)法などの薄膜成長法により堆積させ、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜とする。
【0010】
次に、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハと同じ結晶面、結晶方位の単結晶シリコンに改質する。このとき、活性層用ウェーハの素材には、アモルファスシリコンの溶融温度以上の融点を有するものを採用している。例えば、活性層用ウェーハの素材に、融点が1412℃の単結晶シリコンなどを用いる。単結晶シリコンに比べて、アモルファスシリコンや多結晶シリコンは融点が低い。特に、アモルファスシリコンの場合は融点が1150℃前後で、単結晶シリコンより約260℃も低い。そこで、貼り合わせ基板を例えばレーザアニール炉内に挿入し、1150℃以上1412℃未満の温度で熱処理すれば、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が支持基板用ウェーハと同じ結晶性(結晶面および結晶方位など)の単結晶シリコンに変質する(液相エピタキシー;Liquid Phase Epitaxy)。
【0011】
また、光吸収係数に関しても、アモルファスシリコンと多結晶シリコン、特にアモルファスシリコンは、単結晶シリコンと比較して特定波長領域では光吸収係数が1桁以上高いと言われている。そのため、光加熱式のアニール炉を使用し、貼り合わせ基板を1150℃以上1412℃未満の温度で熱処理すれば、活性層用ウェーハの素材が融点に達する前に、アモルファスシリコン膜が溶融する。その後、これを冷却、固化することで、単結晶シリコン膜が形成される。
これは、孔部内の光加熱により溶融したアモルファスシリコン膜(または多結晶シリコン膜)が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面(固液界面)を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶性を引き継いで単結晶化するためである。これにより、貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面の一部に、支持基板用ウェーハと同じ結晶性の領域を簡単に形成することができる。
【0012】
次に、アモルファスシリコン膜に対する溶融を伴わない固相エピタキシー(Solid Phase Epitaxy)の場合について説明する。活性層用ウェーハの素材には、融点が1412℃の単結晶シリコンなどを用い、貼り合わせ基板に対してアモルファスシリコンの融点を若干下回る温度(例えば1100℃)のレーザ照射を行う。これにより、アモルファスシリコン膜が、溶融することなく、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、支持基板用ウェーハの結晶性(結晶面および結晶方位など)を引き継いで単結晶化される。その後、これを冷却、固化することで、単結晶シリコン膜が形成される。
【0013】
加熱方法は、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を溶融する条件での加熱としてもよい。このとき、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶面を含む結晶性を引き継いで単結晶化する(液相エピタキシー)。
一方、固相エピタキシーの場合には、アモルファスシリコン膜を溶融させず、溶融温度付近までの例えばレーザ照射光により加熱させる。これにより、アモルファスシリコン膜が、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの貼り合わせ面を基準とし、固体領域である支持基板用ウェーハの結晶面を含む結晶性を引き継いで単結晶化する。特に、イオン注入など用いてアモルファス膜や多結晶シリコン膜および支持基板界面を通過した領域までアモルファス化させれば、レーザ照射後に良好な単結晶を得ることができる。
【0014】
支持基板用ウェーハの素材は、単結晶シリコンである。
活性層用ウェーハの素材としては、単結晶シリコンまたは異種単結晶を採用することができる。ここでの異種単結晶とは、融点が単結晶シリコンの融点以上で、かつ単結晶シリコンと異なる半導体素材の単結晶をいう。この半導体素材としては、例えば炭化珪素(SiC)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムガリウム砒素(InGaAs)、ガリウムナイトライド(GaN)、サファイアなどを採用することができる。活性層用ウェーハの素材に、シリコンとは異なる半導体素材を採用した場合には、熱処理工程において、ヘテロエピタキシーを伴うアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンの単結晶シリコンへの変質が行われる。
【0015】
第1の結晶面および第2の結晶面としては、例えば(100)面、(110)面、(111)面、(211)面、(511)面などを採用することができる。ただし、第1の結晶面と第2の結晶面とは、総称では同じ結晶面であってもよいが、単独の結晶面としては同一の結晶方位とならないように選択する必要がある。具体的には、第1の結晶面と第2の結晶面とが、総称では同じ{100}面であっても、第1の結晶面の結晶方位<110>に対して第2の結晶面の結晶方位<110>を45°ずらして貼り合わせを選択する必要がある。
【0016】
貼り合わせ基板としては、(1)単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面である支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせたもの、(2)単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面である支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が第1の結晶面であるが結晶方位は異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせたもの、(3)支持基板用ウェーハと、異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせたものの何れかを採用することができる。
【0017】
貼り合わせ基板の種類は任意である。例えば、(1)支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを直接貼り合わせた貼り合わせ基板、(2)支持基板用ウェーハに埋め込み酸化膜(埋め込み絶縁膜)を介して、活性層用ウェーハを貼り合わせた貼り合わせSOI基板でもよい。埋め込み酸化膜としては、例えばシリコン酸化膜、窒化シリコンなどを採用することができる。埋め込み酸化膜の厚さは、例えば0.01〜2.0μmである。
【0018】
貼り合わせ基板の形成後、活性層用ウェーハは減厚されて活性層となる。ただし、必ずしも減厚する必要はない。この減厚方法が採用される貼り合わせ基板としては、例えば、活性層用ウェーハの薄膜化に選択エッチングを採用したELTRAN方式のSOI基板、活性層用ウェーハの薄膜化に水素イオン剥離を採用したスマートカット方式のSOI基板、活性層用ウェーハの薄膜化に局所プラズマエッチングを採用したPACE方式のSOI基板を採用することができる。
【0019】
活性層用ウェーハの一部にエッチングにより孔部を形成する方法としては、例えば、まず貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの表面に保護膜を形成し(保護膜形成工程)、次に保護膜を部分的に除去する。その後、保護膜に活性層用ウェーハの一部を露出させる窓部を形成(窓部形成工程)し、それからこの窓部を通して、活性層用ウェーハの一部に孔部をエッチングする方法などを採用することができる。
この場合の保護膜としては、例えばシリコン酸化膜、窒化膜などを採用することができる。
保護膜の形成方法としては、例えば熱酸化膜、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、スパッタリング法、エピタキシャル成長法などを採用することができる。
【0020】
保護膜の除去は、例えば、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積する前に行うことができる。その他、堆積工程後から熱処理工程の前までの間や、熱処理工程後に保護膜を除去してもよい。
窓部の形成方法としては、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、保護膜を部分的に溶失させる方法を採用することができる。窓部形成用のエッチング液は、保護膜の素材に応じて適宜変更される。例えば、保護膜がシリコン酸化膜の場合には、HF溶液などを採用することができる。または、RIE(Reactive Ion Etching)によるドライエッチング法などを用いてもよい。
【0021】
開孔工程で使用される活性層用ウェーハ用のエッチング液は、活性層用ウェーハの素材に応じて適宜選択される。開孔工程でのエッチング方法としては、ドライエッチング法、ウェット法、スパッタリング法などを採用することができる。また、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ用のエッチング液としては、例えばウェットエッチング法ではTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)やHF:HNO3:CH3COOHの混酸液などを採用することができる。電子サイクロトロン共鳴(ECR)または反応性イオンエッチング(RIE)によるドライエッチング法では、SF6などをエッチャントに採用することができる。
孔部の深さは、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの界面に達する程度でもよいものの、その界面を超えて支持基板用ウェーハの内部まで達する程度が好ましい。
【0022】
熱処理工程では、支持基板用ウェーハ上で溶融したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜が、支持基板用ウェーハの単結晶シリコン構造に反映した液相エピタキシャル成長または固相エピタキシャル成長を行い、単結晶シリコンとなる。
また、液相エピタキシャル成長されたシリコン膜の比抵抗の調整は、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコン中に予めドーパントを規定量導入することで対応できる。
【0023】
ここでいう「堆積」とは、エピタキシャル成長を含むアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンの成長をいう。
アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを堆積させる方法としては、例えば気相成長法を採用すればよい。その他、スパッタリング法などでもよい。
気相成長法としては、例えば常圧気相成長法、減圧気相成長法、有機金属気相成長法等を採用することができる。
気相成長装置としては、貼り合わせ基板を1枚ずつ処理する枚葉型、複数枚の貼り合わせ基板を同時に処理可能なパンケーキ型、バレル型、ホットウォール型、クラスタ型でもよい。
気相成長法で使用される反応ガス(ソースガス)の成分としては、例えばSiH4を採用することができる。また、キャリアガスの成分としては、水素を採用することができる。
【0024】
高エネルギ光としては、例えばランプ光、レーザ光などを採用することができる。高エネルギ光の照射エネルギは、装置仕様により大きく変わるものの、可能な限りエネルギの高いものの方が処理時間の短縮が図れて好ましい。例えば、レーザ光の照射エネルギ密度は0.1〜20J/cm2である。0.1J/cm2未満では、溶融時間が長くなりすぎて生産性が低下する。また、20J/cm2を超えれば、生産性は高まるが装置コストの問題が生じる。高エネルギ光の好ましい照射エネルギは、0.5〜5J/cm2である。この範囲であれば、市販のレーザ装置を使用することができる。
また、レーザ種はエキシマレーザ、固体レーザ、半導体レーザなどシリコン内部に侵入できる波長のレーザが適用される。また、2種類以上の波長のレーザ光をシリコン表面から照射してもよい。
【0025】
なお、レーザ照射方法としては、以下のものが好ましい。すなわち、まず平面視して窓部の形成領域(面積)より小さなビームまでレーザ光を集光させ、その後、このレーザ光を窓部の中央部付近から照射し、窓部内に堆積されたアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜(堆積物)の支持基板用ウェーハ側まで十分加熱する。次に、レーザ光を走査し、最終的に活性層とアモルファスシリコン膜の界面付近にレーザ光を照射するという方法である。その理由は、窓部の形成壁付近からレーザ光の照射を開始し、引き続いてレーザ光を横方向(窓部の開口面方向)へ走査すれば、前記堆積物に対して活性層用ウェーハ側からの単結晶成長も同時に発生し、横方向と縦方向(窓部の深さ方向)という2方向から同時に単結晶化するためである。この2方向からの単結晶化が発生すれば、実質的に支持基板用ウェーハからの縦方向の成長が阻害される。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記固相エピタキシーを伴う熱処理工程では、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、非ドーパントを5×1014〜1×1017atoms/cm2のドーズ量で、前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜に対して、前記支持基板用ウェーハとの界面までもしくは該界面を通過して前記支持基板用ウェーハに達する領域までイオン注入する請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、固相エピタキシーを伴う熱処理工程において、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、支持基板用ウェーハとの界面までまたはこの界面を通過して支持基板用ウェーハに達する領域まで、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜に非ドーパントをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜のアモルファス化の促進が図れる。その結果、良好な単結晶シリコンが得られる。
【0028】
非ドーパントとしては、例えばシリコンまたはアルゴンを採用することができる。非ドーパントのイオン注入量が5×1014atoms/cm2未満では、イオンドーズ量が少なく、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜のアモルファス化の促進が図れない。また、1×1017atoms/cm2を超えれば、イオン注入時間が長くなり、生産性が低下する。好ましいイオン注入量は、5×1015〜5×1016atoms/cm2である。この範囲であれば、生産性低下を抑制可能で、かつアモルファス化の促進を確実に実現することができる。
非ドーパントのイオン注入エネルギは、活性層用ウェーハの厚みに依存するものの、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの界面を通過し、支持基板用ウェーハの界面近傍をもアモルファス化されるように設定してもよい。
【0029】
請求項3に記載の発明は、前記熱処理工程後、前記孔部内で単結晶化した前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項1または請求項2に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で単結晶化(固化)したアモルファスシリコン膜の表面または多結晶シリコン膜の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0031】
活性層用ウェーハなどの表面の研磨量は、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜の高さ(孔部の深さ)より少なくするのは当然であるが、研磨による平坦度劣化を防ぐため、できるだけ研磨量は少なくした方が好ましい。すなわち、研磨代は固化後のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜の表面(露出面)の凹凸欠陥を除去できるだけの量があればよい。例えば、活性層の厚みに依存するものの5〜500nmである。5nm未満では、現状のCMP(Crystal Originated Particle)装置では表面を均一に研磨するのが困難で、逆に平坦度を劣化させる可能性がある。
【0032】
請求項4に記載の発明は、単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、前記活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、前記活性層用ウェーハの前記支持基板用ウェーハとの界面まで、または該界面を通過して前記支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させて、アモルファスシリコン層とするアモルファス化工程と、前記イオン注入後、前記アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン層を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハとの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させ、アモルファスシリコン層とする(アモルファス化工程)。すなわち、イオン注入された部分のシリコンの単結晶構造が崩れ、この部分がアモルファスシリコンとなる。イオン注入後、アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、アモルファスシリコン層を、表面が支持基板用ウェーハと同じ第1の結晶面の単結晶シリコンに改質する(熱処理工程)。
【0034】
ここでいう「イオン注入」とは、イオン注入装置によるシリコン、ゲルマニウム、またはアルゴンのようなシリコンウェーハに対する非ドーパントのイオン注入を採用することができる。その他、イオンドーピング装置によるイオン注入でもよい。イオンドーピングとは、イオン生成室で生成されたイオン種を質量分離せず、例えば、シリコンウェーハの表面に高速で注入する技術である。
シリコン単結晶にドーパントをイオン注入することで、層状に整列したシリコンの単結晶が無秩序に崩れ、非晶質となる。
【0035】
非ドーパントのイオン注入量は、5×1014〜1×1017atoms/cm2である。5×1014atoms/cm2未満では、イオンドーズ量が少なくて、窓部内の単結晶シリコンのアモルファス化の促進が図れない。また、1×1017atoms/cm2を超えれば、イオン注入時間が長くなり生産性が低下する。好ましいイオン注入量は、1×1015〜5×1016atoms/cm2である。この範囲であれば、生産性低下を抑制しながら、アモルファスシリコン層を確実に形成することができる。
ドーパントのイオン注入エネルギは、活性層用ウェーハの厚みに依存するものの、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせ界面、あるいはこの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面近傍をもアモルファス化できるように設定することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、前記アモルファス化工程では、非ドーパントがイオン注入される請求項4に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0037】
請求項5に記載の発明によれば、アモルファス化工程において、非ドーパントをイオン注入するので、アモルファス化領域(アモルファス化される領域)の単結晶後の比抵抗が低下することはなく、かつシリコン単結晶より低温でアモルファスシリコン層を溶融・加熱することができる。そのため、レーザ照射装置の出力を高める必要がなく、装置コストを低下することができる。
【0038】
請求項6に記載の発明は、前記高エネルギ光がレーザ光またはランプ光である請求項1〜請求項5のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0039】
特に、支持基板用ウェーハの一部(界面付近)まで到達するアモルファスシリコン層をレーザ光により加熱する場合には、レーザ光の焦点を絞り込むことで、アモルファスシリコン層の支持基板用ウェーハ側の領域を先ず優先的に溶融させる。これにより、支持基板用ウェーハの結晶性を効率よく引き継ぐことが可能である。また、レーザスキャン速度を任意に変更すれば、アモルファスシリコン層の固化速度などを変更可能で、製品化された貼り合わせウェーハの品質を改善することができる。
【0040】
レーザ光としては、例えば、エキシマレーザやYAGレーザの第3高調波(波長355nm)のパルスレーザ光、Nd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:ガラスファイバレーザ、Nd:YV04レーザ、Yb:YAGレーザなどの第2高調波、第3高調波、第4高調波や固体レーザなど、アモルファスシリコン層の深さ(厚さ)に対応したレーザ波長を採用すればよい。また、レーザ光はパルス照射でも連続照射の何れでもよく、レーザ光の照射エネルギ、レーザ光の照射パルス数、レーザ光のパルス幅は、レーザ光の種類に応じてそれぞれ選択される。
【0041】
請求項7に記載の発明は、前記熱処理工程後、前記単結晶化した前記アモルファスシリコン層を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法である。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で単結晶化したアモルファスシリコン層を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で単結晶化(固化)したアモルファスシリコン層の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
請求項1に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの一部に孔部を形成し、その後、この孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる。次に、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件、または、溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、表面が支持基板用ウェーハと同じ素材、同じ結晶面および同じ結晶方位の単結晶シリコンに改質することができる。
【0044】
特に、請求項2に記載の発明によれば、孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜に非ドーパントをイオン注入するので、シリコン単結晶の溶融に必要な高いレーザ出力は不要で、レーザアニール装置のコスト低減が図れ、良好な単結晶シリコンを得やすい。
【0045】
請求項3に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で固化したアモルファスシリコン膜の表面または多結晶シリコン膜の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0046】
請求項4に記載の発明によれば、活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハとの界面までまたはこの界面を通過して支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させる。これにより、活性層用ウェーハに孔部をエッチングし、その後、孔部にアモルファスシリコン層を堆積させる場合に比べて、工程数が削減できるので低コスト化が可能になる。
【0047】
請求項5に記載の発明によれば、アモルファス化工程において、非ドーパントをイオン注入するので、単結晶化されたアモルファスシリコン層の比抵抗が低下せず、かつシリコン単結晶より低温でアモルファスシリコン層を溶融・加熱することができ、これにより低エネルギのレーザ光でも良好な単結晶を得ることが可能になる。
【0048】
請求項7に記載の発明によれば、熱処理工程後、孔部内で固化したアモルファスシリコン層を含む活性層用ウェーハの表面を研磨するので、仮に活性層用ウェーハの表面と、孔部内で固化したアモルファスシリコン層の表面とのうち、少なくとも1つに微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法において使用される支持基板用ウェーハの要部拡大断面図である。
【図1b】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法において使用される活性層用ウェーハの要部拡大断面図である。
【図1c】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における活性層用ウェーハの表層への水素イオン注入工程を示す要部拡大断面図である。
【図1d】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとの貼り合わせ工程を示す要部拡大断面図である。
【図1e】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法におけるスマートカット法に準じた活性層形成工程を示す要部拡大断面図である。
【図1f】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜形成工程および窓部形成工程を示す要部拡大断面図である。
【図1g】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における開孔工程を示す要部拡大断面図である。
【図1h】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における堆積工程を示す要部拡大断面図である。
【図1i】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜除去工程を示す要部拡大断面図である。
【図1j】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【図1k】この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法における研磨工程を示す要部拡大断面図である。
【図2a】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における貼り合わせウェーハの活性層側への非ドーパントのイオン注入工程を示す要部拡大断面図である。
【図2b】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における保護膜除去工程を示す要部拡大断面図である。
【図2c】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【図2d】この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法における別の熱処理工程を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0051】
この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法を説明する。
まず、単結晶シリコンからなり、表面が{100}面の支持基板用ウェーハ10と、単結晶シリコンからなり、表面が{110}面の活性層用ウェーハ20とを貼り合わせた張り合わせ基板30を用意する(図1a,図1b)。
【0052】
この支持基板用ウェーハ10の具体的な製造方法は、以下の通りである。
{100}面の種結晶を使用し、チョクラルスキー法により直径200mm、初期酸素濃度1.0×1018atoms/cm3のシリコン単結晶インゴットを引き上げる。その際、ドーパントとしてボロンを、シリコン単結晶インゴットの比抵抗が10Ω・cmとなるまで添加する。得られたシリコン単結晶インゴットには、ブロック切断、外径研削、スライス、面取り、ラッピング、エッチングおよび研磨の各工程が順次施される。これにより、厚さ725μm、{100}面の単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ(シリコンウェーハ)10が作製される(図1a)。
【0053】
また、活性層用ウェーハ20の具体的な製造方法は、以下の通りである。
{110}面の種結晶を使用し、チョクラルスキー法により直径200mm、初期酸素濃度1.0×1018atoms/cm3のシリコン単結晶インゴットを引き上げる。その際、ドーパントとしてボロンを、シリコン単結晶インゴットの比抵抗が10Ω・cmとなるまで添加する。得られたシリコン単結晶インゴットには、ブロック切断、外径研削、スライス、面取り、ラッピング、エッチングおよび研磨の各工程が順次施される。これにより、厚さ725μm、{110}面の単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハ20が作製される(図1b)。活性層用ウェーハ20は、単結晶シリコンではなく、シリコンとは異種単結晶となるシリコンカーバイドやガリウムナイトライドを採用してもよい。
【0054】
次に、前記貼り合わせ基板30の製造方法を詳しく説明する。
活性層用ウェーハ20に対して、そのウェーハ表面から、ドーズ量1×1016atoms/cm2で水素をイオン注入し、ウェーハ表層にイオン注入領域部21を形成する(図1c)。その後、支持基板用ウェーハ10と活性層用ウェーハ20とをSC−1(Standard Cleaning 1)洗浄し、表面上に付着したパーティクルを除去後、さらに希フッ酸水溶液を使用して両ウェーハ10,20の表面の自然酸化膜を除去する。
そして、クリーンルームまたは貼り合わせ装置の室温下で、支持基板用ウェーハ10と活性層用ウェーハ20とを重ね合わせ、貼り合わせ基板30とする(図1d)。活性層用ウェーハ20の貼り合わせ面は、水素のイオン注入側の面である。次に、貼り合わせ基板30を500℃前後で熱処理し、前記イオン注入領域部21から活性層用ウェーハ20の一部を剥離し、この剥離後に残った活性層用ウェーハ20の部分を活性層20Aとする(Smart Cut法、図1e)。その後、貼り合わせ強度を増加させるため、1100℃程度、1時間程の熱処理を施してもよい。それから、活性層20Aを外周研削および外周研磨し、その後、CMPにより活性層20Aを表面研磨することで、活性層20Aの厚みを200nmとする。
【0055】
次に、研磨後の貼り合わせ基板30に、シリコン酸化膜(保護膜)14を形成する(保護膜形成工程、図1f)。具体的には、貼り合わせ基板30をCVD炉に投入し、シリコン酸化膜14を堆積させる。シリコン酸化膜14の厚さは400nm程度である。
そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、貼り合わせ基板30の活性層20A側のシリコン酸化膜14に、所定ピッチで多数の窓部14aを形成する(窓部形成工程、同じく図1f)。具体的には、まず活性層20A側のシリコン酸化膜14にレジストを塗布する。次に、露光、現像することで、レジストに所定ピッチで多数の開口部を形成する。続いて、所定濃度のHF溶液(室温)により、各開口部を介して前記各窓部14aを形成する。
【0056】
次に、各窓部14aを通して、活性層20Aの一部をエッチングし、支持基板用ウェーハ10まで達する深さ200nm以上の孔部15を多数形成する(開孔工程、図1g)。具体的には、まず各窓部14aを通して、TMAH溶液、液温75℃を使用し、活性層20Aの一部を溶失させる。
図示しないが、例えば熱処理炉内に貼り合わせ基板30を挿入し、ここで900℃、30分の熱処理条件で酸化熱処理を行い、窓部14aの領域内に数nm〜数十nmの酸化膜を形成し、その後、スパッタリング装置などで窓部14aの底部分内の酸化膜を除去してもよい。
【0057】
次に、各孔部15内にアモルファスシリコン膜16を堆積させ、各孔部15を埋める(堆積工程、図1h)。
具体的には、200〜400℃に設定された炉内に貼り合わせ基板30を投入し、水素ガスをベースにして、シランガス、必要に応じてジボロランガスを導入し、貼り合わせ基板30の活性層20A側の面に、アモルファスシリコンを約0.25μm堆積し、アモルファスシリコン膜16とする。このとき、アモルファスシリコンはシリコン酸化膜の表面にも堆積する。
なお、アモルファスシリコン膜16に代えて、多結晶シリコン膜を堆積させてもよい。多結晶シリコン膜の堆積方法としては、例えばCVD装置に温度500℃〜750℃程度の温度域で、減圧化によりモノシランガスを導入し、多結晶シリコンを堆積し、多結晶シリコン膜とする方法などを採用することができる。
【0058】
また、必要に応じて、アモルファスシリコンの堆積時に、ドーパントガスを炉内へ供給し、アモルファスシリコン膜16に所定濃度のドーパント(リン、ボロンなど)を添加してもよい。またはドーパントを添加するのではなく、堆積工程後から熱処理工程までの間に、アモルファスシリコン膜16の内部に、その表面からドーパントをイオン注入してもよい。
【0059】
この場合には、以下のイオン注入工程が行われる。
まず、アモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置の炉内に挿入し、40keVの加速電圧で所定濃度となるようにドーパントをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜16の表面から深さ150nm付近の位置に注入ピーク領域を有したイオン注入領域部が形成される。ドーパントのイオン注入を採用した場合、熱処理工程において、アモルファスシリコン膜16の全域にドーパントが均一に拡散される。
【0060】
また、例えばアモルファスシリコン膜16にシリコン(非ドーパント)をイオン注入し、アモルファスシリコン膜16のアモルファス化を促進させてもよい。具体的なイオン注入条件は、貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置内に挿入し、200keV以上の加速電圧で所定濃度となるように、アモルファスシリコン膜16にシリコンをイオン注入する。これにより、アモルファスシリコン膜16の膜中および支持基板用ウェーハ10との界面を超えた深さまでシリコンがイオン注入され、支持基板用ウェーハ10のアモルファスシリコン膜16との界面付近もアモルファス化される。
【0061】
次に、こうしてアモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30の表面を、化学的機械的研磨(CMP)によりシリコン酸化膜14が露出するまで研磨する。その後、HFが5重量%のHF洗浄液(室温)に10分間浸漬し、シリコン表面に成長させたシリコン酸化膜14を除去する(図1i)。
次いで、アモルファスシリコン膜16が形成された貼り合わせ基板30を、炉内がヘリウムガス雰囲気に保たれたレーザアニール炉(パルス方式)に挿入する。ここで、YAGレーザ光を、アモルファスシリコン膜16の表面の中央部付近に照射し、アモルファスシリコン膜16直下の支持基板用ウェーハ10との界面付近までを溶融させる(熱処理工程、図1j)。エキシマレーザ光の照射条件は、波長248nm、エネルギ密度2.5J/cm2、パルス幅270nsである。
【0062】
孔部15内には、単結晶シリコンに比べて融点が低いアモルファスシリコン膜16が堆積されている。そのため、レーザアニール炉を使用し、単結晶シリコンは溶融しないがアモルファスシリコンは溶融する液相エピタキシーの熱処理条件(例えば1350℃)で、活性層20Aの表面全域にレーザ光を走査して照射すれば、活性層20Aの単結晶シリコンが融点に達する前に、アモルファスシリコン膜16が溶融する。
【0063】
その後、溶融したアモルファスシリコン膜16を冷却し、固化する。これにより、溶融された固液界面(支持基板用ウェーハ10の表面)において、支持基板用ウェーハ10の固体領域の結晶性({100}面)を引き継ぎ、アモルファスシリコン膜16が支持基板用ウェーハ10と同じ{100}面の単結晶シリコン16Aに変質する(同じく図1j)。その結果、{110}面である活性層20Aの表面に、{110}面とは結晶面が異なる{100}面の領域を、簡単に多数形成することができる。また、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の一部も溶融させるので、より結晶性の優れた単結晶ができる。
なお、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の面(第1の結晶面)と、活性層20Aの表面(第2の結晶面)とを、同じ{100}面としてもよい。その場合、支持基板用ウェーハ10の貼り合わせ側の面は(100)面であり、活性層20Aの表面は結晶方位をずらして貼り合わせる(例えば45°)。これにより、活性層20Aの表面を、総称では同じ結晶面だが、単独の結晶面としては2つの異なる結晶面からなる複合結晶面とすることができる。
【0064】
また、熱処理工程は、レーザ光加熱の代わりにハロゲンランプを熱源に利用したランプ光加熱(RTA:急速加熱・急速降温熱処理)や、キセノンランプを熱光源としたフラッシュランプアニール炉を採用してもよい。具体的には、まず貼り合わせ基板30をフラッシュランプ炉に挿入し、その炉内において、室温から液相エピタキシーが可能な設定温度(1150℃以上1412℃未満)まで昇温し、それからこの設定温度に数ミリ秒保持した後、降温する熱処理である。
【0065】
次に、貼り合わせ基板30を、その活性層20A側を下に向け、キャリアプレートを介して、枚葉式の研磨装置の研磨ヘッドの下面に貼着し、ウェーハ表層を例えば研磨量0.05μm程度で化学的機械的研磨する(図1k)。これにより、表面が加工研磨された貼り合わせウェーハ40が作製される。
また、熱処理工程後、孔部15内で固化したアモルファスシリコン膜16を含む活性層20Aの表面を研磨するので、仮に孔部15内で固化したアモルファスシリコン膜16の表面に微小な凹凸欠陥が存在しても、市販の貼り合わせウェーハと同等の表面平坦度を得ることができる。
【0066】
次に、図2のフローシートを参照して、この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法を説明する。
この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法の特徴は、シリコン酸化膜14の窓部14aを通して、活性層20Aおよびこれを通過して支持基板用ウェーハ10の界面付近までの領域にシリコンをイオン注入し(図2a)、この領域をアモルファス化してアモルファスシリコン層16Bとする(図2b)。具体的なイオン注入条件は、貼り合わせ基板30を中電流イオン注入装置内に挿入し、例えば、200keV以上の加速電圧でドーズ量が5×1015atoms/cm2となるように、アモルファスシリコン膜16にシリコンをイオン注入する。
【0067】
次いで、アモルファスシリコン層16Bが形成された貼り合わせ基板30を、HFが5重量%のHF洗浄液(室温)に10分間浸漬し、活性層20Aの表面に成長させたシリコン酸化膜14を除去する。
その後、貼り合わせ基板30を、炉内がヘリウムガス雰囲気に保たれたレーザアニール炉(パルス方式)に挿入する。ここで、YAGレーザ光を、アモルファスシリコン層16Bの表面の中央部付近に照射し、アモルファスシリコン層16Bのみを溶融させる(熱処理工程、図2c)。エキシマレーザ光の照射条件は、波長248nm、エネルギ密度2.5J/cm2、パルス幅270nsである。
【0068】
このように、単結晶シリコンは溶融しないがアモルファスシリコンは溶融する液相エピタキシーの熱処理条件(1350℃)で、活性層20Aの表面全域にレーザ光を走査して照射することで、活性層20Aの単結晶シリコンが融点に達する前に、アモルファスシリコン層16Bが溶融する。その後、これを冷却し、固化することで、溶融された固液界面において、支持基板用ウェーハ10の固体領域の結晶性を引き継いだ単結晶シリコン16Aが形成される。これにより、{110}面である活性層20Aの表面に、{110}面とは結晶面が異なる{100}面の領域を、簡単に多数形成することができる。しかも、このような方法を採用したので、実施例1のように窓部14aを通して活性層用ウェーハ10に孔部15をエッチングし、その後、孔部15にアモルファスシリコン膜16を堆積させる場合に比べて、工程数が削減できるので低コスト化が可能になる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な程度であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0069】
10 支持基板用ウェーハ、
10A 単結晶シリコン、
14 保護膜、
14a 窓部、
15 孔部、
16 アモルファスシリコン膜、
16B アモルファスシリコン層、
20 活性層用ウェーハ、
30 貼り合わせ基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、前記異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて前記第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、
前記活性層用ウェーハの一部をエッチングし、前記支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する開孔工程と、
前記孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる堆積工程と、
該堆積工程後、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記固相エピタキシーを伴う熱処理工程では、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、非ドーパントを5×1014〜1×1017atoms/cm2のドーズ量で、前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜に対して、前記支持基板用ウェーハとの界面までもしくは該界面を通過して前記支持基板用ウェーハに達する領域までイオン注入する請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程後、前記孔部内で単結晶化した前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項1または請求項2に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項4】
単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、
前記活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、前記活性層用ウェーハの前記支持基板用ウェーハとの界面まで、または該界面を通過して前記支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させて、アモルファスシリコン層とするアモルファス化工程と、
前記イオン注入後、前記アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン層を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記アモルファス化工程では、非ドーパントがイオン注入される請求項4に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記高エネルギ光がレーザ光またはランプ光である請求項1〜請求項5のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記熱処理工程後、前記単結晶化した前記アモルファスシリコン層を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項1】
単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンまたは異種単結晶からなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、前記異種単結晶からなり、かつ表面が結晶方位を含めて前記第1の結晶面と同じ結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、
前記活性層用ウェーハの一部をエッチングし、前記支持基板用ウェーハまで達する孔部を形成する開孔工程と、
前記孔部にアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を堆積させる堆積工程と、
該堆積工程後、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記固相エピタキシーを伴う熱処理工程では、前記孔部内のアモルファスシリコン膜または多結晶シリコン膜を加熱する前に、非ドーパントを5×1014〜1×1017atoms/cm2のドーズ量で、前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜に対して、前記支持基板用ウェーハとの界面までもしくは該界面を通過して前記支持基板用ウェーハに達する領域までイオン注入する請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程後、前記孔部内で単結晶化した前記アモルファスシリコン膜または前記多結晶シリコン膜を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項1または請求項2に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項4】
単結晶シリコンからなって、表面が第1の結晶面の支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と異なる第2の結晶面の活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製するか、前記支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなり、かつ表面が前記第1の結晶面と同じ結晶面であるものの結晶方位が異なる活性層用ウェーハとを貼り合わせて貼り合わせ基板を作製する基板作製工程と、
前記活性層用ウェーハの表面の一部からイオンを注入し、前記活性層用ウェーハの前記支持基板用ウェーハとの界面まで、または該界面を通過して前記支持基板用ウェーハの界面付近までをアモルファス化させて、アモルファスシリコン層とするアモルファス化工程と、
前記イオン注入後、前記アモルファスシリコン層を、高エネルギ光の照射による溶融を伴う液相エピタキシーの熱処理条件か、高エネルギ光の照射による溶融を伴わない固相エピタキシーの熱処理条件で加熱し、その後、冷却することで、前記アモルファスシリコン層を、表面の結晶面および結晶方位が前記支持基板用ウェーハの結晶面および結晶方位と同じ単結晶シリコンに改質する熱処理工程とを備えた貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記アモルファス化工程では、非ドーパントがイオン注入される請求項4に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記高エネルギ光がレーザ光またはランプ光である請求項1〜請求項5のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記熱処理工程後、前記単結晶化した前記アモルファスシリコン層を含む前記活性層用ウェーハの表面を研磨する請求項4〜請求項6のうち、何れか1項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【公開番号】特開2010−199338(P2010−199338A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43207(P2009−43207)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
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