説明

車両用制御装置

【課題】乗員により緊急停止操作が実施された場合の安全性の向上を図る。
【解決手段】乗員により緊急停止操作が実施された場合、エンジン制御装置50への給電を停止するように車両バッテリとエンジン制御装置50との間に設けられたIGリレー31を制御するとともに(S104)、安全のための装備を制御する安全系制御装置60〜65への給電を維持するように車両バッテリと車両に搭載された安全のための装備を制御する安全系制御装置60〜65との間に配設されたIGEリレー32を制御する(S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員による予め定められた緊急停止操作に応じて、車両走行中に車両に搭載された走行用の動力源を電気的に制御する走行系制御装置への給電を停止するように制御する車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中にイグニッションスイッチがオフに切り替えられたり、イグニッションスイッチのオンオフ信号を受ける変速機ECUの故障等により各ECUへの制御停止信号が誤送信されたりすると、車両の走行中に各ECUの制御が停止してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、ブレーキ系ECUの制御停止条件を、通信線を介して接続されたボデー系ECUからの制御停止信号及びエンジンECUからのエンジン回転数、並びに電気配線を介して接続された車輪側センサにより検出される車輪側に基づいて設定するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された装置は、車両の走行中にイグニッションスイッチがオフに切り替えられた場合でもブレーキ系ECUへの給電が継続され、ブレーキ系ECUによる制御を実施可能とするものであるが、車両の多くは走行中にイグニッションスイッチがオフに切り替えられた場合、エンジン系ECU、ブレーキ系ECU等の各ECUに接続されたIG電源ラインへの給電が強制的に停止するようになっている。
【0006】
また、スマートエントリシステムを搭載した車両には、通常の始動停止スイッチに対する押下操作では、走行中にIG電源をオフすることができないようになっているが、予め定められた緊急停止操作(例えば、始動停止スイッチの長押し操作等)に応じてIG電源ラインへの給電を遮断してエンジンECUへの給電を強制的に停止させることが可能となったものもある。
【0007】
上記したような走行中におけるイグニッションスイッチのオフ操作や、走行中における始動停止スイッチの長押し操作等の緊急停止操作に応じてIG電源ラインへの給電を遮断する構成では、乗員の緊急停止操作に応じてエンジンECU等の走行系制御装置への給電が遮断されるため、車両が減速して安全が確保されるものの、車両のブレーキを制御するブレーキ制御装置、車両の操舵を制御するパワーステアリング制御装置、エアバッグを制御するエアバッグ制御装置、車両の車速を算出してメータ表示するメータ制御装置等、車両に搭載された安全のための装備を制御する安全系制御装置への給電も停止されてしまうため、ブレーキやステアリングの効きが悪くなったり、エアバッグが正常に作動しなくなったり、車速メータに車速等が表示されなくなったりする等、かえって安全性が確保されなくなるといった問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みたもので、乗員により緊急停止操作が実施された場合の安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、乗員による予め定められた緊急停止操作に応じて、車両走行中に当該車両に搭載された走行用の動力源を電気的に制御する走行系制御装置への給電を停止するように車両に搭載された車両バッテリと走行系制御装置との間に設けられた第1の切替回路を制御する車両用制御装置であって、車両バッテリと車両に搭載された安全のための装備を制御する安全系制御装置との間に配設された第2の切替回路と、乗員により緊急停止操作が実施された場合、第2の切替回路を介して車両バッテリから安全系制御装置への給電を維持するように第2の切替回路を制御する切替回路制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、乗員により緊急停止操作が実施された場合、走行系制御装置への給電を停止するように車両に搭載された車両バッテリと走行系制御装置との間に設けられた第1の切替回路が制御されるとともに、第2の切替回路を介して車両バッテリから安全系制御装置への給電を維持するように第2の切替回路が制御されるので、安全系制御装置による安全のための装備の制御を実施することが可能であり、乗員により緊急停止操作が実施された場合の安全性の向上を図ることができる。
【0011】
なお、安全系制御装置としては、請求項2に記載の発明のように、車両の制動を制御する制動制御装置、車両の操舵を制御する操舵制御装置、車両のエアバッグを制御するエアバッグ制御装置、車両の車速を特定して車速メータに表示させるメータ制御装置の少なくとも1つとすることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、安全系制御装置には、モータ駆動によるシートベルトの締め付け制御を行うシートベルト制御装置が含まれており、乗員による緊急停止操作に応じてシートベルトの締め付け制御を行うようにシートベルト制御装置に指示するシートベルト制御装置指示手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、シートベルトの締め付け制御を行うようにシートベルト制御装置に指示され、シートベルト制御装置によるシートベルトの締め付け制御が実施される。したがって、例えば、車両衝突時における乗員の安全を確保することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、安全系制御装置には、オートマチックトランスミッションを制御するトランスミッション制御装置が含まれており、乗員による緊急停止操作に応じてオートマチックトランスミッションをシフトダウン制御するようにトランスミッション制御装置に指示するトランスミッション制御装置指示手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、オートマチックトランスミッションをシフトダウン制御するようにトランスミッション制御装置に指示され、トランスミッション制御装置によるオートマチックトランスミッションのシフトダウン制御が実施されるので、例えば、乗員が減速のための各種操作を実施できない状況でも、エンジンブレーキを使用した減速により車両を速やかに停車させることが可能である。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、安全系制御装置には、車両の制動を制御する制動制御装置が含まれており、乗員による緊急停止操作に応じて車両を減速させるように制動制御装置に指示する制動制御装置指示手段を備えたことを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両を減速させるように制動制御装置に指示され、制動制御装置による車両の制動制御が実施されるので、例えば、乗員が減速のための各種操作を実施できない状況でも、車両を速やかに停車させることが可能である。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、車両には、ドアの施錠および解錠を電気的に行うドアロック制御装置が備えられており、車両の走行速度が予め定められた基準値以上か否かを判定する走行速度判定手段と、走行速度判定手段により車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて車両のドアを解錠するようにドアロック制御装置に指示するドアロック制御装置指示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両のドアを解錠するようにドアロック制御装置に指示され、ドアロック制御装置による車両のドアの解錠制御が実施されるので、例えば、水没時や車両火災時に、乗員が車室内に閉じ込められ車外へ出られなくなることを防止することが可能である。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、車両には、窓の開閉を電気的に行う窓開閉制御装置が備えられており、車両の走行速度が予め定められた基準値以上か否かを判定する走行速度判定手段と、走行速度判定手段により車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて車両の窓を開くように窓開閉制御装置に指示する窓開閉制御装置指示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両の窓を開くように窓開閉制御装置に指示され、窓開閉制御装置により車両の窓が開くように制御されるので、例えば、水没時や車両火災時に、乗員が車室内に閉じ込められ車外へ出られなくなることを防止することが可能である。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、車両には、ハザードランプを第1の周期で点滅させるハザードランプ制御装置が備えられており、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両が異常であることを報知するように第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅させるようにハザードランプ制御装置に指示するハザードランプ制御装置指示手段を備えたことを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両が異常であることを報知するように第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅させるようにハザードランプ制御装置に指示され、ハザードランプ制御装置により第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅制御が実施される。すなわち、乗員はハザードランプを点滅させるための操作を実施することなく、車両の異常であることを周囲に知らせることができる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明では、車両には、警告音を発生させる警告音発生装置が備えられており、乗員による緊急停止操作に応じて車両が異常であることを報知するように警告音発生装置に指示する警告音発生装置指示手段を備えたことを特徴としている。
【0025】
このような構成によれば、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両が異常であることを報知するように警告音発生装置に指示させ、警告音発生装置による警告音が発せられる。すなわち、乗員は警告音を発生させるための操作を実施することなく、車両の異常であることを周囲に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用制御装置の構成を示す図である。
【図2】制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係る車両用制御装置の構成を図1に示す。本車両用制御装置は、始動停止スイッチ10、制御部20、ACCリレー30、IGリレー31およびIGEリレー32を備えている。ACCリレー30にはACC電源ライン30aが接続され、IGリレー31にはIG電源ライン31aが接続され、IGEリレー32にはIGE電源ライン32aが接続されている。
【0028】
本実施形態における車両には、スマートエントリシステムが搭載されている。始動停止スイッチ10は、スマートエントリシステムに備えられたエンジンの始動および停止を指示するためのスイッチである。
【0029】
また、本実施形態における車両には、車両バッテリ40、車両のエンジンの作動を制御するエンジン制御装置50、車両の制動を制御するブレーキ制動制御装置60、車両の操舵を制御するステアリング制御装置61、車両のエアバッグを制御するエアバッグ制御装置62、車両の車速を特定して車速メータに表示させるメータ制御装置63、モータ駆動によるシートベルトの締め付け制御を行うシートベルト制御装置64、オートマチックトランスミッションを制御するトランスミッション制御装置65、ドアの施錠および解錠を電気的に行うドアロック制御装置66、窓の開閉を電気的に行う窓開閉制御装置67、ハザードランプの点灯制御を行うハザードランプ制御装置68、クラクションの鳴動制御を行うクラクション制御装置69、ナビゲーション制御装置70、オーディオ制御装置71を備えている。
【0030】
エンジン制御装置50は、車両に搭載されたエンジンの燃料噴射量等を電気的に制御する走行系制御装置である。
【0031】
ブレーキ制動制御装置60は、運転者によるブレーキ操作に応じてブレーキ制御を実施する。本実施形態におけるブレーキ制動制御装置60は、運転者によるブレーキ操作が実施されなくても、外部より入力される信号に応じてブレーキ制御を実施することが可能となっている。
【0032】
ステアリング制御装置61は、運転者によるステアリング操作に応じて車両の操舵を制御する。
【0033】
エアバッグ制御装置62は、加速度センサより入力される加速度信号に基づいて車両の衝突が検出されたことを判定すると、車両の各部に設けられたエアバッグ展開させる。
【0034】
メータ制御装置63は、車速センサより入力される車速パルス信号に基づいて車速を特定するとともに、エンジン制御装置50より入力さえるエンジン回転数信号に基づいてエンジン回転数を特定し、車速およびエンジン回転数をメータに表示させる。
【0035】
また、シートベルト制御装置64は、車両の各座席に設けられたシートベルト毎に、シートベルトの巻き取りをおこなうためのモータを備え、このモータを駆動することによりシートベルトの締め付け制御を行う。また、シートベルト制御装置64は、シートベルト毎に、シートベルトの着用または非着用を検出し、シートベルトの着用または非着用を示す信号を制御部20へ送出するようになっている。
【0036】
トランスミッション制御装置65は、運転者のシフトレバーに対する操作に応じてオートマチックトランスミッションの制御を行う。本実施形態におけるトランスミッション制御装置65は、外部より入力される信号に応じてシフトポジションを変更することが可能となっている。
【0037】
ドアロック制御装置66は、車両に設けられた各ドアのロックおよびアンロックの制御を行う。本実施形態におけるドアロック制御装置66は、外部より入力される信号に応じて各ドアのロックおよびアンロックを行うことが可能となっている。
【0038】
パワーウィンドウ制御装置67は、車両に設けられた開閉窓の開閉制御を行う。本実施形態におけるパワーウィンドウ制御装置67は、外部より入力される信号に応じて車両に設けられた各開閉窓の開閉制御を行うことが可能となっている。
【0039】
ハザードランプ制御装置68は、通常、ハザードランプと直列に接続されたリレー回路を一定周期(第1の周期)でオンオフさせることによりハザードランプを一定周期(第1の周期)で点滅させる。なお、本実施形態におけるハザードランプ制御装置68は、制御部20からの指示に応じて第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅させることが可能となっている。
【0040】
クラクション制御装置69は、車両に設けられたクラクションに対して吹鳴指示を送出してクラクションを吹鳴させるものである。
【0041】
なお、エンジン制御装置50は走行系制御装置であり、IGE電源ライン32aには接続されることなく、IG電源ライン31aに接続されている。
【0042】
また、制動制御装置60、操舵制御装置61、エアバッグ制御装置62、メータ制御装置63、シートベルト制御装置64およびトランスミッション制御装置66は、車両に搭載された安全のための装備を制御する安全系制御装置であり、IG電源ライン31aとIGE電源ライン32aの両方に接続されている。
【0043】
また、ドアロック制御装置66、パワーウィンドウ制御装置67、ハザードランプ制御装置68およびクラクション制御装置69は、常時電源ライン33aに接続されている。
【0044】
また、ナビゲーション制御装置70およびオーディオ制御装置71は、ACC電源ライン30aに接続されている。
【0045】
制御部20は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはROMに記載されたプログラムに従って各種処理を実施する。なお、制御部20には、図示しない車速センサより車速信号が入力されるようになっている。
【0046】
本実施形態における制御部20は、車両走行中における通常の始動停止スイッチに対する操作が実施されても、IG電源ライン31aへの給電を停止させないが、車両走行中における始動停止スイッチ10に対する長押し操作による緊急停止操作が実施されると、IGリレー31を制御してIG電源ライン31aへの給電を停止させてエンジン制御装置50への給電を強制的に停止させる処理を実施する。
【0047】
図2に、この処理のフローチャートを示す。制御部20は、車速信号に基づいて車両が走行を開始したことを判定すると、図2に示す処理を定期的に実施する。
【0048】
まず、車両が走行中か否かを判定する(S100)。車両が走行中か否かについては、車速信号に基づいて判定することができる。
【0049】
車両が停車中の場合、S100の判定はNOとなり、本処理を終了する。また、車両が走行を開始すると、S100の判定はYESとなり、次に、緊急停止操作があるか否かを判定する(S102)。本実施形態では、車両走行中における始動停止スイッチ10に対する一定時間(例えば、3秒)以上の長押し操作を緊急停止操作として、緊急停止操作が実施されたか否かを判定する。
【0050】
ここで、車両走行中に何らかのトラブルが発生して、乗員により緊急停止操作が実施されると、S102の判定はYESとなり、次に、IGリレーをオフし(S104)、IGEリレー32をオンする(S106)。
【0051】
IGリレーをオフすることにより、IGリレー61を介して第1の電源ライン30aに接続されたエンジン制御装置50、ブレーキ制御装置60、ステアリング制御装置61、エアバッグ制御装置62、メータ制御装置63,シートベルト制御装置64、トランスミッション制御装置65への電力供給は停止する。
【0052】
また、IGEリレー32をオンすることにより、ブレーキ制御装置60、ステアリング制御装置61、エアバッグ制御装置62、メータ制御装置63、シートベルト制御装置64、トランスミッション制御装置65への電力供給は維持される。すなわち、エンジン制御装置50への電力供給は停止し、このエンジン制御装置50以外の各制御装置60〜65への電力供給は維持される。
【0053】
次に、シートベルト制御装置64に対するシートベルトの締め付け指示を行う(S108)。具体的には、シートベルト制御装置64に対し、シートベルトが着用されている座席のシートベルトの締め付けを指示する信号を送出する。
を行う。シートベルト制御装置64は、この信号に応じてシートベルトが着用されている座席のシートベルトの締め付け制御を行う。
【0054】
次に、ブレーキ制動制御装置60に対するブレーキ自動制御指示を行う(S110)。具体的には、ブレーキ制動制御装置60に対し、車両を減速させるように指示する信号を送出する。ブレーキ制動制御装置60は、この信号に応じて自動的にブレーキ制御を行う。
【0055】
次に、トランスミッション制御装置65に対するシフトダウン指示を行う(S112)。具体的には、トランスミッション制御装置65に対し、シフトポジションをシフトダウンするように指示する信号を送出する。トランスミッション制御装置65は、この信号に応じてシフトダウン制御を行う。例えば、シフトポジションがドライブ「D」となっている場合には、シフトポジションをセカンド「2」にする。これにより、エンジンブレーキが作動して車速が低下する。
【0056】
次に、車速が低速であるか否かを判定する(S114)。具体的には、車速が予め定められた基準値(例えば、時速20キロメートル)未満であるか否かを判定する。
【0057】
車速が予め定められた基準値未満の場合、S114の判定はYESとなり、次に、パワーウィンドウ制御装置67に対する窓全開要求を行う(S116)。本実施形態では、パワーウィンドウ制御装置67に対し、乗員が着座していない座席に対して設けられた窓を全開するように指示する信号を送出する。なお、シートベルトが非着用の座席を乗員が着座していない座席とすることができる。パワーウィンドウ制御装置67は、制御部20からの信号に応じて乗員が着座していない座席に対して設けられた窓が全開となるように制御する。
【0058】
次に、ドアロック制御装置66に対するドアアンロック要求を行う(S118)。本実施形態では、ドアロック制御装置66に対し、シートベルトが着用されている座席に対応するドアのアンロックを指示する信号を送出する。ドアロック制御装置66は、この信号に応じてシートベルトが着用されている座席に対応するドアのロックを解除する。
【0059】
また、車速が予め定められた基準値以上の場合、S114の判定はNOとなり、パワーウィンドウ制御装置67に対する窓全開指示、ドアロック制御装置66に対するドアアンロック指示を行うことなく、S120へ進む。
【0060】
S120では、ハザードランプの点滅指示を行う。ハザードランプ制御装置68に対し、通常の周期(第1の周期)よりも周期の短い第2の周期でハザードランプを点滅させるように指示する信号を送出する。ハザードランプ制御装置68は、この信号に応じて第2の周期でハザードランプを点滅させる。
【0061】
次に、クラクション制御装置69に対するクラクションの吹鳴指示を行う(S122)。具体的には、クラクション制御装置69に対し、車両が異常であることを報知するようにクラクションの吹鳴を指示する信号を送出する。クラクション制御装置69は、この信号に応じてクラクションを吹鳴させる。本実施形態では、断続的にクラクションを吹鳴させ、本処理を終了する。
【0062】
上記した構成によれば、乗員により緊急停止操作が実施された場合、エンジン制御装置50への給電を停止するように車両に搭載された車両バッテリとエンジン制御装置50との間に設けられたIGリレー31が制御されるとともに、更に、IGEリレー32を介して車両バッテリから安全系制御装置への給電を維持するようにIGEリレー32が制御されるので、安全系制御装置による安全のための装備の制御が可能であり、乗員により緊急停止操作が実施された場合の安全性の向上を図ることができる。
【0063】
また、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、シートベルトの締め付け制御を行うようにシートベルト制御装置64に指示され、シートベルト制御装置64によるシートベルトの締め付け制御が実施される。したがって、例えば、車両衝突時における乗員の安全を確保することができる。
【0064】
また、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、オートマチックトランスミッションをシフトダウン制御するようにトランスミッション制御装置65に指示され、トランスミッション制御装置65によるオートマチックトランスミッションのシフトダウン制御が実施されるので、例えば、乗員が減速のための各種操作を実施できない状況でも、エンジンブレーキを使用した減速により車両を速やかに停車させることが可能である。
【0065】
また、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両を減速させるようにブレーキ制御装置60に指示され、ブレーキ制御装置60による車両の制動制御が実施されるので、例えば、乗員が減速のための各種操作を実施できない状況でも、車両を速やかに停車させることが可能である。
【0066】
また、車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両のドアを解錠するようにドアロック制御装置に指示され、ドアロック制御装置による車両のドアの解錠制御が実施されるので、例えば、水没時や車両火災時に、乗員が車室内に閉じ込められ車外へ出られなくなることを防止することが可能である。
【0067】
また、車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両の窓を開くようにパワーウィンドウ制御装置67に指示され、パワーウィンドウ制御装置67により車両の窓が開くように制御されるので、例えば、水没時や車両火災時に、乗員が車室内に閉じ込められ車外へ出られなくなることを防止することが可能である。
【0068】
また、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両が異常であることを報知するように第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅させるようにハザードランプ制御装置68に指示され、ハザードランプ制御装置68により第1の周期と異なる第2の周期でハザードランプの点滅制御が実施される。すなわち、乗員はハザードランプを点滅させるための操作を実施することなく、車両の異常であることを周囲に知らせることができる。
【0069】
また、乗員による緊急停止操作に応じて、更に、車両が異常であることを報知するようにクラクション制御装置69に指示させ、クラクション制御装置69によるクラクションの吹鳴制御が実施される。すなわち、乗員はクラクションを吹鳴させるための操作を実施することなく、車両の異常であることを周囲に知らせることができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0071】
例えば、上記実施形態では、車両走行中に当該車両に搭載された走行用の動力源を電気的に制御する走行系制御装置として、緊急停止操作に応じてIG電源ラインへの給電が遮断され、給電が強制的に停止するエンジン制御装置を例に説明したが、エンジン制御装置に限定されるものではなく、例えば、ハイブリッド車両のエンジンおよびモータを電気的に制御するハイブリッドECU、電気自動車のモータを電気的に制御するモータECU等としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、緊急停止操作として、走行中における始動停止スイッチ10に対する長押し操作を例に説明したが、このような操作に限定されるものではない。緊急停止操作としては、例えば、走行中におけるイグニッションスイッチのオフ操作等、車両走行中に当該車両に搭載された走行用の動力源を電気的に制御する走行系制御装置への給電が停止される操作とすることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、S114の判定にて、車速が予め定められた基準値未満と判定された場合、乗員が着座していない座席に対して設けられた窓を全開するようにパワーウィンドウ制御装置67に指示したが、例えば、乗員が着座している座席に対して設けられた窓を全開するようにパワーウィンドウ制御装置67に指示してもよい。また、走行中に乗員が車外へ放り出されることを防止するため、S114の判定にて、車速が予め定められた基準値以上と判定された場合には、乗員が着座している座席に対して設けられた窓、あるいは、全ての開閉窓を全閉するようにパワーウィンドウ制御装置67に指示するようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、S114の判定にて、車速が予め定められた基準値未満と判定された場合、シートベルトが着用されている座席に対応するドアをアンロックするようにドアロック制御装置66に指示したが、例えば、シートベルトが着用されている座席に対応するドアをアンロックするようにドアロック制御装置66に指示するようにしてもよい。また、走行中に乗員が車外へ放り出されることを防止するため、S114の判定にて、車速が予め定められた基準値以上と判定された場合には、シートベルトが着用されている座席に対応するドア、あるいは、全てのドアをロックするようにドアロック制御装置66に指示するようにしてもよい。
【0075】
また、ナビゲーション制御装置70より、走行中の道路種別を特定するための情報を取得し、この情報に基づいて高速道路を走行中であると判定した場合には、乗員の緊急停止操作に応じて、更に、乗員が着座している座席に対して設けられた窓、あるいは、全ての開閉窓を全閉するようにパワーウィンドウ制御装置67に指示するようにしてもよい。
【0076】
同様に、ナビゲーション制御装置70より、走行中の道路種別を特定するための情報を取得し、この情報に基づいて高速道路を走行中であると判定した場合には、乗員の緊急停止操作に応じて、更に、シートベルトが着用されている座席に対応するドア、あるいは、全てのドアをロックするようにドアロック制御装置66に指示するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、S120にて、乗員の緊急停止操作に応じて、ハザードランプ制御装置68に対し、通常の周期(第1の周期)よりも周期の短い第2の周期でハザードランプを点滅させるように指示したが、反対に、通常の周期(第1の周期)よりも周期の長い第2の周期でハザードランプを点滅させるように指示するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、S122にて、乗員の緊急停止操作に応じて、クラクション制御装置69に対するクラクションの吹鳴指示を行ったが、クラクション制御装置69に対するクラクションの吹鳴指示に限定されるものではなく、例えば、車両用盗難防止装置に取り付けられたスピーカ等、クラクション以外の警告音発生装置に対し、車両が異常であることを報知するように警告音の発生を指示するようにしてもよい。
【0079】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、エンジン制御装置50が走行系制御装置に相当し、IGリレー31が第1の切替回路に相当し、IGEリレー32が第2の切替回路に相当し、S106が切替回路制御手段に相当し、ブレーキ制御装置60が制動制御装置に相当し、ステアリング制御装置61が操舵制御装置に相当し、S108がシートベルト制御装置指示手段に相当し、S112がトランスミッション制御装置指示手段に相当し、S110が制動制御装置指示手段に相当し、S114が走行速度判定手段に相当し、S118がドアロック制御装置指示手段に相当し、S116が窓開閉制御装置指示手段に相当し、S120がハザードランプ制御装置指示手段に相当し、S122が警告音発生装置指示手段に相当する。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用制御装置
10 始動停止スイッチ
20 制御部
30 ACCリレー
31 IGリレー
32 IGEリレー
30a ACC電源ライン
31a IG電源ライン
32a IGE電源ライン
40 車両バッテリ
50 エンジン制御装置
60 ブレーキ制御装置
61 ステアリング制御装置
62 エアバッグ制御装置
63 メータ制御装置
64 シートベルト制御装置
65 トランスミッション制御装置
66 ドアロック制御装置
67 パワーウィンドウ制御装置
68 ハザードランプ制御装置
69 クラクション制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による予め定められた緊急停止操作に応じて、車両走行中に当該車両に搭載された走行用の動力源を電気的に制御する走行系制御装置への給電を停止するように前記車両に搭載された車両バッテリと前記走行系制御装置との間に設けられた第1の切替回路を制御する車両用制御装置であって、
前記車両バッテリと前記車両に搭載された安全のための装備を制御する安全系制御装置との間に配設された第2の切替回路と、
乗員により前記緊急停止操作が実施された場合、前記第2の切替回路を介して前記車両バッテリから前記安全系制御装置への給電を維持するように前記第2の切替回路を制御する切替回路制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記安全系制御装置は、前記車両の制動を制御する制動制御装置、前記車両の操舵を制御する操舵制御装置、前記車両のエアバッグを制御するエアバッグ制御装置、前記車両の車速を特定して車速メータに表示させるメータ制御装置の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記安全系制御装置には、モータ駆動によるシートベルトの締め付け制御を行うシートベルト制御装置が含まれており、
乗員による前記緊急停止操作に応じて前記シートベルトの締め付け制御を行うように前記シートベルト制御装置に指示するシートベルト制御装置指示手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記安全系制御装置には、オートマチックトランスミッションを制御するトランスミッション制御装置が含まれており、
乗員による前記緊急停止操作に応じて前記オートマチックトランスミッションをシフトダウン制御するように前記トランスミッション制御装置に指示するトランスミッション制御装置指示手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記安全系制御装置には、前記車両の制動を制御する制動制御装置が含まれており、
乗員による前記緊急停止操作に応じて前記車両を減速させるように前記制動制御装置に指示する制動制御装置指示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両には、ドアの施錠および解錠を電気的に行うドアロック制御装置が備えられており、
前記車両の走行速度が予め定められた基準値以上か否かを判定する走行速度判定手段と、
前記走行速度判定手段により前記車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による前記緊急停止操作に応じて前記車両のドアを解錠するように前記ドアロック制御装置に指示するドアロック制御装置指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車両には、窓の開閉を電気的に行う窓開閉制御装置が備えられており、
前記車両の走行速度が予め定められた基準値以上か否かを判定する走行速度判定手段と、
前記走行速度判定手段により前記車両の走行速度が予め定められた基準値未満と判定された場合には、乗員による前記緊急停止操作に応じて前記車両の窓を開くように前記窓開閉制御装置に指示する窓開閉制御装置指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記車両には、ハザードランプを第1の周期で点滅させるハザードランプ制御装置が備えられており、
乗員による前記緊急停止操作に応じて前記車両が異常であることを報知するように前記第1の周期と異なる第2の周期で前記ハザードランプの点滅させるように前記ハザードランプ制御装置に指示するハザードランプ制御装置指示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記車両には、警告音を発生させる警告音発生装置が備えられており、
乗員による前記緊急停止操作に応じて前記車両が異常であることを報知するように前記警告音発生装置に指示する警告音発生装置指示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−245968(P2011−245968A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120546(P2010−120546)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】