説明

車両用駆動力制御装置

【課題】車両前方の道路環境に対応して、車両に減速度を作用させる車両用駆動力制御装置であって、運転者の減速意図が検出された地点に近いところで減速制御が開始されることが可能な車両用駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】車両前方の道路環境を検出する手段と、前記道路環境に対して予め設定された特定領域内に車両がいるか否かを判断する手段(S005)と、運転者による減速意図が検出されたときに前記道路環境に対して適切な車両走行状態となるための減速度を作用させる手段と、運転者が前記減速意図を示したときの車両位置が前記特定領域の外である場合に、前記特定領域を拡大する手段(S008)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方の道路環境(コーナー、自動車専用道路の退出路、交差点、信号機、料金所など)に対応して、車両に減速度を作用させる車両用駆動力制御装置が知られている。例えば、車両がコーナーを通過するために適切な速度となるように、運転者の減速意図を検出して、ダウンシフトを行う技術が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−145937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路環境に対して、減速制御が行われる領域よりも道路環境から遠いところで、減速意図を示す運転者にとっては、減速制御開始のタイミングが遅いと感じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、車両前方の道路環境に対応して、車両に減速度を作用させる車両用駆動力制御装置であって、運転者の減速意図が検出された地点に近いところで減速制御が開始されることが可能な車両用駆動力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用駆動力制御装置は、車両前方の道路環境を検出する手段と、前記道路環境に対して予め設定された特定領域内に車両がいるか否かを判断する手段と、運転者による減速意図が検出されたときに前記道路環境に対して適切な車両走行状態となるための減速度を作用させる手段と、運転者が前記減速意図を示したときの車両位置が前記特定領域の外である場合に、前記特定領域を拡大する手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明の車両用駆動力制御装置において、前記特定領域を拡大する手段は、運転者が前記減速意図を示したときの車両位置が前記特定領域の外であり、前記運転者が前記減速意図を示したときの車両位置と前記特定領域との間の距離が予め設定された閾値以下である場合に、前記特定領域を拡大することを特徴としている。
【0008】
本発明の車両用駆動力制御装置において、前記特定領域の拡大は、前記道路環境毎に行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用駆動力制御装置によれば、車両前方の道路環境に対応して、車両に減速度を作用させる車両用駆動力制御装置であって、運転者の減速意図が検出された地点に近いところで減速制御が開始されることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の車両用駆動力制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
添付図面を参照して、第1実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態は、ナビゲーションシステム装置に記憶されている道路情報と、車両の位置情報に基づいてコーナーを検出し、コーナーの手前で車両を減速制御する車両用駆動力制御装置において、運転者がアクセルを戻して(アクセルOFF)から予め設定された所定距離(または所定時間)内に減速制御開始の前提条件であるコーナー検知フラグ(コーナー入口までの距離が予め定められた所定値以内)が成立した場合には、減速制御開始のタイミングが遅いと判断し、コーナー検知フラグの探索範囲(コーナー入口までの距離)を拡大する。これにより、コーナー検知フラグのタイミングを早め、その結果、減速制御開始タイミングを早める。
【0013】
まず、本実施形態の課題について説明する。
【0014】
コーナーに車両が進入する際に、図9に示すように、運転者による減速意図(例えばアクセルOFF、アクセル戻し率、アクセル戻し速度、ブレーキONなど)に応答して(ステップS303)、コーナーまでの距離、コーナーの曲がり度合い(コーナーの半径、曲率など)、車速などに基づいて設定された目標減速度(ステップS302)を車両に作用させる減速制御(ステップS304)の技術がある。
【0015】
この技術において、ステップS301に示すように、例えば、車両に搭載されたナビゲーションシステムの情報により、車両前方の予め設定された距離内のコーナーを検知(コーナー検知フラグON)してからしか減速制御の開始条件が成立しないものが考えられる。即ち、運転者の減速意図が検出された場合であっても、コーナー検知フラグがONとされていない場合(ステップS301−N)には、減速制御(ステップS304)が行われない。
【0016】
ところが、コーナーへの進入に際して、運転者の減速意図が検出される地点(運転者が減速要求を出した地点)は、運転者によって異なる。特に、走行条件が所定の場合、例えば、路面勾配が降坂である場合や、車速が高い場合や、コーナーの曲がり度合いが大きい(例えばコーナーの半径が小さい)場合には、前方のコーナーに対して、減速要求が早くなり、コーナー検知フラグがONとなって、減速制御が開始される前に、運転者が自らブレーキを踏んでしまう場合がある。コーナー検知フラグは、コーナーの入口から所定距離でONとされるが、運転者や走行条件によっては、この所定距離が短く、減速制御開始のタイミングが遅れるためである。
【0017】
また、減速制御の前提条件であるコーナー検知フラグがONとなる前に、アクセル状態がOFFであると、コーナー検知フラグがOFFからONに代わった地点(運転者にその代わる地点は分からない)で減速制御が開始されるため、運転者が違和感を感じる場合がある。
【0018】
本実施形態では、ナビゲーションシステム装置に記憶されている道路情報と車両の位置情報からコーナーを検出し、コーナーの手前で車両を減速制御(ダウンシフト、ブレーキ)する車両の車両用駆動力制御装置であって、運転者がアクセルを戻した(アクセルON→OFF)地点から所定距離(所定時間)内に、コーナー検知フラグがONとなった場合には、コーナー検知フラグの条件であるコーナー入口の探索範囲(コーナー入口までの距離)を拡大する。これにより、前方のコーナーに対して、運転者に応じて、コーナー検知フラグのタイミング、即ち、減速開始タイミングを早めることができる。このことから、運転者が自らブレーキを踏む頻度を低減させることができる。
【0019】
次に、図8を参照して、本実施形態の構成について説明する。
【0020】
図8において、符号10は有段の自動変速機、40はエンジン、200はブレーキ装置である。自動変速機10は、電磁弁121a、121b、121cへの通電/非通電により油圧が制御されて5段変速が可能である。図8では、3つの電磁弁121a、121b、121cが図示されるが、電磁弁の数は3に限定されない。電磁弁121a、121b、121cは、制御回路130からの信号によって駆動される。
【0021】
スロットル開度センサ114は、エンジン40の吸気通路41内に配置されたスロットルバルブ43の開度を検出する。エンジン回転数センサ116は、エンジン40の回転数を検出する。車速センサ122は、車速に比例する自動変速機10の出力軸120cの回転数を検出する。シフトポジションセンサ123は、シフトポジションを検出する。パターンセレクトスイッチ117は、変速パターンを指示する際に使用される。加速度センサ90は、車両の減速度(減速加速度)を検出する。
【0022】
ナビゲーションシステム装置95は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、演算処理装置と、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路など)が記憶された情報記憶媒体と、自立航法により自車両の現在位置や道路状況を検出し、地磁気センサやジャイロコンパス、ステアリングセンサを含む第1情報検出装置と、電波航法により自車両の現在位置、道路状況などを検出するためのもので、GPSアンテナやGPS受信機などを含む第2情報検出装置等を備えている。
【0023】
制御回路130は、スロットル開度センサ114、エンジン回転数センサ116、車速センサ122、シフトポジションセンサ123、加速度センサ90の各検出結果を示す信号を入力し、また、パターンセレクトスイッチ117のスイッチング状態を示す信号を入力し、また、ナビゲーションシステム装置95からの信号を入力する。
【0024】
制御回路130は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、CPU131、RAM132、ROM133、入力ポート134、出力ポート135、及びコモンバス136を備えている。入力ポート134には、上述の各センサ114、116、123、90からの信号、上述のスイッチ117からの信号、ナビゲーションシステム装置95からの信号が入力される。出力ポート135には、電磁弁駆動部138a、138b、138c、及びブレーキ制御回路230へのブレーキ制動力信号線L1が接続されている。ブレーキ制動力信号線L1では、ブレーキ制動力信号SG1が伝達される。
【0025】
ROM133には、予め図1のフローチャートに示す動作(制御ステップ)をコンピュータに実行させるためのプログラムが格納されているとともに、変速制御の動作(図示せず)が格納されている。制御回路130は、入力した各種制御条件に基づいて、自動変速機10の変速を行う。
【0026】
ブレーキ装置200は、制御回路130からブレーキ制動力信号SG1を入力するブレーキ制御回路230によって制御されて、車両を制動する。ブレーキ装置200は、油圧制御回路220と、車両の車輪204、205、206、207に各々設けられる制動装置208、209、210、211とを備えている。各制動装置208、209、210、211は、油圧制御回路220によって制動油圧が制御されることにより、対応する車輪204、205、206、207の制動力を制御する。油圧制御回路220は、ブレーキ制御回路230により、制御される。
【0027】
油圧制御回路220は、ブレーキ制御信号SG2に基づいて、各制動装置208、209、210、211に供給する制動油圧を制御することで、ブレーキ制御を行う。ブレーキ制御信号SG2は、ブレーキ制動力信号SG1に基づいて、ブレーキ制御回路230により生成される。ブレーキ制動力信号SG1は、自動変速機10の制御回路130から出力され、ブレーキ制御回路230に入力される。ブレーキ制御の際に車両に与えられるブレーキ力は、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる各種データに基づいてブレーキ制御回路230により生成される、ブレーキ制御信号SG2によって定められる。
【0028】
ブレーキ制御回路230は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、CPU231、RAM232、ROM233、入力ポート234、出力ポート235、及びコモンバス236を備えている。出力ポート235には、油圧制御回路220が接続されている。ROM233には、ブレーキ制動力信号SG1に含まれる各種データに基づいて、ブレーキ制御信号SG2を生成する際の動作が格納されている。ブレーキ制御回路230は、入力した各制御条件に基づいて、ブレーキ装置200の制御(ブレーキ制御)を行う。
【0029】
次に、図4を参照して、本実施形態の動作の概要について説明する。
【0030】
図4において、符号720は、アクセルの状態を示している。同様に、符号731は、補正前のブレーキの状態を示し、符号732は、補正後のブレーキの状態を示している。符号740は、アクセルOFFからの距離(X)を示し、符号750は、コーナーCの入口までの距離(L)を示している。符号761は、補正前のコーナー検知フラグを示し、符号762は、補正後のコーナー検知フラグを示している。符号771は、補正前の減速制御の状態を示し、符号772は、補正後の減速制御の状態を示している。
【0031】
従来は、運転者が前方のコーナーCに対して、t1の地点でアクセル720を戻しても(アクセルON→アクセルOFF)、その地点t1でコーナー検知フラグ(補正前)761がOFFでは、減速制御771が開始されず、そのため、減速制御771が開始される地点(コーナー検知フラグ761がOFFからONになる地点t2)の前に、運転者が自らブレーキ731を踏んでしまう。
【0032】
また、アクセル720がOFFの状態でコーナー検知フラグ(補正前)761が立つ(OFFからONになる)と、そのコーナー検知フラグ761が立った地点(符号t2参照)から減速制御771が開始されるが、運転者は、コーナー検知フラグ(補正前)761がいつ立つかが分からないため、減速制御771が急に開始されたと感じる。このように、アクセル720のOFF(t1地点)と減速制御771の開始のタイミングが異なると、運転者は、違和感を覚えてしまう。
【0033】
これに対して、本実施形態では、運転者がアクセルを戻した地点t1から、その後、コーナー検知フラグ(補正前)761が立つ地点間の距離X740を計測する。距離X740が予め設定された閾値Sよりも小さい場合(ステップS007−Y)には、前方コーナーCの探索範囲Aが拡大補正される。即ち、拡大補正される前の探索範囲A(補正前)711に対して、予め設定された値α(補正値)712が加算されてなる値が新たな探索範囲A(補正後)713とされる(ステップS008)。
【0034】
ここで、探索範囲Aは、コーナーCの入口までの距離(L)750、即ち、コーナー検知フラグ761、762が立つ地点に対応している。言い換えれば、補正前の探索範囲A711に対応して、補正前のコーナー検知フラグ761が立つ地点が設定される。同様に、補正後の探索範囲A713に対応して、補正後のコーナー検知フラグ762が立つ地点が設定される。
【0035】
上記のように、前方コーナーCの探索範囲Aが拡大補正されることにより、次回からはコーナー検知フラグ(補正後)762が立つタイミングを早くし(矢印Y1参照)、減速制御の開始タイミングを早め(符号772、矢印Y2参照)、その結果、運転者が前方コーナーCに対してブレーキ732を踏む頻度を下げることができる。
【0036】
また、アクセル720がONの状態で、コーナー検知フラグ(補正後)762を立たせることで、アクセル720の戻し操作(ON→OFF)が減速制御772のトリガーとなる。このように、アクセル720のOFF(t1地点)と減速制御772の開始のタイミングが同じとなることで、運転者の違和感が緩和される。
【0037】
但し、アクセル720を戻して(ステップS001−Y)、コーナー検知フラグ(補正前)761が立つ前に(ステップS005−N)、再度アクセル720を踏み込んだ場合(符号721参照、次サイクルの制御フローのステップS003−N)には、運転者は減速を要求しておらず、減速制御のタイミングも遅いとは判断していないとして、探索範囲Aの補正は実行しない(ステップS009)。即ち、この場合には、アクセルOFFからの距離X740は0にクリアされる(符号741参照、ステップS009)。
【0038】
また、自車両の前方の車両や歩行者などの障害物の影響により、運転者がアクセル720をOFFしたり、運転者が無意識にアクセル720をOFFした場合(ステップS004−Y)には、探索範囲Aの拡大補正は行なわれない(ステップS009)。なお、前方の車両や歩行者などの障害物は、例えば、車両に搭載された前方レーダーなどにより検知することが可能である。運転者が無意識であるか否かは、運転者の顔の向きなどに基づいて判断することが可能である。
【0039】
図1を参照して、本実施形態の動作について説明する。
図1は、上記図9のステップS301のコーナー検知フラグの条件である前方コーナーの探索範囲(コーナーの入口までの距離)を拡大(補正)する動作を示すフローチャートである。
【0040】
図1では、図4において、コーナー検知フラグが、補正前のコーナー検知フラグ761から補正後のコーナー検知フラグ762に補正される動作について説明する。
【0041】
[ステップS001]
ステップS001では、アクセルがONからOFFにされたか否かが判定される。図4では、t1地点でアクセル720がONからOFFとされ、ステップS001が肯定的に判定されて、ステップS002に移行する。一方、アクセルがONの状態では、ステップS001にて否定的に判定された後、ステップS003にて否定的に判定され、ステップS009にて、アクセルOFFからの距離X(740)がX=0に設定され、本制御フローがリターンされる。
【0042】
[ステップS002]
ステップS002では、アクセルOFFされた地点からの距離Xの算出が開始される。即ち、ステップS001にて肯定的に判定された地点からの距離Xの算出が開始される。アクセルOFFからの距離Xとは、コーナーCの入口の探索範囲Aよりも前(探索範囲Aの外部)の領域における距離である。図4では、アクセル720がONからOFFとされた地点t1からコーナーCの入口の探索範囲A(711)よりも前(探索範囲Aの外部)の領域における距離X(740)の算出が開始される。ステップS002の次にステップS003に進む。
【0043】
[ステップS003]
次に、ステップS003では、アクセルがOFFであるか否かが判定される。上記ステップS001にてアクセルONからOFFへの変化が検出された後、継続してアクセルがOFFである場合には、ステップS003は肯定的に判定されて、ステップS004に移行する。
【0044】
一方、上記ステップS001にてアクセルONからOFFへの変化が検出された後(ステップS001−Y)、アクセルがONになった場合(ステップS003−N)には、ステップS009に移行して、アクセルOFFからの距離X(740)は、X=0に設定される。図4では、アクセル720がt1地点にて、ONからOFFにされた後、符号721に示すように、アクセル720がONとされた場合(ステップS003−N)には、アクセルOFFからの距離X(740)は、符号741に示すように、X=0に設定される(ステップS009)。
【0045】
[ステップS004]
ステップS004では、アクセルONからアクセルOFFへの変化(ステップS001−Y)、又は、その後の継続したアクセルOFF(ステップS003−Y)が自車両の前方の車両や歩行者などの影響によって行われたか否か、又は、運転者の無意識により行なわれたか否かが判定される。ステップS004の判定の結果、肯定的に判定された場合には、ステップS009に移行して、アクセルOFFからの距離X(740)は、X=0に設定される。一方、ステップS004の判定の結果、否定的に判定された場合には、ステップS005に移行する。
【0046】
[ステップS005]
ステップS005では、コーナー検知フラグがONであるか否かが判定される。即ち、コーナー入口までの距離(L)750がコーナーCの入口の探索範囲A以下であるか否かが判定される。その判定の結果、コーナー検知フラグがONであると判定された場合(ステップS005−Y)には、ステップS006に移行し、そうでない場合(ステップS005−N)には、本制御フローはリターンされる。
【0047】
図4では、本制御フローによる制御開始当初は、t1地点においてアクセル720がONからOFFにされた後、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされるt2地点までの間は、ステップS005が否定されるため、本制御フローはリターンされる。この場合、本制御フローがリターンされた後は、t1地点からt2地点までの間は、アクセル720はOFFのままであるため、ステップS001は否定的に判定され、次のステップS003は肯定的に判定され、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされる地点t2までの間は、ステップS005が否定され、上記動作が繰り返される。そして、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされる地点t2で、ステップS005が肯定的に判定される。この間(地点t2までの間)は、アクセルOFFからの距離X(740)の算出(ステップS002)が継続される。
【0048】
[ステップS006]
ステップS006では、アクセルOFFからの距離X(740)が0であるか否かが判定される。即ち、ステップS006では、アクセルがONからOFFとされた地点(ステップS001−Y)において、コーナー検知フラグがONとされている(ステップS005−Y)か否かが判定される。その判定の結果、アクセルOFFからの距離X(740)が0であると判定された場合(ステップS006−Y)には、本制御フローはリターンされ、そうでない場合(ステップS006−N)には、ステップS007に移行する。
【0049】
ステップS006において否定的に判定される場合とは、アクセルがONからOFFとされた地点(ステップS001−Y)において、コーナー検知フラグがONとされていない(ステップS005−N)ケースであり、その後、コーナー検知フラグがONとされた地点において、減速制御が開始され、運転者に違和感を与える可能性が高いため、ステップS007以降に移行して、コーナー検知フラグの補正の検討が行われる。
【0050】
図4において、本制御フローによる制御開始当初は、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされたとき(ステップS005−Y、t2地点)には、アクセルOFFからの距離X(740)が0ではないため、ステップS006は否定的に判定され、ステップS007に移行する。
【0051】
一方、ステップS008にて後述するように、補正前のコーナーCの入口の探索範囲A711から補正後のコーナーCの入口の探索範囲A713に変更された後であれば、ステップS006が肯定的に判定される場合がある。補正後のコーナーCの入口の探索範囲A713に変更された後に、改めてコーナーCに対して車両が進入する場合には、補正後のコーナー検知フラグ762がt0地点でOFFからONとなり、その後のt1地点でアクセル720がONからOFFにされる場合が考えられる。この場合、t1地点でS001が肯定的に判定され、ステップS002でアクセルOFFからの距離X(740)の算出が開始された後、アクセルOFFのままと判定され(ステップS003−Y)、ステップS004が否定的に判定された場合、ステップS005では、補正後のコーナー検知フラグ762が既にONとされた状態であるため肯定的に判定され、ステップS006に進む。この場合、アクセルOFFがコーナーCの入口の探索範囲A713よりも後(探索範囲A713の内部)の領域においてなされていることから、ステップS006では、アクセルOFFからの距離X(740)は0と判定され、肯定的に判定される。
【0052】
このように、ステップS006にて肯定的に判定された場合には、補正前のコーナーCの入口の探索範囲A711から補正後のコーナーCの入口の探索範囲A713に変更される前に比べて、減速制御の開始タイミングが早くなり(符号772、矢印Y2参照)、その結果、運転者が前方コーナーCに対してブレーキ732を踏む頻度を下げることができる。また、アクセル720がONの状態で、コーナー検知フラグ(補正後)762を立たせることができており、アクセル720の戻し操作(ON→OFF)が減速制御772のトリガーとなり、アクセル720のOFF(t1地点)と減速制御772の開始のタイミングが同じとなることで、運転者の違和感が緩和される。即ち、ステップS006にて肯定的に判定された場合には、本実施形態の課題が解決できており、本実施形態の効果を奏することができるため、現状のコーナーCの入口の探索範囲A713を維持すべく、本制御フローがリターンされる。
【0053】
[ステップS007]
ステップS007では、アクセルOFFからの距離X(740)が予め設定された閾値以下であるか否かが判定される。ここで、アクセルOFFからの距離X(740)とは、アクセルがONからOFFに戻された地点(ステップS001−Y)から、コーナー検知フラグがONとされた地点(ステップS005−Y)までの距離である。
【0054】
ステップS007の判定の結果、アクセルOFFからの距離X(740)が閾値S以下であると判定された場合(ステップS007−Y)には、ステップS008に移行し、そうでない場合(ステップS007−N)には、ステップS009に移行する。
【0055】
図4において、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされたとき(ステップS005−Y、t2地点)のアクセルOFFからの距離X(740)は、閾値Sよりも小さいため、ステップS008に移行する。
【0056】
一方、補正前のコーナー検知フラグ761がONとされたとき(ステップS005−Y、t2地点)のアクセルOFFからの距離X(740)は、閾値Sよりも大きい場合(ステップS007−N)には、ステップS008は行われること無く、ステップS009に移行する。この場合、アクセルOFFからの距離X(740)が閾値Sよりも大きい場合(ステップS007−N)には、アクセル戻し操作が、コーナーCへの進入に備えて行われたわけではなく、運転者の無意識や前方車両などの前方障害の影響による操作である可能性が高く、このような場合にコーナーCの入口の探索範囲Aの拡大(ステップS008)を行うことは好ましくないためである。なお、運転者の無意識や前方車両などの前方障害の影響による操作であるか否かの判定は、ステップS004にて行われるが、その判定(特に運転者の無意識による操作であるか否かの判定)は、困難である。このことから、ステップS007にて、アクセルOFFからの距離X(740)に基づいて、アクセル戻し操作が、コーナーCへの進入に備えて行われた否かを判定することとしている。
【0057】
[ステップS008]
ステップS008では、コーナー検知フラグの条件が更新される。即ち、今までのコーナーCの入口の探索範囲Aと、予め定められた補正値αの和が、新たなコーナーCの入口の探索範囲Aとされる。ここで、補正値α>0である。ステップS008の次には、ステップS009に進む。
【0058】
図4では、今まで(補正前)のコーナーCの入口の探索範囲A711と、予め定められた補正値α712の和が、新たな(補正後の)コーナーCの入口の探索範囲A713とされる。コーナーCの入口の探索範囲Aは、コーナーCの入口までの距離(L)750に応じて、コーナー検知フラグがOFFからONとされた地点に対応している。そのため、補正前には、コーナーCの入口までの距離(L)750が補正前の探索範囲A711である地点にて、コーナー検知フラグ761がOFFからONとされていたのに対し、補正後は、コーナーCの入口までの距離(L)750が補正後の探索範囲A713である地点にて、コーナー検知フラグ762がOFFからONとされる。
【0059】
[ステップS009]
ステップS009では、アクセルOFFからの距離X(740)が0にクリアされる。ステップS009の次に、本制御フローはリセットされる。
【0060】
(第1実施形態の第1変形例)
上記第1実施形態のステップS002では、アクセルOFFされた地点からの距離Xの算出が開始され、ステップS006、007、及び009では、その距離Xに基づいて処理が行なわれた。これに代えて、本変形例では、上記ステップS002では、アクセルOFFされた地点からの時間Tの算出が開始され、ステップS006、007、及び009では、その時間Tに基づいて処理が行なわれることができる。
【0061】
(第1実施形態の第2変形例)
図2に示すように、本変形例では、上記第1実施形態の図1のステップS004が省略され、ステップS010、011、及び012が追加されている。上記ステップS004では、運転者の無意識によるアクセル操作を検知することが困難である。このことから、本変形例では、上記ステップS004のような方法で、運転者の無意識によるアクセル操作を検知することを行なわない。
【0062】
本変形例では、運転者の無意識によるアクセル操作は、複数回(所定値の回数)は続かないであろうことを前提としている。具体的には、本制御フローが繰り返し行われたときに、ステップS006の否定的な判断が連続して行なわれた回数Nが上記所定値の回数以上連続していないときには(ステップS011−N)、探索範囲Aの拡大補正が行なわれる動作(ステップS007以降)には進まずにステップS009に移行してアクセルOFFからの距離Xが0にクリアされる。即ち、運転者の無意識のアクセル操作によってステップS006の否定的判断がなされた可能性があると判断される場合(ステップS011−N)には、探索範囲Aの拡大補正が行なわれないようにしている。
【0063】
一方、ステップS006の否定的な判断が上記所定の回数以上連続したときには(ステップS011−Y)、探索範囲Aの拡大補正が行なわれる動作(ステップS007以降)に進む構成としている。運転者の無意識のアクセル操作によってステップS006の否定的判断がなされた可能性がないと判断されるためである。これにより、運転者の無意識によるアクセル操作によって、探索範囲Aの拡大補正が行なわれることが抑制される。なお、ステップS008にて探索範囲Aの拡大補正が行なわれたときには、ステップS012に移行して、ステップS006の否定的な判断が連続して行なわれた回数Nが0にリセットされ、ステップS009に移行された後、本制御フローがリターンされる。
【0064】
(第1実施形態の第3変形例)
図3に示すように、本変形例では、上記第1実施形態の図1のステップS004が省略され、ステップS013〜ステップS018が追加されている。
【0065】
上記第1実施形態で述べたように、ステップS006にて肯定的に判定された場合は、同実施形態の課題が解決できており、同実施形態の効果を奏することができるという意味で、望ましい状態である。本変形例では、その望ましいケース(ステップS006にて肯定的に判定されたケース)の回数N(ステップS013)が予め設定された閾値以上になった場合(ステップS014−Y)には、Nを0にクリアした上で(ステップS016)、その状態で、コーナーCの入口の探索範囲Aを確定してしまう(ステップS017、コーナー検知フラグ条件の確定)。即ち、コーナー検知フラグ条件が確定されると(ステップS017)、ステップS006にて否定的に判定された場合であっても、ステップS007に移行してコーナー検知フラグ条件の補正の検討が行われることが抑制される(ステップS018)。
【0066】
上記第1実施形態では、ステップS008が複数回(p回)行われると、コーナーCの入口の探索範囲Aは、A=(p+1)αとなり、ステップS008が行われる度に、コーナーCの入口の探索範囲Aが拡大する。一旦、拡大されたコーナーCの入口の探索範囲Aを狭くする手段は設けられていない。これに対して、本変形例では、上記望ましいケースの回数Nが閾値以上になった場合には、コーナーCの入口の探索範囲Aを確定してしまう(ステップS017)ため、上記第1実施形態の上記問題が抑制される。
【0067】
(第2実施形態)
次に、図5から図7を参照して、第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態において、上記第1実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
【0068】
第2実施形態は、ナビゲーションシステム装置に記憶されている道路情報と車両の位置情報からコーナーを検出し、コーナーの手前で車両を減速制御し、また、コーナー検知フラグの探索範囲を運転者の操作から判断して更新させることで、減速制御の開始のタイミングを運転者の意図または好みに近づける学習機能を備えた車両用駆動力制御装置であって、更新したコーナー検知フラグの探索範囲を各コーナーの位置情報と共に記憶させることで、コーナー毎に運転者の意図または好みに応じた減速制御開始タイミングを実現するものである。
【0069】
即ち、コーナー検知フラグの探索範囲の補正を実施した場合には、コーナー位置と補正した探索範囲を記憶装置に記憶させ、次回、ナビゲーションシステム装置がコーナーの位置を検知した場合には、前回補正し記憶した探索範囲に切り替える。これにより、コーナー毎に適切な探索範囲が補正されるため、コーナー毎に適切な減速制御タイミングが得られる。また、コーナー毎の前回走行時における探索範囲の更新結果が反映されるため、探索範囲の変動が抑制され、その結果、減速制御開始タイミングの変動も抑制される。
【0070】
ここで、第2実施形態の課題について説明する。
【0071】
(1)上記第1実施形態では、コーナー検知フラグの探索範囲Aの補正が行われたが、その補正の判断は、各コーナー毎に行われていたわけではなかった。しかしながら、減速のタイミングは、コーナー毎に異なる。特に、コーナーC2(図示せず)の降坂である場合や、コーナーの曲がり度合いが大きい(コーナーの半径Rが小さい)場合には、コーナーC2の前方のコーナーC1よりも減速要求が出される地点が早くなる。そのため、コーナーC1とコーナーC2では、減速要求のタイミングが合わない場合がある。従来は、コーナー毎にコーナー検知フラグの探索範囲の補正を実施していないことから、各コーナーに適したコーナー検知フラグの探索範囲にならないためである。
【0072】
(2)同じコーナーC2を走行していても、コーナー検知フラグの探索範囲の補正が実施されている場合とされていない場合があり、走行毎に減速制御開始のタイミングが異なることがある。即ち、上記コーナーC2の前にコーナーC1がある場合に、そのコーナーC1での走行の仕方(アクセルOFFのタイミング)によって、コーナーC1のコーナー検知フラグの探索範囲は、異なる値に更新される。そのコーナーC1についての更新されたコーナー検知フラグの探索範囲によって、上記コーナーC2での減速制御の開始タイミングが異なってしまう。このことから、コーナーC1でのコーナー検知フラグの探索範囲をそのままコーナーC2の探索範囲に適用するのは好ましくない。
【0073】
次に、図7を参照して、従来の動作について説明する。
【0074】
コーナー検知の探索範囲Aは、1つ手前のコーナーにおける探索範囲更新の結果によって、A(初期値)またはBとなり、そのコースを走行する度に探索範囲が異なり、場合によっては、目前のコーナーに対し、探索範囲が短いために、コーナー検知フラグが立つ前に、アクセルをON状態からOFF状態にしてしまう可能性がある。
【0075】
コーナーC2の直前のコーナーC1(図示せず)で探索範囲Aが補正されていない場合(図1のステップS006−Y)、又は探索範囲Aが初期値に更新されている場合には、探索範囲Aは、符号901で示す初期値である。この場合には、コーナーC2の探索範囲Aは、A(初期値)901のままである。コーナーC1とコーナーC2とは、コーナーの曲がり度合いや路面勾配が異なる場合があるため、コーナーC1の場合に比べて、コーナーC2の場合には、コーナーの入口から遠方でアクセルOFFがなされる場合がある。
【0076】
即ち、コーナーC2への進入に際して、探索範囲A(初期値)901の外側の符号T2の地点でアクセルOFFされる場合(矢印Y5参照)が少なくなく、この場合には、コーナーC2の次のコーナーから、探索範囲Aは、探索範囲A(初期値)901にαが加算された値に更新されるが、コーナーC2への進入時には、アクセルOFFの地点T2で、コーナー検知フラグ903が立っていないため、アクセルのOFF(T2地点)と減速制御の開始のタイミング903が異なると、運転者は、違和感を覚えてしまう。
【0077】
一方、コーナーC1で探索範囲Aが補正されている結果、探索範囲Aが符号902で示すように補正されている場合には、コーナーC2の探索範囲Aは、探索範囲A902である。上述したように、コーナーC1とコーナーC2とは、コーナーの曲がり度合いや路面勾配が異なる場合があるため、コーナーC1の場合に比べて、コーナーC2の場合には、コーナーの入口から遠方でアクセルOFFがなされる場合がある。
【0078】
即ち、そのコーナーC2への進入に際して、探索範囲A902の外側の符号T2の地点でアクセルOFFされた場合(矢印Y6参照)が少なくなく、この場合には、コーナーC2の次のコーナーから、探索範囲A902にαが加算された値に探索範囲Aが更新されるが、コーナーC2への進入時には、アクセルOFFの地点T2で、コーナー検知フラグ904が立っていないため、アクセルのOFF(T2地点)と減速制御の開始のタイミング904が異なると、運転者は、違和感を覚えてしまう。
【0079】
次に、本実施形態の動作について図5及び図6を参照して説明する。
【0080】
以下に説明するように、本実施形態では、コーナー毎にコーナー検知フラグの探索範囲の補正の判断が行われ、コーナー毎にコーナー検知フラグの探索範囲が記憶され、コーナー毎に記憶されたコーナー検知フラグが読み出され、制御に用いられる。
【0081】
本実施形態では、前回走行の際に、探索範囲の更新が行われた場合には、コーナー位置と更新された探索範囲A(n)=A(n−1)+αを共に記憶する。ここで、nは各コースの走行履歴回数であり、nは今回を、n−1は前回を示す。
【0082】
その後、ナビゲーションシステム装置がコーナー位置を検知すると、探索範囲A(n)が記憶装置から読み込まれる。この探索範囲A(n)は、前回の探索範囲A(n−1)に基づいて補正がなされているため、コーナーに対するアクセルOFFのタイミングが、仮に前回と同等であれば、アクセルOFFの前にコーナー検知フラグが立っているため、減速制御開始タイミングの違和感が抑制される。また、アクセルOFFのタイミングが、コーナー検知フラグよりも早い場合でも、次回の走行に対し、今回の探索範囲A(n)に基づいて、次回の探索範囲A(n+1)の補正がなされるので、各コーナーに対する運転者のアクセルOFFタイミングのばらつきに対応することができる。
【0083】
[ステップS101]
図5のステップS101では、車両のナビゲーションシステム装置により、車両の前方のコーナーC2の位置を検出する。その判定の結果、車両の前方のコーナーC2の位置が検出できた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合にはステップS113に進む。図6に示すように、符号T1の地点で、車両の前方のコーナーC2の位置が検出できた場合には、ナビコーナー位置検知フラグ801が立ち上がる。
【0084】
[ステップS102]
ステップS102では、上記ステップS101にてその位置が検出されたコーナーC2について、コーナーC2の入口の探索範囲Aが記憶されているか否かが判断される。その判断の結果、コーナーC2の入口の探索範囲Aが記憶されている場合には、ステップS103に進み、そうでない場合にはステップS104に進む。本例では、コーナーC2を初めて走行する場合を想定して、コーナーC2の入口の探索範囲Aが記憶されておらず、ステップS104に進んだとして説明する。
【0085】
[ステップS103]
ステップS103では、上記ステップS102にて記憶されていると判断された、そのコーナーC2の入口の探索範囲Aが読み出される。
【0086】
[ステップS104]
ステップS104では、そのコーナーC2の入口の探索範囲Aの初期化が行われる。本例では、コーナーC2を初めて走行するという前提であるため、予め設定された基準値である探索範囲A(n−1)(初期値)805にて制御が行われる。
A=A(初期化)
【0087】
[ステップS105]〜[ステップS113]
ステップS105〜ステップS113は、上記第1実施形態の図1のステップS001〜ステップS009と同様である。T2地点でアクセルがOFFにされると(ステップS105−Y)、アクセルOFF地点T2からの距離Xの算出が開始される(ステップS106)。その後、アクセルOFFの状態のままであり(ステップS107−Y)、前方に障害物があったり、運転者による無意識による操作ではない場合(ステップS108−N)には、コーナー検知フラグがONであるか否かが判定される(ステップS109)。
【0088】
そのステップS109の判定の結果、探索範囲Aが初期値A(n−1)805であり、アクセルOFF地点がT2である場合には、コーナー検知フラグがOFFであるため(ステップS109−N)、本制御フローはリターンされ、T3の地点で初めてステップS109が肯定的に判定される。そのため、T2地点からの距離Xは0ではないことから(ステップS110−N)、ステップS111に進み、アクセルOFF地点T2からの距離Xが予め設定された閾値以下である場合(ステップS111−Y)には、コーナー検知フラグ条件がA(n)803=A(n−1)805+α806に更新される(ステップS112)。
【0089】
[ステップS114]
ステップS114では、更新後のコーナーC2の入口の探索範囲Aが記憶される。本例では、ステップS112にて、コーナー検知フラグ条件の更新があったので、その更新後の探索範囲A(n)803が記憶される。ステップS114の次に、本制御フローはリターンされる。
【0090】
次回、コーナーC2を走行する時には、上記リターン後の本制御フローにおいて、ステップS101が肯定的に判定された後、ステップS102でも肯定的に判定される。前回の制御フローのステップS114にて、コーナーC2について更新された探索範囲A(n)が記憶されているためである。
【0091】
その結果、ステップS103では、コーナーC2の入口の探索範囲A(n)803が読み出されることにより、探索範囲Aは、A(初期値)から記憶されているA(n)に更新される。そのため、前回と同様にT2地点でアクセルOFFがなされた場合であっても、その地点T2の前の地点T1にてコーナー検知用フラグがONとなっており(ステップS109−Y)、T2地点からの距離Xは0であるたるため、ステップS110は肯定的に判定される。
【0092】
ステップS110にて肯定的に判定された場合には、上記第1実施形態で述べたように、補正前のコーナーC2の入口の探索範囲A(n−1)805から補正後のコーナーC2の入口の探索範囲A(n)803に変更される前に比べて、減速制御の開始タイミングが早くなり、その結果、運転者が前方コーナーC2に対してブレーキを踏む頻度を下げることができる。また、アクセルがONの状態で、コーナー検知フラグ(補正後)を立たせることができており、アクセルの戻し操作(ON→OFF)が減速制御のトリガーとなり、アクセルのOFF(T2地点)と減速制御の開始のタイミングが同じとなることで、運転者の違和感が緩和される。
【0093】
従来は、上述したように、コーナー毎にコーナー検知フラグの探索範囲の判断や記憶・読み出しがなされていなかったため、例えば、コーナーC2の前のコーナーC1のコーナー検知フラグの探索範囲の補正の判断の結果をそのままコーナーC2で受ける場合があり、その結果、アクセルのOFF(T2地点)と減速制御の開始のタイミングが異なる場合があり、その場合には、運転者は、違和感を覚えていた。
【0094】
これに対して、本実施形態では、コーナー毎にコーナー検知フラグの探索範囲の判断や記憶・読み出しが行われるため、他のコーナーのコーナー検知フラグの探索範囲の補正の判断の影響を受けることが無い。よって、他のコーナーC1のコーナー検知フラグの探索範囲の補正の判断の結果をそのままコーナーC2で受ける場合がなく、その結果、アクセルのOFFと減速制御の開始のタイミングの相違により運転者が違和感を感じることが抑制される。
【0095】
上記第1及び第2の実施形態では、コーナーへの進入時の減速制御の開始条件であるコーナー検知フラグの補正技術に適用されたが、これに限定されない。コーナーのような道路環境と同様な車両前方の道路環境(自動車専用道路の退出路、交差点、信号機、料金所)への進入に対する減速制御の道路環境検知フラグの補正技術にも同様に適用することができる。例えば、車両前方の自動車専用道路の退出路から退出する際の減速制御の条件である退出路検知フラグの補正技術に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の第2変形例の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の第3変形例の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の効果を示すチャートである。
【図5】本発明の車両用駆動力制御装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の車両用駆動力制御装置の第2実施形態の効果を示すチャートである。
【図7】本発明の車両用駆動力制御装置の第2実施形態の問題点を示すチャートである。
【図8】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の概略構成図である。
【図9】本発明の車両用駆動力制御装置の第1実施形態の他の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
10 自動変速機
40 エンジン
90 加速度センサ
95 ナビゲーションシステム装置
114 スロットル開度センサ
116 エンジン回転数センサ
122 車速センサ
123 シフトポジションセンサ
130 制御回路
131 CPU
133 ROM
200 ブレーキ装置
230 ブレーキ制御回路
711 補正前の探索範囲
713 補正後の探索範囲
720 アクセルの状態
731 補正前のブレーキの状態
732 補正後のブレーキの状態
740 アクセルOFFからの距離
750 コーナーの入口までの距離
761 補正前のコーナー検知フラグ
762 補正後のコーナー検知フラグ
771 補正前の減速制御の状態
772 補正後の減速制御の状態
A コーナーの探索範囲
C コーナー
L コーナーの入口までの距離
S 閾値
X アクセルOFFからの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の道路環境を検出する手段と、
前記道路環境に対して予め設定された特定領域内に車両がいるか否かを判断する手段と、
運転者による減速意図が検出されたときに前記道路環境に対して適切な車両走行状態となるための減速度を作用させる手段と、
運転者が前記減速意図を示したときの車両位置が前記特定領域の外である場合に、前記特定領域を拡大する手段と
を備えたことを特徴とする車両用駆動力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用駆動力制御装置において、
前記特定領域を拡大する手段は、運転者が前記減速意図を示したときの車両位置が前記特定領域の外であり、前記運転者が前記減速意図を示したときの車両位置と前記特定領域との間の距離が予め設定された閾値以下である場合に、前記特定領域を拡大する
ことを特徴とする車両用駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用駆動力制御装置において、
前記特定領域の拡大は、前記道路環境毎に行われる
ことを特徴とする車両用駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−144915(P2008−144915A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334980(P2006−334980)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】