説明

車両

【課題】モータジェネレータの回転速度を制限する。
【解決手段】車両は、運転者が操作するスイッチと、スイッチが操作されると停止するエンジンと、モータジェネレータと、エンジン回転速度がゼロから増大するとモータジェネレータの回転速度が減少するようにエンジンの出力軸とモータジェネレータの出力軸とを連結する動力分割装置と、スイッチを操作することによってスイッチエンジンが停止した状態でモータジェネレータの回転速度が増大した場合、エンジン回転速度がゼロから増大するように制御するECUとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、内燃機関の停止時に、内燃機関に連結された電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、電動モータの出力軸回転速度が減少するように内燃機関の出力軸回転速度を増大させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−23919号公報(特許文献1)に開示されたエンジン始動制御システムによれば、車両の走行中に何らかの要因によりエンジンが停止した場合、プッシュスイッチが押下されたときはブレーキペダルが踏み込まれていなくてもエンジンを再始動させる技術が開示されている。
【0003】
また、近年、環境問題対策の1つとして、モータジェネレータとエンジンとを搭載したハイブリッド車が注目されている。このようなハイブリッド車としては、たとえば、駆動輪、エンジンおよびモータジェネレータの各要素が機械的に連結される車両が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−23919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなハイブリッド車においては、各要素が機械的に連結されていることにより、エンジンが停止していても、電動モータ(モータジェネレータ)の出力軸が負回転している場合があり得る。このような場合にエンジンをクランキングすべくモータジェネレータを駆動すると、モータジェネレータが発電し得る。このときの発電は意図したものではない。そのため、たとえば、モータジェネレータの負回転方向への出力軸回転速度が過剰であると、必要以上に電力が発電され得る。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電動モータの出力軸回転速度を制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両は、運転者が操作するスイッチと、スイッチが操作されることによって停止する内燃機関と、電動モータと、内燃機関の出力軸回転速度がゼロから増大すると電動モータの出力軸回転速度が減少するように内燃機関の出力軸と電動モータの出力軸とを連結する連結装置と、スイッチが操作されることによって内燃機関が停止した状態で電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、内燃機関の出力軸回転速度がゼロから増大するように制御する制御ユニットとを備える。
【0008】
この構成によると、内燃機関の停止中に電動モータの出力軸回転速度が増大すると、電動モータの出力軸回転速度を減少すべく、内燃機関の出力軸回転速度が増大される。したがって、電動モータの出力軸回転速度の上昇が制限される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両の全体ブロック図である。
【図2】動力分割装置の共線図を示す図である。
【図3】ECUの機能ブロック図である。
【図4】車速が増大した場合の動力分割装置の共線図を示す図である。
【図5】エンジンを始動したときの動力分割装置の共線図を示す図である。
【図6】エンジンをモータリングしたときの動力分割装置の共線図を示す図である。
【図7】ECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪80と、スタートスイッチ150と、制動装置151と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
【0012】
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
【0013】
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
【0014】
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
【0015】
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
【0016】
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104とを含む。燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。
【0017】
さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
【0018】
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸(出力軸)の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸(出力軸)は、駆動軸16に連結される。
【0019】
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
【0020】
エンジン10、第1MG20および第2MG30が動力分割装置40によって連結されることにより、第1MG20の回転速度Nm1と、エンジン回転速度Neと、第2MG30の回転速度Nm2とは、図2の共線図上で1本の直線で結ばれる関係を維持するように各要素の回転速度Nm1,Ne,Nm2が変化する。
【0021】
図2に示す共線図の三本の縦軸のうちの左側の縦軸がサンギヤ50の回転速度、すなわち、第1MG20の回転速度Nm1を示す。また、図2に示す共線図の中央の縦軸がキャリア54の回転速度、すなわち、エンジン回転速度Neを示す。また、図2に示す共線図の右側の縦軸がリングギヤ56の回転速度、すなわち、第2MG30の回転速度Nm2を示す。なお、図2の共線図の各縦軸の矢印の方向が正回転方向を示し、矢印の方向と逆方向が負回転方向を示す。
【0022】
一例として、図2の実線に示すように、車両1が、第1MG20の回転速度Nm1がNm1(0)であって、エンジン回転速度NeがNe(0)であって、かつ、第2MG30の回転速度Nm2がNm2(0)であると想定する。
【0023】
動力分割装置40は、車両が走行し、かつエンジン10が停止した場合においても、第1MG20の回転軸を回転させる。車両1の高速走行中に車両1のシステムが停止状態にされた場合、エンジン10への燃料噴射を停止すると、エンジン回転速度Neはゼロになるように低下する。このとき、図2の破線に示すように、第1MG20の回転速度Nm1がNm1(0)からNm1(1)へと負回転方向に回転速度が増加する。したがって、車速が高いほど、エンジン回転速度Neがゼロになる場合の(エンジン10の回転が停止した場合の)第1MG20の回転速度Nm1がより高くなり得る。
【0024】
逆に、エンジン回転速度Neがゼロから増大すると、第1MG20の回転速度Nm1がNm1(1)からNm1(0)へと減少する。したがって、車速が同じであれば、エンジン回転速度Neがゼロから増大した場合は、エンジン回転速度Neがゼロである場合に比べて第1MG20の負回転方向の回転速度Nm1が小さい。
【0025】
以下、車両1が走行中であって、エンジン回転速度Neがゼロである場合に、第1MG20を用いてエンジン10を始動させる場合を想定する。この場合、第1MG20の回転速度Nm1をNm1(1)(図2の破線)からNm1(0)(図2の実線)に引き上げることによって、エンジン回転速度Neを上昇させる必要がある。
【0026】
第1MG20の回転速度をNm1(1)からNm1(0)まで上昇させるべく、第1MG20の回転方向(負回転方向)と反対の正回転方向のトルクを生じさせると、第1MG20が負回転方向に回転しているため、第1MG20は発電する。
【0027】
このとき、たとえば、第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が過剰であると、必要以上に電力が発電され得る。そこで、本実施の形態においては、後述するように、第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が制限される。
【0028】
図1に戻って、減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
【0029】
PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
【0030】
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
【0031】
バッテリ70には、バッテリ70の電池温度TBを検出するための電池温度センサ156と、バッテリ70の電流IBを検出するための電流センサ158と、バッテリ70の電圧VBを検出するための電圧センサ160とが設けられる。
【0032】
電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
【0033】
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
【0034】
ECU200は、たとえば、車両1のシステムが停止状態である場合に信号STを受信した場合に、起動指示を受けたと判断して、車両1のシステムを停止状態から起動状態に移行させる。また、ECU200は、車両1のシステムが起動状態である場合に信号STを受信した場合に、停止指示を受けた判断して、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。以下の説明において、車両1のシステムが起動状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオフ操作といい、車両1のシステムが停止状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオン操作という。また、車両1のシステムが起動状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器に電力が供給されるなどして、作動可能な状態となる。一方、車両1のシステムが停止状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器のうちの一部への電力の供給が停止されるなどして、作動停止状態となる。
【0035】
本実施の形態において、車両1のシステムが停止状態である場合であっても、ECU200は起動状態に維持される。
【0036】
第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
【0037】
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
【0038】
制動装置151は、ブレーキアクチュエータ152と、ディスクブレーキ154とを含む。ディスクブレーキ154は、車輪と一体的に回転するブレーキディスクと、油圧を用いてブレーキディスクの回転を制限するブレーキキャリパとを含む。ブレーキキャリパは、ブレーキディスクを回転軸と平行な方向で挟み込むように設けられるブレーキパッドと、油圧をブレーキパッドに伝達するためのホイールシリンダとを含む。ブレーキアクチュエータ152は、ECU200から受信する制御信号S3に基づいて、運転者がブレーキペダルを踏み込むことによって発生する油圧と、ポンプおよび電磁弁等を用いて発生する油圧とを調整してホイールシリンダに供給される油圧を調整する。図1において、制動装置151は、後輪の右側にのみ図示されるが、制動装置151は、各車輪毎に設けられるものとする。
【0039】
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。さらに、ECU200は、ブレーキアクチュエータ152を制御するための制御信号S3を生成し、その生成した制御信号S3をブレーキアクチュエータ152へ出力する。
【0040】
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
【0041】
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
【0042】
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
【0043】
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、バッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、バッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0044】
ECU200は、バッテリ70の充電量および放電量を制御する際に、電池温度TBおよび現在のSOCに基づいて、バッテリ70の充電時に許容される入力電力(以下の説明においては、「充電電力上限値Win」と記載する)およびバッテリ70の放電時に許容される出力電力(以下の説明においては、「放電電力上限値Wout」と記載する)を設定する。たとえば、現在のSOCが低下すると、放電電力上限値Woutは徐々に低く設定される。一方、現在のSOCが高くなると、充電電力上限値Winは徐々に低下するように設定される。
【0045】
また、バッテリ70として用いられる二次電池は、低温時に内部抵抗が上昇する温度依存性を有する。また、高温時には、さらなる発熱によって温度が過上昇することを防止する必要がある。このため、電池温度TBの低温時および高温時には、放電電力上限値Woutおよび充電電力上限値Winの各々を低下させることが好ましい。ECU200は、電池温度TBおよび現在SOCに応じて、たとえば、マップ等を用いることによって、充電電力上限値Winおよび放電電力上限値Woutを設定する。
【0046】
図3に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、判定部202と、制御部204とを含む。
【0047】
判定部202は、IGオフ操作がなされたか否かを判定する。判定部202は、たとえば車両1のシステムが起動状態である場合にスタートスイッチ150から信号STを受信した場合に、IGオフ操作がなされたと判定する。なお、判定部202は、たとえば、IGオフ操作がなされた場合にIGオフ判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0048】
さらに、判定部202は、車両1が走行中であるか否かを判定する。判定部202は、車速Vが所定車速V(0)よりも高い場合に、車両1が走行中であると判定する。なお、判定部202は、車両1が走行中であると判定された場合に走行判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0049】
さらに、判定部202は、IGオフ操作がなされたことによってエンジン10が停止した状態で車速が増大したか否かを判定する。すなわち、判定部202は、エンジン回転速度Neがゼロである状態で第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が増大したか否かを判定する。
【0050】
さらに、判定部202は、車両が降坂路を走行中であるか否かを判定する。路面が降坂路であるか否かを判定する手法には、周知の一般的な技術を利用して判定すればよいため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0051】
制御部204は、IGオフ操作がなされると、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。走行中であっても、IGオフ操作がなされると、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。その結果、エンジン10が停止され、エンジン回転速度Neがゼロになる。前述したように、車両1のシステムが停止状態である場合であっても、ECU200は起動状態に維持される。信号STのみを監視する電源ECUを別途設け、この電源ECUを常時起動状態に維持し、IGオン操作がなされると、電源ECUがECU200を起動するようにしてもよい。ECU200を停止可能にした場合、IGオフ操作がなされると、車速が零になるまではECU200を起動状態に維持し、車速が零になるとECU200を停止状態にするようにしてもよい。
【0052】
さらに、制御部204は、IGオフ操作がなされることによりエンジン10が停止した状態で、図4に実線で示すように、車速が増大した場合、すなわち第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が増大した場合、エンジン回転速度Neがゼロから増大するように制御する。
【0053】
より具体的には、降坂路において、IGオフ操作がなされることによりエンジン10が停止した状態で車速が増大した場合、すなわち第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が増大した場合、エンジン回転速度Neがゼロから増大される。エンジン回転速度Neがゼロから増大されることにより、第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が減少される。
【0054】
たとえば、図5に実線で示すように、エンジン10が始動するように制御される。エンジン10の始動後は、エンジン10が自立運転(アイドル運転)するように制御される。図6において矢印で示すように、正回転方向にトルクを出力するように第1MG20を駆動することによってエンジン10をモータリングし、エンジン回転速度Neがゼロから増大するように制御してもよい。
【0055】
その他、車速がしきい値以上になるまで増大した場合、すなわち、第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1がしきい値以上になるまで増大した場合、エンジン回転速度Neがゼロから増大するように制御してもよい。
【0056】
本実施の形態において、判定部202と、制御部204とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0057】
図7を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行される処理について説明する。
【0058】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、IGオフ操作がされたか否かを判定する。IGオフ操作がされた場合(S100にてYES)、S102にて、ECU200は、車両1のシステムを停止する。したがって、エンジン10が停止される。すなわち、エンジン回転速度Neがゼロにされる。
【0059】
その後、S104にて、ECU200は、車両1が走行中であるか否かを判定する。車両1が走行中である場合(S104にてYES)、S106にて、ECU200は、車速が増大したか否かを判定する。すなわち、第1MG20の負回転方向への回転速度Nm1が増大したか否かが判定される。
【0060】
車速が増大すると(S106にてYES)、S108にて、ECU200は、エンジン10が始動し、自立運転するように制御する。エンジン10を始動するために、第1MG20は、エンジン10をクランキングするように制御される。すなわち、エンジン10が完爆するまで正回転方向にトルクを出力するように第1MG20が制御される。
【0061】
なお、エンジン10を始動せずに、第1MG20によりエンジン10をモータリングするようにしてもよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態において、IGオフ操作されたことによるエンジン10の停止中に第1MG20の回転速度Nm1が増大すると、第1MG20の回転速度Nm1を減少すべく、エンジン回転速度Neが増大される。その結果、第1MG20の回転速度Nm1の上昇が制限される。
【0063】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 車両、10 エンジン、11 エンジン回転速度センサ、12 第1レゾルバ、13 第2レゾルバ、14 車輪速センサ、16 駆動軸、20 第1MG、30 第2MG、40 動力分割装置、50 サンギヤ、52 ピニオンギヤ、54 キャリア、56 リングギヤ、58 減速機、70 バッテリ、80 駆動輪、102 気筒、104 燃料噴射装置、150 スタートスイッチ、156 電池温度センサ、158 電流センサ、160 電圧センサ、200 ECU、202 判定部、204 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が操作するスイッチと、
前記スイッチが操作されることによって停止する内燃機関と、
電動モータと、
前記内燃機関の出力軸回転速度がゼロから増大すると前記電動モータの出力軸回転速度が減少するように前記内燃機関の出力軸と前記電動モータの出力軸とを連結する連結装置と、
前記スイッチが操作されることによって前記内燃機関が停止した状態で前記電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、前記内燃機関の出力軸回転速度がゼロから増大するように制御する制御ユニットとを備える、車両。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記スイッチが操作されることによって前記内燃機関が停止した状態で前記電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、前記内燃機関が始動するように制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記スイッチが操作されることによって前記内燃機関が停止した状態で前記電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、前記内燃機関の出力軸回転速度が増大するように前記電動モータを駆動する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記連結装置は、サンギヤ、キャリア、およびリングギヤを含み、
前記サンギヤは前記電動モータの出力軸に連結され、
前記キャリアは前記内燃機関の出力軸に連結され、
前記リングギヤは車輪に連結される、請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御ユニットは、降坂路において、前記スイッチが操作されることによって前記内燃機関が停止した状態で前記電動モータの出力軸回転速度が増大した場合、前記電動モータの出力軸回転速度が減少するように制御する、請求項4に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162097(P2012−162097A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21589(P2011−21589)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】