運転支援システム、送信装置及び受信装置
【課題】誤差の発生を最小限に抑えた高精度な運転支援システムを提供する。
【解決手段】 地図画面表示時点における他車両の位置を推定して地図画面の表示を行う。つまり、他車両のナビゲーション装置内での処理にかかった時間や、他車両のナビゲーション装置と自車両のナビゲーション装置との間の通信にかかった時間や、自車両のナビゲーション装置が通信情報を受信してから提示情報を生成する時間等による遅延の影響を解消又は軽減させる。このように遅延の影響が考慮するようになっていれば、報知する他車位置の精度が向上する。
【解決手段】 地図画面表示時点における他車両の位置を推定して地図画面の表示を行う。つまり、他車両のナビゲーション装置内での処理にかかった時間や、他車両のナビゲーション装置と自車両のナビゲーション装置との間の通信にかかった時間や、自車両のナビゲーション装置が通信情報を受信してから提示情報を生成する時間等による遅延の影響を解消又は軽減させる。このように遅延の影響が考慮するようになっていれば、報知する他車位置の精度が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点等の運転者が特に注意すべき場所において運転者の支援を行う運転支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記の特許文献1や特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の技術は、路側カメラや交通管理センタ等のインフラが整備されていない場合でも、道路・交差点上に生じている交通状況等を周辺に存在する車両に通知することができるシステムに関するものである。具体的には、各車両において周囲の画像を撮影し、撮影した画像から車両周囲の交通状況や異常事態を検出する。そして、その検出結果を無線にて他車両に送信することにより、高コストのインフラが整備されていない状況でも、運転支援を実現することを可能にしている。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術は、GPSを利用する位置検出において、周辺の建物等によってGPS衛星電波が遮断される場合でも高精度な位置検出を可能とするシステムに関するものである。具体的には、GPS衛星の補足が困難な場所、例えば、都市部、地下、高架下などに疑似衛星を設置し、常に4つ以上の衛星電波を取得可能にすることにより、位置検出精度を向上させるものである。
【特許文献1】特開2001−283381号公報
【特許文献1】特開2003−296882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たしかに、上記特許文献1や特許文献2に記載の技術は、運転支援システムの普及に貢献したり、運転支援システムの利用性を高めたりすることができるであろう。しかしながら、運転者に報知される情報の精度という面ではまだ十分であるとは言えない。具体的には、車両間で通信にかかった時間や、各機器の内部処理にかかった時間が考慮されておらず、結果として大きな誤差を生じる結果となっている。
【0005】
例えば、現在実用化が検討されているシステムでは、無線通信の方法として無線LAN(例えば、IEEE 802.11b等)が検討されているが、一般的に無線LANは、CSMA/CA方式を基本としているためリアルタイム性が十分に保証されていない。つまり、CSMA/CA方式では、データを送信したいノード(機器)は通信路の通信状況を監視し、通信路が空くと送信を開始する。このとき、もし複数のノードが同時に送信を開始すると通信路内でデータが衝突して壊れるため、衝突が発生したノードは送信を中止し、ランダムな時間待って送信を再開する。したがって、無線LANはリアルタイム性が十分に保証されているとは言えない。
【0006】
また、例えば、ミリ波レーダで障害物の存在を検知したとしても、反射波が受信部で得られた時点から、得られた反射波を解析して障害物の存在をミリ波レーダ装置が認識する時点までには、ある程度の時間を要する。ミリ波レーダ装置が搭載された自車両内で認識結果を利用するだけなら、この時間は誤差として問題のない程度かもしれないが、他車両に送信して、他車両の運転者に報知されるまでにも時間を要してしまうことを考慮すれば、ミリ波レーダ装置が障害物を認識するまでに要した時間も、トータルの誤差を減らすためには無視すべきではないと考えられる。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたものであり、誤差の発生を最小限に抑えた高精度な運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の運転支援システムにおける送信装置は、状況情報取得手段により取得された状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を通信手段によって受信装置へ送信させる制御手段を備える。一方、受信装置は、送信装置より受信した通信情報に含まれる状況情報から、時刻情報によって特定される真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける状況情報を推定し、その推定した状況情報を報知手段に報知させる制御手段を備える。
【0009】
つまり、本発明の運転支援装置は、現在時点おける状況情報の推定を行うことにより、送信装置内での処理にかかった時間や、送信装置と受信装置との間の通信にかかった時間や、受信装置が状況情報を受信してから推定を開始するまでの時間等による遅延の影響を解消又は軽減させる。なお、「状況情報についての真の時刻」というのは、その状況をセンサ等によって検知した時刻でも、センサ等の情報に基づいて状況が認識された時刻でもなく、状況そのものの時刻を意味する。例えば、車載カメラを例にとれば、車両前方に飛び出してきた自転車が道路のセンターラインをまたいだ時刻が真の時刻であり、当該自転車が道路のセンターラインをまたいだ状況を車載カメラの撮像素子(例えばCCD)が捉えて映像信号として出力した時刻や、その映像信号から自転車の存在をCPUが解析して認識した時刻は、ここで言う「真の時刻」ではない。しかしながら、これらの時刻が、真の時刻(自転車が道路のセンターラインをまたいだ際の時刻)と比較した場合に、実質的に同一視できる程度の時間差しかないのであれば、これらの時刻を真の時刻として扱ってもよい。また、各制御手段が管理する「時刻」というのは、一般的な時刻、つまり「1時23分45秒」というような時刻であってもよいし、何らかの基準時点からの経過カウント数であってもよい。
【0010】
したがって、このように遅延の影響を考慮するようになっていれば、報知する状況情報の精度を従来より向上させることができる。
また、請求項2に記載の運転支援システムにおける送信装置は、請求項1に記載の運転支援システムにおける送信装置と異なり、送信装置の周辺の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段を備える。一方、受信装置は、請求項1に記載の運転支援システムのものと同様である。
【0011】
したがって、請求項2に記載の運転支援システムにおける請求項1に記載の運転支援システムとの相違点は、送信装置が車両に搭載されておらず、その搭載車両についての情報を取得しないことである。なお、送信装置は、路肩、歩道上、道路を見下ろせる位置等に設置されることを想定している。この相違点以外の点については、請求項2に記載の運転支援システムは請求項1に記載の運転支援システムについて言及したものが全て当てはまる。
【0012】
ところで、受信装置の制御手段が行う推定にもある程度の時間を要すると考えられるため、受信装置の制御手段は、推定にかかる時間も考慮して推定を行うとよい(請求項3)。例えば、推定処理に0.5秒要するのであれば、推定処理の開始時から0.5秒後の状況情報を推定するようになっているとよい。このようになっていれば、より報知される状況情報の精度が向上する。
【0013】
また、報知を音声によって行うのであれば、音声出力を開始してから実際に状況情報の報知を終えるまでには時間を要する場合がある。このため、推定を行ってから、その推定した状況情報を報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して推定を行うようになっていてもよい(請求項4)。このように、状況情報を報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して推定を行うようになっていれば、より正確な情報をユーザに報知することができる。
【0014】
また、状況情報の推定というのは、状況情報の種類によって様々な方法が考えられる。例えば、受信した状況情報が、送信装置が搭載された車両の位置情報であり、その車両が移動しているのであれば、受信したその車両の位置情報からその車両の現在の位置を推定すればよい。また、受信した状況情報が、送信装置が搭載された車両の周囲に存在する障害物の位置情報であり、その障害物が移動しているのであれば、受信したその障害物の位置情報からその障害物の現在の位置を推定すればよい。なお、特に状況情報が、送信装置が搭載された車両の位置情報であるような場合には、運転支援システムは次のようになっているとよい。まず、案内経路情報を取得する案内経路情報取得手段、又は、方向指示器の動作情報を取得する方向指示器動作情報取得手段を備えるように運転支援システムを構成する。そして、受信装置の制御手段が行う推定は、案内経路情報取得手段により取得される案内経路情報、又は、方向指示器動作情報取得手段により取得される動作情報を考慮して推定を行うようにする(請求項5)。ここで言う「考慮して推定を行う」というのは、例えば、右折の方向指示器が動作していれば、当該車両は右折する可能性が高いため、右折レーン上の位置や右折後の道路上の位置を当該車両の現在位置として推定することである。このようになっていれば、より状況情報の推定を精度よく行うことができる。
【0015】
ところで、上述した推定を精度良く行うためには、前提として、送信装置が管理する時刻と、受信装置が管理する時刻とが高度に一致している必要がある。そのために、例えば、各々の装置が原子時計のような高度に正確な時計を有していてもよいが、各装置の構成が複雑になってしまう。そこで、送信装置及び受信装置は、さらに、時刻の同期を行う時刻同期手段をそれぞれ備え、送信装置の制御手段は、時刻情報として時刻同期手段により同期されたものを用い、受信装置の制御手段は、時刻同期手段により同期された時刻を用いて推定を行うようになっているとよい(請求項6)。
【0016】
このようになっていれば、原子時計のような高度に正確な時計を有していなくても、送信装置が管理する時刻と、受信装置が管理する時刻とを一致させることができる。
なお、時刻同期手段の具体的な同期方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、上述した通信情報をやりとりする前に、同期に必要な情報を交換して同期を行うようになっていてもよいが、特に、次のようになっているとよい。つまり、送信装置の時刻同期手段及び受信装置の時刻同期手段は、GPS衛星からの信号又は路側機の内部時計からの信号を利用して時刻の同期を行うようになっているとよい(請求項7)。
【0017】
このようになっていれば、送信装置と受信装置の間の時刻を容易に同期させることができる。
ところで、状況情報取得手段により取得される状況情報自体に誤差が含まれることも多い。例えば、GPSによって得られる位置情報は、一定量の誤差を有することが一般的である。したがって、このような状況情報自体の誤差も報知するようになっているとよい(請求項8)。
【0018】
このようになっていれば、ユーザは報知された誤差を考慮して状況情報の意味するところを判断することができ、結果として報知される状況情報の利用性が高まる。
また、通信環境によっては通信が途切れる場合も考えられる。その場合は、新たな報知を行わないことも考えられるが、それでは使い勝手の点で良いとは言いづらい。そこで、受信装置の制御手段は、送信装置より通信情報が受信できなくても先に受信した通信情報を用いて上述した推定を行い、その推定した状況情報を報知手段に報知させるようになっているとよい(請求項9)。
【0019】
このようになっていれば、一時的に送信装置より通信情報が受信できなくても、受信装置は、その時点における推定された状況情報を逐一報知するため、運転支援システムの使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[構成の説明]
図1は、本発明の送信装置及び受信装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
ナビゲーション装置20は車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、車内LANに接続された各種ECU等と通信を行う車内LAN通信部33と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28,車内LAN通信部33からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27,車内LAN通信部33を制御する制御部29とを備えている。
【0023】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0024】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。尚、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0025】
リモコン23aは、複数のボタンから構成されており、何れかのボタンが押下されるとそのボタンの種類に応じた信号が赤外線等の近距離無線通信を介してリモコンセンサ23bに届くように構成されている。
【0026】
リモコンセンサ23bは、リモコン23aから送られる信号を受信し、受信した信号を制御部29へ出力するようになっている。
外部通信機24は、他のナビゲーション装置と近距離無線通信を行う機能を担い、例えば無線LAN(IEEE 802.11b/g)を利用する。
【0027】
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ、運転支援エリアデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。また、列挙したデータのうち、運転支援エリアデータというのは、交差点や合流地点等の事故が比較的多発するエリアを特定するための情報であり、当該エリアの各頂点の緯度座標と経度座標とからなる。
【0028】
表示部26は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなり、表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0029】
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0030】
車内LAN通信部33は、車内LANに接続された図示しない各種のECU(エンジンECU、AT−ECU、ブレーキECU等)や図示しない各種のセンサ(方向指示器センサ、スピードセンサ、ドア開閉センサ等)やミリ波レーダ装置40との通信を担う。なお、ミリ波レーダ装置40は、車両前端に設けられた送信部(図示せず)からミリ波を発信し、前方の物体からの反射波を車両前端に設けられた受信部が受信することにより、車両前方の物体の存在状況を把握することを可能とした装置である。なお、把握した車両前方の物体の存在状況は、車両前方状況データとしてナビゲーション装置20へ出力するように構成されている。
【0031】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する現在地表示処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する経路案内処理等を実行する。
【0032】
[動作の説明]
次に制御部29が実行する送信処理、割り込み処理、受信処理について説明する。なお、送信処理と受信処理については、制御部29は何れか一方のみを実行するようになっていてもよい。また、制御部29が実行するその他の処理、例えば、現在位置表示処理や、経路算出処理や、経路案内処理等は、広く知られた一般的な処理であるため説明を省略する。
【0033】
(1)送信処理
まず、制御部29が実行する送信処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、送信処理はナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0034】
制御部29は、送信処理の実行を開始すると、まず現在位置が運転支援エリア内か否かを判定する(S105)。これは、位置検出器21からの信号に基づいて特定する車両の現在位置と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から読み込んだ運転支援エリアデータとに基づいて判定する。すなわち、車両の現在位置が運転支援エリアとして設定されている場所であるか否かを判定することである。現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合は(S105:Yes)、S120へ処理を移行し、現在位置は運転支援エリア内でない判定した場合は(S105:No)、S110へ処理を移行する。
【0035】
現在位置は運転支援エリア内でないと判定した場合に進むS110では基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。
【0036】
続いて、後述する計測動作を行っていれば計測動作を終了し(S115)、S105へ処理を戻す。
一方、現在位置は、運転支援エリア内であると判定した場合に進むS120では基準時刻情報の受信の割り込みを許可する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0037】
続いて、制御部29は計測動作を開始する(S125)。これは、ミリ波レーダ装置40に動作開始指示を送ると共に、ミリ波レーダ装置40から出力される車両前方状況データの受け取りを開始することである。
【0038】
続いて、制御部29は、周辺に他車両が存在するか否かを判定する(S130)。これは、ミリ波レーダ装置40から得られる車両前方状況データを解析することによって行う。なお、ミリ波レーダ装置40以外にも、車両の側方や後方に存在する物体の状況を把握可能な装置(例えば、カメラやソナー等)が車両に搭載されているのであれば、それらからの情報も利用して判定を行うとよい。このS130において、周辺に他車両が存在すると判定した場合は(S130:Yes)、S135へ処理を移行し、周辺に他車両が存在しないと判定した場合は(S130:No)、S145へ処理を移行する。
【0039】
周辺に他車両が存在すると判定した場合に進むS135では送信用の通信情報を生成する。この通信情報というのは、自車両の位置情報や、自車両が検知した車両前方の状況等を周辺の他車両に送信するための情報である。ここで、この通信情報の具体例について図3のデータフォーマット図を用いて説明する。
【0040】
図3(a)は、通信情報の全体を示すデータフォーマット図である。通信情報は、ヘッダ201と生成時刻203と送信情報処理時間205と送信車ID207と送信車種別209と送信車位置211と送信車速度213と送信車加速度215と送信車進行方向217と送信車位置誤差218とその他データ219とチェックデータ221とから構成される。
【0041】
ヘッダ201は、プロトコル上必要な情報や、通信情報であることを識別する情報等から構成される。
生成時刻203は、通信情報を生成した際の時刻である(より正確に言えば後述する基準時点イの時刻である)。
【0042】
送信情報処理時間205は、当該通信情報の生成に用いようとしている車両前方状況データを制御部29がミリ波レーダ装置40から受信した時点から、制御部29が車両前方状況データを処理して実際に通信情報にセットする時点(基準時点イ)までに経過した時間である。なお、この経過時間に更にミリ波レーダ装置40内での処理時間も付加するとよい。また、これらの時間は実測してもよいし、時間にばらつきが少ないのであれば予め定められた一定の時間を用いてもよい。
【0043】
送信車ID207は、自車両を特定するための一意のIDであり、例えば車両ナンバーや乱数等が考えられる。
送信車種別209は、自車両の種別(大型車,普通車,自動二輪車等)を示す情報である。
【0044】
送信車位置211は、自車両の中心点の緯度及び経度を表す情報であり、位置検出器21から得られる信号に基づいて特定される現在位置情報が用いられる。なお、高度を付加してもよい。
【0045】
送信車速度213は、自車両の移動速度であり、車内LAN通信部33を介して図示しないスピードセンサから得られる情報である。
送信車加速度215は、自車両の加速度であり、ジャイロスコープ21bから得られる情報である。
【0046】
送信車進行方向217は、自車両の方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも、ジャイロスコープ21bから得られる情報である。
【0047】
送信車位置誤差218は、位置検出器21から得られる信号に基づいて特定される現在位置の誤差である。緯度方向の誤差と経度方向の誤差とから構成される。これは、予め決められた値を用いるようになっていてもよいし、何らかの手法によって算出して求めてもよい。
【0048】
その他データ219は、ミリ波レーダ装置40から受信した車両前方状況データを処理して得られたデータや、車内LAN通信部33を介して入力した各種の情報を示すデータである。詳細については後述する。
【0049】
チェックデータ221は、通信情報の送受信が正常に行われたことを受信側にて確認するためのデータである。チェックデータ221を除いた通信情報を受信側にて所定の計算式に当てはめ、その結果得られたデータとチェックデータ221とが受信側において等しいことが確認できれば、送受信が正常に行われたと判断される。
【0050】
次に、その他データ219の例について幾つか説明する。
図3(b)は、その他データ219の一例のデータフォーマット図であるが、図3(b)に示すものは、予想衝突位置219aと衝突までの時間219bとから構成される。
【0051】
予測衝突位置219aは、自車両と車両前方の他車両との予測衝突位置を示す情報である。この情報は次のようにして得られる。まず、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理し、自車両と衝突の可能性がある車両を特定する。そして、その特定した車両の位置及び移動速度等の情報と、自車両の位置及び移動速度等の情報とから、衝突位置を算出することによって上記情報が得られる。なお、自車両と衝突の可能性がある車両が存在しなければ、予測衝突位置219aには、存在しない旨を示す情報がセットされる。
【0052】
衝突までの時間219bは、上記衝突までの時間であり、上記予測衝突位置まで到達するまでの時間である。なお、この時間は、上述した基準時点イからの時間である。
図3(c)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(c)に示すものは、周辺車両ID219cと、周辺車両位置219dと、周辺車両移動速度219eと周辺車両加速度219fと、周辺車両進行方向219gとから構成される。
【0053】
周辺車両ID219cは、自車両の周辺に存在する車両のうちの一台を一意に特定するための情報である。車両の特定は、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって行ったり、他の車両に搭載された同様のナビゲーション装置と通信をすることによって行う。なお、情報の具体例としては、車両ナンバーや乱数等が考えられる。
【0054】
周辺車両位置219dは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の位置情報である。具体的には、当該車両の中心点の緯度及び経度の情報である。ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。なお、高度を付加してもよい。
【0055】
周辺車両移動速度219eは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の移動速度である。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0056】
周辺車両加速度219fは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の加速度についての情報である。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0057】
周辺車両進行方向219gは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0058】
なお、自車両の周辺に存在する車両が複数台存在する場合は、周辺車両ID219c〜周辺車両進行方向219gの情報を複数組生成し、それら全てをその他データ219とするとよい。
【0059】
図3(d)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(d)に示すものは、方向指示器情報219hから構成される。この方向指示器情報219hは、車内LAN通信部33を介して方向指示器センサから得られる情報であり、何れの方向の方向指示器が動作しているかの情報、又は、何れの方向の方向指示器も動作していない旨を示す情報である。
【0060】
図3(e)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(e)に示すものは、案内経路データ219iから構成される。この案内経路データ219iは、案内経路についての情報であり、案内経路を構成するノードやリンク等の情報からなる。なお、経路案内が実行されていない場合には、その旨を示す情報がセットされる。
【0061】
その他データ219としては、上述したもの以外にも、例えば、自車両のシフトポジションに関する情報や、非常点滅表示器の動作状態に関する情報や、自車両が緊急車両である場合の緊急走行有無の情報や、自車両が営業車両である場合にその旨を示す情報や、自車両のブレーキ操作状態に関する情報や、乗員が入力又は選択したメッセージ(例えば、「お先にどうぞ」,「ありがとう」,「こんにちは」,「さようなら」,「合流します」,「通行します」,「渋滞のため減速します」等)をセットしてもよい。
【0062】
説明を図2に戻し、制御部29は送信用の通信情報の生成を終えると、生成した通信情報を、外部通信機24を介して周辺車両へ送信する(S140)。これはブロードキャストによって行う。
【0063】
続く、S145では運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定する(S145)。これは、ユーザによって操作スイッチ群22又はリモコン23aが操作され、運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定することである。運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合は(S145:Yes)、S150へ処理を移行し、運転支援の終了を意味する指令を受け付けていないと判定した場合は(S145:No)、S105へ処理を戻す。
【0064】
運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合に進むS150では、上記S125で開始した計測動作を終了すると共に基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する(S150)。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。これらを終えると、制御部29は本処理(送信処理)を終了する。
【0065】
(2)割り込み処理
次に、制御部29が実行する割り込み処理について図4のフローチャートを用いて説明する。割り込み処理は、GPS受信機21aが時刻を含むGPS情報の受信を受け、その情報が割り込み信号として制御部29に入力された際に実行が開始される。なお、割り込み処理は、制御部29に設けられた、割り込み処理の実行可否を意味するフラグが「実行可」である場合のみ実行が開始される。
【0066】
制御部29は、割り込み処理の実行を開始すると、まず、当該処理の開始の契機となったGPS情報から衛星の時刻を取り出し、制御部29の内部時計と比較する(S205)。
【0067】
続いて、制御部29の内部時計の時刻は、受信した衛星の時刻と同じであったか否かを判定する(S210)。同じであったと判定した場合は(S210:Yes)、本処理(割り込み処理)を終了し、同じでなかったと判定した場合は(S210:No)、S215へ処理を移行する。
【0068】
制御部29の内部時計の時刻と、受信した衛星の時刻とが同じでなかったと判定した場合に進むS215では、制御部29の内部時計の時刻を、受信した衛星の時刻によって修正する(更新する)。そして、制御部29は本処理(割り込み処理)を終了する。
【0069】
(3)受信処理
次に、制御部29が実行する受信処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、受信処理は、ナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0070】
制御部29は、受信処理の実行を開始すると、まず現在位置が運転支援エリア内か否かを判定する(S305)。これは、位置検出器21からの信号に基づいて特定する車両の現在位置と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から読み込んだ運転支援エリアデータとに基づいて判定する。すなわち、車両の現在位置が運転支援エリアとして設定されている場所であるか否かを判定することである。現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合は(S305:Yes)、S320へ処理を移行し、現在位置は運転支援エリア内ではないと判定した場合は(S305:No)、S310へ処理を移行する。
【0071】
現在位置運転支援エリア内でないと判定した場合に進むS310では基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。
【0072】
続いて、後述する受信動作を行っていれば受信動作を終了し(S315)、S305へ処理を戻す。
一方、現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合に進むS320では基準時刻情報の受信の割り込みを許可する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0073】
続いて、制御部29は受信動作を開始する(S325)。これは、外部通信機24の機能を有効にし、他のナビゲーション装置からの送信される通信情報の受信を待ち受ける状態にすることである。
【0074】
続いて、制御部29は外部通信機24が通信情報を受信したか否かを判定する(S330)。通信情報を受信したと判定した場合は(S330:Yes)、S335へ処理を移行し、通信情報を受信していないと判定した場合は(S330:No)、S345へ処理を移行する。
【0075】
通信情報を受信と判定した場合に進むS335では通信情報から提示情報を生成する。提示情報というのは、受信した通信情報を用いて生成されるユーザへの提示用の情報である。ここで、提示情報の一つである送信元車両の位置の生成について説明する。
【0076】
まず、受信した通信情報から、送信情報処理時間205と生成時刻203とを抽出する。そして、図6に示す式1に当てはめて全遅延時間を求める。なお、式1における送信情報処理時間は、抽出した送信情報処理時間205を用い、現在時刻は、制御部29が有する内部時計の現在時刻を用い、生成時刻は、抽出した生成時刻203を用い、表示処理時間は、現在時刻から最終的に表示部26へ情報が表示されるまでにかかる時間を用いる。なお、表示処理時間は過去の実際の表示処理時間等を考慮して決定するとよい。
【0077】
続いて、式1によって求めた全遅延時間を式2に当てはめて移動距離を求める。加速度は、受信した通信情報に含まれる送信車加速度215を用い、車速は、受信した通信情報に含まれる送信車速度213を用いる。なお、移動距離は、X方向(例えば東方向)の要素とY方向(例えば北方向)の要素とに分けて求めるとよい。
【0078】
続いて、式2によって求めた移動距離を式3に当てはめ、送信元車両の現在位置を求める。送信元車両の旧位置というのは、受信した通信情報に含まれる送信車位置211を用いる。送信元車両の現在位置も、X方向(例えば東方向)の要素とY方向(例えば北方向)の要素とに分けて求めるとよい。
【0079】
送信元車両以外の他車両についての情報(図3(c)参照)が受信した通信情報に含まれている場合には、各々の車両の現在位置について、上述した方法と同様の方法で算出する。
【0080】
説明を図5に戻し、続いて、制御部29は、S335で生成した提示情報に基づいた地図画面を表示部26に出力させる(S340)。ここで、図7を用いて表示部26に出力される地図画面について従来のものと比較しながら説明する。
【0081】
図7(a)に示す地図画面400は、従来のナビゲーション装置によって表示される地図画面400である。図7(a)に示すように、交差点Aから南北方向及び東西方向に道路が延び、従来のナビゲーション装置が搭載された自車両(車両アイコン401が対応)が交差点Aの南から北方向へ移動している。また、従来のナビゲーション装置が搭載された他車両(車両アイコン403が対応)が交差点Aの東から西方向へ移動している。他車両が車両アイコン403で示される位置において通信情報を送信したとすれば、従来のナビゲーション装置では、他車両は車両アイコン403で示される位置にそのまま表示されていた。しかし、自車両においてこの地図画面400が表示された時点では、他車両(車両アイコン403が対応)は実際にその場所には存在せず、さらに先に進んでいる。なぜならば、通信等に時間を要するからであり、その時間の間に車両が進んでいるからである。もっとも、自車両(車両アイコン401が対応)も現実の位置とは若干のずれがあるが、表示にかかる処理は自車両内で完結するため、そのずれは小さいものである。
【0082】
図7(b)に示す地図画面410は、本実施形態のナビゲーション装置20によって表示される地図画面410である。図7(a)の場合と同一時点の地図画面であるが、図7(a)と異なり、他車両(車両アイコン415が対応)の表示位置が交差点A寄りになっている。つまり、破線で示した他車両(車両アイコン415aが対応)の位置から全遅延時間分だけ移動させた推定位置に他車両が表示される。なお、破線で示した車両アイコン415aは実際には表示されない。また、車両アイコン415の周囲には楕円417が描かれている。この楕円417は、他車両の存在位置の誤差範囲を示すものであり、楕円417の形状や大きさは通信情報に含まれる送信車位置誤差218に基づいて決定される。具体的には、送信車位置誤差218の経度方向の誤差が楕円417の東西方向の軸の長さの根拠となり、送信車位置誤差218の緯度方向の誤差が楕円417の南北方向の軸の長さの根拠となる。なお、車両が道路内に存在していると確実視できる場合(例えば、車速が30km/h以上ある場合等)においては、楕円417のように道路外に誤差範囲がかからないように楕円の形状を調整するとよい。
【0083】
また、通信情報に方向指示器情報219hや案内経路データ219iが含まれている場合は、それらの情報を利用して送信元車両の位置を推定し、表示するようになっているとよい。例えば、通信情報に案内経路データ219iが含まれている場合には、図8に示す地図画面420を表示するとよい。地図画面420では、交差点Aから南北方向及び東西方向に道路が延び、本実施形態のナビゲーション装置20が搭載された自車両(車両アイコン423が対応)が交差点Aの南から北方向へ移動している様子が描かれている。また、本実施形態のナビゲーション装置20が搭載された他車両(車両アイコン425が対応)が交差点Bから南下している様子が描かれている。ところが、この地図画面420を生成する際に利用した通信情報は、他車両が車両アイコン425aに示す場所で送信したものであり、その通信情報には、車両アイコン425aに示す場所の位置情報(送信車位置211)と、当該他車両の速度(送信車速度213)と、当該他車両の加速度(送信車加速度215)と、当該他車両の進行方向(送信車速度217)とに加え、当該他車両において実行されている経路案内の案内経路データ219iが含まれている。そして、これらの情報から他車両(車両アイコン425が対応)の位置を推定して地図画面420に表示させているのである。
【0084】
このため、自車両において地図画面420が表示される時点における他車両の位置を、より正確に推定して表示させることができる。なお、楕円427は、他車両(車両アイコン425が対応)の存在位置の誤差範囲を示すものであり、図7(b)の場合と同様である。また、ライン429は、他車両(車両アイコン425が対応)の案内経路を示すラインであるが、実際には表示されない。また、破線で示した車両アイコン425aも実際には表示されない。また、ここでは、通信情報に案内経路データ219iが含まれている場合の実例について説明したが、通信情報に方向指示器情報219hが含まれている場合も、上記例と同様にこの情報を利用して他車両の位置を推定するとよい。例えば、左折の方向指示器を動作させているのであれば、他車両は通信情報を送信した直後に左折を行う可能性が高いとして、その位置を推定するとよい。
【0085】
説明を図5に戻し、通信情報を受信していないと判定した場合に進むS345では運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定する(S345)。これは、ユーザによって操作スイッチ群22又はリモコン23aが操作され、運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定することである。運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合は(S345:Yes)、S350へ処理を移行し、運転支援の終了を受け付けていないと判定した場合は(S345:No)、S305へ処理を戻す。
【0086】
運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合に進むS350では、上記S325で開始した受信動作を終了すると共に基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する(S350)。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。これらを終えると、制御部29は本処理(受信処理)を終了する。
【0087】
[実施形態の効果]
上記実施形態のナビゲーション装置20は、地図画面表示時点における他車両の位置を推定して地図画面の表示を行うようになっている。つまり、他車両のナビゲーション装置20内での処理にかかった時間や、他車両のナビゲーション装置20と自車両のナビゲーション装置20との間の通信にかかった時間や、自車両のナビゲーション装置20が通信情報を受信してから提示情報を生成する時間等による遅延の影響を解消又は軽減させるようになっている。したがって、報知する他車両の位置の精度を従来より向上させることができる。
【0088】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、他車両から送信されてくる方向指示器情報219hや案内経路データ219iも用いて他車両の位置を推定するようになっている。このため、他車両の速度や加速度や進行方向だけから他車両の位置を推定する場合よりも精度良く推定することができる。
【0089】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、割り込み処理においてGPS衛星からの信号を利用して時刻の同期を行うようになっている。このため、各ナビゲーション装置20が管理する時刻が一致するため、他車両の位置の推定を精度良く行うことができる。
【0090】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、他車両の位置の誤差範囲を円によって表示部26に表示するようになっている。このため、ユーザは報知された誤差を考慮して他車両の位置を判断することができ、結果として報知される他車両の位置情報の利用性が高まる。
【0091】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態のナビゲーション装置20は、本発明の送信装置及び受信装置の機能の両方を持ち合わせていたが、受信装置の機能のみを持ったナビゲーション装置を構成してもよい。また、本発明の送信装置は必ずしも車両に搭載されている必要はなく、例えば、路肩や、歩道上や、道路を見下ろせる位置等に設置されていてもよい。なお、特に見通しが悪い場所や交通事故が多発している地点に設置されているとよい。
【0092】
ここで、路肩に設置された路側機が、本発明の送信装置の機能を有している場合について説明する。
図9は、路側機50の概略構成を示すブロック図である。路側機50は、GPS受信機51と、カメラ53と、外部通信機55と、制御部57とを備える。
【0093】
GPS受信機51は、GPS用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を制御部57へ出力する。
カメラ53は、路側機50が設置された付近の道路上を通行する車両を撮影し、その撮影した映像を制御部57へ出力する。なお、本実施例では、付近の道路上を通行する車両を撮影するものとしてカメラ53を用いたが、これ以外のものであってもよい。例えば、レーダ、光ビーコン、各種のセンサ等であってもよい。
【0094】
外部通信機24は、付近を通行する車両のナビゲーション装置と近距離無線通信を行う機能を担い、例えば無線LAN(IEEE 802.11b/g)を利用する。
制御部57は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0095】
次に、制御部57が実行する送信処理について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、送信処理は、路側機50への電力供給が開始された際に実行が開始される。
制御部57は、送信処理の実行を開始すると、まず計測動作を開始する(S505)。これは、カメラ53を機能させて映像を取得すると共に、その映像の中から車両を抽出する処理を開始することである。なお、抽出の方法は周知の画像処理技術を用いる。
【0096】
続いて、制御部57は、周辺に車両が存在するか否かを判定する(S510)。これは、S505で開始した計測動作において、映像から車両を抽出することができたか否かを判定することである。映像から車両を抽出することができたと判定した場合は(S510:Yes)、S515へ処理を移行し、映像から車両を抽出することができなかったと判定した場合は(S510:No)、S530へ処理を移行する。
【0097】
映像から車両を抽出することができたと判定した場合に進むS515では基準時刻情報の送信割り込みを許可する。これは、制御部57内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0098】
続いて、送信用の通信情報を生成する(S520)。この通信情報というのは、路側機50の周辺に存在する車両についての情報であり、この情報を周辺の各車両に対して送信することにより、各車両の運転者が周辺に存在する他車両の情報を知ることを目的としたものである。ここで、この通信情報の具体例について図11のデータフォーマット図を用いて説明する。
【0099】
図11は、通信情報の全体を示すデータフォーマット図である。通信情報は、ヘッダ251と生成時刻253と送信情報処理時間255と周辺車両ID257と周辺車両種別259と周辺車両位置261と周辺車両速度263と周辺車両加速度265と周辺車両進行方向267と周辺車両位置誤差269とチェックデータ271とを備える。なお、周辺車両ID257〜周辺車両位置誤差269は、映像中に存在する車両の数だけ、チェックデータ271の前に複数組挿入される。
【0100】
ヘッダ251は、プロトコル上必要な情報や、通信情報であることを識別する情報等から構成される。
生成時刻253は、通信情報を生成した際の時刻である(より正確に言えば後述する基準時点ロの時刻である)。
【0101】
送信情報処理時間255は、当該通信情報の生成に用いようとしている映像をカメラ53から受信した時点から、制御部57が映像を処理して実際に通信情報にセットする時点(基準時点ロ)までに経過した時間である。なお、この経過時間に更にカメラ53内での処理時間も付加するとよい。また、これらの時間は実測してもよいし、時間にばらつきが少ないのであれば予め定められた一定の時間を用いてもよい。
【0102】
周辺車両ID257は、周辺車両を特定するための一意のIDであり、例えば車両ナンバーや乱数等が考えられる。
周辺車両種別259は、周辺車両の種別(大型車,普通車,自動二輪車等)を示す情報である。これは映像から読み取って判断する。
【0103】
周辺車両位置261は、周辺車両の中心点の緯度及び経度を表す情報である。これも映像から読み取って判断する。
周辺車両速度263は、周辺車両の移動速度である。これは、異なるフレームの映像における移動距離とフレーム間の時間から判断する。
【0104】
周辺車両進行方向267は、周辺車両の移動方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも映像から読み取って判断する。
周辺車両位置誤差269は、映像処理において生じる周辺車両の位置誤差である。緯度方向の誤差と経度方向の誤差とから構成される。なお、移動速度についての誤差を付加してもよい。
【0105】
チェックデータ271は、通信情報の送受信が正常に行われたことを受信側にて確認するためのデータである。チェックデータ271を除いた通信情報を受信側にて所定の計算式に当てはめ、その結果得られたデータとチェックデータ271とが受信側において等しいことが確認できれば、送受信が正常に行われたと判断される。
【0106】
説明を図10に戻し、制御部57は送信用の通信情報の生成を終えると、生成した通信情報を、外部通信機24を介して周辺車両に送信する(S525)。これは、ブロードキャストによって行う。その後、制御部57は、S505へ処理を戻す。
【0107】
一方、映像から車両を抽出することができなかったと判定した場合に進むS530では基準時刻情報の送信割り込みを禁止する。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。その後、制御部57は、S505へ処理を戻す。
【0108】
次に、制御部57が実行する割り込み処理について図12のフローチャートを用いて説明する。なお、割り込み処理は、GPS受信機51が時刻を含むGPS情報の受信を受けた際にその情報が割り込み信号として制御部57に入力された際に実行が開始される。なお、割り込み処理は、制御部57に設けられた、割り込み処理の実行可否を意味するフラグが「実行可」である場合のみ実行が開始される。
【0109】
制御部57は、割り込み処理の実行を開始すると、まず、当該処理の開始の契機となったGPS情報から衛星の時刻を取り出し、取り出した時刻を基準時刻として周辺の車両に搭載されたナビゲーション装置20へ基準時刻情報を送信する。そして、本処理(割り込み処理)を終了する。
【0110】
ところで、このような路側機50に対応する受信装置としては、上述したナビゲーション装置20をほぼそのまま用いることができるが、その場合は、上述したナビゲーション装置20が実行する送信処理は必要なく、また、受信処理においては、送信車ID207〜送信車位置誤差218の代わりに周辺車両ID257〜周辺車両位置誤差269を用いるとよい。また、割り込み処理(図4)は、GPS情報に含まれる衛星の時刻の代わりに、路側機50から送信される基準時刻を内部時計の時刻としてセットするようになっているとよい。
【0111】
このような路側機50を構成要素とする運転支援システムであっても、上述したナビゲーション装置20のみからなる運転支援システムと同様の効果を奏する。なお、路側機50を構成要素とする運転支援システムであれば、周辺車両の情報を送信するナビゲーション装置20が当該運転支援エリアに一台も存在していなくても、ナビゲーション装置20を搭載していない車両についての存在情報を、ナビゲーション装置20を搭載した車両の運転者に報知することができる。
【0112】
(2)上述した実施形態では、通信情報を受信した場合にのみ、通信情報から提示情報を生成して出力するようになっていたが、通信情報を受信しなくとも過去に受信した通信情報を用いて一定間隔で提示情報を生成して出力するようになっているとよい。つまり、図5のS330でNoであった場合に、過去に受信した通信情報から提示情報を生成して、その生成した提示情報をS340において出力するようになっているとよい。送信元車両の現在位置の推定については、上述した方法と同様の方法が使える。
【0113】
このようになっていれば、他のナビゲーション装置20からの通信開始後、一時的に通信が途絶えたとしても、継続して送信元車両の現在位置が推定されてユーザに報知されるため、ユーザは古い情報を見て自身で送信元車両の現在位置の推定を行う必要がなくなる。
【0114】
(3)上述した実施形態では、時刻同期のために送信処理(図2)や受信処理(図5)とは別で割り込み処理(図4)を行うようになっていたが、送信処理(図2)や受信処理(図5)内で割り込み処理(図4)と同様の処理を行うようにしてもよい。具体的には、送信処理で言えば、例えば、開始直後(S105の前)や、計測動作の開始直後(S125の後)に行うようにしてもよいし、受信処理で言えば、例えば、開始直後(S305の前)や、受信動作の開始前(S325の前)に行うようにしてもよい。
【0115】
また、路側機50においても、割り込み処理(図12)として実行せずに、送信処理(図10)で割り込み処理(図12)と同様の処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、周辺に車両が存在すると判定(S510:Yes)した直後に行うようにしてもよい。
【0116】
これらのようにしても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
[特許請求の範囲との対応]
上述したように、ナビゲーション装置20は、特許請求の範囲に記載した送信装置(請求項1を引用するもの)及び受信装置の機能を有し、路側機50は、特許請求の範囲に記載した送信装置(請求項2を引用するもの)の機能を有する。また、位置検出器21及び車内LAN通信部33が特許請求の範囲に記載した状況情報取得手段に相当し、外部通信機24が特許請求の範囲に記載した通信手段に相当する。また、表示部26が特許請求の範囲に記載した報知手段に相当し、制御部29が特許請求の範囲に記載した制御手段に相当する。また、制御部29が実行する割り込み処理におけるS215が時刻同期手段としての機能に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置が実行する送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】ナビゲーション装置が送信する通信情報を説明するためのデータフォーマット図である。
【図4】ナビゲーション装置が実行する割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】ナビゲーション装置が実行する受信処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】送信元車両の現在位置を求める際に利用する式である。
【図7】表示部に表示される地図画面を説明するための説明図である。
【図8】表示部に表示される地図画面を説明するための説明図である。
【図9】路側機の概略構成を示すブロック図である。
【図10】路側機が実行する送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】路側機が送信する通信情報を説明するためのデータフォーマット図である。
【図12】路側機が実行する割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0118】
20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部、33…車内LAN通信部、40…ミリ波レーダ装置、50…路側機、51…GPS受信機、53…カメラ、55…外部通信機、57…制御部、201…ヘッダ、203…生成時刻、205…送信情報処理時間、207…送信車ID、209…送信車種別、211…送信車位置、213…送信車速度、215…送信車加速度、217…送信車進行方向、218…送信車位置誤差、219…その他データ、221…チェックデータ、219a…予測衝突位置、219b…衝突までの時間、219c…周辺車両ID、219d…周辺車両位置、219e…周辺車両移動速度、219f…周辺車両加速度、219g…周辺車両進行方向、219h…方向指示器情報、219i…案内経路データ、251…ヘッダ、253…生成時刻、255…送信情報処理時間、257…周辺車両ID、259…周辺車両種別、261…周辺車両位置、263…周辺車両速度、265…周辺車両加速度、267…周辺車両進行方向、269…周辺車両位置誤差、271…チェックデータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点等の運転者が特に注意すべき場所において運転者の支援を行う運転支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記の特許文献1や特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の技術は、路側カメラや交通管理センタ等のインフラが整備されていない場合でも、道路・交差点上に生じている交通状況等を周辺に存在する車両に通知することができるシステムに関するものである。具体的には、各車両において周囲の画像を撮影し、撮影した画像から車両周囲の交通状況や異常事態を検出する。そして、その検出結果を無線にて他車両に送信することにより、高コストのインフラが整備されていない状況でも、運転支援を実現することを可能にしている。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術は、GPSを利用する位置検出において、周辺の建物等によってGPS衛星電波が遮断される場合でも高精度な位置検出を可能とするシステムに関するものである。具体的には、GPS衛星の補足が困難な場所、例えば、都市部、地下、高架下などに疑似衛星を設置し、常に4つ以上の衛星電波を取得可能にすることにより、位置検出精度を向上させるものである。
【特許文献1】特開2001−283381号公報
【特許文献1】特開2003−296882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たしかに、上記特許文献1や特許文献2に記載の技術は、運転支援システムの普及に貢献したり、運転支援システムの利用性を高めたりすることができるであろう。しかしながら、運転者に報知される情報の精度という面ではまだ十分であるとは言えない。具体的には、車両間で通信にかかった時間や、各機器の内部処理にかかった時間が考慮されておらず、結果として大きな誤差を生じる結果となっている。
【0005】
例えば、現在実用化が検討されているシステムでは、無線通信の方法として無線LAN(例えば、IEEE 802.11b等)が検討されているが、一般的に無線LANは、CSMA/CA方式を基本としているためリアルタイム性が十分に保証されていない。つまり、CSMA/CA方式では、データを送信したいノード(機器)は通信路の通信状況を監視し、通信路が空くと送信を開始する。このとき、もし複数のノードが同時に送信を開始すると通信路内でデータが衝突して壊れるため、衝突が発生したノードは送信を中止し、ランダムな時間待って送信を再開する。したがって、無線LANはリアルタイム性が十分に保証されているとは言えない。
【0006】
また、例えば、ミリ波レーダで障害物の存在を検知したとしても、反射波が受信部で得られた時点から、得られた反射波を解析して障害物の存在をミリ波レーダ装置が認識する時点までには、ある程度の時間を要する。ミリ波レーダ装置が搭載された自車両内で認識結果を利用するだけなら、この時間は誤差として問題のない程度かもしれないが、他車両に送信して、他車両の運転者に報知されるまでにも時間を要してしまうことを考慮すれば、ミリ波レーダ装置が障害物を認識するまでに要した時間も、トータルの誤差を減らすためには無視すべきではないと考えられる。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたものであり、誤差の発生を最小限に抑えた高精度な運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の運転支援システムにおける送信装置は、状況情報取得手段により取得された状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を通信手段によって受信装置へ送信させる制御手段を備える。一方、受信装置は、送信装置より受信した通信情報に含まれる状況情報から、時刻情報によって特定される真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける状況情報を推定し、その推定した状況情報を報知手段に報知させる制御手段を備える。
【0009】
つまり、本発明の運転支援装置は、現在時点おける状況情報の推定を行うことにより、送信装置内での処理にかかった時間や、送信装置と受信装置との間の通信にかかった時間や、受信装置が状況情報を受信してから推定を開始するまでの時間等による遅延の影響を解消又は軽減させる。なお、「状況情報についての真の時刻」というのは、その状況をセンサ等によって検知した時刻でも、センサ等の情報に基づいて状況が認識された時刻でもなく、状況そのものの時刻を意味する。例えば、車載カメラを例にとれば、車両前方に飛び出してきた自転車が道路のセンターラインをまたいだ時刻が真の時刻であり、当該自転車が道路のセンターラインをまたいだ状況を車載カメラの撮像素子(例えばCCD)が捉えて映像信号として出力した時刻や、その映像信号から自転車の存在をCPUが解析して認識した時刻は、ここで言う「真の時刻」ではない。しかしながら、これらの時刻が、真の時刻(自転車が道路のセンターラインをまたいだ際の時刻)と比較した場合に、実質的に同一視できる程度の時間差しかないのであれば、これらの時刻を真の時刻として扱ってもよい。また、各制御手段が管理する「時刻」というのは、一般的な時刻、つまり「1時23分45秒」というような時刻であってもよいし、何らかの基準時点からの経過カウント数であってもよい。
【0010】
したがって、このように遅延の影響を考慮するようになっていれば、報知する状況情報の精度を従来より向上させることができる。
また、請求項2に記載の運転支援システムにおける送信装置は、請求項1に記載の運転支援システムにおける送信装置と異なり、送信装置の周辺の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段を備える。一方、受信装置は、請求項1に記載の運転支援システムのものと同様である。
【0011】
したがって、請求項2に記載の運転支援システムにおける請求項1に記載の運転支援システムとの相違点は、送信装置が車両に搭載されておらず、その搭載車両についての情報を取得しないことである。なお、送信装置は、路肩、歩道上、道路を見下ろせる位置等に設置されることを想定している。この相違点以外の点については、請求項2に記載の運転支援システムは請求項1に記載の運転支援システムについて言及したものが全て当てはまる。
【0012】
ところで、受信装置の制御手段が行う推定にもある程度の時間を要すると考えられるため、受信装置の制御手段は、推定にかかる時間も考慮して推定を行うとよい(請求項3)。例えば、推定処理に0.5秒要するのであれば、推定処理の開始時から0.5秒後の状況情報を推定するようになっているとよい。このようになっていれば、より報知される状況情報の精度が向上する。
【0013】
また、報知を音声によって行うのであれば、音声出力を開始してから実際に状況情報の報知を終えるまでには時間を要する場合がある。このため、推定を行ってから、その推定した状況情報を報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して推定を行うようになっていてもよい(請求項4)。このように、状況情報を報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して推定を行うようになっていれば、より正確な情報をユーザに報知することができる。
【0014】
また、状況情報の推定というのは、状況情報の種類によって様々な方法が考えられる。例えば、受信した状況情報が、送信装置が搭載された車両の位置情報であり、その車両が移動しているのであれば、受信したその車両の位置情報からその車両の現在の位置を推定すればよい。また、受信した状況情報が、送信装置が搭載された車両の周囲に存在する障害物の位置情報であり、その障害物が移動しているのであれば、受信したその障害物の位置情報からその障害物の現在の位置を推定すればよい。なお、特に状況情報が、送信装置が搭載された車両の位置情報であるような場合には、運転支援システムは次のようになっているとよい。まず、案内経路情報を取得する案内経路情報取得手段、又は、方向指示器の動作情報を取得する方向指示器動作情報取得手段を備えるように運転支援システムを構成する。そして、受信装置の制御手段が行う推定は、案内経路情報取得手段により取得される案内経路情報、又は、方向指示器動作情報取得手段により取得される動作情報を考慮して推定を行うようにする(請求項5)。ここで言う「考慮して推定を行う」というのは、例えば、右折の方向指示器が動作していれば、当該車両は右折する可能性が高いため、右折レーン上の位置や右折後の道路上の位置を当該車両の現在位置として推定することである。このようになっていれば、より状況情報の推定を精度よく行うことができる。
【0015】
ところで、上述した推定を精度良く行うためには、前提として、送信装置が管理する時刻と、受信装置が管理する時刻とが高度に一致している必要がある。そのために、例えば、各々の装置が原子時計のような高度に正確な時計を有していてもよいが、各装置の構成が複雑になってしまう。そこで、送信装置及び受信装置は、さらに、時刻の同期を行う時刻同期手段をそれぞれ備え、送信装置の制御手段は、時刻情報として時刻同期手段により同期されたものを用い、受信装置の制御手段は、時刻同期手段により同期された時刻を用いて推定を行うようになっているとよい(請求項6)。
【0016】
このようになっていれば、原子時計のような高度に正確な時計を有していなくても、送信装置が管理する時刻と、受信装置が管理する時刻とを一致させることができる。
なお、時刻同期手段の具体的な同期方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、上述した通信情報をやりとりする前に、同期に必要な情報を交換して同期を行うようになっていてもよいが、特に、次のようになっているとよい。つまり、送信装置の時刻同期手段及び受信装置の時刻同期手段は、GPS衛星からの信号又は路側機の内部時計からの信号を利用して時刻の同期を行うようになっているとよい(請求項7)。
【0017】
このようになっていれば、送信装置と受信装置の間の時刻を容易に同期させることができる。
ところで、状況情報取得手段により取得される状況情報自体に誤差が含まれることも多い。例えば、GPSによって得られる位置情報は、一定量の誤差を有することが一般的である。したがって、このような状況情報自体の誤差も報知するようになっているとよい(請求項8)。
【0018】
このようになっていれば、ユーザは報知された誤差を考慮して状況情報の意味するところを判断することができ、結果として報知される状況情報の利用性が高まる。
また、通信環境によっては通信が途切れる場合も考えられる。その場合は、新たな報知を行わないことも考えられるが、それでは使い勝手の点で良いとは言いづらい。そこで、受信装置の制御手段は、送信装置より通信情報が受信できなくても先に受信した通信情報を用いて上述した推定を行い、その推定した状況情報を報知手段に報知させるようになっているとよい(請求項9)。
【0019】
このようになっていれば、一時的に送信装置より通信情報が受信できなくても、受信装置は、その時点における推定された状況情報を逐一報知するため、運転支援システムの使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[構成の説明]
図1は、本発明の送信装置及び受信装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
ナビゲーション装置20は車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、車内LANに接続された各種ECU等と通信を行う車内LAN通信部33と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28,車内LAN通信部33からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27,車内LAN通信部33を制御する制御部29とを備えている。
【0023】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0024】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。尚、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0025】
リモコン23aは、複数のボタンから構成されており、何れかのボタンが押下されるとそのボタンの種類に応じた信号が赤外線等の近距離無線通信を介してリモコンセンサ23bに届くように構成されている。
【0026】
リモコンセンサ23bは、リモコン23aから送られる信号を受信し、受信した信号を制御部29へ出力するようになっている。
外部通信機24は、他のナビゲーション装置と近距離無線通信を行う機能を担い、例えば無線LAN(IEEE 802.11b/g)を利用する。
【0027】
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ、運転支援エリアデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。また、列挙したデータのうち、運転支援エリアデータというのは、交差点や合流地点等の事故が比較的多発するエリアを特定するための情報であり、当該エリアの各頂点の緯度座標と経度座標とからなる。
【0028】
表示部26は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなり、表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0029】
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0030】
車内LAN通信部33は、車内LANに接続された図示しない各種のECU(エンジンECU、AT−ECU、ブレーキECU等)や図示しない各種のセンサ(方向指示器センサ、スピードセンサ、ドア開閉センサ等)やミリ波レーダ装置40との通信を担う。なお、ミリ波レーダ装置40は、車両前端に設けられた送信部(図示せず)からミリ波を発信し、前方の物体からの反射波を車両前端に設けられた受信部が受信することにより、車両前方の物体の存在状況を把握することを可能とした装置である。なお、把握した車両前方の物体の存在状況は、車両前方状況データとしてナビゲーション装置20へ出力するように構成されている。
【0031】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する現在地表示処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する経路案内処理等を実行する。
【0032】
[動作の説明]
次に制御部29が実行する送信処理、割り込み処理、受信処理について説明する。なお、送信処理と受信処理については、制御部29は何れか一方のみを実行するようになっていてもよい。また、制御部29が実行するその他の処理、例えば、現在位置表示処理や、経路算出処理や、経路案内処理等は、広く知られた一般的な処理であるため説明を省略する。
【0033】
(1)送信処理
まず、制御部29が実行する送信処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、送信処理はナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0034】
制御部29は、送信処理の実行を開始すると、まず現在位置が運転支援エリア内か否かを判定する(S105)。これは、位置検出器21からの信号に基づいて特定する車両の現在位置と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から読み込んだ運転支援エリアデータとに基づいて判定する。すなわち、車両の現在位置が運転支援エリアとして設定されている場所であるか否かを判定することである。現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合は(S105:Yes)、S120へ処理を移行し、現在位置は運転支援エリア内でない判定した場合は(S105:No)、S110へ処理を移行する。
【0035】
現在位置は運転支援エリア内でないと判定した場合に進むS110では基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。
【0036】
続いて、後述する計測動作を行っていれば計測動作を終了し(S115)、S105へ処理を戻す。
一方、現在位置は、運転支援エリア内であると判定した場合に進むS120では基準時刻情報の受信の割り込みを許可する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0037】
続いて、制御部29は計測動作を開始する(S125)。これは、ミリ波レーダ装置40に動作開始指示を送ると共に、ミリ波レーダ装置40から出力される車両前方状況データの受け取りを開始することである。
【0038】
続いて、制御部29は、周辺に他車両が存在するか否かを判定する(S130)。これは、ミリ波レーダ装置40から得られる車両前方状況データを解析することによって行う。なお、ミリ波レーダ装置40以外にも、車両の側方や後方に存在する物体の状況を把握可能な装置(例えば、カメラやソナー等)が車両に搭載されているのであれば、それらからの情報も利用して判定を行うとよい。このS130において、周辺に他車両が存在すると判定した場合は(S130:Yes)、S135へ処理を移行し、周辺に他車両が存在しないと判定した場合は(S130:No)、S145へ処理を移行する。
【0039】
周辺に他車両が存在すると判定した場合に進むS135では送信用の通信情報を生成する。この通信情報というのは、自車両の位置情報や、自車両が検知した車両前方の状況等を周辺の他車両に送信するための情報である。ここで、この通信情報の具体例について図3のデータフォーマット図を用いて説明する。
【0040】
図3(a)は、通信情報の全体を示すデータフォーマット図である。通信情報は、ヘッダ201と生成時刻203と送信情報処理時間205と送信車ID207と送信車種別209と送信車位置211と送信車速度213と送信車加速度215と送信車進行方向217と送信車位置誤差218とその他データ219とチェックデータ221とから構成される。
【0041】
ヘッダ201は、プロトコル上必要な情報や、通信情報であることを識別する情報等から構成される。
生成時刻203は、通信情報を生成した際の時刻である(より正確に言えば後述する基準時点イの時刻である)。
【0042】
送信情報処理時間205は、当該通信情報の生成に用いようとしている車両前方状況データを制御部29がミリ波レーダ装置40から受信した時点から、制御部29が車両前方状況データを処理して実際に通信情報にセットする時点(基準時点イ)までに経過した時間である。なお、この経過時間に更にミリ波レーダ装置40内での処理時間も付加するとよい。また、これらの時間は実測してもよいし、時間にばらつきが少ないのであれば予め定められた一定の時間を用いてもよい。
【0043】
送信車ID207は、自車両を特定するための一意のIDであり、例えば車両ナンバーや乱数等が考えられる。
送信車種別209は、自車両の種別(大型車,普通車,自動二輪車等)を示す情報である。
【0044】
送信車位置211は、自車両の中心点の緯度及び経度を表す情報であり、位置検出器21から得られる信号に基づいて特定される現在位置情報が用いられる。なお、高度を付加してもよい。
【0045】
送信車速度213は、自車両の移動速度であり、車内LAN通信部33を介して図示しないスピードセンサから得られる情報である。
送信車加速度215は、自車両の加速度であり、ジャイロスコープ21bから得られる情報である。
【0046】
送信車進行方向217は、自車両の方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも、ジャイロスコープ21bから得られる情報である。
【0047】
送信車位置誤差218は、位置検出器21から得られる信号に基づいて特定される現在位置の誤差である。緯度方向の誤差と経度方向の誤差とから構成される。これは、予め決められた値を用いるようになっていてもよいし、何らかの手法によって算出して求めてもよい。
【0048】
その他データ219は、ミリ波レーダ装置40から受信した車両前方状況データを処理して得られたデータや、車内LAN通信部33を介して入力した各種の情報を示すデータである。詳細については後述する。
【0049】
チェックデータ221は、通信情報の送受信が正常に行われたことを受信側にて確認するためのデータである。チェックデータ221を除いた通信情報を受信側にて所定の計算式に当てはめ、その結果得られたデータとチェックデータ221とが受信側において等しいことが確認できれば、送受信が正常に行われたと判断される。
【0050】
次に、その他データ219の例について幾つか説明する。
図3(b)は、その他データ219の一例のデータフォーマット図であるが、図3(b)に示すものは、予想衝突位置219aと衝突までの時間219bとから構成される。
【0051】
予測衝突位置219aは、自車両と車両前方の他車両との予測衝突位置を示す情報である。この情報は次のようにして得られる。まず、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理し、自車両と衝突の可能性がある車両を特定する。そして、その特定した車両の位置及び移動速度等の情報と、自車両の位置及び移動速度等の情報とから、衝突位置を算出することによって上記情報が得られる。なお、自車両と衝突の可能性がある車両が存在しなければ、予測衝突位置219aには、存在しない旨を示す情報がセットされる。
【0052】
衝突までの時間219bは、上記衝突までの時間であり、上記予測衝突位置まで到達するまでの時間である。なお、この時間は、上述した基準時点イからの時間である。
図3(c)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(c)に示すものは、周辺車両ID219cと、周辺車両位置219dと、周辺車両移動速度219eと周辺車両加速度219fと、周辺車両進行方向219gとから構成される。
【0053】
周辺車両ID219cは、自車両の周辺に存在する車両のうちの一台を一意に特定するための情報である。車両の特定は、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって行ったり、他の車両に搭載された同様のナビゲーション装置と通信をすることによって行う。なお、情報の具体例としては、車両ナンバーや乱数等が考えられる。
【0054】
周辺車両位置219dは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の位置情報である。具体的には、当該車両の中心点の緯度及び経度の情報である。ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。なお、高度を付加してもよい。
【0055】
周辺車両移動速度219eは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の移動速度である。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0056】
周辺車両加速度219fは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の加速度についての情報である。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0057】
周辺車両進行方向219gは、周辺車両ID219cにセットされた情報に対応する車両の方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも、ミリ波レーダ装置40から得られた車両前方状況データを処理することによって得る。
【0058】
なお、自車両の周辺に存在する車両が複数台存在する場合は、周辺車両ID219c〜周辺車両進行方向219gの情報を複数組生成し、それら全てをその他データ219とするとよい。
【0059】
図3(d)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(d)に示すものは、方向指示器情報219hから構成される。この方向指示器情報219hは、車内LAN通信部33を介して方向指示器センサから得られる情報であり、何れの方向の方向指示器が動作しているかの情報、又は、何れの方向の方向指示器も動作していない旨を示す情報である。
【0060】
図3(e)は、その他データ219の別例のデータフォーマット図であるが、図3(e)に示すものは、案内経路データ219iから構成される。この案内経路データ219iは、案内経路についての情報であり、案内経路を構成するノードやリンク等の情報からなる。なお、経路案内が実行されていない場合には、その旨を示す情報がセットされる。
【0061】
その他データ219としては、上述したもの以外にも、例えば、自車両のシフトポジションに関する情報や、非常点滅表示器の動作状態に関する情報や、自車両が緊急車両である場合の緊急走行有無の情報や、自車両が営業車両である場合にその旨を示す情報や、自車両のブレーキ操作状態に関する情報や、乗員が入力又は選択したメッセージ(例えば、「お先にどうぞ」,「ありがとう」,「こんにちは」,「さようなら」,「合流します」,「通行します」,「渋滞のため減速します」等)をセットしてもよい。
【0062】
説明を図2に戻し、制御部29は送信用の通信情報の生成を終えると、生成した通信情報を、外部通信機24を介して周辺車両へ送信する(S140)。これはブロードキャストによって行う。
【0063】
続く、S145では運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定する(S145)。これは、ユーザによって操作スイッチ群22又はリモコン23aが操作され、運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定することである。運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合は(S145:Yes)、S150へ処理を移行し、運転支援の終了を意味する指令を受け付けていないと判定した場合は(S145:No)、S105へ処理を戻す。
【0064】
運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合に進むS150では、上記S125で開始した計測動作を終了すると共に基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する(S150)。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。これらを終えると、制御部29は本処理(送信処理)を終了する。
【0065】
(2)割り込み処理
次に、制御部29が実行する割り込み処理について図4のフローチャートを用いて説明する。割り込み処理は、GPS受信機21aが時刻を含むGPS情報の受信を受け、その情報が割り込み信号として制御部29に入力された際に実行が開始される。なお、割り込み処理は、制御部29に設けられた、割り込み処理の実行可否を意味するフラグが「実行可」である場合のみ実行が開始される。
【0066】
制御部29は、割り込み処理の実行を開始すると、まず、当該処理の開始の契機となったGPS情報から衛星の時刻を取り出し、制御部29の内部時計と比較する(S205)。
【0067】
続いて、制御部29の内部時計の時刻は、受信した衛星の時刻と同じであったか否かを判定する(S210)。同じであったと判定した場合は(S210:Yes)、本処理(割り込み処理)を終了し、同じでなかったと判定した場合は(S210:No)、S215へ処理を移行する。
【0068】
制御部29の内部時計の時刻と、受信した衛星の時刻とが同じでなかったと判定した場合に進むS215では、制御部29の内部時計の時刻を、受信した衛星の時刻によって修正する(更新する)。そして、制御部29は本処理(割り込み処理)を終了する。
【0069】
(3)受信処理
次に、制御部29が実行する受信処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、受信処理は、ナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0070】
制御部29は、受信処理の実行を開始すると、まず現在位置が運転支援エリア内か否かを判定する(S305)。これは、位置検出器21からの信号に基づいて特定する車両の現在位置と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から読み込んだ運転支援エリアデータとに基づいて判定する。すなわち、車両の現在位置が運転支援エリアとして設定されている場所であるか否かを判定することである。現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合は(S305:Yes)、S320へ処理を移行し、現在位置は運転支援エリア内ではないと判定した場合は(S305:No)、S310へ処理を移行する。
【0071】
現在位置運転支援エリア内でないと判定した場合に進むS310では基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。
【0072】
続いて、後述する受信動作を行っていれば受信動作を終了し(S315)、S305へ処理を戻す。
一方、現在位置は運転支援エリア内であると判定した場合に進むS320では基準時刻情報の受信の割り込みを許可する。これは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0073】
続いて、制御部29は受信動作を開始する(S325)。これは、外部通信機24の機能を有効にし、他のナビゲーション装置からの送信される通信情報の受信を待ち受ける状態にすることである。
【0074】
続いて、制御部29は外部通信機24が通信情報を受信したか否かを判定する(S330)。通信情報を受信したと判定した場合は(S330:Yes)、S335へ処理を移行し、通信情報を受信していないと判定した場合は(S330:No)、S345へ処理を移行する。
【0075】
通信情報を受信と判定した場合に進むS335では通信情報から提示情報を生成する。提示情報というのは、受信した通信情報を用いて生成されるユーザへの提示用の情報である。ここで、提示情報の一つである送信元車両の位置の生成について説明する。
【0076】
まず、受信した通信情報から、送信情報処理時間205と生成時刻203とを抽出する。そして、図6に示す式1に当てはめて全遅延時間を求める。なお、式1における送信情報処理時間は、抽出した送信情報処理時間205を用い、現在時刻は、制御部29が有する内部時計の現在時刻を用い、生成時刻は、抽出した生成時刻203を用い、表示処理時間は、現在時刻から最終的に表示部26へ情報が表示されるまでにかかる時間を用いる。なお、表示処理時間は過去の実際の表示処理時間等を考慮して決定するとよい。
【0077】
続いて、式1によって求めた全遅延時間を式2に当てはめて移動距離を求める。加速度は、受信した通信情報に含まれる送信車加速度215を用い、車速は、受信した通信情報に含まれる送信車速度213を用いる。なお、移動距離は、X方向(例えば東方向)の要素とY方向(例えば北方向)の要素とに分けて求めるとよい。
【0078】
続いて、式2によって求めた移動距離を式3に当てはめ、送信元車両の現在位置を求める。送信元車両の旧位置というのは、受信した通信情報に含まれる送信車位置211を用いる。送信元車両の現在位置も、X方向(例えば東方向)の要素とY方向(例えば北方向)の要素とに分けて求めるとよい。
【0079】
送信元車両以外の他車両についての情報(図3(c)参照)が受信した通信情報に含まれている場合には、各々の車両の現在位置について、上述した方法と同様の方法で算出する。
【0080】
説明を図5に戻し、続いて、制御部29は、S335で生成した提示情報に基づいた地図画面を表示部26に出力させる(S340)。ここで、図7を用いて表示部26に出力される地図画面について従来のものと比較しながら説明する。
【0081】
図7(a)に示す地図画面400は、従来のナビゲーション装置によって表示される地図画面400である。図7(a)に示すように、交差点Aから南北方向及び東西方向に道路が延び、従来のナビゲーション装置が搭載された自車両(車両アイコン401が対応)が交差点Aの南から北方向へ移動している。また、従来のナビゲーション装置が搭載された他車両(車両アイコン403が対応)が交差点Aの東から西方向へ移動している。他車両が車両アイコン403で示される位置において通信情報を送信したとすれば、従来のナビゲーション装置では、他車両は車両アイコン403で示される位置にそのまま表示されていた。しかし、自車両においてこの地図画面400が表示された時点では、他車両(車両アイコン403が対応)は実際にその場所には存在せず、さらに先に進んでいる。なぜならば、通信等に時間を要するからであり、その時間の間に車両が進んでいるからである。もっとも、自車両(車両アイコン401が対応)も現実の位置とは若干のずれがあるが、表示にかかる処理は自車両内で完結するため、そのずれは小さいものである。
【0082】
図7(b)に示す地図画面410は、本実施形態のナビゲーション装置20によって表示される地図画面410である。図7(a)の場合と同一時点の地図画面であるが、図7(a)と異なり、他車両(車両アイコン415が対応)の表示位置が交差点A寄りになっている。つまり、破線で示した他車両(車両アイコン415aが対応)の位置から全遅延時間分だけ移動させた推定位置に他車両が表示される。なお、破線で示した車両アイコン415aは実際には表示されない。また、車両アイコン415の周囲には楕円417が描かれている。この楕円417は、他車両の存在位置の誤差範囲を示すものであり、楕円417の形状や大きさは通信情報に含まれる送信車位置誤差218に基づいて決定される。具体的には、送信車位置誤差218の経度方向の誤差が楕円417の東西方向の軸の長さの根拠となり、送信車位置誤差218の緯度方向の誤差が楕円417の南北方向の軸の長さの根拠となる。なお、車両が道路内に存在していると確実視できる場合(例えば、車速が30km/h以上ある場合等)においては、楕円417のように道路外に誤差範囲がかからないように楕円の形状を調整するとよい。
【0083】
また、通信情報に方向指示器情報219hや案内経路データ219iが含まれている場合は、それらの情報を利用して送信元車両の位置を推定し、表示するようになっているとよい。例えば、通信情報に案内経路データ219iが含まれている場合には、図8に示す地図画面420を表示するとよい。地図画面420では、交差点Aから南北方向及び東西方向に道路が延び、本実施形態のナビゲーション装置20が搭載された自車両(車両アイコン423が対応)が交差点Aの南から北方向へ移動している様子が描かれている。また、本実施形態のナビゲーション装置20が搭載された他車両(車両アイコン425が対応)が交差点Bから南下している様子が描かれている。ところが、この地図画面420を生成する際に利用した通信情報は、他車両が車両アイコン425aに示す場所で送信したものであり、その通信情報には、車両アイコン425aに示す場所の位置情報(送信車位置211)と、当該他車両の速度(送信車速度213)と、当該他車両の加速度(送信車加速度215)と、当該他車両の進行方向(送信車速度217)とに加え、当該他車両において実行されている経路案内の案内経路データ219iが含まれている。そして、これらの情報から他車両(車両アイコン425が対応)の位置を推定して地図画面420に表示させているのである。
【0084】
このため、自車両において地図画面420が表示される時点における他車両の位置を、より正確に推定して表示させることができる。なお、楕円427は、他車両(車両アイコン425が対応)の存在位置の誤差範囲を示すものであり、図7(b)の場合と同様である。また、ライン429は、他車両(車両アイコン425が対応)の案内経路を示すラインであるが、実際には表示されない。また、破線で示した車両アイコン425aも実際には表示されない。また、ここでは、通信情報に案内経路データ219iが含まれている場合の実例について説明したが、通信情報に方向指示器情報219hが含まれている場合も、上記例と同様にこの情報を利用して他車両の位置を推定するとよい。例えば、左折の方向指示器を動作させているのであれば、他車両は通信情報を送信した直後に左折を行う可能性が高いとして、その位置を推定するとよい。
【0085】
説明を図5に戻し、通信情報を受信していないと判定した場合に進むS345では運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定する(S345)。これは、ユーザによって操作スイッチ群22又はリモコン23aが操作され、運転支援の終了を意味する指令を受け付けたか否かを判定することである。運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合は(S345:Yes)、S350へ処理を移行し、運転支援の終了を受け付けていないと判定した場合は(S345:No)、S305へ処理を戻す。
【0086】
運転支援の終了を意味する指令を受け付けたと判定した場合に進むS350では、上記S325で開始した受信動作を終了すると共に基準時刻情報の受信の割り込みを禁止する(S350)。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。これらを終えると、制御部29は本処理(受信処理)を終了する。
【0087】
[実施形態の効果]
上記実施形態のナビゲーション装置20は、地図画面表示時点における他車両の位置を推定して地図画面の表示を行うようになっている。つまり、他車両のナビゲーション装置20内での処理にかかった時間や、他車両のナビゲーション装置20と自車両のナビゲーション装置20との間の通信にかかった時間や、自車両のナビゲーション装置20が通信情報を受信してから提示情報を生成する時間等による遅延の影響を解消又は軽減させるようになっている。したがって、報知する他車両の位置の精度を従来より向上させることができる。
【0088】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、他車両から送信されてくる方向指示器情報219hや案内経路データ219iも用いて他車両の位置を推定するようになっている。このため、他車両の速度や加速度や進行方向だけから他車両の位置を推定する場合よりも精度良く推定することができる。
【0089】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、割り込み処理においてGPS衛星からの信号を利用して時刻の同期を行うようになっている。このため、各ナビゲーション装置20が管理する時刻が一致するため、他車両の位置の推定を精度良く行うことができる。
【0090】
また、上記実施形態のナビゲーション装置20は、他車両の位置の誤差範囲を円によって表示部26に表示するようになっている。このため、ユーザは報知された誤差を考慮して他車両の位置を判断することができ、結果として報知される他車両の位置情報の利用性が高まる。
【0091】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態のナビゲーション装置20は、本発明の送信装置及び受信装置の機能の両方を持ち合わせていたが、受信装置の機能のみを持ったナビゲーション装置を構成してもよい。また、本発明の送信装置は必ずしも車両に搭載されている必要はなく、例えば、路肩や、歩道上や、道路を見下ろせる位置等に設置されていてもよい。なお、特に見通しが悪い場所や交通事故が多発している地点に設置されているとよい。
【0092】
ここで、路肩に設置された路側機が、本発明の送信装置の機能を有している場合について説明する。
図9は、路側機50の概略構成を示すブロック図である。路側機50は、GPS受信機51と、カメラ53と、外部通信機55と、制御部57とを備える。
【0093】
GPS受信機51は、GPS用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を制御部57へ出力する。
カメラ53は、路側機50が設置された付近の道路上を通行する車両を撮影し、その撮影した映像を制御部57へ出力する。なお、本実施例では、付近の道路上を通行する車両を撮影するものとしてカメラ53を用いたが、これ以外のものであってもよい。例えば、レーダ、光ビーコン、各種のセンサ等であってもよい。
【0094】
外部通信機24は、付近を通行する車両のナビゲーション装置と近距離無線通信を行う機能を担い、例えば無線LAN(IEEE 802.11b/g)を利用する。
制御部57は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0095】
次に、制御部57が実行する送信処理について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、送信処理は、路側機50への電力供給が開始された際に実行が開始される。
制御部57は、送信処理の実行を開始すると、まず計測動作を開始する(S505)。これは、カメラ53を機能させて映像を取得すると共に、その映像の中から車両を抽出する処理を開始することである。なお、抽出の方法は周知の画像処理技術を用いる。
【0096】
続いて、制御部57は、周辺に車両が存在するか否かを判定する(S510)。これは、S505で開始した計測動作において、映像から車両を抽出することができたか否かを判定することである。映像から車両を抽出することができたと判定した場合は(S510:Yes)、S515へ処理を移行し、映像から車両を抽出することができなかったと判定した場合は(S510:No)、S530へ処理を移行する。
【0097】
映像から車両を抽出することができたと判定した場合に進むS515では基準時刻情報の送信割り込みを許可する。これは、制御部57内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行可」の状態にすることである。
【0098】
続いて、送信用の通信情報を生成する(S520)。この通信情報というのは、路側機50の周辺に存在する車両についての情報であり、この情報を周辺の各車両に対して送信することにより、各車両の運転者が周辺に存在する他車両の情報を知ることを目的としたものである。ここで、この通信情報の具体例について図11のデータフォーマット図を用いて説明する。
【0099】
図11は、通信情報の全体を示すデータフォーマット図である。通信情報は、ヘッダ251と生成時刻253と送信情報処理時間255と周辺車両ID257と周辺車両種別259と周辺車両位置261と周辺車両速度263と周辺車両加速度265と周辺車両進行方向267と周辺車両位置誤差269とチェックデータ271とを備える。なお、周辺車両ID257〜周辺車両位置誤差269は、映像中に存在する車両の数だけ、チェックデータ271の前に複数組挿入される。
【0100】
ヘッダ251は、プロトコル上必要な情報や、通信情報であることを識別する情報等から構成される。
生成時刻253は、通信情報を生成した際の時刻である(より正確に言えば後述する基準時点ロの時刻である)。
【0101】
送信情報処理時間255は、当該通信情報の生成に用いようとしている映像をカメラ53から受信した時点から、制御部57が映像を処理して実際に通信情報にセットする時点(基準時点ロ)までに経過した時間である。なお、この経過時間に更にカメラ53内での処理時間も付加するとよい。また、これらの時間は実測してもよいし、時間にばらつきが少ないのであれば予め定められた一定の時間を用いてもよい。
【0102】
周辺車両ID257は、周辺車両を特定するための一意のIDであり、例えば車両ナンバーや乱数等が考えられる。
周辺車両種別259は、周辺車両の種別(大型車,普通車,自動二輪車等)を示す情報である。これは映像から読み取って判断する。
【0103】
周辺車両位置261は、周辺車両の中心点の緯度及び経度を表す情報である。これも映像から読み取って判断する。
周辺車両速度263は、周辺車両の移動速度である。これは、異なるフレームの映像における移動距離とフレーム間の時間から判断する。
【0104】
周辺車両進行方向267は、周辺車両の移動方向を示す情報であり、真北を0度として時計回りの角度で表されたものである。これも映像から読み取って判断する。
周辺車両位置誤差269は、映像処理において生じる周辺車両の位置誤差である。緯度方向の誤差と経度方向の誤差とから構成される。なお、移動速度についての誤差を付加してもよい。
【0105】
チェックデータ271は、通信情報の送受信が正常に行われたことを受信側にて確認するためのデータである。チェックデータ271を除いた通信情報を受信側にて所定の計算式に当てはめ、その結果得られたデータとチェックデータ271とが受信側において等しいことが確認できれば、送受信が正常に行われたと判断される。
【0106】
説明を図10に戻し、制御部57は送信用の通信情報の生成を終えると、生成した通信情報を、外部通信機24を介して周辺車両に送信する(S525)。これは、ブロードキャストによって行う。その後、制御部57は、S505へ処理を戻す。
【0107】
一方、映像から車両を抽出することができなかったと判定した場合に進むS530では基準時刻情報の送信割り込みを禁止する。基準時刻情報の受信の割り込みを禁止するというのは、制御部29内に設けられた割り込み処理の実行可否を意味するフラグを「実行不可」の状態にすることである。その後、制御部57は、S505へ処理を戻す。
【0108】
次に、制御部57が実行する割り込み処理について図12のフローチャートを用いて説明する。なお、割り込み処理は、GPS受信機51が時刻を含むGPS情報の受信を受けた際にその情報が割り込み信号として制御部57に入力された際に実行が開始される。なお、割り込み処理は、制御部57に設けられた、割り込み処理の実行可否を意味するフラグが「実行可」である場合のみ実行が開始される。
【0109】
制御部57は、割り込み処理の実行を開始すると、まず、当該処理の開始の契機となったGPS情報から衛星の時刻を取り出し、取り出した時刻を基準時刻として周辺の車両に搭載されたナビゲーション装置20へ基準時刻情報を送信する。そして、本処理(割り込み処理)を終了する。
【0110】
ところで、このような路側機50に対応する受信装置としては、上述したナビゲーション装置20をほぼそのまま用いることができるが、その場合は、上述したナビゲーション装置20が実行する送信処理は必要なく、また、受信処理においては、送信車ID207〜送信車位置誤差218の代わりに周辺車両ID257〜周辺車両位置誤差269を用いるとよい。また、割り込み処理(図4)は、GPS情報に含まれる衛星の時刻の代わりに、路側機50から送信される基準時刻を内部時計の時刻としてセットするようになっているとよい。
【0111】
このような路側機50を構成要素とする運転支援システムであっても、上述したナビゲーション装置20のみからなる運転支援システムと同様の効果を奏する。なお、路側機50を構成要素とする運転支援システムであれば、周辺車両の情報を送信するナビゲーション装置20が当該運転支援エリアに一台も存在していなくても、ナビゲーション装置20を搭載していない車両についての存在情報を、ナビゲーション装置20を搭載した車両の運転者に報知することができる。
【0112】
(2)上述した実施形態では、通信情報を受信した場合にのみ、通信情報から提示情報を生成して出力するようになっていたが、通信情報を受信しなくとも過去に受信した通信情報を用いて一定間隔で提示情報を生成して出力するようになっているとよい。つまり、図5のS330でNoであった場合に、過去に受信した通信情報から提示情報を生成して、その生成した提示情報をS340において出力するようになっているとよい。送信元車両の現在位置の推定については、上述した方法と同様の方法が使える。
【0113】
このようになっていれば、他のナビゲーション装置20からの通信開始後、一時的に通信が途絶えたとしても、継続して送信元車両の現在位置が推定されてユーザに報知されるため、ユーザは古い情報を見て自身で送信元車両の現在位置の推定を行う必要がなくなる。
【0114】
(3)上述した実施形態では、時刻同期のために送信処理(図2)や受信処理(図5)とは別で割り込み処理(図4)を行うようになっていたが、送信処理(図2)や受信処理(図5)内で割り込み処理(図4)と同様の処理を行うようにしてもよい。具体的には、送信処理で言えば、例えば、開始直後(S105の前)や、計測動作の開始直後(S125の後)に行うようにしてもよいし、受信処理で言えば、例えば、開始直後(S305の前)や、受信動作の開始前(S325の前)に行うようにしてもよい。
【0115】
また、路側機50においても、割り込み処理(図12)として実行せずに、送信処理(図10)で割り込み処理(図12)と同様の処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、周辺に車両が存在すると判定(S510:Yes)した直後に行うようにしてもよい。
【0116】
これらのようにしても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
[特許請求の範囲との対応]
上述したように、ナビゲーション装置20は、特許請求の範囲に記載した送信装置(請求項1を引用するもの)及び受信装置の機能を有し、路側機50は、特許請求の範囲に記載した送信装置(請求項2を引用するもの)の機能を有する。また、位置検出器21及び車内LAN通信部33が特許請求の範囲に記載した状況情報取得手段に相当し、外部通信機24が特許請求の範囲に記載した通信手段に相当する。また、表示部26が特許請求の範囲に記載した報知手段に相当し、制御部29が特許請求の範囲に記載した制御手段に相当する。また、制御部29が実行する割り込み処理におけるS215が時刻同期手段としての機能に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置が実行する送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】ナビゲーション装置が送信する通信情報を説明するためのデータフォーマット図である。
【図4】ナビゲーション装置が実行する割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】ナビゲーション装置が実行する受信処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】送信元車両の現在位置を求める際に利用する式である。
【図7】表示部に表示される地図画面を説明するための説明図である。
【図8】表示部に表示される地図画面を説明するための説明図である。
【図9】路側機の概略構成を示すブロック図である。
【図10】路側機が実行する送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】路側機が送信する通信情報を説明するためのデータフォーマット図である。
【図12】路側機が実行する割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0118】
20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部、33…車内LAN通信部、40…ミリ波レーダ装置、50…路側機、51…GPS受信機、53…カメラ、55…外部通信機、57…制御部、201…ヘッダ、203…生成時刻、205…送信情報処理時間、207…送信車ID、209…送信車種別、211…送信車位置、213…送信車速度、215…送信車加速度、217…送信車進行方向、218…送信車位置誤差、219…その他データ、221…チェックデータ、219a…予測衝突位置、219b…衝突までの時間、219c…周辺車両ID、219d…周辺車両位置、219e…周辺車両移動速度、219f…周辺車両加速度、219g…周辺車両進行方向、219h…方向指示器情報、219i…案内経路データ、251…ヘッダ、253…生成時刻、255…送信情報処理時間、257…周辺車両ID、259…周辺車両種別、261…周辺車両位置、263…周辺車両速度、265…周辺車両加速度、267…周辺車両進行方向、269…周辺車両位置誤差、271…チェックデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置とを有する運転支援システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置が搭載された車両の情報及びその車両の周辺の情報の少なくとも何れか一方の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段と、
前記受信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記状況情報取得手段により取得された前記状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を前記通信手段によって前記受信装置へ送信させる制御手段と、
を備え、
前記受信装置は、
種々の情報を報知する報知手段と、
前記送信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記通信手段によって前記送信装置より受信した前記通信情報に含まれる前記状況情報から、前記時刻情報によって特定される前記真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける前記状況情報を推定し、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させる制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
送信装置と受信装置とを有する運転支援システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置の周辺の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段と、
前記受信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記状況情報取得手段により取得された前記状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を前記通信手段によって前記受信装置へ送信させる制御手段と、
を備え、
前記受信装置は、
種々の情報を報知する報知手段と、
前記送信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記通信手段によって前記送信装置より受信した前記通信情報に含まれる前記状況情報から、前記時刻情報によって特定される前記真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける前記状況情報を推定し、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させる制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システムにおいて、
前記受信装置の前記制御手段は、前記推定にかかる時間も考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の運転支援システムにおいて、
前記受信装置の前記制御手段は、前記推定を行ってから、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の運転支援装置において、
さらに、案内経路情報を取得する案内経路情報取得手段、又は、方向指示器の動作情報を取得する方向指示器動作情報取得手段を備え、
前記受信装置の前記制御手段が行う前記推定は、前記案内経路情報取得手段により取得される前記案内経路情報、又は、前記方向指示器動作情報取得手段により取得される前記動作情報を考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の運転支援システムにおいて、
前記送信装置及び前記受信装置は、さらに、時刻の同期を行う時刻同期手段をそれぞれ備え、
前記送信装置の前記制御手段は、前記時刻情報として前記時刻同期手段により同期されたものを用い、
前記受信装置の前記制御手段は、前記時刻同期手段により同期された時刻を用いて前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の運転支援システムにおいて、
前記送信装置の前記時刻同期手段及び前記受信装置の前記時刻同期手段は、GPS衛星からの信号又は路側機の内部時計からの信号を利用して時刻の同期を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の運転支援装置において、
前記受信装置の前記制御手段は、前記報知手段に前記状況情報を報知させる際、その状況情報についての誤差情報も報知させること、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の運転支援装置において、
前記受信装置の前記制御手段は、前記送信装置より前記通信情報が受信できなくても先に受信した前記通信情報を用いて前記推定を行い、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させること、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の運転支援システムにおける前記送信装置について記載した各手段を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の運転支援システムにおける前記受信装置について記載した各手段を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項1】
送信装置と受信装置とを有する運転支援システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置が搭載された車両の情報及びその車両の周辺の情報の少なくとも何れか一方の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段と、
前記受信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記状況情報取得手段により取得された前記状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を前記通信手段によって前記受信装置へ送信させる制御手段と、
を備え、
前記受信装置は、
種々の情報を報知する報知手段と、
前記送信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記通信手段によって前記送信装置より受信した前記通信情報に含まれる前記状況情報から、前記時刻情報によって特定される前記真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける前記状況情報を推定し、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させる制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
送信装置と受信装置とを有する運転支援システムにおいて、
前記送信装置は、
前記送信装置の周辺の情報を状況情報として取得する状況情報取得手段と、
前記受信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記状況情報取得手段により取得された前記状況情報に、当該状況情報についての真の時刻を特定可能な時刻情報を付加して通信情報を構成し、その構成した通信情報を前記通信手段によって前記受信装置へ送信させる制御手段と、
を備え、
前記受信装置は、
種々の情報を報知する報知手段と、
前記送信装置と通信を行う通信手段と、
時刻を管理すると共に、前記通信手段によって前記送信装置より受信した前記通信情報に含まれる前記状況情報から、前記時刻情報によって特定される前記真の時間からの経過時間を考慮して現在時点おける前記状況情報を推定し、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させる制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システムにおいて、
前記受信装置の前記制御手段は、前記推定にかかる時間も考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の運転支援システムにおいて、
前記受信装置の前記制御手段は、前記推定を行ってから、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させるまでに必要な時間も考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の運転支援装置において、
さらに、案内経路情報を取得する案内経路情報取得手段、又は、方向指示器の動作情報を取得する方向指示器動作情報取得手段を備え、
前記受信装置の前記制御手段が行う前記推定は、前記案内経路情報取得手段により取得される前記案内経路情報、又は、前記方向指示器動作情報取得手段により取得される前記動作情報を考慮して前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の運転支援システムにおいて、
前記送信装置及び前記受信装置は、さらに、時刻の同期を行う時刻同期手段をそれぞれ備え、
前記送信装置の前記制御手段は、前記時刻情報として前記時刻同期手段により同期されたものを用い、
前記受信装置の前記制御手段は、前記時刻同期手段により同期された時刻を用いて前記推定を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の運転支援システムにおいて、
前記送信装置の前記時刻同期手段及び前記受信装置の前記時刻同期手段は、GPS衛星からの信号又は路側機の内部時計からの信号を利用して時刻の同期を行うこと、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の運転支援装置において、
前記受信装置の前記制御手段は、前記報知手段に前記状況情報を報知させる際、その状況情報についての誤差情報も報知させること、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の運転支援装置において、
前記受信装置の前記制御手段は、前記送信装置より前記通信情報が受信できなくても先に受信した前記通信情報を用いて前記推定を行い、その推定した前記状況情報を前記報知手段に報知させること、
を特徴とする運転支援システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の運転支援システムにおける前記送信装置について記載した各手段を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の運転支援システムにおける前記受信装置について記載した各手段を備えることを特徴とする受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−241726(P2007−241726A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64299(P2006−64299)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]