説明

配線パターン形成方法、膜パターン形成方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器

【課題】 配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する半導体装置などの性能劣化を抑制することができ、回路配線が他の回路配線や半導体装置の導体層とショートすることを抑制することができる、配線パターン形成方法、膜パターン形成方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器を実現する。
【解決手段】 配線パターン形成方法は、基板上の所定の領域にバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に配線パターンの材料を含む機能液を吐出し、機能液を乾燥させて配線パターンを形成するステップと、バンクの高さと配線パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有する。半導体装置の配線パターンは、上記配線パターン形成方法を用いて形成されており、電気光学装置は当該半導体装置を備え、電子機器は上記電気光学装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターン形成方法、及び当該回路配線形成方法を用いて製造された配線パターンを備えた半導体装置、電気光学装置、及び電子機器、並びに膜パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記半導体装置は、基板上に、導体からなる薄膜(以下、「配線膜」という。)が配置された回路配線と、回路配線を覆う絶縁膜などの薄膜と、が積層されて形成されている。回路配線や薄膜の効率的な形成方法として、特許文献1に記載されたような、薄膜材料などを溶質として含む機能液を液滴吐出ヘッドから液滴として吐出し、着弾した機能液を乾燥させて溶媒を除き回路配線や薄膜を形成する、所謂インクジェット方式が知られている。インクジェット方式では、回路配線は、基板上にバンクを配置し、バンクに囲まれた凹部であって回路配線と同じ平面形状の凹部を形成し、この凹部に入るように機能液を吐出し、吐出されて凹部に着弾した機能液を乾燥させて配線膜を形成することによって、任意の形状にする。また、回路配線と薄膜とが積層されて形成された半導体装置のような装置では、回路配線と周囲との段差に起因して、回路配線上に積層された薄膜に不具合が発生することがある。当該不具合を防止するために、特許文献2に記載されたような、回路配線と周囲との段差を平坦化する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開平2−132831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図19(a)に示すように、凹部534に着弾するように吐出された機能液の液滴501は、図19(b)に示す機能液502のように、凹部534に入ることが望ましいが、図19(b)に示す機能液503のように、一部がバンクBの上面に付着することがある。図19(c)に示すように、機能液502を乾燥して配線膜504を形成するときに、機能液503も乾燥されて、配線膜504がバンクBの角部にはみ出したはみ出し部506や、機能液503の溶質の配線材料がバンクB上に残った残渣507が形成されることがある。
【0005】
また、配線膜504を覆う絶縁膜510を、配線膜504及びバンクBの上に形成すると、図19(d)に示すように、配線膜504の厚みとバンクBの厚みとの違いによる段差の部分で、絶縁膜510にも段差が生ずる。薄膜の厚さ方向は図19(d)に矢印Zで示した薄膜の積層方向に増加するため、矢印Zと直交する方向には成長しない。そのため、段差部分では、絶縁膜510が薄くなった膜薄部511が形成されてしまうということもあった。これらに起因して、以下のような課題が発生していた。
【0006】
課題1)配線材料が配線膜504及びバンクBを覆う絶縁膜510などに拡散することを防止するために、図19(d)に示すように、配線膜504を覆う拡散防止膜512を設けることが行われている。しかし、バンクBの上残った残渣507は、拡散防止膜512で覆うことができず、配線材料が絶縁膜510などに拡散することがある。
課題2)同様に、配線膜504がバンクBの角部にはみ出したはみ出し部506は、拡散防止膜512では覆うことができず、配線材料が絶縁膜510などに拡散することがある。
課題3)段差部分で絶縁膜510が薄くなった膜薄部511では、絶縁膜510の絶縁機能が充分でない場合がある。そのため、図19(e)に示すように、絶縁膜510の上に他の配線膜515や半導体装置の導体層が形成されると、膜薄部511の部分で、配線膜504が配線膜515や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性が高くなる。
課題4)図19(e)に示すように、配線膜504がバンクBの角部にはみ出したはみ出し部506が存在すると共に、段差部分で絶縁膜510が薄くなった膜薄部511が存在すると、はみ出し部506と膜薄部511とは段差部分の近傍で互いに近接して存在する。これにより、配線膜504が、はみ出し部506を介して配線膜515や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性がより高くなる。
配線材料が絶縁膜などに拡散すると、絶縁膜などの機能に変化が生じ、絶縁膜などの性能や配線膜や絶縁膜を含む半導体装置の性能などを損なうことがあり、配線材料が絶縁膜などに拡散することは、重大な課題である。
【0007】
そこで、本発明は、配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する半導体装置などの性能劣化を抑制することができ、回路配線が他の回路配線や半導体装置の導体層とショートすることを抑制することができる、配線パターン形成方法、膜パターン形成方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による配線パターン形成方法は、基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、基板上の所定の領域にバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に配線パターンの材料を含む機能液を吐出し、機能液を乾燥させて配線パターンを形成するステップと、バンクの高さと配線パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明による配線パターン形成方法は、基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、基板上の所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に第1の機能液を吐出し、第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、第1の配線パターン上に、第2の機能液を吐出し、第2の機能液を乾燥させて、第2の配線パターンを形成するステップと、バンクの高さと、第1の配線パターンと第2の配線パターンとが積層された配線パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の方法によれば、バンクの一部を削除することにより、バンクの厚さを、配線パターンの厚さまたは重畳された配線パターンの総厚さと略同一にする。この結果、バンクと配線パターンとの段差が大きくなることを抑制することから、バンク及び配線パターンの上に形成する薄膜が段差部分で薄くなることを抑制することができる。従って、薄膜が薄くなることに起因して、配線パターンが薄膜によって隔てられている他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができる。バンクの一部を削除することにより、また、バンク上にはみ出した配線材料を除去することができる。即ち、薄膜が薄くなる可能性が比較的高いバンクと配線パターンとの境目に位置する配線材料を除去することから、薄膜が薄くなることに起因して、配線パターンが薄膜によって隔てられている他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを、さらに抑制することができる。
【0011】
本発明による配線パターン形成方法は、基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、基板上の所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に第1の配線パターンの材料を含む第1の機能液を吐出し、第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、バンクの厚さが第1の配線パターンの厚さより大きくなるようにバンクの一部及び第1の配線パターンの一部を削除するステップと、第1の配線パターン上に材料が拡散することを防止する拡散防止層を形成するステップと、バンクの高さと、第1の配線パターンと拡散防止層とが積層された前記配線パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【0012】
本発明による配線パターン形成方法は、基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、基板上の前記所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に第1の配線パターンの材料を含む第1の機能液を吐出し、第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、第1の配線パターンを形成するステップを複数回行った後に、バンクの厚さが第1の配線パターンの厚さより大きくなるようにバンクの一部及び第1の配線パターンの一部を削除するステップと、第1の配線パターン上に材料が拡散することを防止する拡散防止層を形成するステップと、バンクの高さと、第1の配線パターンと拡散防止層とが積層された配線パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の方法によれば、バンクの厚さが配線パターンの厚さまたは重畳された配線パターンの総厚さより大きくなるように、バンクの一部及び配線パターンの一部を削除することにより、バンク上にはみ出した配線材料や、バンク上に残った配線材料の残渣を除去することから、拡散防止膜で覆われていない配線パターンや、配線材料を殆ど無くすことができる。これにより、配線材料が、バンク及び配線パターンを覆うように形成される薄膜に拡散することを抑制することができる。即ち、配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する半導体装置などの性能劣化を抑制することができる。また、バンクの上面より低くなった配線パターンの上に拡散防止膜を形成することにより、バンクの上面と拡散防止膜の上面との段差を小さくし、バンクの上面と拡散防止膜の上面との段差が大きくなることを抑制することから、バンクと配線パターンとの上に形成する薄膜が段差部分で薄くなることを抑制することができる。従って、薄膜が薄くなることに起因して、配線パターンが薄膜によって隔てられている他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができる。
【0014】
この場合、バンクの一部を除去するステップはハーフエッチングで行うことが好ましい。
【0015】
この方法によれば、ハーフエッチングでは、薄膜を薄膜の厚み方向に表面から途中まで削除するため、バンクの厚みを減じて適当な厚さにすることができる。
【0016】
この場合、バンクを形成する材料は無機樹脂であることが好ましい。
【0017】
この方法によれば、無機樹脂は熱に強いため、耐熱性に優れたバンクを形成することができる。バンクが耐熱性に優れることにより、バンク間の凹部やバンクの上に薄膜などを形成する工程において、バンクに影響を及ぼすことなく、バンクが高温環境に曝されることを必要とする処理を実施することができる。
【0018】
本発明による半導体装置は、前記した請求項に記載の配線パターン形成方法を用いて配線パターンが形成されている。
【0019】
本発明の構成によれば、配線材料が、バンク及び配線パターンを覆うように形成される薄膜に拡散することを抑制することができると共に、配線膜が薄膜によって隔てられている他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制できる配線パターン形成方法を用いて形成された配線パターンを有するため、配線パターンの配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する性能の劣化の可能性が小さくなると共に、配線パターンが他の回路配線や薄膜層に接触して、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高い半導体装置を実現することができる。
【0020】
本発明による電気光学装置は、前記した請求項に記載の半導体装置を備える。
【0021】
本発明の構成によれば、配線パターンの配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する性能の劣化の可能性が小さいと共に、配線パターンが他の回路配線や薄膜層に接触して、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さい半導体装置を備えるため、配線パターンの配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する性能劣化が少ないと共に、配線パターンが他の回路配線や薄膜層に接触して、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高い電気光学装置を実現することができる。
【0022】
なお、電気光学装置としては、液晶表示装置、有機EL(Electro-Luminescence)装置、電子放出装置、PDP(Plasma Display Panel)装置および電気泳動表示装置等が考えられる。なお、電子放出装置は、いわゆるFED(Field Emission Display)装置を含む概念である。
【0023】
本発明による電子機器は、前記した請求項に記載の電気光学装置を備える。
【0024】
本発明の構成によれば、配線パターンの配線材料が絶縁膜などに拡散することに起因する性能劣化が少ないと共に、配線パターンが他の回路配線や薄膜層に接触して、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高い電気光学装置を搭載したため、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
【0025】
電子機器としては、いわゆるフラットパネルディスプレイを搭載した携帯電話、パーソナルコンピュータの他、各種の電気製品がこれに該当する。
【0026】
本発明による膜パターン形成方法は、基板上の所定の領域に膜パターンを形成する方法であって、基板上の所定の領域にバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に膜パターンの原料を含む機能液の液滴を吐出するステップと、機能液を乾燥させて膜パターンを形成するステップと、バンクの高さと膜パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有する。
【0027】
本発明による膜パターン形成方法は、基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて膜パターンを形成する方法であって、基板上の所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、バンクで囲まれた領域に第1の機能液を吐出し、第1の機能液を乾燥させて、第1の膜パターンを形成するステップと、第1の膜パターン上に、第2の機能液を吐出し、第2の機能液を乾燥させて、第2の膜パターンを形成するステップと、バンクの高さと、第1の膜パターンと第2の膜パターンとが積層された膜パターンの厚さとを略同一になるようにバンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする。
【0028】
膜パターンを形成した後、バンクをハーフエッチングして、膜パターンとバンクとを略平坦にすることで、膜パターン及びバンクの上に形成する膜をより容易に形成できるようにすることができる。また、膜パターン及びバンクの上に形成する膜を、略平坦で、厚さが均一な膜にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る配線パターン形成方法の一実施形態について、図面を参照して、説明する。なお、以下の図面において、各部材及び各層を認識可能な大きさとするために、各部材及び各層の縮尺を適宜変更している。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態では、液滴吐出法により液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから導電性微粒子を含む配線パターン(配線膜)形成用インク(機能液)を液滴状に吐出し、基板上に配線パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0031】
まず、使用するインク(機能液)について説明する。液体材料である配線パターン形成用インクは導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0032】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0033】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0034】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0035】
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0036】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0037】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
【0038】
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0039】
図1は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。図1において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
【0040】
ステージ7はこの液滴吐出装置IJによりインクを配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0041】
液滴吐出ヘッド1は複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0042】
X軸方向駆動軸4にはX軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
【0043】
Y軸方向ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0044】
制御装置CONTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、制御装置CONTは、X軸方向駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、Y軸方向駆動モータ3に対してステージ7のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0045】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しないY軸方向駆動モータを備えている。このY軸方向駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はY軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0046】
ヒータ15はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布されたインクに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0047】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、Y軸方向を走査方向、Y軸方向と直交するX軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるX軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することでノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節可能としてもよい。
【0048】
図2はピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。図2において、液体材料(配線パターン形成用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることによりピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることによりピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0049】
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて製造される装置の一例である薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))について説明する。図3は、TFTアレイ基板のTFT1個を含む一部分の概略構成を示した平面図である。図4(a)は、TFTの断面図であり、図4(b)は、ゲート配線とソース配線とが平面的に交差する部分の断面図である。
【0050】
図3に示すように、TFT30を有するTFTアレイ基板10上には、ゲート配線12と、ソース配線16と、ドレイン電極14と、ドレイン電極14に電気的に接続する画素電極19とを備えている。ゲート配線12はX軸方向に延びるように形成され、その一部がY軸方向に延びるように形成されている。そして、Y軸方向に伸びるゲート配線12の一部がゲート電極11として用いられている。なお、ゲート電極11の幅はゲート配線12の幅よりも狭くなっている。そして、このゲート配線12が、本実施形態の配線パターン形成方法で形成される。また、Y軸方向に伸びるように形成されたソース配線16の一部は幅広に形成されており、このソース配線16の一部がソース電極17として用いられている。
【0051】
図4に示すように、ゲート配線12は、基板Pの上に設けられたバンクBの間に形成されている。ゲート配線12及びバンクBは、絶縁膜28に覆われており、絶縁膜28の上に、ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14と、バンクB1とが形成されている。ゲート配線12は、絶縁膜28によって、ソース配線16と絶縁されており、ゲート電極11は、絶縁膜28によって、ソース電極17及びドレイン電極14と絶縁されている。ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14とは、絶縁膜29で覆われている。
【0052】
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法について説明する。図5は、本実施形態に係る配線パターンの形成方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る配線パターンの形成方法は、上述した配線パターン形成用インクを基板上に配置し、基板上に配線膜を形成して、配線パターンを形成するものである。ステップS1は、基板上に配線パターンの形状に応じた凹部を形成するようにバンクを突設するバンク形成工程であり、次のステップS2は、基板に親液性を付与する親液化処理工程であり、次のステップS3は、バンクに撥液性を付与する撥液化処理工程である。また、次のステップS4は、撥液性を付与されたバンク間にインクを配置する機能液配置工程であり、次のステップS5は、インクの液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程であり、次のステップS6は、インクに含まれる導電性微粒子が機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行う焼成工程である。さらに、次のステップS7は、バンクをハーフエッチングするハーフエッチング工程である。
【0053】
以下、各ステップの工程毎に詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。最初に、ステップS1のバンク形成工程について説明する。図6は、バンクを形成する手順の一例を示す模式図である。バンク形成工程では、まず、バンクの形成材料を塗布する前に表面改質処理として、基板Pに対してHMDS処理が施される。HMDS処理は、ヘキサメチルジシラサン((CH33SiNHSi(CH33)を蒸気状にして塗布する方法である。これにより、図6(a)に示すように、バンクBと基板Pとの密着性を向上する密着層としてのHMDS層32が基板P上に形成される。
【0054】
バンクBは仕切部材として機能する部材であり、バンクBの形成はフォトリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、フォトリソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板PのHMDS層32上にバンクの高さに合わせてバンクの形成材料31を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、バンク形状(配線パターン形状)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することによりバンク形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分のバンク材料を除去する。
【0055】
これにより、図6(b)に示すように、配線パターン形成予定領域の周辺を囲むようにバンクB、Bが突設される。なお、このようにして形成されるバンクB、Bとしては、その上部側の幅が狭く、底部側の幅が広いテーパ状とするのが、後述するようにバンク間の溝部にインクの液滴が流れ込みやすくなるため好ましい。
【0056】
本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクBの形成材料として、無機質の材料が用いられる。無機質の材料によってバンクBを形成する方法としては、例えば、各種コート法やCVD法(化学的気相成長法)等を用いて基板P上に無機質の材料からなる層を形成した後、エッチングやアッシング等によりパターニングして所定の形状のバンクBを得ることができる。なお、基板Pとは別の物体上でバンクBを形成し、それを基板P上に配置してもよい。
【0057】
バンク材料としては、インクに対して撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化(フッ素化)が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。無機質のバンク材料としては、例えば、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、無機質のバンク材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。無機質の材料としてより具体的には、クラリアントジャパン株式会社製の感光性ポリメチルシラザンを挙げることができる。
【0058】
なお、バンクBの形成材料として、有機質の材料を用いることもできる。バンクを形成する有機材料としては、インクに対して撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化(フッ素化)が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。あるいは、無機骨格(シロキサン結合)を主鎖に有機基を持った材料でもよい。
【0059】
基板P上にバンクB、Bが形成されると、フッ酸処理が施される。フッ酸処理は、例えば2.5%フッ酸水溶液でエッチングを施すことでバンクB、B間のHMDS層32を除去する処理である。フッ酸処理では、バンクB、Bがマスクとして機能し、図6(c)に示すように、バンクB、B間に形成された溝部34の底部35にある有機物であるHMDS層32が除去され、基板Pが露出する。
【0060】
次に、ステップS2の親液化処理工程について説明する。ステップS2の親液化処理工程では、バンクB、B間の底部35(基板Pの露出部)に親液性を付与する親液化処理が行われる。親液化処理工程としては、紫外線を照射する紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラズマ処理等を選択できる。本実施形態ではO2プラズマ処理を実施する。
【0061】
2プラズマ処理は、基板Pに対してプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射する。O2プラズマ処理の条件の一例として、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの相対移動速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃である。
【0062】
そして、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成用インクに対して親液性を有しているが、本実施形態のようにO2プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、バンクB、B間で露出する基板P表面(底部35)の親液性を更に高めることができる。ここで、バンク間の底部35のインクに対する接触角が15度以下となるように、O2プラズマ処理や紫外線照射処理が行われることが好ましい。
【0063】
図7はO2プラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図7に示すプラズマ処理装置は、交流電源41に接続された電極42と、接地電極である試料テーブル40とを有している。試料テーブル40は試料である基板Pを支持しつつY軸方向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動方向と直交するX軸方向に延在する2本の平行な放電発生部44,44が突設されているとともに、放電発生部44を囲むように誘電体部材45が設けられている。誘電体部材45は放電発生部44の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材45を含む電極42の下面は略平面状となっており、放電発生部44及び誘電体部材45と基板Pとの間には僅かな空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極42の中央にはX軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口46が設けられている。ガス噴出口46は、電極内部のガス通路47及び中間チャンバ48を介してガス導入口49に接続している。
【0064】
ガス通路47を通ってガス噴出口46から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、前記空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材45の前端及び後端から外部に排気される。これと同時に、交流電源41から電極42に所定の電圧が印加され、放電発生部44,44と試料テーブル40との間で気体放電が発生する。そして、この気体放電により生成されるプラズマで前記所定ガスの励起活性種が生成され、放電領域を通過する基板Pの表面全体が連続的に処理される。
【0065】
本実施形態では、前記所定ガスは、処理ガスである酸素(O2)と、大気圧近傍の圧力下で放電を容易に開始させ且つ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N2)等の不活性ガスとを混合したものである。特に、処理ガスとして酸素を用いることにより、バンクB、B間の底部35におけるバンク形成時の有機物(レジストやHMDS)残渣を除去できる。すなわち、上記フッ酸処理ではバンクB、B間の底部35のHMDS(有機物)が完全に除去されない場合がある。あるいは、バンクB、B間の底部35にバンク形成時のレジスト(有機物)が残っている場合もある。そこで、O2プラズマ処理を行うことにより、バンクB、B間の底部35の残渣が除去される。
【0066】
なお、ここでは、フッ酸処理を行うことでHMDS層32を除去するように説明したが、O2プラズマ処理あるいは紫外線照射処理によりバンク間の底部35のHMDS層32を十分に除去できるため、フッ酸処理は行わなくてもよい。また、ここでは、親液化処理としてO2プラズマ処理又は紫外線照射処理のいずれか一方を行うように説明したが、もちろん、O2プラズマ処理と紫外線照射処理とを組み合わせてもよい。
【0067】
次に、ステップS3の撥液化処理工程について説明する。撥液化処理工程では、バンクBに対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用する。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SF6やSF5CF3などのガスも用いることができる。CF4プラズマ処理には、図7を参照して説明したプラズマ処理装置を用いることができる。
【0068】
このような撥液化処理を行うことにより、バンクB、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、バンクB、Bに対して高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのO2プラズマ処理は、バンクBの形成前に行ってもよいが、O2プラズマによる前処理がなされた方がよりフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、バンクBを形成した後にO2プラズマ処理することが好ましい。
【0069】
なお、バンクB、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理したバンク間の基板P露出部に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
【0070】
上述した親液化処理工程及び撥液化処理工程により、バンクBの撥液性がバンク間の底部35の撥液性より高くなるように表面改質処理されたことになる。なお、ここでは親液化処理としてO2プラズマ処理を行っているが、上述したように、基板Pがガラス等からなる場合には撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、O2プラズマ処理を行わずにCF4プラズマ処理のみを行うことによっても、バンクBの撥液性をバンク間の底部35より高くすることができる。
【0071】
次に、ステップS4の機能液配置工程について説明する。図8は、機能液を配置する手順と、配置された機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順の一例を示す模式図である。機能液配置工程では、上記した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成用インクの液滴が基板P上のバンクB、B間に配置される。なお、ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物からなるインクを吐出する。機能液配置工程では、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン形成用材料を含むインクを液滴にして吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB、B間の溝部34に向け、インクの液滴を吐出して溝部34内にインクを配置する。このとき、液滴が吐出される配線パターン形成予定領域(すなわち溝部34)はバンクB、Bに囲まれているので、液滴が所定位置以外に拡がることを阻止できる。
【0072】
本実施形態では、バンクB、B間の溝部34の幅W(ここでは、溝部34の開口部における幅)はインク(機能液)の液滴の直径Dとほぼ同等に設定されている。なお、液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
【0073】
このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部34内に配置すると、液滴はその直径Dが溝部34の幅Wとほぼ同等であることから、図8(b)に二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上に乗ることがある。ところが、バンクB、Bの表面が撥液性となっておりしかもテーパ状になっていることから、これらバンクB、B上に乗った液滴部分がバンクB、Bからはじかれ、更には毛細管現象によって溝部34内に流れ落ちることにより、図8(b)の実線で示すように液滴の殆どが溝部34内に入り込む。
【0074】
また、溝部34内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちたインクは、基板P(底部35)が親液化処理されていることから濡れ拡がり易くなっており、これによってインクはより均一に溝部34内を埋め込むようになる。
【0075】
次に、ステップS5の中間乾燥工程について説明する。基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。中間乾燥工程が終了すると、図8(c)に示すように、配線パターンを形成する配線膜である回路配線膜33が形成される。本実施形態において、回路配線膜33によって形成される配線パターンは、図3及び図4に示したゲート配線12及びゲート電極11である。
【0076】
一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さが、必要な膜厚に達しない場合には、この中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う。回路配線膜33が形成された上に機能液を配置すると、図8(d)に示すように、溝部34に入りきらない機能液が溝部34の上に盛り上り、一部バンクBの上に載った状態となる。そして、再び中間乾燥工程を行うことにより、図8(e)に示すように、インクの液滴が積層され、膜厚の厚い回路配線膜33が形成される。しかし一部バンクBの上に載った状態であった機能液は、バンクBに載った状態のまま乾燥することによって、はみ出し部37となる。はみ出し部37は、回路配線膜33と連なっており、回路配線膜33の一部であるはみ出し部37が、バンクBの上にはみ出した状態となる。なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さと、必要な膜厚とから、中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う繰返し数を、適当に選ぶことにより、必要な膜厚を得ることができる。
【0077】
次に、ステップS6の焼成工程について説明する。中間乾燥工程後の乾燥膜は、有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0078】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中、または水素などの還元雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。本実施形態では、吐出されパターンを形成したインクに対して、大気中クリーンオーブンにて280〜300℃で300分間の焼成工程が行われる。なお、例えば、有機銀化合物の有機分を除去するには、約200℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上250℃以下で行なうことが好ましい。以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
【0079】
次に、ステップS7のハーフエッチング工程について説明する。図9は、バンクをハーフエッチングした状態を示す模式図である。図9(a)は、ステップS6までの各工程が終了して回路配線膜33が形成された状態をしめしている。バンクBの上面と回路配線膜33の上面とは段差があり、回路配線膜33と連なるはみ出し部37が、バンクBの上にはみ出した状態となっている。
【0080】
バンクB及び回路配線膜33の上に絶縁膜を形成すると、段差部分で絶縁膜が薄くなりやすい。薄くなった部分では、絶縁機能が充分でない可能性が高いため、絶縁膜の上に他の配線膜や半導体装置の導体層が形成されると、図19(e)に示すように、絶縁膜が薄い部分で、回路配線膜33が絶縁膜の上に形成された配線膜や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性が高くなる。さらに、回路配線膜33と連なるはみ出し部37は、回路配線膜33からバンクBの上にはみ出した状態となっており、バンクBの上面と回路配線膜33の上面との段差部分に位置している。即ち、はみ出し部37は、絶縁膜が薄い部分と接触しており、絶縁膜の上に形成された配線膜や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性がより高くなる可能性が大きい。
【0081】
ハーフエッチングは、バンクBのみを選択的にエッチングするアルカリ水溶液を用いて行う。バンクBのみを選択的にエッチングするアルカリ水溶液としては、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、N.N−ジアルキルエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水溶液を挙げることができる。
【0082】
バンクをハーフエッチングすることによって、図9(b)に示すような断面の回路配線膜33が得られる。バンクBの上面と回路配線膜33の上面とは、略同一平面となっており、はみ出し部37はバンクBの上面がエッチングされて取り除かれるのに伴って、一緒に取り除かれている。
【0083】
この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクBの形成材料として、無機質の材料が用いられる。無機樹脂は熱に強いため、耐熱性に優れたバンクを形成することができる。さらに、バンクBと、ガラスで形成された基板Pと、の間の熱膨張率の差が小さくなる。バンクBが耐熱性に優れると共に、基板Pとの間の熱膨張率の差が小さことにより、バンクB、B間の溝部34に回路配線膜33を形成するための中間乾燥工程や焼成工程において、バンクに影響を及ぼすことなく、バンクが高温環境に曝されることを必要とする処理を実施することができる。また、バンクBの上に薄膜などを形成する工程においても、バンクBが高温環境に曝されることを必要とする処理を実施することができる。
【0084】
(2)バンクBをハーフエッチングすることにより、バンクBの厚さを、回路配線膜33の厚さと略同一にする。この結果、バンクBと回路配線膜33との段差が大きくなることを抑制することができる。これにより、バンクB及び回路配線膜33(ゲート配線12)の上に形成する絶縁膜28が段差部分で薄くなることを抑制することができ、絶縁膜28が薄くなることに起因して、回路配線膜33が、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができる。
【0085】
(3)バンクBをハーフエッチングすることにより、バンクBの厚さを、回路配線膜33の厚さと略同一にする。このとき、バンク上にはみ出した配線材料を除去することができる。即ち、バンクB及び回路配線膜33(ゲート配線12)の上に形成する絶縁膜28が薄くなる可能性が比較的高いバンクBと回路配線膜33との境目に位置する配線材料を除去することから、絶縁膜28が薄くなることに起因して、回路配線膜33が、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを、さらに抑制することができる。
【0086】
(4)絶縁膜28が薄くなることに起因して、回路配線膜33が絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができるため、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高いTFT30を実現することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る配線パターン形成方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態で使用する液滴吐出法や液滴吐出装置や、製造する半導体装置などは、第1の実施形態における液滴吐出法や液滴吐出装置や半導体装置と、基本的に同一である。第1の実施形態とは異なる配線パターンの形成方法について説明する。
【0088】
図10は、本実施形態に係る配線パターンの形成方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る配線パターンの形成方法では、上述した配線パターン形成用インクを基板上に配置し、基板上に導電膜配線パターンを形成する。ステップS21は、基板上に配線パターンの形状に応じた凹部を形成するようにバンクBを突設するバンク形成工程であり、次のステップS22は、基板に親液性を付与する親液化処理工程であり、次のステップS23は、バンクBに撥液性を付与する撥液化処理工程である。
【0089】
次のステップS24は、バンクB間の凹部に親液性の薄膜を形成するためのインクを配置する第1機能液配置工程であり、次のステップS25は、インクの液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程である。次のステップS26は、バンクB間の凹部に導電性の薄膜(配線膜)を形成するためのインクを配置する第2機能液配置工程であり、次のステップS27は、インクの液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程であり、次のステップS28は、インクに含まれる導電性微粒子が機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行う焼成工程である。また、次のステップS29は、バンクと導電膜とをハーフエッチングする第1ハーフエッチング工程である。次のステップS30は、配線膜上に拡散防止膜を形成するためのインクを配置する第3機能液配置工程であり、次のステップS31は、インクの液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程である。さらに、次のステップS32は、バンクをハーフエッチングする第2ハーフエッチング工程である。
【0090】
以下、各ステップの工程毎に詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。ステップS21のバンク形成工程は、第1の実施形態におけるステップS1のバンク形成工程と基本的に同一である。ステップS21のバンク形成工程によって図6(c)に示したようなバンクが形成される。
【0091】
ステップS22の親液化処理工程は、第1の実施形態におけるステップS2の親液化処理工程と基本的に同一である。ステップS22の親液化処理工程によって、バンクB、B間の底部35(基板Pの露出部)に親液性が付与される。
【0092】
次のステップS23の撥液化処理工程は、第1の実施形態におけるステップS3の撥液化処理工程と基本的に同一である。ステップS23の撥液化処理工程によって、バンクBの表面に撥液性が付与される。
【0093】
次に、ステップS24の第1機能液配置工程では、上記した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、親液性膜71を形成するためのインクの液滴が、図11(a)に示すように、基板P上のバンクB、B間に配置される。親液性膜71は、次にバンクB、B間の凹部に配置される配線パターン形成用インクに対する親液性を有する薄膜である。なお、親液性膜71を形成するためのインクは、親液性膜71を形成する原料としてマンガンを用いている。
【0094】
次のステップS25の中間乾燥工程では、基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。ステップS25の中間乾燥工程は、第1の実施形態におけるステップS5の中間乾燥工程と基本的に同一である。ステップS25の中間乾燥工程によって、図11(b)に示したように、バンクB、B間の凹部に配線パターン形成用インクに対する親液性を有する親液性膜71が形成される。
【0095】
次のステップS26の第2機能液配置工程では、上記した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成用インクの液滴が基板P上のバンクB、B間の凹部に、図11(c)に示したように、配置される。なお、ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物からなるインクを吐出する。
【0096】
第2機能液配置工程では、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン形成用材料を含むインクを液滴にして吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB、B間の溝部34に向け、インクの液滴を吐出して溝部34内にインクを配置する。このとき、液滴が吐出される配線パターン形成予定領域(すなわち溝部34)はバンクB、Bに囲まれているので、液滴が所定位置以外に拡がることを阻止できる。
【0097】
バンクB、B間の溝部34の幅W(ここでは、溝部34の開口部における幅)はインク(機能液)の液滴の直径Dとほぼ同等に設定されている。このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部34内に配置すると、液滴はその直径Dが溝部34の幅Wとほぼ同等であることから、図11(c)に二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上に乗ることがある。ところが、バンクB、Bの表面が撥液性となっておりしかもテーパ状になっていることから、これらバンクB、B上に乗った液滴部分がバンクB、Bからはじかれ、更には毛細管現象によって溝部34内に流れ落ちることにより、図11(c)の実線で示すように液滴の殆どが溝部34内に入り込む。しかし、液滴の極一部は、残留液72となって、バンクBの上に残されてしまうことがある。
【0098】
一方、溝部34内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちたインクは、バンクB、B間の凹部には、配線パターン形成用インクに対する親液性を有する親液性膜71が形成されていることから濡れ拡がり易くなっており、これによってインクはより均一に溝部34内を埋め込むようになる。
【0099】
次のステップS27の中間乾燥工程では、バンクB、B間の凹部に配線パターン形成用インクの液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。ステップS27の中間乾燥工程は、第1の実施形態におけるステップS5の中間乾燥工程と基本的に同一である。ステップS25の中間乾燥工程によって、図11(d)に示したように、バンクB、B間の凹部に配線パターンを形成する配線膜である回路配線膜73が形成される。本実施形態において、回路配線膜73と後述する拡散防止膜77とによって形成される配線パターンは、第1の実施形態で図3及び図4に示して説明したゲート配線12及びゲート電極11である。
【0100】
一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜73の厚さが、必要な膜厚に達しない場合には、この中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う。充分な厚さの回路配線膜73が得られるような機能液を配置すると、図11(c)に示すように、溝部34に入りきらない機能液が溝部34の上に盛上り、一部バンクBの上に載った状態となる。そして、再び中間乾燥工程を行うことにより、図11(d)に示すように、インクの液滴が積層され、膜厚の厚い回路配線膜(薄膜パターン)73が形成される。しかし一部バンクBの上に載った状態であった機能液は、バンクBに載った状態のまま乾燥することによって、はみ出し部74となる。はみ出し部74は、回路配線膜73と連なっており、回路配線膜73の一部であるはみ出し部74が、バンクBの上にはみ出した状態となる。
【0101】
また、バンクBの上に残されていた残留液72も乾燥して、導電性材料の残渣76がバンクBの上に形成される。なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜73の厚さと、必要な膜厚とから、中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う繰返し数を、適当に選ぶことにより、必要な膜厚を得ることができる。
【0102】
次のステップS28の焼成工程では、導電性を得るために熱処理を行う。中間乾燥工程後の乾燥膜は、有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。ステップS28の焼成工程は、第1の実施形態におけるスステップS6の焼成工程と基本的に同一である。ステップS28の焼成工程によって、乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
【0103】
次のステップS29の第1ハーフエッチング工程では、バンクBと回路配線膜73とを順次ハーフエッチングする。図12(a)は、ステップS28までの各工程が終了して回路配線膜73が形成された状態を示す。バンクBの上面と回路配線膜73の上面とは段差があり、回路配線膜73と連なり導通しているはみ出し部74が、バンクBの上にはみ出した状態となっている。また、回路配線膜73とは離れており、導通してはいないが、導電性材料の残渣76がバンクBの上に形成されている。
【0104】
バンクB及び回路配線膜73の上に絶縁膜を形成すると、図19(e)に示すように、段差部分で絶縁膜が薄くなりやすい。薄くなった部分では、絶縁機能が充分でない可能性が高いため、絶縁膜の上に他の配線膜や半導体装置の導体層が形成されると、絶縁膜が薄い部分で、回路配線膜73が絶縁膜の上に形成された配線膜や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性が高くなる。さらに、回路配線膜73と連なるはみ出し部74は、回路配線膜73からバンクBの上にはみ出した状態となっており、バンクBの上面と回路配線膜73の上面との段差部分に位置している。即ち、はみ出し部74は、絶縁膜が薄い部分と接触しており、絶縁膜の上に形成された配線膜や半導体装置の導体層とショートするなどの不具合が発生する可能性がより高くなる可能性が大きい。
【0105】
また、後述するように、導電性材料が、バンクB及び回路配線膜73の上に形成される絶縁膜に拡散するのを防止するために、回路配線膜73の上に拡散防止膜77を形成する。しかし、バンクBの上にはみ出したはみ出し部74や、拡散防止膜77からやや離れてバンクBの上に形成されている導電性材料の残渣76は、拡散防止膜77で覆うことができない。そのため、はみ出し部74や残渣76の導電性材料は、絶縁膜に拡散する。
【0106】
バンクBのハーフエッチングは、バンクBのみを選択的にエッチングするアルカリ水溶液を用いて行う。バンクBのみを選択的にエッチングするアルカリ水溶液としては、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、N.N−ジアルキルエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水溶液を挙げることができる。
【0107】
回路配線膜73のハーフエッチングは、回路配線膜73のみを選択的にエッチングする溶液を用いて行う。回路配線膜73のみを選択的にエッチングする溶液としては、導電性材料が銀の場合には、リン酸、硫酸および硝酸よりなる群から選ばれた1種または2種以上の無機酸と、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、過酸化水素、硝酸二アンモニウムセリウム、硝酸、ペルオキソ二硫酸、過マンガン酸、マンガン酸、クロム酸、硝酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過マンガン酸塩、マンガン酸塩およびクロム酸塩を1種または2種以上含有する酸化剤が挙げられる。
【0108】
バンクB及び回路配線膜73をハーフエッチングすることによって、図12(b)に示すような断面の回路配線膜73が得られる。バンクBの上面と回路配線膜73の上面とは、若干の段差があり、バンクBの上面に対して回路配線膜73の上面が凹んでいる。はみ出し部74は、回路配線膜73の上面がエッチングされて取り除かれるのに伴って、一緒に取り除かれており、残渣76は、バンクBの上面がエッチングされて取り除かれるのに伴って、一緒に取り除かれている。
【0109】
次のステップS30の第3機能液配置工程では、配線膜上に拡散防止膜77を形成するためのインクを配置する。なお、拡散防止膜77を形成するためのインクは、拡散防止膜77を形成する原料としてニッケルを用いている。
【0110】
次のステップS31の中間乾燥工程では、バンクB、B間の配線膜上に拡散防止膜形成用インクの液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。ステップS31の中間乾燥工程は、第1の実施形態におけるステップS5の中間乾燥工程と基本的に同一である。ステップS25の中間乾燥工程によって、図12(d)に示したように、バンクB、B間の回路配線膜73の上に拡散防止膜77が形成される。なお、拡散防止膜77は、ニッケルを材料としており、導電性を有するため、本実施形態における配線膜は、回路配線膜73と拡散防止膜77とで構成される。そして、前記したように、本実施形態において、回路配線膜73と拡散防止膜77とによって形成される配線パターンは、第1の実施形態で図3及び図4に示して説明したゲート配線12及びゲート電極11である。
【0111】
次のステップS32の第2ハーフエッチング工程では、バンクBをハーフエッチングする。バンクBのハーフエッチングは、上記したハーフエッチング工程と同様に、バンクBのみを選択的にエッチングするアルカリ水溶液を用いて行う。
【0112】
バンクBをハーフエッチングすることによって、図12(e)に示すような断面の回路配線膜73及び拡散防止膜77が得られる。バンクBの上面と拡散防止膜77の上面とは、略同一平面となっている。
【0113】
この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)第1ハーフエッチング工程において、バンクBをハーフエッチングすることにより、バンクB上にはみ出したはみ出し部74や、バンクB上に残った配線材料の残渣76を除去することから、次の工程で回路配線膜73の上に形成する拡散防止膜77で覆われない配線材料を殆ど無くすことができる。これにより、配線材料が、バンクB及び拡散防止膜77を覆うように形成される絶縁膜28に拡散することを抑制することができる。即ち、配線材料が絶縁膜28に拡散することに起因するTFT30の性能劣化を抑制することができる。
【0114】
(2)第1ハーフエッチング工程において、回路配線膜73をハーフエッチングすることにより、バンクB上にはみ出したはみ出し部74や、バンクB上に残った配線材料の残渣76を除去することから、次の工程で回路配線膜73の上に形成する拡散防止膜77で覆われない配線材料を殆ど無くすことができる。これにより、配線材料が、バンクB及び拡散防止膜77を覆うように形成される絶縁膜28に拡散することを抑制することができる。即ち、配線材料が絶縁膜28に拡散することに起因するTFT30の性能劣化を抑制することができる。
【0115】
(3)第2ハーフエッチング工程において、バンクBをハーフエッチングすることにより、バンクBの厚さを、回路配線膜33と拡散防止膜77と親液性膜71との厚さの総和と略同一にする。この結果、バンクBと拡散防止膜77との段差が大きくなることを抑制することができる。これにより、バンクB及び拡散防止膜77(ゲート配線12)の上に形成する絶縁膜28が段差部分で薄くなることを抑制することができ、絶縁膜28が薄くなることに起因して、ゲート配線12及びゲート電極11を形成する拡散防止膜77が、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができる。
【0116】
(4)第2ハーフエッチング工程において、バンクBをハーフエッチングすることにより、バンクBの厚さを、回路配線膜33と拡散防止膜77と親液性膜71との厚さの総和と略同一にする。このとき、バンク上にはみ出した拡散防止膜77の材料であるニッケルを除去することができる。即ち、バンクB及び拡散防止膜77(ゲート配線12)の上に形成する絶縁膜28が薄くなる可能性が比較的高いバンクBと拡散防止膜77との境目に位置するニッケルを除去することから、絶縁膜28が薄くなることに起因して、拡散防止膜77が、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを、さらに抑制することができる。
【0117】
(5)絶縁膜28が薄くなることに起因して、拡散防止膜77が、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができるため、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高いTFT30を実現することができる。
【0118】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。本実施形態の液晶表示装置は、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した配線パターン形成方法を用いて形成された配線パターンを有するTFTを備えた液晶表示装置である。
【0119】
図13は本実施形態に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図14は図13のH−H'線に沿う断面図である。図15は液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図16は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0120】
図13及び図14において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されている。
【0121】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0122】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0123】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図15に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0124】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図14に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0125】
図16はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、上記実施形態の回路配線の形成方法によりゲート配線61がガラス基板P上のバンクB、B間に形成されている。
【0126】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0127】
さらに、接合層64a、64b及びITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66を突設し、これらバンク66間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0128】
なお、上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0129】
他の実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図17に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係る配線パターン形成方法によって形成されている。
【0130】
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0131】
この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)配線パターンが、絶縁膜28によって隔てられているソース配線16などの他の薄膜層に接触して、ショートなどが発生することを抑制することができるため、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高いTFT30を備えるため、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0132】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る電子機器について説明する。本実施形態の電子機器液晶表示装置は、第3の実施形態で説明した液晶表示装置を備えた電子機器である。本実施形態の電子機器の具体例について説明する。
【0133】
図18(a)は携帯電話の一例を示した斜視図である。図18(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
【0134】
図18(b)はワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図18(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
【0135】
図18(c)は腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図18(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
【0136】
図18(a)〜(c)に示す電子機器は、前記した実施形態の液晶表示装置を備えたものであり、バンクと回路配線膜との段差が小さい、バンク上への回路配線膜のはみ出しが少ない、周囲のバンク上の導電材料の残渣が少ない配線パターンを有している。なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0137】
この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、故に、信頼性が高い液晶表示装置100を備えるため、ショートなどの不具合が発生する可能性が小さく、信頼性が高い携帯電話600や、情報処理装置700や、時計800を実現することができる。
【0138】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能であり、以下のように実施することもできる。
【0139】
(変形例1)前記実施形態においては、バンクを形成した後で、バンク間の凹部に親液化処理を行っている。しかし、親液化処理を行うことは、必須ではない。凹部を形成する基板やバンクなどの面が充分な親液性を備えている場合は、省略してもよい。
【0140】
(変形例2)前記実施形態においては、拡散防止膜を形成するための第3機能液配置工程の前に行う第1ハーフエッチング工程において、バンクBと回路配線膜73とをハーフエッチングしている。しかし、バンクBと回路配線膜73との両方をハーフエッチングすることは必須ではない。回路配線膜73の厚みに対してバンクBの高さを充分高くして、回路配線膜73のハーフエッチングを省略してもよい。
【0141】
回路配線膜73のハーフエッチングを省略する場合には、回路配線膜73の厚みに対してバンクBの高さを充分高くすることで、バンクBの上面と回路配線膜73の上面との段差を大きくして、回路配線膜73と連なってバンクBの上にはみ出すはみ出し部74が形成され難くする。
【0142】
(変形例3)前記実施形態においては、拡散防止膜を形成するための第3機能液配置工程の前に行う第1ハーフエッチング工程において、バンクBと回路配線膜73とをハーフエッチングしている。しかし、バンクBと回路配線膜73との両方をハーフエッチングすることは必須ではない。バンクBのハーフエッチングを省略してもよい。
【0143】
バンクBのハーフエッチングを省略する場合には、回路配線膜73をハーフエッチングする際に、バンクBの上面も同時に処理することにより、バンクB上にはみ出したはみ出し部74や、バンクB上に残った配線材料の残渣76を除去する。
【0144】
(変形例4)前記実施形態においては、拡散防止膜77を形成した後、第2ハーフエッチング工程を実施している。しかし、第2ハーフエッチング工程を実施することは必須ではない。第1ハーフエッチング工程において、バンクBと回路配線膜73との段差を、拡散防止膜77の厚さとほぼ同一となるようにハーフエッチングすることによって、第2ハーフエッチング工程を省略してもよい。
【0145】
この場合、バンクBの上に拡散防止膜77を形成する材料の残渣が残ることや、バンクBの上に拡散防止膜77がはみ出す部分が形成される。しかし、拡散防止膜77を形成する材料は回路配線及びバンクBを覆う薄膜に拡散する可能性は極めて小さいため、残渣やはみ出し部が、回路配線及びバンクBを覆う薄膜に拡散することによって回路配線及びバンクBを覆う薄膜の性能が損なわれる可能性は極めて小さい。
【0146】
(変形例5)前記実施形態においては、本発明の回路配線形成方法を用いてゲート配線12やゲート電極11などを形成する例について説明したが、本発明の回路配線形成方法を用いてソース配線16やソース電極17を形成することもできる。ソース配線16やソース電極17を形成する場合も、ゲート配線12やゲート電極11を形成する場合と同様の効果が得られる。
【0147】
(変形例6)また、上記実施形態では、バンクBの間に形成された凹部に導電性膜形成して配線パターンを形成したが、これに限られず、様々な膜パターンを形成することに適用することができる。例えば、液晶表示装置において表示画像をカラー化するために用いられているカラーフィルタにも適用可能である。このカラーフィルタは、基板に対してR(赤)、G(緑)、B(赤)のインク(液体材料)を液滴として所定パターンで配置することで形成することができるが、基板に対して所定パターンに応じたバンクを形成し、このバンクにインクを配置してカラーフィルタを形成することで、カラーフィルタを有する液晶表示装置を製造することができる。
【0148】
カラーフィルタを形成した後、バンクをハーフエッチングして、カラーフィルタとバンクとを略平坦にすることで、カラーフィルタ及びバンクの上に形成する陰極膜をより容易に形成できるようにすることができる。また、略平坦で、厚さが均一な陰極膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図。
【図2】ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明する模式断面図。
【図3】TFTアレイ基板の要部の概略構成を示した平面図。
【図4】(a)TFTの断面図。(b)ゲート配線とソース配線とが平面的に交差する部分の断面図。
【図5】第1の実施形態の配線パターンの形成方法を示すフローチャート。
【図6】バンクを形成する手順の一例を示す模式図。
【図7】プラズマ処理装置の概略構成図。
【図8】機能液を配置する手順と、機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順とを示す模式図。
【図9】バンクをハーフエッチングした状態を示す模式図。
【図10】第2の実施形態の配線パターンの形成方法を示すフローチャート。
【図11】機能液を配置する手順と、機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順とを示す模式図。
【図12】バンクをハーフエッチングする手順と、拡散防止膜を形成する手順とを示す模式図。
【図13】第3の実施形態の液晶表示装置の対向基板側から見た平面図。
【図14】図13のH−H’線に沿う断面図。
【図15】液晶表示装置の等価回路図。
【図16】液晶表示装置の部分拡大断面図。
【図17】非接触型カード媒体の分解斜視図。
【図18】電子機器の具体例を示す外観図。
【図19】従来の機能液を配置する手順と、機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順とを示す模式図。
【符号の説明】
【0150】
1…液体吐出ヘッド、10…TFTアレイ基板、11…ゲート電極、12…ゲート配線、14…ドレイン電極、16…ソース配線、17…ソース電極、19…画素電極、28,29…絶縁膜、30…TFT、31…形成材料、33…回路配線膜、34…溝部、35…底部、37…はみ出し部、71…親液性膜、72…残留液、73…回路配線膜、74…はみ出し部、76…残渣、77…拡散防止膜、100…液晶表示装置、600…携帯電話、700…情報処理装置、800…時計、B…バンク、IJ…液滴吐出装置、P…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域にバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に前記配線パターンの材料を含む機能液を吐出し、前記機能液を乾燥させて前記配線パターンを形成するステップと、
前記バンクの高さと前記配線パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項2】
基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に第1の機能液を吐出し、前記第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、
前記第1の配線パターン上に、第2の機能液を吐出し、前記第2の機能液を乾燥させて、第2の配線パターンを形成するステップと、
前記バンクの高さと、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとが積層された前記配線パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項3】
基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に第1の配線パターンの材料を含む第1の機能液を吐出し、前記第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、
前記バンクの厚さが前記第1の配線パターンの厚さより大きくなるように前記バンクの一部及び前記第1の配線パターンの一部を削除するステップと、
前記第1の配線パターン上に前記材料が拡散することを防止する拡散防止層を形成するステップと、
前記バンクの高さと、前記第1の配線パターンと前記拡散防止層とが積層された前記配線パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項4】
基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に第1の配線パターンの材料を含む第1の機能液を吐出し、前記第1の機能液を乾燥させて、第1の配線パターンを形成するステップと、
前記第1の配線パターンを形成するステップを複数回行った後に、前記バンクの厚さが前記第1の配線パターンの厚さより大きくなるように前記バンクの一部及び前記第1の配線パターンの一部を削除するステップと、
前記第1の配線パターン上に前記材料が拡散することを防止する拡散防止層を形成するステップと、
前記バンクの高さと、前記第1の配線パターンと前記拡散防止層とが積層された前記配線パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項5】
前記バンクの一部を除去する方法はハーフエッチングで行うことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線パターン形成方法。
【請求項6】
前記バンクを形成する材料は無機樹脂である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線パターン形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の配線パターン形成方法を用いて配線パターンが形成された半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置を備える電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を備える電子機器。
【請求項10】
基板上の所定の領域に膜パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域にバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に前記膜パターンの原料を含む機能液の液滴を吐出するステップと、
前記機能液を乾燥させて前記膜パターンを形成するステップと、
前記バンクの高さと前記膜パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有する膜パターン形成方法。
【請求項11】
基板上の所定の領域に、液滴吐出法を用いて膜パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記所定の領域を囲むようにバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた領域に第1の機能液を吐出し、前記第1の機能液を乾燥させて、第1の膜パターンを形成するステップと、
前記第1の膜パターン上に、第2の機能液を吐出し、前記第2の機能液を乾燥させて、第2の膜パターンを形成するステップと、
前記バンクの高さと、前記第1の膜パターンと前記第2の膜パターンとが積層された前記膜パターンの厚さとを略同一になるように前記バンクの一部を削除するステップと、を有することを特徴とする膜パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−128239(P2006−128239A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311854(P2004−311854)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】