説明

配線基板の製造方法、電気光学装置の製造方法、および電子機器の製造方法

【課題】エネルギー消費量を低減しつつ、膜厚や膜質が均質なパターニング膜を得ること。
【解決手段】基板上に液体材料(18)を塗布し塗布膜を形成する工程と、第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極との間に前記塗布膜を配置する工程と、前記第1電極と前記第2電極との間に電界を生じさせる工程と、前記塗布膜から分散媒または溶媒を除去し膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする配線基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、電気光学装置、及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁膜など各種の膜を所望形状にパターニングするには、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用していた。しかし、パターニングの対象となる膜の下側に何らかの下地が存在する場合には、エッチングの影響を考慮してこの下地の構成材料を慎重に選定する必要があり、下地の条件によってはエッチングが困難となり、下地の材料や構造を検討し直す必要が生じる場合もある。また、上記のパターン形成技術は、一旦、対象領域の全面に成膜した後に、必要な部分を残し、不要な部分を除去するという過程を経るため、例え除去対象となる部分が少ないとしても、パターン形成に多くエネルギーを必要としていた。
【0003】
また、パターン形成に関する他の従来技術として液滴吐出技術を用いる手法がある。この手法は、膜を形成したい場所に対して液滴吐出装置を用いて液体材料を滴下し、その液体材料を乾燥、固化させるという過程を経て、所望形状の膜を得るものである。しかし、この技術によって形成される膜は、特に、大面積の領域を対象として成膜する場合に、当該領域内のどの位置でも膜厚や膜質を均質にすることが難しい。このような課題に対しては、スピンコーティングなどの他の成膜方法がより優れている場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003-309369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー消費量を低減しつつ、膜厚や膜質が均質なパターニング膜を得ることが可能な製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、基板上に液体材料を塗布し塗布膜を形成する工程と、第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極との間に前記塗布膜を配置する工程と、前記第1電極と前記第2電極との間に電界を生じさせる工程と、前記塗布膜から分散媒または溶媒を除去し膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。または、基板上の一部を液体材料に対して疎液性にし、疎液領域を形成する第1工程と、前記基板上に前記液体材料を塗布する第2工程と、前記疎液領域に電場又は磁場を与え、前記疎液領域の少なくとも一部から前記液体材料を除去しつつ、前記疎液領域の少なくとも一部を除く領域に膜を形成する第3工程と、を含むことを特徴とするものであってもよい。ここで「配線基板」とは、基板上に配線の形成されたものを含み、配線のみならず、トランジスタ等のスイッチング素子、有機EL素子、その他の構造物が形成されるものであってもよい。
【0007】
かかる方法によれば、電界の生じた部分、又は電場若しくは磁場の与えられた部分にある液体材料の少なくとも一部が、基板上の他の部分へ移動する。他の部分へ移動したところで、膜を形成する。これにより、液体材料の移動した先には膜を形成でき、移動した液体材料の元の場所には膜を形成させないよう簡易に調整できる。
【0008】
好ましくは、上記配線基板の製造方法において、前記第3工程が、前記液体材料から溶媒を除去し溶質を析出させることを含み、前記膜が前記溶質を含む。また、前記第3工程が、前記液体材料から分散媒を除去し分散質を沈殿させることを含み、前記膜が前記分散質を含むものであってもよい。また、前記第3工程が、前記液体材料を硬化させ硬化膜を形成することを含み、前記膜が前記硬化膜を含むものであってもよい。この場合、液体材料は紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、前記第1工程に先立ち、少なくとも一部が前記疎液領域と重なる第1の電極を前記基板上に形成する工程と、を有し、前記第3工程が、前記第1の電極に対し、前記液体材料を挟んで対向する第2の電極を設置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることが好ましい。かかる方法によれば、膜が排除されるべき領域に対してより確実に局所的な電場を発生させ、膜のパターニングを行うことができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、前記第1工程に先立ち、少なくとも前記疎液領域の一部を間に挟む第1の電極と第2の電極とを前記基板上に形成する工程と、を有し、前記第3工程が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることが好ましい。かかる方法によれば、膜が排除されるべき領域に対してより確実に局所的な電場を発生させ、膜のパターニングを行うことができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、前記第3工程が、少なくとも一部が前記疎液領域と重なる第1の電極と、前記第1の電極に対し、前記液体材料を挟んで対向する第2の電極を設置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることが好ましい。かかる方法によれば、膜が排除されるべき領域に対してより確実に局所的な電場を発生させ、膜のパターニングを行うことができる。また、本態様では、電場を発生させるための電極を基板上に設ける必要がないという利点がある。
【0012】
本発明にかかる電気光学装置の製造方法は、上記配線基板の製造方法のいずれかを含むことを特徴とする。ここで「電気光学装置」とは、上述の配線基板と、他の基板との間に電気光学素子が形成された構造、あるいは、単に上述の配線基板上に、電気光学素子が形成された構造を意味する。後述の意味においては、構造が配線基板と同義の場合もありうる。「電気光学素子」とは液晶素子や有機EL素子、電気泳動表示素子など、表示または発光にかかる構造物を含む。具体的には、携帯電話やテレビの表示部や、レーザープリンタのラインヘッドの発光部などが挙げられる。
【0013】
本発明にかかる電子機器の製造方法は、上記配線基板の製造方法のいずれかを含むことを特徴とする。ここで「電子機器」とは、液晶テレビ、パーソナルコンピュータのモニタ、携帯電話、電子ペーパーなど、表示機能を有する完成品または半製品、あるいは、レーザープリンタや照明器具など、発光機能を有する完成品または半製品を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる配線基板の一例を示す平面図である。図1に示す配線基板は、基板10と、当該基板10上に形成された複数(本例では3つ)の配線膜12と、当該配線膜12を覆う絶縁性の膜(詳細は後述)と、を含んで構成されている。絶縁性の膜は、基板10の一方面上を覆いつつ、各配線膜12のコンタクト部12aを露出させるようにパターニングされている。
【0016】
図2は、上述した配線基板の製造方法を説明する工程断面図である。以下、図2を参照しながら本実施形態にかかる製造方法について詳細に説明する。なお、図2に示す断面図は、配線基板の上記図1に示したII−II線断面に対応している。
【0017】
まず、基板10上に配線膜12(図1参照)を形成する(図2(A))。本実施形態では図1に示したように、配線膜12とコンタクト部12aとは一体に形成される。更に、各配線膜12のコンタクト部12aは相互に補助配線膜12bを介して接続されている。また、補助電極14は、後の工程で各コンタクト部12aに電圧を加えるために用いられるものであり、補助配線膜12bを介してコンタクト部12aと接続されている。これらの配線膜12、コンタクト部12a、補助配線膜12b及び補助電極14は、例えば、基板10上にスパッタリング法などの成膜法によってアルミニウム膜等の導電膜を形成した後に、当該導電膜をフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によってパターニングすることによって形成される。
【0018】
次に、絶縁性の膜が排除されるべき領域、より具体的には各コンタクト部12aの上面を液体材料に対して疎液性にする(図2(B))。図示のように本実施形態では、液滴吐出装置を用いて各コンタクト部12aの上面に液体材料を塗布し、疎液性の皮膜16を形成する。これにより、各コンタクト部12aの上面に疎液領域が形成される。疎液性の皮膜16を形成し得る液体材料としては、例えばフッ素系高分子(フルオロ高分子等)、アミン系分子、シラン系分子などが挙げられる。
【0019】
次に、基板10上の全体に絶縁性の膜となるべき液体材料18を塗布し、塗布膜を形成する(図2(C))。このような液体材料18としては、例えばPEDOT/PSSが挙げられる。また、液体材料18の塗布方法としては、スピンコート法などが挙げられる。
【0020】
次に、疎液性にした領域(疎液領域)、より具体的には皮膜16が形成された領域に対して局所的に電場を与え(図2(D))、当該疎液領域の少なくとも一部(図示の例では全部)から液体材料18を排除する。図示のように本実施形態では、補助電極14に対して、基板10の一方面側に当該基板10と離間し、液体材料18を挟んで対向するように配置される共通電極20と、の間に電圧を印加する。これにより、補助電極14と接続された各コンタクト部12aと共通電極20との相互間、すなわち皮膜16が形成された領域に対して局所的に電場が与えられる。例えば、各コンタクト部12aと共通電極20との相互間距離を数mm程度とし、両者間に30V程度の電圧を加えるとよい。このとき、エレクトロウェッティング現象が生じ、電場が与えられた領域から液体材料18が排除される。なお、エレクトロウェッティング現象については、例えば、公知文献「Catherin Quilliet et al., Electrowetting : a recent outbreak,“Current Opinion in Colloid & Interface Science”,6(2001),p.34-39」や、公知文献「B.J.Feensta et al., Video-speed response in a reflective electrowetting display,“IDW 2003”,EP2-3,p1741」などに詳述されている。ここで、必ずしも各コンタクト部12aを疎液性にする必要はないが、疎液性にすることで、より効果を高めることができる。
【0021】
上記工程(図2(D)参照)と並行して、液体材料18を乾燥させることによってこれを固化させる。これにより、電場が与えられた領域は液体材料18が除去されることによって孔24が形成され、電場が与えられていない領域(疎液領域の少なくとも一部を除く領域)には絶縁性の膜22が形成される(図2(E))。すなわち、エレクトロウェッティング現象を利用することにより、基板10の一方面上を覆いつつ、各配線膜12のコンタクト部12aを露出させるようにパターニングされた膜22が得られる。ここで、「固化」とは、液体材料が溶媒に溶質を溶解した溶液の場合、乾燥させるなどして溶媒を除去し、溶質を析出させて膜を形成することであり、液体材料が分散媒に分散質を分散した分散液である場合、乾燥させるなどして分散媒を除去し、分散質を沈殿させて膜を形成することである。このほか、液体材料が紫外線硬化樹脂を含むものである場合、液体材料に紫外線を照射することで液体材料に含まれる分子を架橋重合させるなどして膜を形成することも含む。
【0022】
なお、上述した説明においては、基板10上に設けたコンタクト部12aと、基板10と離間して配置される共通電極20との間に電圧を加えることによって、エレクトロウェッティング現象を発生させていたが、基板10上に一対の電極を設け、当該一対の電極の相互間に電圧を加えるようにしても同様の結果を得ることができる。
【0023】
図3は、一対の電極(第1の電極と第2の電極)を設ける場合について具体的に説明する平面図である。図3に示すように、基板10上に、各配線膜12のそれぞれに対して一対の電極112aを設ける。各電極112aのうちで配線膜12と一体にされたもの同士が補助配線112bを介して接続され、更に基板10の端部に設けられた補助電極114と接続されている。同様に、各電極112aのうちで配線膜12と分離されたもの同士が補助配線112bを介して接続され、更に基板10の端部に設けられた補助電極114と接続されている。このような一対の電極112a等は、配線膜12の形成工程において同時に形成される(図2(A)参照)。また、それ以降の工程についても基本的には上述した実施形態と同様にして行われる。ただし、疎液領域(皮膜16が形成された領域)に対して局所的に電場を与え、当該領域から液体材料18を排除する工程(図2(D)参照)については、基板10上に共通電極20を設ける必要はなく、図3に示すように、補助電極114を用いて各一対の電極112aの間に電圧を加えることによって行われる。その結果、一対の電極112aに挟まれた領域について、液体材料18が排除される。なお、一対の電極112aは、必ずしも相互間に疎液領域の全てを挟む必要はなく、疎液領域の少なくとも一部を間に挟んでいればよい。
【0024】
また、エレクトロウェッティング現象を生じさせるための電極は、必ずしも基板10上に設けなくてもよい。以下、この場合の実施形態について説明する。
【0025】
図4は、基板上に電極を設けない場合について具体的に説明する平面図である。図4に示すように、基板10上には各配線膜12が形成される。このとき、図示の例では上記実施形態と同様にコンタクト部12aが形成されているが、これは電場を与えるために用いられるものではない。すなわち、この実施形態においては、コンタクト部を省略することも可能である。この実施形態では各コンタクト部12aが形成されている領域が最終的に膜の形成されない領域に相当する。
【0026】
図5は、基板上に電極を設けない場合における配線基板の製造方法を説明する工程断面図である。図5に示す断面図は、配線基板の上記図4に示したV−V線断面に対応している。以下、図5を参照しながら本実施形態にかかる製造方法について詳細に説明する。
【0027】
まず、基板10上に配線膜12を形成する(図5(A))。次に、絶縁性の膜が排除されるべき領域、より具体的には各コンタクト部12aの上面を疎液性にする(図5(B))。次に、基板10上の全体に絶縁性の膜となるべき液体材料18を塗布する(図5(C))。ここまでの各工程の内容については上述した実施形態と同様であるため、詳細については説明を省略する。
【0028】
次に、疎液性にした領域、より具体的には皮膜16が形成された領域に対して局所的に電場を与え(図5(D))、当該領域から液体材料18を排除する。このとき、図示のように本実施形態では、基板10の一方面側に膜22が排除されるべき領域に対応付けられた個別電極26a(第1の電極)を有する電極板26を配置するとともに、基板10の他方面側に、個別電極26aに対し、液体材料18を挟んで対向するようにして共通電極20(第2の電極)を配置する。そして、各個別電極26aと共通電極22との間に電圧を印加することにより、膜22が排除されるべき領域に局所的に電場を与える。当該領域に与えられるべき電場の強度は上述した実施形態と同様である。
【0029】
上記工程(図5(D)参照)と並行して、液体材料18を乾燥させることによってこれを固化させる。これにより、電場が与えられた領域は液体材料18が排除されることによって孔24が形成され、電場が与えられていない領域には絶縁性の膜22が形成される(図2(E))。
【0030】
以上のように第1の実施形態によれば、液体材料が固化するまでの過程において電場を与えた領域から液体材料を排除することができる。したがって、エネルギー消費量を低減しつつ、膜厚や膜質が均質なパターニング膜を得ることが可能となる。
【0031】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態と同様の製造方法を用いて薄膜トランジスタ等の半導体素子を形成することもできる。以下、その場合の実施形態について、半導体素子の一例として薄膜トランジスタを採り上げて説明する。
【0032】
図6は、第2の実施形態にかかる薄膜トランジスタの構造を模式的に説明する平面図である。図6に示すように、本実施形態にかかる薄膜トランジスタは、半導体膜50と、この半導体膜50に接してそれぞれ設けられたソース/ドレイン電極52、54と、半導体膜50上に絶縁膜を介して設けられたゲート電極56と、を含んで構成されている。また、ソース/ドレイン電極54には、補助配線膜60を介して補助電極58が接続されている。
【0033】
図7〜図9は、上述した薄膜トランジスタの製造方法を説明する工程断面図である。以下、図7〜図9を参照しながら本実施形態にかかる製造方法について詳細に説明する。なお、図7〜図9に示す断面図は、薄膜トランジスタの上記図6に示したVII−VII線断面に対応している。
【0034】
まず、基板62上にソース/ドレイン電極52、54を形成する(図7(A))。更に、補助電極58及び補助配線膜60についてもソース/ドレイン電極54と一体に形成される。補助電極14は、後の工程でソース/ドレイン電極54に電圧を加えるために用いられるものである。これらのソース/ドレイン電極52、54、補助配線58及び補助電極60は、例えば、基板62上にスパッタリング法などの成膜法によってアルミニウム膜等の導電膜を形成した後に、当該導電膜をフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によってパターニングすることによって形成される。
【0035】
次に、基板62上に、各ソース/ドレイン電極52、54と接するようにして半導体膜50を形成する(図7(B))。具体的には、半導体膜50は、例えばシリコン元素を含有する液体材料(シクロペンタシラン溶液等)を適量、基板62上に滴下し、固化させることによって形成される。あるいは、半導体膜50は、LPCVD法などの化学気相堆積法によって基板62上に一面の半導体膜を形成し、その後に当該半導体膜をパターニングすることによって形成してもよい。
【0036】
次に、基板62上の半導体膜50と電気的に接続される電極端子(後述する)が設けられるべき領域を疎液性にする(図7(C))。本実施形態では、一方のソース/ドレイン電極54を介して半導体膜50と電気的に接続される電極端子が設けられる。よって、液滴吐出装置を用いてソース/ドレイン電極54の上面に液体材料を塗布し、疎液性の皮膜64を形成する。
【0037】
次に、基板62上の全体に絶縁膜となるべき液体材料66を塗布する(図7(D))。このような液体材料66としては、例えばPEDOT/PSSが挙げられる。また、液体材料66の塗布方法としては、スピンコート法などが挙げられる。
【0038】
次に、疎液性にした領域、より具体的には皮膜64が形成された領域に対して局所的に電場を与え(図7(E))、当該領域から液体材料66を排除する。図示のように本実施形態では、補助電極58と、基板62の一方面側に当該基板62と離間して配置される共通電極68と、の間に電圧を印加する。これにより、補助電極58と接続されたソース/ドレイン電極54と共通電極20との相互間、すなわち皮膜64が形成された領域に対して局所的に電場が与えられる。例えば、ソース/ドレイン電極54と共通電極68との相互間距離を数mm程度とし、両者間に30V程度の電圧を加えるとよい。このとき、エレクトロウェッティング現象が生じ、電場が与えられた領域から液体材料66が排除される。
【0039】
上記工程(図7(E)参照)と並行して、液体材料66を乾燥させることによってこれを固化させる。これにより、電場が与えられた領域は液体材料66が排除されることによって孔72が形成され、電場が与えられていない領域には絶縁膜70が形成される(図8(A))。すなわち、エレクトロウェッティング現象を利用することにより、基板62の一方面上を覆いつつ、電極端子を埋設すべき領域に孔72を有するようにパターニングされた絶縁膜70が得られる。この絶縁膜70はゲート絶縁膜としても機能する。
【0040】
次に、絶縁膜70の上側であって半導体膜50の上側の所定位置に、ゲート電極56を形成する(図8(B))。具体的には、絶縁膜70の上面に対して、例えばスパッタリング法などの物理気相堆積法によってタンタル、クロム等の導電膜を形成し、その後、当該導電膜をパターニングすることによってゲート電極56が得られる。なお、ゲート電極56の形成は、材料溶液を滴下する手法(液体プロセス)によって行われてもよい。
【0041】
次に、絶縁膜70上の全体に絶縁膜となるべき液体材料74を塗布する(図8(C))。このような液体材料74としては、例えばPEDOT/PSSが挙げられる。また、液体材料74の塗布方法としては、スピンコート法などが挙げられる。
【0042】
次に、疎液性にした領域、より具体的には皮膜64が形成された領域に対して局所的に電場を与え(図8(D))、当該領域から液体材料74を排除する。電場の与え方については上述した通りである。このとき、エレクトロウェッティング現象が生じ、電場が与えられた領域から液体材料74が排除される。
【0043】
上記工程(図8(D)参照)と並行して、液体材料74を乾燥させることによってこれを固化させる。これにより、電場が与えられた領域は液体材料74が排除されることによって孔72が形成され、電場が与えられていない領域には絶縁膜76が形成される(図9(A))
【0044】
次に、上記工程において液体材料66、74が排除され、孔72が形成された領域に導電体を埋設することにより電極端子78を形成する(図8(B))。具体的には、絶縁膜74の上面に対して、例えばスパッタリング法などの物理気相堆積法によってアルミニウム等の導電膜を形成し、その後、当該導電膜をパターニングすることによって電極端子78が得られる。
【0045】
なお、エレクトロウェッティング現象を生じさせるための電場の与え方については、上述した第1の実施形態と同様に、基板62上に一対の電極を設け、当該一対の電極の相互間に電圧を加えるようにしてもよい。この場合には、例えば図10に示すように、ソース/ドレイン電極54とは別個に電極154を設けておき、当該電極154とソース/ドレイン電極54とを一対の電極として用い、補助電極58及び補助配線膜60を介して電圧を加えるとよい。また、個別電極と共通電極との間に基板62を配置し、両電極間に電圧を印加することによって局所的に電場を与えてもよい。
【0046】
以上のように第2の実施形態によれば、液体材料が固化するまでの過程において電場又は磁場を与えた領域から液体材料を排除することができる。したがって、エネルギー消費量を低減しつつ、絶縁膜の膜厚や膜質が均質な半導体素子を容易に得ることが可能となる。
【0047】
(第3の実施形態)
図11は、有機EL装置の配線構造の平面模式図である。図11に示す有機EL装置100は、複数の走査線101と、走査線に直交して配置される複数の信号線102と、信号線102に並列に延びる複数の電源線103と、各走査線101と各信号線102との交点付近にそれぞれ設けられる画素部Aと、を含んで構成されている。すなわち、本例の有機EL装置100は、複数の画素部を備え、当該各画素部がマトリクス状に配列されてなるアクティブマトリクス型の表示装置である。上記各実施形態にかかる製造方法は、例えばこのような有機EL装置の製造に適用することができる。
【0048】
各走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路105が接続されている。また、各信号線には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路104が接続されている。各画素部Aには、走査線101を介して走査信号がゲートに供給されるスイッチングトランジスタ112と、このスイッチングトランジスタ112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量111と、この保持容量111によって保持された画素信号がゲートに供給される駆動用トランジスタ113と、この駆動用トランジスタ113を介して電源線103に電気的に接続されたときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陰極)と、この画素電極と対向電極(陽極)との間に挟み込まれた機能層110と、が設けられている。これらの画素電極と対向電極と機能層110によって発光素子(有機EL素子)が構成されている。なお、機能層110は正孔輸送層、発光層、電子注入層等からなる。この有機EL装置100では、走査線101が駆動されてスイッチングトランジスタ112がオン状態となると、そのときの信号線102の電位が保持容量111に保持され、この保持容量111の状態に応じて、駆動用トランジスタ113のオン/オフ状態が決まる。そして、駆動用トランジスタ113のチャネルを介して、電源線103から画素電極に電流がながれ、さらに機能層110を介して陽極に電流がながれる。機能層110は、この流れる電流量に応じて発光する。各機能層110の発光状態を制御することにより、所望の画像表示を行うことができる。
【0049】
次に、上述した有機EL装置100を備えた電子機器の具体例について説明する。
【0050】
図12は、有機EL装置100を備えた電子機器の具体例を示す斜視図である。図12(A)は、電子機器の一例である携帯電話機を示す斜視図である。この携帯電話機1000は、本実施形態にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1001を備えている。図12(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、本実施形態にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1101を備えている。図12(C)は、電子機器の一例である携帯型情報処理装置1200を示す斜視図である。この携帯型情報処理装置1200は、キーボード等の入力部1201、演算手段や記憶手段などが格納された本体部1202、及び本実施形態にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1203を備えている。
【0051】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した説明ではエレクトロウェッティング現象を発生させるための外力として電場を挙げていたが、外力として磁場を用いることも可能である。また、第2の実施形態においては半導体素子の一例として薄膜トランジスタを挙げていたが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、他の種々の半導体素子(例えば、薄膜ダイオード等)も適用範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態にかかる配線基板の一例を示す平面図である。
【図2】配線基板の製造方法を説明する工程断面図である。
【図3】一対の電極を設ける場合について具体的に説明する平面図である。
【図4】基板上に電極を設けない場合について具体的に説明する平面図である。
【図5】基板上に電極を設けない場合における配線基板の製造方法を説明する工程断面図である。
【図6】第2の実施形態にかかる薄膜トランジスタの構造を模式的に説明する平面図である。
【図7】薄膜トランジスタの製造方法を説明する工程断面図である。
【図8】薄膜トランジスタの製造方法を説明する工程断面図である。
【図9】薄膜トランジスタの製造方法を説明する工程断面図である。
【図10】電界を発生させるための電極の他の構成例を説明する平面図である。
【図11】有機EL装置の配線構造の平面模式図である。
【図12】電子機器の具体例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10…基板、12a…コンタクト部、12…配線膜、12b…補助配線膜、14…補助電極、16…皮膜、18…液体材料、20…共通電極、22…膜、24…孔、26a…個別電極、26…電極板、50…半導体膜、52、54…ソース/ドレイン電極、56…ゲート電極、58…補助電極、60…補助配線、62…基板、64…皮膜、66…液体材料、68…共通電極、70…絶縁膜、72…孔、74…液体材料、76…絶縁膜、78…電極端子、112a…電極、112b…補助配線、114…補助電極、154…電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に液体材料を塗布し塗布膜を形成する工程と、
第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極との間に前記塗布膜を配置する工程と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電界を生じさせる工程と、
前記塗布膜から分散媒または溶媒を除去し膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
基板上の一部を液体材料に対して疎液性にし、疎液領域を形成する第1工程と、
前記基板上に前記液体材料を塗布する第2工程と、
前記疎液領域に電場又は磁場を与え、前記疎液領域の少なくとも一部から前記液体材料を除去しつつ、前記疎液領域の少なくとも一部を除く領域に膜を形成する第3工程と、を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第3工程が、前記液体材料から溶媒を除去し溶質を析出させることを含み、前記膜が前記溶質を含む、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記第3工程が、前記液体材料から分散媒を除去し分散質を沈殿させることを含み、前記膜が前記分散質を含む、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記第3工程が、前記液体材料を硬化させ硬化膜を形成することを含み、前記膜が前記硬化膜を含む、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかにおいて、
前記第1工程に先立ち、少なくとも一部が前記疎液領域と重なる第1の電極を前記基板上に形成する工程を有し、
前記第3工程が、前記第1の電極に対し、前記液体材料を挟んで対向する第2の電極を設置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることを含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項2ないし5のいずれかにおいて、
前記第1工程に先立ち、少なくとも前記疎液領域の一部を間に挟む第1の電極と第2の電極とを前記基板上に形成する工程と、を有し、
前記第3工程が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることを含む、配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項2ないし5のいずれかにおいて、
前記第3工程が、少なくとも一部が前記疎液領域と重なる第1の電極と、前記第1の電極に対し、前記液体材料を挟んで対向する第2の電極を設置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を発生させることを含む、配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の配線基板の製造方法を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の配線基板の製造方法を含むことを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−149958(P2007−149958A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342203(P2005−342203)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】