説明

金属シリサイド形成方法および半導体装置の製造方法

【課題】金属シリサイド層のグレインサイズを均一化することが可能であって、信頼性を向上する。
【解決手段】ソース・ドレイン領域21sdが形成された単結晶シリコンの半導体基板11や、ポリシリコンのゲート電極21gのように、シリコンを含む半導体領域においてシリサイド化が生ずる第1の温度にて、その半導体領域に第1金属を堆積することによって、第1金属層12を形成する。つぎに、その形成された第1金属層12を被覆するように、第1の温度より低い第2の温度にて、その半導体領域に第2金属13を堆積することによって、第2金属層を形成する。つぎに、第2金属層13が第1金属層12を被覆するように形成された半導体領域に対して熱処理を実施することによって、金属シリサイド層21gm,21sdmを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シリサイド形成方法および半導体装置の製造方法に関する。特に、本発明は、シリコンを含む半導体領域に金属シリサイド層を形成する、金属シリサイド形成方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては、微細化や高集積化などが要請されている。このため、たとえば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタにおいては、チャネルが微細化されており、ショートチャネル効果によってトランジスタ特性が劣化する場合がある。この不具合を解消するために、MOSトランジスタにおいては、たとえば、ソースおよびドレイン接合を浅くするように形成すると共に、ソース・ドレイン領域のコンタクト抵抗を低下させるために金属シリサイド層が形成されている。
【0003】
この金属シリサイド層は、たとえば、サリサイド(SALICIDE:Self−Aligned Silicide)工程にて形成される(たとえば、特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平09−283465号公報
【特許文献2】特開平07−273066号公報
【特許文献3】特開平07−94449号公報
【特許文献4】特開平04−299825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、サリサイド工程においては、まず、シリコンを含む半導体領域において金属シリサイド層を形成する領域に対応するように、金属を堆積することによって、金属層を形成する。たとえば、ポリシリコンのゲート電極と、このゲート電極を挟むようにシリコン半導体基板に形成された一対のソース・ドレイン領域とを被覆するように、スパッタリング法によって室温下にてニッケルを堆積し、この金属層を形成する。
【0006】
つぎに、熱処理を実施することによって、それぞれの半導体領域のシリコンと、金属層の金属とをシリサイド化させて、金属シリサイド層を形成する。たとえば、250〜400℃の高温雰囲気下において、半導体領域のシリコンと、ニッケルからなる金属層とを反応させて、ニッケルシリサイド(NixSi,x=1〜2)層を形成する。
【0007】
つぎに、シリサイド化されなかった金属層を除去する。たとえば、硫酸と過酸化水素の混合液(混酸)を用いたエッチング処理により、この未反応の金属膜を選択的に除去する。
【0008】
つぎに、再度、熱処理を実施することによって、シリサイド化を進行させて金属シリサイド層を成長させる。たとえば、前述の熱処理よりも高い温度である450〜650℃にて、再度、熱処理を実施することによって、ポリシリコンにより形成されたゲート電極と、このゲート電極を挟むようにシリコン半導体基板に形成された一対のソース・ドレイン領域との表面を覆うように、ニッケルシリサイド層を成長させる。
【0009】
このようにして、サリサイド工程においては、自己整合的に金属シリサイド層を形成する。
【0010】
しかしながら、上記のようにして金属シリサイド層を形成する場合においては、金属シリサイドの核の大きさを制御することが困難であるために、この金属シリサイドの核が局所的に大きく形成される場合があり、グレインサイズが大きく形成され、均一でない場合がある。つまり、金属シリサイドが凝集や異常成長して、グレインサイズが不均一になる場合がある。具体的には、堆積中にニッケルの核が大きく成長するために、その後、熱処理を施した場合には、たとえば、50〜500nmの範囲のグレインサイズにて金属シリサイド層が形成される。このため、金属シリサイド層においてグレインサイズが不均一になることに起因して、MOSトランジスタが形成される活性領域にてリークが発生する場合や、抵抗が大きくなる場合があり、所望のトランジスタ特性を得ることができない場合があった。
【0011】
このように金属シリサイド層のグレインサイズが不均一であるために、半導体装置の信頼性が低下する場合があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、金属シリサイド層のグレインサイズを均一化することが可能であって、信頼性を向上できる金属シリサイド形成方法および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の金属シリサイド形成方法は、シリコンを含む半導体領域に金属シリサイド層を形成する金属シリサイド形成方法であって、前記半導体領域に第1金属を含む第1金属層を形成する第1工程と、前記第1工程にて形成された前記第1金属層を被覆するように前記半導体領域に第2金属を含む第2金属層を形成する第2工程と、前記第2工程にて前記第2金属層が前記第1金属層を被覆するように形成された前記半導体領域に対して熱処理を実施することによって、前記第1金属層と前記第2金属層との少なくとも一方と、前記半導体領域とをシリサイド化させて、前記金属シリサイド層を形成する第3工程とを含み、前記第1工程においては、前記半導体領域と前記第1金属とがシリサイド化するような第1の温度にて、前記第1金属層を形成し、前記第2工程においては、前記第1の温度より低い第2の温度にて、前記第2金属層を形成する。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、シリコンを含む半導体領域に金属シリサイド層が形成された半導体装置の製造方法であって、前記半導体領域に第1金属を含む第1金属層を形成する第1工程と、前記第1工程にて形成された前記第1金属層を被覆するように前記半導体領域に第2金属を含む第2金属層を形成する第2工程と、前記第2工程にて前記第2金属層が前記第1金属層を被覆するように形成された前記半導体領域に対して熱処理を実施することによって、前記第1金属層と前記第2金属層との少なくとも一方と、前記半導体領域とをシリサイド化させて、前記金属シリサイド層を形成する第3工程とを含み、前記第1工程においては、前記半導体領域と前記第1金属とにおいてシリサイド化させるような第1の温度にて、前記第1金属層を形成し、前記第2工程においては、前記第1の温度より低い第2の温度にて、前記第2金属層を形成する。
【0015】
本発明によれば、まず、シリコンを含む半導体領域においてシリサイド化が生ずるような第1の温度にて、その半導体領域に第1金属を堆積することによって、第1金属層を形成する。つぎに、その形成された第1金属層を被覆するように、第1の温度より低い第2の温度にて半導体領域に第2金属を堆積することによって、第2金属層を形成する。つぎに、第2金属層が第1金属層を被覆するように形成された半導体領域に対して熱処理を実施することによって、第1金属層と第2金属層との少なくとも一方と、半導体領域とをシリサイド化させて、金属シリサイド層を形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属シリサイド層のグレインサイズを均一化することが可能であって、信頼性を向上できる金属シリサイド形成方法および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態において、半導体装置1の要部を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置1は、半導体基板11とMOSトランジスタ21とを有する。
【0019】
半導体基板11は、たとえば、単結晶シリコンからなり、主面にMOSトランジスタ21が形成されている。
【0020】
MOSトランジスタ21は、図1に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造である。MOSトランジスタ21は、半導体基板11の主面において素子分離層(図示無し)が区画する領域に対応するように形成されている。
【0021】
ここで、MOSトランジスタ21において、チャネル領域21cは、図1に示すように、半導体基板11の主面に形成されている。
【0022】
そして、MOSトランジスタ21において、ゲート絶縁膜21xは、図1に示すように、そのチャネル領域21cに対応するように形成されている。ゲート絶縁膜21xは、たとえば、シリコン酸化物によって、厚さが0.1〜5nmになるように形成されている。
【0023】
また、MOSトランジスタ21において、ゲート電極21gは、図1に示すように、ゲート絶縁膜21xを介してチャネル領域21cに対応するように積層されて形成されている。たとえば、ゲート電極21gは、ポリシリコンによって、厚さが100〜200nm程度になるように形成されている。そして、ゲート電極21gの側壁部分には、側壁スペーサー21sが絶縁体によって形成されている。また、本実施形態においては、ゲート電極21gは、図1に示すように、ゲート絶縁膜21xに対して反対の側に、金属シリサイド層21gmが形成されている。たとえば、ニッケルシリサイドにより、金属シリサイド層21gmが形成されている。
【0024】
そして、MOSトランジスタ21においては、一対のソース・ドレイン領域21sdがチャネル領域21cを挟むように形成されている。この一対のソース・ドレイン領域21sdは、側壁スペーサー21sに対応する領域であってチャネル領域21cを挟む領域にエクステンション領域が形成されており、そのエクステンション領域を介してチャネル領域21cを挟むように、エクステンション領域よりも不純物の濃度が高く、その不純物が拡散した深度が深い不純物拡散領域が形成されている。たとえば、一対のソース・ドレイン領域21sdにおいては、半導体基板11の主面に不純物が注入されて拡散されることによって形成されている。そして、本実施形態においては、一対のソース・ドレイン領域21sdは、図1に示すように、金属シリサイド層21sdmが表面に形成されている。たとえば、ニッケルシリサイドにより、金属シリサイド層21sdmがそれぞれに形成されている。
【0025】
以下より、本実施形態における半導体装置1の製造方法について説明する。
【0026】
図2は、本発明にかかる実施形態において、半導体装置1を製造する製造方法の各工程での半導体装置1の断面図である。図2においては、図2(a),図2(b),図2(c)の順に、半導体装置1の製造方法における各工程での断面図を示している。
【0027】
本実施形態において半導体装置1を製造する場合においては、図2(a)に示すように、まず、MOSトランジスタ21を形成する。
【0028】
ここでは、図2(a)に示すように、単結晶シリコンからなる半導体基板11の主面に、MOSトランジスタ21をLDD構造になるように形成する。
【0029】
具体的には、まず、MOSトランジスタ21のゲート絶縁膜21xを形成する。
【0030】
ここでは、半導体基板11を熱酸化し、厚さが0.1〜5nm程度のシリコン酸化物を表面に形成することによって、チャネル領域21cに対応するようにゲート絶縁膜21xを設ける。
【0031】
つぎに、MOSトランジスタ21のゲート電極21gを形成する。
【0032】
ここでは、たとえば、ゲート絶縁膜21xを被覆するように、CVD(Chemical Vapor Depositon)法によって100〜200nm程度の厚さのポリシリコンを堆積することによって、ポリシリコン膜(図示なし)を形成する。そして、チャネル領域21cに対応するように、そのポリシリコン膜上にマスク層(図示なし)を形成した後に、そのマスク層をマスクとして、そのポリシリコン膜をRIE(Reactiv Ion Etching)法によりエッチングすることによって、図2(a)に示すように、ゲート電極21gをパターン加工する。
【0033】
つぎに、一対のソース・ドレイン領域21sdのそれぞれを形成する。
【0034】
ここでは、ゲート電極21gの両端部に位置する半導体基板11のそれぞれに、ゲート電極21gをマスクとして不純物を注入し、一対のエクステンション領域を形成する。その後、側壁スペーサー21sをゲート電極21gの側壁に形成する。そして、その側壁スペーサー21sの両端部に位置する半導体基板11のそれぞれに、不純物を注入する。そして、アニール処理をすることによって不純物を活性化させ、エクステンション領域と、そのエクステンション領域よりも不純物の濃度が高く、その不純物が拡散した深度が深い一対の高濃度不純物拡散領域を形成する。これにより、エクステンション領域と高濃度不純物拡散領域とからなるソース・ドレイン領域21sdを一対で形成する。
【0035】
つぎに、図2(b)に示すように、第1金属層12を形成する。
【0036】
ここでは、一対のソース・ドレイン領域21sdとゲート電極21gとにおいてシリサイド化が発生するような第1の温度にて、MOSトランジスタ21を被覆するように物理気相成長法により第1金属を堆積することによって、この第1金属層12を形成する。
【0037】
具体的には、自然酸化膜を除去する前処理を実施した後に、N,He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,Hのうち、少なくとも1つを含む雰囲気下であって、一対のソース・ドレイン領域21sdとゲート電極21gとにおいてシリサイド化が生じ、ニッケルシリサイドが形成されるような第1の温度にて、第1金属としてニッケルをスパッタリング法によって堆積することにより、第1金属層12を形成する。本実施形態においては、第1の温度として、ニッケルシリサイドにおいて高い抵抗であるNiSiが形成されないように150℃以上,250℃以下の範囲の雰囲気下にある密閉容器内においてニッケルを堆積することによって、前述の金属シリサイド層21gm,21sdmを形成する際に核となる結晶核が形成されるように、厚さが0.2nm以上,3nm以下のニッケル膜を、第1金属層12として形成する。
【0038】
ここで、金属を堆積する際の温度が150℃未満の場合には、ニッケルシリサイドの核が形成されない場合や、その核が不均一になるなどの不具合が発生する場合があり、250℃を超える場合には、ニッケルシリサイドの核が成長して、熱処理後のグレインサイズが大きくなるなどの不具合が発生する場合がある。また、第1金属層12の厚さが、0.2nm未満の場合には、ニッケルシリサイドの核の形成が疎になるために、熱処理後のグレインサイズが大きくなる場合や不均一になるなどの不具合が発生する場合があり、3nm未満の場合には、堆積に要する時間中でニッケルシリサイドが成長し、グレインサイズが大きくなるなどの不具合が発生する場合がある。
【0039】
図3は、本発明にかかる実施形態において、ソース・ドレイン領域21sdが形成された半導体基板11にて、第1金属層12が設けられた部分を示す断面図である。なお、ゲート電極21gに第1金属層12が設けられた個所についても、同様である。
【0040】
図3に示すように、本工程においては、シリサイド化が発生するような第1の温度にて半導体基板11にニッケルを堆積するために、ニッケルシリサイドを含む結晶核が高密度に存在する結晶層12sが、半導体基板11の表面に形成される。ここでは、この結晶核のそれぞれが互いに融合せずに小さなサイズで分散して存在するように形成する。
【0041】
つぎに、図2(c)に示すように、第2金属層13を形成する。
【0042】
ここでは、前工程にて形成された第1金属層12を被覆するように、この前工程での第1の温度より低い第2の温度にて物理気相成長法により第2金属を堆積することによって、この第2金属層13を形成する。本実施形態においては、第2の温度として、シリサイド化が生じない温度にて、第2金属を堆積し、第2金属層13を形成する。
【0043】
具体的には、N,He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,Hのうち、少なくとも1つを含む雰囲気下であって、一対のソース・ドレイン領域21sdとゲート電極21gとにおいてニッケルシリサイドが形成されないような第2の温度にて、第2金属としてニッケルをスパッタリング法によって堆積することにより、第2金属層13を形成する。本実施形態においては、まず、前工程にて収容された第1の温度の雰囲気下の密閉容器から、第2の温度として、室温以上,150℃未満の範囲の雰囲気下にある別の密閉容器に移動させ収容する。その後、その第2の温度の雰囲気下の密閉容器内においてニッケルを堆積し、たとえば、厚さが3nm以上,15nm以下のニッケル膜を、第2金属層13として形成する。
【0044】
つぎに、図1に示すように、金属シリサイド層21gm,21sdmを形成する。
【0045】
ここでは、第2金属層13が第1金属層12を被覆するように形成された半導体基板11に対して熱処理を実施することによって、第1金属層12と第2金属層13との少なくとも一方と、一対のソース・ドレイン領域21sdとゲート電極21gとのそれぞれとの間にてシリサイド化を生じさせて、金属シリサイド層21gm,21sdmをそれぞれに形成する。
【0046】
つまり、第1金属層12と第2金属層13との少なくとも一方と、一対のソース・ドレイン領域21sdが形成された単結晶シリコンの半導体基板11とを、第1金属層12を形成する際に形成された結晶核を元にして成長させることによってシリサイド化を進行させ、一対のソース・ドレイン領域21sdの表面に金属シリサイド層21sdmを形成する。そして、これと共に、第1金属層12と第2金属層13との少なくとも一方と、ポリシリコンのゲート電極21gとを、第1金属層12を形成する際に形成された結晶核を元にして成長させることによってシリサイド化を進行させ、ゲート電極21gの表面に金属シリサイド層21gmを形成する。
【0047】
具体的には、まず、各部が形成された半導体基板11に対して、第1の熱処理を実施する。たとえば、N,He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn,Hのうち、少なくとも1つを含む雰囲気下において、ランプ加熱により、250℃以上,450度未満の範囲の温度であって10秒〜120秒の熱処理時間になるように、この第1の熱処理を実施する。なお、この他に、電気炉,レーザー加熱装置,スパイクアニール装置などを用いて第1の熱処理を実施しても良い。たとえば、電気炉の場合においては、2分〜1時間の処理時間で、この第1の熱処理を実施する。
【0048】
そして、第1の熱処理にてシリサイド化されなかった第1金属層12と第2金属層13とを、エッチング処理により除去する。たとえば、硫酸と過酸化水素の混合液(混酸)を用いたウェットエッチング法によって、この未反応の第1金属膜12と第2金属膜13とを選択的に除去する。なお、この他に、ドライエッチング法により、未反応の第1金属膜12と第2金属膜13とを選択的に除去してもよい。
【0049】
そして、第1金属層12と第2金属層13とが除去された半導体基板11に対して、第2の熱処理を実施する。ここでは、前述の第1の熱処理よりも高い温度にて、この第2の熱処理を実施する。たとえば、ランプ加熱により、450℃以上,600度以下の範囲の温度雰囲気下であって4秒〜120秒の熱処理時間になるように、この第2の熱処理を実施する。なお、この他に、電気炉,レーザー加熱装置,スパイクアニール装置などを用いて第2の熱処理を実施しても良い。
【0050】
このようにして本実施形態の半導体装置1を形成する。ここでは、本実施形態の半導体装置1における金属シリサイド層21gm,21sdmは、グレインサイズが10〜50nmの範囲であって、小さく、均一であることが確認された。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、ソース・ドレイン領域21sdが形成された単結晶シリコンの半導体基板11や、ポリシリコンのゲート電極21gのように、シリコンを含む半導体領域にてシリサイド化が生ずる第1の温度において、その半導体領域に第1金属を堆積することによって、第1金属を含む第1金属層12を形成する。つぎに、その形成された第1金属層12を被覆するように、第1の温度より低い第2の温度にて、その半導体領域に第2金属13を堆積することによって、第2金属を含む第2金属層13を形成する。つぎに、第2金属層13が第1金属層12を被覆するように形成された半導体領域に対して熱処理を実施することによって、第1金属層12と第2金属層13との少なくとも一方と、シリコンを含む半導体領域とをシリサイド化させて、金属シリサイド層21gm,21sdmを形成する。このため、本実施形態においては、上述したように、シリサイド化が発生するような高い温度の第1の温度にて半導体基板11にニッケルを堆積して第1金属層12を形成するために、ニッケルシリサイドを含む結晶核が高密度に存在する結晶層12sが、半導体基板11の表面に形成されている。そして、この第1金属層12を被覆するように、低い温度の第2の温度にて、ニッケルを堆積して第2金属層13を形成するために、第1金属層12の結晶核のそれぞれが融合せずに小さなサイズで分散して存在する。そして、熱処理によって、この結晶核を元にして金属シリサイドのグレインを成長させ、金属シリサイド層21gm,21sdmとして形成するために、、金属シリサイド層21gm,21sdmは、グレインサイズが小さく均一となる。したがって、本実施形態においては、金属シリサイドの結晶核が局所的に大きく形成されないために、MOSトランジスタが形成される活性領域にてリークが発生することを防止できると共に、抵抗が所望より大きくなる不具合の発生を防止することができる。よって、本実施形態は、金属シリサイド層のグレインサイズを均一化することが可能であって、信頼性を向上できる。
【0052】
なお、本発明の実施に際しては、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。
【0053】
たとえば、上記の実施形態においては、スパッタリング法により、第1金属層と第2金属層とを形成する場合について、説明したが、これに限定されない。たとえば、電子ビーム蒸着法により形成しても良い。その他に、第1金属層を形成する場合においては、シリコンを含む半導体領域に、シリサイド化が生ずる金属イオンを注入してもよい。この場合には、たとえば、上記の実施形態と同様な温度雰囲気下において、加速電圧10keV,ドーズ量1×1015にてニッケルイオンの注入を、シリコンを含む半導体領域に実施し、第1金属としてニッケルを含む第1金属層を形成する。
【0054】
また、上記の実施形態においては、ニッケルシリサイドの金属シリサイド層を形成する場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、チタン,コバルト,プラチナ,パラジウムなどの金属,および,各金属の合金がシリサイド化された金属シリサイド層を形成する場合においても、適用可能である。具体的には、チタン,コバルトの場合には、上記の第1金属膜を形成する際の堆積温度条件が、350℃以上,500℃以下であって、熱処理温度条件が、500℃以上,850℃以下にて実施することが好ましい。また、プラチナ,パラジウムの場合には、上記の第1金属膜を形成する際の堆積温度条件が、250℃以上,400℃以下であって、熱処理温度条件が、400℃以上,850℃以下にて実施することが好ましい。そして、合金の場合においては、両者の中間とすれば良い。
【0055】
また、上記の実施形態においては、半導体装置において、半導体素子としてMOSトランジスタを形成する場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、バイポーラトランジスタなど、他の半導体素子を形成する場合についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明に係る実施形態において、半導体装置1の要部を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる実施形態において、半導体装置1を製造する製造方法の各工程での半導体装置1の断面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる実施形態において、ソース・ドレイン領域21sdが形成された半導体基板11にて、第1金属層12が設けられた部分を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体装置
11…半導体基板
21…MOSトランジスタ
21c…チャネル領域
21x…ゲート絶縁膜
21g…ゲート電極
21sd…ソース・ドレイン領域
21gm,21sd…金属シリサイド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む半導体領域に金属シリサイド層を形成する金属シリサイド形成方法であって、
前記半導体領域に第1金属を含む第1金属層を形成する第1工程と、
前記第1工程にて形成された前記第1金属層を被覆するように前記半導体領域に第2金属を含む第2金属層を形成する第2工程と、
前記第2工程にて前記第2金属層が前記第1金属層を被覆するように形成された前記半導体領域に対して熱処理を実施することによって、前記第1金属層と前記第2金属層との少なくとも一方と、前記半導体領域とをシリサイド化させて、前記金属シリサイド層を形成する第3工程と
を含み、
前記第1工程においては、前記半導体領域と前記第1金属とにおいてシリサイド化させる第1の温度にて、前記第1金属層を形成し、
前記第2工程においては、前記第1の温度より低い第2の温度にて、前記第2金属層を形成する
金属シリサイド形成方法。
【請求項2】
前記第2の温度は、前記半導体領域と前記第2金属とにおいてシリサイド化させない温度である
請求項1に記載の金属シリサイド形成方法。
【請求項3】
前記第3工程において前記半導体領域とシリサイド化されなかった前記第1金属層と前記第2金属層とをエッチング処理により前記半導体領域から除去する第4工程と、
前記第4工程にて前記第1金属層と前記第2金属層とが除去された前記半導体領域に対して熱処理を実施する第5工程と
を含み、
前記第5工程においては、前記第3工程での熱処理よりも高い温度にて熱処理を実施する
請求項2に記載の金属シリサイド形成方法。
【請求項4】
シリコンを含む半導体領域に金属シリサイド層が形成された半導体装置の製造方法であって、
前記半導体領域に第1金属を含む第1金属層を形成する第1工程と、
前記第1工程にて形成された前記第1金属層を被覆するように前記半導体領域に第2金属を含む第2金属層を形成する第2工程と、
前記第2工程にて前記第2金属層が前記第1金属層を被覆するように形成された前記半導体領域に対して熱処理を実施することによって、前記第1金属層と前記第2金属層との少なくとも一方と、前記半導体領域とをシリサイド化させて、前記金属シリサイド層を形成する第3工程と
を含み、
前記第1工程においては、前記半導体領域と前記第1金属とがシリサイド化するような第1の温度にて、前記第1金属層を形成し、
前記第2工程においては、前記第1の温度より低い第2の温度にて、前記第2金属層を形成する
半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−214269(P2007−214269A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31218(P2006−31218)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】