説明

金属箔積層体の製造方法

【課題】複数の絶縁基材からなる積層基材の両側に一対の金属箔が貼着された金属箔積層体を製造する際に、この金属箔積層体の吸湿はんだ耐熱性を改善する。
【解決手段】絶縁基材2aを複数積層した状態で加圧して一体化させることにより、積層基材2を作製する。次に、この積層基材2を熱処理する。その後、この積層基材2を一対の金属箔3A、3Bで挟み込んで加熱加圧して一体化させることにより、金属箔積層体を製造する。これにより、積層基材2の熱処理を行う前に予め複数の絶縁基材2aを互いに密着させて界面の発生を防ぐことができる。その結果、吸湿はんだ耐熱試験で絶縁基材2aの表面に膨れが生じなくなり、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にプリント配線板用の材料として使用される金属箔積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の金属箔積層体の絶縁基材としては、耐熱性、電気的特性、低吸湿性、寸法安定性などの特性が求められることから、ガラスクロスに液晶ポリエステルを含浸した樹脂含浸基材が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−146139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁基材が複数である場合、特許文献1に開示された製造方法に従い、熱処理工程および熱プレス工程の2段階の工程を経て金属箔積層体を製造しても、金属箔をエッチング除去してから吸湿はんだ耐熱試験を行うと、絶縁基材の表面に膨れが生じるため、吸湿はんだ耐熱性に劣るという課題があった。これは、熱処理工程において液晶ポリエステルの結晶構造が組織化されるため、その後の熱プレス工程において、複数の絶縁基材間に界面が生じ、吸湿時にこの界面に水が浸入することが原因であると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体を得ることが可能な金属箔積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明者は、吸湿はんだ耐熱試験で絶縁基材の表面に膨れが生じる事態を避けるべく、予備プレス工程、熱処理工程および本プレス工程の3段階の工程を経て金属箔積層体を製造することに着目し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、複数の絶縁基材からなる積層基材の両側に一対の金属箔が貼着された構成を有する金属箔積層体の製造方法であって、前記絶縁基材を複数積層した状態で加圧して一体化させることによって前記積層基材を作製する予備プレス工程と、前記積層基材を熱処理する熱処理工程と、前記積層基材を前記一対の金属箔で挟み込んで加熱加圧して一体化させることによって金属箔積層体を製造する本プレス工程とが含まれる金属箔積層体の製造方法としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記予備プレス工程および前記本プレス工程が減圧下で実行されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記予備プレス工程において、前記複数の絶縁基材が一対の離型フィルム、一対の金属板および一対のクッション材で順に挟み込まれた状態で加圧されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記離型フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加え、前記金属板がSUS板であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の構成に加え、前記クッション材がアラミドクッションであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記絶縁基材は、無機繊維または炭素繊維に熱可塑性樹脂が含浸された樹脂含浸基材であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の構成に加え、前記熱可塑性樹脂は、溶媒可溶性であるとともに、流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で示される構造単位の含有量が30〜45モル%、式(2)で示される構造単位の含有量が27.5〜35モル%、式(3)で示される構造単位の含有量が27.5〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレン基または下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の構成に加え、前記式(3)で示される構造単位のXおよびYの少なくとも一方がNHであることを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項11に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計含有量が30〜45モル%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計含有量が27.5〜35モル%、p−アミノフェノールに由来する構造単位の含有量が27.5〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予備プレス工程、熱処理工程および本プレス工程の3段階の工程を経て金属箔積層体が製造されるので、積層基材の熱処理を行う前に予め複数の絶縁基材を互いに密着させて界面の発生を防ぐことができる。その結果、吸湿はんだ耐熱試験で絶縁基材の表面に膨れが生じる事態を避けることができ、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る金属箔積層体を示す図であって、(a)はその斜視図、(b)はその断面図である。
【図2】同実施の形態1に係る熱プレス装置の概略構成図である。
【図3】同実施の形態1に係る金属箔積層体の製造方法における予備プレス工程の様子を示す断面図である。
【図4】同実施の形態1に係る金属箔積層体の製造方法における予備プレス工程の温度・圧力プロファイルを例示するグラフである。
【図5】同実施の形態1に係る金属箔積層体の製造方法における本プレス工程の様子を示す断面図である。
【図6】同実施の形態1に係る金属箔積層体の製造方法における本プレス工程の温度・圧力プロファイルを例示するグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2に係る金属箔積層体の製造方法における予備プレス工程の様子を示す断面図である。
【図8】同実施の形態2に係る金属箔積層体の製造方法における本プレス工程の様子を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る金属箔積層体の製造方法における本プレス工程の様子を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る金属箔積層体の製造方法における本プレス工程の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0021】
図1乃至図6には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、1段構成、つまり1回の熱プレスで1個の金属箔積層体を製造する場合について説明する。なお、図3および図5においては、わかりやすさを重視して、それぞれの部材を互いに離して図示している。
【0022】
この実施の形態1に係る金属箔積層体1は、図1に示すように、正方形板状の積層基材2を有しており、この積層基材2は、図1(b)に示すように、4枚の樹脂含浸基材2aが積層された構成を有している。また、積層基材2の上下両面にはそれぞれ、正方形シート状の銅箔3(3A、3B)が一体に貼着されている。ここで、各銅箔3は、図1(b)に示すように、マット面3aおよびシャイン面3bからなる2層構造を備えており、マット面3a側で積層基材2と接触している。また、各銅箔3のサイズ(正方形の一辺)は、積層基材2のサイズよりやや大きくなっている。なお、表面平滑性の良好な金属箔積層体1を得るためには、各銅箔3の厚さは、18μm以上100μm以下であることが、入手しやすくて取り扱いやすい点で望ましい。
【0023】
ここで、各樹脂含浸基材2aはそれぞれ、耐熱性および電気特性に優れた液晶ポリエステルが無機繊維(好ましくは、ガラスクロス)または炭素繊維に含浸されたプリプレグである。この液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。この液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で示される構造単位(以下、「式(1)構造単位」という。)と、下記式(2)で示される構造単位(以下、「式(2)構造単位」という。)と、下記式(3)で示される構造単位(以下、「式(3)構造単位」という。)とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)構造単位の含有量が30〜45モル%、式(2)構造単位の含有量が27.5〜35モル%、式(3)構造単位の含有量が27.5〜35モル%であるものが好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレン基または下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【0024】
ここで、式(1)構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位であり、この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸などが挙げられる。
【0025】
また、式(2)構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、この芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
さらに、式(3)構造単位は、芳香族ジオール、フェノール性ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンに由来する構造単位である。この芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。また、このフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンとしては、p−アミノフェノール(4−アミノフェノール)、m−アミノフェノール(3−アミノフェノール)などが挙げられ、この芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0027】
本発明に用いる液晶ポリエステルは溶媒可溶性であり、かかる溶媒可溶性とは、温度50℃において、1質量%以上の濃度で溶媒(溶剤)に溶解することを意味する。この場合の溶媒とは、後述する液状組成物の調製に用いる好適な溶媒の何れか1種であり、詳細は後述する。
【0028】
このような溶媒可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、前記式(3)構造単位として、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンに由来する構造単位および/または芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち、式(3)構造単位として、XおよびYの少なくとも一方がNHである構造単位(式(3’)で示される構造単位、以下、「式(3’)構造単位」という。)を含むと、後述する好適な溶媒(非プロトン性極性溶媒)に対する溶媒可溶性が優れる傾向があるため好ましい。特に、実質的に全ての式(3)構造単位が式(3’)構造単位であることが好ましい。また、この式(3’)構造単位は液晶ポリエステルの溶媒溶解性を十分にすることに加えて、液晶ポリエステルがより低吸水性となる点でも有利である。
(3’)−X−Ar3 −NH−
(式中、Ar3 およびXは前記と同義である。)
【0029】
式(3)構造単位は全構造単位の合計に対して、30〜32.5モル%の範囲で含むとより好ましく、こうすることにより、溶媒可溶性は一層良好になる。このように式(3’)構造単位を式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは、溶媒に対する溶解性、低吸水性という点に加えて、後述する液状組成物を用いた樹脂含浸基材2aの製造が一層容易になるという利点もある。
【0030】
式(1)構造単位は、全構造単位の合計に対して、30〜45モル%の範囲で含むと好ましく、35〜40モル%の範囲で含むと一層好ましい。このようなモル分率で式(1)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分に維持しながらも、溶媒に対する溶解性がより優れる傾向にある。さらに、式(1)構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸の入手性も併せて考慮すると、この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸および/または2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が好適である。
【0031】
式(2)構造単位は、全構造単位の合計に対して、27.5〜35モル%の範囲で含むと好ましく、30〜32.5モル%の範囲で含むと一層好ましい。このようなモル分率で式(2)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分に維持しながらも、溶媒に対する溶解性がより優れる傾向にある。さらに、式(2)構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸の入手性も併せて考慮すると、この芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくも1種であると好ましい。
【0032】
また、得られる液晶エステルがより高度の液晶性を発現する点では、式(2)構造単位と式(3)構造単位とのモル分率は、[式(2)構造単位]/[式(3)構造単位]で表して、0.9/1〜1/0.9の範囲が好適である。
【0033】
次に、液晶ポリエステルの製造方法について簡単に説明する。
【0034】
この液晶ポリエステルは、種々公知の方法により製造可能である。好適な液晶ポリエステル、つまり式(1)構造単位、式(2)構造単位および式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーをエステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後、重合させて液晶ポリエステルを製造する方法が操作が簡便である点で好ましい。
【0035】
このエステル形成性・アミド形成性誘導体について、例を挙げて説明する。
【0036】
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のように、カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、当該カルボキシル基が、ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように、酸塩化物、酸無水物などの反応活性の高い基になっているものや、当該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
【0037】
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のように、フェノール性ヒドロキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性ヒドロキシル基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
【0038】
また、芳香族ジアミンのように、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、液晶ポリエステルをより簡便に製造する上では、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジオール、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンといったフェノール性ヒドロキシル基および/またはアミノ基を有するモノマーとを脂肪酸無水物でアシル化してエステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)とした後、このアシル化物のアシル基と、カルボキシル基を有するモノマーのカルボキシル基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させ、液晶ポリエステルを製造する方法が特に好ましい。
【0040】
このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報または特開2002−146003号公報に開示されている。
【0041】
アシル化においては、フェノール性ヒドロキシル基とアミノ基との合計に対して、脂肪酸無水物の添加量が1〜1.2倍当量であることが好ましく、1.05〜1.1倍当量であると一層好ましい。脂肪酸無水物の添加量が1倍当量未満では、重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して反応系が閉塞しやすい傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0042】
アシル化は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
【0043】
アシル化に使用される脂肪酸無水物は、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸またはこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく、特に好ましくは、無水酢酸である。
【0044】
アシル化に続く重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
【0045】
また、重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0046】
アシル化および/または重合の際には、ル・シャトリエ‐ブラウンの法則(平衡移動の原理)により、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸や未反応の脂肪酸無水物は蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
【0047】
なお、アシル化や重合においては触媒の存在下に行ってもよい。この触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
【0048】
これらの触媒の中でも、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
【0049】
この触媒は、通常モノマーの投入時に一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、この触媒を除去しない場合には、アシル化からそのまま重合に移行することができる。
【0050】
このような重合で得られた液晶ポリエステルはそのまま、本発明に用いることができるが、耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには、より高分子量化させることが好ましく、かかる高分子量化には固相重合を行うことが好ましい。この固相重合に係る一連の操作を説明する。前記の重合で得られた比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出し、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にする。続いて、粉砕後の液晶ポリエステルを、例えば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で加熱処理する。このような操作により、固相重合を実施することができる。この固相重合は、攪拌しながら行ってもよく、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお、後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るという観点から、この固相重合の好適条件を詳述すると、反応温度として210℃を越えることが好ましく、より一層好ましくは、220〜350℃の範囲である。また、反応時間は、1〜10時間から選択されることが好ましい。
【0051】
本発明に用いる液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であると、積層基材2上に形成される導体層と絶縁層(積層基材2)との間に一層高度な密着性が得られる点で好ましい。なお、ここでいう流動開始温度とは、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・s以下になる温度をいう。なお、この流動開始温度は、液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0052】
この液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上300℃以下であることが一層好ましい。流動開始温度が300℃以下であれば、液晶ポリエステルの溶媒に対する溶解性がより良好になることに加えて、後述する液状組成物を得たとき、その粘度が著増しないので、この液状組成物の取扱性が良好となる傾向がある。かかる観点から、流動開始温度が260℃以上290℃以下の液晶ポリエステルがさらに好ましい。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲に制御するには、前記固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
【0053】
なお、樹脂含浸基材2aを得るには、液晶ポリエステルおよび溶媒を含む液状組成物、特に溶媒に液晶ポリエステルを溶解させた液状組成物を用いることが好ましい。
【0054】
本発明に用いる液晶ポリエステルとして、上述した好適な液晶ポリエステル、特に、前述の式(3’)構造単位を含む液晶ポリエステルを用いた場合、この液晶ポリエステルはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒に対して十分な溶解性を発現する。
【0055】
ここで、ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶媒;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン系溶媒が挙げられる。なお、上述した液晶ポリエステルの溶媒可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの非プロトン性溶媒に可溶であることを指すものである。
【0056】
液晶ポリエステルの溶媒可溶性をより一層良好にして、液状組成物を得られやすくする点では、例示した溶媒の中でも、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。具体的にいえば、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒が好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)を用いることがより好ましい。さらに、前記溶媒が、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶媒であると、無機繊維または炭素繊維に液状組成物を含浸した後、除去しやすいという利点もある。この観点からは、DMF、DMAcが特に好ましい。また、このようなアミド系溶媒の使用は、樹脂含浸基材2aの製造時に、厚さムラ等が生じ難くなるため、この樹脂含浸基材2a上に導体層を形成しやすいという利点もある。
【0057】
前記液状組成物に、前記のような非プロトン性溶媒を用いた場合、この非プロトン性溶媒100質量部に対して、液晶ポリエステルを20〜50質量部、好ましくは22〜40質量部溶解させると好ましい。この液状組成物に対する液晶ポリエステルの含有量がこのような範囲にあると、樹脂含浸基材2aを製造する際に、無機繊維または炭素繊維に液状組成物を含浸する効率が良好になり、含浸後の溶媒を乾燥除去する際に、厚さムラ等が生じるという不都合も起こり難い傾向がある。
【0058】
また、前記液状組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体に代表されるエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂等、液晶ポリエステル以外の樹脂を1種または2種以上を添加してもよい。ただし、このような他の樹脂を用いる場合においても、これら他の樹脂も、この液状組成物に使用する溶媒に可溶であることが好ましい。
【0059】
さらに、この液状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、寸法安定性、熱電導性、電気特性の改善等を目的として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラー;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等の有機フィラー;シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤が1種または2種以上添加されていてもよい。
【0060】
また、この液状組成物は、必要に応じて、フィルター等を用いたろ過処理により、溶液中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
【0061】
さらに、この液状組成物は、必要に応じて、脱泡処理を行っても構わない。
【0062】
本発明に用いる液晶ポリエステルを含浸する基材は無機繊維および/または炭素繊維からなるものである。ここで、無機繊維としては、ガラスに代表されるセラミック繊維であり、ガラス繊維、アルミナ系繊維、ケイ素含有セラミック系繊維などが挙げられる。これらの中でも、入手性が良好であることから、主としてガラス繊維からなるシート、すなわちガラスクロスが好ましい。
【0063】
前記ガラスクロスとしては、含アルカリガラス繊維、無アルカリガラス繊維、低誘電ガラス繊維からなるものが好ましい。また、ガラスクロスを構成する繊維として、その一部にガラス以外のセラミックからなるセラミック繊維または炭素繊維を混入していてもよい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0064】
これらの繊維からなるガラスクロスを製造する方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散し、必要に応じてアクリル樹脂などの糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法を挙げることができる。
【0065】
繊維の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が利用できる。織り密度としては、10〜100本/25mmであり、ガラスクロスの単位面積当たりの質量としては10〜300g/m2 のものが好ましく使用される。前記ガラスクロスの厚さとしては、通常、10〜200μm程度であり、10〜180μmのものがさらに好ましく使用される。
【0066】
また、市場から容易に入手できるガラスクロスを用いることも可能である。このようなガラスクロスとしては、電子部品の絶縁含浸基材として種々のものが市販されており、旭シュエーベル(株)、日東紡績(株)、有沢製作所(株)等から入手することができる。なお、市販のガラスクロスにおいて、好適な厚さのものは、IPC呼称で1035、1078、2116、7628のものが挙げられる。
【0067】
樹脂含浸基材2aは、液晶ポリエステルおよび溶媒を含む液状組成物(特に、溶媒に液晶ポリエステルを溶解させた液状組成物)を無機繊維(好ましくは、ガラスクロス)または炭素繊維に含浸した後、溶媒を乾燥除去することで得られるものが特に好ましい。溶媒除去後の樹脂含浸基材2aに対する液晶ポリエステルの付着量としては、得られる樹脂含浸基材2aの質量を基にして、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
【0068】
なお、無機繊維として好適なガラスクロスに液状組成物を含浸させるには、典型的には、この液状組成物を仕込んだ浸漬槽を準備し、この浸漬層にガラスクロスを浸漬することで実施することができる。ここで、用いた液状組成物の液晶ポリエステルの含有量、浸漬槽に浸漬する時間、液状組成物が含浸されたガラスクロスを引き上げる速度を適宜最適化すれば、上述した好適な液晶ポリエステルの付着量は容易に制御することができる。
【0069】
このようにして、液状組成物を含浸させたガラスクロスは、溶媒を除去することで樹脂含浸基材2aを製造することができる。溶媒を除去する方法は特に限定されないが、操作が簡便である点で、溶媒の蒸発により行うことが好ましく、加熱、減圧、通風またはこれらを組み合わせた方法が用いられる。
【0070】
ところで、以上ような金属箔積層体1を製造するための熱プレス装置11は、図2に示すように、直方体状のチャンバー12を有しており、チャンバー12の側面(図2左側面)には扉13が開閉自在に取り付けられている。また、チャンバー12には真空ポンプ15が、チャンバー12内を所定の圧力(好ましくは、2kPa以下の圧力)まで減圧しうるように接続されている。さらに、チャンバー12内には、上下一対の熱盤(上熱盤16および下熱盤17)が互いに対向する形で設置されている。ここで、上熱盤16はチャンバー12に対して昇降しないように固定されており、下熱盤17は上熱盤16に対して矢印A、B方向に昇降自在に設けられている。なお、上熱盤16の下面には加圧面16aが形成されており、下熱盤17の上面には加圧面17aが形成されている。
【0071】
そして、この熱プレス装置11を用いて金属箔積層体1を製造する際には、次の手順による。
【0072】
なお、後述する予備プレス工程では、図3に示すように、一対のポリイミドフィルム20(20A、20B)、一対の厚さ1mmのSUS板21(21A、21B)、一対の厚さ5mmのSUS板22(22A、22B)および一対の厚さ3mmのアラミドクッション23(23A、23B)が用いられる。また、後述する本プレス工程では、図5に示すように、一対のスペーサー銅箔5(5A、5B)、一対の厚さ1mmのSUS板21(21A、21B)、一対の厚さ5mmのSUS板22(22A、22B)および一対の厚さ3mmのアラミドクッション23(23A、23B)が用いられる。ここで、各スペーサー銅箔5は、マット面5aおよびシャイン面5bからなる2層構造を備えている。
【0073】
まず、予備プレス工程で、図3に示すように、樹脂含浸基材2aを4枚積層した状態で加圧して一体化させることにより、積層基材2を作製する。
【0074】
それには、4枚の樹脂含浸基材2aを上下方向に積層し、その上下両側を一対のポリイミドフィルム20A、20Bで挟み込むことにより、4枚の樹脂含浸基材2aおよび一対のポリイミドフィルム20A、20Bからなる第1積層体8を作製する。次いで、この第1積層体8の上下両側を一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bで順に挟み込むことにより、第1積層体8、一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bからなる第2積層体9を作製する。
【0075】
そして、熱プレス装置11により、この第2積層体9をその積層方向(図3上下方向)に加熱加圧して一体化させる。すなわち、図2に示すように、まず、扉13を開け、下熱盤17の加圧面17a上に第2積層体9を載置する。次いで、扉13を閉め、真空ポンプ15を駆動することにより、チャンバー12内を所定の圧力まで減圧する。この状態で、下熱盤17を矢印A方向に適宜上昇させることにより、上熱盤16と下熱盤17との間に第2積層体9を軽く挟んで固定する。次に、上熱盤16および下熱盤17を昇温させる。そして、所定の温度まで上昇したところで、下熱盤17をさらに矢印A方向に上昇させて、上熱盤16と下熱盤17との間で第2積層体9を加圧することにより、4枚の樹脂含浸基材2aを予備プレスする。すると、上熱盤16と下熱盤17との間に積層基材2が形成される。
【0076】
なお、予備プレスの処理温度としては、液晶ポリエステルのガラス転移温度より20〜60℃低い温度(つまり、140〜180℃程度)で行うことが望ましい。また、予備プレスの圧力は1〜30MPaから選択され、予備プレスの処理時間は10分〜30時間から選択される。
【0077】
このようにして樹脂含浸基材2aの予備プレスを行うと、4枚の樹脂含浸基材2aが互いに密着し、これらの樹脂含浸基材2a間に界面が生じていない状態となる。
【0078】
この予備プレス工程における温度・圧力プロファイルの一例を図4に示す。なお、図4のグラフにおいて、横軸は時間を表し、左側の縦軸は温度を表し、右側の縦軸は圧力を表す。そして、実線のグラフが温度プロファイルを示し、一点鎖線のグラフが圧力プロファイルを示す。すなわち、図4に示す温度・圧力プロファイルでは、予備プレスの処理温度は、常温から60分かけて定速で170〜180℃まで上昇した後、その温度が60分間にわたって保持され、その温度から60分かけて定速で常温まで下降するとともに、予備プレスの圧力は、60分間にわたって大気圧のまま保持された後、120分間にわたって5MPaを保持される。
【0079】
その後、下熱盤17を矢印B方向に適宜下降させることにより、上熱盤16と下熱盤17との間に第2積層体9が軽く挟まれた状態とする。次いで、チャンバー12内の減圧状態を解放し、下熱盤17をさらに矢印B方向に下降させることにより、第2積層体9を上熱盤16の加圧面16aから離隔させる。最後に、扉13を開け、第2積層体9をチャンバー12内から取り出す。
【0080】
こうして第2積層体9が取り出されたところで、この第2積層体9から積層基材2を分離する。このとき、積層基材2と一対のSUS板21A、21Bとの間にはそれぞれポリイミドフィルム20が介在しているので、積層基材2の分離作業を容易に実行することができる。
【0081】
こうして積層基材2が作製されたところで、熱処理工程に移行し、この積層基材2の樹脂含浸基材2aに含まれる液晶ポリエステルをさらに高分子量化するため、この積層基材2を熱処理する。この熱処理の条件としては、例えば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、240〜330℃で1〜30時間にわたって熱処理するといった方法を挙げることができる。なお、一層良好な耐熱性を有する金属箔積層体を得るといった観点から、この熱処理の処理条件としては、その加熱温度が250℃を越えるようにすることが好ましく、より一層好ましくは加熱温度が260〜320℃の範囲である。また、この熱処理の処理時間は1〜10時間から選択されることが、生産性の点で好ましい。
【0082】
こうして積層基材2が熱処理されたところで、本プレス工程に移行し、図5に示すように、この積層基材2を一対の銅箔3A、3Bで挟み込んで加熱加圧して一体化させることにより、金属箔積層体1を製造する。
【0083】
それには、積層基材2の上下両側を一対の銅箔3A、3Bで挟み込む。このとき、各銅箔3のマット面3aを内側(積層基材2側)に向ける。次いで、これらの銅箔3A、3Bを一対のスペーサー銅箔5A、5Bで挟み込む。このとき、各スペーサー銅箔5のシャイン面5bを内側(銅箔3側)に向ける。すると、積層基材2、一対の銅箔3A、3Bおよび一対のスペーサー銅箔5A、5Bからなる第3積層体28が得られる。そして、この第3積層体28の上下両側を一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bで順に挟み込むことにより、第3積層体28、一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bからなる第4積層体29を作製する。
【0084】
そして、熱プレス装置11により、この第4積層体29をその積層方向(図5上下方向)に加熱加圧して一体化させることにより、積層基材2および一対の銅箔3A、3Bからなる金属箔積層体1を製造する。すなわち、図2に示すように、まず、扉13を開け、下熱盤17の加圧面17a上に第4積層体29を載置する。次いで、扉13を閉め、真空ポンプ15を駆動することにより、チャンバー12内を所定の圧力まで減圧する。この状態で、下熱盤17を矢印A方向に適宜上昇させることにより、上熱盤16と下熱盤17との間に第4積層体29を軽く挟んで固定する。次に、上熱盤16および下熱盤17を昇温させる。そして、所定の温度まで上昇したところで、下熱盤17をさらに矢印A方向に上昇させて、上熱盤16と下熱盤17との間で第4積層体29を加圧することにより、4枚の樹脂含浸基材2aを本プレスする。すると、上熱盤16と下熱盤17との間に金属箔積層体1が形成される。
【0085】
このとき、第1積層体8においては、各銅箔3のマット面3aが積層基材2に接触しているので、アンカー効果により、一対の銅箔3A、3Bは積層基材2に強固に固定される。
【0086】
この本プレス工程における温度・圧力プロファイルの一例を図6に示す。なお、図6のグラフにおいて、横軸は時間を表し、左側の縦軸は温度を表し、右側の縦軸は圧力を表す。そして、実線のグラフが温度プロファイルを示し、一点鎖線のグラフが圧力プロファイルを示す。すなわち、図6に示す温度・圧力プロファイルでは、本プレスの処理温度は、常温から60分かけて定速で340℃まで上昇した後、その温度が30分間にわたって保持され、その温度から60分かけて定速で常温まで下降するとともに、本プレスの圧力は、60分間にわたって大気圧のまま保持された後、120分間にわたって5MPaを保持される。
【0087】
その後、下熱盤17を矢印B方向に適宜下降させることにより、上熱盤16と下熱盤17との間に第4積層体29が軽く挟まれた状態とする。次いで、チャンバー12内の減圧状態を解放し、下熱盤17をさらに矢印B方向に下降させることにより、第4積層体29を上熱盤16の加圧面16aから離隔させる。最後に、扉13を開け、第4積層体29をチャンバー12内から取り出す。
【0088】
こうして第4積層体29が取り出されたところで、この第4積層体29から金属箔積層体1を分離する。このとき、各銅箔3のシャイン面3bと各スペーサー銅箔5のシャイン面5bとが接触しているので、各銅箔3から各スペーサー銅箔5を容易に剥離することができ、金属箔積層体1の分離作業を容易に実行することができる。
【0089】
ここで、金属箔積層体1の製造手順が終了し、4枚の樹脂含浸基材2aからなる積層基材2の両側に一対の銅箔3A、3Bが貼着された金属箔積層体1が得られる。
【0090】
このようにして得られた金属箔積層体1においては、上述したとおり、予備プレスにおいて、4枚の樹脂含浸基材2a間の界面が生じていない状態となっている。したがって、吸湿はんだ耐熱試験で樹脂含浸基材2aの表面に膨れが生じる事態を避けることができ、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体1を得ることが可能となる。
[発明の実施の形態2]
【0091】
図7、図8には、本発明の実施の形態2を示す。この実施の形態2では、5段構成、つまり1回の熱プレスで5個の金属箔積層体を製造する場合について説明する。なお、図7および図8においては、わかりやすさを重視して、それぞれの部材を互いに離して図示している。
【0092】
この実施の形態2に係る金属箔積層体1および熱プレス装置11は、上述した実施の形態1と同様の構成を有している。
【0093】
そして、この熱プレス装置11を用いて金属箔積層体1を製造する際には、上述した実施の形態1における金属箔積層体1の製造手順に準じて、以下に述べるとおり、5個の金属箔積層体1を同時に製造する。
【0094】
まず、予備プレス工程で、上述した実施の形態1と同様の手順により、図7に示すように、樹脂含浸基材2aを4枚積層して一体化させた積層基材2を5個作製する。すなわち、4枚の樹脂含浸基材2aを積層して一対のポリイミドフィルム20A、20Bで挟み込んだ第1積層体8を5個作製する。次に、これら5個の第1積層体8をその積層方向(図7上下方向)に厚さ1mmのSUS板などの仕切板10を介して重ね、一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bで順に挟み込んだ第2積層体9を作製する。その後、熱プレス装置11により、この第2積層体9をその積層方向(図7上下方向)に加熱加圧して一体化させる。すると、5個の積層基材2が同時に形成される。
【0095】
次いで、熱処理工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、5個の積層基材2を熱処理する。
【0096】
最後に、本プレス工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、図8に示すように、各積層基材2を一対の銅箔3A、3Bで挟み込んで一体化させた金属箔積層体1を5個製造する。すなわち、各積層基材2を一対の銅箔3A、3Bおよび一対のスペーサー銅箔5A、5Bで挟み込んだ第3積層体28を5個作製する。次に、これら5個の第3積層体28をその積層方向(図8上下方向)に厚さ1mmのSUS板などの仕切板10を介して重ね、一対のSUS板21A、21B、一対のSUS板22A、22Bおよび一対のアラミドクッション23A、23Bで順に挟み込んだ第4積層体29を作製する。その後、熱プレス装置11により、この第4積層体29をその積層方向(図8上下方向)に加熱加圧して一体化させる。すると、5個の金属箔積層体1が同時に形成される。
【0097】
ここで、金属箔積層体1の製造手順が終了し、5個の金属箔積層体1が得られる。
【0098】
このようにして得られた各金属箔積層体1においても、上述した実施の形態1と同様の理由により、吸湿はんだ耐熱試験で樹脂含浸基材2aの表面に膨れが生じる事態を避けることができ、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体1を得ることが可能となる。
[発明の実施の形態3]
【0099】
図9には、本発明の実施の形態3を示す。この実施の形態3では、1段構成、つまり1回の熱プレスで1個の金属箔積層体を製造する場合について説明する。なお、図9においては、わかりやすさを重視して、それぞれの部材を互いに離して図示している。
【0100】
この実施の形態3に係る金属箔積層体1および熱プレス装置11は、上述した実施の形態1と同様の構成を有している。
【0101】
そして、この熱プレス装置11を用いて金属箔積層体1を製造する際には、上述した実施の形態1における金属箔積層体1の製造手順に準じて、以下に述べるとおり、金属箔積層体1を製造する。
【0102】
なお、後述する本プレス工程では、図9に示すように、一対のスペーサー銅箔35A、35B、一対のSUS箔39A、39B、一対の混成クッション材30A、30B、一対の厚さ1mmのSUS板31A、31B、一対の厚さ5mmのSUS板32A、32Bおよび一対の厚さ3mmのアラミドクッション33A、33Bが用いられる。ここで、各スペーサー銅箔35は、マット面35aおよびシャイン面35bからなる2層構造を備えている。また、各混成クッション材30は、ポリテトラフルオロエチレンシート38が一対の銅箔36、37で挟み込まれた構成を有している。
【0103】
まず、予備プレス工程で、上述した実施の形態1と同様の手順により、樹脂含浸基材2aを4枚積層して一体化させた積層基材2を作製する。
【0104】
次いで、熱処理工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、積層基材2を熱処理する。
【0105】
最後に、本プレス工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、図9に示すように、積層基材2を一対の銅箔3A、3Bで挟み込んで一体化させた金属箔積層体1を製造する。すなわち、積層基材2を一対の銅箔3A、3B、一対のスペーサー銅箔35A、35B、一対のSUS箔39A、39Bおよび一対の混成クッション材30A、30Bで順に挟み込んだ第3積層体28を作製する。次に、この第3積層体28を一対のSUS板31A、31B、一対のSUS板32A、32Bおよび一対のアラミドクッション33A、33Bで順に挟み込んだ第4積層体29を作製する。その後、熱プレス装置11により、この第4積層体29をその積層方向(図9上下方向)に加熱加圧して一体化させる。すると、金属箔積層体1が形成される。
【0106】
ここで、金属箔積層体1の製造手順が終了し、金属箔積層体1が得られる。
【0107】
このようにして得られた金属箔積層体1においても、上述した実施の形態1と同様の理由により、吸湿はんだ耐熱試験で樹脂含浸基材2aの表面に膨れが生じる事態を避けることができ、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体1を得ることが可能となる。
[発明の実施の形態4]
【0108】
図10には、本発明の実施の形態4を示す。この実施の形態4では、5段構成、つまり1回の熱プレスで5個の金属箔積層体を製造する場合について説明する。なお、図10においては、わかりやすさを重視して、それぞれの部材を互いに離して図示している。
【0109】
この実施の形態4に係る金属箔積層体1および熱プレス装置11は、上述した実施の形態1と同様の構成を有している。
【0110】
そして、この熱プレス装置11を用いて金属箔積層体1を製造する際には、上述した実施の形態3における金属箔積層体1の製造手順に準じて、以下に述べるとおり、5個の金属箔積層体1を同時に製造する。
【0111】
まず、予備プレス工程で、上述した実施の形態3と同様の手順により、樹脂含浸基材2aを4枚積層して一体化させた積層基材2を5個作製する。
【0112】
次いで、熱処理工程に移行し、上述した実施の形態3と同様の手順により、5個の積層基材2を熱処理する。
【0113】
最後に、本プレス工程に移行し、上述した実施の形態3と同様の手順により、各積層基材2を一対の銅箔3A、3Bで挟み込んで一体化させた金属箔積層体1を5個製造する。すなわち、図10に示すように、各積層基材2を一対の銅箔3A、3B、一対のスペーサー銅箔5A、5B、一対のSUS箔39A、39Bおよび一対の混成クッション材30A、30Bで順に挟み込んだ第3積層体28を5個作製する。次に、これら5個の第3積層体28をその積層方向(図10上下方向)に厚さ1mmのSUS板などの仕切板10を介して重ね、一対のSUS板31A、31B、一対のSUS板32A、32Bおよび一対のアラミドクッション33A、33Bで順に挟み込んだ第4積層体29を作製する。その後、熱プレス装置11により、この第4積層体29をその積層方向(図10上下方向)に加熱加圧して一体化させる。すると、5個の金属箔積層体1が同時に形成される。
【0114】
ここで、金属箔積層体1の製造手順が終了し、5個の金属箔積層体1が得られる。
【0115】
このようにして得られた各金属箔積層体1においても、上述した実施の形態1と同様の理由により、吸湿はんだ耐熱試験で樹脂含浸基材2aの表面に膨れが生じる事態を避けることができ、吸湿はんだ耐熱性に優れる金属箔積層体1を得ることが可能となる。
[発明のその他の実施の形態]
【0116】
なお、上述した実施の形態1〜4では、絶縁基材として樹脂含浸基材2aを用いる場合について説明したが、樹脂含浸基材2a以外の絶縁基材(例えば、液晶ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム)を代用または併用することもできる。
【0117】
また、上述した実施の形態1〜4では、離型フィルムとしてポリイミドフィルム20を用いる場合について説明したが、ポリイミドフィルム20以外の離型フィルム(例えば、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリサルフォンフィルムなど)を代用または併用することもできる。
【0118】
また、上述した実施の形態1、2では、金属板としてSUS板21、22を用いる場合について説明するとともに、上述した実施の形態3、4では、金属板としてSUS板31、32を用いる場合について説明したが、SUS板21、22、31、32以外の金属板(例えば、アルミニウム板など)を代用または併用することもできる。
【0119】
また、上述した実施の形態1、2では、クッション材としてアラミドクッション23を用いる場合について説明するとともに、上述した実施の形態3、4では、クッション材として混成クッション材30およびアラミドクッション33を用いる場合について説明したが、アラミドクッション23、33、混成クッション材30以外のクッション材(例えば、カーボンクッション、アルミナ繊維不織布クッション等の無機繊維不織布クッションなど)を代用または併用することもできる。
【0120】
また、上述した実施の形態1〜4では、予備プレス工程および本プレス工程を実行するに際して1台の熱プレス装置11を共用する場合について説明したが、予備プレス工程と本プレス工程とを別個の熱プレス装置11を用いて実行することも勿論できる。
【0121】
また、上述した実施の形態1〜4では、金属箔積層体1の積層基材2が4枚の樹脂含浸基材2aから構成されている場合について説明したが、この積層基材2を構成する樹脂含浸基材2aの枚数は、複数(2以上)である限り、いくつでも構わない。
【0122】
さらに、上述した実施の形態2、4では、5段構成について説明したが、一般に複数段構成(例えば、2段構成、3段構成など)とすることも可能である。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
<樹脂含浸基材の作製>
【0124】
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)および無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。そして、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、その温度(150℃)を保持して3時間還流させた。
【0125】
その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。この内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、比較的低分子量の液晶ポリエステル粉末を得た。そして、(株)島津製作所製のフローテスター「CFT−500型」を用いて、この液晶ポリエステル粉末の流動開始温度を測定したところ、235℃であった。さらに、この液晶ポリエステル粉末を窒素雰囲気において223℃で3時間にわたって加熱処理することにより、固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
【0126】
こうして得られた液晶ポリエステル2200gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して液状組成物を得た。そして、東機産業(株)製のB型粘度計「TVL−20型」(ローターNo.21、回転速度:5rpm)を用いて、この液状組成物の溶液粘度を測定温度23℃で測定したところ、320cPであった。
【0127】
このようにして得られた液状組成物を(株)有沢製作所製のガラスクロス(厚さ45μm、IPC名称1078)に含浸した後、温風乾燥機を用いて設定温度160℃で1次乾燥することにより、樹脂含浸基材を作製した。
<実施例1>
【0128】
まず、予備プレス工程で、上述した樹脂含浸基材を4枚用意し、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、ポリイミドフィルム(純正化学(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、4枚の樹脂含浸基材、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度140℃、圧力5MPaの条件で60分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、4枚の樹脂含浸基材からなる積層基材を得た。
【0129】
その後、熱処理工程で、熱風式乾燥機を用いて、上記積層基材を窒素雰囲気下において290℃で3時間にわたって熱処理した。
【0130】
最後に、本プレス工程で、上記積層基材を用いて、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、積層基材、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度340℃、圧力5MPaの条件で30分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、金属箔積層体を得た。
<実施例2>
【0131】
予備プレス工程で4枚の樹脂含浸基材を熱プレスするときの温度を140℃から170℃に変更した点を除き、上述した実施例1と同様の手順により、金属箔積層体を製造した。
【0132】
すなわち、まず、予備プレス工程で、上述した樹脂含浸基材を4枚用意し、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、ポリイミドフィルム(純正化学(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、4枚の樹脂含浸基材、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度170℃、圧力5MPaの条件で60分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、4枚の樹脂含浸基材からなる積層基材を得た。
【0133】
その後、熱処理工程で、熱風式乾燥機を用いて、上記積層基材を窒素雰囲気下において290℃で3時間にわたって熱処理した。
【0134】
最後に、本プレス工程で、上記積層基材を用いて、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、積層基材、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度340℃、圧力5MPaの条件で30分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、金属箔積層体を得た。
<比較例1>
【0135】
予備プレス工程を省いた点を除き、上述した実施例1と同様の手順により、金属箔積層体を製造した。
【0136】
すなわち、まず、熱処理工程で、熱風式乾燥機を用いて、上記積層基材を窒素雰囲気下において290℃で3時間にわたって熱処理した。
【0137】
次いで、本プレス工程で、上記積層基材を用いて、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、積層基材、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度340℃、圧力5MPaの条件で30分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、金属箔積層体を得た。
<比較例2>
【0138】
予備プレス工程で、4枚の樹脂含浸基材を同時に熱プレスする代わりに、樹脂含浸基材を1枚のみ熱プレスするようにした点を除き、上述した実施例1と同様の手順により、金属箔積層体を製造した。
【0139】
すなわち、まず、予備プレス工程で、上述した樹脂含浸基材を1枚用意し、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、ポリイミドフィルム(純正化学(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、1枚の樹脂含浸基材、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度140℃、圧力5MPaの条件で60分間にわたって熱プレスした。
【0140】
その後、熱処理工程で、熱風式乾燥機を用いて、上記予備プレス後の樹脂含浸基材を窒素雰囲気下において290℃で3時間にわたって熱処理した。
【0141】
最後に、本プレス工程で、上記熱処理後の樹脂含浸基材を用いて、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、樹脂含浸基材、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度340℃、圧力5MPaの条件で30分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、金属箔積層体を得た。
<比較例3>
【0142】
予備プレス工程で樹脂含浸基材を熱プレスするときの温度を140℃から170℃に変更した点を除き、上述した比較例2と同様の手順により、金属箔積層体を製造した。
【0143】
すなわち、まず、予備プレス工程で、上述した樹脂含浸基材を1枚用意し、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、ポリイミドフィルム(純正化学(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、1枚の樹脂含浸基材、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製のポリイミドフィルム、厚さ50μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度170℃、圧力5MPaの条件で60分間にわたって熱プレスした。
【0144】
その後、熱処理工程で、熱風式乾燥機を用いて、上記予備プレス後の樹脂含浸基材を窒素雰囲気下において290℃で3時間にわたって熱処理した。
【0145】
最後に、本プレス工程で、上記熱処理後の樹脂含浸基材を用いて、下からアラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、樹脂含浸基材、銅箔(三井金属鉱業(株)製の「3EC−VLP」、厚さ18μm)、SUS板(SUS304、厚さ5mm)、アラミドクッション材((株)イチカワテクノファブリクス製のアラミドクッション、厚さ3mm)という順に積層し、北川精機(株)製の高温真空プレス機「KVHC−PRESS」(縦300mm、横300mm)を用いて、温度340℃、圧力5MPaの条件で30分間にわたって熱プレスして一体化させることにより、金属箔積層体を得た。
<吸湿はんだ耐熱性の評価>
【0146】
これらの実施例1、2および比較例1〜3の金属箔積層体についてそれぞれ、吸湿はんだ耐熱試験を実施した。すなわち、JIS C6481(5.5)に準拠して、金属箔積層体から50mm×50mmの試験片を切り出し、その銅箔の半分をエッチング除去した後、この試験片を温度121℃、相対湿度100%、気圧2atmの恒温槽に2時間にわたって静置し、温度260℃のはんだ浴に30秒間だけ浸漬した。なお、試験片の個数はそれぞれ3個とした。
【0147】
そして、絶縁基材の表面に膨れがあるか否かを目視によって確認することにより、吸湿はんだ耐熱性を評価した。その結果をまとめて表1に示す。
【表1】

【0148】
表1から明らかなように、比較例1〜3ではいずれも、3個すべての試験片について、絶縁基材の表面に膨れがあった。これに対して、実施例1、2ではいずれも、絶縁基材の表面に膨れがある試験片は皆無であった。これらの結果から、比較例1〜3に比べて実施例1、2は吸湿はんだ耐熱性に優れることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、プリント配線板用の材料として使用される金属箔積層体の製造その他に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0150】
1……金属箔積層体
2……積層基材
2a……樹脂含浸基材(絶縁基材)
3……銅箔(金属箔)
3a……マット面
3b……シャイン面
5……スペーサー銅箔
5a……マット面
5b……シャイン面
8……第1積層体
9……第2積層体
10……仕切板
11……熱プレス装置
12……チャンバー
13……扉
15……真空ポンプ
16……上熱盤
16a……加圧面
17……下熱盤
17a……加圧面
20……ポリイミドフィルム(離型フィルム)
21、22……SUS板(金属板)
23……アラミドクッション(クッション材)
28……第3積層体
29……第4積層体
30……混成クッション材(クッション材)
31、32……SUS板(金属板)
33……アラミドクッション(クッション材)
35……スペーサー銅箔
35a……マット面
35b……シャイン面
36、37……銅箔
38……ポリテトラフルオロエチレンシート
39……SUS箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁基材からなる積層基材の両側に一対の金属箔が貼着された構成を有する金属箔積層体の製造方法であって、
前記絶縁基材を複数積層した状態で加圧して一体化させることによって前記積層基材を作製する予備プレス工程と、
前記積層基材を熱処理する熱処理工程と、
前記積層基材を前記一対の金属箔で挟み込んで加熱加圧して一体化させることによって金属箔積層体を製造する本プレス工程と
が含まれることを特徴とする金属箔積層体の製造方法。
【請求項2】
前記予備プレス工程および前記本プレス工程が減圧下で実行されることを特徴とする請求項1に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項3】
前記予備プレス工程において、
前記複数の絶縁基材が一対の離型フィルム、一対の金属板および一対のクッション材で順に挟み込まれた状態で加圧されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項4】
前記離型フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項3に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項5】
前記金属板がSUS板であることを特徴とする請求項3または4に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項6】
前記クッション材がアラミドクッションであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁基材は、無機繊維または炭素繊維に熱可塑性樹脂が含浸された樹脂含浸基材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、溶媒可溶性であるとともに、流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項7に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項9】
前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で示される構造単位の含有量が30〜45モル%、式(2)で示される構造単位の含有量が27.5〜35モル%、式(3)で示される構造単位の含有量が27.5〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項8に記載の金属箔積層体の製造方法。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレン基または下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【請求項10】
前記式(3)で示される構造単位のXおよびYの少なくとも一方がNHであることを特徴とする請求項9に記載の金属箔積層体の製造方法。
【請求項11】
前記液晶ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計含有量が30〜45モル%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計含有量が27.5〜35モル%、p−アミノフェノールに由来する構造単位の含有量が27.5〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の金属箔積層体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−104835(P2011−104835A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260985(P2009−260985)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】