説明

集積回路装置製造システム

【課題】回路パスの遅延値を設計遅延値に近づけることによって回路歩留まりの高い集積回路装置の製造が可能となる製造システムを提供する。
【解決手段】品種設計情報から得られるクリティカルパス内での論理セルの使用状況を記録したデータベース1と、検査工程S1で取得したゲート電極加工仕上がり寸法を記録したデータベース2とを入力として、データベース1に基づきモデル回路パスを生成し、データベース2のゲート電極仕上がり寸法を反映した当該モデル回路パスを用いて回路パス遅延5を算出する。トランジスタ特性と製造条件との相関関係を記録したデータベース100を参照して、回路パス設計遅延6と回路パス遅延5との差分11が小さくなるように新製造条件12を決定し、検査工程S1よりも後の工程の製造条件を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の製造工程からなる集積回路装置の製造プロセスの制御に関し、特に、回路遅延値が設計回路遅延値に近い集積回路装置を製造するための製造プロセスの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路装置の高性能化の要求から、集積回路を構成する素子の高性能化が益々求められており、この高性能化を実現するために素子の微細化が急速に進められている。また、現在、論理回路を構成する主要な素子であるMIS(Metal Insulator Semiconductor )型トランジスタ素子の高速化は、ゲート電極寸法の縮小やゲート酸化膜厚の薄膜化による素子の微細化、配線抵抗の低抵抗化、及び配線容量の低容量化等によって配線遅延を低減することによって実施されている。
【0003】
ここで、特にゲート電極寸法の微細化において重要な点は、いかに微細なゲート電極を均一に形成するかに集約される。このゲート電極加工の均一化に対しては、製造ライン内、品種ロット内及びウェハ面内はもとより、同一チップ内で集積回路を構成する論理回路中の各トランジスタについても、設計値に近いゲート電極の加工精度が要求される。なぜなら、集積回路装置の信号遅延は、論理回路を構成する各トランジスタのうち最も速度の遅いトランジスタにより決定されるため、仮に製造工程のばらつきに起因してあるトランジスタのゲート電極寸法が設計値Lと比較してΔLだけ太めに仕上がった場合、そのトランジスタの電流駆動力IdはL/(L+ΔL)倍となり、そのトランジスタを含む回路全体の遅延が増大するためである。この回路遅延の増大は、上記のようなゲート電極寸法の製造ばらつきのみならず、ゲート酸化膜のばらつき、不純物イオン注入量のばらつき、各種熱処理工程の温度ばらつき、又は配線工程での層間絶縁膜の膜厚ばらつき等によりもたらされ、設計ルールの微細化の進展と共に増大傾向にある。
【0004】
従来、このような製造ばらつきが生じた場合には、製造が完了した製品を検査し、その検査結果に基づいて、当該製品よりも後に製造される製品の製造条件を変更し、それによりトランジスタ特性を設計値に近づけるフィードバック方式の製造システムが用いられてきた。
【0005】
しかしながら、近年の集積回路装置の製造には数百から千以上の工程が存在し、且つ同一の製造ラインで様々な品種の集積回路装置が製造されるため、フィードバック方式による製造ばらつきの補正では迅速な製造条件変更が困難になりつつある。そのため、近年では、ある製品を製造している過程で当該製品の特性の設計値からのずれを検出し、その結果に基づき、当該製品自体の電気特性が設計値と近くなるように当該製品自体の製造条件を変更するフィードフォワード方式の製造システムが用いられるようになってきている。
【0006】
例えば特許文献1によれば、半導体基板上に半導体素子を形成する工程と、形成した半導体素子の電気特性を検査する工程と、検査結果に基づいて半導体素子を覆う被膜の条件を求める工程と、求めた条件を満たすように半導体素子を覆う被膜を形成する工程とを有する方法が開示されている。このフィードフォワードプロセスによれば、形成したMOS(Metal Oxide Semiconductor )トランジスタの電気特性を検査し、その検査の結果を用いてトランジスタを覆う窒化シリコン膜等の被覆の成膜条件、膜厚及び組成等をデータベースに基づき自動で決定し、決定した条件で被膜を成膜することによって、当該被膜による応力によってゲート寸法が制御され、その結果、MOSトランジスタの閾値電圧やオン電流等の電気特性を設計値に近づけてやることができる。
【特許文献1】特開2001-332723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来のフィードフォワードシステムでは、集積回路装置を構成する論理回路セルの構成に関わらず、あるトランジスタの電気特性を設計値に近づけるために論理セル内の全トランジスタを対象とする製造条件に補正が加えられることになる。しかし、昨今の先端半導体製造プロセスでは、論理回路を構成する各トランジスタのゲート電極寸法や活性領域幅の設計値からのずれは各トランジスタで一定ではなく、論理回路のレイアウトやパターンの粗密により正の方向にも負の方向にも変動することが知られている。このようなパターンに起因する設計値からの寸法シフトを補正する方法として、光近接効果補正が一般に行われるが、厳密な補正は処理コスト及びマスク処理時間の増大等を招く。そのため、パターンに起因する寸法ずれはゼロにはならない。すなわち、論理回路を構成するトランジスタ中のあるトランジスタの電気特性の設計値からのズレ量に基づいて製造条件に補正を加える従来のフィードフォワードプロセスにおいては、各論理回路の遅延値が設計値に近づくように製造条件が補正される場合もあれは、逆に当該遅延値が設計値から離れるように製造条件が補正されてしまう可能性も存在する。言い換えると、従来のフィードフォワードプロセスにおいては、回路パスの遅延値を設計値に近づけてやるような製造条件の補正ができるとは限らないので、必ずしも歩留まりの向上をもたらすことはできない。
【0008】
前記に鑑み、本発明は、集積回路装置の論理回路パスの遅延値を確実に設計遅延値に近づけることができるように製造条件を変更するフィードフォワード方式の集積回路装置製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る集積回路装置製造システムは、集積回路装置の製造途中の加工状況に対するモニターを行い、且つ当該集積回路装置の特性が当該特性の設計値に近くなるように当該集積回路装置における前記モニター後の製造工程の製造条件を変更するフィードフォワード方式の集積回路装置製造システムであって、前記モニターにより得られた情報を用いて前記集積回路装置の回路特性を予測し、予測された回路特性と当該回路特性の設計値との差に基づいて、前記モニター後の製造工程の製造条件を変更する。
【0010】
本発明の集積回路装置製造システムの具体的な構成は例えば図1に示す通りである。すなわち、本発明の集積回路装置製造システム10に対しては、以下の2種類の入力情報が入力される。第1の入力情報は、品種設計情報を解析して得られる当該品種のクリティカルパス内で使用されている論理セルの種類、当該論理セルの種類毎の使用数及び当該論理セルの種類毎の設計遅延値を蓄積したデータベース1からの入力情報(つまり前記クリティカルパス内の論理セルの種類及びその種類毎の使用頻度等に関する情報)である。また、第2の入力情報は、前記論理セルの回路パターンが転写されるウェハに対してゲート電極加工工程が実施された後にゲート電極加工仕上がりを検査する工程S1で測定されたゲート電極仕上がり寸法が蓄積されたデータベース2からの入力情報(つまりゲート電極仕上がり寸法の測定データ)である。ここで、ウェハ上におけるゲート電極仕上がり寸法を検査するためのパターンが転写される領域には、通常の工程管理用パターンに加えて、データベース1より得られるクリティカルパス内で高い頻度で使用されている論理セルのパターンも転写されている。そして、ゲート電極仕上がり寸法を検査する工程S1では、通常の工程管理用パターンの検査に加えて、前記クリティカルパス内で高い頻度で使用されている論理セルのパターン中におけるゲート電極の加工仕上がり寸法も検査され、その結果がデータベース2に格納される。
【0011】
また、本発明の集積回路装置製造システム10は、論理セルの種類及び当該種類毎の論理セルの使用頻度を蓄積したデータベース1からの入力情報に基づいて、論理セルの使用頻度で重み付けされたモデル論理回路パスを自動で生成する装置4を備えている。また、装置4は、論理回路パスを構成するトランジスタのゲート電極寸法としてデータベース2に格納されたゲート電極加工寸法の測定値を用いた回路シミュレーションを行い、それによって前記モデル論理回路パス出口での回路パス遅延値5を算出する。
【0012】
また、本発明の集積回路装置製造システム10は、前記モデル論理回路パスを構成するトランジスタのゲート電極寸法としてゲート電極設計寸法を用いた回路シミュレーションにより算出された設計パス遅延値6と、前記回路パス遅延値5とを比較し、両遅延値の差分11を算出する機能を備えている。また、本発明の集積回路装置製造システム10は、予め用意された、ゲート電極加工工程よりも後の製造工程の製造条件とトランジスタオン電流との相関関係を蓄積したデータベース100に基づいて、遅延値5及び6の差分11を補正できる(つまり回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる)トランジスタオン電流の変化をもたらす新製造条件12を自動的に決定し、ゲート電極加工工程よりも後の製造工程の製造条件を変更する装置7を備えている。
【0013】
尚、本発明の集積回路装置製造システム10において、回路パス遅延値5及び6の差分11を補正できる新製造条件12を決定する際に、トランジスタオン電流と製造条件との相関関係を蓄積したデータベース100を参照したが、これに代えて、図2に示すように、製造条件を変更する装置7に接続されたプロセス・デバイスシミュレーション装置101を用いてリアルタイムに製造条件を変更してもよい。或いは、図3に示すように、製造条件を変更する装置7が、予め用意された、配線遅延値と層間絶縁膜の厚さとの相関関係を蓄積したデータベース102に基づいて、回路パス遅延値5及び6の差分11を補正できる(つまり回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる)配線遅延値の変化をもたらす新製造条件12として層間絶縁膜の厚さを自動的に決定してもよい。
【0014】
また、本発明の集積回路装置製造システム10において、ウェハ上に転写されるゲート電極加工寸法モニター用の論理セルの回路パターン及びデータベース1を品種に応じて入れ替えることにより、同一ラインで複数の品種の集積回路装置を製造する場合にも同一システムが適用可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の集積回路装置製造システムを用いることにより、回路パス遅延値を確実に設計遅延値に近づけることが可能となり、歩留まりを確実に向上させてやることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る集積回路装置製造システムについて、シリコンウェハを用いて半導体集積回路装置を製造する場合を例として、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。尚、図1においては、システム構成と対応させて、半導体集積回路装置のプロセスフローを示している。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10に対しては、以下の2種類の入力情報が入力される。
【0019】
まず、第1の入力情報は、品種設計情報を解析して得られる当該品種のクリティカルパス内で使用されている論理セルの種類、並びにクリティカルパス内での当該論理セルの種類毎の使用数及び設計遅延値を例えば図5に示すようなフォーマットで蓄積したデータベース1からの入力情報である。尚、本願において、品種とは、例えば複数の半導体素子を組み合わせてある特定の機能を実現する半導体集積回路装置を意味する。また、クリティカルパスとは、ある品種の半導体集積回路装置の回路中を信号が伝達する場合において信号遅延が最も大きい回路パスのことを意味する。
【0020】
次に、第2の入力情報は、ゲート電極加工工程後の検査工程S1でゲート電極の仕上がり寸法を検査した結果が蓄積されたデータベース2からの入力情報である。一般に、半導体集積回路装置の製造用のフォトマスクの作成時には、図6に示すように、シリコンウェハ(a)上のチップ(b)内の検査パターン搭載領域(d)にゲート電極の仕上がり形状を検査するためのモニターパターンを搭載できるようにする。尚、チップ(b)内は検査パターン搭載領域(d)以外に集積回路素子領域(c)が設けられている。また、本実施形態の集積回路装置製造システム10を用いる場合、クリティカルパス内の論理セルに関するデータベース1に基づいて、当該品種のクリティカルパス内で使用頻度の高い論理セル(例えば合計使用頻度が90%以上となる複数の高使用頻度セル)を抽出し、当該抽出した論理セルのパターンを、図6に示すように、予め上記検査パターン搭載領域(d)に配置する。この際、通常のモニターパターン(e)も当該領域(d)に配置しても良い。以上のようにしてシリコンウェハ上に転写された上記論理セルパターン中におけるゲート電極の仕上がり寸法を上記検査工程S1で測定し、その測定結果をデータベース2に記録する。言い換えると、現在製造工程で処理されている品種のクリティカルパス内で高い頻度で使用される論理セル中のトランジスタのゲート電極の仕上がり寸法をゲート電極仕上がり寸法検査工程S1で取得する。
【0021】
また、図1に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10は、当該品種のクリティカルパス内の論理セルに関するデータベース1からの入力情報に基づいて、パス遅延算出用のモデル回路を生成するモデル回路パス遅延算出装置4を備えている。
【0022】
以下、図5に示すように、クリティカルパス内の6セルについて、それぞれセル使用頻度とセル設計遅延とがデータベース1に記録されている場合を例として説明する。モデル回路パス遅延算出装置4は、図5に示すデータに基づいて、論理セルの使用頻度で重み付けされたモデル回路を生成し、当該モデル回路を用いてパス遅延を算出する。具体的には、図5に示すCELL_Aの個数をNA、CELL_Bの個数をNB、以下CELL_C、CELL_D、CELL_E及びCELL_Fの個数をそれぞれNC、ND、NE、NFとすると、各セルの出現頻度WはCELL_AについてWA=NA/N、CELL_BについてWB=NB/N、以下CELL_C、CELL_D、CELL_E及びCELL_FのそれぞれについてWC=NC/N、WD=ND/N、WE=NE/N、WF=NF/Nとなる。ここで、Nは図5に示す各セルの個数の和である。これらの出現頻度と各セルの設計遅延値TA、TB、TC、TD、TE、TFとを積算することによって、セルの使用頻度を反映したモデル回路パスの入口から出口までの設計遅延値T0_PATH はT0_PATH =WA×TA+WB×TB+WC×TC+WD×TD+WE×TE+WF×TFと表される。このT0_PATH をモデル回路パスを代表する遅延値とみなす。図5に示す各数値を上記T0_PATH に代入した計算結果を図8に示す。尚、図8において、棒グラフは、各論理セルの使用頻度で重み付けをしたセル一段あたりの設計遅延値(例えばWA×TA)を表す。また、図8において、折れ線は、モデル回路パスでの累積遅延値を表し、回路パス最終段までの累積遅延値つまりT0_PATH =69.1ピコ秒がモデル回路の設計パス遅延値6として算出される。
【0023】
次に、上記各論理セルCELL_A、CELL_B、CELL_C、CELL_D、CELL_E及びCELL_Fのそれぞれに含まれるトランジスタの実測ゲート電極寸法(つまりデータベース2の蓄積データ)が設計寸法と比較して、図9に示すように変化しているものとする。この場合、モデル回路パス遅延算出装置4は、上記各論理セル内のトランジスタのゲート電極寸法における設計寸法からのズレ(図9参照)を考慮したトランジスタモデルを用いて回路シミュレーションを実行し、それによって、上記各論理セルのゲート電極寸法が設計値から図9のように変化した場合における回路パス遅延値5を算出する。
【0024】
図10は、上記回路シミュレーションによって得られた回路パス遅延値5を、図8に示す設計パス遅延値6と比較して示している。尚、図10においても、棒グラフによってセル一段あたりの遅延値を表している。また、図10において、実線の折れ線(f)は、図9に示すゲート電極加工寸法の設計寸法からのズレを反映したモデル回路パス遅延値を表し、当該遅延値の回路パス最終段までの累積値つまり回路パス遅延値5のT0_PATH =70.4ピコ秒であり、破線の折れ線(g)で示される上記設計パス遅延値6のT0_PATH =69.1ピコ秒と比べて1.9%大きい。
【0025】
ところで、論理セルの遅延値は、セル容量をC、駆動電圧をV、セル駆動力をIとすると、C×V/Iで表される。すなわち、論理セルの遅延値はセル駆動力に反比例する。よって、上記のように、回路パス遅延値5のT0_PATH が設計パス遅延値6のT0_PATH と比べて1.9%大きい場合には、セル駆動力つまりトランジスタオン電流を1.9%向上させれば、回路パス遅延値を設計値に近づけることができる。そこで、図1に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10は、設計パス遅延値6と回路パス遅延値5とを比較し、両遅延値の差分11を算出する機能を備えている。さらに、本実施形態の集積回路装置製造システム10は、予め用意された、ゲート電極加工工程よりも後の製造工程の製造条件とトランジスタ特性との相関関係を蓄積したデータベース100を備えており、当該データベース100に基づいて、遅延値5及び6の差分11を補正できる(つまり回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる)トランジスタオン電流の変化をもたらす新製造条件12を自動的に算出し、ゲート電極仕上がり寸法検査工程S1よりも後の製造工程(例えば工程B、C、X)の製造条件を変更する製造条件変更装置7を備えている。
【0026】
図7は、データベース100の記録内容の一例を示している。すなわち、データベース100には、例えば、トランジスタオン電流の変化量(設計値からの変化量)とその変化量を実現する製造工程条件とが記録されている。製造条件の具体例は、LDD(lightly doped drain )工程のイオン注入ドーズ量、及び活性化RTA(rapid thermal annealing )温度等である。
【0027】
前述のように、回路パス遅延値5と設計パス遅延値6との差分11が1.9%である場合、つまりトランジスタオン電流を1.9%向上させる必要がある場合、製造条件変更装置7は、例えばLDD工程のイオン注入ドーズ量を変更してトランジスタオン電流の向上を実現するために、図7に示す情報が蓄積されたデータベース100に基づいて、LDD工程の注入ドーズ量を1.0×1014cm-2から1.08×1014cm-2(つまり新製造条件12)に自動的に変更する。本実施形態では、データベース100においてトランジスタオン電流変化量等は離散的な値からなるテーブルとして記録されているため、当該テーブルに記載されたオン電流変化量と上記回路パス遅延値の差分11の補正に必要なオン電流変化量とが一致しない場合には、当該必要なオン電流変化量がその間に位置する一対のオン電流変化量に対応する一対のLDD工程の注入ドーズ量を用いて、新製造条件12となるLDD工程の注入ドーズ量の補完計算を行う。
【0028】
図11は、上記のようにトランジスタオン電流(つまり駆動力Id)を変化させた場合におけるモデル回路パスの遅延値(Id補正後遅延値)を、図8に示す設計パス遅延値6と比較して示している。尚、図11においても、棒グラフによってセル一段あたりの遅延値を表している。また、図11において、実線の折れ線(h)は、上記Id補正後遅延値を表し、回路パス最終段までのId補正後遅延値の累積遅延値は68.5ピコ秒であり、回路パス遅延値5のT0_PATH =70.4ピコ秒(図10参照)と比較して、破線の折れ線(i)で示される上記設計パス遅延値6のT0_PATH =69.1ピコ秒により一層近づいている。
【0029】
以上に説明したように、本実施形態によると、回路パス遅延値を確実に設計遅延値に近づけることが可能となり、当該品種の回路スピード等の規格に対する歩留まりを確実に向上させてやることができる。
【0030】
尚、本実施形態において、回路パス遅延値5及び6の差分11を補正できる新製造条件12を決定する際に、トランジスタ特性と製造条件との相関関係を蓄積したデータベース100を参照したが、これに代えて、図2に示すように、製造条件を変更する装置7に接続されたプロセス・デバイスシミュレーション装置101を用いて、回路パス遅延値をその設計値に近づけることができるトランジスタの駆動力が得られる新製造条件12をリアルタイムに算出してもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る集積回路装置製造システムについて、シリコンウェハを用いて半導体集積回路装置を製造する場合を例として、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図3は、第2の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。尚、図3においては、システム構成と対応させて、半導体集積回路装置のプロセスフローを示している。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10においても、図1に示す第1の実施形態と同様に、モデル回路パス遅延値5と設計パス遅延値6との差分11、つまり回路パスのセル駆動力の差分を求めるまでの処理(第1の実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する)を行う。
【0034】
ところで、一般に、回路パス遅延は、論理セルのゲート遅延Cgと、論理セル間の接続及び集積回路装置の外部への信号取り出しのために生じる配線遅延Cwとの和になる。第1の実施形態においては、製造条件の変更により論理セル内のトランジスタの駆動力(オン電流)、つまりゲート遅延Cgを補正することによって回路パス遅延を設計値に近づける方式を示した。
【0035】
それに対して、第2の実施形態においては、製造条件の変更により配線遅延Cwを補正することによって回路パス遅延を設計値に近づける方式を用いる点で第1の実施形態と異なる。一般に、多層配線構造における配線遅延Cwは、例えば図12に示すように、配線膜51、52及び53の抵抗Rと、上下又は左右に位置する配線膜同士を絶縁するための層間絶縁膜54の容量Cとの積R×Cに比例する。ここで、容量Cについては、例えばM層目の配線膜51とM+1層目の配線膜52とに挟まれた層間絶縁膜54の厚さdを変えることによって変えることかできる。そこで、本実施形態においては、これを利用して配線遅延値を調整する。すなわち、図3に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10は、第1の実施形態のデータベース100(トランジスタ特性と製造条件との相関関係を蓄積したデータベース100)に代えて、予め用意された、配線遅延値と層間絶縁膜の厚さdとの相関関係を蓄積したデータベース102を備えており、当該データベース102に基づいて、遅延値5及び6の差分11を補正できる(つまり回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる)配線遅延値の変化をもたらす層間絶縁膜の厚さdを新製造条件12として自動的に決定し、ゲート電極加工工程よりも後の製造工程(例えば配線工程X(層間絶縁膜堆積工程を含む)等)の製造条件を変更する製造条件変更装置7を備えている。
【0036】
本実施形態によると、第1の実施形態と同様に回路パス遅延値を確実に設計遅延値に近づけることが可能となり、当該品種の回路スピード等の規格に対する歩留まりを確実に向上させてやることができる。
【0037】
尚、本実施形態において、回路パス遅延値5及び6の差分11を補正できる新製造条件12を決定する際に、配線遅延値と層間絶縁膜の厚さdとの相関関係を蓄積したデータベース102を参照したが、これに代えて、製造条件を変更する装置7に接続されたプロセス・デバイスシミュレーション装置を用いて、回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる配線遅延値が得られる新製造条件12をリアルタイムに算出してもよい。
【0038】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムについて、シリコンウェハを用いて半導体集積回路装置を製造する場合を例として、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図4は、第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。尚、図4においては、システム構成と対応させて、半導体集積回路装置のプロセスフローを示している。
【0040】
図4に示すように、本実施形態の集積回路装置製造システム10が第1の実施形態と異なる点は次の通りである。
【0041】
すなわち、製造が完了した半導体集積回路装置の回路遅延及び回路タイミング歩留まりを検査する工程S2を実施する機能を有している。また、製造条件変更装置7によって決定された新製造条件12と、工程S2で得られた回路タイミング歩留まり(回路遅延)との相関データを蓄積するデータベース8、及び当該データベース8に接続されたトランジスタ特性−製造条件データベース補正装置9を備えている。
【0042】
ところで、第1の実施形態においては、予め用意された、製造条件とトランジスタ特性との相関関係を蓄積したデータベース100に基づいて、回路パス遅延値とその設計値との差分を小さくできるように製造条件の変更を行う。また、第1の実施形態においては、例えば、当該差分を小さくできるLDD工程のイオン注入ドーズ量が回路パス内の全てのトランジスタに対して適用されることとなる。ところが、当該適用された注入ドーズ量に対する各論理セルの駆動力の感度には論理セルの種類毎に少なからず差がある。従って、第1の実施形態の効果を表す図11に示すように、LDD工程のイオン注入ドーズ量を補正した後の回路パス遅延値(Id補正後遅延値)は設計遅延値に近づくものの完全には一致しない。図13は、設計値(l)、補正前(m)及び補正後(n)のそれぞれの回路パス遅延値の確率分布、並びに当該確率分布と対応するタイミング歩留まりを示している。図13に示すように、補正後(n)の回路パス遅延分布の中心値は、補正前(m)の回路パス遅延分布の中心値と比べて、設計値(l)に近づいているものの、設計値(l)と完全に一致するわけではない。
【0043】
また、第1の実施形態で述べたように、データベース100では、図7に示すように、トランジスタオン電流の変化量は連続値ではなく所定の離散的な値で表されているため、データベース100に記載されたオン電流変化量と、回路パス遅延値の差分11の補正に必要なオン電流変化量とが一致しない場合において第1の実施形態で説明した補完計算を行った場合、それによる誤差(補完誤差)も生じる。
【0044】
そこで、本実施形態の集積回路装置製造システム10においては、上記補完誤差を小さくして、製造が完了した品種の回路遅延値を設計値にさらに近づけることを目的として、製造条件変更装置7で決定された新製造条件12と、当該新製造条件12が適用されて製造された半導体集積回路装置の回路パスのタイミング歩留まり(回路遅延)の検査結果との相関をデータベース8に蓄積する。ここで、データベース8は、トランジスタ特性−製造条件データベース補正装置9に接続されており、当該補正装置9は、データベース8に蓄積されている情報に基づいて、回路タイミング歩留まりが最大となるように、言い換えると、回路パス遅延値が設計値に最も近づくように、データベース100におけるトランジスタ特性と製造条件との相関関係を随時更新する機能を有する。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態によると、回路パス遅延値をより一層設計遅延値に近づけることが可能となり、当該品種の回路スピード等の規格に対する歩留まりをより一層向上させてやることができる。
【0046】
尚、本実施形態において、データベース8は品種毎に用意され、当該各品種の製造毎に対応するデータベース8にデータが蓄積されることにより、回路パス遅延値とその設計値との差分を小さくするための製造条件の補正精度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態において、トランジスタ特性−製造条件データベース補正装置9によって、第1の実施形態のデータベース100におけるトランジスタ特性と製造条件との相関関係を補正したが、これに代えて、配線遅延−製造条件データベース補正装置を設け、当該補正装置によって、第2の実施形態のデータベース102における配線遅延値と層間絶縁膜の厚さdとの相関関係を補正してもよい。
【0048】
また、第1〜第3の実施形態において、ウェハ上に転写されるゲート電極加工寸法モニター用の論理セルの回路パターン及びデータベース1を品種に応じて入れ替えることにより、同一ラインで複数の品種の集積回路装置を製造する場合にも同一システムが適用可能となる。
【0049】
以下、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システム(以下、単に本発明の集積回路装置製造システムと称する)の詳細且つ具体的な構成例について、図14を参照しながら説明する。図14に示すように、本発明の集積回路装置製造システムは、例えば、コンピュータ・ネットワーク150にそれぞれ接続されたMES(Manifacturing Execution Sysyem:製造実行システム)200と回路遅延算出装置(回路遅延の計算を実行し且つ製造条件を決定するシステム)300とからなる。
【0050】
MESシステム200は、例えば、集積回路装置の製造においてある工程を実施するための製造用機器201と、当該工程よりも後の工程を実施するための複数の製造用機器202と、製造用機器201で処理された集積回路装置の仕上がりを検査する検査装置203と、検査装置203を制御するコンピュータ204と、検査装置203から得られた製造仕上がり検査データを格納するデータベース206(図1〜4のデータベース2に対応)と、本発明のフィードフォワード処理を実行するために必要な製造用機器202の製造条件が格納されたデータベース207と、これらのMESシステム200の各構成要素を制御するコンピュータ205とがコンピュータ・ネットワーク150によって互いに接続されることによって構成されている。図14に示すシステムにおいては、通常、データベース206の格納データと設計値とを比較し、当該比較結果及びデータベース207の格納データに基づいて、集積回路装置の電気特性等が設計値に近くなるように後の工程の製造条件を決定し、当該決定された製造条件により製造用機器202の制御(フィードフォワード制御)が実行される。尚、第3の実施形態の態様に対応する場合には、製造が完了した集積回路装置の回路遅延等を測定した結果と当該集積回路装置の製造条件との組み合わせの情報(相関データ)を格納するデータベース208(図4のデータベース8に対応)がコンピュータ・ネットワーク150に接続される。
【0051】
一方、回路遅延算出装置300は、回路遅延を算出する大型コンピュータ301と、回路設計部門で作成された集積回路装置の物理設計データや回路ネットリスト等を含む設計情報を格納したデータベース302(図1〜4のデータベース1に対応)と、集積回路装置の電気特性と製造条件との関係が格納されたデータベース303(図1及び4のデータベース100又は図3のデータベース102に対応)と、回路パス遅延値の計算結果を格納するデータベース304と、大型コンピュータ301において実行される回路シミュレーションプログラム305及びプロセス・デバイスシミュレーションプログラム306と、回路遅延算出装置300を操作する端末装置307とがコンピュータ・ネットワーク150によって互いに接続されることによって構成されている。すなわち、図1〜4のモデル回路パス遅延算出装置4の機能は、大型コンピュータ301と回路シミュレーションプログラム305とによって実現される。また、図2のプロセス・デバイスシミュレーション装置101は、大型コンピュータ301とプロセス・デバイスシミュレーションプログラム306とによって実現される。
【0052】
図14に示すシステムが第1の実施形態に係る集積回路装置製造システムとして機能する場合、大型コンピュータ301は、データベース206及びデータベース302のそれぞれの格納データを参照することによって、集積回路装置製造のある工程の仕上がり検査データとその設計値とを比較して当該設計値からのずれ量を算出する。また、大型コンピュータ301は、データベース302の設計情報から合成したあるモデル回路パスのネットリストに上記設計値からのずれ量を反映して新たなネットリストを合成し、回路シミュレーションプログラム305を起動して、上記設計値からのずれ量を反映したモデル回路の回路遅延を計算してデータベース304に格納する。その後、大型コンピュータ301は、データベース304に格納された算出遅延値と、データベース302に格納された設計遅延値とを比較し、算出遅延値が設計遅延値に近くなるような製造条件をデータベース303を参照して決定する。すなわち、図1の製造条件変更装置7の機能は大型コンピュータ301によって実現される(図2〜4の製造条件変更装置7の機能についても同じ)。決定された製造条件はネットワーク150を通じてコンピュータ205へ送信され、コンピュータ205が製造用機器202を上記製造条件により制御する。尚、製造用機器202の製造条件を決定する際に、データベース303を参照することに代えて、データベース206のデータを反映したプロセス・デバイスシミュレーションプログラム306を実行することによって、算出遅延値が設計遅延値に近くなるような製造条件を決定することも可能である。
【0053】
また、図14に示すシステムが第2の実施形態に係る集積回路装置製造システムとして機能する場合、データベース303に集積回路装置の配線遅延と配線工程の製造条件との関係が格納されている点を除いて、大型コンピュータ301は、第1の実施形態と同様に、算出遅延値が設計遅延値に近くなるような配線工程の製造条件を決定する。決定された製造条件はネットワーク150を通してコンピュータ205へ送信され、コンピュータ205が配線工程に用いられる製造用機器202を上記製造条件により制御する。
【0054】
さらに、図14に示すシステムが第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムとして機能する場合、データベース208に格納された、その製造条件を用いて完成した集積回路装置の回路遅延に基づいて算出された回路遅延歩留まりと、第1の実施形態において決定した新たな製造条件とが大型コンピュータ301により比較され、当該比較結果に基づいて、回路パス遅延値が設計値に最も近づくようにデータベース303の情報が随時更新される。すなわち、図4のトランジスタ特性−製造条件データベース補正装置9の機能は大型コンピュータ301によって実現される。
【0055】
以上に説明した、図14に示すシステムにより、回路遅延値を設計遅延値に確実に近づけることができ、それによって歩留まりを確実に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上に説明したように、本発明は、回路遅延値が設計回路遅延値に近い集積回路装置を製造するための製造プロセスの制御に関し、特に、フィードフォワード方式の集積回路装置製造システムに本発明を適用した場合には、回路遅延値を確実に設計遅延値に近づけることによって歩留まりを確実に向上させてやることができ、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムの構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいて用いられる、品種設計情報より得られるクリティカルパス内の論理セルの使用状況を示すデータベースの内容を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいて用いられるゲート電極仕上がり寸法モニター用論理セルのウェハへの配置例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第1及び第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいて用いられる、トランジスタ特性と製造条件との相関関係を蓄積したデータベースの内容を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいてセル使用頻度で重み付けされたモデル回路パスを用いて算出された、セル一段あたりの設計遅延値及び回路パス最終段までの累積設計遅延値を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにより検査工程S1で測定されたゲート電極寸法と設計寸法との差分を示す図である。
【図10】図10は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいてゲート電極の仕上がり寸法の測定データが蓄積されたデータベースを用いた回路シミュレーションによって得られた回路パス遅延値を、設計パス遅延値と比較して示す図である。
【図11】図11は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおいて製造条件を補正して得られた回路パス遅延値を、当該補正前の回路パス遅延値と比較して示す図である。
【図12】図12は、配線層の配線膜間の層間絶縁膜に生じる容量を模式的に示す図である。
【図13】図13は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムにおける製造条件の補正により回路タイミング歩留まりが当該補正前と比べて改善されている様子を示す図である。
【図14】図14は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る集積回路装置製造システムの実現手段を具体的に示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 クリティカルパス内の論理セル使用頻度のデータベース
2 高使用頻度論理セルのゲート電極寸法検査結果のデータベース
4 モデル回路パス遅延算出装置
5 ゲート電極加工仕上がり寸法を反映したモデル回路パスの遅延データ
6 モデル回路パスの設計遅延データ
7 製造条件変更装置
8 回路歩留まりと新製造条件との相関関係のデータベース
9 トランジスタ特性−製造条件データベース補正装置
10 集積回路装置製造システム
11 回路パス遅延値と設計パス遅延値との差分(回路パスセル駆動力差分)
12 新製造条件
51 M層目配線膜
52 M+1層目配線膜
53 M+2層目配線膜
54 層間絶縁膜
100 トランジスタ特性と製造条件との相関関係のデータベース
101 プロセス・デバイスシミュレーション装置
102 配線遅延と製造条件との相関関係のデータベース
150 コンピュータ・ネットワーク
200 MESシステム
201 集積回路装置製造用機器
202 集積回路装置製造用機器
203 集積回路装置の仕上がりを検査する検査装置
204 検査装置制御用コンピュータ
205 MESシステム制御用コンピュータ
206 製造仕上がり検査データを格納するデータベース
207 製造用機器の製造条件を格納するデータベース
208 集積回路装置の遅延測定結果と製造条件との関係を格納するデータベース
300 回路遅延算出装置
301 大型コンピュータ
302 回路設計情報を格納するデータベース
303 集積回路装置の電気特性と製造条件との関係を格納するデータベース
304 モデル回路パス遅延値の算出結果を格納するデータベース
305 回路シミュレーションプログラム
306 プロセス・デバイスシミュレーションプログラム
307 回路遅延算出装置操作用端末装置
S1 ゲート電極加工寸法検査工程
S2 回路タイミング歩留まり検査工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路装置の製造途中の加工状況に対するモニターを行い、且つ当該集積回路装置の特性が当該特性の設計値に近くなるように当該集積回路装置における前記モニター後の製造工程の製造条件を変更するフィードフォワード方式の集積回路装置製造システムであって、
前記モニターにより得られた情報を用いて前記集積回路装置の回路特性を予測し、予測された回路特性と当該回路特性の設計値との差に基づいて、前記モニター後の製造工程の製造条件を変更することを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記集積回路装置中の所定のパスに含まれる論理セルの種類及び当該種類毎の使用頻度を含む第1の入力情報と、前記論理セルを構成するトランジスタについて前記モニターにより得られたゲート電極仕上がり寸法を含む第2の入力情報とを用いることを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記第1の入力情報に基づいて前記所定のパスをモデル化したモデル回路パスを生成し、生成されたモデル回路パスと、前記第2の入力情報に含まれる前記トランジスタの前記ゲート電極仕上がり寸法とを用いて、前記集積回路装置の回路パス遅延値を予測することを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項4】
請求項3に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記回路パス遅延値の予測値と当該回路パス遅延値の設計値との差分を算出し、算出された差分と、前記トランジスタの特性と前記モニター後の製造工程の製造条件との相関関係を含む第3の入力情報とに基づいて、前記回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる前記トランジスタの駆動力が得られるように、前記モニター後の製造工程の製造条件を変更することを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項5】
請求項4に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記モニター後の製造工程の製造条件は、LDD形成工程におけるイオン注入ドーズ量であることを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項6】
請求項3に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記回路パス遅延値の予測値と当該回路パス遅延値の設計値との差分を算出し、算出された差分と、前記集積回路装置における配線遅延値と層間絶縁膜の厚さとの相関関係を含む第4の入力情報とに基づいて、前記回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる配線遅延値が得られるように、層間絶縁膜堆積工程の堆積膜厚を変更することを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項7】
請求項3に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
前記回路パス遅延値の予測値と当該回路パス遅延値の設計値との差分を算出し、算出された差分と、プロセス・デバイスシミュレーションの実施結果とに基づいて、前記回路パス遅延値をその設計値に近づけることができる前記トランジスタの駆動力が得られるように、前記モニター後の製造工程の製造条件を変更することを特徴とする集積回路装置製造システム。
【請求項8】
請求項4に記載の集積回路装置製造システムにおいて、
製造が完了した前記集積回路装置の回路遅延を検査し、検査により得られた前記集積回路装置の回路遅延分布の中心値がその設計値と異なっている場合には、前記第3の入力情報における前記トランジスタの特性と前記モニター後の製造工程の製造条件との相関関係を補正することを特徴とする集積回路装置製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−294756(P2007−294756A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122461(P2006−122461)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】