説明

電圧制御型可変周波数発振回路および信号処理回路

【課題】可変容量素子の容量可変域に応じた広い周波数可変域を確保することができる電圧制御型可変周波数発振回路を提供する。
【解決手段】コイルL1,L2および可変容量素子111,112を有する共振回路101と、負性抵抗回路102とを含む発振回路部103を備える電圧制御型可変周波数発振回路である。発振回路部103と電源電位VDDとの間に第1の抵抗301を設ける。また、発振回路部と接地電位端との間には第2の抵抗302を接続するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電圧制御型可変周波数発振回路およびこの電圧制御型可変周波数発振回路からの発振周波数信号を用いて所定の信号処理を行なう信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧制御型可変周波数発振回路(以下、VCO(Voltage Contorlled Oscilator)という)として、共振回路にコイルと可変容量素子とを用いた、いわゆるLC共振型のVCOが広く用いられている。
【0003】
従来のLC共振型のVCOの例を図14に示す。この図14の例のVCOは、共振回路101と、負性抵抗回路102とにより、発振回路部103が構成されている。この発振回路部103は、直接、電源電位VDDが供給される電源ライン104に接続されると共に、負性抵抗回路102が電流源105によりバイアスされる構成となっている。
【0004】
共振回路101は、コイルL1,L2および可変容量回路110からなる。可変容量回路110は、この例では、可変容量素子の例としての2個のバラクタ111,112からなる。
【0005】
バラクタ111,112として用いられるバラクタの構成は、種々存在し、少なくとも2種類ある。図15(A)に示すものは、そのうちの1つのバラクタの構成例である。
【0006】
この例の場合のバラクタ111,112のそれぞれは、図15(A)に示すように、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)106のソースおよびドレインが互いに接続される。そして、図15(A)に示すように、MOSFET106のソースおよびドレインの接続点から一方の端子106aが導出され、MOSFET106のゲートから他方の端子106bが導出される。
【0007】
バラクタの他の構成例としては、MOS構造を用い、ゲート端子とウェル端子の2端子を用いるものがある。
【0008】
LC共振回路には、いずれのバラクタも使用可能であるが、以下の説明においては、便宜上、図15(A)に示した構成例のものを例として説明する。
【0009】
一方の端子106aと他方の端子106bとの間に、制御電圧VGが印加されると、バラクタは、図15(B)に示すように、その印加電圧VGに応じた容量値Cを呈する。したがって、印加電圧VGを変化させることで、容量値Cを変化させることができ、この容量Cの変化により、VCOは、その発振出力周波数を変化させる。
【0010】
図14の例の可変容量回路110においては、バラクタ111および112の一方の端子(端子106a側)が互いに接続され、その接続点P0に、制御電圧VCが印加される。また、バラクタ111の他方の端子(端子106b側)は、コイルL1を介して電源ライン104に接続され、バラクタ112の他方の端子(端子106b側)は、コイルL2を介して電源ライン104に接続されている。
【0011】
負性抵抗回路102は、図14の例では、MOSFET121および122の差動構成回路からなる。すなわち、MOSFET121および122のソースが互いに接続され、その接続点が電流源105を通じて接地されている。また、MOSFET121のドレインと、MOSFET122のゲートとが接続され、その接続点は、コイルL1と、バラクタ111との接続点P1に接続される。さらに、MOSFET122のドレインと、MOSFET121のゲートとが接続され、その接続点は、コイルL2と、バラクタ112との接続点P2に接続される。
【0012】
この図14の例のVCOは、発振回路部103が電源電位VDDが供給される電源ライン104に直接接続される構成となっている。このため、可変容量回路110の両端(接続点P1およびP2)の直流電位が、ほぼ電源電位VDDとなって、バラクタ111,112による容量可変域を有効に用いることができない。その結果、VCOの周波数可変域を広くすることができないという問題がある。
【0013】
図15(A)において、端子106a側の電位をVaとし、端子106b側の電位をVbとし、電位Vbを基準にして、電位Vaを変えて、印加電圧VGを変化させる場合を考える。この場合、電位Vaの値を、Vb−α<Va<Vb+αの範囲で変更すると、印加電圧VGは、図15(B)に示すように、−α<VG<+αとなり、容量Cは、最適な可変範囲W0となる。
【0014】
しかしながら、図14の構成のVCOの場合、バラクタ111および112の他方の端子側(端子106b側)の電位は、電源電位VDDとなっている。そのため、バラクタ111および112の一方の端子側(106a側)の電位を、制御電圧VCで可変しようとしても、駆動回路の制約から制御電圧VCは、容易に電源電圧VDD以上にはできない。このときのバラクタの容量Cの制御電圧VCに対する変化特性は、図16の実線201で示すようなものとなる。この結果、可変容量回路110の容量Cの可変範囲は、図16に示すように、最適な可変範囲W0(図15(B)参照)に比べて、非常に狭い可変範囲W1となってしまう問題がある。
【0015】
この問題に対して、特許文献1(特開2004−147310号公報)には、可変容量回路110を図17に示すような構成とすることにより、可変容量回路110の容量Cの可変範囲を、より広くするものが提案されている。
【0016】
すなわち、この図17の構成においては、バラクタ111と接続点P1との間に直流カット用のコンデンサ113を接続すると共に、バラクタ112と接続点P2との間に直流カット用のコンデンサ114を接続する。そして、バラクタ111とコンデンサ113との接続点を抵抗器115を介して直流バイアス電位VBIASに接続し、また、バラクタ112とコンデンサ114との接続点を抵抗器116を介して直流バイアス電位VBIASに接続する。
【0017】
この図17の構成によれば、バラクタ111および112の他方の端子側(106b側)には、それぞれ抵抗器115および116を介してバイアス電圧が供給される。したがって、バラクタ111および112の他方の端子側(106b側)の電位は、電源電位VDDよりも低くなり、理想的には、VDD/2にすることができる。
【0018】
したがって、バラクタ111,112の接続点P0に供給される制御電圧VCを、電源電位VDDまで変化したときの、バラクタの容量Cの制御電圧VCに対する変化特性は、図16の実線202で示すようなものとなる。この結果、可変容量回路110の容量Cの可変範囲は、図16に示すように、広い可変範囲W2となり、VCOとして、図14の例よりも広い周波数可変域を得ることができる。
【0019】
上記の特許文献は、次の通りである。
【特許文献1】特開2004−147310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図17に示す可変容量回路110を用いた場合、バラクタ111,112のそれぞれに対して、コンデンサ113,114が直列に接続される構成となる。このため、この直列のコンデンサ113,114の容量分だけ、可変容量回路の容量可変域が実効的に小さくなってしまう。
【0021】
この結果、特許文献1に記載のものでは、VCOとして、可変容量素子の容量可変域に応じた広い周波数可変域を確保することができないという問題が、新たに生じる。
【0022】
この発明は、以上の問題点にかんがみ、可変容量素子の容量可変域に応じた広い周波数可変域を確保することができる電圧制御型可変周波数発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
コイルおよび可変容量素子を有する共振回路と、負性抵抗回路とを含む発振回路部と、
前記発振回路部と電源の一方端との間に設けられる第1の抵抗と、
を備える電圧制御型可変周波数発振回路を提供することを特徴とする。
【0024】
この発明の上記の構成によれば、発振回路部と電源の一方端との間に第1の抵抗が設けられているので、共振回路の可変容量素子には、この第1の抵抗を介して、電源電位が印加され、共振回路の可変容量素子の一端には、電源電位よりも低い電圧が印加される。
【0025】
したがって、可変容量素子の他端に供給される制御電圧によって可変される可変容量素子の容量は、図14の従来例よりも広い可変範囲となる。
【0026】
そして、この発明においては、可変容量素子に対しては、従来のような直列の容量素子は設けないので、可変容量素子による容量可変域は、そのまま発振周波数の可変域に対応するものとなり、図17を用いて説明した従来例よりも広い周波数可変域を確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、可変容量回路の容量可変範囲を、可変容量素子の容量可変域に直に応じたものとするができ、広い周波数可変域を確保することができる電圧制御型可変周波数発振回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明による電圧制御型可変周波数発振回路(VCO)の幾つかの実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の図において、説明の簡単のため、図14を用いて示したVCOと同一構成部分には、同一番号および記号を付して、その説明は省略する。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、この発明によるVCOの第1の実施形態を示す接続回路図である。
【0030】
この実施形態のVCOにおいては、発振回路部103と電源電位VDDが得られる電源ラインとの間には、第1の抵抗器301を設ける。すなわち、図1の例においては、コイルL1とコイルL2との接続点P3(電位VB)と、電源ライン104(電源の一方端または他方端)との間に、第1の抵抗器301を接続する。
【0031】
また、発振回路部103と、接地電位端(電源の他方端または一方端)との間には、この実施形態では、第2の抵抗器302を設ける。すなわち、図1の例においては、MOSFET121と122のソースの接続点と、接地端との間に、第2の抵抗器302が接続される。
【0032】
この図1の第1の実施形態の構成によれば、バラクタ111および112の他方の端子側(端子106b側)である接続点P1およびP2には、第1の抵抗器301を介してバイアス電圧が供給される。したがって、バラクタ111および112の他方の端子側(端子106b側)の電位(接続点P3の電位VBにほぼ等しい)は、電源電位VDDよりも低くなる。
【0033】
特に、この第1の実施形態においては、接続点P1およびP2に供給される可変容量回路110のバイアス電位は、第1の抵抗器301の抵抗値と、第2の抵抗器302の抵抗値とに決まる。そして、この第1および第2の抵抗器301および302の抵抗値を適切に定めることにより、可変容量回路110のバイアス電圧を、VDD/2、あるいはその近傍の値にすることができる。
【0034】
したがって、バラクタ111,112の接続点P0に供給される制御電圧VCを、電源電位VDDまで変化したときの、バラクタの容量Cの制御電圧VCに対する変化特性は、図2の実線203で示すように、最大範囲とすることができる。可変容量回路110の容量Cの可変範囲は、バラクタ111,112の可変容量範囲に即したものであるので、これも広くなる。この結果、この実施形態のVCOの周波数可変域を、最適な可変範囲W0に近い可変範囲W3とすることができる。
【0035】
また、図14の従来例の場合、電流源302が、MOSトランジスタで構成されているので、低周波のフリッカー雑音が非常に大きく、これがVCOの発振周波数の位相雑音特性を著しく劣化させる。しかし、この実施形態では、電流源の代わりに、第2の抵抗器302を接続するようにしたので、位相雑音特性が改善されるものである。
【0036】
[第2の実施形態]
LC共振型のVCOにおいては、上述したように、可変容量回路110の容量を変化させることで、VCOの発振周波数を変化させる。しかし、この発振周波数の変化に応じて、共振回路101の共振インピーダンスが変動してしまう。このため、特に低周波の領域で、VCOからの発振出力信号の発振振幅が低下してしまい、位相雑音特性が劣化してしまうことがある。
【0037】
第2の実施形態のVCOは、この位相雑音特性の劣化の問題を解決できるように構成したものである。この第2の実施形態のVCOの構成例を図3に示す。
【0038】
すなわち、この第2の実施形態においては、第1の抵抗器301の代わりに可変抵抗回路400を設けると共に、第2の抵抗器302の代わりに可変抵抗回路500を設ける。そして、制御信号発生部700から、可変容量回路110の制御電圧VCに応じた制御信号VR1およびVR2が、可変抵抗回路400および500に、抵抗値制御用としてそれぞれ供給される。その他は、前述の第1の実施形態と同様に構成する。
【0039】
この第2の実施形態においては、制御信号発生部700は、制御電圧VCによりVCOの発振周波数が変化したときに、その発振周波数の変化に応じて、可変抵抗回路400および500の抵抗値を制御する。これにより、VCOの発振周波数に応じて、可変容量回路110へのバイアス電流値が制御され、VCOからの発振出力信号の発振振幅が低下するのが防止される。
【0040】
したがって、この第2の実施形態によれば、VCOの発振周波数の変化に応じた位相雑音特性の劣化を防止することができる。
【0041】
可変抵抗回路400および500は、例えばMOSFETを用いた可変抵抗素子により構成することができるし、あるいは、抵抗素子とスイッチ回路とを組み合わせたものにより構成することもできる。また、可変抵抗回路400および500は、例えばMOSFETを用いた可変抵抗素子と、抵抗素子およびスイッチ回路を組み合わせたものとの両者を併用するように構成することもできる。
【0042】
図4は、可変抵抗回路400および500を、抵抗素子とスイッチ回路とを組み合わせた構成した場合のVCOの実施形態の一例である。
【0043】
すなわち、可変抵抗回路400は、スイッチ回路としての複数個のMOSFET411,412,・・・,41n(nは2以上の整数。以下同じ)と、それぞれのMOSFET411,412,・・・,41nに直列に接続される抵抗器421,422,・・・,42nとを備える。MOSFET411,412,・・・,41nと抵抗器421,422,・・・,42nとの直列接続は、接続点P3と、電源ライン104との間に並列に接続される。
【0044】
そして、制御信号発生部700からは、MOSFET411,412,・・・,41nのゲートのそれぞれに供給されるオン・オフスイッチング制御信号が、抵抗値制御用の制御信号VR1として、可変抵抗回路400に供給されるように構成されている。
【0045】
同様に、可変抵抗回路500は、スイッチ回路としての複数個のMOSFET511,512,・・・,51nと、それぞれのMOSFET511,512,・・・,51nに直列に接続される抵抗器521,522,・・・,52nとを備える。MOSFET511,512,・・・,51nと抵抗器521,522,・・・,52nとの直列接続は、負性抵抗回路102のMOSFET121および122のソースの接続点と、接地端との間に並列に接続される。
【0046】
そして、制御信号発生部700からは、MOSFET511,512,・・・,51nのゲートのそれぞれに供給されるオン・オフスイッチング制御信号が、抵抗値制御用の制御信号VR2として、可変抵抗回路500に供給されるように構成されている。
【0047】
可変抵抗回路400では、MOSFET411,412,・・・,41nのうち、オンとされたものに直列に接続されている抵抗器が接続点P3と、電源ラインとの間に並列に接続される。したがって、MOSFET411,412,・・・,41nのオン・オフ制御により、並列に接続される抵抗数が可変され、可変抵抗回路400全体の抵抗値が可変される。
【0048】
同様に、可変抵抗回路500では、MOSFET511,512,・・・,51nのうち、オンとされたものに直列に接続されている抵抗器が負性抵抗回路と接地端との間に並列に接続される。したがって、MOSFET511,512,・・・,51nのオン・オフ制御により、並列に接続される抵抗数が可変され、可変抵抗回路500全体の抵抗値が可変される。
【0049】
[第3の実施形態]
VCOの周波数可変域を、より広くする場合、図5の特性曲線701,702,703のように、VCOの発振中心周波数をシフトするようにすることが行なわれている。この場合も、シフトされた可変周波数範囲においても、VCOからの発振出力信号の発振振幅が低下してしまわないようにする必要がある。
【0050】
この場合にも、可変抵抗回路400および500の抵抗値を制御することにより、VCOの発振周波数に応じて、可変容量回路110へのバイアス電流値を制御し、VCOからの発振出力信号の発振振幅が低下するのを防止することができる。
【0051】
第3の実施形態は、以上の点を考慮したもので、図6に、この第3の実施形態のVCOの構成例を示す。
【0052】
この図6の例においては、共振回路101には、可変容量回路110と、コイルL1,L2との間において、可変容量回路110に並列に、発振中心周波数のシフト用の容量切替回路600を設ける。
【0053】
この容量切替回路600は、スイッチ回路を構成するMOSFETのソースと接続点P1との間、また、当該MOSFETのドレインと接続点P2との間、のそれぞれにコンデンサを接続した直列回路を、複数個、並列に接続したものからなる。
【0054】
すなわち、MOSFET611,612,・・・,61nのそれぞれのソースと接続点P1との間に、コンデンサ621,622,・・・,62nをそれぞれ接続すると共に、MOSFET611,612,・・・,61nのそれぞれのドレインと接続点P2との間に、コンデンサ631,632,・・・,63nをそれぞれ接続する。
【0055】
そして、制御信号発生部700から、MOSFET611,612,・・・,61nのそれぞれのゲートに、オン・オフ切り替え用のスイッチング制御信号SWが供給されるように構成されている。
【0056】
この構成においては、MOSFET611,612,・・・,61nがスイッチング制御信号SWによりオンとされると、その両側に接続されているコンデンサが接続点P1と接続点P2との間に直列に接続される。
【0057】
したがって、MOSFET611,612,・・・,61nのうち、スイッチング制御信号によりオンとされているもののみの両側に接続されるコンデンサの直列回路が、可変容量回路110に並列に接続される。つまり、MOSFET611,612,・・・,61nのスイッチング制御信号SWに応じて、接続点P1と接続点P2との間に並列に接続されるコンデンサの直列回路数が変更される。
【0058】
これにより、VCOの発振中心周波数は、MOSFET611,612,・・・,61nのスイッチング制御信号SWに応じてシフト制御がなされる。
【0059】
この第3の実施形態では、制御信号発生部700は、上述の第2の実施形態の動作に加えて、VCOの発振中心周波数のシフト制御に応じて可変抵抗回路400および500の抵抗値の可変制御を行なうように制御信号VR1およびVR2を生成する。
【0060】
以上の構成により、この第3の実施形態では、VCOの可変周波数範囲がシフトされたときにも、可変抵抗回路400および500の抵抗値が、そのシフトに応じて制御されるので、VCOからの発振出力信号の発振振幅は、低下しないようにされる。つまり、シフト可能な全ての可変周波数範囲において、VCOからの発振出力信号の発振振幅を、常にほぼ一定とするようにすることができる。
【0061】
なお、図6の例では、可変抵抗回路400および500は、図4の例を用いている。しかし、この第3の実施形態においても、例えばMOSFETを用いた可変抵抗素子により構成することができるし、あるいは、抵抗素子とスイッチ回路とを組み合わせたものにより構成することもできる。また、可変抵抗回路400および500は、例えばMOSFETを用いた可変抵抗素子と、抵抗素子およびスイッチ回路を組み合わせたものとの両者を併用するように構成することもできる。
【0062】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、この発明によるVCOの実施形態を、テレビ放送信号受信用装置のチューナ部(フロントエンド回路)のPLL回路の可変周波数発振回路として使用するようにした場合の例である。そして、この第4の実施形態では、フロントエンド回路を1チップIC化した場合の例である。
【0063】
IC化回路では、その内部構成回路が抵抗素子を有するものであるとき、IC毎に、抵抗素子のばらつきがあることを考慮する必要がある。そこで、例えば第3の実施形態のVCOを、フロントエンド回路IC内に設けた場合、可変抵抗回路400や500の抵抗421,422,・・・,42nや、抵抗521,522,・・・,52nのばらつきを、IC毎に調整することができることが好ましい。
【0064】
フロントエンド回路IC毎の、VCOやその他の抵抗素子を使用する回路部用のばらつき調整データは、例えばテスターを用いて、工場出荷前に取得しておくことができる。この第4の実施形態では、フロントエンド回路IC内に、調整データを記憶しておく不揮発性メモリを内蔵しておき、前記のテスターを用いて取得した調整データを、その不揮発性メモリに記憶して、抵抗によるばらつきの調整を行なえるようにしている。
【0065】
この第4の実施形態について、詳細に説明する。
【0066】
図7は、この第4の実施形態のVCOが適用されるテレビ放送受信機の要部の構成例を示すブロック図である。この実施形態のテレビ放送受信機は、IC化により簡略化した構成とされており、主要な構成部分として、フロントエンド回路IC1と、復調回路IC2とを備えると共に、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)を備えて構成されるシステムコントローラ4とを備える。また、復調回路IC2は、マイコンからなる信号処理プロセッサ61を備える。
【0067】
システムコントローラ4には、リモコン受信部8が接続されている。リモコン受信部8は、リモコン送信機9からのリモコン信号を受信して、システムコントローラ4に転送する。システムコントローラ4は、受け取ったリモコン信号を解析し、電源オン/オフ操作、選局チャンネル切替操作などのユーザ操作を判定し、その判定結果に応じて制御を行なう。
【0068】
テレビ放送信号受信アンテナ5で受信されたテレビ放送信号は、アンテナ端子ピンT11を通じてフロントエンド回路IC1に供給される。
【0069】
この実施形態では、フロントエンド回路IC1は、調整データにより調整が可能な内部構成部の例としてのフロントエンド回路部10と、事前取得調整データを記憶する不揮発性メモリ51と、インターフェース部52とを有する。
【0070】
フロントエンド回路部10は、この実施形態のVCOを備えるPLL回路を含むと共に、ばらつきの調整が必要なその他の複数個の調整部を備える。不揮発性メモリ51には、当該テレビ放送受信機の製造工場からの出荷前において、当該フロントエンド回路部10の調整部の調整項目について予め求められた調整データが、事前取得調整データとして記憶される。
【0071】
不揮発性メモリ51は、インターフェース部52に接続されている。インターフェース部52は、フロントエンド回路IC1の端子ピンT14を通じて、復調回路IC2の後述する信号処理プロセッサ61(マイコン)に接続されている。
【0072】
この場合において、事前取得調整データの取得に当たっては、先ず、テスターを用いて、各調整部の調整項目について、変化するパラメータ、この実施形態では、選局するチャンネルに応じた周波数、の予め定めた値において最適状態となるように調整データを調整する。そして、その最適状態となったときの調整データを、事前取得調整データとして、対応するパラメータ値(周波数値)と対応させて、信号処理プロセッサ61を介して、不揮発性メモリ51に記憶する。
【0073】
なお、信号処理プロセッサ61を介することなく、テスターがインターフェース部52を介して事前取得調整データを書き込むようにすることもできる。
【0074】
この実施形態では、事前取得調整データを記憶するパラメータ値としては、選局するチャンネルの全てに対応する周波数について、事前取得調整データを得る必要はなく、離散的なパラメータ値とされている。後述するように、離散的なパラメータ値の間のパラメータ値に対応する調整データは、不揮発性メモリに記憶されている事前取得調整データから、補間処理により得ることが可能である。
【0075】
例えば、VCOの前記の抵抗のばらつきが、当該VCOの発振周波数の変化に応じて変化する場合、その全ての受信チャンネル周波数などの多数個のデータを保持する必要はなく、飛び飛びの受信チャンネル周波数のときの調整データを保持するようにする。あるいは、VCOの前記の抵抗のばらつきが、当該VCOの発振周波数によらない場合には、その全ての受信チャンネル周波数などの多数個のデータを保持する必要はなく、あるひとつの調整データを保持するようにする。
【0076】
なお、不揮発性メモリ51に記憶される事前取得データは、エラー訂正エンコード処理がなされるている。
【0077】
不揮発性メモリ51に記憶される事前取得調整データは、周波数などのパラメータについて変化しない一部のものは、エラー訂正デコード処理をすれば、そのまま実調整データとして、フロントエンド回路部10の調整部に供給されるものもある。
【0078】
しかし、上述したように、チャンネル周波数をパラメータとする主要な調整データは、全てのパラメータ値について記憶しようとすると、記憶数が多数となってしまうので、上述したように、離散的なパラメータ値についてのみの少ない数の事前取得調整データとされる。したがって、その場合には、それらの事前取得調整データは、フロントエンド回路部10の各調整部にそのまま供給される実調整データではなく、実調整データを、後述する復調回路ICの信号処理プロセッサ(マイコン)61が補間処理により生成する際の基本データとなるものである。
【0079】
不揮発性メモリ51に記憶されている事前取得調整データは、インターフェース部52を介した、復調回路IC2の信号処理プロセッサ61からの読み出し要求により読み出される。インターフェース部52は、読み出し要求に応じて不揮発性メモリ51から読み出された事前取得調整データを、信号処理プロセッサ61に転送するようにする機能を備える。
【0080】
後述するように、信号処理プロセッサ61は、不揮発性メモリ51から読み出した事前取得調整データから、実使用調整データを生成して、フロントエンド回路IC1に送ってくる。インターフェース部52は、この信号処理プロセッサ61からの実使用調整データを受け取って、内蔵するレジスタに保持し、フロントエンド回路部10の各調整部に供給する機能を備える。
【0081】
フロントエンド回路部10では、受信したテレビ放送信号を中間周波信号に変換する。そして、フロントエンド回路部10は、中間周波信号を、端子ピンT12を通じて復調回路IC2に送出する。
【0082】
この実施形態では、復調回路IC2は、中間周波信号から映像出力信号を生成する復調回路部60と、記述の信号処理プロセッサ(マイコン)61とを有する。
【0083】
復調回路部60には、端子ピンT21を通じてフロントエンド回路IC1からの中間周波信号が供給される。復調回路部60は、入力された中間周波信号を復調して、映像出力信号を生成し、その映像出力信号を端子ピンT22を通じて映像出力アンプに供給するようにする。
【0084】
信号処理プロセッサ61は、端子ピンT23を通じて、フロントエンド回路IC1のインターフェース部52に接続されていると共に、端子ピンT24を通じてシステムコントローラ4にも接続されている。
【0085】
信号処理プロセッサ61は、不揮発性メモリ51に対する書き込み/読み出しアクセスを行なう機能と、不揮発性メモリ51から取得した事前取得調整データをエラー訂正デコードし、実使用調整データを生成する機能を備える。実使用調整データを生成する機能には、事前取得調整データから実使用調整データを補間により生成する機能が含まれる。
【0086】
[フロントエンド回路IC1の具体回路例]
図8に、この実施形態におけるフロントエンド回路IC1の、特に、フロントエンド回路部10の具体回路例について説明する。
【0087】
テレビ放送に使用される周波数(チャンネル)は国によって様々であり、カラー方式にも、NTSC、PAL、SECAMなどがある。さらに、アナログ放送もあれば、デジタル放送もある。
【0088】
そこで、テレビ放送の受信信号系を、テレビ放送を受信して中間周波信号を出力するフロントエンド回路と、そのフロントエンド回路の出力を処理してカラー映像信号および音声信号を出力するベースバンド処理回路とに分割することが考えられる。つまり、そのようにすることにより、テレビ放送の放送方式の違いに対処するものである。
【0089】
図2は、各国のテレビ放送を、その放送形式にかかわらず受信できるように構成したフロントエンド回路の一例である。この例においては、それぞれの国のテレビ放送で使用されている周波数を、
(A)46〜147MHz(VHF−Lバンド)
(B)147〜401MHz(VHF−Hバンド)
(C)401〜887MHz(UHFバンド)
の3バンドに分割し、それぞれの受信バンドにおいて、周波数を目的とするチャンネルに対応して変更できるようにしている。
【0090】
すなわち、図8において、鎖線で囲った部分1が、フロントエンド回路を示し、これは前述したように、1チップICにIC化されている。
【0091】
テレビ放送の放送波信号がアンテナにより受信され、その受信信号が、端子ピンT11からスイッチ回路11を通じてアンテナ同調回路12A〜12Cに選択的に供給される。この場合、アンテナ同調回路12A〜12Cは、上記(A)〜(C)項の受信バンドにそれぞれ対応するものである。そして、アンテナ同調回路12A〜12Cのそれぞれは、同調用コンデンサの容量をデジタルデータにより変更して同調周波数を変更し、この結果、目的とする周波数(チャンネル)の受信信号に同調するように構成されている。
【0092】
そして、これら同調回路12A〜12Cからの受信信号が、高周波増幅回路13A〜13Cを通じ、さらに、段間同調回路14A〜14Cを通じてスイッチ回路15に供給される。このスイッチ回路15は、スイッチ回路11と連動して切り換えられるものであり、したがって、スイッチ回路15からは目的とする受信バンドの受信信号SRXが取り出される。そして、この取り出された受信信号SRXがミキサ回路21I、21Qに供給される。
【0093】
なお、段間同調回路14A〜14Cも同調回路12A〜12Cと同様に構成されているものであるが、段間同調回路14Aは復同調回路とされている。また、後述するように、同調回路12A〜12Cおよび14A〜14Cの同調用コンデンサはIC10に内蔵され、同調用コイルはIC10に外付けとされている。
【0094】
VCO31は、構成として、第3の実施形態のVCOが適用されたものとされている。このVCO31において、所定の周波数の発振信号が形成される。このVCO31は、局部発振信号を形成するためのものであり、PLL回路30の一部を構成している。すなわち、VCO31の発振信号が可変分周回路32に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の信号に分周され、この分周信号が位相比較回路33に供給される。さらに、外部から端子ピンT16を通じて信号形成回路34にクロック(周波数は1〜2MHz程度)が供給されて所定の周波数f34の信号に分周され、この分周信号が位相比較回路33に基準信号として供給される。
【0095】
そして、位相比較回路33の比較出力がループフィルタ35に供給されて可変分周回路32の出力信号と、形成回路34の出力信号との位相差に対応してレベルの変化する直流電圧(制御電圧VC)が取り出され、この直流電圧(制御電圧VC)がVCO31に発振周波数f31の制御電圧として供給される。なお、フィルタ35には、端子ピンT17を通じて平滑用のコンデンサC11が外付けされる。
【0096】
したがって、VCO31の発振周波数f31は、
f31=N・f34 ・・・ (式2)
となるので、システムコントローラ4により、信号処理プロセッサ61を介して、分周比Nを制御すれば、VCO31の発振周波数f31を変更することができる。例えば、周波数f31は、受信バンドおよび受信周波数(受信チャンネル)に対応して1.8〜3.6GHzとされる。
【0097】
そして、このVCO31の発振信号が可変分周回路36に供給されて1/M(例えば、M=2、4、8、16、32)の周波数に分周される。この可変分周回路36の分周比Mも、システムコントローラ4により、信号処理プロセッサ61を介して制御される。
【0098】
そして、この可変分周回路36からの分周信号が分周回路37に供給されて、1/2の周波数で、かつ、位相が互いに直交する分周信号SLOI、SLOQに分周され、これら信号SLOI、SLOQがミキサ回路21I、21Qに局部発振信号として供給される。
【0099】
ここで、
fLO:局部発振信号SLOI、SLOQの周波数
とすれば、
fLO=f31/(2M)
=N・f34/(2M)
=f34・N/(2M) ・・・ (式3)
となる。したがって、分周比M、Nを変更することにより、局部発振周波数fLOを、所定の周波数ステップで広い範囲にわたって変更することができる。
【0100】
また、
SRX:受信を希望する受信信号
SUD:イメージ妨害信号
とし、簡単のため、
SRX=ERX・sinωRXt
ERX:受信信号SRXの振幅
ωRX=2πfRX
fRX:受信信号SRXの中心周波数
SUD=EUD・sinωUDt
EUD:イメージ妨害信号SUDの振幅
ωUD=2πfUD
fUD:イメージ妨害信号SUDの中心周波数
とする。
【0101】
さらに、局部発振信号SLOI、SLOQについて、
SLOI=ELO・sinωLOt
SLOQ=ELO・cosωLOt
ELO:信号SLOI、SLOQの振幅
ωLO=2πfLO
とする。
【0102】
ただし、このとき、
ωIF=2πfIF
fIF:中間周波数。例えば、4〜5.5MHz(放送方式により変更する)
とすれば、アッパーヘテロダイン方式の場合には、
fRX=fLO−fIF
fUD=fLO+fIF
である。
【0103】
したがって、ミキサ回路21I、21Qからは、次のような信号SIFI、SIFQが出力される。すなわち、
SIFI=(SRX+SUD)×SLOI
=ERX・sinωRXt×ELO・sinωLOt
+EUD・sinωUDt×ELO・sinωLOt
=α{cos(ωRX−ωLO)t−cos(ωRX+ωLO)t}
+β{cos(ωUD−ωLO)t−cos(ωUD+ωLO)t}
SIFQ=(SRX+SUD)×SLOQ
=ERX・sinωRXt×ELO・cosωLOt
+EUD・sinωUDt×ELO・cosωLOt
=α{sin(ωRX+ωLO)t+sin(ωRX−ωLO)t}
+β{sin(ωUD+ωLO)t+sin(ωUD−ωLO)t}
α=ERX・ELO/2
β=EUD・ELO/2
の信号SIFI、SIFQが取り出される。
【0104】
そして、これら信号SIFI、SIFQが、映像中間周波信号および音声中間周波信号の占有帯域幅(例えば、6〜8MHz)に比べて広帯域のローパスフィルタ22に供給される。この結果、ローパスフィルタ22において、和の角周波数(ωRX+ωLO)、(ωUD+ωLO)の信号成分(および局部発振信号SLOI、SLOQ)が除去され、ローパスフィルタ22からは、
SIFI=α・cos(ωRX−ωLO)t+β・cos(ωUD−ωLO)t
=α・cosωIFt+β・cosωIFt ・・・(式4)
SIFQ=α・sin(ωRX−ωLO)t+β・sin(ωUD−ωLO)t
=−α・sinωIFt+β・sinωIFt ・・・ (式5)
が取り出される。
【0105】
そして、これら信号SIFI、SIFQが、後述する振幅位相補正回路23を通じて複素バンドパスフィルタ(ポリフェイズ・バンドパスフィルタ)24に供給される。この複素バンドパスフィルタ24は、以下の(a)〜(d)の特性を有するものである。
【0106】
(a) バンドパスフィルタの周波数特性を有する。
(b) 移相特性も有し、信号SIFIを値φ(φは任意の値)だけ移相する。
(c) 同じく、信号SIFQを値(φ−90°)だけ移相する。
(d) 周波数軸上において、零周波数に対して対称の周波数f0と周波数−f0とを中心周波数とする2つのバンドパス特性を有するものであり、入力信号の相対位相によりこれを選択することができる。
したがって、複素バンドパスフィルタ24において、上記(b)、(c)項により信号SIFQが信号SIFIに対して90°遅相され、
SIFI=α・cosωIFt+β・cosωIFt ・・・ (式6)
SIFQ=−α・sin(ωIFt−90°)+β・sin(ωIFt−90°)
=α・cosωIFt−β・cocωIFt ・・・ (式7)
とされる。つまり、信号SIFIと、信号SIFQとの間では、信号成分α・cosωIFtは互いに同相であり、信号成分β・cocωIFtは互いに逆相である。
【0107】
そして、この信号SIFI、SIFQがレベル補正用のアンプ25に供給されて信号SIFIと信号SIFQとが加算され、レベル補正アンプ25からは以下のような信号SIFが取り出される。
【0108】
すなわち、
SIF=SIFI+SIFQ
=2α・cosωIFt
=ERX・ELO・cosωIFt ・・・ (式8)
が取り出される。この取り出された信号SIFは、信号SRXをアッパーヘテロダイン方式で受信したときの中間周波信号にほかならない。そして、この中間周波信号SIFには、イメージ妨害信号SUDは含まれていない。なお、振幅位相補正回路23は、この(式8)が十分に成立するように、すなわち、イメージ妨害信号SUDが最小となるように、信号SIFI、SIFQの振幅および位相を補正するものである。
【0109】
さらに、このとき、レベル補正用のアンプ25において、放送方式の違いにより信号SIFI、SIFQのレベルが異なっても、後述するAGC特性(特に、AGCの開始レベル)などが変化しないように、信号SIFのレベルが補正される。
【0110】
そして、この中間周波信号SIFが、AGC用の可変利得アンプ26を通じ、さらに、直流分のカット用およびエリアジング用のバンドパスフィルタ27を通じて端子ピンT12に出力される。
【0111】
したがって、分周比M、Nを変更すれば、(式3)にしたがって目的とする周波数(チャンネル)を選択することができ、端子ピンT12に出力された中間周波信号SIFを放送方式に対応して復調すれば、目的とする放送を視聴することができることになる。
【0112】
こうして、このフロントエンド回路10によれば、46〜887MHzという広い周波数範囲に対して、1チップICで対応できる。また、広い周波数範囲に対して妨害特性を低下させることなく、より少ない部品点数で、フロントエンド回路10を実現できる。さらに、デジタル放送およびアナログ放送の放送方式の違いや、世界的な地域による放送方式の違いに対して、1つのフロントエンド回路10で対応することができる。
【0113】
また、クロック信号の高調波などによる受信妨害が少なくなり、結果として受信感度が上昇する。さらに、PLL30は、コンデンサC11を除き、すべての回路部品のオンチップ化ができるので、外乱に強く、妨害発生の少ないPLLとすることができる。また、高周波増幅回路13A〜13Cには、同調回路14A〜14Cがそれぞれ接続されるだけなので、負荷が軽く、高周波増幅回路13A〜13Cを低歪みとすることができる。
【0114】
AGC電圧VAGCが、フロントエンド回路IC1の後段の、前述した復調回路IC2のAGC電圧発生回路63において形成され、このAGC電圧VAGCが端子ピンT13を通じてAGC用の可変利得アンプ26にその利得の制御信号として供給される。したがって、これにより通常のAGC(中間周波数信号でのAGC)が行われる。
【0115】
また、例えば、目的とする受信信号SRXのレベルが大きすぎたり、受信信号SRXに大きなレベルの妨害波信号が混在したりしている場合には、上記の通常のAGCでは対応しきれなくなる。そこで、ローパスフィルタ22から出力される信号SIFI、SIFQがレベル検出回路41に供給され、AGC用アンプ26においてAGCを行う以前の信号SIFI、SIFQのレベルが所定値を越えたか否かが検出される。そして、この検出信号と、端子ピンT15のAGC電圧VAGCとが加算回路42に供給され、その加算出力が遅延AGC電圧形成回路43に供給されて遅延AGC電圧VDAGCが形成される。この遅延AGC電圧VDAGCは、高周波増幅回路13A〜13Cに利得の制御信号として供給され、遅延AGCが行われる。
【0116】
したがって、希望する受信信号の強さと、受信を希望しない多くの信号の強さとのD/Uから最適なAGC動作ができるので、デジタル放送とアナログ放送、あるいはそれらが混在していても、希望する放送を良好に受信することができる。
【0117】
ローパスフィルタ22から出力される信号SIFI、SIFQがリニア検波回路44に供給され、検波および平滑されることにより信号SIFI、SIFQのレベルを示す直流電圧V44とされ、この電圧V44が端子ピンT15に出力される。
【0118】
この端子ピンT15に出力された直流電圧V44は、フロントエンド回路IC1のテスト時や調整時などに使用される。例えば、入力信号(受信信号)のレベルを広い周波数範囲にわたってチェックするときに使用することができる。すなわち、狭帯域の中間周波フィルタを通した出力と違い、アンテナ端子ピンT11からミキサ回路21I、21Qまでの信号ラインについて広帯域の減衰特性を直接チェックすることができる。
【0119】
また、アンテナ同調回路12A〜12Cおよび段間同調回路14A〜14Cを調整する場合には、テスト信号をアンテナ端子ピンT11に加え、端子ピンT13に供給されるAGC電圧VAGCを所定値に固定すれば、直流電圧V44の変化からトラッキング調整を行うことができる。さらに、フロントエンド回路IC1の各機能の調整や特性の測定がデジタルデータにより行うことができ、自動調整および自動測定ができる。
【0120】
〔定電圧回路〕
この実施形態のフロントエンド回路IC1には、定電圧回路53が設けられ、端子ピンT18から電源電圧+VCCが供給される。この定電圧回路53は、PN接合のバンドギャップを利用して電源電圧+VCCから所定の値の定電圧を形成するものであり、その形成された定電圧はIC10のそれぞれの回路に供給される。なお、定電圧回路53の出力電圧は微調整可能とされ、不揮発性メモリ51にその調整データが記憶されている。信号処理プロセッサ61は、その微調整用の調整データを不揮発性メモリ51から取得して、実使用調整データを生成して、インターフェース部52を通じて定電圧回路53に供給するようにする。
【0121】
したがって、定電圧回路53の出力電源電圧は、フロントエンド回路IC1毎に、微調整された定電圧となる。このため、各回路をMOS−FETにより構成した場合でも、それらの回路に供給される電源電圧を高めに設定することができ、MOS−FETの性能を最大限に引き出すことができる。
【0122】
図8に示すフロントエンド回路IC1の構成によれば、(A)〜(C)項に示すように、46〜887MHzの周波数帯におけるテレビ放送を受信することができる。そして、そのとき、複素バンドパスフィルタ24の中心周波数および通過帯域幅が可変とされているの、国内の地上デジタルテレビ放送や地上アナログテレビ放送だけでなく、国外のデジタルテレビ放送やアナログテレビ放送にも対応できる。
【0123】
図9は、この第4の実施形態におけるVCO31についての制御部のみを抽出したブロックである。
【0124】
この第4の実施形態では、例えば、テレビ放送受信機に電源が投入されると、信号処理プロセッサ61は、インタフェース52を通じて不揮発性メモリ51に事前取得調整データの取得要求を送り、不揮発性メモリ51から事前取得調整データを読み出す。そして、信号処理プロセッサ61は、不揮発性メモリ51から読み出された事前取得調整データを、インタフェース52を通じて受け取り、信号処理プロセッサ61が内蔵するキャッシュメモリに保持する。このとき、信号処理プロセッサ61は、読み出した調整データをエラー訂正デコード処理する。
【0125】
電源がオン状態である動作中には、信号処理プロセッサ61は、キャッシュメモリに保持されている事前取得調整データを用いて実使用調整データを生成する。この際に、信号処理プロセッサ61は、キャッシュメモリに保持されている事前取得調整データから補間処理により実使用調整データを生成する処理も行なう。
【0126】
そして、信号処理プロセッサ61は、生成した実使用調整データを、インターフェース部52を通じて、VCO31のほか、フロントエンド回路部10の各調整対象部に供給する。
【0127】
図9に示すように、インターフェース部52は、受け取った実使用調整データのうち、VCO31に対する調整データVR1、VR2を、可変抵抗回路400および500に供給し、抵抗のばらつきを調整すると共に、可変容量回路110へのバイアス電流値を制御し、VCOからの発振出力信号の発振振幅の低下を防止する。また、インターフェース部52は、信号処理プロセッサ61から受け取った制御信号SWを、容量切替回路600に供給して、発振中心周波数を切り替えるようにする。
【0128】
この第4の実施形態によれば、事前に求められた、ばらつき調整データを可変抵抗回路400および500の各抵抗値を微調整することができるようになる。
【0129】
なお、図9に示すように、この第4の実施形態では、VCO31の電源電位VDDは、フロントエンド回路IC1内の定電圧回路53により定電圧化された電位となる。
【0130】
電源電圧に混入する外来ノイズや熱雑音などにより、VCOのスプリアス特性や位相雑音特性が大きく影響を受けることがあるが、この実施形態では、前記定電圧回路53により、電源電位VDDが定電圧化されているので、このような問題は軽減される。この場合、定電圧化回路53は、低出力雑音かつ高PSRR(Power Supply Rejection Ratio)特性を持つものが望ましく、それにより、外来ノイズ等の影響を低減することが可能となる。
【0131】
なお、前述もしたように、可変抵抗回路400および500は、図6に示したスイッチ回路と抵抗素子とからなるものの構成に限られるものではなく、MOSFETを可変抵抗素子として用いるようにしてもよいし、このMOSFETを可変抵抗素子として用いるものと、スイッチ回路と抵抗素子とからなるものとを併用するようにしても良い。MOSFETを可変抵抗素子として用いる構成とした場合には、抵抗値の微調整が容易である。
【0132】
[第5の実施形態]
第5の実施形態のVCOの構成例を図10に示す。この第5の実施形態のVCOにおいては、接続点P1およびP2間、すなわち、MOSFET121のドレインと、MOSFET122のドレインとの間、に得られるVCOの発振振幅が、振幅検出器801で検出される。そして、この振幅検出器801で検出されたVCOの発振振幅の値が、制御部802に供給される。
【0133】
制御部802は、検出した発振振幅が一定となるように、可変抵抗回路400および500を制御する。
【0134】
これにより、この第5の実施形態によれば、発振周波数や抵抗素子などのばらつきに伴うVCOの特性劣化を補正することができる。
【0135】
[第6の実施形態]
第6の実施形態のVCOの構成例を、図11に示す。第1の実施形態では、図1に示したように、負性抵抗回路102は、N型MOSFET121および122で構成していた。これに対して、この第6の実施形態では、負性抵抗回路102をP型MOSFET123および124で構成したものである。
【0136】
この第6の実施形態では、N型MOSFET121および122と同様にして、差動構成とされたP型MOSFET123および124の、互いのソース接続点が抵抗301を介して電源ライン104に接続される。また、共振回路101のコイルL1およびコイルL2の接続点が抵抗302を介して接地される。
【0137】
[第7の実施形態]
第7の実施形態のVCOの構成例を、図12に示す。
【0138】
この第7の実施形態では、負性抵抗回路を、N型MOSFET121および122で構成した負性抵抗回路102Aと、P型MOSFET123および124で構成した負性抵抗回路102Bとからなるとして、CMOS構成としたものである。
【0139】
図12に示すように、この第7の実施形態では、負性抵抗回路102BのP型MOSFET123および124の、互いのソース接続点が抵抗301を介して電源ライン104に接続される。また、負性抵抗回路102AのN型MOSFET121および122の、互いのソース接続点が抵抗302を介して接地される。
【0140】
そして、可変容量回路110を備える共振回路101は、負性抵抗回路102Aと、負性抵抗回路102Bとの間に設けられる。
【0141】
[第8の実施形態]
上述した第1〜第7の実施形態では、発振回路部103と電源の一方端との間に第1の抵抗301を接続すると共に、発振回路部103と電源の他方端との間にも、第2の抵抗302を接続するようにした。
【0142】
しかし、可変容量回路を構成する可変容量素子に対するバイアス電圧を調整することにより、従来よりも可変容量域を大きくするようにするという目的からは、第2の抵抗302の代わりに、電流源を接続するようにしてもよい。
【0143】
図13に、この第8の実施形態の一例を示す。この図13の例は、第1の実施形態のVCOにおいて、第2の抵抗302の代わりに、電流源303を設けるようにしたものである。
【0144】
[その他の実施形態および変形例]
上述した実施形態では、電圧制御型の可変容量素子としては、バラクタを用いるようにしたが、この発明が適用される可変容量素子としては、バラクタに限られるわけではない。
【0145】
また、上述の説明では、この発明による電圧制御型可変周波数発振回路を、テレビ放送受信機のフロントエンド回路のPLL回路のVCOに用いて場合のみを説明したが、この発明のVCOは、これに限らず、種々の信号処理回路に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】第1の実施形態の電圧制御型可変周波数発振回路の制御特性を説明するために用いる図である。
【図3】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第2の実施形態を示す回路図である。
【図4】第2の実施形態の要部の具体構成例を説明するための接続図である。
【図5】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第3の実施形態を説明するために用いる図である。
【図6】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第3の実施形態を示す回路図である。
【図7】この発明の第4の実施形態が適用される処理回路例を説明するためのブロック図である。
【図8】この発明の第4の実施形態が適用される処理回路例を説明するためのブロック図である。
【図9】この発明の第4の実施形態の要部を説明するための図である。
【図10】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第5の実施形態の回路構成例を示す図である。
【図11】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第6の実施形態の回路構成例を示す図である。
【図12】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第7の実施形態の回路構成例を示す図である。
【図13】この発明による電圧制御型可変周波数発振回路の第8の実施形態の回路構成例を示す図である。
【図14】従来の電圧制御型可変周波数発振回路の回路構成例を示す図である。
【図15】可変容量素子としてのバラクタの特性を説明するための図である。
【図16】従来の電圧制御型可変周波数発振回路の特性を説明するための図である。
【図17】改善された従来の電圧制御型可変周波数発振回路の要部の回路構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0147】
101…共振回路、102…負性抵抗回路、103…発振回路部、110…可変容量回路、111,112…バラクタ、121,122…MOSFET、301…第1の抵抗、302…第2の抵抗、400,500…可変抵抗回路、600…容量切替回路、700…制御信号発生部、51…不揮発性メモリ、53…定電圧回路、61…信号処理プロセッサ、30…PLL回路、31…VCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルおよび可変容量素子を有する共振回路と、負性抵抗回路とを含む発振回路部と、
前記発振回路部と電源の一方端との間に設けられる第1の抵抗と、
を備える電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記発振回路部と電源の他方端との間には第2の抵抗を接続する
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の抵抗は、抵抗値が可変制御可能である
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項4】
請求項2において、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方は、抵抗値が可変制御可能である
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項5】
請求項3において、
前記第1の抵抗は、制御信号により抵抗値が可変制御される可変抵抗素子からなる
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項6】
請求項3において、
前記第1の抵抗は、複数個の抵抗素子と複数のスイッチ回路とからなり、複数のスイッチ回路のそれぞれがオン・オフ制御されることにより、抵抗値が可変制御される
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項7】
請求項4において、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方は、それぞれ、制御信号により抵抗値が可変制御される可変抵抗素子からなる
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項8】
請求項4において、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方は、それぞれ、複数個の抵抗素子と複数のスイッチ回路とからなり、複数のスイッチ回路のそれぞれがオン・オフ制御されることにより、抵抗値が可変制御される
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項9】
請求項3において、
前記共振回路は、発振周波数に応じて容量が可変制御される容量可変回路を備え、
前記第1の抵抗の抵抗値は、前記発振周波数に応じた容量の可変制御に応じて可変される
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項10】
請求項4において、
前記共振回路は、発振周波数に応じて容量が可変制御される容量可変回路を備え、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方の抵抗値は、前記発振周波数に応じた容量の可変制御に応じて可変される
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項11】
請求項3において、
前記発振回路部の発振出力信号の振幅を検出し、検出した振幅に応じて、前記第1の抵抗の抵抗値を可変制御するための検出回路を備える
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項12】
請求項4において、
前記発振回路部の発振出力信号の振幅を検出し、検出した振幅に応じて、前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方の抵抗値を可変制御するための検出回路を備える
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項13】
請求項1において、
前記電源は、定電圧回路により定電圧化されている
電圧制御型可変周波数発振回路。
【請求項14】
コイルおよび可変容量素子を有する共振回路と、負性抵抗回路とを含む発振回路部と、
前記発振回路部と電源の一方端との間に設けられる第1の抵抗と、
を有する電圧制御型可変周波数発振回路と、
前記電圧制御型可変周波数発振回路からの発振周波数信号を用いて所定の信号処理を行なう処理回路部と、
を備える信号処理回路。
【請求項15】
請求項14において、
前記電圧制御型可変周波数発振回路の前記発振回路部と電源の他方端との間には第2の抵抗を接続した信号処理回路。
【請求項16】
請求項14または請求項15において、
PLL(Phase Locked Loop)回路である信号処理回路。
【請求項17】
請求項14において、
前記第1の抵抗は、抵抗値が調整データにより可変制御可能であり、
前記第1の抵抗の抵抗値のばらつきの調整データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記調整データを用いて前記第1の抵抗の抵抗値を制御する回路部と、
を備える信号処理回路。
【請求項18】
請求項15において、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方は、抵抗値が調整データにより可変制御可能であり、
前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方の抵抗値のばらつきの調整データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記調整データを用いて前記第1の抵抗または前記第2の抵抗の一方または双方の抵抗値を制御する回路部と、
を備える信号処理回路。
【請求項19】
請求項17または請求項18において、
前記電圧制御型可変周波数発振回路の前記電源は、定電圧回路により定電圧化されている信号処理回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−253515(P2009−253515A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97064(P2008−97064)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】