説明

電子材料洗浄方法および洗浄装置

【課題】酸化性物質を含む硫酸溶液に水溶液を混合して電子材料を洗浄する際に、水溶液使用量、廃液処理量、硫酸濃度の低下を招く課題を解決する。
【解決手段】過硫酸物質を含む硫酸濃度70質量%以上の硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより前記洗浄液を前記電子材料に接触させて前記電子材料を洗浄する枚葉式の電子材料洗浄方法において、前記洗浄液に水溶液を混合させて、混合直後に該洗浄液を前記電子材料に接触させる第1洗浄工程と、該第1洗浄工程の後に、前記洗浄液に前記水溶液を混合させることなく前記洗浄液を前記電子材料に接触させる第2洗浄工程とを含むことで、洗浄効果を良好に維持したままで、水溶液使用量、廃液使用量、硫酸濃度の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程において極めて厳しい制御を要求される電子部品製造分野、具体的には半導体基板、液晶基板、有機EL基板、フォトマスク基板、ハードディスク基板等の製造分野において、電子材料上のレジストなどを効率的に剥離除去するための電子材料洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業向けに製造される半導体の集積度は年々高くなり、半導体製造工程のレジスト剥離でも極めて高い清浄度が求められる。このため、洗浄機はバッチ式から徐々に枚葉式へとシフトしつつある。
また洗浄液として硫酸溶液と過酸化水素を所定の組成比になるように混合して製造したSPM溶液(ペルオキシ一硫酸を含む)や硫酸溶液を電解して製造した硫酸電解液(ペルオキシ二硫酸を含む)がある。なお、本願においてはペルオキシ一硫酸とペルオキシ二硫酸とを総じて過硫酸と称することがある。
レジスト剥離に用いる洗浄液は、極力高温である方が高い剥離性能が得られることが知られている。しかし、高温にすると、時間経過とともに有効成分であるペルオキシ二硫酸やペルオキシ一硫酸が分解して効力を失ってしまう。そこで、なるべくレジスト剥離の直前で加熱することが望ましい。この点について枚葉式洗浄においては、従来から洗浄直前に2液を混合して混合熱により昇温するという手法が知られている。
特許文献1、2は、既に過硫酸を含んでいる硫酸溶液にさらに高温高濃度硫酸溶液や純水等の水溶液を混合した際の混合熱(希釈熱)を利用している。一方、特許文献3〜5では、まだ酸化剤を生成していない硫酸溶液に過酸化水素を混合してSPM溶液を生成する際の生成熱を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−66464号公報
【特許文献2】特開2008−198742号公報
【特許文献3】特許第3277404号号公報
【特許文献4】特開2001−129495号公報
【特許文献5】特開2006−253447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2では洗浄の全時間に渡って2液を混合するので硫酸溶液に混合する高温高濃度硫酸溶液、或いは純水等の水溶液の使用量が多くなる。
また一般に枚葉式洗浄では洗浄廃液は一過式で廃棄しているが、もし洗浄廃液を循環・再利用するとしたら、特許文献2〜5は2液の混合により水を生成するので徐々に硫酸濃度が低下して洗浄能力の低下を招いてしまうため、洗浄液を頻繁に交換する必要がある。なお特許文献3〜5は硫酸溶液に過酸化水素を混合するものであって、SPM溶液にさらに過酸化水素を混合するものではない。
そこで本発明では、洗浄液を昇温して高い洗浄力を発揮しつつも洗浄液容量の増加を抑えることができ、また硫酸濃度の低下を極力抑えることにより洗浄液を循環利用する際に液寿命を長くすることができる電子材料洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の電子材料洗浄方法のうち、第1の本発明は、過硫酸物質を含む硫酸濃度70質量%以上の硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより前記洗浄液を前記電子材料に接触させて前記電子材料を洗浄する枚葉式の電子材料洗浄方法において、
前記洗浄液に水溶液を混合させて、混合直後に該洗浄液を前記電子材料に接触させる第1洗浄工程と、該第1洗浄工程の後に、前記洗浄液に前記水溶液を混合させることなく前記洗浄液を前記電子材料に接触させる第2洗浄工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
第2の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記第1洗浄工程において、前記混合直後が10秒以内であることを特徴とする。
第3の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、前記第1洗浄工程の洗浄時間が前記第2洗浄工程の洗浄時間よりも短いことを特徴とする。
第4の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜3のいずれかの本発明において、前記第1洗浄工程の前に、前記洗浄液に前記水溶液を混合させることなく前記洗浄液を前記電子材料に接触させる初期洗浄工程をさらに含むことを特徴とする。
第5の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜4のいずれかの本発明において、前記第1洗浄工程の洗浄時間が20秒以下であることを特徴とする。
第6の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜5のいずれかの本発明において、前記第1洗浄工程における洗浄廃液の少なくとも一部を系外に排出し、残部を系内に循環して過硫酸を再生後に前記洗浄液として再利用することを特徴とする。
第7の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第6の本発明において、前記第1洗浄工程中に洗浄廃液の色度又は濁度を計測し、該測定の値が予め設定した値を超えたときは前記洗浄廃液を系外に排出し、それ以外の洗浄時間では前記洗浄廃液を系内に循環して再生後に前記洗浄液として再利用することを特徴とする。
第8の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜7のいずれかの本発明において、前記洗浄液が、予め硫酸溶液と過酸化水素とを混合して製造したSPM溶液であることを特徴とする。
第9の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜8のいずれかの本発明において、前記洗浄液が、硫酸溶液を電気分解して製造した硫酸電解液であることを特徴とする。
第10の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜9のいずれかの本発明において、前記水溶液が、過酸化水素水、純水、硫酸濃度20質量%未満の硫酸水溶液、オゾンガス溶解水からなる群の1種以上であることを特徴とする。
第11の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜10のいずれかの本発明において、前記水溶液の液温が、50℃以上であって、前記洗浄液に混合した後の液温が沸点未満であって220℃以下であることを特徴とする。
第12の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜11のいずれかの本発明において、前記電子材料が半導体基板であることを特徴とする。
第13の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第12の本発明において、前記洗浄が、前記半導体基板に付着するレジストを剥離除去するものであり、前記洗浄を行った後の前記洗浄液である洗浄廃液に、SPM溶液、硫酸電解液、過酸化水素水のいずれかの酸化剤を添加して前記洗浄廃液中の有機物を分解させることを特徴とする。
第14の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第13の本発明において、前記洗浄の洗浄廃液の少なくとも一部を系内に循環して過硫酸を再生後に前記洗浄液として再利用するものであって、前記洗浄廃液を系内に循環するときのみ前記酸化剤を前記洗浄廃液に添加することを特徴とする。
【0007】
すなわち、本発明によれば、枚葉式洗浄において洗浄液に水溶液を混合して洗浄に用いる第1洗浄工程と、その後の洗浄液に水溶液を混合することなく洗浄に用いる第2洗浄工程とを、適宜区分けして設定することができる。該区分けでは、一工程の洗浄処理中、例えば一枚の電子材料の洗浄中に洗浄工程を使い分けるのが望ましい。これにより洗浄効果と洗浄廃液の増加、硫酸溶液の濃度低下のバランスをとって洗浄効果を阻害することなく洗浄廃液の増加、硫酸溶液の濃度低下を抑える効果が顕著になる。
【0008】
なお、洗浄液には、過硫酸を含む硫酸濃度70質量%以上の硫酸溶液を用いる。硫酸溶液は、洗浄効果を高めるために硫酸濃度を70質量%以上としており、硫酸濃度70質量%未満では、電子材料上のレジストなどを十分に剥離することができない。
【0009】
洗浄液に混合する水溶液としては、過酸化水素水、純水、硫酸濃度20質量%未満の硫酸水溶液、オゾンガス溶解水など不純物が残留しないものを用いることができる。すなわち、洗浄液供給ノズル直前などで、洗浄液に前記水溶液を混合して、硫酸の希釈熱により洗浄液の温度を高める。ここで過酸化水素水を用いると、昇温すると共にペルオキシ一硫酸(カロ酸)の濃度を高めることもできる。
これらの水溶液は単独で用いてもよく、また、複数を洗浄液に混合し、もしくは複数をそれぞれ個別に洗浄液に混合するようにしてもよい。
水溶液は、特に加熱することなく洗浄液に混合してもよいが、水溶液の温度が低いと混合後の洗浄液の温度低下につながるため、50℃以上の液温を有する状態で洗浄液に混合するのが望ましい。ただし、水溶液の混合によって洗浄液が沸点に達することは避けることが望ましい。したがって、水溶液の液温は、洗浄液に混合した際に、洗浄液が沸騰しない温度とするのが望ましい。硫酸濃度が高い洗浄液は沸点が高いが、水溶液の混合によって洗浄液温度が200℃を超えると、洗浄装置が付帯設備の耐熱温度を超える恐れがあるので混合後の液温が200℃以下になるよう水溶液の液温や混合量を設定することが望ましい。
【0010】
本発明では、洗浄に際し、洗浄初期の高い洗浄力を必要とする時間範囲では前記混合を行い、それ以外では前記混合を行わないようにする。高い洗浄力を必要とする時間範囲としては、洗浄開始から20秒以下を示すことができる。
すなわち、洗浄液を電子材料に向けて噴出又は流下して洗浄を行う枚葉式洗浄装置においては、電子材料の被洗浄物質が電子材料から剥がれるまで最も高い洗浄力を要求される。特にアッシングレスでのレジスト除去洗浄においては顕著である。そこで過硫酸を含む濃硫酸を洗浄液として洗浄を行う場合、第1洗浄工程として、上記の時間範囲のみ洗浄直前に洗浄液に水溶液を混合して一時的に洗浄液の能力を高めることが望ましい。その後は、第2洗浄工程として、洗浄液に水溶液を混合することなく洗浄に用いる。この際に、通常は、第1洗浄工程の洗浄時間は第2洗浄工程の洗浄時間よりも短いものとすることができる。
さらに、第1洗浄工程の前に、洗浄液に前記水溶液を混合させることなく洗浄液を電子材料に接触させる初期洗浄工程を含むようにしてもよい。その理由は最も高い剥離能力が要求されるタイミングにおいて、前記水溶液を混合させ、その前後あるいは前、もしくは後は混合させることなく循環使用するのが合理的だからである。
【0011】
なお、洗浄機で使用した洗浄初期の洗浄液を廃棄して、その後の洗浄液を回収・循環使用することは公知である。(特開2006−24793)
通常、枚葉式洗浄機のターンテーブル上などに1枚のウエハなどの電子材料が載っている時間は3分から4分である。このうち、レジスト剥離のための洗浄液が電子材料上に供給される時間は1分程度であって、それ以外の時間は他の薬液や純水による洗浄・リンスに要する時間である。この1分間の中で、レジストが剥離するのは極短時間であり、その後はウエハ表面の清浄度を向上するために必要な時間である。一過式でレジスト剥離を行う場合には1分間に流した洗浄液を全て廃棄するが、洗浄廃液を回収して循環使用する場合には、特にレジスト濃度が高い時間の洗浄廃液のみ廃棄して、その他の時間帯の比較的きれいな洗浄廃液を回収する方が得策である。
レジストが剥離し、洗浄廃液中の有機物濃度が高くなる時間帯は、最も強力な剥離力が必要となるときでもある。そこで、この時に過酸化水素水や純水などの水溶液の混合を行えば、過硫酸を高濃度で含む高温の洗浄液が得られるとともに、使用後の洗浄廃液の硫酸濃度が薄まっても、所詮廃棄する液であるから、循環使用に対して何ら支障とはならない。
【0012】
また、上記洗浄では、洗浄に用いた洗浄廃液を系内に循環させて再利用することができ、再利用に際しては、必要に応じて酸化剤として硫酸電解液、SPM溶液、過酸化水素水を添加することができ、また、洗浄に用いた洗浄廃液は上記循環を行うことなく、系外に排出することができる。
上記系内の循環と系外の排出とは、上記洗浄工程の区分に応じて行うことができる。例えば、洗浄液に水溶液を混合して洗浄に用いる第1洗浄工程中は、上記系内への循環を行うことなく系外に排出することができ、その後の第2洗浄工程中は系内に循環するようにしてもよい。
第1洗浄工程中に系内に循環することなく系外に排出する場合、当該洗浄工程全体で系外に排出してもよく、また、当該洗浄工程の一部、例えば、新たな電子材料に対する洗浄開始直後から所定時間に達する以前までを、系外に排出し、その後、系内に循環してもよい。さらに、第1洗浄工程で洗浄廃液を全量を廃棄する他、前記第1洗浄工程における洗浄廃液の少なくとも一部を系外に排出し、残部を系内に循環して過硫酸を再生後に前記洗浄液として再利用するようにしてもよい。
【0013】
また、洗浄に用いた洗浄廃液を系外に排出するか、系内に循環するかは、洗浄廃液の色度又は濁度の測定結果に基づいて決定することができる。例えば、予め前記決定に対する閾値を設定しておき、洗浄廃液の色度又は濁度の測定結果が前記閾値を越える場合に、洗浄液を系外に排出し、それ以外の洗浄時間では洗浄廃液を系内に循環するようにしてもよい。
色度および濁度は、既知の方法、既知の装置により測定することができ、比色計や吸光度計などを用いて測定することができ、本発明としては特にその方法や装置が限定されるものではない。閾値は、予め実験を行った結果や、文献などにより提示されるデータを利用することができる。
【0014】
色度や濁度による洗浄工程の区分は単独で行ってもよく、また、新たな電子材料に対する洗浄時間と組み合わせて行ってもよい。例えば、新たに電子材料を洗浄する際に、洗浄初期の高い洗浄力を必要とする時間範囲が予め設定されている場合、当該時間範囲内で色度や濁度が閾値を越える場合に洗浄廃液を系内に循環させることなく系外に排出するものとし、当該時間範囲以内であっても、色度や濁度が次第に低下して閾値以下になれば洗浄廃液を系内に循環させるようにしてもよい。また、これとは異なり、洗浄初期の高い洗浄力を必要とする時間範囲が予め設定されている場合、当該時間範囲を超えた後でも、色度や濁度が閾値を越えていれば、系内に循環させることなく系外に排出するようにしてもよい。
なお、洗浄機での使用後に廃棄する洗浄廃液が有機物を高濃度で含むために廃棄困難な場合には、これを貯留し、一定の温度で所定時間保持し、必要に応じて過硫酸を含む硫酸溶液、または過酸化水素を添加することにより、有機物を十分に分解してから廃棄する。
【0015】
洗浄廃液を系内に循環させる場合、必要に応じて洗浄廃液を再生する。再生は、系内に循環させる洗浄廃液の全部を対象にしてもよく、一部の洗浄廃液を対象にしてもよい。さらに、再生を常に行ってもよく、また、一時的、間欠的に行うようにしてもよい。
洗浄廃液の再生は、例えば、過酸化水素の添加や電解によって行うことができる。ただし過酸化水素を用いると硫酸濃度が低下するので電解の方が好ましい。
【0016】
分画回収した液を貯留し、一定の温度で所定時間保持することができる。必要に応じて過硫酸を含む硫酸溶液、または過酸化水素を添加することにより、有機物を十分に分解してから電解装置などへ循環使用のために送る。
ただし酸化剤として、SPM溶液、過酸化水素を用いると硫酸濃度が低下してしまうので、硫酸電解液を用いることが好ましい。
【0017】
本発明において洗浄対象となる電子材料は、例えば、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、およびそのフォトマスク等の製造工程において、レジストパターンが形成された電子材料である。
通常、電子材料上のレジスト膜の厚さは0.1〜5.0μm程度であるが、何らこの厚さに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、過硫酸を含む高濃度硫酸溶液からなる洗浄液への水溶液の添加を洗浄工程の一部に抑えるので、水溶液の使用量を低減することができる。また従来技術より硫酸濃度の低下を抑えることができるので洗浄液を循環・再利用するときに洗浄液の寿命を長期化することができる。また、洗浄液への水溶液の添加時期を高い洗浄能力が求められる洗浄初期とすることにより高い洗浄効率(洗浄時間の短縮化)を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】硫酸濃度とエンタルピーとの関係を示す図である。
【図2】本発明の参考となる形態の洗浄システムを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の洗浄システムを示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態の洗浄システムを示す図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態の分解ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
(1)水溶液混合による温度上昇
濃硫酸を水で希釈すると発熱して温度が高くなることが良く知られている。これは定量的には次のように説明される。
0℃の純水のエンタルピーを0kcal/kgとすると、25℃の硫酸水溶液の濃度とエンタルピーとの関係は図1の通りである。下に凸の曲線で示され、67質量%付近に最小値が存在する。96質量%の濃硫酸に純水を混ぜると、いずれの割合においてもエンタルピーが低下する。即ち、その分のエネルギーが分子内から放出されて温度が高くなるわけである。
過酸化水素を添加した場合は、この図とは若干異なるが、液温度が高ければ過酸化水素の大半は次のように分解して水になるので、同様に発熱することになる。
【0021】
【化1】

【0022】
今、96質量%、100℃の濃硫酸1.0L/分に対して、60℃の純水を、流量を変えて添加していったときの混合後の温度、硫酸濃度、および沸騰の有無を計算すると表1のようになる。この表から、濃硫酸1.0L/分に対して60℃の純水を0.3L/分添加すれば、195℃、82質量%を得ることができ、十分な剥離効果が得られると思われ、かつ沸騰することも無いので、液が周囲に飛散する心配がない。
しかし、常時添加を行えば、硫酸濃度が低下して液を循環使用することができなくなる。よって、必要な時だけ添加を行い、液の循環使用と両立する工夫が必要である。
【0023】
【表1】

【0024】
(2)洗浄廃液の分画回収について
硫酸電解液を用いた枚葉式レジスト剥離工程において、洗浄廃液を分画回収して一部を循環使用するシステムであって上記(1)水溶液混合による温度上昇を適用しない従来のシステムを図2に示す。以下に、該システムの構成を説明する。
本発明の洗浄液再生部に相当する電解装置1は無隔膜型であり、ダイヤモンド電極により構成された陽極1aおよび陰極1bが隔膜で隔てることなく内部に配置され、両電極には図示しない直流電源が接続されている。なお、本発明としては、電解装置を隔膜型によって構成することも可能である。
上記電解装置1には、貯留槽20が電解側循環ライン11を介して循環通液可能に接続されている。送り側の電解側循環ライン11には、硫酸溶液を循環させる循環ポンプ12、硫酸溶液を冷却する冷却器13とがこの順に介設されている。
【0025】
貯留槽20には、第1送液ポンプ21を介して上流側送液ライン22が接続されている。
上流側送液ライン22の送液側には、予備加熱槽30が接続されている。予備加熱槽30には、予備加熱槽30内に貯留された硫酸溶液を90〜120℃に加熱する予備加熱ヒータ(図示しない)などが設けられている。
さらに、予備加熱槽30の下流側には、予備加熱槽30内の硫酸溶液を送液する下流側送液ライン32が接続されている。下流側送液ライン32には第2送液ポンプ33、急速加熱器34が介設されており、下流側送液ライン32の送液先端側は、開閉弁32aを介して枚葉式の洗浄装置40のノズル41に接続されている。上流側送液ライン22および下流側送液ライン32は、両者によって本発明の洗浄液送液ラインを構成している。
【0026】
急速加熱器34は、石英製の管路を有し、例えば近赤外線ヒータによって硫酸溶液を一過式で、洗浄装置40入口で140〜220℃の液温が得られるように硫酸溶液を急速加熱する。
【0027】
上記した枚葉式の洗浄装置40では、搬入された電子材料基板100に向けたノズル41を備え、該ノズル41で洗浄液としての硫酸溶液がスプレーされるか少量ずつ流下される電子材料基板100を載置して回転させる回転台42を備える。さらに、洗浄装置40には、洗浄廃液の排出ライン43と、上流側環流ライン46とが接続されている。上流側環流ライン46には洗浄に用いられた洗浄液を回収する洗浄廃液回収部44が介設されており、該洗浄廃液回収部44の下流側で、上流側環流ライン46に第1環流ポンプ45が介設されている。
【0028】
上流側環流ライン46には、洗浄に用いられた硫酸溶液を一時的に貯留する分解槽50が接続されている。分解槽50には、下流側循環ライン52が接続されており、該下流側循環ライン52は、第2環流ポンプ51、冷却器53を順次介して送液先端側が前記貯留槽20に接続されている。また、下流側送液ライン32からは、前記開閉弁32aの上流側で分岐送液ライン47が分岐しており、分岐送液ライン47は、開閉弁47aを介して分解槽50に接続されている。
上流側環流ライン46および下流側環流ライン52は、両者によって洗浄液環流ラインを構成している。前記した上流側送液ライン22と下流側送液ライン32とにより構成される洗浄液送液ラインと、上流側環流ライン46と下流側環流ライン52とにより構成される洗浄液環流ラインとによって本発明の循環ラインを構成している。
【0029】
次に、上記構成からなる洗浄システムの動作について説明する。
貯留槽20には、硫酸濃度70質量%以上(好適には85質量%以上)の硫酸溶液が貯留される。前記硫酸溶液は、循環ポンプ12により送り側の電解側循環ライン11を通じて送液され、電解装置1の入液側に導入される。電解装置1では、直流電源によって陽極1a、陰極1b間に通電され、電解装置1内に導入された硫酸溶液が電解される。なお、該電解によって電解装置1では、陽極側で過硫酸が生成される。過硫酸は、前記硫酸溶液と混在した状態で戻り側の電解側循環ライン11を通じて貯留槽20に送られる。硫酸溶液は、過硫酸を含んでおり、戻り側の電解側循環ライン11を通じて、貯留槽20に戻された後、繰り返し電解装置1に送られ電解されることにより過硫酸の濃度が高められる。過硫酸濃度が適度になると、貯留槽20内の硫酸溶液の一部は上流側送液ライン22を通して第1送液ポンプ21によって予備加熱槽30に送液される。予備加熱槽30内では、貯留されている硫酸溶液が予備加熱ヒータによって90〜120℃の温度に加熱、維持される。予備加熱槽30内の硫酸溶液は、第2送液ポンプ33によって下流側送液ライン32を通して急速加熱器34に送られて急速加熱され、さらに開閉弁32aを開けた下流側送液ライン32を通して洗浄装置40に送液される。
【0030】
急速加熱器34では、過硫酸を含む硫酸溶液が流路を通過しながら近赤外線ヒータによって、洗浄装置40に送液された際に140℃〜220℃の範囲の液温を有するように急速に加熱される。急速加熱器34を洗浄装置40の近傍に配置することで、加熱温度を利用時の温度と略同じにすることができる。
加熱された、過硫酸を含む硫酸溶液は、下流側送液ライン32を通して枚葉式の洗浄装置40に洗浄液として送液され、電子材料基板100の洗浄に使用される。このとき前記硫酸溶液は、急速加熱器34の入口から洗浄装置40で使用されるまでの通液時間が20秒未満となるように、流量が調整されているのが望ましい。なお、枚葉式の洗浄装置40では、該電子材料基板100を回転台42上で回転させつつ前記した硫酸溶液を接触させることでレジストを効果的に剥離除去する。
洗浄装置40に洗浄液を送る時間は約1分間であるが、真にレジスト剥離に要する時間はこのうち10〜15秒程度である。この時間帯の洗浄後のレジスト濃度の高い洗浄廃液はそのまま排出ライン43へ送る。この時間帯を過ぎた後の洗浄後のレジスト濃度が比較的低い洗浄廃液は、上流側環流ライン46を通して洗浄廃液回収部44に受け、これを分解槽50へ送る。
分解槽50の液滞留時間は10〜20分であり、枚葉式洗浄のインターバルに比較して長い。洗浄装置40に液を送っていない間(例えば、3分−1分=2分)は、開閉弁32aを閉じ、開閉弁47aを開けて急速加熱器34からの硫酸溶液を分岐送液ライン47を通して直接分解槽50に受け入れ、硫酸溶液に含まれる過硫酸により未分解レジストを酸化分解する。レジスト濃度が下がった回収液は、第2環流ポンプ51を介して下流側環流ライン52を通じて貯留槽20へ送り返す。この際には、冷却器53によって電解に適した温度、例えば40〜60℃に冷却する。貯留槽20に戻された洗浄廃液は、電解側循環ライン11で循環しつつ電解装置1で、再度電解を行って過硫酸濃度を高め、洗浄液として再生し、洗浄に循環使用する。
【0031】
このシステムにおいて十分な剥離効果を得るためには、一般に急速加熱器34の出口温度を140〜220℃にする必要がある。このため、急速加熱器34の加熱容量を大きくする必要が生じるとともに構成部材の耐熱性などに課題が生じる。
このシステムに上記(1)に述べた水溶液混合による温度上昇を適用すれば、急速加熱器34の負荷を減らすことができる。このシステムに相当する本発明の一実施形態の構成を図3に示す。
以下に該システムを説明する。図2に示したものと同様の構成については同一の符号を付している。
【0032】
本形態は、下流側送液ライン32に混合開閉弁60aを介して水溶液混合ライン60が接続されている点、排出ライン43に排出開閉弁43aが介設されていることが明記されている点、上流側環流ライン46に循環開閉弁46aが介設されていることが明記されている点で図2のシステムと構成が異なる。また、本形態では、混合開閉弁60a、排出開閉弁43a、循環開閉弁46aが制御部65で開閉制御されている。上記水溶液混合ライン60および混合開閉弁60aは、本発明の水溶液混合部を構成し、制御部65は、本発明の水溶液混合制御部および洗浄液廃液制御部として機能する。
【0033】
本形態のシステムでは、混合開閉弁60aを開くことで、水溶液混合ライン60を通して送液される水溶液が、下流側送液ライン32を通して送液される洗浄液に混合されて、洗浄装置40に送られる。混合後、洗浄装置40で利用されるまでの時間は、10秒以下が望ましい。また、混合開閉弁60aを閉じることで、下流側送液ライン32を通して送液される洗浄液は、水溶液が混合されることなく洗浄装置40へと送られる。
この実施形態では、水溶液として過酸化水素水または純水が用いられている。
また、洗浄後の洗浄液である洗浄廃液は、排出開閉弁43aを開き、循環開閉弁46aを閉じることで、洗浄廃液は系内に循環されることなく排出ライン43に排出される。一方、排出開閉弁43aを閉じ、循環開閉弁46aを開くことで、洗浄廃液は上流側環流ライン46を通して系内に循環される。
【0034】
洗浄に際しては、ノズル41の直前で、水溶液として過酸化水素水又は純水を添加し、添加時の洗浄廃液は廃棄する。水溶液を添加しないときの洗浄廃液は回収して循環使用することができる。これら動作は、制御部65の制御によって行うことができる。
すなわち、新たな洗浄を行う際に、制御部65で予め定めた時間範囲(好適には20秒以下)で、制御部65の制御によって混合開閉弁60aを開き、それ以外では混合開閉弁60aを閉じて洗浄を行う。このとき、混合開閉弁60aを開いている時間範囲では、制御部65の制御によって排出開閉弁43aを開き、循環開閉弁46aを閉じて洗浄廃液を排出ライン43を通して系外に排出する。また、混合開閉弁60aを閉じている時間範囲では、混合開閉弁60aを開いているときよりも洗浄作用は相対的に低下しているので、制御部65の制御によって排出開閉弁43aを閉じ、循環開閉弁46aを開いて洗浄廃液を上流側環流ライン46を通して系内に循環させる。
【0035】
また、洗浄廃液の排出と循環とは、洗浄廃液の色度や濁度を測定し、その測定結果に基づいて制御部65によって制御することができる。例えば、洗浄機40から洗浄廃液を取り出して色度計や濁度計で洗浄液の色度や濁度を測定し、測定結果を制御部65に送信する。制御部65では、予め色度用または濁度用のしきい値を設定しておき、測定値がこれを越える場合、洗浄廃液に高い濃度で有機物等が含まれているとして、制御部65の制御によって排出開閉弁43aを開き、循環開閉弁46aを閉じて洗浄廃液を系外に排出する。一方、測定結果がしきい値以下である場合、洗浄廃液の有機物等の濃度は低いものとして、制御部65の制御によって排出開閉弁43aを閉じ、循環開閉弁46aを開いて洗浄廃液を系内に循環させる。
【0036】
今、92質量%、過硫酸濃度1.0g/Lの硫酸電解液を流量1.0L/分で急速加熱器34に流し、150℃に加熱して洗浄装置40に送液するとする。この時、60℃の純水をノズル直前で混合ライン60によって洗浄液に混合した場合の温度と硫酸濃度および過硫酸濃度を計算すると、表2のようになる。
【0037】
【表2】

【0038】
表2より、純水を0.1L/分の流量で加えれば、温度を185℃まで高めることができ、硫酸濃度は87質量%、過硫酸濃度は0.91g/Lであるので十分な剥離能力を保持することができることが分かる。この時、電子材料基板100よりレジストが剥がれ、有機物濃度が高い洗浄廃液が生じるが、これは分画して廃棄する。その後、水溶液の添加を停止し、洗浄後の廃液を回収して、電解装置1へ戻す。従って、循環する洗浄廃液の硫酸濃度が水溶液の混合により低下することなく92質量%程度を維持することができる。
【0039】
なお、回収した洗浄廃液中には、未分解のレジスト(中間生成物である有機物など)が残ることが考えられる。そこで、過硫酸を含む硫酸電解液、または過酸化水素水などの酸化剤を分解槽50に加えて有機物を十分に分解してから、貯留槽20へ送り返し、電解装置1による電解を行うことができる。
図3のシステムは、この構成を含めて示されている。すなわち、分解槽50には、過酸化水素送液ライン68が接続されており、分解槽50への過酸化水素の添加が可能になっている。
【0040】
本発明の方法、即ち、過酸化水素水、純水などの水溶液を、洗浄ノズル直前で過硫酸を含む高濃度の硫酸溶液に加える方法と、洗浄初期の洗浄廃液を廃棄し、その後の洗浄廃液を循環使用する方法とを、従来のSPM法(硫酸・過酸化水素混合液法)に適用することもできる。この場合の構成図を図4に示す。なお、図2、3と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0041】
このシステムでは、本発明の洗浄液再生部に相当する過硫酸調整槽70を有し、該過硫酸調整槽70に硫酸溶液を送液する硫酸送液ライン71と、該過硫酸調整槽70に過酸化水素を送液する過酸化水素送液ライン72とが接続されている。
また、過硫酸調整槽70には、送液ライン73が送液ポンプ74、急速加熱器75を介して接続されており、送液ライン73の送液先端側は洗浄装置40に接続されている。送液ライン73は、本発明の洗浄液送液ラインに相当する。また、急速加熱器75は、前記した急速加熱器34と同構造とすることができる。
【0042】
洗浄装置40近傍の送液ライン73には、混合開閉弁60aを介設した水溶液混合ライン60が合流している。洗浄装置40には、排出ライン43と、環流ライン77とが接続されている。排出ライン43には排出開閉弁43aが介設され、環流ライン77には循環開閉弁77aが介設されている。また、環流ライン77には、循環開閉弁77aの下流側で、洗浄に用いられた洗浄廃液を回収する洗浄廃液回収部44が介設されており、該洗浄廃液回収部44の下流側で、環流ライン77に環流ポンプ78、冷却器79が順次介設されている。送液ライン73と環流ライン77とによって本発明の洗浄側循環ラインが構成されている。
このシステムでは、過硫酸調整槽70に対し、硫酸送液ライン71で25℃の硫酸溶液が送液され、過酸化水素送液ライン72で25℃の過酸化水素水が送液される。すると過硫酸調整槽70では反応熱によって60〜100℃の温度を有し、過硫酸を含む硫酸溶液が得られる。
【0043】
過硫酸を含む硫酸溶液は、送液ポンプ74によって送液ライン73を通して送液され、急速加熱器75で急速加熱され、さらに送液ライン73で送液される。送液ライン73では、混合開閉弁60aが開かれた水溶液混合ライン60によって過酸化水素水または純水が水溶液として混合され、180℃にまで加熱されて洗浄装置40のノズル41に送られる。
一方、洗浄後の洗浄廃液は必要に応じて排出ライン43から排出され、また洗浄廃液を循環する場合は環流ライン77を通して洗浄廃液回収部44に送液される。洗浄廃液回収部44に回収された洗浄廃液は、環流ポンプ78によって環流ライン77を通して下流側に送液され、冷却器79で適温に冷却された後、過硫酸調整槽70に戻される。過硫酸調整槽70では、必要に応じて硫酸送液ライン71で25℃の硫酸溶液が送液され、過酸化水素送液ライン72で25℃の過酸化水素水が送液されて洗浄液が再生される。再生された洗浄液は、送液ライン73を通じて再度、洗浄装置40で洗浄に利用することができる。
【0044】
(3)洗浄廃液中の有機物の分解
図2〜図4に述べた方法の洗浄廃液中には、未分解のレジスト(中間生成物である有機物など)が残ることが考えられる。これらを十分に分解してから廃棄する場合には分解ユニットによって有機物の十分な分解を図る。この分解ユニットを図5に基づいて説明する。
分解ユニットは、分解槽80を備え、該分解槽80に洗浄廃液導入ライン81と、処理液排出ライン82とが接続されている。処理液排出ライン82には、排出ポンプ83と冷却器84とが順次介設されている。
分解槽80には、分解槽80内の洗浄廃液の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定部86と、分解槽80内の洗浄廃液の温度を測定する温度測定部87及び温度測定部87の測定結果を受けて必要に応じて洗浄廃液を昇温するためのヒーター90を有している。
さらに分解槽80には、開閉弁88aを介設した過酸化水素送液ライン88が接続されている。さらに、過酸化水素濃度測定部86の測定結果を受ける開閉弁制御部89を有しており、開閉弁制御部89は、該測定結果に基づいて開閉弁88aの開閉を制御する。
【0045】
このユニットでは、分解槽80を所定温度に保ちつつ、有機物が残留しないように過酸化水素水送液ライン88を通して過酸化水素を添加して、過硫酸を生成して有機物を酸化分解させると共に過酸化水素自身も有機物を酸化する。常時または随時、過酸化水素濃度測定部86で過酸化水素濃度(例えば、過マンガン酸カリウム滴定法による分析値)を測定し、開閉弁制御部89では、測定結果に基づいて過酸化水素濃度が0.05〜0.2質量%になるように開閉弁88aの開閉を制御する。本実施形態では、洗浄廃液は洗浄運転に伴い断続的に供給される。分解槽は十分な滞留時間を確保しているので、処理液は連続的に排出する。
【0046】
有機物の酸化分解のための過酸化水素が不足していれば、過酸化水素は消費され残留しないが、有機物が十分に酸化分解されれば、過酸化水素は余剰となる。よって、過酸化水素濃度が0.05質量%以上となるように維持されていれば有機物は十分に酸化分解されているとみなすことができる。すなわち、過酸化水素濃度が0.05質量%を下回らないように開閉弁88aの開閉を制御して過酸化水素を分解槽80内に送液する。
一方、従来のSPM(硫酸・過酸化水素混合液)法の廃液の場合には、過酸化水素溶液が0.2質量%以下であれば産廃処理が可能と言われているため、過酸化水素濃度が0.2質量%以下になるように制御する。すなわち、過酸化水素濃度が0.2質量%に達すれば開閉弁88aを閉じて洗浄廃液中の過酸化水素濃度が0.2質量%を越えないようにする。
分解槽80内の洗浄廃液は酸化処理して処理液として、排出ポンプ83によって処理液排出ライン82を通じて送液する。この際に洗浄廃液を冷却し、廃棄に適した温度とする。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
以下に示す、図3のシステムを用い、電子材料としてのウエハを枚葉式洗浄機にセットし、レジスト剥離処理を行った。
洗浄液:硫酸濃度96質量%の硫酸溶液を電解して製造した過硫酸溶液
ウエハ直径=300mm径
レジスト種:ノボラック樹脂、レジスト厚さ=260nm
イオンドーズ:1×1014 atoms/cm
イオン種:As
剥離処理条件は以下の通りとした。
洗浄液温度=150℃、過硫酸濃度=0.5g/L
過硫酸溶液流量=1.0L/分、液供給時間=1分、
うち15秒間は40℃の過酸化水素水(30質量%)を0.09L/分の流量でノズル直前で洗浄液に添加して、処理後の洗浄廃液は廃棄した。過酸化水素水添加後、ノズルに至る時間は、1秒であった。
残り45秒間は何も添加せず、過硫酸溶液のまま処理して、処理後の洗浄廃液は分解槽に受け、その後2分間、同流量で過硫酸溶液を分解槽に入れ、140℃で10分間保持した。
このような処理をしたところ、ウエハ上のレジストは完全に剥離できた。
【0048】
[比較例1]
洗浄直前に過酸化水素水や純水の添加および洗浄液の廃棄はせず、剥離処理に用いた洗浄廃液は全量、分解槽に回収したこと以外は実施例1に述べたと同じウエハを同じ処理条件で処理した。この場合には、分解槽内の液は完全には清澄にならず、若干褐色がかった色が残った。この液を循環使用した場合、洗浄力(剥離性能)が低下するものと思われる。
【符号の説明】
【0049】
1 電解装置
11 電解側循環ライン
20 貯留槽
22 上流側送液ライン
32 下流側送液ライン
34 急速加熱器
40 洗浄装置
41 ノズル
43 排出ライン
43a 排出開閉弁
44 洗浄廃液回収部
46 上流側環流ライン
50 分解槽
52 下流側環流ライン
60 水溶液混合ライン
60a 混合開閉弁
70 過硫酸調整槽
71 硫酸送液ライン
72 過酸化水素送液ライン
75 急速加熱器
80 分解槽
86 過酸化水素濃度測定部
87 温度測定部
88a 開閉弁
88 過酸化水素送液ライン
89 開閉弁制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸物質を含む硫酸濃度70質量%以上の硫酸溶液を洗浄液として電子材料に供給することにより前記洗浄液を前記電子材料に接触させて前記電子材料を洗浄する枚葉式の電子材料洗浄方法において、
前記洗浄液に水溶液を混合させて、混合直後に該洗浄液を前記電子材料に接触させる第1洗浄工程と、該第1洗浄工程の後に、前記洗浄液に前記水溶液を混合させることなく前記洗浄液を前記電子材料に接触させる第2洗浄工程とを含むことを特徴とする電子材料洗浄方法。
【請求項2】
前記第1洗浄工程において、前記混合直後が10秒以内であることを特徴とする請求項1記載の電子材料洗浄方法。
【請求項3】
前記第1洗浄工程の洗浄時間が前記第2洗浄工程の洗浄時間よりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項4】
前記第1洗浄工程の前に、前記洗浄液に前記水溶液を混合させることなく前記洗浄液を前記電子材料に接触させる初期洗浄工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項5】
前記第1洗浄工程の洗浄時間が20秒以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項6】
前記第1洗浄工程における洗浄廃液の少なくとも一部を系外に排出し、残部を系内に循環して過硫酸を再生後に前記洗浄液として再利用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項7】
前記第1洗浄工程中に洗浄廃液の色度又は濁度を計測し、該測定の値が予め設定した値を超えたときは前記洗浄廃液を系外に排出し、それ以外の洗浄時間では前記洗浄廃液を系内に循環して再生後に前記洗浄液として再利用することを特徴とする請求項6記載の電子材料洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄液が、予め硫酸溶液と過酸化水素とを混合して製造したSPM溶液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄液が、硫酸溶液を電気分解して製造した硫酸電解液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項10】
前記水溶液が、過酸化水素水、純水、硫酸濃度20質量%未満の硫酸水溶液、オゾンガス溶解水からなる群の1種以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項11】
前記水溶液の液温が、50℃以上であって、前記洗浄液に混合した後の液温が沸点未満であって220℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項12】
前記電子材料が半導体基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄が、前記半導体基板に付着するレジストを剥離除去するものであり、前記洗浄を行った後の前記洗浄液である洗浄廃液に、SPM溶液、硫酸電解液、過酸化水素水のいずれかの酸化剤を添加して前記洗浄廃液中の有機物を分解させることを特徴とする請求項12に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項14】
前記洗浄の洗浄廃液の少なくとも一部を系内に循環して過硫酸を再生後に前記洗浄液として再利用するものであって、前記洗浄廃液を系内に循環するときのみ前記酸化剤を前記洗浄廃液に添加することを特徴とする請求項13に記載の電子材料洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195524(P2012−195524A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60040(P2011−60040)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】