説明

電子部品、電子機器、及びはんだペースト

【課題】電子部品をプリント配線板などにはんだ接続する際に、溶融したはんだによる電極間のショートの発生を防ぐことができるはんだペースト、電子部品、該電子部品を用いた電子機器の提供。
【解決手段】電極パッドを有する配線基板と、前記配線基板に実装され、複数の電極を有する部品と、前記部品を覆う封止樹脂と、前記配線基板内の配線を、外部の基板と接続する複数の端子とを有し、前記複数の電極が、前記電極パッドとはんだにより接続されており、前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とが順に形成されている電子部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、電子機器、及びはんだペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ部品、半導体部品などが封止樹脂に封止された電子部品においては、電子部品を外部のプリント基板に実装する2次リフロー時のはんだ再溶融を防止する必要がある。
【0003】
このように、2次リフローではんだが再溶融した場合、電子部品内のチップ部品などのはんだ付け部が再溶融し封止樹脂が剥離するという現象が起きる。そして、剥離により生じた微細な隙間を溶融したはんだが移動して電極間のショートを起こす現象が発生するという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、Cu単体からなるボールとSn系はんだを含有するはんだペースト及び該はんだペーストを用いた電子機器が提案されている。しかし、この提案の技術では、Cuボール表面の酸化膜の残留、はんだとCuボールの接触不良、並びに加熱温度及び時間不足により、Cuの拡散が円滑に行われず、はんだ溶融成分が残存し融点が変化しないで、2次リフロー時に再溶融が発生する。その結果、溶融したはんだによる電極間のショートが発生する可能性があるという問題がある。
【0005】
したがって、上記のような電極間のショートの発生を防ぐことができるはんだペースト、電子部品、及び該電子部品を用いた電子機器の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3558063号公報
【特許文献2】特許第3414388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子部品を外部のプリント配線板などにはんだ接続する際に、溶融したはんだによる電極間のショートの発生を防ぐことができるはんだペースト、電子部品、及び該電子部品を用いた電子機器を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に記載した通りである。即ち、
開示の電子部品は、電極パッドを有する配線基板と、前記配線基板に実装され、複数の電極を有する部品と、前記部品を覆う封止樹脂と、前記配線基板内の配線を、外部の基板と接続する複数の端子とを有し、前記複数の電極が、前記電極パッドとはんだにより接続されており、前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とが順に形成されている電子部品である。
開示の電子機器は、開示の電子部品を有する。
開示のはんだペーストは、はんだと、第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分、及び前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層を形成する成分を有する樹脂組成物とを含有する。
【発明の効果】
【0009】
開示の電子部品によれば、電子部品を外部のプリント配線板などにはんだ接続する際に、溶融したはんだによる電極間のショートの発生を防ぐことができる。
開示の電子機器によれば、溶融したはんだによる電極間のショートの発生が防止された電子部品を有する電子機器を得ることができる。
開示のはんだペーストによれば、電子部品をプリント配線板などにはんだ接続する際に、溶融したはんだによる電極間のショートの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のはんだペーストを用いたはんだ接続部を示す概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の電子部品の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の電子部品の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の電子部品の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の電子部品の製造工程の他の一例を説明するための概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の電子部品の製造工程の他の一例を説明するための概略断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の電子部品の製造工程の他の一例を説明するための概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を示すフロー図である。
【図5A】図5Aは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5C】図5Cは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5D】図5Dは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5E】図5Eは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5F】図5Fは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図5G】図5Gは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6C】図6Cは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6D】図6Dは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6E】図6Eは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6F】図6Fは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図6G】図6Gは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
【図7A】図7Aは、2次リフロー時に電子部品内に隙間ができた状態を示す概略断面図である。
【図7B】図7Bは、電子部品内の隙間に溶融したはんだが浸入し電極間がショートした状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(はんだペースト)
本発明のはんだペーストは、はんだと、樹脂組成物とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0012】
<はんだ>
前記はんだとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Snと、Bi及びAgの少なくともいずれかとを含有するはんだが好ましい。
前記はんだとしては、例えば、Sn−Cuはんだ、Sn−Ag−Cuはんだ、Sn−Ag−Cu−Biはんだなどが挙げられる。
前記SnとAgを含むはんだとしては、例えば、Snを主成分とし、3質量%程度のAgと0.5質量%程度のCuとを含むはんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)などが挙げられる。
前記はんだは、鉛フリーはんだであることが、環境問題の点から好ましい。
【0013】
前記はんだの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記はんだペースト100質量部に対して、80部質量部〜95質量部が好ましい。前記含有量が、80質量部未満であると、はんだの量が少なく、剥離などのはんだ接続不良が生じることがあり、95質量部を超えると、はんだペーストの塗布性が低下することがある。前記好ましい範囲内であると、接続不良及び塗布性の低下がない点で有利である。
【0014】
前記はんだは、Cu粉末を含有することが好ましい。前記Cu粉末を含有することにより、前記Cu粉末とSnが、金属間化合物を形成し、融点を上昇させ、2次リフロー時の再溶融を低下させることができる。
前記Cu粉末の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
<樹脂組成物>
前記樹脂組成物は、第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分と、第2のヤング率を有する第2の樹脂層を形成する成分とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0016】
−第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分−
前記第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0017】
前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001GPa〜0.5GPaであることが好ましい。
【0018】
前記第1の樹脂層を形成する成分は、常温において固体状樹脂であってもよいし、液体状樹脂であってもよい。
【0019】
前記第1の樹脂層を形成する成分の前記はんだペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記はんだペースト100質量部に対して、1質量部〜19質量部が好ましい。前記含有量が、1質量部未満であると、形成される樹脂層が薄くなることから、電極間のショートを十分に防ぐことができなくなることがあり、19質量部を超えると、はんだペースト中のはんだが少なくなることから、剥離などのはんだ接続不良が生じることがある。
【0020】
−第2のヤング率を有する第2樹脂層を形成する成分−
前記第2のヤング率を有する第2樹脂層を形成する成分としては、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0021】
前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率としては、前記第1のヤング率よりも大きな値であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0GPa〜30GPaであることが好ましい。
【0022】
前記第2樹脂層を形成する成分の前記はんだペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記はんだペースト100質量部に対して、1質量部〜19質量部が好ましい。前記含有量が、1質量部未満であると、形成される樹脂層が薄くなることから、電極間のショートを十分に防ぐことができなくなることがあり、19質量部を超えると、はんだペースト中のはんだが少なくなることから、剥離などのはんだ接続不良が生じることがある。
【0023】
前記第1樹脂層を形成する成分と、前記第2樹脂層を形成する成分の組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、低密度ポリエチレン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とナイロン樹脂の組合せが好ましい。
【0024】
ここで、ヤング率は、例えば、以下の方法により測定される。
JIS K 7161−1994(ISO 527−1を翻訳)に準じて測定を行う。測定装置には、インテスコ社製の精密万能材料試験機2020型を用い、試験片としてダンベル3号試験片(JIS K 7161)を用い、引張り速度20mm/分間で測定する。
樹脂層を形成する成分が、熱硬化型樹脂の場合には、前記ダンベル3号試験片(JIS K 7161)は、JIS K 7161鋳型に離型剤を塗布後、熱硬化型樹脂を流し込み、160℃で60秒間加熱することにより作製する。
樹脂層を形成する成分が、紫外線により硬化する樹脂(紫外線硬化型樹脂)の場合には、前記ダンベル3号試験片(JIS K 7161)は、JIS K 7161鋳型(ガラス製)に離型剤を塗布後、紫外線硬化型樹脂を流し込み、200mW/cmで60秒間紫外線を照射することで作製する。その際に、紫外線硬化用光源として、1,000W高圧水銀ランプ(波長は広帯域)を用いる。
【0025】
また、前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とは、紫外線により硬化する樹脂組成物により形成されることが好ましい。この場合、前記樹脂組成物としては、紫外線遮蔽材料及び紫外線硬化型樹脂を含有する紫外線により硬化する樹脂組成物であることが好ましい。
【0026】
前記紫外線遮蔽剤としては、紫外線を遮蔽できる材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボン粉末などが挙げられる。
【0027】
前記紫外線硬化型樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ポリエステル樹脂、紫外線硬化型ポリウレタン樹脂、紫外線硬化型シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、紫外線硬化型エポキシ樹脂が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロジン、活性剤、分散剤、金属吸着成分などが挙げられる。
前記活性剤としては、金属表面に存在する酸化物、硫化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩及び炭酸塩を還元して金属を清浄化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミンシュウ酸塩などが挙げられる。
前記分散剤としては、前記紫外線遮蔽材料などの粉末成分を分散することができる分散剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属吸着成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アルキルベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。前記金属吸着成分を前記第1の樹脂層を形成する成分と混合することにより、前記第1の樹脂層がはんだ表面に形成されやすくなる。
【0029】
前記はんだペーストは、例えば、チップ部品、半導体部品などの部品を封止樹脂により封止する電子部品において、配線基板上の電極パッドに印刷等により塗布されて使用される。前記電極パッドに塗布された前記はんだペースト上にチップ部品、半導体部品などの部品を載せ、加熱(1次リフロー)、及び必要に応じて紫外線照射をすると、前記電極パッドとチップ部品、半導体部品などの部品の電極とがはんだ接続されるとともに、前記はんだペースト中のはんだが主に前記配線基板の電極パッド上に溜まり、そして、前記はんだの表面には、第1の樹脂層(例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)と、第2の樹脂層(例えば、ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)とが、この順で形成される。これらの樹脂層は、相互の比重差、表面張力差、分散剤などの作用により、前記順で形成される。そして、前記配線基板上のチップ部品、半導体部品などの部品を封止樹脂により封止すると、前記はんだと封止樹脂との間には、はんだ側から、第1の樹脂層(例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)と、第2の樹脂層(例えば、ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)とが順に形成される。
封止された前記電子部品は、外部の基板に接続される。この際、前記電子部品の端子と前記基板のリード端子とが加熱(2次リフロー)によりはんだ接続される。この2次リフローの際に、前記電子部品内のはんだは溶融することがある。
その際に、電子部品内の隙間に溶融したはんだが浸入し電極間がショートすることがある。その様子を図7A〜図7Bを用いて説明する。図7Aは、2次リフロー時に電子部品内に隙間ができた状態を示す概略断面図である。図7Bは、電子部品内の隙間に溶融したはんだが浸入し電極間がショートした状態を示す概略断面図である。前記電子部品内のはんだ接続に、従来のはんだペーストを用いた場合には、配線基板1と、配線基板1上の電極パッド2と、はんだ3と、はんだ3により配線基板1に接続された部品(例えば、チップ部品)5と、部品5の電極4と、部品5を封止する封止樹脂6とを有する電子部品100において、図7Aに示すように、電子部品100を外部の基板にはんだ接続する2次リフローの際のはんだ3の溶融による体積変化(膨張)により封止樹脂6が変形等することに起因して、封止樹脂6に亀裂が生じたり、部品5と封止樹脂6の間にわずかな隙間7が生じる。そのわずかな隙間7に、溶融したはんだ3が毛細管現象などにより流れ込むことにより、図7Bに示すように、部品5の電極4間、又は、部品5同士の電極4が電気的に接続され、ショートが生じる(以下「フラッシュ現象」と称することがある)。
ところが、前記電子部品100内のはんだ接続に、前記はんだペーストを用いた場合には、図1(図1は、本発明のはんだペーストを用いたはんだ接続部を示す概略断面図である。)に示すように、前記のとおり、はんだ3と封止樹脂6との間には、はんだ3側から、第1の樹脂層(例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)8と、第2の樹脂層(例えば、ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)9とが順に形成されているため、2次リフローの際にはんだが溶融してはんだ3に体積変化(膨張)が生じても、第1の樹脂層8がはんだ3の体積変化を吸収する。更に、第2の樹脂層9があることにより、封止樹脂6による封止時に第1の樹脂層8の変形を防いでいるために、強固な接着した樹脂層が形成されている。そのため、たとえ、2次リフローによりはんだが溶融しても、はんだの体積変化(膨張)による封止樹脂の亀裂、及び部品(例えば、チップ部品)と封止樹脂の間における隙間の形成を防ぐことができ、結果、溶融したはんだによる部品の電極間、又は、部品同士の電極のショートを防止することができる。
【0030】
(電子部品)
本発明の電子部品は、配線基板と、部品と、封止樹脂と、端子とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記配線基板は、電極パッドを有している。
前記部品は、複数の電極を有し、前記複数の電極は、前記電極パッドとはんだにより接続されている。
前記はんだと前記封止樹脂との間には、前記はんだ側から、第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とが順に形成されている。
【0031】
<配線基板>
前記配線基板としては、絶縁性の基板であって、電極パッドを有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラミック基板、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。
前記配線基板の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、縦10mm〜200mm、横10mm〜200mm、厚み0.5mm〜5mmの範囲の基板などが挙げられる。
前記配線基板の部品の載置面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正方形、長方形、円形などが挙げられる。
【0032】
<部品>
前記部品としては、複数の電極を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チップ部品、半導体部品などが挙げられる。
前記部品は、前記配線基板に実装されている。
【0033】
前記チップ部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンデンサ、抵抗などが挙げられる。
前記半導体部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオードなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記部品の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1608タイプ(1.6mm×0.8mm×0.8mm)、1005タイプ(1mm×0.5mm×0.5mm)、0603タイプ(0.6mm×0.3mm×0.3mm)などが挙げられる。
【0035】
前記電子部品では、通常、前記配線基板上に複数の種類の前記部品が搭載されている。
なお、前記電子部品においては、全ての部品がはんだ接続されている必要はなく、少なくとも一部がはんだ接続されていればよく、一部にリードフレーム接続されている部品があってもよい。
【0036】
<封止樹脂>
前記封止樹脂としては、前記部品を覆う樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記封止樹脂の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0037】
前記部品を封止する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記部品を包み込むように前記熱硬化性樹脂で固めるポッティング、前記熱硬化性樹脂を用いたトランスファ成型などが挙げられる。
前記電子部品における前記封止樹脂による封止は、前記部品のみに行われていてもよいし、前記配線基板上全面に行われていてもよい。
【0038】
<端子>
前記端子としては、前記配線基板内の配線を、外部の基板と接続するための端子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リード線などが挙げられる。
前記電子部品は、前記端子を複数有している。
前記端子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、針金状などが挙げられる。
前記リード線の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金、銀、銅などが挙げられる。
【0039】
<はんだ>
前記はんだとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記はんだペーストにおけるはんだが好ましい。したがって、前記複数の電極と、前記電極パッドを接続する際には、本発明の前記はんだペーストを用いることが好ましい。そうすることで、前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、前記第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とを順に形成することが容易になる。
【0040】
<樹脂層>
−第1のヤング率を有する第1の樹脂層−
前記第1のヤング率を有する第1の樹脂層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかを含有することが好ましい。これらは、架橋していてもよい。
【0041】
前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001GPa〜0.5GPaであることが好ましい。
【0042】
前記第1の樹脂層の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記はんだの表面を覆う形状などが挙げられる。即ち、前記第1の樹脂層は、前記はんだの形状に応じた適当な形状を採りうる。なお、前記第1の樹脂層は、前記配線基板の前記電極パッドと前記部品の電極とのはんだによる接続を邪魔しないように形成されていることが好ましいため、前記電極パッドと前記はんだの間及び前記部品の電極と前記はんだの間には、前記第1の樹脂層が存在しないことが好ましい。
【0043】
前記第1の樹脂層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記第1の樹脂層は、前記配線基板上のはんだの表面を覆うようにして形成されており、その厚みは、必ずしも均一ではないが、例えば、薄い箇所で10μm以上50μm未満、厚い箇所で50μm以上100μm以下が挙げられる。
【0044】
前記第1の樹脂層のはんだに対する体積比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、はんだ接続部位において、はんだに対して、20体積%〜80体積%が好ましい。
【0045】
−第2のヤング率を有する第2の樹脂層−
前記第2のヤング率を有する第2の樹脂層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかを含有することが好ましい。これらは、架橋していてもよい。
【0046】
前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率としては、前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率よりも大きな値であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0GPa〜30GPaであることが好ましい。
【0047】
前記第2の樹脂層の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第1の樹脂層の表面を覆う形状などが挙げられる。即ち、前記第2の樹脂層は、前記第1の樹脂層の形状に応じた適当な形状を採りうる。なお、前記第2の樹脂層は、前記配線基板の前記電極パッドと前記部品の電極とのはんだによる接続を邪魔しないように形成されていることが好ましいため、前記電極パッドと前記はんだの間及び前記部品の電極と前記はんだの間には、前記第2の樹脂層が存在しないことが好ましい。
【0048】
前記第2の樹脂層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記第2の樹脂層は、前記第1の樹脂層の表面を覆うようにして形成されており、その厚みは、必ずしも均一ではないが、例えば、薄い箇所で10μm以上50μm未満、厚い箇所で50μm以上100μm以下が挙げられる。
【0049】
前記第2の樹脂層のはんだに対する体積比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、はんだ接続部位において、はんだに対して、20体積%〜80体積%が好ましい。
【0050】
また、前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とは、紫外線により硬化する樹脂組成物により形成されることが好ましい。
【0051】
前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層の組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、低密度ポリエチレン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とナイロン樹脂の組合せが好ましい。
【0052】
前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層は、それぞれ単層であってもよく、複層であってもよい。
【0053】
−樹脂層の形成方法−
前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とを順に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記はんだペーストの樹脂組成物中の成分の比重差、表面張力差、分散剤等を利用する方法、紫外線照射による方法などが挙げられる。なお、これらを複合して利用してもよい。
【0054】
−−比重差−−
前記比重差により前記樹脂層を形成する方法としては、例えば、前記はんだペーストの樹脂組成物中の第1の樹脂層を形成する成分と、第2の樹脂層を形成する成分として、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、低密度ポリエチレン樹脂とエポキシ樹脂の組合せなどを用い、それらの比重差を利用して、前記樹脂層を形成する方法が挙げられる。
通常、シリコーン樹脂の比重は、2.0超〜4.0程度であり、エポキシ樹脂の比重は、0.9〜2.0程度であるため、これらの比重差を利用して前記樹脂層を形成する。
具体例を図2A〜図2Cを用いて説明する。図2A〜図2Cは、本発明の電子部品の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。はんだ3と、第1の樹脂層(例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)を形成する成分としての固体状の熱硬化型シリコーン樹脂10と、第2の樹脂層(ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)を形成する成分としての液体状の熱硬化型エポキシ樹脂11とを含有するはんだペーストを、電極パッド2を有する配線基板1上に印刷する。この際に必要により加熱(例えば、加熱温度を80℃〜160℃とし、加熱時間を30秒間〜5分間)を行う。その後、しばらく時間を置く(例えば、15分間〜60分間)と、熱硬化型シリコーン樹脂10と熱硬化型エポキシ樹脂11との比重差により、図2Aに示すように、熱硬化型シリコーン樹脂10がはんだ3表面に積層し、その外側に、熱硬化型エポキシ樹脂11が積層される。その後、電極4を有する部品(例えば、チップ部品)5をはんだ3上に載せ、加熱(1次リフロー)を行うと、図2Bに示すように、部品5と電極パッド2がはんだ接続されるとともに、熱硬化型シリコーン樹脂10が硬化して熱硬化型シリコーン樹脂の架橋樹脂10aなり、熱硬化型エポキシ樹脂11が硬化して熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂11aなる。更に、封止樹脂6により封止することで、図2Cに示すように、はんだ3と封止樹脂6との間に、はんだ3側から、熱硬化型シリコーン樹脂の架橋樹脂(ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)10a、熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂(ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)11aが順に形成される。
なお、熱硬化型シリコーン樹脂及び熱硬化型エポキシ樹脂は、加熱(1次リフロー)の際に完全に硬化してもよく、また、加熱(1次リフロー)の際には、完全には硬化しておらず(半硬化)、封止樹脂による封止の際に完全に硬化してもよい。
【0055】
−−表面張力差−−
前記表面張力差により前記樹脂層を形成する方法としては、例えば、前記はんだペーストの樹脂組成物中の第1の樹脂層を形成する成分と、第2の樹脂層を形成する成分として、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とナイロン樹脂の組合せなどを用い、それらの表面張力差を利用して、前記樹脂層を形成する方法が挙げられる。
通常、シリコーン樹脂の表面張力は、15dyn/cm(20℃)〜30dyn/cm(20℃)程度であり、エポキシ樹脂の表面張力は、40dyn/cm(20℃)〜50dyn/cm(20℃)程度であるため、これらの表面張力差を利用して前記樹脂層を形成する。
具体的な方法としては、前記比重差の具体例と同様な方法が挙げられる。
【0056】
−−紫外線照射−−
前記紫外線照射により前記樹脂層を形成する方法としては、例えば、前記はんだペーストの樹脂組成物として、紫外線遮蔽材料及び紫外線により硬化する樹脂(紫外線硬化型樹脂)を含有する紫外線により硬化する樹脂組成物を用いる方法などが挙げられる。
具体例を図3A〜図3Cを用いて説明する。図3A〜図3Cは、本発明の電子部品の製造工程の他の一例を説明するための概略断面図である。はんだ2と、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成する成分としての紫外線硬化型エポキシ樹脂12と、紫外線遮蔽材としてのカーボン粉末13と、紫外線遮蔽材を分散させる分散剤(図示せず)とを含有するはんだペーストを、電極パッド2を有する配線基板1上に印刷する。その後、しばらく時間を置く(例えば、15分間〜60分間)と、図3Aに示すように、分散剤の作用により、カーボン粉末13が凝集して、紫外線硬化型エポキシ樹脂12の中間に偏在する。その後、電極4を有する部品(例えば、チップ部品)5をはんだ3上に載せ、加熱(1次リフロー)を行い部品5と電極パッド2をはんだ接続する。その後、紫外線照射を行うと、図3Bに示すように、はんだ3側の紫外線硬化型エポキシ樹脂12は、カーボン粉末13により紫外線が十分に届かずに、硬化率が低い架橋樹脂(第1の樹脂層;例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)12aを形成する。一方、カーボン粉末13よりも外側(照射源側)の紫外線硬化型エポキシ樹脂10は、紫外線により十分に硬化され、硬化率の高い架橋樹脂(第2の樹脂層;例えば、ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)12bを形成する。更に、封止樹脂6により封止することで、図3Cに示すように、はんだ3と封止樹脂6との間に、はんだ3側から、硬化率の低い架橋樹脂(第1の樹脂層;例えば、ヤング率が0.001GPa〜0.5GPaの樹脂層)12a、及び硬化率の高い架橋樹脂(第2の樹脂層;例えば、ヤング率が1.0GPa〜30GPaの樹脂層)12bが順に形成される。
前記紫外線照射における照射量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200mW/cm〜500mW/cmで、30秒間〜2分間照射する照射量が好ましい。
【0057】
(電子機器)
本発明の電子機器は、電子部品を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記電子部品は、本発明の前記電子部品である。
前記電子部品は、前記電子部品の端子を前記電子機器にはんだ接続することにより、前記電子機器上に搭載されている。
前記電子機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ等の演算処理装置;携帯電話機、無線機等の通信機器;プリンター、コピー機等のオフィス機器;テレビ、オーディオコンポ等のAV機器;エアコン、冷蔵庫等の家電製品などが挙げられる。
【0058】
前記電子部品及び前記電子機器の製造方法の一例を図4のフローチャート、図5A〜図5G、及び図6A〜図6Gに示す。図4は、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を示すフロー図である。図5A〜図5Gは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略断面図である。図6A〜図6Gは、本発明の電子部品、及び電子機器の製造工程の一例を説明するための概略上面図である。
まず、電極パッド21を有する配線基板20を準備する(図5A、図6A)。続いて、配線基板20にはんだペーストを印刷し、電極パッド21上にはんだ22を載せる(図5B、図6B)。印刷の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクリーン印刷などが挙げられる。そして、複数の部品23を電極パッド21上に配置する(図5C、図6C)。続いて、1次リフロー加熱を行い、部品23のはんだ接続を行う(図5D、図6D)。更に、必要により他の部品23aを実装し、続いて、リード線24を実装(図5E、図6E)した上で、必要により成形を行う。続いて、封止樹脂25による封止を行うことにより、電子部品が完成する(図5F、図6F)。
続いて、リード端子27を有するプリント基板26を準備し、プリント基板26上にはんだペーストをスクリーン印刷により塗布し、リード端子27上にはんだ28を載せる。続いて、電子部品のリード線24をプリント基板26上のリード端子27上に配置し、2次リフロー加熱を行うことにより、電子部品をプリント基板26にはんだ接続する(図5G、図6G)。更に必要な工程を重ねることにより、電子機器が完成する。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、「部」は、「質量部」を表す。
【0060】
(ヤング率の測定)
以下の実施例において記載したヤング率は、以下の方法により測定した。
JIS K 7161−1994(ISO 527−1 をそのまま翻訳)に準じて測定を行った。測定装置には、インテスコ社製の精密万能材料試験機2020型を用い、試験片としてダンベル3号試験片(JISK7161)を作製し、引張り速度20mm/分間で測定した。
熱硬化型樹脂のダンベル3号試験片(JISK7161)は、JISK7161鋳型に離型剤を塗布後、熱硬化型樹脂を流し込み、160℃で60秒間加熱することにより作製した。
紫外線硬化型樹脂のダンベル3号試験片(JISK7161)は、JISK7161鋳型(ガラス製)に離型剤を塗布後、紫外線硬化型樹脂を流し込み、200mW/cmで60秒間紫外線を照射することで作製した。その際に、紫外線硬化用光源として、1,000W高圧水銀ランプ(波長は広帯域)を用いた。
【0061】
(実施例1)
<はんだペースト1の作製>
以下の組成を混合し、はんだペースト1を作製した。
−樹脂組成物−
熱硬化型シリコーン樹脂 6.7部
(信越化学工業製、信越シリコーン KE1830)
(ヤング率0.02GPa、固体状樹脂、比重2.2)
熱硬化型エポキシ樹脂 7.7部
(日本合成化工製、アクメックスER−6761FA/B)
(ヤング率10GPa、液体状樹脂:比重1.8)
活性剤(関東化学社製、ジフェニールグアニジン臭化水素) 0.6部
−はんだ−
はんだ(千住金属工業社製、M705(SnAgCu)) 85部
なお、前記熱硬化型シリコーン樹脂は、100℃程度で加熱することにより硬化させて固体状にし、それを粉砕して平均粒径100μmの粉末として使用した。
【0062】
<電子部品の作製、及びはんだショート(フラッシュ現象)の評価>
−電子部品の作製−
配線基板(寸法:110mm×110mm×厚み1.0mm)上に、銅パターン(パッドサイズ:0.3mm×0.3mm、パッド間距離:0.2mm(ピッチ))を形成した。該配線基板上に、メタルスクリーン版とメタルスキージを用い、上記で作製したはんだペースト1を印刷した。なお、メタルスクリーン版には、パッド開口100%、版厚150μmのものを用いた。印刷されたはんだペースト上に、チップ部品(0603チップ部品、Sn電極)を載せ、非酸化雰囲気中(酸素濃度100ppm未満)、リフローピーク温度235℃でチップ部品を前記基板に実装した。
続いて、配線基板を洗浄後、封止樹脂(エポキシ接着剤)を配線基板上に塗布し、150℃で1時間加熱硬化を行った後、高温高湿下(85℃/85%RH)で放置し、電子部品を作製した。なお、リード線の接続は省略した。
作製された電子部品内では、はんだと封止樹脂との間に、はんだ側から、熱硬化型シリコーン樹脂の架橋樹脂(第1の樹脂層;ヤング率0.02GPaの樹脂層)と、熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂(第2の樹脂層;ヤング率が10GPaの樹脂層)とが順に形成されていた。
【0063】
−はんだショート(フラッシュ現象)の評価−
上記で作製した電子部品に対して、2次リフローとして、リフローピーク温度260℃で5分間加熱を行った。
2次リフロー後の電子部品を、目視で観察し、チップ部品間、及び同一部品内のはんだショートを数え、はんだショートが発生したチップ部品数を評価した。なお観察したチップ部品数は400個である。
その結果、はんだショート(フラッシュ現象)を起こしたチップ部品は1つもなかった。
【0064】
(実施例2)
<はんだペースト2の作製>
以下の組成を混合し、はんだペースト2を作製した。
−樹脂組成物−
熱硬化型シリコーン樹脂 3.6部
(信越化学工業社製、信越シリコーン KE1862)
(ヤング率0.005GPa、液体状樹脂、比重3.0)
熱硬化型シリコーン樹脂 3.6部
(信越化学工業社製、信越シリコーン KE1830)
(ヤング率0.02GPa、液体状樹脂、比重2.2)
熱硬化型エポキシ樹脂 7.7部
(日本合成化工社製、アクメックスER−6761FA/B)
(ヤング率10GPa、液体状樹脂:比重1.8)
活性剤(関東化学社製、ジフェニールグアニジン臭化水素) 0.6部
−はんだ−
はんだ(千住金属工業社製、M705(SnAgCu)) 85部
【0065】
<電子部品の作製、及びはんだショート(フラッシュ現象)の評価>
−電子部品の作製−
実施例1において、はんだペースト1を上記はんだペースト2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子部品を作製した。
作製された電子部品内では、はんだと封止樹脂との間に、はんだ側から、熱硬化型シリコーン樹脂(信越シリコーン KE1862)の架橋樹脂(第1の樹脂層;ヤング率0.005GPaの樹脂層)と、熱硬化型シリコーン樹脂(信越シリコーン KE1830)の架橋樹脂(第1の樹脂層;ヤング率が0.02GPaの樹脂層)と、熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂(第2の樹脂層;ヤング率が10GPaの樹脂層)とが順に形成されていた。
【0066】
−はんだショート(フラッシュ現象)の評価−
実施例1と同様にして、はんだショートの評価を行った。
その結果、はんだショート(フラッシュ現象)を起こしたチップ部品は1つもなかった。
【0067】
(実施例3)
<はんだペースト3の作製>
以下の組成を混合し、はんだペースト3を作製した。
−樹脂組成物−
紫外線硬化型エポキシ樹脂 12.9部
(スリーボンド社製、3113B、開始剤含有)
(固体状樹脂、比重1.13)
カーボン粉末 1.0部
(サンレックス工業社製、紫外線遮蔽材料)
粉末分散剤 0.4部
(日光ケミカルズ社製、カルボン酸(HOOC−R−COOH)等)
活性剤 0.7部
(関東化学社製、ジエチルアミン塩酸塩(HCl))
−はんだ−
はんだ(千住金属工業社製、M705(SnAgCu)) 85部
【0068】
<電子部品の作製、及びはんだショート(フラッシュ現象)の評価>
−電子部品の作製−
実施例1において、はんだペースト1を上記はんだペースト3に代え、1次リフロー後に紫外線照射を行った以外は、実施例1と同様にして、電子部品を作製した。
作製された電子部品内では、はんだと封止樹脂との間に、はんだ側から、紫外線硬化型エポキシ樹脂の不完全硬化膜、(第1の樹脂層;ヤング率が0.5GPaの樹脂層)と、紫外線硬化型エポキシ樹脂の完全硬化膜、(第2の樹脂層;ヤング率が10GPaの樹脂層)とが順に形成されていた。また、不完全硬化膜と完全硬化膜の間には、紫外線遮蔽材料としてのカーボン粉末が凝集し、層を形成していた。
【0069】
−はんだショート(フラッシュ現象)の評価−
実施例1と同様にして、はんだショートの評価を行った。
その結果、はんだショート(フラッシュ現象)を起こしたチップ部品は1つもなかった。
【0070】
(実施例4)
<はんだペーストの作製>
以下の組成を混合し、はんだペースト4を作製した。
−樹脂組成物−
熱硬化型シリコーン樹脂 6.24部
(信越化学工業社製、信越シリコーン KE1830)
(ヤング率0.02GPa、液体状樹脂、比重2.2)
熱硬化型エポキシ樹脂 5.98部
(日本合成化工社製、アクメックスER−6761FA/B)
(ヤング率10GPa、液体状樹脂:比重1.8)
金属吸着成分 0.26部
(関東化学社製、ベンゾイミダゾール、固体粉末)
活性剤 0.52部
(関東化学社製、ジエチルアミン塩酸塩(HCl))
−はんだ−
はんだ(千住金属工業社製、L23(Sn−58Bi−1.0Ag)) 87部
なお、はんだペーストを作製する際、まず金属吸着成分を熱硬化型シリコーン樹脂に混合した後に他の成分を混合した。
【0071】
<電子部品の作製、及びはんだショート(フラッシュ現象)の評価>
−電子部品の作製−
実施例1において、はんだペースト1を上記はんだペースト4に代え、かつ1次リフロー温度を160℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、電子部品を作製した。
作製された電子部品内では、はんだと封止樹脂との間に、はんだ側から、熱硬化型シリコーン樹脂の架橋樹脂(第1の樹脂層;ヤング率が0.02GPaの樹脂層)と、熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂(第2の樹脂層;ヤング率が10GPaの樹脂層)とが順に形成されていた。
【0072】
−はんだショート(フラッシュ現象)の評価−
実施例1と同様にして、はんだショートの評価を行った。
その結果、はんだショート(フラッシュ現象)を起こしたチップ部品は1つもなかった。
【0073】
(比較例1)
<はんだペースト5の作製>
以下の組成を混合し、はんだペースト5を作製した。
−樹脂組成物−
熱硬化型エポキシ樹脂 14.4部
(日本合成化工社製、アクメックスER−6761FA/B)
(ヤング率10GPa、液体状樹脂:比重1.8)
活性剤(関東化学社製、ジフェニールグアニジン臭化水素) 0.6部
−はんだ−
はんだ(千住金属工業社製、M705(SnAgCu)) 85部
【0074】
<電子部品の作製、及びはんだショート(フラッシュ現象)の評価>
−電子部品の作製−
実施例1において、はんだペースト1を上記はんだペースト5に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子部品を作製した。
作製された電子部品内では、はんだと封止樹脂との間に、熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂(ヤング率が10GPaの樹脂層)が形成されていた。
【0075】
−はんだショート(フラッシュ現象)の評価−
実施例1と同様にして、はんだショートの評価を行った。
その結果、はんだショート(フラッシュ現象)を起こしたチップ部品の割合は、24%であった。
【0076】
以上の実施例1〜4を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)電極パッドを有する配線基板と、前記配線基板に実装され、複数の電極を有する部品と、前記部品を覆う封止樹脂と、前記配線基板内の配線を、外部の基板と接続する複数の端子とを有し、前記複数の電極が、前記電極パッドとはんだにより接続されており、前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とが順に形成されていることを特徴とする電子部品。
(付記2)前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率が、0.001GPa〜0.5GPaであり、前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率が、1.0GPa〜30GPaである付記1の記載の電子部品。
(付記3)前記第1の樹脂層が、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかを含有し、前記第2の樹脂層が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかを含有する付記1から2のいずれかに記載の電子部品。
(付記4)前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層の樹脂層の組合せが、シリコーン樹脂又はその架橋樹脂とエポキシ樹脂又はその架橋樹脂の組合せ、フッ素樹脂とエポキシ樹脂又はその架橋樹脂の組合せ、低密度ポリエチレンとエポキシ樹脂又はその架橋樹脂の組合せ、及びフッ素樹脂とナイロン樹脂の組合せのいずれかである付記1から3のいずれかに記載の電子部品。
(付記5)前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とが、紫外線により硬化する樹脂組成物により形成される付記1から2のいずれかに記載の電子部品。
(付記6)前記紫外線により硬化する樹脂組成物が、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ポリエステル樹脂、紫外線硬化型ポリウレタン樹脂、及び紫外線硬化型シリコーン樹脂の少なくともいずれかを含有する付記5に記載の電子部品。
(付記7)前記はんだが、Snと、Bi及びAgの少なくともいずれかとを含有する付記1から6のいずれかに記載の電子部品。
(付記8)前記はんだが、Cu粉末を含有する付記1から7のいずれかに記載の電子部品。
(付記9)付記1から8のいずれかに記載の電子部品を有することを特徴とする電子機器。
(付記10)演算処理装置、通信機器、オフィス機、オーディオビジュアル機器、及び家電製品のいずれかである付記9に記載の電子機器。
(付記11)はんだと、第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分、及び前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層を形成する成分を有する樹脂組成物とを含有することを特徴とするはんだペースト。
(付記12)前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率が、0.001GPa〜0.5GPaであり、前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率が、1.0GPa〜30GPaである付記11に記載のはんだペースト。
(付記13)前記第1の樹脂層を形成する成分が、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかであり、前記第2の樹脂層を形成する成分が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかである付記11から12のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記14)前記第1の樹脂層を形成する成分と、前記第2の樹脂層を形成する成分の組合せが、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、フッ素樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、低密度ポリエチレン樹脂とエポキシ樹脂の組合せ、及びフッ素樹脂とナイロン樹脂の組合せのいずれかである付記11から13のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記15)前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とが、紫外線により硬化する樹脂組成物により形成される付記11から12のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記16)前記紫外線により硬化する樹脂組成物が、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ポリエステル樹脂、紫外線硬化型ポリウレタン樹脂、及び紫外線硬化型シリコーン樹脂の少なくともいずれかを含有する付記15に記載のはんだペースト。
(付記17)前記はんだが、Snと、Bi及びAgの少なくともいずれかとを含有する記11から16のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記18)前記はんだが、Cu粉末を含有する付記11から17のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記19)前記はんだの含有量が、はんだペースト100質量部に対して、80質量部〜95質量部である付記11から18のいずれかに記載のはんだペースト。
(付記20)前記第1の樹脂層を形成する成分の含有量が、はんだペースト100質量部に対して、1質量部〜19質量部であり、前記第2の樹脂層を形成する成分の含有量が、はんだペースト100質量部に対して、1質量部〜19質量部である付記11から19のいずれかに記載のはんだペースト。
【符号の説明】
【0077】
1 配線基板
2 電極パッド
3 はんだ
4 電極
5 部品
6 封止樹脂
7 隙間
8 第1の樹脂層
9 第2の樹脂層
10 熱硬化型シリコーン樹脂
10a 熱硬化型シリコーン樹脂の架橋樹脂
11 熱硬化型エポキシ樹脂
11a 熱硬化型エポキシ樹脂の架橋樹脂
12 紫外線硬化型エポキシ樹脂
12a 硬化率が低い架橋樹脂
12b 硬化率の高い架橋樹脂
13 カーボン粉末
20 配線基板
21 電極パッド
22 はんだ
23 部品
23a 部品
24 リード線
25 封止樹脂
26 基板
27 リード端子
28 はんだ
100 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パッドを有する配線基板と、
前記配線基板に実装され、複数の電極を有する部品と、
前記部品を覆う封止樹脂と、
前記配線基板内の配線を、外部の基板と接続する複数の端子とを有し、
前記複数の電極が、前記電極パッドとはんだにより接続されており、
前記はんだと前記封止樹脂との間に、前記はんだ側から、第1のヤング率を有する第1の樹脂層と、前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層とが順に形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率が、0.001GPa〜0.5GPaであり、
前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率が、1.0GPa〜30GPaである請求項1の記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1の樹脂層が、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかを含有し、
前記第2の樹脂層が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかを含有する請求項1から2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1の樹脂層と、前記第2の樹脂層とが、紫外線により硬化する樹脂組成物により形成される請求項1から2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記はんだが、Snと、Bi及びAgの少なくともいずれかとを含有する請求項1から4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記はんだが、Cu粉末を含有する請求項1から5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電子部品を有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
はんだと、
第1のヤング率を有する第1の樹脂層を形成する成分、及び前記第1のヤング率よりも大きな値の第2のヤング率を有する第2の樹脂層を形成する成分を有する樹脂組成物とを含有することを特徴とするはんだペースト。
【請求項9】
前記第1の樹脂層の前記第1のヤング率が、0.001GPa〜0.5GPaであり、
前記第2の樹脂層の前記第2のヤング率が、1.0GPa〜30GPaである請求項8に記載のはんだペースト。
【請求項10】
前記第1の樹脂層を形成する成分が、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、及びゴム系樹脂の少なくともいずれかであり、
前記第2の樹脂層を形成する成分が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、高密度ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリスチレン、及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかである請求項8から9のいずれかに記載のはんだペースト。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−216678(P2012−216678A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80836(P2011−80836)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】