説明

電気自動車のバッテリユニット取付構造

【課題】電気自動車のバッテリユニット取付部を補強することができるバッテリ取付構造を提供する。
【解決手段】バッテリユニット14を支持する桁部材102が車体11のサイドメンバ31に固定されている。サイドメンバ31にはナット部材155と補強部材302が設けられている。サイドメンバ31の下方からボルト157がナット部材155に挿入される。補強部材302は、第1プレート部311と第2プレート部312とを有している。第1プレート部311は、折曲部330,331を境に折曲された一対のフランジ325,326を有している。折曲部330,331の位置は、サイドメンバ31の側壁36,37間の距離Sに応じて調整されている。フランジ325,326はサイドメンバ31の側壁36,37に溶接される。第2プレート部312は、ナット部材155の下端に溶接された基部340と、ナット部材155に沿う起立部341とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の電源であるバッテリユニットを車体に固定するためのバッテリユニット取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、走行距離を可能な限り長くするために、大形のバッテリユニットを搭載することが望まれる。このためバッテリユニットが例えば100kgwを越える大きな重量となることがある。このように重量の大きなバッテリユニットを車体のサイドメンバに確実に固定するには、サイドメンバのバッテリユニット取付部の強度を高めることが重要である。
【0003】
バッテリユニットを車体のサイドメンバに固定するために、例えば下記特許文献1に開示されているように、サイドメンバ(サイドフレーム)の内部に補強部材を設け、この補強部材の上に溶接ナットを設け、車体の下方から前記ナットにボルトを螺合させて締付けることにより、バッテリユニットをサイドメンバに固定するバッテリ支持構造が提案されている。
【特許文献1】特開平10−129277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリユニットは、サイドメンバの複数個所に荷重を分散させて支持することが望まれる。このためバッテリユニットは、サイドメンバの複数個所に設けられたバッテリユニット取付部に固定される。しかしサイドメンバは、必要とされる剛性や周囲部材との関係で、一般に断面形状が車体の前後方向に変化しているのが通例である。
【0005】
このためサイドメンバの前後方向の複数個所に設けるバッテリユニット取付部のそれぞれに前記補強部材を配置すると、バッテリユニット取付部の位置によっては断面形状の相違により、共通の補強部材を用いることができないことがある。このため複数種類の補強部材を製造する必要があり、その分、部品の種類が多くなり、製造コストが高くつくだけでなく部品の管理に手間がかかるなどの問題が生じる。
【0006】
従って本発明の目的は、サイドメンバのバッテリユニット取付部の強度を高めることができ、しかも部品の共通化を図ることができる電気自動車のバッテリユニット取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気自動車のバッテリユニットを車体に固定するためのバッテリユニット取付構造であって、前記車体の前後方向に延びる一対のサイドメンバ間にわたって車体の幅方向に配置され前記バッテリユニットを支持する桁部材と、前記サイドメンバ内に配置され上下方向に延びる筒状のナット部材(パイプナット)と、前記ナット部材に前記サイドメンバの下方から挿入されて前記桁部材の締結部を前記サイドメンバの下面に固定するボルトと、前記サイドメンバの内部の前記ナット部材と対応した位置に設けられた補強部材とを有し、前記補強部材は、前記サイドメンバの一対の側壁間に配置される第1プレート部と、前記サイドメンバの底壁の上に配置される第2プレート部とを有し、前記第1プレート部は、前記ナット部材の上部が固定され車体の幅方向に延びる連結壁と、該連結壁の両側において前記サイドメンバの前記側壁間の距離に応じた位置で折曲されかつ前記サイドメンバの前記側壁に溶接される一対のフランジとを有し、前記第2プレート部は、前記ナット部材の下端が固定されかつ前記サイドメンバの底壁に固定される基部と、前記第1プレート部に固定される上端部と、前記基部と前記上端部との間に設けられて上下方向に延びる起立部とを有している。
【0008】
本発明の1つの形態では、前記第2プレートの前記基部は、前記車体の前後方向に沿って延び、かつ、上方から見た平面視において、前記基部の端が前記第1プレート部の端から前記車体の前後方向に突出するように形成されている。
【0009】
さらに本発明の他の形態では、前記補強部材の前記連結壁に、車体の幅方向に沿う断面が非直線形状(例えばU形、V形、波形等)となるように成形された変形ビードである塑性加工部が前記車体の前後方向に沿って形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイドメンバの内部のナット部材と対応した位置に設けられた前記補強部材によって、車体の幅方向に入力する荷重に対してサイドメンバのバッテリユニット取付部の強度を高めることができる。またサイドメンバの断面に応じて側壁間の距離が異なる部位に前記補強部材を取付ける場合には、補強部材の折曲部の位置を調整することにより、サイドメンバの側壁間の距離に適合させることができる。このためサイドメンバの断面が互いに異なる複数のバッテリユニット取付部に前記補強部材を設ける場合に、補強部材の部品共通化を図ることができる。
【0011】
また前記第2プレートの基部が車体の前後方向に沿って延び、かつ、前記基部の端が前記第1プレート部の端から前記車体の前後方向に突出するように形成されている場合には、前記第2プレートの基部とサイドメンバの底壁とを溶接する際に、スポット溶接用のガンが前記補強部材と干渉することを回避できる。このため特殊な溶接用の電極部材を使用することなく、第2プレートの基部とサイドメンバの底壁とを溶接することができる。つまり溶接のために多額の設備費をかけることなく生産性を確保できる。
【0012】
前記補強部材の連結壁に前記塑性加工部が形成されていれば、前記連結壁の剛性を調整することができる。例えば車体の横方向に大きな荷重が入力したときに、前記塑性加工部が変形しエネルギーの一部を吸収することにより、前記補強部材の溶接部等がサイドメンバの側壁から剥離するような応力集中を抑制することができ、バッテリユニット取付部の構造健全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は電気自動車10の一例を示している。この電気自動車10は、車体11の後部に配置された走行用のモータ12および充電装置13と、車体11の床下に配置されるバッテリユニット14などを備えている。車体11の前部に冷暖房用の熱交換ユニット15が配置されている。
【0014】
図2は、前記車体11の下部の骨格をなすフレーム構体30と、このフレーム構体30に取付けられる前記バッテリユニット14とを示している。フレーム構体30は、車体11の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ31,32と、車体11の幅方向に延びるクロスメンバ33,34,35とを含んでいる。クロスメンバ33,34,35は、サイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。
【0015】
車体11の一部をなすサイドメンバ31,32は、互いに車体11の幅方向に離間して配置されている。各サイドメンバ31,32は、それぞれ、左右一対の側壁36,37と、これら側壁36,37の下端どうしをつなぐ底壁38と、側壁36,37の上端に形成されたフランジ39とを有し、上面側が開口するハット形断面をなしている。これらサイドメンバ31,32の上面に下記フロアパネル70が接合されるため、サイドメンバ31,32は閉断面を形成することになる。
【0016】
サイドメンバ31,32の後部にサスペンションアームサポートブラケット40,41が設けられている。サスペンションアームサポートブラケット40,41は、それぞれサイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。サスペンションアームサポートブラケット40,41に枢軸部42が設けられている。これら枢軸部42に、リヤサスペンションの一部をなすトレーリングアームの前端部が取付けられている。
【0017】
図3に示すようにバッテリユニット14はバッテリケース50を備えている。バッテリケース50は、下側に位置するトレイ部材51と、上側に位置するカバー部材52とを備えている。
【0018】
トレイ部材51は、電気絶縁性を有する樹脂によって一体成形された樹脂部53と、補強用の金属プレート製のインサート部材53a(図7に一部を示す)などによって構成されている。樹脂部53の材料である樹脂は、例えばポリプロピレンからなる基材を、数mm〜数cm程度の長さの短ガラス繊維によって強化したものである。
【0019】
トレイ部材51は、前壁51aと、後壁51bと、左右一対の側壁51c,51dと、底壁51eと、仕切り壁51fとを有し、上面側が開放した箱形に成形されている。トレイ部材51の側壁51c,51dは、サイドメンバ31,32に沿って配置されている。前壁51aと、後壁51bと、側壁51c,51dとによって、トレイ部材51の周壁54が構成されている。周壁54と底壁51eと仕切り壁51fは一体に成形されている。
【0020】
バッテリケース50の前半部に、前側バッテリ収納部55が形成されている。バッテリケース50の後半部に、後側バッテリ収納部56が形成されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に、中央バッテリ収納部57と、電気回路収納部58などが形成されている。
【0021】
バッテリ収納部55,56,57に、それぞれバッテリモジュール60(図3に一部を2点鎖線で示す)が収納されている。バッテリモジュール60はトレイ部材51の底壁51eの上に配置されている。電気回路収納部58には、バッテリモジュール60の状態を検出するモニタや制御等をつかさどる電気部品61などが収納される。電気部品61はバッテリモジュール60に電気的に接続されている。バッテリモジュール60は、それぞれ、複数個のバッテリセルを直列に接続することによって構成されている。
【0022】
図4に示すように、バッテリユニット14はフロアパネル70の下面側に配置されている。フロアパネル70は車体11の前後方向と幅方向に延び、車体11の床部を構成している。フロアパネル70は、サイドメンバ31,32を含むフレーム構体30の所定位置に溶接によって固定されている。
【0023】
フロアパネル70の上方にフロントシート71(図1に示す)とリヤシート72が配置されている。フロントシート71の下方に、バッテリユニット14の前側バッテリ収納部55が配置されている。リヤシート72の下方に、バッテリユニット14の後側バッテリ収納部56が配置されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に形成されたフロアパネル70の凹部70aは、リヤシート72に着座した乗員の足元スペース付近に位置する。
【0024】
バッテリケース50のトレイ部材51の周縁部に、カバー取付面80(図3に示す)が形成されている。カバー取付面80は、トレイ部材51の全周にわたって連続している。トレイ部材51とカバー部材52との接合部82の周縁部に、防水用のシール材81が設けられている。
【0025】
バッテリケース50のカバー部材52は、繊維によって強化された合成樹脂の一体成形品からなる。カバー部材52の前部に、サービスプラグ用の開口部85と冷却風導入口86が形成されている。サービスプラグ用の開口部85に蛇腹状のブーツ部材87が取付けられている。冷却風導入口86にも蛇腹状のブーツ部材88が取付けられている。カバー部材52の上面に、冷却風の一部を流すためのバイパス流路部90と、冷却ファン収納部91などが設けられている。
【0026】
カバー部材52の周縁部にフランジ部95が形成されている。フランジ部95はカバー部材52の全周にわたって連続している。トレイ部材51の上にカバー部材52を乗せるとともに、トレイ部材51のカバー取付面80と、カバー部材52のフランジ部95とを互いに重ねる。そしてカバー部材52の上方からナット部材97を埋込みボルト98に螺合させ、ナット部材97を締付ける。また、カバー部材52の上方からボルト部材96を埋込みナット99に螺合させ、ボルト部材96を締付ける。このようにして、トレイ部材51とカバー部材52とが、互いにシール材81を介して水密に固定される。
【0027】
トレイ部材51の下面側に複数本(例えば4本)の桁部材101,102,103,104が設けられている。またバッテリユニット14の下方にアンダーカバー110(図4と図5に示す)が配置されている。アンダーカバー110は、車体11の下側からボルト(図示せず)によって、フレーム構体30と桁部材101,102,103,104の少なくとも一部に固定される。
【0028】
図3と図5に示されるように、桁部材101,102,103,104は、それぞれ車体11の幅方向に延びる桁本体111,112,113,114を有している。桁本体111,112,113,114は、バッテリユニット14の荷重を支えるに足る強度を有する金属材料(例えば鋼板)によって構成されている。
【0029】
前から1番目の桁本体111の両端に締結部121,122が設けられている。前から2番目の桁本体112の両端に締結部123,124が設けられている。前から3番目の桁本体113の両端に締結部125,126が設けられている。前から4番目(最後部)の桁本体112の両端に締結部127,128が設けられている。バッテリユニット14の前端部には左右一対の前側支持部材130,131が設けられている。
【0030】
前から1番目の桁部材101の両端に設けられた締結部121,122に、上下方向に貫通するボルト挿入孔143(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部121,122と対向する位置に、それぞれ、ナット部材145,146を備えたバッテリユニット取付部が設けられている。これらナット部材145,146は、上下方向に延びる筒状のナット(いわゆるパイプナット)である。サイドメンバ31,32のナット部材145,146が設けられている個所がバッテリユニット取付部である。
【0031】
締結部121,122の下側から、それぞれボルト147(図2と図4に示す)をボルト挿入孔143に挿入し、ナット部材145,146に螺合させ締付けることによって、1番目の桁部材101の締結部121,122がサイドメンバ31,32の下面に固定される。
【0032】
前から2番目の桁部材102の両端に設けられた締結部123,124に、上下方向に貫通するボルト挿入孔153(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部123,124と対向する位置に、それぞれ、ナット部材155,156を備えたバッテリユニット取付部が設けられている。ナット部材155,156は、上下方向に延びる筒状のナット(いわゆるパイプナット)である。サイドメンバ31,32のナット部材155,156が設けられている個所がバッテリユニット取付部である。
【0033】
締結部123,124の下側から、それぞれボルト157(図2と図4に示す)をボルト挿入孔153に挿入し、ナット部材155,156に螺合させ締付けることによって、2番目の桁部材102の締結部123,124がサイドメンバ31,32の下面に固定される。
【0034】
前から3番目の桁部材103の両端に設けられた締結部125,126に、上下方向に貫通するボルト挿入孔163(図2と図3に示す)が形成されている。図4と図5に示されるように、サイドメンバ31,32に荷重伝達部材170,171がボルト172によって固定されている。これら荷重伝達部材170,171は、前から3番目の桁部材103の締結部125,126の上方に設けられている。一方の荷重伝達部材170は、一方のサスペンションアームサポートブラケット40に溶接されている。他方の荷重伝達部材171は、他方のサスペンションアームサポートブラケット41に溶接されている。
【0035】
すなわち荷重伝達部材170,171は、サイドメンバ31,32と、サスペンションアームサポートブラケット40,41とに結合されている。これら荷重伝達部材170,171は、フレーム構体30の一部をなしている。荷重伝達部材170,171に、ナット部材175,176を備えたバッテリユニット取付部が設けられている。ナット部材175,176は、上下方向に延びる筒状のナット(いわゆるパイプナット)である。
【0036】
締結部125,126の下側から、ボルト177をボルト挿入孔163に挿入し、ナット部材175,176に螺合させ締付けることによって、3番目の桁部材103の締結部125,126が、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32の下面に固定される。
【0037】
前から4番目の桁部材104の締結部127,128のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔193(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部127,128と対向する位置に、延長ブラケット194,195が設けられている。延長ブラケット194,195はサイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に延びている。延長ブラケット194,195は、フレーム構体30の一部をなしている。これら延長ブラケット194,195に、ナット部材196,197を備えたバッテリユニット取付部が設けられている。
【0038】
締結部127,128の下側から、ボルト198(図2と図4に示す)をボルト挿入孔193に挿入し、ナット部材196,197に螺合させ締付けることによって、4番目の桁部材104の締結部127,128が延長ブラケット194,195を介してサイドメンバ31,32の下面に固定される。
【0039】
図4に示すように、桁部材101,102,103,104の下面は、トレイ部材51の平坦な下面に沿って、水平方向に延びる同一平面L上に位置している。1番目と2番目の桁部材101,102は、サイドメンバ31,32の水平部分31a,32aに固定されている。3番目の桁部材103は、キックアップ部31b,32bの下方において、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32に固定されている。4番目の桁部材104は、延長ブラケット194,195を介してサイドメンバ31,32に固定されている。
【0040】
バッテリユニット14の前端に位置する前側支持部材130,131は、前から1番目の桁部材101の前方に突出している。前側支持部材130,131は、この桁部材101に結合されている。図2に示すように、クロスメンバ33にナット部材213,214を有するバッテリユニット取付部が設けられている。前側支持部材130,131の締結部210,211は、車体11の下側からボルト212をナット部材213,214に螺合させ締付けることによって、クロスメンバ33の下面に固定されている。
【0041】
このように本実施形態の電気自動車10は、桁部材101,102,103,104が左右のサイドメンバ31,32間にわたって設けられ、これら桁部材101,102,103,104によってサイドメンバ31,32どうしが結合されている。このためバッテリユニット14の桁部材101,102,103,104がクロスメンバに相当する剛性部材として機能することができる。
【0042】
また、サスペンションアームサポートブラケット40,41に入力する横方向の荷重が荷重伝達部材170,171を介して桁部材103に入力される。このため,サスペンションアームサポートブラケット40,41付近にクロスメンバが配置されていなくても、サスペンションアームサポートブラケット40,41付近の剛性を桁部材103によって高めることができ、操縦安定性と乗り心地が向上する。言い換えると、大形のバッテリユニット14の一部を左右一対のサスペンションアームサポートブラケット40,41間のスペースに配置することが可能である。このため、大形のバッテリユニット14を搭載することが可能となり、電気自動車の走行距離を長くすることができる。
【0043】
図5と図6に示されるように、サイドメンバ31,32には、前から1番目の桁部材101の締結部121,122を固定するための前記ナット部材145,146と同じ位置に、それぞれ補強部材301が設けられている。
【0044】
さらに補強部材301の後方で、前から2番目の桁部材102の締結部123,124を固定するためのナット部材155,156と同じ位置に、それぞれ補強部材302が設けられている。各ナット部材145,146,155,156は、補強部材301,302を介して、サイドメンバ31,32に固定されている。
【0045】
一方のサイドメンバ31に設ける補強部材301,302の構成と、他方のサイドメンバ32に設ける補強部材301,302の構成とは、互いに同等である。このため図7と図8に示す一方の補強部材302を代表して以下に説明する。
【0046】
補強部材302は、サイドメンバ31の側壁36,37間に配置される第1プレート部311と、サイドメンバ31の底壁38の上に配置される第2プレート部312とによって構成されている。バルクヘッドを兼ねる第1プレート部311は、第2プレート部312の上側に位置している。これら第1プレート部311と第2プレート部312はいずれも金属板からなり、プレス加工によって下記の形状に成形されている。なお、1枚の金属板を折曲げることによって第1プレート部311と第2プレート部312とを形成してもよい。
【0047】
第1プレート部311は、サイドメンバ31の側壁36,37間にわたる連結壁320を有している。連結壁320は車体11の幅方向に延びている。連結壁320の長さS(図7に示す)は、サイドメンバ31の側壁36,37間の距離に対応している。この連結壁320に形成された孔321に、筒状のナット部材(パイプナット)155が挿入されている。ナット部材155は、上下方向に延びる軸線X(図8に示す)を有し、サイドメンバ31の底壁38の上に配置されている。ナット部材155の上部がアーク溶接等の溶接部322によって連結壁320に固定されている。
【0048】
第1プレート部311の両側部を折曲部330,331において上向きに折曲げることにより、一対のフランジ325,326が形成されている。これらフランジ325,326は、折曲部330,331を境に連結壁320の両側に位置している。言い換えると、サイドメンバ31の側壁36,37間の距離S(図7に示す)に応じて、折曲部330,331の位置を調整することによって、フランジ325,326間の距離が調整されている。
【0049】
このため側壁36,37間の距離Sがサイドメンバ31の断面に応じて変化しても、折曲部330,331の位置を調整することにより、側壁36,37間の距離Sに対応することができる。フランジ325,326は、スポット溶接等の溶接部332によって、サイドメンバ31の側壁36,37に固定される。
【0050】
第2プレート部312は、ナット部材155の下端が固定される基部340と、基部340の一端から立ち上がる起立部341と、起立部341の上端に設けられた上端部342とを有している。上端部342は、第1プレート部311の連結壁320の下面に、スポット溶接等の溶接部343によって固定されている。
【0051】
基部340には、ナット部材155の下端がアーク溶接等の溶接部350によって固定されている。基部340は、スポット溶接等の溶接部351によって、サイドメンバ31の底壁38に固定される。基部340には、ナット部材155のねじ孔155aと対応した位置に、貫通孔355(図6に示す)が形成されている。起立部341は基部340と上端部342との間に設けられていて、ナット部材155の軸線Xとほぼ平行な方向(上下方向)に延びている。
【0052】
以上のように構成された補強部材302は、サイドメンバ31に溶接する前に、予め第1プレート部311と第2プレート部312とを溶接部343において溶接しておく。またナット部材155を溶接部322,350において、第1プレート部311と第2プレート部312に溶接しておく。
【0053】
こうしてサブアッセンブリ化された補強部材302がサイドメンバ31の側壁36,37間に挿入される。補強部材302の基部340がサイドメンバ31の底壁38の上に乗ると、起立部341の高さに応じた位置にフランジ325,326が仮に止まる。この状態でサイドメンバ31の側壁36,37間にスポット溶接用のガンを挿入する。そして第1プレート部311のフランジ325,326とサイドメンバ31の側壁36,37とを溶接部332においてスポット溶接する。また側壁36,37間に挿入されたスポット溶接用のガン400(図6に示す)によって、第2プレート部312の基部340とサイドメンバ31の底壁38とが、溶接部351においてスポット溶接用される。
【0054】
上記のように補強部材302がサイドメンバ31の所定位置に固定されるとともに、補強部材302を介してナット部材155がサイドメンバ31の所定位置に固定される。なお、他方の締結部124を固定するためのナット部材156も、補強部材302によって、サイドメンバ32の所定位置に固定される。前から1番目の桁部材101の締結部121,122を固定するためのナット部材145,146は、前記補強部材302と同様に構成された補強部材301によって、それぞれサイドメンバ31,32の所定位置に固定される。
【0055】
図6に示されるように、ナット部材145から第2プレート部312の基部340の起立部341とは反対側の端340aまでの距離L1は、ナット部材145から第1プレート部311の端311aまでの距離L2よりも大きい。従って、この補強部材301を上方から見た平面視において、第2プレート部312の基部340の端340aは、第1プレート部311の端311aから車体の前後方向に所定長さL3だけ突出している。
【0056】
すなわち第2プレート部312の基部340の端340aが、第1プレート部311の端311aに対し、オフセット量L3だけ突き出ている。そのためスポット溶接用のガン(電極部材)400が容易にサイドメンバ31の底壁38と第2プレート部312の基部340とを挟むことができ、特殊な電極部材を用いることなく、溶接部351をスポット溶接することが可能である。なお、他方の補強部材302も前記補強部材301と同様にスポット溶接によってサイドメンバ31に溶接される。
【0057】
例えば図7に示すバッテリユニット取付部おいて、走行中に車体11の幅方向Wに大きな荷重が入力し、車体11がねじれるなどの変形が生じたとする。この場合、サイドメンバ31には、大重量のバッテリユニット14が桁部材102の締結部123を介して、ボルト157によって固定されている。このため、ナット部材155とボルト157に横方向の大きな荷重が入力する。
【0058】
しかるに本実施形態のナット部材155は、補強部材302によってサイドメンバ31に固定されている。補強部材302の連結壁320は、サイドメンバ31のバッテリユニット取付部の剛性を高めるためのバルクヘッドとして機能する。またナット部材155の上部が連結壁320によってサイドメンバ31の側壁36,37に支持されている。このため、横方向の荷重が加わったときにナット部材155が倒れることが抑制される。
【0059】
このためナット部材155が設けられているサイドメンバ31のバッテリユニット取付部は、横方向から入力する荷重に対して大きな強度を発揮することができる。すなわちナット部材155やボルト157がサイドメンバ31のバッテリユニット取付部から外れることを、補強部材302によって防止することができ、桁部材102とサイドメンバ31との締結状態を維持することができる。なお、前記以外の締結部121,122,124を固定するためのナット部材145,146,156も、補強部材301,302によって、横方向の荷重に対して大きな強度を発揮することができる。
【0060】
サイドメンバ31,32の断面が前後方向に変化しているため、一方の補強部材301を設ける部位と、他方の補強部材302を設ける部位とで、サイドメンバ31,32の側壁36,37間の距離S(図7に示す)が異なる場合がある。
【0061】
しかし本実施形態の補強部材301,302は、折曲部330,331間の距離を、側壁36,37間の距離Sに応じて調整することにより、共通の金属材料からなる第1プレート部311を使用することが可能であり、補強部材301,302の部品の共通化を図ることができる。また、第2プレート部312の上端部342の折曲げ位置を変えて起立部341の高さを調節することにより、基部340からフランジ325,326までの高さを調節することも可能である。
【0062】
なお前記補強部材301,302を、前記以外の桁部材103,104の締結部125,126,127,128を固定するためのバッテリユニット取付部や、前側支持部材130,131の締結部210,211を固定するためのバッテリユニット取付部に適用してもよい。
【0063】
図9と図10は、補強部材302の他の例を示している。図10に示す補強部材302は、第1プレート部311の連結壁320に、連結壁320の剛性を調整するために塑性加工部360が形成されている。塑性加工部360は、車体の幅方向に沿う断面が非直線形状(例えばU形、V形、または波形等)の変形ビードである。それ以外の構成は前記実施形態(図6〜図8)の補強部材301,302と同様に構成されている。
【0064】
図9に示すように車体11の幅方向Wに荷重が入力したときに、補強部材302の塑性加工部360が変形することにより、エネルギーの一部が吸収される。このため、第1プレート部311の溶接部332(図10に示す)がサイドメンバ31の側壁36,37から剥離するような応力集中を生じることが緩和され、補強部材302が側壁36,37から剥離することを抑制できる。なお、他方の補強部材301(図6に示す)にも前記塑性加工部360を形成することにより、横方向からの荷重に対して補強部材301が側壁36,37から剥離することを抑制できる。
【0065】
なお前記実施形態では車体後部に走行用モータが搭載された電気自動車について説明したが、本発明は走行用モータが車体前部に配置された電気自動車にも適用することができる。また本発明を実施するに当たって、バッテリユニット、サイドメンバ、桁部材、補強部材、ボルトおよびナット部材をはじめとして、発明の構成要素の構造及び配置を適宜に変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係るバッテリユニットを有する電気自動車の斜視図。
【図2】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの斜視図。
【図3】図2に示されたバッテリユニットのトレイ部材とカバー部材および桁部材の斜視図。
【図4】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの側面図。
【図5】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの平面図。
【図6】図5中のF6−F6線に沿うサイドメンバの断面図。
【図7】図5中のF7−F7線に沿うバッテリユニットと車体の一部の断面図。
【図8】図7に示された補強部材の斜視図。
【図9】補強部材の他の例を示すバッテリユニットと車体の一部の断面図。
【図10】図9に示された補強部材の斜視図。
【符号の説明】
【0067】
10…電気自動車
11…車体
14…バッテリユニット
31,32…サイドメンバ
36,37…側壁
38…底壁
101,102,103,104…桁部材
145,146,155,156…ナット部材
301,302…補強部材
311…第1プレート部
312…第2プレート部
320…連結壁
325,326…フランジ
330,331…折曲部
340…基部
341…起立部
342…上端部
360…塑性加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のバッテリユニットを車体に固定するためのバッテリユニット取付構造であって、
前記車体の前後方向に延びる一対のサイドメンバ間にわたって車体の幅方向に配置され前記バッテリユニットを支持する桁部材と、
前記サイドメンバ内に配置され上下方向に延びる筒状のナット部材と、
前記ナット部材に前記サイドメンバの下方から挿入されて前記桁部材の締結部を前記サイドメンバの下面に固定するボルトと、
前記サイドメンバの内部の前記ナット部材と対応した位置に設けられた補強部材とを有し、
前記補強部材は、
前記サイドメンバの一対の側壁間に配置される第1プレート部と、
前記サイドメンバの底壁の上に配置される第2プレート部とを有し、
前記第1プレート部は、前記ナット部材の上部が固定され車体の幅方向に延びる連結壁と、該連結壁の両側において前記サイドメンバの前記側壁間の距離に応じた位置で折曲されかつ前記サイドメンバの前記側壁に溶接される一対のフランジとを有し、
前記第2プレート部は、前記ナット部材の下端が固定されかつ前記サイドメンバの底壁に固定される基部と、前記第1プレート部に固定される上端部と、前記基部と前記上端部との間に設けられて上下方向に延びる起立部とを有していることを特徴とする電気自動車のバッテリユニット取付構造。
【請求項2】
前記第2プレートの前記基部は、前記車体の前後方向に沿って延び、かつ、上方から見た平面視において、前記基部の端が前記第1プレート部の端から前記車体の前後方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のバッテリユニット取付構造。
【請求項3】
前記補強部材の前記連結壁に、車体の幅方向に沿う断面が非直線形状となるように成形された塑性加工部が前記車体の前後方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気自動車のバッテリユニット取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−143446(P2009−143446A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323729(P2007−323729)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】