説明

鞍乗型車両、パワーユニットおよび無段変速機

【課題】発進時のドライバビリティを十分確保し得る鞍乗型車両を提供することである。
【解決手段】鞍乗型車両100は、無段変速機30を制御する制御装置10を備えている。制御装置10は、複数の走行モード「A」及び「B」が設定されており、エンジンの始動前に複数の走行モードのうちの所定の走行モード「A」に切り替える第1制御と、モード切替操作子の操作に応じて複数の走行モード「A」及び「B」を相互に切り替える第2制御と、エンジンが未始動の状態を検出した場合に、第2制御を制限して、所定の走行モード「A」から他の走行モード「B」への切り替えを禁止する第3制御とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両(例えば、自動二輪車)、パワーユニットおよび無段変速機に関し、特に、電子制御された無段変速機が搭載された鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
スクータ型の自動二輪車等の鞍乗型車両には、広くVベルト式無段変速機が使われている。このVベルト式無段変速機は、エンジン等の動力源の出力が入力されるプライマリ軸と、駆動輪への出力を取り出すセカンダリ軸とにそれぞれ配された溝幅可変の一対のプライマリシーブ及びセカンダリシーブで構成され、両シーブにVベルトが巻き掛けられている。当該Vベルト式無段変速機は、溝幅調節機構により各シーブの溝幅を変えることで、Vベルトの各シーブに対する巻掛け径が調節され、それにより両シーブ間での変速比が無段階的に調節される。
【0003】
通常、前記プライマリシーブ及びセカンダリシーブは、相互間にV溝を形成する固定フランジ及び可動フランジとから構成され、各可動フランジがプライマリ軸又はセカンダリ軸の軸線方向に移動自在に設けられている。そして、溝幅調節機構により可動フランジを移動することによって、変速比を無段階に調節できる。
【0004】
従来、この種のVベルト式無段変速機として、溝幅調節のためのプライマリシーブの可動フランジの移動を電動モータで行うようにしたものがある。電動モータの移動推力により、プライマリシーブの溝幅を狭める方向(Top側)、及び溝幅を広げる方向(Low側)のいずれの方向にも可動フランジを移動することができるので、溝幅を自由に調節することができる(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特許第3043061号公報
【特許文献2】特許第2950957号公報
【特許文献3】特開平7ー119804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Vベルト式の自動無段変速機を電子制御する機構を備えたスクータ型の自動二輪車では、ライダーの操作を必要とすることなく、車速とエンジン回転速度に対して予め入力されたプログラム(マップ)に基づいて変速比を自動的に変更する。このため、ライダーによる走行操作が容易であり、現在では様々な車種にこの自動無段変速機を適用することが試みられている。
【0006】
ところで、このような無段変速機が搭載された車両で下り坂道を走行する際、エンジンを切った状態で下り坂を惰性で下る場合がある。このとき、車両のスピードに対応して変速比が変化する機構の場合には、ある程度スピードが出た状態でエンジンを始動すると、即座にクラッチ係合する場合があり、その際、ライダーの操作と実際の車両の加速動作との間に違和感が生じるという問題が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鞍乗型車両は、エンジンと、当該エンジンに接続された無段変速機と、当該無段変速機を制御する制御装置とを備えている。当該鞍乗型車両は、モード切替操作子を備え、制御装置には、複数の走行モードが設定されている。制御装置は、エンジンの始動前に、複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える第1制御を実行する。また、制御装置は、モード切替操作子の操作に応じて複数の走行モードを相互に切り替える第2制御を実行する。さらに、制御装置は、エンジンが未始動であることを検出した場合に、第2制御を制限して、所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する第3制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御装置は、エンジンの始動前に、複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える第1制御と、モード切替操作子の操作に応じて複数の走行モードを相互に切り替える第2制御と、エンジンが未始動であることを検知した場合に、第2制御を制限して、所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する第3制御とを実行するので、エンジン始動時の走行モードを予め定められた所定の走行モードに固定することができ、常に同一の走行モードで走行を開始することができる。これによって、始動直後(車両発進時)のドライバビリティを一定に保つことができる。
【0009】
また、制御装置が、エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替えられていない場合において、走行モードを当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行する場合は、例えば、下り坂を走行中に車速が出た状態でエンジンをかけて遠心クラッチが係合した場合でも、ライダーの操作と実際の車両動作との間の違和感を緩和することができ、ライダーの乗り心地を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
無段変速機1は、例えば、図9に示すように、エンジン2によって回転されるプライマリ軸3aに接続するプライマリシーブ3と、遠心クラッチ6を介して後輪7(駆動輪)に動力を出力するセカンダリ軸4aに接続するセカンダリシーブ4と、これらプライマリシーブ3とセカンダリシーブ4間に架け渡されたVベルト5とから構成されている。そして、溝幅調節機構によりプライマリシーブ3の溝幅を調整することによって、変速比を無段階に調節できるように構成されている。
【0011】
このような無段変速機1において、エンジン2を切ったまま下り坂道を走行する際、車両のスピードに対応して変速比が変化する機構を備えている場合がある。この場合には、ある程度スピードが出た状態でエンジン2をかけると、車速とエンジン回転速度に対して予め入力されたプログラム(マップ)に基づいて急激に変速する事象が生じる場合がある。このような事象が生じたとき、エンジン2の下流側に位置するセカンダリシーブ4の回転速度も増して、遠心クラッチ6が瞬時に係合する場合がある。その結果、通常発進でのクラッチ係合とは懸け離れたフィーリングになるため、ライダーの操作と実際の車両動作との間に違和感が生じ得る。本願発明者は遠心クラッチ6の係合状態によりライダーの操作と車両動作との間に違和感が生じ得るとの知見を得、遠心クラッチ係合時における違和感を緩和し得る機構を見出し、本発明に想到した。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両100の側面構成を示している。図2は、本実施形態の鞍乗型車両100に搭載される制御装置10およびその周辺構成を説明するためのブロック図である。
【0014】
本実施形態の鞍乗型車両100は、図2に示すように、ライダーが操作するアクセル操作子25に応じて出力が制御される駆動源(エンジン)20と、そのエンジン20に接続された無段変速機30と、その無段変速機30を電子的に制御する制御装置10とを備えている。なお、本実施形態では、エンジン20と無段変速機30はパワーユニット80を構成している。
【0015】
図1に示した例の鞍乗型車両100は、スクータ型の自動二輪車であり、エンジン20によって発生した駆動力は、無段変速機30を介して後輪(駆動輪)40へと伝わる。自動二輪車の場合、ライダーが操作するアクセル操作子25は、ハンドルに取り付けられたアクセル又はアクセルグリップである。
【0016】
本実施形態の無段変速機30は、エンジン20によって回転されるプライマリ軸31(例えばクランク軸)にプライマリシーブ32を連接すると共に、遠心クラッチ50や減速機構51を介して後輪40(駆動輪)に動力を出力するセカンダリ軸35にセカンダリシーブ34を連接し、これらプライマリシーブ32とセカンダリシーブ34間にVベルト33が架け渡された構成となっている。そして、各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御している。
【0017】
また、プライマリシーブ32及びセカンダリシーブ34は、それぞれプライマリ軸31及びセカンダリ軸35に取り付けられた固定フランジ(32a,34a)及び可動フランジ(32b,34b)から構成されている。両可動フランジ(32b,34b)は、それぞれプライマリ軸31方向及びセカンダリ軸35方向に移動自在に設けられている。なお、固定フランジは、固定シーブと称することもあり、可動フランジは、可動シーブと称することもある。
【0018】
セカンダリシーブ34の可動フランジ34bは、溝幅調整機構によって溝幅を狭める方向に付勢されている。本実施形態の溝幅調整機構は、可動フランジ34bに取り付けられたスプリング(図示せず)と可動フランジ34bの部位に設けられたトルクカム(図示せず)である。
【0019】
一方、プライマリシーブ32の溝幅は、プライマリシーブ32の可動フランジ32bをアクチュエータ60で移動制御(プライマリ軸31方向に摺動)することによって調整されている。アクチュエータ60の出力により、プライマリシーブ32の溝幅を狭める方向(Top側)、及び溝幅を広げる方向(Low側)のいずれの方向にも可動フランジ32bを移動させることができるので、溝幅を自由に調節することができる。
【0020】
なお、本実施形態のアクチュエータ60は、電動モータである。この電動モータ60の出力は、電動モータ60への供給電力によって制御される。つまり、電動モータ60は、入力された供給電力の電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、可動フランジ32bに出力し、可動フランジ32bを移動させている。
【0021】
プライマリシーブ32の溝幅を調整するアクチュエータ60は、制御装置(変速制御装置)10に電気的に接続されている。この制御装置10は、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)から構成されている。電子制御装置(ECU)は、例えば、マイクロコンピュータ(MPU)からなる。制御装置10は、車両の走行条件(車速やスロットル開度など)に応じた変速比を、予め登録された制御マップ(プログラム)から算出して、その変速比を実現するための変速指令を無段変速機30に与えて、最終的にその変速比を実現させる制御を行う。
【0022】
実際の制御は、車速やスロットル開度の情報を基に制御マップから変速比の目標値(目標変速比)を算出し、目標変速比となるように電動モータ60を駆動してプライマリシーブの可動シーブの位置を制御する。この制御マップは、制御装置10の内部に設置された記憶部に格納されている。あるいは、制御装置10の外部に該制御装置10と電気的に接続する記憶部を設け、この記憶部に制御マップを格納することもできる。記憶部は、例えば、半導体メモリ(RAM、フラッシュメモリなど)またはハードディスクから構成することができる。
【0023】
このように電子的に制御された無段変速機では、複数の制御マップを用意することにより、複数の変速特性を設定することができる。本実施形態の無段変速機30では、ライダーの意思に応じて適宜変更可能な2つの変速特性が設定されている。
【0024】
本実施形態では、制御装置10には、無段変速機60を制御する複数の走行モードが設定されている。また、制御装置10は、第1制御11と、第2制御12と、第3制御13を行う。制御装置10は、予め設定されたプログラムに従って種々の制御を実行する。
【0025】
第1制御11は、エンジン20の始動前に、複数の走行モード(A、B)のうちの予め定められた所定の走行モード(A)に切り替える制御である。第2制御12は、モード切替操作子27の操作に応じて複数の走行モード(A、B)を相互に切り替える制御である。第3制御13は、エンジンが未始動であることを検出した場合に、第2制御12を制限して、所定の走行モード(A)から他の走行モード(B)への切り替えを禁止する制御である。
【0026】
ここで、「所定の走行モード」は、制御装置10に設定された複数の走行モードのうち、予め設定される走行モードであり、本実施形態では、適宜「ノーマルモード」又は「初期モード」という。
【0027】
図3(a)に示すように、本実施形態の無段変速機30では、ノーマルモード「A」とアシストモード「B」の2つの走行モードが採用されている。ここでいう「走行モード」とは、無段変速機に設定される変速特性(変速方法)を示す用語である。各走行モードの特徴を簡単に説明すると、ノーマルモード「A」は、変速域のエンジン回転速度が低く設定された低燃費や低騒音等を考慮した走行モード(所謂「エコモード」)である。一方、アシストモード「B」は、ノーマルモード「A」よりも変速域のエンジン回転速度が高く設定されたエンジン出力性能を優先した走行モード(所謂「パワーモード」)である。
【0028】
図3(c)に示すように、ノーマルモード「A」とアシストモード「B」とでは、車速−エンジン回転速度の線図で示す変速特性図(制御マップ)が相違する。図3(c)中のR(A)はノーマルモード「A」で設定される変速特性(制御マップ)を示し、R(B)はアシストモード「B」で設定される変速特性(制御マップ)を示す。図中において、車速が同じであればエンジン回転速度が高い程、無段変速機の変速比が大きくなる側(Low側)に設定されていることを意味する。
【0029】
ノーマルモード「A」とアシストモード「B」の変速特性(制御マップ)を比較すると、同じ車速のときには、ノーマルモード「A」の方がアシストモード「B」よりもエンジン回転速度が低くなるように設定されていることが分かる。すなわち、ノーマルモード「A」は、アシストモード「B」に比べて変速比が小さくなる側(TOP側)になるように設定されている。
【0030】
制御装置10は、エンジン20の始動前に、複数の走行モード(A、B)のうちの予め定められた所定の走行モード(A)に切り替える(第1制御)。また、制御装置10は、モード切替操作子27の操作に応じて複数の走行モード(A、B)を相互に切り替える(第2制御)。さらに、制御装置10は、エンジンが未始動であることを検出した場合に、第2制御12を制限して、所定の走行モード(A)から他の走行モード(B)への切り替えを禁止する(第3制御)。
【0031】
本実施形態では、図3(a)に示すように、制御装置10は、アクセル操作子25とは別に設けられたライダーが操作するモード切替操作子27に応じて、複数の走行モード(ここではノーマルモード「A」とアシストモード「B」)を相互に切り替える。つまり、ノーマルモード「A」とアシストモード「B」とは、ライダーの意思によって(典型的にはボタン操作により手動で)相互に切り替えられる(矢印「70」)。これにより、ライダーの意思を反映させた最適な走行モードを選択することができ、ライダーは快適な走行を楽しむことができる。
【0032】
加えて、本実施形態では、図3(b)に示すように、制御装置10は、エンジン20を切った状態では、無段変速機30の走行モード(変速特性)を初期モードに選択的に固定し得るように構成されている。ここでいう「初期モード」とは、無段変速機に設定される複数の走行モード(変速特性)のうち、変速比が最も小さくなる側(TOP側)に設定された走行モードのことである。即ち、本実施形態では、アシストモード「B」よりも変速比が小さくなる側(TOP側)に設定されたノーマルモード「A」が初期モードに該当する。
【0033】
具体的には、制御装置10は、エンジン20が未始動の状態を検出し、それに応じてモード切替禁止指令を発し、それによって、エンジン20の始動前に予め移行されたノーマルモード「A」(初期モード)からアシストモード「B」(初期モード以外の他の走行モード)への切り替えを禁止する。
【0034】
本実施形態では、上述したように、実際の制御は、図3(c)に示すように、制御マップ(R(A)、R(B))を用いて実行される。すなわち、車速やスロットル開度の情報を基に各走行モードの制御マップ(R(A)、R(B))から変速比の目標値(目標変速比)を算出し、目標変速比となるように電動モータ60を駆動してプライマリシーブの可動シーブの位置を制御している。なお、制御マップ(R(A)は、ノーマルモード「A」の制御マップを示し、R(B)は、アシストモード「B」の制御マップを示している。また、制御マップR(A)及び制御マップR(B)は、制御マップによって規定される領域(制御領域)を表している。この制御領域は、スロットル全開時における車速とエンジン回転速度の目標値の関係を表すラインL1(A)及びラインL1(B)と、スロットル全閉時における車速とエンジン回転速度の目標値の関係を表すラインL2(A)及びラインL2(B)とに囲まれた領域である。
【0035】
例えば、ノーマルモード「A」で走行する場合、制御マップR(A)に基づいて制御が実行されると、車速とスロットル開度の情報に基づく演算によって、エンジン回転速度の目標値が算出される。具体的には、車速の情報に基づいて図3(c)中の横軸の位置を決める。そして、スロットル開度に応じて、マップR(A)の範囲内でエンジン回転速度の目標値を定める。この場合、スロットル開度が大きくなるほどエンジン回転速度の目標値を大きく(変速比が大きくなるようにLow側に制御)、スロットル開度が小さくなるほどエンジン回転速度の目標値を小さく(変速比が小さくなるようにTop側に制御)することにより、スムーズな加速や減速を実現するように構成されている。制御装置10は、刻々と変化する車速とスロットル開度の情報に基づいて、上述した演算を繰り返しながらエンジン回転速度の目標値を算出し、無段変速機30の変速比を制御している。
【0036】
このような無段変速機30では、変速比がある値以上になると、セカンダリシーブ回転の上昇に伴い、クラッチが係合しやすい状態になる。仮にエンジン回転の目標値が設定上、クラッチが係合してしまう変速比を超えている場合には、よりTop側にあるほうがクラッチ係合直後のエンジンブレーキに唐突感が出ないようになる。図示した例では、制御マップR(A)と制御マップR(B)を比較すると、制御マップR(A)は、制御マップR(B)に比べて変速比が小さくなる側(TOP側)に設定されているので、制御マップR(A)に基づく制御の方が唐突なエンジンブレーキ感を是正できる。
【0037】
なお、本実施形態ではノーマルモード「A」を初期モードとしたが、複数の走行モードのうち変速比が小さくなる側(TOP側)に設定される走行モードであれば、その他の走行モードであってもよい。設定される走行モード数も2つに限らず、3つ以上の走行モードを無段変速機30に設けてもよい。例えば、ノーマルモード「A」よりも変速比がさらにTOP側に設定された第3の走行モードを設定し、これを初期モードとすることもできる。
【0038】
また、本実施形態では、各走行モード間の相互の切り替えの方法は、制御マップを切り替えることによって切り替えられるが、各走行モード間の相互の切り替えの方法は、これに限定されない。例えば、所定の換算係数を乗算することにより、制御マップを切り替えることなく変速特性を変更することができる。具体的には、所定の制御マップから算出された目標変速比に所定の換算係数(例えば、1.35)を乗算することにより、変速比が大きくなる側(Low側)にシフトされた変速特性へと切り替えることができる(所謂「シフトダウンモード」)。このとき、設定されるシフトダウンモード数は1つであってもよく、2つ以上のシフトダウンモードを設定して、ライダーのボタン操作に応じて順次変速比が大きくなる側(Low側)にシフトダウンさせる構成であってもよい(所謂「多段シフトダウンモード」)。なお、所定の換算係数は、制御装置の内部又は外部に設けられた記憶部に係数マップ形式で格納される。
【0039】
各走行モード間の相互の切り替えの方法について、図4に他の実施形態を例示する。各走行モード間の相互の切り替えは、図4に示すように、制御マップによる走行モードの切替と、換算係数の乗算によるシフトダウンモードの組み合わせであってもよい。図4に示す例では、3つの走行モード(即ち、ノーマルモード「A」、アシストモード「B」、アシストIIモード「C」)をライダーのモード切替操作子27の操作に応じて順次切り替えることができる(図4中の矢印「72」参照)。さらに各走行モードは、シフトダウン状態へそれぞれ移行し得るように構成されている(図4中の矢印「74」参照)。このような場合であっても、エンジン始動前に、走行モードをノーマルモード「A」(即ち、変速比が最も小さくなる側(TOP側)に設定された走行モード)に固定することにより、クラッチ係合時の違和感を緩和し得る。
【0040】
以下、図2に戻って、さらに本発明の実施形態の構成、特に、無段変速機の制御装置の制御について詳細に説明する。
【0041】
この鞍乗型車両100は、エンジン20の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ22を備えている。制御装置10は、エンジン回転速度センサ22で検出されるエンジンの回転速度が0であることに基づいて、エンジン20が未始動であるか否かを検出する。
【0042】
本実施形態では、制御装置10には、エンジン20の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ22が電気的に接続されており、エンジン回転速度信号を制御装置10へと出力する。このエンジン回転速度センサ22を介して、制御装置10は、エンジン20が未始動の状態を検出し、モード切替禁止指令を発する。具体的には、モード切替禁止指令は、エンジン回転速度センサ22から出力されたエンジン回転速度信号(詳細には、エンジン回転速度が「0」を示すエンジン回転速度信号)に基づいて発せられる。なお、モード切替禁止指令は、エンジン回転速度センサ22から出力されるエンジン回転速度信号だけに限らず、エンジンが未始動の状態を示す他の情報に応じて(例えば、メインスイッチ「ON」からの点火、噴射の有無等を判断して)発せられるように構成してもよい。
【0043】
また、制御装置10には、後輪40の回転速度を検出する後輪回転速度センサ52が電気的に接続されており、この後輪回転速度センサ52は後輪40の近傍に配置され、後輪回転速度信号を制御装置10へと出力する。この後輪回転速度信号から車速が求まる。
【0044】
さらに、制御装置10には、モード切替操作子27として、モード切替スイッチ(モード切替SW)が電気的に接続されている。複数の走行モードの切替は、ライダーがモード切替スイッチをオンにすることによって実行することができる。モード切替スイッチは、例えば、ボタン形態であるモード切替ボタンからなる。
【0045】
また、制御装置10には、プライマリシーブ32の可動フランジ32bのフランジ位置を検出するシーブ位置検出装置29が接続されている。シーブ位置検出装置29は、可動フランジ位置の情報(可動フランジ位置信号)を制御装置10に出力することができる。制御装置10は、そのフランジ位置(可動フランジ位置信号)の情報に基づいて電動モータ60を制御している。なお、制御装置10には、後輪回転速度信号、エンジン回転速度信号、可動フランジ位置信号以外にも種々の信号(例えばスロットル開度信号、セカンダリシーブ回転速度信号等)が入力され得る。
【0046】
次に、図5のフローチャートを参照しながら、制御装置10の制御方法を説明する。
【0047】
まず、制御装置10は、エンジン20の始動前に、複数の走行モード(A、B)のうちの予め定められた所定の走行モード(A)に切り替える(第1制御)。本実施形態では、制御装置10は、ステップS10においてメインスイッチ(車両100の主電源)が「ON」になると、ステップS20へと進み、走行モードを初期モード(ここではノーマルモード「A」)に移行させる。
【0048】
次に、制御装置10は、エンジンが未始動であることを検出した場合に、第2制御12を制限して、所定の走行モード(A)から他の走行モード(B)への切り替えを禁止する(第3制御)。本実施形態では、制御装置10は、走行モードの切替要求(ここではアシストモード「B」への切替要求)の有無を判断する(ステップS30)。走行モードの切替要求有りと判断した場合には、続いて、ステップS40においてエンジン20が始動しているか否かを判断する。このとき、エンジン20が未始動と判断した場合には、ステップS50へと進み、上記モード切替要求を受理せずに、初期モード(ノーマルモード「A」)を維持したまま走行モードを確定する(ステップS70)。
【0049】
一方、ステップS40においてエンジン20が始動している判断した場合には、ステップS60へと進み、上記モード切替要求を受理して、初期モード(ノーマルモード「A」)から他の走行モード(アシストモード「B」)への切替を実行し、このまま走行モードを確定する(ステップS70)。
【0050】
このようにして、エンジン始動時の走行モードを初期モード(ノーマルモード「A」)に固定することができる。なお、ここではメインスイッチの「ON」時に走行モードを初期モードに移行させる例を示したが、初期モードへの移行はエンジンが始動するよりも前に実行されればよく、それゆえに、初期モードへの移行のタイミングは、メインスイッチの「ON」時だけに限らない。例えば、エンジンを切るタイミングで初期モードへの移行を実行しておき、次回のメインスイッチの「ON」時には既に初期モードへの移行が完了しているように構成してもよい。或いは、メインスイッチが「OFF」にされたときに、初期モードへの移行を実行しておいて、次回のメインスイッチの「ON」時には既に初期モードへの移行が完了しているように構成してもよい。
【0051】
続いて、図6を参照しながら、本発明の他の実施形態を説明する。本実施形態では、エンジン始動前ではなくエンジン始動直後に初期モードへの移行を実行する点において上述した実施形態とは異なる。従って、鞍乗型車両100と同一の構成部材には同一の符号を付し、その重複した説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、制御装置10は、エンジン20が始動直後であることを検出し、且つ、複数の走行モード(A、B)のうちの予め定められた所定の走行モード(A)に切り替えられていない場合において、走行モードを当該所定の走行モード(A)に切り替える(第4制御14)。
【0053】
本実施形態では、制御装置10は、エンジン20の始動直後の状態を検出し、それに応じて、他の走行モード(アシストモード「B」)から初期モード(ノーマルモード「A」)に切り替える制御を実行し得るように構成されている。つまり、エンジン始動前の走行モードの切り替えは許容されるが、エンジン始動にタイミングを合わせて初期モードへと移行するように構成されている。このような構成であっても、エンジン始動後には変速比が小さくなる側(TOP側)に設定された初期モード(ノーマルモード「A」)で走行を開始することができ、ライダーの操作と実際の車両動作との間の違和感を緩和することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、制御装置10は、エンジン20の回転速度が0から増加したか否かに基づいて、エンジン20が始動直後であるか否かを検出している。すなわち、制御装置10は、エンジン回転速度センサ22を介して、エンジン20の始動直後の状態を検出することができる。具体的には、エンジン回転速度が「0」から増加したこと示すエンジン回転速度信号に応じて、他の走行モード(アシストモード「B」)から初期モード(ノーマルモード「A」)に切り替える制御を実行している。
【0055】
次に、この制御装置10の制御方法を説明する。まず、制御装置10は、ステップS100においてメインスイッチ(車両100の主電源)が「ON」になると、ステップS200へと進み、エンジン20が始動しているか否かを判断する。ステップS200の判断は、エンジンが始動されたと判断されるまで、短時間(本実施形態では、0.05秒(例えば50ms))毎に繰り返し実行される。
【0056】
そして、ステップS200の判断において、エンジンが始動していると判断された場合には、制御装置10は、ステップS300において、現時点での走行モードが初期モード(ノーマルモード「A」)以外であるか否かを判断する。ステップS300において、現時点での走行モードが既に初期モード(ノーマルモード「A」)である場合には、ステップS500へと進み、初期モード(ノーマルモード「A」)を維持したまま走行モードを確定する。
【0057】
一方、ステップS300において現時点での走行モードが初期モード(ノーマルモード「A」)以外の他の走行モード(アシストモード「B」)であると判断した場合には、他の走行モード(アシストモード「B」)から初期モード(ノーマルモード「A」)への切替を実行し(ステップS400)、そのまま走行モードを確定する(ステップS500)。
【0058】
上記構成では、メインスイッチを「ON」にした後、走行モードが初期モード(ノーマルモード「A」)以外の他の走行モードに切り替えられたとしても、エンジン始動直後には必ず初期モードに移行させることができる。また、ステップS200でのエンジン始動の有無の判断は、非常に短時間(例えば50ms)で繰り返し実行されるので、エンジン始動後に走行モードを切り替えた場合であっても、実際の変速比の変化に影響を与えることはない。
【0059】
本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、無段変速機30の構造は、上述した実施形態に限定されず、プライマリシーブとセカンダリシーブにVベルトが巻き掛けられた形態を有し、アクチュエータ及び制御装置によって、プライマリシーブの溝幅が調整される種々の無段変速機に適用可能である。
【0061】
かかる無段変速機には、例えば、図8に示すように、Vベルトが金属製のベルトで構成された無段変速機を採用することができる。なお、図8において、図2および図6に記載された実施形態の無段変速機と、同じ作用を奏する部材又は部位には、同じ符号を付している。
【0062】
この実施形態では、Vベルトが金属製のベルトで構成された無段変速機230(以下、適宜「金属ベルトCVT」という。)は、図8に示すように、Vベルトを金属製のベルト233で構成した以外にも、種々の変更を行なっている。
【0063】
この金属ベルトCVT230は、クラッチ250と、プライマリ回転センサ229と、アクチュエータとを備えている。本実施形態では、アクチュエータは、油圧シリンダ260A、260Bと、油圧制御弁260Cとから構成されている。
【0064】
クラッチ250は、エンジン20の出力軸と金属ベルトCVT230の入力軸との間に配設されている。エンジン20の出力軸と金属ベルトCVT230の入力軸との間で、動力の伝達を断接する。
【0065】
次に、プライマリ回転センサ229は、プライマリシーブ232の回転速度を検出している。この実施形態では、制御装置10は、無段変速機230の変速比を、プライマリ回転センサ229で検出されたプライマリシーブ232の回転速度と、車速センサ(図では後輪回転速度センサ)252によって検出される鞍乗型車両の車速との比で算出している。なお、無段変速機230の変速比は、プライマリ回転センサ229で検出されたプライマリシーブ232の回転速度と、セカンダリシーブ回転速度センサ269によって検出されるセカンダリシーブ234の回転速度との比で算出してもよい。
【0066】
次に、油圧シリンダ260Aは、プライマリシーブ232の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ260Aは、プライマリシーブ232を構成する可動フランジ232Bに押圧力を付与して、プライマリシーブ232の溝幅を調整する。また、油圧シリンダ260Bは、セカンダリシーブ234の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ260Bは、セカンダリシーブ234を構成する可動フランジ234Bに押圧力を付与して、セカンダリシーブ234の溝幅を調整する。油圧制御弁260Cは、油圧シリンダ260A、260Bに付与する油圧を調整する弁である。油圧制御弁260Cは、油圧シリンダ260A、260Bのうち、一方の油圧シリンダ260A(260B)に油圧を高くするときには、他方の油圧シリンダ260B(260A)の油圧が低くなるように、油圧を制御する。油圧制御弁260Cは、制御装置10によって制御される。
【0067】
この金属ベルトCVT230は、制御装置10で油圧制御弁260Cを操作することによって、金属ベルトCVT230の変速比が変更される。制御装置10の制御については、無段変速機30と同様の制御が行なわれる。なお、この実施形態にかかる金属ベルトCVT230では、制御装置10は、エンジンの回転速度を制御目標値とすることに代えて、プライマリシーブ232の回転速度を制御目標値にしている。
【0068】
なお、本実施形態では、上述した第1制御11、第2制御12および第3制御13に、第4制御14を組み合わせている。すなわち、制御装置は、図8に示すように、第1制御11、第2制御12、第3制御および第4制御をそれぞれ実行する。第1制御11は、エンジンの始動前に、複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える。第2制御12は、モード切替操作子の操作に応じて複数の走行モードを相互に切り替える。第3制御13は、エンジンが未始動であることを検出した場合に、第2制御を制限して、所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する。第4制御14は、エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、所定の走行モードに切り替えられていない場合に、当該所定の走行モードに切り替える第4制御14を実行する。
【0069】
かかる構成によれば、何らかの装置異常によって、エンジンの始動前に走行モードを所定の走行モード(A)に固定できない場合に、第4制御14によって、エンジン始動直後に所定の走行モード(A)に切り替えることができる。また、第4制御14が機能しない場合でも、第1制御から第3制御によって、エンジンの始動前に走行モードを所定の走行モード(A)に固定できる。
【0070】
なお、図1に示した鞍乗型車両100は、スクータ型の自動二輪車であるが、これに限らず、無段変速機の変速を電子的に制御する制御装置を備えた鞍乗型車両であれば適用することができる。例えば、スクータ型の自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルに適用することができる。なお、四輪バギー等の場合には、アクセル操作子は、アクセルグリップの形態の他に、レバー形態のものもあり得る。加えて、エンジンとして内燃機関のエンジンを用いたが、モータを用いた鞍乗型車両にすることも可能である。
【0071】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、下り坂道発進時のドライバビリティを十分確保し得る鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の側面構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態の鞍乗型車両に搭載される無段変速機およびその周辺構成を説明するためのブロック図。
【図3】無段変速機に設定された走行モードを説明するための図。
【図4】無段変速機に設定された走行モードを説明するための図。
【図5】本発明の実施形態に係る制御装置の制御フローを示す図。
【図6】本発明の他の実施形態の無段変速機およびその周辺構成を説明するためのブロック図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る制御装置の制御フローを示す図。
【図8】無段変速機が金属ベルトCVTである場合における、無段変速機およびその周辺構成を説明するためのブロック図。
【図9】無段変速機の機構を説明するための図。
【符号の説明】
【0074】
10 制御装置
11 第1制御
12 第2制御
13 第3制御
14 第4制御
20 エンジン
22 エンジン回転速度センサ
25 アクセル操作子
27 モード切替操作子
29 シーブ位置検出装置
30 無段変速機
31 回転軸
32 プライマリシーブ
32b 可動フランジ
33 ベルト
34 セカンダリシーブ
34b 可動フランジ
35 回転軸
40 後輪
50 遠心クラッチ
52 後輪回転速度センサ
60 電動モータ
80 パワーユニット
100 鞍乗型車両
229 プライマリ回転センサ
230 金属ベルトCVT(無段変速機)
232 プライマリシーブ
232B 可動フランジ
233 金属ベルト
234 セカンダリシーブ
234B 可動フランジ
250 クラッチ
260A 油圧シリンダ
260B 油圧シリンダ
260C 油圧制御弁
269 セカンダリシーブ回転速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作子に応じて出力が制御されるエンジンと、当該エンジンに接続された無段変速機と、当該無段変速機を制御する制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、
モード切替操作子を備え、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動前に、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える第1制御と、
前記モード切替操作子に応じて複数の走行モードを相互に切り替える第2制御と、
前記エンジンが未始動であることを検出した場合に、前記第2制御を制限して、前記所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する第3制御と
を実行することを特徴とする、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記所定の走行モードに切り替えられていない場合において、当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサを備え、
前記制御装置は、前記エンジンが未始動であるか否かを、前記エンジン回転速度センサで検出されるエンジン回転速度が0であること回転速度に基づいて検出することを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
エンジンと、当該エンジンに接続された無段変速機と、当該無段変速機を制御する制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替えられていない場合において、走行モードを当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、鞍乗型車両。
【請求項5】
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサを備え、
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であるか否かを、前記エンジン回転速度センサに基づいて、前記エンジン回転速度が0から増加したか否かで検出することを特徴とする、請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記所定の走行モードは、前記複数の走行モードのうち所定の走行モード以外の他の走行モードよりも変速比がTOP側に設定されることを特徴とする、請求項1または4に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記プライマリシーブは、前記エンジンの出力が伝達されるプライマリ軸に配設された当該プライマリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記セカンダリシーブは、遠心クラッチを介して後輪に動力を伝達するセカンダリ軸に配設された当該セカンダリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジをアクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、前記セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されている、請求項1または4に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻き掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記ベルトは、金属製のベルトで構成されている、請求項1または4に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記プライマリシーブは、前記エンジンの出力が伝達されるプライマリ軸にクラッチが配設された、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記プライマリシーブと前記セカンダリシーブの溝幅は、それぞれ油圧式シリンダによって、調整されている、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
エンジンと、エンジンに接続され、制御装置によって制御される無段変速機とを備えたパワーユニットであって、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動前に、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える第1制御と、
前記モード切替操作子の操作に応じて前記複数の走行モードを相互に切り替える第2制御と、
前記エンジンが未始動であることを検出した場合に、前記第2制御を制限して、前記所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する第3制御と
を実行することを特徴とする、パワーユニット。
【請求項12】
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記所定の走行モードに切り替えられていない場合に、当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、請求項11に記載のパワーユニット。
【請求項13】
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサを備え、
前記制御装置は、前記エンジンが未始動であるか否かを、前記エンジン回転速度センサで検出されるエンジンの回転速度が0であることに基づいて検出することを特徴とする、請求項11に記載のパワーユニット。
【請求項14】
エンジンと、当該エンジンに接続された無段変速機と、当該無段変速機を制御する制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、
前記エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替えられていない場合に、走行モードを当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、パワーユニット。
【請求項15】
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサを備え、
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であるか否かを、前記エンジン回転速度センサに基づいて、前記エンジンの回転速度が0から増加したか否かで検出する、請求項14に記載のパワーユニット。
【請求項16】
前記所定の走行モードは、前記複数の走行モードのうち所定の走行モード以外の他の走行モードよりも変速比がTOP側に設定されることを特徴とする、請求項11または14に記載のパワーユニット。
【請求項17】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記プライマリシーブは、前記エンジンの出力が伝達されるプライマリ軸に配設された当該プライマリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記セカンダリシーブは、遠心クラッチを介して後輪に動力を伝達するセカンダリ軸に配設された当該セカンダリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジをアクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、前記セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されている、請求項11または14に記載のパワーユニット。
【請求項18】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻き掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記ベルトは、金属製のベルトで構成されている、請求項11または14に記載のパワーユニット。
【請求項19】
前記プライマリシーブは、前記エンジンの出力が伝達されるプライマリ軸にクラッチが配設された、請求項18に記載のパワーユニット。
【請求項20】
前記プライマリシーブと前記セカンダリシーブの溝幅は、それぞれ油圧式シリンダによって調整される、請求項18に記載のパワーユニット。
【請求項21】
制御装置によって制御される無段変速機であって、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、
エンジンの始動前に、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替える第1制御と、
モード切替操作子の操作に応じて前記複数の走行モードを相互に切り替える第2制御と、
前記エンジンが未始動であることを検出した場合に、前記第2制御を制限して、前記所定の走行モードから他の走行モードへの切り替えを禁止する第3制御と
を実行することを特徴とする、無段変速機。
【請求項22】
前記制御装置は、前記エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記所定の走行モードに切り替えられていない場合に、当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、請求項21に記載の無段変速機。
【請求項23】
前記制御装置は、前記エンジンの回転速度が0であることに基づいて、前記エンジンが未始動であるか否かを検出することを特徴とする、請求項21に記載の無段変速機。
【請求項24】
制御装置によって制御される無段変速機であって、
前記制御装置には、複数の走行モードが設定されており、
前記制御装置は、
エンジンが始動直後であることを検出し、且つ、前記複数の走行モードのうちの予め定められた所定の走行モードに切り替えられていない場合に、走行モードを当該所定の走行モードに切り替える第4制御を実行することを特徴とする、無段変速機。
【請求項25】
前記制御装置は、前記エンジンの回転速度が0から増加したか否かに基づいて前記エンジンが始動直後であるか否かを検出する、請求項24に記載の無段変速機。
【請求項26】
前記所定の走行モードは、前記複数の走行モードのうち所定の走行モード以外の他の走行モードよりも変速比がTOP側に設定されることを特徴とする、請求項21または24に記載の無段変速機。
【請求項27】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記プライマリシーブは、前記エンジンの出力が伝達されるプライマリ軸に配設された当該プライマリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記セカンダリシーブは、遠心クラッチを介して後輪に動力を伝達するセカンダリ軸に配設された当該セカンダリシーブの固定フランジ及び可動フランジとから構成されており、
前記プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジをアクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、前記セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されている、請求項21または24に記載の無段変速機。
【請求項28】
前記無段変速機は、プライマリシーブ及びセカンダリシーブのV溝にベルトが巻き掛けられ、前記各シーブの溝幅を変えることによって、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速装置であり、
前記ベルトは、金属製のベルトで構成されている、請求項21または24に記載の無段変速機。
【請求項29】
前記プライマリシーブと前記セカンダリシーブの溝幅は、それぞれ油圧式シリンダによって調整される、請求項28に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−275143(P2008−275143A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246274(P2007−246274)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】