説明

駆動装置およびこれを搭載する車両並びに駆動装置の制御方法

【課題】複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態でシステムオフするときに、複数の電動機に対するすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電する。
【解決手段】システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に異常が生じているモータに対するリレーをオンし、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、平滑コンデンサ43,45,47の端子間の電圧が値0に至る順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置およびこれを搭載する車両並びに駆動装置の制御方法に関し、詳しくは、複数の電動機とこの複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段とを備える駆動装置およびこうした駆動装置を搭載する車両並びにこうした駆動装置のシステムオフ時の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駆動装置としては、二つの走行用のモータの各々が平滑用コンデンサと昇圧コンバータとを介してバッテリに接続されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、各モータに対して個別に昇圧コンバータと平滑コンデンサとを設けることにより、各モータに対して個別に電力供給を行なうことができるようにしている。
【0003】
また、モータに平滑用コンデンサと昇圧コンバータとを介してバッテリに接続された装置において、装置停止時にはモータにd軸電流を流すことにより平滑用コンデンサの充電電荷を放電させるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、装置停止時にはモータにd軸電流を流すことにより、モータからトルクを出力することなく平滑用コンデンサの充電電荷を放電させている。
【特許文献1】特開2004−242371号公報
【特許文献2】特開2004−357412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリに対して複数のモータが並列に接続された駆動装置では、複数のモータのいずれかに異常が生じても駆動を確保するために異常が生じたモータを切り離して他のモータによって駆動する場合がある。この場合に装置をシステム停止するときには、装置内のすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電するのが好ましく、異常のために切り離したモータに対する平滑用コンデンサの充電電荷も放電するのが好ましい。
【0005】
本発明の駆動装置およびこれを搭載する車両並びに駆動装置の制御方法は、複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態でシステムオフするときに、複数の電動機に対するすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置およびこれを搭載する車両並びに駆動装置の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の駆動装置は、
複数の電動機と、該複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える駆動装置であって、
前記蓄電手段の正極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の正極側端子に接続される正極用接続部材と、
前記蓄電手段の負極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の負極側端子に接続される負極用接続部材と、
前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう電源用リレーと、
前記複数の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を前記複数の電動機毎に行なう複数の電動機用リレーと、
前記複数の電動機用リレーより前記複数の電動機側に取り付けられた複数の平滑用コンデンサと、
前記複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、前記電源用リレーにより前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記電源用リレーを制御し、前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより該異常に係る電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されていると共に前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーにより該少なくとも一つの電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されている状態で前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御し、前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に前記複数の電動機のすべてが前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記複数の電動機用リレーを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の駆動装置では、複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、電源用リレーにより蓄電手段の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続を解除し、異常に係る電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されていると共に複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されている状態で複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の電動機を制御し、その後、複数の電動機の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続を解除する。即ち、異常に係る電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されていると共に他の少なくとも一つの電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されている状態でこの他の少なくとも一つの電動機を制御することにより、異常に係る電動機に対する平滑用コンデンサの充電電荷を他の少なくとも一つの電動機で電力消費するのである。これにより、複数の電動機のいずれかに異常が生じていても、システムオフするときに複数の電動機に対するすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電することができる。
【0009】
こうした本発明の駆動装置において、前記制御手段は、前記異常時システムオフ時には、前記複数の電動機用リレーのうち前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーと前記異常に係る電動機以外の一つの電動機に対する電動機用リレーとを除く電動機用リレーにより前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機および前記一つの電動機以外の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除された状態で前記複数の平滑用コンデンサの電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、一つの電動機の電力消費によりこの一つの電動機に対する平滑用コンデンサと異常に係る電動機に対する平滑用コンデンサの充電電荷を放電することができ、他の電動機に電力消費により各々の電動機に対する平滑用コンデンサの充電電荷を放電することができる。
【0010】
また、本発明の駆動装置において、前記電源用リレーは前記蓄電手段の正極または負極の一方の電極と前記正極用接続部材および前記負極用接続部材のうち該一方の電極に接続される接続部材との接続と接続の解除を行なうリレーであり、前記電動機用リレーは前記正極用接続部材および前記負極用接続部材のうち前記一方の電極に接続される接続部材とは異なる他方の接続部材と前記複数の電動機側の各々の正極側端子および負極側端子のうち前記他方の接続部材に接続される端子との接続と接続の解除を行なうリレーである、ものとすることもできる。こうすれば、正極用接続部材および負極用接続部材の双方に対する電気的な接続を解除することができるものに比して体格を小さくすることができ、小型化を図ることができる。しかも、システムオフ時には、電源用リレーと複数の電動機用リレーのすべてをオフとすることにより、蓄電手段と複数の電動機との完全な遮断を実現することができる。
【0011】
さらに、本発明の駆動装置において、前記蓄電手段は複数のキャパシタであり、前記電源用リレーは前記複数のキャパシタの各々の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう複数のリレーである、ものとすることもできる。こうすれば、複数のキャパシタのいずれかに異常が生じても異常が生じたキャパシタを切り離すことにより駆動を確保することができる。
【0012】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の駆動装置、即ち、基本的には、複数の電動機と、該複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える駆動装置であって、前記蓄電手段の正極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の正極側端子に接続される正極用接続部材と、前記蓄電手段の負極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の負極側端子に接続される負極用接続部材と、前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう電源用リレーと、前記複数の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を前記複数の電動機毎に行なう複数の電動機用リレーと、前記複数の電動機用リレーより前記複数の電動機側に取り付けられた複数の平滑用コンデンサと、前記複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、前記電源用リレーにより前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記電源用リレーを制御し、前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより該異常に係る電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されていると共に前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーにより該少なくとも一つの電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されている状態で前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御し、前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に前記複数の電動機のすべてが前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記複数の電動機用リレーを制御する制御手段と、を備える駆動装置を搭載し、前記複数の電動機からの動力により走行することを要旨とする。
【0013】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の駆動装置を搭載するから、本発明の駆動装置が奏する効果、例えば、複数の電動機のいずれかに異常が生じていてもシステムオフするときに複数の電動機に対するすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0014】
こうした本発明の車両において、内燃機関と、前記内燃機関からの動力を変速して後輪側に伝達する変速機と、を備え、前記複数の電動機の1つは前記変速機を介して前記後輪側に動力を出力する後輪用電動機であり、前記複数の電動機の1つは前輪側に動力を出力する前輪用電動機である、ものとすることもできる。
【0015】
本発明の駆動装置の制御方法は、
複数の電動機と、該複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、前記蓄電手段の正極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の正極側端子に接続される正極用接続部材と、前記蓄電手段の負極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の負極側端子に接続される負極用接続部材と、前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう電源用リレーと、前記複数の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を前記複数の電動機毎に行なう複数の電動機用リレーと、前記複数の電動機用リレーより前記複数の電動機側に取り付けられた複数の平滑用コンデンサと、を備える駆動装置の制御方法であって、
前記複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、前記電源用リレーにより前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記電源用リレーを制御し、前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより該異常に係る電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されていると共に前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーにより該少なくとも一つの電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されている状態で前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御し、前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に前記複数の電動機のすべてが前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記複数の電動機用リレーを制御する、
ことを特徴とする。
【0016】
この本発明の駆動装置の制御方法では、複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、電源用リレーにより蓄電手段の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続を解除し、異常に係る電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されていると共に複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されている状態で複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の電動機を制御し、その後、複数の電動機の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続を解除する。即ち、異常に係る電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されていると共に他の少なくとも一つの電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されている状態でこの他の少なくとも一つの電動機を制御することにより、異常に係る電動機に対する平滑用コンデンサの充電電荷を他の少なくとも一つの電動機で電力消費するのである。これにより、複数の電動機のいずれかに異常が生じていても、システムオフするときに複数の電動機に対するすべての平滑用コンデンサの充電電荷を放電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのレース用に開発されたハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、左右前輪29a,29bに取り付けられた二つの前輪用モータ24,26を有する前輪駆動系21と、エンジン32とエンジン32のクランクシャフト33にクラッチ33aを介して取り付けられたモータ36とからの動力をトランスミッション34とデファレンシャルギヤ38とを介して左右後輪39a,39bに出力する後輪駆動系31と、前輪用モータ24,26やモータ36と電力のやり取りを行なう二つのキャパシタ(第1キャパシタ,第2キャパシタ)50,51と、左右前輪29a,29bや左右後輪39a,39bに取り付けられたホイールシリンダ66a,66b,68a,68bに油圧を作用させることにより制動トルクを付与する電子制御式油圧ブレーキユニット(以下、「ECB」という。)60と、ハイブリッド自動車20の全体をコントロールするメイン電子制御ユニット70とを備える。
【0019】
前輪用モータ24,26は、同期発電電動機として構成された互いに同一のものであり、インバータ42,44およびジャンクボックス54を介して第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と電力のやりとりを行なう。即ち、前輪用モータ24,26は、左右前輪29a,29bに対して制動力や駆動力を左右独立に分配して出力可能な動力ユニットとして機能する。前輪用モータ24,26は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という。)40により駆動制御を受けている。
【0020】
モータ36は、発電機として作動することができると共に電動機として作動可能な周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ46およびジャンクボックス54を介して第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と電力のやりとりを行なう。モータ36は、前輪用モータ24,26と同様に、モータECU40により駆動制御を受けている。モータECU40には、前輪用モータ24,26やモータ36を駆動制御するために必要な信号、例えば前輪用モータ24,26やモータ36の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ25,27,37からの信号や図示しない電流センサにより検出される前輪用モータ24,26やモータ36に印加される相電流等が入力されており、モータECU40からは、インバータ42,44,46へのスイッチング制御信号が出力されている。インバータ42,44,46は、それぞれ6つのスイッチング素子と6つのダイオードとからなる周知のインバータ回路として構成されている。
【0021】
第1キャパシタ50および第2キャパシタ51は、例えば電気二重層キャパシタとして構成されており、ジャンクボックス54を介してインバータ42,44,46に接続されている。
【0022】
図2は、実施例のハイブリッド自動車20の電気系の構成の一例を示す構成図である。図示するように、ジャンクボックス54には、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子に接続されると共に前輪用モータ24,26やモータ36のインバータ42,44,46の正極側端子に接続され導電性材料(例えば銅)により形成された正極用バスバー54aと、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子に接続されると共に前輪用モータ24,26やモータ36のインバータ42,44,46の負極側端子に接続され導電性材料(例えば銅)により形成された負極用バスバー54bと、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在するリレー55、56と、リレー55をオンする際に突入電流を回避するためのリレー55に並列に接続されたリレー55aおよび抵抗55bと、負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在するリレー57a,58a,59aと、正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在するヒューズ57b,58b,59bと、が配置されている。このように、電源用のリレー55,55a,56については正極側に取り付け、モータ用のリレー57a,58a,59aについては負極側に取り付けることにより、全てのリレーをオフすることにより、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と前輪用モータ24,26,モータ36とを完全に遮断することができる。また、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51には、端子間電圧を検出する電圧センサ50a,51aや充電電流を検出する電流センサ50b,51b,第1キャパシタ50および第2キャパシタ51自体の温度を検出する温度センサ50c、51cが取り付けられている。前輪用モータ24,26やモータ36のインバータ42,44,46の端子間には平滑用コンデンサ43,45,47が取り付けられており、平滑用コンデンサ43,45,47よりインバータ42,44,46側には端子間電圧を検出する電圧センサ42a,44a,46aやインバータ42,44,46への印加電流を検出する電流センサ42b,44b,46bが取り付けられている。各電圧センサ50a,51a,42a,44a,46aからの電圧Vc1,Vc2,Vcfr,Vcfl,Vcrや各電流センサ50b,51b,42b,44b,46bからの電流Ic1,Ic2,Ifr,Ifl,Ir,温度センサ50c,51cからの温度Tc1,Tc2は、モータECU40に入力されている。また、各リレー55,55a,56,57a,58a,59aはモータECU40からの駆動信号によりオンオフする。なお、モータECU40は、メイン電子制御ユニット70と通信しており、メイン電子制御ユニット70からの制御信号によって前輪用モータ24,26やモータ36を駆動制御すると共に必要に応じて前輪用モータ24,26やモータ36の運転状態に関するデータ,第1キャパシタ50や第2キャパシタ51の端子間電圧Vc1,Vc2,充電電流Ic1,Ic2,温度Tc1,Tc2,平滑用コンデンサ43,45,47の端子間電圧Vcfr,Vcfl,Vcr,インバータ42,44,46への印加電流Ifr,Ifl,Irなどをメイン電子制御ユニット70に出力する。また、モータECU40は、回転位置検出センサ25,27,37からの信号に基づいて前輪用モータ24,26やモータ36の回転数Nfl,Nfr,Nmも演算している。
【0023】
エンジン32は、ガソリンまたは軽油等の炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン32の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するメイン電子制御ユニット70により燃料噴射量や点火時期、吸入空気量等の制御を受けている。
【0024】
トランスミッション34は、例えば油圧駆動の6速の変速機として構成されており、ドライバーによるアップスイッチ81やダウンスイッチ82の操作に基づく信号を入力するメイン電子制御ユニット70によりアップシフトやダウンシフトが行なわれるよう変速制御される。
【0025】
ECB60は、ブレーキペダル85の踏み込みにより加圧されるマスタシリンダ61と、マスタシリンダ61の圧力(ブレーキ踏力)に応じて車両に作用させるべき制動力のうちのECB60の分担割合に応じた制動トルクが左右前輪29a,29bや左右後輪39a,39bに作用するようにホイールシリンダ66a,66b,68a,68bへの油圧を調整するブレーキアクチュエータ64と、ブレーキアクチュエータ64を駆動制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という。)62と、を備える。ブレーキECU62には、マスタシリンダ61に取り付けられたマスタシリンダ圧センサ61aにより検出されるマスタシリンダ圧(ブレーキ踏力Fb)や左右前輪29a,29bおよび左右後輪39a,39bに設けられた図示しない車輪速センサからの車輪速などが入力されており、ブレーキECU62からはブレーキアクチュエータ64への駆動信号が出力されている。ブレーキECU62は、メイン電子制御ユニット70と通信しており、メイン電子制御ユニット70からの制御信号によって左右前輪29a,29bや左右後輪39a,39bに制動トルクを作用させると共に必要に応じてECB60の状態に関するデータをメイン電子制御ユニット70に出力する。
【0026】
メイン電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。メイン電子制御ユニット70には、ステアリングに取り付けられてトランスミッション34のアップシフトやダウンシフトを指示するアップスイッチ81やダウンスイッチ82からの信号やアクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBPなどが入力ポートを介して入力されている。メイン電子制御ユニット70は、上述したように、モータECU40やキャパシタECU52,ブレーキECU62と通信ポートを介して接続されており、モータECU40やブレーキECU62と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0027】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、アクセルペダル83の踏み込み量に応じてエンジン32の吸入空気量などを調整すると共に第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に蓄えられた電力を用いて前輪用モータ24,26やモータ36からトルク出力を行ない、ブレーキペダル85の踏み込み力(踏力)に応じたブレーキトルクをECB60と前輪用モータ24,26やモータ36とから出力し、前輪用モータ24,26,モータ36の回生トルクの出力により得られる回生電力を第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に蓄える。
【0028】
次に、実施例のハイブリッド自動車20をシステムオフする際の動作、特に前輪用モータ24,26,モータ36のいずれかに異常が生じているときにシステムオフする際の動作について説明する。図3は、システムオフが要請されてメイン電子制御ユニット70から送信されたシステムオフ制御信号を受信したモータECU40により実行されるシステムオフ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、前輪用モータ24,26,モータ36のいずれかに異常が生じたときには、異常が生じたモータに対応するリレーをオフして異常が生じているモータを切り離して走行する。
【0029】
システムオフ制御ルーチンを実行すると、モータECU40は、まず、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51を遮断する電源用リレーとしてのリレー55,55a,56をオフし(ステップS100)、前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているか否かを判定する(ステップS110)。モータに異常が生じているか否かの判定は、リレーがオフされているか否かにより判定することができる。
【0030】
前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれのモータも正常なときには、全てのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフし(ステップS120)、前輪用モータ24,26、モータ36のいずれのモータにもd軸電流が流れるようインバータ42,44,46のスイッチング素子をスイッチング制御する(ステップS130)。そして、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間に取り付けられた電圧センサ42a,44a,46aからの電圧Vfr,Vfl,Vrを入力すると共に(ステップS140)、入力した電圧Vfr,Vfl,Vrのいずれかが値0に至っているか否かを判定し(ステップS150)、いずれかが値0に至っているときには対応するインバータをゲート遮断して(ステップS160)、平滑コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrを入力する処理に戻る。そして、全ての平滑用コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至ってインバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに(ステップS170)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、全ての平滑用コンデンサ43,45,47の充電電荷を放電することができる。もとより、システムオフ時には最終的に全てのリレーをオフすることにより、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と前輪用モータ24,26,モータ36とを完全に遮断することができる。
【0031】
一方、前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に(ステップS180)、異常が生じているモータに対するリレーをオンする(ステップS190)。例えば、前輪用モータ24に異常が生じているときには前輪用モータ26に対するリレー59aをオンの状態で保持してモータ36に対するリレー57aをオフすると共に前輪用モータ24に対するリレー58aをオンするのである。これにより、前輪用モータ24に対する平滑用コンデンサ43はリレー58a,59aがオンであることから、平滑用コンデンサ45およびインバータ44に接続された状態となる。なお、前輪用モータ24,26の二つのモータに異常が生じているときにはモータ36に対するリレー57aをオンの状態で保持すると共に前輪用モータ24,26に対するリレー58a,59aをオンするのである。これにより、前輪用モータ24,26に対する平滑コンデンサ43,45はリレー57a,58a,59aがオンであることから、平滑用コンデンサ47およびインバータ46に接続された状態となる。
【0032】
そして、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し(ステップS200)、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間に取り付けられた電圧センサ42a,44a,46aからの電圧Vfr,Vfl,Vrを入力すると共に(ステップS210)、入力した電圧Vfr,Vfl,Vrのいずれかが値0に至っているか否かを判定し(ステップS220)、いずれかが値0に至っているときには対応するインバータをゲート遮断して(ステップS230)、平滑コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrを入力する処理に戻る。そして、全ての平滑用コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至ってインバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに(ステップS240)、前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフして(ステップS250)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、前輪用モータ24,26,モータ36のいずれかのモータに異常が生じているときでも異常が生じているモータに対する平滑用コンデンサを含めて全ての平滑用コンデンサ43,45,47の充電電荷を放電することができる。もとより、システムオフ時には最終的に全てのリレーをオフすることにより、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と前輪用モータ24,26,モータ36とを完全に遮断することができる。
【0033】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に異常が生じているモータに対するリレーをオンし、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至る順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに前輪用モータ24,26、モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフすることにより、前輪用モータ24,26,モータ36のいずれかのモータに異常が生じているときでも異常が生じているモータに対する平滑用コンデンサを含めて全ての平滑用コンデンサ43,45,47の充電電荷を放電することができる。もとより、システムオフ時には最終的に全てのリレーをオフすることにより、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51と前輪用モータ24,26,モータ36とを完全に遮断することができる。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に異常が生じているモータに対するリレーをオンし、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至る順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフするものとしたが、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常なモータに対するリレーのオンの状態を保持して異常が生じているモータに対するリレーをオンし、正常なモータの一つまたは二つにd軸電流が流れるように対応するインバータを制御し、d軸電流を流しているモータに対応する平滑コンデンサの端子間の電圧が値0に至ったときに対応するインバータを含めて全てのインバータ42,44,46をゲート遮断すると共に前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフするものとしてもよい。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれにも異常が生じていないときには、全てのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフすると共に全てのモータにd軸電流が流れるようインバータ42,44,46のスイッチング素子をスイッチング制御し、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至った順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに終了するものとしたが、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれにも異常が生じていないときには、全てのモータに対するリレー57a,58a,59aのオンの状態を保って前輪用モータ24,26,モータ36のいずれか一つまたは二つあるいは全てにd軸電流が流れるようインバータ42,44,46のスイッチング素子をスイッチング制御し、平滑コンデンサ43,45,47の電圧Vfr,Vfl,Vrのいずれかが値0に至ったときにインバータ42,44,46の全てをゲート遮断すると共にリレー57a,58a,59aの全てをオフして終了するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、前輪用モータ24,26,モータ36の3つのモータを第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に対して並列に接続するものとしたが、2つのモータを第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に対して並列に接続するものとしてもよく、4つ以上のモータを第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に対して並列に接続するものとしてもよい。また、実施例のハイブリッド自動車20では、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の2つのキャパシタを前輪用モータ24,26,モータ36に対して並列に接続するものとしたが、3つ以上のキャパシタを前輪用モータ24,26,モータ36に対して並列に接続するものとしてもよく、単一のキャパシタを前輪用モータ24,26,モータ36に接続するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51を前輪用モータ24,26,モータ36に並列に接続するものとしたが、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に代えて二次電池を前輪用モータ24,26,モータ36に接続するものとしても構わない。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在するようリレー55,56を取り付けると共に負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在するようリレー57a,58a,59aを取り付けるものとしたが、負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在するようリレー55,56を取り付けると共に正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在するようリレー57a,58a,59aを取り付けるものとしてもよい。また、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在するようリレー55,56を取り付け、正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在するようリレー57a,58a,59aを取り付けるものとしてもよい。更に、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在するようリレー55,56を取り付け、正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在するようリレー57a,58a,59aを取り付けたり、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在するようリレー55,56を取り付け、負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在するようリレー57a,58a,59aを取り付けたりしてもよい。
【0039】
実施例では、本発明を実施するための最良の形態としてハイブリッド自動車20に適用して説明したが、ハイブリッド自動車以外の車両に搭載された駆動装置の形態としてもよく、車両に搭載されない駆動装置の形態としてもよい。また、駆動装置の制御方法の形態としても構わない。
【0040】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、前輪用モータ24,26やモータ36が「複数の電動機」に相当し、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51が「蓄電手段」に相当し、正極用バスバー54aが「正極用接続部材」に相当し、負極用バスバー54bが「負極用接続部材」に相当し、リレー55,56が「電源用リレー」に相当し、リレー57a,58a,59aが「複数の電動機用リレー」に相当し、平滑用コンデンサ43,45,47が「複数の平滑用コンデンサ」に相当する。そして、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に異常が生じているモータに対するリレーをオンし、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至る順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフする図3のシステムオフ制御ルーチンのステップS100,S110,S180〜S250の処理を実行するモータECU40が「制御手段」に相当する。
【0041】
ここで、「複数の電動機」としては、同期発電電動機として構成された前輪用モータ24,26やモータ36に限定されるものではなく、2つのモータや4つ以上のモータとしてもよく、モータの種類も同期発電電動機に限定されるものではない。「蓄電手段」としては、第1キャパシタ50および第2キャパシタ51に限定されるものではなく、単一のキャパシタとしたり、3つ以上のキャパシタとしたり、二次電池とするなど、複数の電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「正極用接続部材」としては、導電性材料により形成された正極用バスバー54aに限定されるものではなく、蓄電手段の正極に接続されると共に複数の電動機側の各々の正極側端子に接続されて導電性を有するものであれば如何なるものとしても構わない。「負極用接続部材」としては、導電性材料により形成された負極用バスバー54bに限定されるものではなく、蓄電手段の負極に接続されると共に複数の電動機側の各々の負極側端子に接続されて導電性を有するものであれば如何なるものとしても構わない。「電源用リレー」としては、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在するリレー55,56に限定されるものではなく、負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在する2つのリレーとしたり、正極用バスバー54aと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと第1キャパシタ50および第2キャパシタ51の負極側端子とに介在する2つのリレーとするなど、蓄電手段の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なうものであれば如何なるものとしても構わない。「複数の電動機用リレー」としては、負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在するリレー57a,58a,59aに限定されるものではなく、正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在する3つのリレーとしたり、正極用バスバー54aと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の正極側端子とに介在すると共に負極用バスバー54bと前輪用モータ24,26,モータ36のインバータ42,44,46の負極側端子とに介在する3つのリレーとするなど、複数の電動機の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を複数の電動機毎に行なうものであれば如何なるものとしても構わない。「複数の平滑用コンデンサ」としては、平滑用コンデンサ43,45,47に限定されるものではなく、複数の電動機用リレーより複数の電動機側に取り付けられたものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常な一つのモータに対するリレーを除いて他のリレーをオフすると共に異常が生じているモータに対するリレーをオンし、異常が生じているモータを除いてモータにd軸電流が流れるよう対応するインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、各モータに対応する平滑コンデンサ43,45,47の端子間の電圧Vfr,Vfl,Vrが値0に至る順に対応するインバータをゲート遮断し、インバータ42,44,46の全てがゲート遮断されたときに前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフするものに限定されるものではなく、システムオフ時に前輪用モータ24,26,モータ36のうちいずれかのモータに異常が生じているときには、電源用のリレー55,55a,56をオフし、正常なモータに対するリレーのオンの状態を保持して異常が生じているモータに対するリレーをオンし、正常なモータの一つまたは二つにd軸電流が流れるように対応するインバータを制御し、d軸電流を流しているモータに対応する平滑コンデンサの端子間の電圧が値0に至ったときに対応するインバータを含めて全てのインバータ42,44,46をゲート遮断すると共に前輪用モータ24,26,モータ36のすべてのモータに対するリレー57a,58a,59aをオフするものとするなど、複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、電源用リレーにより蓄電手段の正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう電源用リレーを制御し、異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより異常に係る電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されていると共に複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーによりこの少なくとも一つの電動機が正極用接続部材および負極用接続部材に電気的に接続されている状態で複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう複数の電動機のうち異常に係る電動機以外の電動機を制御し、複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に複数の電動機のすべてが正極用接続部材および負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう複数の電動機用リレーを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0042】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0043】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、駆動装置やこれを搭載する車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例としてのレース用に開発されたハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド自動車20の電気系の構成の一例を示す構成図である。
【図3】システムオフが要請されてメイン電子制御ユニット70から送信されたシステムオフ制御信号を受信したモータECU40により実行されるシステムオフ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
20 ハイブリッド自動車、21 前輪駆動系、24,26 前輪用モータ、25,27 回転位置検出センサ、29a,29b 前輪、31 後輪駆動系、32 エンジン、33 クランクシャフト、33a クラッチ、34 トランスミッション、36 モータ、37 回転位置検出センサ、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 後輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、42,44,46 インバータ、42a,44a,46a,50a,51a 電圧センサ、42b,44b,46b,50b,51b 電流センサ、43,45,47 平滑用コンデンサ、50 第1キャパシタ、51 第2キャパシタ、50c,51c 温度センサ、54 ジャンクボックス、55,55a,56,57a,58a,59a リレー、55b 抵抗、57b,58b,59b ヒューズ、60 電子制御式油圧ブレーキユニット(ECB)、61 マスタシリンダ、61a マスタシリンダ圧センサ、62 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、64 ブレーキアクチュエータ、66a,66b,68a,68b ホイールシリンダ、70 メイン電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、81 アップスイッチ、82 ダウンスイッチ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動機と、該複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える駆動装置であって、
前記蓄電手段の正極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の正極側端子に接続される正極用接続部材と、
前記蓄電手段の負極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の負極側端子に接続される負極用接続部材と、
前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう電源用リレーと、
前記複数の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を前記複数の電動機毎に行なう複数の電動機用リレーと、
前記複数の電動機用リレーより前記複数の電動機側に取り付けられた複数の平滑用コンデンサと、
前記複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、前記電源用リレーにより前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記電源用リレーを制御し、前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより該異常に係る電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されていると共に前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーにより該少なくとも一つの電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されている状態で前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御し、前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に前記複数の電動機のすべてが前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記複数の電動機用リレーを制御する制御手段と、
を備える駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記異常時システムオフ時には、前記複数の電動機用リレーのうち前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーと前記異常に係る電動機以外の一つの電動機に対する電動機用リレーとを除く電動機用リレーにより前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機および前記一つの電動機以外の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除された状態で前記複数の平滑用コンデンサの電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御する手段である請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の駆動装置であって、
前記電源用リレーは、前記蓄電手段の正極または負極の一方の電極と前記正極用接続部材および前記負極用接続部材のうち該一方の電極に接続される接続部材との接続と接続の解除を行なうリレーであり、
前記電動機用リレーは、前記正極用接続部材および前記負極用接続部材のうち前記一方の電極に接続される接続部材とは異なる他方の接続部材と前記複数の電動機側の各々の正極側端子および負極側端子のうち前記他方の接続部材に接続される端子との接続と接続の解除を行なうリレーである、
駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記蓄電手段は、複数のキャパシタであり、
前記電源用リレーは、前記複数のキャパシタの各々の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう複数のリレーである、
駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載された駆動装置を搭載し、前記複数の電動機からの動力により走行する車両。
【請求項6】
請求項5記載の車両であって、
内燃機関と、
前記内燃機関からの動力を変速して後輪側に伝達する変速機と、
を備え、
前記複数の電動機の1つは、前記変速機を介して前記後輪側に動力を出力する後輪用電動機であり、
前記複数の電動機の1つは、前輪側に動力を出力する前輪用電動機である、
車両。
【請求項7】
複数の電動機と、該複数の電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、前記蓄電手段の正極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の正極側端子に接続される正極用接続部材と、前記蓄電手段の負極に接続されると共に前記複数の電動機側の各々の負極側端子に接続される負極用接続部材と、前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を行なう電源用リレーと、前記複数の電動機の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続および接続の解除を前記複数の電動機毎に行なう複数の電動機用リレーと、前記複数の電動機用リレーより前記複数の電動機側に取り付けられた複数の平滑用コンデンサと、を備える駆動装置の制御方法であって、
前記複数の電動機のいずれかに異常が生じている状態からシステムオフする異常時システムオフ時には、前記電源用リレーにより前記蓄電手段の前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記電源用リレーを制御し、前記異常に係る電動機に対する電動機用リレーにより該異常に係る電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されていると共に前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の少なくとも一つの電動機に対する電動機用リレーにより該少なくとも一つの電動機が前記正極用接続部材および前記負極用接続部材に電気的に接続されている状態で前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0となるよう前記複数の電動機のうち前記異常に係る電動機以外の電動機を制御し、前記複数の平滑用コンデンサのすべての電圧が略値0に至った以降に前記複数の電動機のすべてが前記正極用接続部材および前記負極用接続部材への電気的な接続が解除されるよう前記複数の電動機用リレーを制御する、
ことを特徴とする駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−254161(P2009−254161A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100530(P2008−100530)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】