説明

高熱伝導性および高ガラス転位温度(Tg)を有しプリント基板に使用する樹脂組成物ならびにそれを用いたプリプレグおよびコーティング

【課題】絶縁性と熱放散性に優れた誘電体層をPCB上に形成するのに適合した、高熱伝導性と高ガラス転位温度(Tg)を特徴とする樹脂組成物を提供し、高い熱伝導性を有するPCBを提供する。
【解決手段】樹脂組成物には、臭素化エポキシ樹脂を20〜70重量%、硬化剤を1〜10重量%、硬化促進剤を0.1〜10重量%、無機粉体を0〜20重量%、高熱伝導性粉体を5〜85重量%、および加工補助剤を0〜10重量%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、高熱伝導性および高ガラス転位温度を特徴とする、プリント基板(PCB)上に誘電体層を形成する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
“High Tg brominated epoxy resin for glass fiber laminate(ガラス遷移積層体用高Tg臭素化エポキシ樹脂)”と題する米国特許6,512,075号は、本発明と譲受人を同じくするものであるが、テトラブロモビスフェノール−Aと少なくとも1種の樹脂からなる臭素化エポキシ樹脂を開示しており、その樹脂としては、例えば、多官能フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂、二官能性エポキシ樹脂、二官能性臭素含有エポキシ樹脂がある。この臭素化エポキシ樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1500〜4000、分子量分布の指標(Mw/Mn比)が1.5〜4.0、エポキシ当量(EEW)が300〜450g/eq、ガラス転位温度(Tg)が150〜190度である。
【0003】
この臭素化エポキシ樹脂は、積層工程において作業時間を充分に取ることができ、ガラス繊維積層体に応用することができる。この積層体は、Tgが高く、耐熱性に優れており、高性能電子素材に応用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許6,512,075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の高密度集積回路化が進む中で、電子部品から発生する熱が蓄積する傾向があり、そのため従来のエポキシ樹脂では、熱伝導性の面からICに応用することが不適切となっている。そのため、本発明は、上述の米国特許のエポキシ樹脂を更に改良して、絶縁性と熱放散性に優れた誘電体層をPCB上に形成するのに適合した、高熱伝導性と高ガラス転位温度(Tg)を特徴とする樹脂組成物を提供し、高い熱伝導性を有するPCBを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主たる目的は、臭素化エポキシ樹脂を20〜70重量%、硬化剤を1〜10重量%、硬化促進剤を0.1〜10重量%、無機粉体を0〜20重量%、高熱伝導性粉体を5〜85重量%、および加工補助剤を0〜10重量%含む樹脂組成物を提供することである。
【発明の効果】
【0007】
本樹脂組成物は、優れた耐熱性と難燃性に加えて、ガラス転位温度(Tg)が高く、高熱伝導性を有している。この樹脂組成物は、浸漬により形成したプリプレグであって、高熱伝導性を特徴とする。また、本樹脂組成物は、コーティング処理により形成したコーティングであって、高熱伝導性を特徴とする。この高熱伝導性を有するプリプレグやコーティングは、プリント基板(PCB)上に誘電体層を形成するのに適しており、高熱伝導性を有するPCBが得られる。その結果、PCB上に載置した電子部品が発生する熱は、効率よく放散され、電子部品の寿命や安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の他、望ましい実施形態、その他の目的やその利点は、実施例の詳細な記述を添付する図と関連づけながら参照することで最もよく理解される。
【0009】
【図1】異なる粒径の球状酸化アルミニウム粉体(A/B=9/1)の細密充填モデルの実測値と理論値を示す。
【図2】異なる粒径の市販球状酸化アルミニウム粉体(DAW―300)を混合した場合の細密充填モデルの実測値と理論値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、プリント基板(PCB)上に誘電体層を形成するのに適した、高ガラス転位温度(Tg)および高熱伝導性を特徴とする樹脂組成物であって、PCB上に載置した作動電子部品により発生する熱を迅速に放散し、電子部品の寿命や安定性を向上する樹脂組成物を開示する。
【0011】
本樹脂組成物は、以下を含有することを特徴とする。
(1)樹脂の組成に基づき20〜70重量%の臭素化エポキシ樹脂。ここで、当臭素化エポキシ樹脂は、米国特許6,512,075が教示する臭素化エポキシ樹脂と同じものであって、テトラブロモビスフェノール−Aと少なくとも1種の樹脂を用いた反応により製造される生成物であり、この樹脂は、例えば、多官能フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂、二官能性エポキシ樹脂、二官能性臭素含有エポキシ樹脂であって、樹脂の比率は、加工性、物性、および得られる誘電体層(例えば、プリプレグや樹脂コート銅箔)の形状を望ましくするために、調整を行う。
(2)樹脂の組成に基づいて1〜10重量%の硬化剤。
(3)樹脂の組成に基づいて0.1〜10重量%の硬化促進剤であって、上記臭素化エポキシ樹脂と硬化剤との架橋反応を促進し、反応速度が用いた硬化促進剤の量に依存するもの。
(4)樹脂の組成に基づいて0〜20重量%の無機粉体であって、当樹脂組成物に対して硬化処理を行った後の樹脂組成物の剛性を向上するもの。
(5)樹脂の組成に基づいて5〜85重量%の高熱伝導性粉体。ここで、高熱伝導性粉体の樹脂組成物における割合が5重量%未満である場合には、樹脂組成物の熱伝導性が低くなり、樹脂組成物における割合が85重量%を越える場合には、樹脂組成物の加工性や物性が低下する。
(6)樹脂の組成に基づいて0〜10重量%の加工補助剤であって、樹脂組成物の加工性、機械的および電気的特性、熱特性、ならびに光安定性を向上するもの。
【0012】
本発明の樹脂組成物の硬化剤としては、アミン類、酸無水物、フェノール系樹脂、ポリチオール化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、およびアルキド樹脂のうち少なくとも1種であり、好ましくは、アミン類、フェノール系樹脂、酸無水物およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0013】
アミン類から選ばれる硬化剤は、脂肪族アミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、エタノールアミン等)、ポリアミドポリアミン、脂環式化合物(ビス(4―アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ジアミノシクロヘキサン)メタン等)、アリール類(m−キシレンジアミン、ジイミドジフェニルメタン、ジイミドジフェニルスルフォン、メタフェニレンジアミン等)、ジシアノジアミド、アジピン酸ジヒドラジド、一級アミン、二級アミン、および三級アミンのうちのいずれかである。
【0014】
酸無水物から選ばれる硬化剤は、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、無水メチルナディック酸、ドデセニル無水コハク酸、無水クロレンド酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、およびポリアゼライン酸ポリ無水物のうちのいずれかである。
【0015】
当樹脂組成物に使用する硬化促進剤は、三級アミン類およびその塩、四級アンモニウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン、イミダゾール類(2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等)、tert−アミルフェノールアンモニウム、モノフェノール類またはポリフェノール類(フェノール類やサリチル酸等)、三フッ化ホウ素およびその有機錯体化合物(三フッ化ホウ素・エーテル錯体、三フッ化ホウ素・アミン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体等)、リン酸、ならびに亜リン酸トリフェニルからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、好ましくは、当硬化促進剤は、三級アミン類、イミダゾール類およびその組み合わせのうちのいずれかである。
【0016】
無機粉体は、SiO2、TiO2、Al(OH)3、Mg(OH)2、CaCO3、および煙霧シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、球状または不規則な形状を取る。この無機粉体の平均粒径は、好ましくは、0.01〜20ミクロンである。ここで、煙霧シリカは、平均粒径が1〜100nmであるナノサイズのシリカ微粒子の形状で添加する。煙霧シリカは、好ましくは、樹脂の組成に基づいて、0.1〜10重量%添加する。煙霧シリカを10重量%を越えて加えた場合には、得られる樹脂組成物の粘度が大幅に上昇し、加工性が損なわれる。
【0017】
樹脂組成物の高熱伝導性粉体は、金属窒化物、金属酸化物、炭化物、およびコロランダムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
より詳細には、金属窒化物には、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素が含まれる。金属酸化物には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛が含まれる。炭化物には、炭化ケイ素および炭化ホウ素が含まれる。ここで、高熱伝導性粉体は、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、または炭化ケイ素であって、より好ましくは、誘電率または硬度が低い酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である。
【0019】
高熱伝導性粉体は、粉末状、球状、繊維状、チップ状またはフレーク状の形状で添加されるが、異なる形状を組み合わせて使用することもある。
【0020】
高熱伝導性粉体を粉末状で添加する場合には、平均径(D50)が0.05〜50ミクロンであり、好ましくは、0.1〜20ミクロンであって、より好ましくは0.1〜10ミクロンである。高熱伝導性粉体を繊維状で添加する場合には、平均直径が0.1〜10ミクロンで、長さと直径の比が3を上回る形状であって、好ましくは、平均直径が0.1〜5ミクロン、長さと直径の比が10を越えるものである。直径が0.1ミクロンよりも小さい繊維は、細すぎて樹脂組成物と十分に混和せず、直径が10ミクロンを越える繊維は、樹脂組成物の外見に対し審美的な面で悪影響を及ぼす。
【0021】
樹脂組成物における高熱伝導性粉体の充填比を最大化するため、添加に際して異なる粒径の高熱伝導性粉体を組み合わせて使用するとともに、粉体工学で知られた数式モデルであるHorsfieldモデルを用いて、細密充填モデルおよび細密充填曲線を導出し、混合した高熱伝導性粉体の充填比を最大化することにより、本発明の樹脂組成物の熱伝導率が最大となるとなるようにした。
【0022】
Horsfieldモデルにより、本発明の樹脂組成物中の高熱伝導性粉体の最大充填比は、85重量%である。樹脂組成物中に高熱伝導性粉体が85重量%含まれるとき、樹脂組成物は、積層工程における作業時間を充分に取ることができ、高Tg、優れた耐熱性、および良好な剥離強度を有する。比較として、o−クレソールホルムアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂からなる従来の樹脂組成物では、65重量%を越えて高熱伝導性粉体を含有すると、加工性および物性に悪影響が生じる。
【0023】
本発明の樹脂組成物に使用する加工補助剤は、充填剤、カップリング剤、補強性充填剤、可塑剤、分散剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、顔料および色素からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0024】
カップリング剤は、本樹脂組成物において、樹脂と無機粉体および/または高熱伝導性粉体との界面の表面親和性を改善するために使用する。カップリング剤は、樹脂組成物に直接添加する。あるいは、無機粉体または高熱伝導性粉体とカップリング剤とを事前に処理した後に、樹脂組成物形成用に使用する。
【0025】
実際の利用形態では、樹脂組成物を浸漬により高熱伝導性プリプレグとしたり、あるいはコーティングにより高熱伝導性コーティングとすることができる。プリプレグやコーティングは、その後にプリント基板(PCB)の誘電体層として使用し、PCBを高熱伝導性にすることができる。
【0026】
プリプレグは、樹脂組成物に浸漬する基質であるガラス繊維布上に形成する。コーティングには、樹脂組成物によるコーティングを行う金属箔(シート)またはプラスチックフィルムが含まれる。金属箔(シート)は、FR−4基質、銅箔(シート)、アルミ箔(シート)、および錫箔(シート)からなる群から選ばれ、プラスチックフィルムは、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリビニルクロリドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、およびポリウレタンフィルムからなる群から選ばれる。
【0027】
高熱伝導性プリプレグまたはコーティングをPCBの誘電体層として用いると、PCBは、熱伝導性が高くなる他、以下の利点が得られる。
1.小型化。
2.電流密度の向上。
3.PCBを使用する製品の熱特性および機械特性の向上。
4.PCBを使用する製品の耐久性の向上。
5.PCBを使用する製品に冷却フィンやその他の熱放散用部品を削減可能。
6.比較的壊れやすいセラミック製基質の機械的耐久性が向上。
【0028】
以下の実施例および比較例は、本発明の効果を例示するために述べるものであって、引用した例が本発明の範囲を限定すると解釈すべきものではない。
【0029】
米国特許6,512,075に教示された高Tg臭素化エポキシ樹脂に対して、上記の高熱伝導性粉体の少なくとも1種を加えて、以下の例に示す高熱伝導性かつ高Tgの樹脂組成物を得る。この樹脂組成物は、既存のいかなる適用可能な方法によっても、銅箔基質を形成するのに用いることができる。例えば、ジシアナミドや多価フェノール化合物を組成物の硬化剤として用いる。このように用いた場合、ジシアナミド量は、2−8PHR(樹脂百分率)であり、好ましくは2−4PHR、多価フェノール化合物は、フェノールの水酸基とエポキシ基の当量比が0.5〜1.5、好ましくは0.9〜1.1とする。イミダゾール類や三級アミン類を硬化促進剤として用い、溶媒(利用可能な例には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンおよびブタノンがある。)を加えて樹脂組成物の粘度を調整する。その後に、樹脂組成物を用いて、ガラス繊維布の浸漬または銅箔のコーティングを行い、浸漬したガラス繊維布またはコーティングした銅箔を加熱乾燥させ、プリプレグやRCC(樹脂付銅箔)とする。このプリプレグやRCCをこの後に銅箔上に積層し、あるいは2枚の銅箔で挟んで、銅箔基質とする。
【実施例1】
【0030】
20.2重量部のビスフェノール−A(エポキシ当量(EEW)が186g/eq、NPEL−128E、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)、49.5重量部の多官能フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂、および21.2重量部のテトラブロモビスフェノール−A(TBBA)を170度で120分間反応させた後、130度に冷却する。7重量部のテトラブロモビスフェノール−Aエポキシ樹脂(EEW=390g/eq、NPEB−400、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)および2重量部の四官能性エポキシ(NPPN−431、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)を加え、均一に撹拌して、臭素化エポキシ樹脂「EP−1」を得る。
【0031】
臭素化エポキシ樹脂「EP−1」を20重量%のアセトンに溶解して、80重量%の「EP−1」を得る。このようにして得られた「EP−1」は、EEWが378g/eq、Mwが3366、臭素含有率が15.8重量%であった。
【0032】
DMFに溶解した100部の「EP−1」、2.5部のジシアナミド、および0.05部の2−フェニルイミダゾールを、185.7部の高熱伝導性粉体と混和し、65重量%の臭素化エポキシ樹脂「EP−1」を調製する。ここで、高熱伝導性粉体は、カップリング剤と前処理を行い、必要に応じてその他の補助剤(分散剤や光安定剤等)を加える。
【0033】
ここで、液体樹脂に添加する高熱伝導性粉体(185.7部)の細密充填モデルは、Horsfieldの充填モデルにより得られた。得られた特殊な構造には、33.4部の球状酸化アルミニウム粉体(平均粒径D50=5μm)、3.7部の球状酸化アルミニウム粉体(平均粒径D50=0.5μm)、および148.6部の窒化ホウ素(平均粒径D50=5.5μm)が含まれる。
【0034】
ガラス繊維布(グレード1080、台湾Nan Ya Plastics Corporationより入手)を上述の樹脂に浸漬し、170度で数分(浸漬機により)乾燥させ、乾燥プリプレグの最低溶融粘度が4000〜10000poiseの範囲に来るように乾燥時間を調節した。厚さが35μmの銅箔2枚の間にプリプレグ積層体を8枚重ね、25kg/cm2の圧力で押さえながら、温度を85度に20分間保った後、185度まで5度/分の割合で加熱上昇させ、185度に120分間保った後徐々に130度まで冷却して、厚さが1.6mmの銅箔基質を得た。
【0035】
得られた銅箔基質に対して試験を行い、試験結果を表1に示した。
【実施例2】
【0036】
実施例1で添加した高熱伝導性粉体量を400重量部に変更し、Horsfieldモデルを用いて高熱伝導性粉体の細密充填モデルを得たところ、得られた特殊な構造には、72部の球状酸化アルミニウム粉体(平均粒径D50=5μm)、8部の球状酸化アルミニウム粉体(平均粒径D50=0.5μm)、および320部の窒化ホウ素(平均粒径D50=5.5μm)が含まれる。図1には、酸化アルミニウムの実際の充填曲線および理論曲線を比較して示した。
【0037】
得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0038】
実施例2に記載の方法により樹脂を調製し、樹脂の固形成分含量を75重量%に調整し、当樹脂を厚さが35μmの銅箔に塗布し、コーティング厚が100μmのRCC(樹脂付銅箔)を作成した。次に厚さが35μmの別の銅箔上に当樹脂を、実施例1に記載の積層条件で積層した。得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【実施例4】
【0039】
異なる高熱伝導性粉体を用いた以外は実施例2に記載の方法に従い樹脂を調製し、実施例4の樹脂組成物を得た。用いた粉体は、異なる粒径からなる市販の球状酸化アルミニウム粉体DAW−300(デンカ(株)製、DAW−45/DAW−5=1/1、平均粒径D50=4.4μm)80部と酸化ホウ素320部である。図2には、市販の酸化アルミニウム粉体の実際の充填曲線および理論曲線を比較のために示した。
【0040】
得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
37重量部のビスフェノール−Aエポキシ樹脂(EEW=186g/eq、NPEL−128E、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)、10部のo−クレゾール多官能フェノール系エポキシ樹脂(EEW=210g/eq、NPCN−704、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)、26部のテトラブロモビスフェノール−A(TBBA)、および5部の四官能性エポキシ樹脂(NPPN−431、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)を170度で120分間反応させた後、130度に冷却する。次に、15部のビスフェノール−Aエポキシ樹脂(エポキシ当量(EEW)=186g/eq、NPEL−128E、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)および7部のテトラブロモビスフェノール−Aエポキシ樹脂(エポキシ当量(EEW)が390g/eq、NPEB−400、台湾のNan Ya Plastics Corporationより入手)を加え、均一に撹拌して、臭素化エポキシ樹脂「EP−2」を得る。臭素化エポキシ樹脂「EP−2」を20重量%のアセトンに溶解して、80重量%の「EP−2」を得る。このようにして得られた「EP−2」は、エポキシ当量(EEW)が354g/eq、Mwが2800、臭素含有率が18.7%であった。
【0042】
エポキシ樹脂「EP−2」に対して、33.4部の球状酸化アルミニウム粉体A(平均粒径D50=5μm)、3.7部の球状酸化アルミニウム粉体B(平均粒径D50=0.5μm)、および148.6部の窒化ホウ素C(平均粒径D50=5.5μm)により、高熱伝導性粉体を加える。その後実施例1に記載の方法により、銅箔基質を得る。
【0043】
得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
比較例2の樹脂に対して、72部の球状酸化アルミニウム粉体(平均粒径D50=5μm)、8部の球状酸化アルミニウム粉体B(平均粒径D50=0.5μm)、および320部の窒化ホウ素(平均粒径D50=5.5μm)からなる400部の高熱伝導性粉体を加える。その後実施例1に記載の方法により、銅箔基質を得る。
【0045】
得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【0046】
[比較例3]
窒化ホウ素のみからなる400部の高熱伝導性粉体を加える以外は、実施例2に記載と同じ方法により樹脂を調製し、その後実施例1に記載の方法により銅箔基質を得た。得られた銅箔基質に対しても試験を行い、試験結果を表1に示す。
【0047】
結論
実施例1〜4および比較例1〜3の結果を比較すると、以下の結論が導かれる。
【0048】
1.実施例1および2により、「EP−1」樹脂に185.7部および400部をそれぞれ加えた場合、望ましい反応性、積層工程のゆるやかな作業時間、高Tg、および樹脂組成物の優れた耐熱性には影響が見られなかったものの、樹脂組成物の熱伝導率は、5.7W/mK(実施例1)および8.4W/mK(実施例2)にそれぞれ上昇した。RCC工程を実施した場合(実施例3)、樹脂組成物の熱伝導率は、さらに10.2W/mK(実施例3)まで上昇した。
【0049】
2.実施例1および2ならびに比較例1および2から、次のことが示される。すなわち、(1)ワニスゲル化時間が300±15秒であるとき、硬化促進剤を追加して硬化作用を促進すると、物性が向上すること、(2)エポキシ樹脂の最低溶融粘度をおよそ5500±300poise内に調整すると、「EP−1」によるプリプレグのゲル化時間は、「EP−2」によるプリプレグのゲル化時間よりも長くなり、多官能フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂を用いて製造した「EP−1」は作業時間を長く取ることができるため、基質のホットプレス作業やホットプレス温度増加速度が広範囲である工程における樹脂フローのコントロールが容易となる。以上のことから、当樹脂組成物からなる製品は、利便性に優れており、積層体を有する基質の均一性が保証される。
【0050】
3.図1および2から、Horsfieldモデルを用いて決定した球状酸化アルミニウムと窒化ホウ素からなる高熱伝導性粉体(実施例2)を用いて調製した樹脂組成物は、実際の充填曲線が理論曲線に最も近く(図1)、かつ、熱伝導率が8.4W/mKを示し、この値は窒化ホウ素を用いた樹脂組成物の熱伝導率である6.8W/mK(比較例3)よりも高いことが分かる。
【0051】
市販の混合球状酸化アルミニウム粉体を用いて調製した樹脂組成物(実施例4)では、実際の細密充填曲線が理論曲線から乖離し(図2)、熱伝導率もわずか6.5W/mKであった。このことから、実際の細密充填曲線と理論曲線とが近いほど、球体間の接触点が多く存在し、粉体の充填比が高くなり、樹脂組成物の熱伝導性が良くなることが示される。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導性および高ガラス転位温度を有する樹脂組成物であって、
(1)多官能フェノール・ベンズアルデヒドエポキシ樹脂、二官能性エポキシ樹脂、および二官能性臭素含有エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂とテトラブロモビスフェノール−Aとからなる臭素化エポキシ樹脂を樹脂の組成に基づき20〜70重量%、
(2)硬化剤を樹脂の組成に基づいて1〜10重量%、
(3)硬化促進剤を樹脂の組成に基づいて0.1〜10重量%、
(4)無機粉体を樹脂の組成に基づいて0〜20重量%、
(5)高熱伝導性粉体を樹脂の組成に基づいて5〜85重量%、ならびに
(6)加工補助剤を樹脂の組成に基づいて0〜10重量%
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤がアミン類、酸無水物、フェノール系樹脂、ポリチオール化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物およびアルキド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
硬化促進剤が三級アミン類およびその塩、四級アンモニウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン、イミダゾール類、tert−アミルフェノールアンモニウム、モノフェノール類またはポリフェノール類、三フッ化ホウ素およびその有機錯体化合物、リン酸、ならびに亜リン酸トリフェニルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
無機粉体がSiO2、TiO2、Al(OH)3、Mg(OH)2、CaCO3、および煙霧シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、球状または不規則な形状を取る、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
高熱伝導性粉体が金属窒化物、金属酸化物、炭化物、およびコロランダムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
金属窒化物が窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
金属酸化物が酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
炭化物が炭化ケイ素および炭化ホウ素を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
加工補助剤が充填剤、カップリング剤、補強性充填剤、可塑剤、分散剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、顔料および色素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の樹脂組成物にガラス繊維布を浸漬することにより製造する、プリント基板用高熱伝導性プリプレグ。
【請求項11】
請求項1に記載の樹脂組成物で金属箔、金属シート、またはプラスチックフィルムをコーティングすることにより製造する、プリント基板用高熱伝導性コーティング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47743(P2010−47743A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29596(P2009−29596)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(599011296)南亜塑膠工業股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】