説明

MEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイス

【課題】本発明は、陽極接合時に可動部がガラス基板へ張り付くことを防止し、製造コストを抑制し、且つ接合不良を防止するMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、半導体基板に固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を形成し、ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の周囲に位置する領域に導電部材を配置し、前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電部材の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力により可動する可動部を有するMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、半導体基板に枠状の固定部と固定部の内側あるいは外側に可撓部で支持された可動部を形成するタイプのデバイスが実用化されている。このようなデバイスとしては、例えば、加速度センサ、角速度センサ等がある。また、MEMS技術を用いて、半導体基板に枠状の固定部と固定部の内側に配置されたダイアフラム状可動部を有するデバイスとして、例えば、圧力センサ、マイクロポンプ等が実用化されている。
【0003】
上記のようなデバイスでは、可動部を安定して変位させるため、半導体基板を封止材(例えば、ガラス基板等)で密封又は蓋をする構造がとられており、半導体基板とガラス基板の接合には陽極接合技術が利用されている。陽極接合は、MEMSデバイスを形成した半導体基板と封止材としてのガラス基板を重ね合わせた状態で加熱しながら半導体基板とガラス基板に電圧を印加して、共有結合により接合する技術である。
【0004】
しかし、陽極接合時に静電引力により可動部が変形し、ガラス基板に張り付いてしまうという問題が発生していた。この現象の一例を図13に示す。図13はMEMSデバイスとして加速度センサ10の構成例を示す。この加速度センサ10は、半導体基板11に枠状の固定部12と固定部12の内側に可撓部13で支持された可動部14を形成している。また、図13において、15はガラス基板、21は陽極接合時にガラス基板15全面に電圧を印加するため電極板、22は陽極接合用の直流高圧電源である。直流高圧電源22は、ガラス基板15にマイナス電圧を印加するように負電極を電極板21に接続し、正電極を半導体基板に接続している。電極板21は陽極接合時のみにガラス基板15上に配置される。図13(A)は陽極接合前の状態を示し、直流高圧電源22から半導体基板11とガラス基板15には電圧は印加されていない。そして、陽極接合する際は、半導体基板11とガラス基板15を重ね合わせた状態で、例えば、400℃程度で加熱しながら直流高圧電源22から500V程度のマイナス電圧をガラス基板15に印加して、半導体基板11とガラス基板15を陽極接合する。図13(B)は陽極接合時の状態を示す。ガラス基板15は、Naイオンなどの可動イオンを含む、いわゆるパイレックス(登録商標)ガラスである。陽極接合時は、図13(B)に示すようにガラス基板15内のNaイオン(Na)は印加されたマイナス電圧により電極板21側に移動し、ガラス基板15と半導体基板11との間に静電引力を発生させて、ガラス基板15と半導体基板11の界面で共有結合が発生する。この時、静電引力により図13(B)に示すように可動部14がガラス基板15に張り付いてしまうという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1の容量型加速度センサがある。この容量型加速度センサは、上記問題を防止するため、可動部が対向するガラス基板上に窒化珪素からなる凸部を設けている。また、この容量型加速度センサは、上記問題を防止するため、ガラス基板の可動部対向面を非鏡面としている。
【0006】
また、上記問題を解決するため、例えば、特許文献2に加速度センサがある。この加速度センサは、可動電極と固定電極との張り付きを防止するため、可動電極、固定電極および枠部分の側面に付着防止用膜(ステン膜)を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−187041号公報
【特許文献2】特開2001−308347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の容量型加速度センサではガラス基板上に窒化珪素からなる凸部を設け、特許文献2の加速度センサでは付着防止用膜(ステン)を設けているが、これらの構造を形成するために工数が増加し、デバイスの製造コストを上昇させる。
【0009】
また、陽極接合時に可動部の張り付き防止のためにガラス基板の半導体基板との接合面に、Cr等の張り付き防止膜を形成する方法もあるが、成膜後の接合面の洗浄に酸やアルカリ等を使用できなくなるため、パーティクルや変質層の除去が困難になり、陽極接合時に接合不良の原因となる。これは、特許文献2の加速度センサにおいてガラス基板の可動部対向面を非鏡面とする場合も同様である。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑み、陽極接合時に可動部がガラス基板へ張り付くことを防止し、製造コストを抑制し、且つ接合不良を防止するMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、半導体基板に固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を形成し、ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の周囲に位置する領域に導電部材を配置し、前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電部材の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、半導体基板に固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を形成し、ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の周囲に位置する領域に導電膜を形成し、前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電膜の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する複数のMEMSデバイスを半導体基板に形成し、ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の各々の周囲に位置する各領域に導電膜を形成し、前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電膜の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する複数のMEMSデバイスを半導体基板に形成し、電極板に前記複数のMEMSデバイスの可動部に各々対向する位置に複数の貫通孔を形成し、前記電極板をガラス基板の一方の面に接触させ前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記電極板の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する半導体基板と、前記半導体基板と対向する一方の面が前記固定部と陽極接合されたガラス基板と、を備え、前記ガラス基板の前記可動部に対向する上部と前記固定部に対向する上部における可動イオン濃度が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体基板との陽極接合部分に合わせてガラス基板の上面の一部領域に導電部材を配置して陽極接合を行うことにより、陽極接合時に可動部がガラス基板へ張り付くことを防止し、製造コストを抑制し、且つ接合不良を防止するMEMSデバイスの製造方法及びMEMSデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加速度センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る加速度センサの製造方法を示す図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板にフレーム、可撓部、可動部を形成する工程を示す断面図、(C)は(B)の半導体基板に導電膜を形成したガラス基板を重ねる工程を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る加速度センサの陽極接合工程を示す図であり、(A)は半導体基板とガラス基板に電圧を印加する前の状態を示す断面図、(B)は半導体基板とガラス基板に電圧を印加して陽極接合した状態を示す断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る加速度センサの陽極接合前後のイオン分布を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係る加速度センサの導電膜の形成例を示す図であり、(A)は可動部の周囲に導電膜を形成した例を示す平面図、(B)は固定部と可撓部の一部を含む領域に導電膜を形成した例を示す平面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る加速度センサの導電膜の形成例を示す図であり、(A)は固定部に対応する領域に導電膜を形成した例を示す平面図、(B)はスクライブラインの形成位置に合わせて導電膜を形成した例を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロポンプの概略構成を示す図であり、(A)はマイクロポンプの概略構成を示す平面図、(B)は(A)のマイクロポンプをA−A線から見た構成を示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態に係るマイクロポンプの製造方法を示す図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板上にレジストパターンを形成する工程を示す断面図、(C)は(B)のレジストパターンにより半導体基板を加工する工程を示す断面図、(D)はシリコン酸化膜により半導体基板を加工する工程を示す断面図である。
【図9】(A)は図9(D)の半導体基板にガラス基板を陽極接合する工程を示す断面図、(B)は圧電素子を接着する工程を示す断面図である。
【図10】比較例1に係るマイクロポンプの(A)は陽極接合時の構成を示す断面図、(B)は陽極接合後の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る加速度センサの(A)は電極板の構成例を示す平面図、(B)複数の加速度センサを形成した半導体基板の構成例を示す平面図である。
【図12】第3の実施の形態に係る陽極接合工程を示す図であり、(A)は半導体基板とガラス基板の構成例を示す平面図、(B)は陽極接合前の半導体基板とガラス基板を重ね合わせる工程を示す平面図、(C)は(B)に更に電極板を重ね合わせる工程を示す平面図である。
【図13】従来の加速度センサの陽極接合工程を示す図であり、(A)は陽極接合前の加速度センサの概略構成を示す断面図、(B)は陽極接合時の加速度センサの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、MEMSデバイスとして加速度センサを製造する例について説明する。
【0020】
<加速度センサの構成>
まず、第1の実施の形態に係る加速度センサの構成について図1を参照して説明する。図1は第1の実施の形態に係る加速度センサ100の概略構成を示す断面図である。図1において、加速度センサ100は、枠状の固定部102と固定部102の内側に可撓部13により変位可能に支持される可動部104とを有する半導体基板101と、ガラス基板105と、を備える。この加速度センサ100は、加速度の作用に起因して生じる可動部104の変位を検出する。
【0021】
半導体基板101としては、例えば、上面からシリコン膜、シリコン酸化膜、シリコン基板が順に積層して構成されるSOI(Silicon on Insulator)基板等が用いられる。なお、半導体基板101の厚さや大きさは特に限定されず、用途や、機能などに応じて任意に選択することが可能である。
【0022】
ガラス基板105には、半導体基板101と接合する接合面と対向する面(図中の上面)にAl等により導電膜106が形成される。なお、導電膜106はAlに限定するものではなく、導電性を有し、陽極接合時の温度に耐えられる材料であればよい。例えば、Cu,Fe,Au,Ag等の金属材料からなる一層ないし多層構造を採用することができる。導電膜106としてAlを用いることが低コスト、製造上の容易性の点で好ましい。この導電膜106は、半導体基板101とガラス基板105を陽極接合する際の接合部分に合わせて形成される。この導電膜106により、ガラス基板105に印加される電圧は、ガラス基板105の全面ではなく半導体基板101とガラス基板105の接合部分と対向する部分に主に印加される。なお、ガラス基板105としては、例えば、Naイオンなどの可動イオンを含む、いわゆるテンパックス(登録商標)ガラス等が用いられる。
【0023】
<加速度センサの製造方法>
以下、加速度センサ100の製造方法について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2及び図3は、図1に示した加速度センサ100の断面図に基づいて各製造工程を示している。
【0024】
(1)半導体基板の準備(図2(A)参照)
半導体基板101として上述のSOI基板を用意する。半導体基板101は、SIMOXないし、貼り合せ法等により作成される。
【0025】
(2)半導体基板の加工(図2(B)参照)
半導体基板101に固定部102、可撓部103及び可動部140を加工するためのマスクを形成し、該マスクを介して半導体基板101をエッチングすることにより、固定部102、可撓部103及び可動部104を形成する位置に凹部を形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いることができる。
【0026】
(3)ガラス基板の加工(図2(C)参照)
可動イオンを含むガラス基板105の上面に、半導体基板101とガラス基板105を陽極接合する際の接合部分に合わせてAl,Cu,Fe,Au,Ag等により導電膜106を形成する。図2(C)に示す導電膜106は左右に分離して形成されているように見えるが、実際にはガラス基板105上面の外周部に連続して形成されている(図4参照)。なお、導電膜106の形成位置は、接合部分に限るものではない。例えば、複数の加速度センサを形成した半導体基板とガラス基板を陽極接合する場合は、加速度センサチップ間の境界部分に形成されるスクライブラインの形成位置に合わせて形成してもよい。この例は、後述する第3の実施の形態において説明する。また、ガラス基板105の上面において導電膜106を形成する領域は、図2(C)に示す領域に限定するものではなく、図2(C)に示す可動部104に対向する領域Aを除いて形成することが望ましい。この導電膜106の形成領域に関する他の例については後述する。
【0027】
(4)半導体基板とガラス基板の位置合わせ(図2(D)参照)
半導体基板101の接合面とガラス基板105の接合面の位置を合わせる。この場合、半導体基板101に予め形成されたアライメントマーク(図示せず)とガラス基板105に予め形成されたアライメントマーク(図示せず)に基づいて位置合わせが行われる。
【0028】
(5)陽極接合の準備(図3(A)参照)
半導体基板101の接合面と対向する面(図中の下面)に電極板121を配置し、導電膜106の上面に電極板121を配置し、直流高電圧電源122の負電極を導電膜106に電気的に接続し、直流高電圧電源122の正電極を電極板121に電気的に接続する。なお、電極板121としては、例えば、カーボン基板等が用いられる。なお、この場合、半導体基板101の接合面とガラス基板105の対向面との間のギャップは、例えば、5μm〜10μmである。また、電極板121はカーボン基板に限定するものではなく、導電性を有し剛性がある材料からなる板状体であればよい。例えば、グラファイト(C),あるいは金属材料等を採用することができる。金属汚染による影響を考慮すると電極板121としてグラファイトを用いることが好ましい。
【0029】
(6)陽極接合(図3(B)参照)
半導体基板101とガラス基板105を重ね合わせた状態で、例えば、400℃程度で加熱しながら直流高圧電源22から500V程度のマイナス電圧をガラス基板105に印加して、半導体基板101とガラス基板105の陽極接合を行う。この場合、ガラス基板105に印加される電圧は、導電膜106が形成された部分に主に印加される。このため、図3(B)に「共有接合部分」として示すように、半導体基板101とガラス基板105が接触する部分において共有結合が発生する。すなわち、導電膜106に印加されたマイナス電圧により、半導体基板101の固定部102と対向するガラス基板105の内部において主にNaイオン(可動イオン)をガラス基板105の上面側に拡散させ、半導体基板101の可動部104に対向するガラス基板105の内部ではNaイオン(可動イオン)の拡散は抑制される。このため、静電引力が可動部104に及ぼす影響が減少し、可動部104がガラス基板105に張り付く現象(スティッキング)が防止される。
【0030】
ここで、陽極接合前後のガラス基板105内のNaイオン(可動イオン)の分布状態について図4を参照して説明する。図4(A)は、図3(B)に示した加速度センサ100をガラス基板105の上面側から見た平面図であり、その外周部に導電膜106が形成されている。導電膜106の内側に示す点線は、半導体基板101の固定部102と可動部104の各位置を示す。この図4(A)のA−A線から見た断面におけるNaイオンの分布状態を図4(B)に示す。陽極接合前のガラス基板105内のNaイオンの分布状態は、図4(B)に示す「電圧印加前のA−A断面の初期イオン分布」であり、ガラス基板105内に略一様に分布している。陽極接合後のガラス基板105内のNaイオンの分布状態は、図4(B)に示す「電圧印加後のA−A断面のイオン分布」であり、導電膜106を形成した部分のイオン分布は大きく変化し、導電膜106を形成していない半導体基板101の可動部104に対向する部分のイオン分布は初期イオン分布と同様であり、殆ど変化はない。
【0031】
図4(B)に示した陽極接合前後のガラス基板105内のNaイオンの分布状態の変化は、導電膜106を形成した部分は陽極接合時に電場が印加されたためガラス基板105内のNaイオンの濃度分布は低くなり、導電膜106を形成していない部分は陽極接合時に電場が印加されないためガラス基板105内のNaイオンの濃度分布は高いまま変化しないことを示している。電場が印加されない部分については静電引力が働かない。このため、加速度センサ100の製造過程において、陽極接合時の接合部分に合わせてガラス基板105の上面の一部に導電膜106を形成して陽極接合を行うことにより、半導体基板101の可動部104が静電引力によりガラス基板105に張り付くことを防止できる。さらに、本第1の実施の形態では、ガラス基板105の上面の一部に導電膜106を形成するだけであるため、従来の特許文献1のように半導体基板側の加工が不要であり、製造コストの上昇を抑制できる。なお、図3では、陽極接合時に半導体基板101とガラス基板105の双方に電極板121を配置する場合を示したが、電極板121を用いずに導電膜106と半導体基板101に直接電圧を印加するようにしてもよい。
【0032】
次に、図4(A)に示した導電膜106の形成領域とは異なる領域に導電膜106を形成する例について、図5及び図6を参照して説明する。図5において、(A)は可動部104の周囲に導電膜106を形成した例を示す平面図、(B)は固定部102と可撓部103の一部を含む領域に導電膜106を形成した例を示す平面図である。図6において、(A)は固定部102に対応する領域に導電膜106を形成した例を示す平面図、(B)はスクライブラインの形成位置に合わせて導電膜106を形成した例を示す平面図である。
【0033】
図5(A)は可動部104の周囲に導電膜106を形成した例を示す。この場合、導電膜106の形成領域は、可動部104の形成領域を除いて固定部102及び可撓部103の大部分をカバーしている。このような導電膜106に対して陽極接合時に電圧を印加すると、図4(B)に示したように半導体基板101とガラス基板105の界面においてイオン分布が主に変化して共有結合が発生する。その結果、可動部104が静電引力によりガラス基板105に張り付くことを防止しながら、半導体基板101とガラス基板105を確実に接合することができる。
【0034】
図5(B)は固定部102と可撓部103の一部を含む領域に導電膜106を形成した例を示す。この場合、導電膜106の形成領域の大きさは、図5(A)に示した導電膜106の形成領域の大きさよりも小さい。このため、導電膜106を形成する際に用いるAl等の材料の量を低減できる。このような導電膜106に対して陽極接合時に電圧を印加すると、図4(B)に示したように半導体基板101とガラス基板105の界面においてイオン分布が主に変化して共有結合が発生する。その結果、可動部104が静電引力によりガラス基板105に張り付くことを防止しながら、半導体基板101とガラス基板105を確実に接合することができる。
【0035】
図6(A)は固定部102に対応する領域に導電膜106を形成した例を示す。この場合、導電膜106の形成領域の大きさは、図5(B)に示した導電膜106の形成領域の大きさよりも更に小さい。このため、導電膜106を形成する際に用いるAl等の材料の量を更に低減できる。このような導電膜106に対して陽極接合時に電圧を印加すると、図4(B)に示したように半導体基板101とガラス基板105の界面においてイオン分布が主に変化して共有結合が発生する。その結果、可動部104が静電引力によりガラス基板105に張り付くことを防止しながら、半導体基板101とガラス基板105を確実に接合することができる。
【0036】
図6(B)はスクライブラインの形成位置に合わせて導電膜106を形成した例を示す。この場合、導電膜106の形成領域はスクライブライン上だけであるため、陽極接合後に加速度センサをスクライブラインで切断して個片化する際に、ガラス基板105上から導電膜106は除去される。このような導電膜106に対して陽極接合時に電圧を印加すると、図4(B)に示したように半導体基板101とガラス基板105の界面においてイオン分布が主に変化して共有結合が発生する。その結果、可動部104が静電引力によりガラス基板105に張り付くことを防止しながら、半導体基板101とガラス基板105を確実に接合することができる。また、スクライブラインの形成位置に合わせて導電膜106を形成した場合は、加速度センサをチップ化するダイシング工程において導電膜106が除去されるため、導電膜106を除去する工程が増加しない点で好ましい。
【0037】
なお、図5(A)、(B)及び図6(A)、(B)に示した導電膜106の形成領域の各形状は一例であり、これらの形状に限定されるものではない。可動部104の外形形状が図5(A)、(B)及び図6(A)、(B)に示した矩形ではなく、例えば、円形等の他の形状である場合は、その外形形状に合わせて導電膜106の形成領域を適宜変更するようにしてもよい。また、本第1の実施の形態では加速度センサ100に対して本発明を適用した例を説明したが、角速度センサのように半導体基板の上面側と下面側にガラス基板を陽極接合する構成に対しても本発明は適用可能である。この角速度センサを構成する半導体基板には、固定部、可撓部及び可動部が形成されており、可撓部と可動部の変位により角速度が検出される。この角速度センサの場合、上面側と下面側の各ガラス基板に対して上記と同様の導電膜を形成するが、可撓部と可動部の形成領域を除いて固定部の形成領域をカバーするように導電膜の形成領域を設定することが望ましい。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明に係る第2の実施の形態では、MEMSデバイスとしてマイクロポンプを製造する例について、図7〜図9を参照して説明する。
【0039】
<マイクロポンプの構成>
まず、第2の実施の形態に係るマイクロポンプの構成について図7を参照して説明する。図7は第2の実施の形態に係るマイクロポンプ200の概略構成を示す断面図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線から見た断面図である。図7において、マイクロポンプ200は、ガラス基板201及びシリコン基板202から構成される。シリコン基板202には、ダイアフラム205が形成されている。マイクロポンプ200は、サプライ(Supply)211と、ドレイン(Drain)212と、インレット(Inlet)213と、アウトレット(Outlet)214と、を有する。シリコン基板20の下面には圧電素子220が配置され、ガラス基板201の上面の最外周部には導電膜221が形成されている。ダイアフラム205の形成部分はバルブ部215を形成する。バルブ部215は、圧電素子220からの圧力によりダイアフラム205が変形されると、流体をドレイン212方向に排出するバンプ機能を果たす。
【0040】
このマイクロポンプ200は、サプライ211から入った流体がインレット213を通過してバルブ部215に流入すると、圧電素子220の圧力変化によりダイアフラム205を変形させてポンプ機能を発揮して流体をアウトレット214方向に押し出す。押し出された流体はアウトレット214を通過してドレイン212から排出される。
【0041】
圧電素子220は、例えば、ピエゾ素子PZTが用いられ、外部から印加される電圧を圧力に変換してダイアフラム205を変形させる。
【0042】
<マイクロポンプの製造方法>
以下、マイクロポンプ200の製造方法について図8及び図9を参照して説明する。なお、図8及び図9は、図7(A)に示したマイクロポンプ200の断面図に基づいて各製造工程を示している。
【0043】
(1)シリコン基板の準備(図8(A)参照)
シリコン基板202を準備し、熱酸化して図8(A)に示すように上面と下面の両面にシリコン酸化膜231,232を形成する。
【0044】
(2)シリコン基板の加工(図8(B)参照)
シリコン酸化膜231をパターンニングした後、レジスト膜233を塗布し、このレジスト膜233をパターンニングしてサプライ211、ドレイン212及びダイアフラム205を形成するためのマスクを形成する。
【0045】
(3)シリコン基板の加工(図8(C)参照)
レジスト膜233をマスクとして用いてシリコン基板202をエッチングすることにより、サプライ211、ドレイン212、インレット213及びアウトレット214となる部分を形成するとともに、ダイアフラム205を形成する位置に凹部234を形成する。エッチング方法として、DRIE法を用いることができる。次いで、残ったレジスト膜233を剥離する。
【0046】
(4)シリコン基板の加工(図8(D)参照)
シリコン酸化膜231をマスクとして用いて、凹部234を更にエッチングしてダイアフラム205を形成する。次に、シリコン酸化膜231,232を除去した後、シリコン基板202の流路(サプライ211、ドレイン212、インレット213、アウトレット214を含む)を親水処理する。
【0047】
(5)陽極接合(図9(A)参照)
図9(A)に示すように、サプライ211及びドレイン212となる貫通孔を形成し、上面の最外周部(図7(A)参照)にAl等による導電膜221を形成したガラス基板201を準備する。なお、導電膜221はAlに限定するものではなく、導電性を有し、陽極接合時の温度に耐えられる材料であればよい。例えば、Cu,Cr,Fe,Au,Ag等の金属材料からなる一層ないし多層構造を採用することができる。導電膜としてAlを用いることが低コスト、製造上の容易性の点で好ましい。このガラス基板201をシリコン基板202に重ね合わせる。次いで、直流高圧電源240の負電極を導電膜221に電気的に接続し、直流高圧電源240の正電極をシリコン基板202の下面に電気的に接続する。次いで、シリコン基板202とガラス基板201を重ね合わせた状態で、例えば、400℃程度で加熱しながら直流高圧電源240から500V程度のマイナス電圧をガラス基板201に印加して、シリコン基板202とガラス基板201の陽極接合を行う。この場合、ガラス基板201に印加される電圧は、導電膜221が形成された部分に主に印加される。このため、シリコン基板202とガラス基板201が接触する部分において共有結合が発生する。すなわち、導電膜221に印加されたマイナス電圧により、シリコン基板202と対向するガラス基板201の内部において主にNaイオンをガラス基板201の上面側に拡散させ、シリコン基板202のダイアフラム205に対向するガラス基板201内部ではNaイオンの拡散は抑制される。このため、静電引力がダイアフラム205に及ぼす影響が減少し、ダイアフラム205がガラス基板201に張り付く現象が防止される。
【0048】
(6)圧電素子の接着(図9(B)参照)
シリコン基板202のガラス基板202を接合していない面(下面)にITO等を成膜し、その上に圧電素子220を接着剤を介して接着することにより、マイクロポンプ200が完成する。
【0049】
したがって、マイクロポンプ200の製造過程において、陽極接合時の接合部分に合わせてガラス基板201の上面の一部に導電膜221を形成して陽極接合を行うことにより、シリコン基板202のダイアフラム205が静電引力によりガラス基板201に張り付くことを防止できる。また、導電膜221を形成した部分では、シリコン基板202とガラス基板201の界面においてイオン分布が変化し、共有結合が発生しているため、接合不良も防止できる。さらに、本第2の実施の形態では、ガラス基板201の上面の一部に導電膜221を形成するだけであるため、従来の特許文献1のように半導体基板側の加工が不要であり、製造コストの上昇を抑制できる。
【0050】
また、本第2の実施の形態に係るマイクロポンプ200では、サプライ211とドレイン212の各開口部分にナトリウム析出がない。このため、マイクロポンプ200を実際に使用した場合に析出物の影響がなく、ポンプとして好適である。例えば、マイクロポンプ200と分析チップを連結してマイクロ実験キットを作製した場合、サプライ211とドレイン212の各開口部分にナトリウム析出がないため、マイクロポンプ200から送られる液体に不要な物質が含まれず、分析チップの分析に支障を来すことがない。
【0051】
(実施例1)
次に、マイクロポンプの実施例1について図8及び図9を参照して説明する。
【0052】
(1)シリコン基板の準備(図8(A)参照)
厚さ600μmのシリコン基板202を準備し、このシリコン基板202を熱酸化して両面にシリコン酸化膜231,232を形成する。
【0053】
(2)シリコン基板の加工(図8(B)参照)
一方の面のシリコン酸化膜231をパターンニングした後、更にその面にレジストを塗布してレジスト膜233を形成した。そして、レジスト膜233をパターンニングしてサプライ211、ドレイン212及びダイアフラム205を形成するためのマスクを形成した。次いで、パターンニングしたレジスト膜をマスクとしてシリコン基板202を約450nmエッチングして、サプライ211及びドレイン212を形成するとともに、ダイアフラム205を形成する位置に凹部234を形成した。
【0054】
(3)シリコン基板の加工(図8(C)参照)
レジスト膜233を剥離し、シリコン酸化膜231をマスクとして用いて更に凹部234をエッチングしてダイアフラム205を形成した後、シリコン基板202両面のシリコン酸化膜231,232を除去した。そして、シリコン基板202の流路(サプライ211、ドレイン212、インレット213、アウトレット214を含む)を親水処理した。
【0055】
(4)陽極接合(図9(A)参照)
図9(A)に示したような導電膜221を形成したガラス基板201を準備し、このガラス基板201と上記シリコン基板201とを重ね合わせた状態で直流高電圧電源240の負電極を導電膜221に電気的に接続し、直流高電圧電源240の正電極をシリコン基板202の裏面側(ガラス基板と対向しない面)に電気的に接続して陽極接合を行った。陽極接合の条件は、加熱温度400℃、印加電圧500Vとした。
【0056】
(5)圧電素子の接着(図9(B)参照)
シリコン基板201のガラス基板201を接合していない面にITO等を成膜し、その上に圧電素子220を接着剤を介して接着した。
【0057】
そして、陽極接合後にガラス基板201側から顕微鏡で観察してガラス基板201に対するダイアフラム205の張り付きや破損等の有無を確認した。本実施例では、ガラス基板201に対するダイアフラム205の張り付きや破損は観測されなかった。
【0058】
(比較例1)
次に、比較例1について図10を参照して説明する。図10において(A)は陽極接合時のマイクロポンプ200の断面図、(B)は陽極接合後のマイクロポンプ200の断面図である。なお、この比較例に係るマイクロポンプ200の製造工程は、上記実施例において説明した製造工程と同様であるため、その図示と説明は省略し、陽極接合前後の状態のみを図10に示す。図10(A)及び(B)に示すマイクロポンプ200おいて、図7に示したマイクロポンプ200と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0059】
この比較例1では、図10(A)に示すように上記実施例の導電膜を形成していないガラス基板201を準備し、このガラス基板202と上記実施例と同様のシリコン基板201を重ね合わせて、上記実施例と同一条件で陽極接合を行った。この陽極接合時には、ガラス基板201の上面に電極板250を配置した。この陽極接合後、ガラス基板201側から顕微鏡で観察してガラス基板201に対するダイアフラム205の張り付きや破損等の有無を確認した。本比較例では、図10(B)に示すようにガラス基板201に対するダイアフラム205の破損が観測された。
【0060】
(第3の実施の形態)
本発明に係る第3の実施の形態では、多面付けで複数の加速度センサを製造する例について、図11及び図12を参照して説明する。本実施の形態では、半導体基板上に複数の加速度センサを形成し、この半導体基板とガラス基板を陽極接合する際に、複数の加速度センサの形成位置に合わせて複数の貫通孔を形成した電極板を用いる場合を例示する。
【0061】
図11において(A)は電極板の構成を示す平面図であり、(B)は半導体基板の構成を示す平面図である。図12において(A)は電極板とガラス基板の構成例を示す平面図、(B)は陽極接合前の半導体基板とガラス基板を重ね合わせる工程を示す平面図、(C)は(B)に更に電極板を重ね合わせる工程を示す平面図である。
【0062】
図11(A)に示す電極板300は、(B)に半導体基板400上に形成された複数の加速度センサ401の各形成位置に合わせて複数の貫通孔301が形成されている。この電極板300としては、導電性を有し剛性がある材料からなる板状体であればよい。例えば、グラファイト(C)、あるいは金属材料等を採用することができる。金属汚染による影響を考慮すると電極板300としてグラファイトを用いることが好ましい。また、電極板300の上面には、半導体基板400と位置合わせをするためのアライメントマーク303が図中の左右端部に形成されている。
【0063】
図11(B)に示す半導体基板400上には、複数の加速度センサ401が形成されている。これら加速度センサ401の間にはスクライブライン402が形成されている。また、半導体基板400の上面には、ガラス基板300と位置合わせをするためのアライメントマーク403が図中の左右端部に形成されている。なお、加速度センサ401の構成は、図1に示した加速度センサ100と同様であるため、その図示と説明は省略する。
【0064】
次に、加速度センサの製造方法について図11及び図12を参照して説明する。
【0065】
(1)加速度センサの作製(図11(B))
本実施の形態では、まず、半導体基板400としてSOI基板(シリコン膜:5μm/酸化シリコン膜:2μm/シリコン基板:625μm)を準備する。次いで、上記第1の実施の形態において示したマスクを用いたエッチング加工等により図2(B)に示したような固定部102、可撓部103及び可動部104の構造を半導体基板400上に複数作製する。なお、加速度センサ401のセンサギャップ(可動部とガラス基板の間隔)は7μmに設定した。各加速度センサ401のチップサイズは、外形が2mm×2mmとし、可撓部と可動部のサイズは、固定部より内側の1.5mm×1.5mmとした。
【0066】
(2)ガラス基板の準備(図12(A))
次に、半導体基板400の全体形状に合わせて形成したテンパックス(登録商標)ガラスをガラス基板500として準備する。このガラス基板の厚さは700μmとした。また、図12(A)に示すようにガラス基板500上にはアライメントマーク502が形成されている。
【0067】
(3)半導体基板とガラス基板の重ね合わせ(図12(B))
図12(B)においてクランプ600により固定された半導体基板400の上面にガラス基板500を重ね合わせる。この時、半導体基板400上面のアライメントマーク403に対してガラス基板500上のアライメントマーク501の位置を合わせることにより、双方の位置合わせが行われる。
【0068】
(4)電極板の重ね合わせ(図12(C))
図12(C)において図12(B)に示したガラス基板500の上面に、図11(A)に示した電極板300を保持したクランプ700を移動させて重ね合わせる。この時、ガラス基板500上面のアライメントマーク501に対して電極板300のアライメントマーク303の位置を合わせることにより、双方の位置合わせが行われる。
【0069】
(5)陽極接合
図12(C)において半導体基板400、ガラス基板500、電極板300の順に重ね合わせた状態で直流高電圧電源(図示せず)の負電極を電極板300に電気的に接続し、直流高電圧電源の正電極を半導体基板400の裏面側(加速度センサ401が形成されていない面)に電気的に接続して陽極接合を行う。陽極接合の条件は、加熱温度350℃、印加電圧500Vとした。この場合、ガラス基板500に印加される電圧は、加速度センサ401の形成位置に合わせて貫通孔301が形成された電極板300により各加速度センサ401の外周部分に主に印加される。このため、半導体基板400とガラス基板500が接触する部分において共有結合が発生する。すなわち、電極板300に印加されたマイナス電圧により、各加速度センサ401の固定部102と対向するガラス基板500の部分に電場が印加され、この部分のガラス基板500の内部において主にNaイオン(可動イオン)をガラス基板500の上面側に拡散させ、半導体基板400の可動部104に対向するガラス基板500の部分には電場が印加されず、この部分のガラス基板500の内部ではNaイオン(可動イオン)の拡散は抑制される。すなわち、ガラス基板500の電場が印加されない部分に対向する各加速度センサ401の可動部104には静電引力が働かない。このため、可動部104がガラス基板500に張り付く現象(スティッキング)が防止される。
【0070】
そして、陽極接合後に電極板300を外し、ガラス基板500側から顕微鏡で観察してガラス基板500に対して加速度センサ401の可動部の張り付きや破損等の有無を確認した。本実施例では、ガラス基板500に対する各加速度センサ401の可動部104の張り付きは観測されなかった。
【0071】
また、第3の実施の形態では、複数の加速度センサ401の各形成位置に合わせて複数の貫通孔301が形成された電極板300を用いたため、各加速度センサ401の可動部104の形成領域を除いて各加速度センサ401の固定部102とガラス基板500の接合部分に対して電圧を印加することが可能になる。このため、多面付けされた半導体基板400とガラス基板500との陽極接合において、スティッキングを防止しながら、各加速度センサ401とガラス基板500の接合不良を防止することができる。さらに、電極板300を用いることにより、ガラス基板500に導電膜を成膜する工程が不要になり、製造工数を増やすことなく、スティッキング防止を実現できる。
【0072】
なお、本第3の実施の形態では加速度センサ401に対して本発明を適用した例を説明したが、角速度センサのように半導体基板の上面側と下面側にガラス基板を陽極接合する構成に対しても本発明は適用可能である。この角速度センサを構成する半導体基板には、固定部、可撓部及び可動部が形成されており、可撓部と可動部の変位により角速度が検出される。この角速度センサの場合、上面側と下面側の各ガラス基板に対して電極板300を各々適用可能である。
【0073】
(比較例2)
この比較例2では、スクライブライン上に導電膜を形成していないガラス基板と、貫通孔を形成していない電極板と、固定部102、可撓部103及び可動部104の構造を複数形成した半導体基板400を準備する。半導体基板400、ガラス基板、電極板の順に重ね合わせて、上記と同一条件で陽極接合を行った。この陽極接合後、ガラス基板側から顕微鏡で観察してガラス基板に対して加速度センサ401の可動部の張り付きや破損等の有無を確認した。本比較例では、ガラス基板に対する加速度センサ401の可動部の張り付きが観測された。
【符号の説明】
【0074】
100…加速度センサ、101,400…半導体基板、102…固定部、103…可撓部、104…可動部、105,201…ガラス基板、106,221…導電膜、121,300…電極板、200…マイクロポンプ、202…シリコン基板、205…ダイアフラム、211…サプライ、212…ドレイン、213…インレット、214…アウトレット、215…バルブ部、231,232…シリコン酸化膜、233…レジスト膜、240…圧電素子、301…貫通孔。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を形成し、
ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の周囲に位置する領域に導電部材を配置し、
前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電部材の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
半導体基板に固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を形成し、
ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の周囲に位置する領域に導電膜を形成し、
前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電膜の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する複数のMEMSデバイスを半導体基板に形成し、
ガラス基板の一方の面上に前記半導体基板と対向させたときに前記可動部の各々の周囲に位置する各領域に導電膜を形成し、
前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記導電膜の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記陽極接合を行う際に、前記導電膜に負電圧を印加し、前記半導体基板に正電圧を印加することを特徴とする請求項2又は3に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記陽極接合時の前記ガラス基板と前記半導体基板の接合部分に合わせて前記ガラス基板の一方の面上の一部領域に前記導電膜を形成することを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板の前記複数のMEMSデバイスを形成した面に前記複数のMEMSデバイスを各々分離するスクライブラインを形成し、
前記スクライブラインの形成位置に合わせて前記ガラス基板の一方の面上の一部領域に前記導電膜を形成することを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項7】
固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する複数のMEMSデバイスを半導体基板に形成し、
電極板に前記複数のMEMSデバイスの可動部に各々対向する位置に複数の貫通孔を形成し、
前記電極板をガラス基板の一方の面に接触させ前記ガラス基板の他方の面を前記可動部と対向させた状態で前記半導体基板と前記電極板の間に電圧を印加して前記半導体基板と前記ガラス基板の陽極接合を行う、
ことを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項8】
固定部と前記固定部の内側あるいは外側に位置する可動部を有する半導体基板と、
前記半導体基板と対向する一方の面が前記固定部と陽極接合されたガラス基板と、を備え、
前記ガラス基板の前記可動部に対向する上部と前記固定部に対向する上部における可動イオン濃度が異なることを特徴とするMEMSデバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−143479(P2011−143479A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3610(P2010−3610)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】