説明

RH炉内観察装置

【課題】本発明は、観察プローブをRH炉内に挿入し煉瓦の残厚を測定する場合、RH炉と観察プローブの中心位置の位置ずれを補正して測定精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明によるRH炉内観察装置は、RH炉(1)の下方に回転及び上下動自在な観察プローブ(18)を配設し、RH炉(1)の還流管(4,5)と観察プローブ(18)の各中心位置(4a,5aと19)間の位置ずれ分(ΔX,ΔY)を補正してRH炉(1)の煉瓦(3)の内壁(3a)に対する距離測定データを高精度に得るようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RH炉内観察装置に関し、特に、観察用カメラを有する観察プローブをRH炉内に挿入し、レーザー距離センサを用いて煉瓦の残厚を測定する場合、RH炉と観察プローブの各中心位置の位置ずれを検出して補正することにより、測定精度を向上させるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内張り耐火物が使用毎に損傷を起こしライニング厚が減少していくような炉において耐火物の補修時期を判断するために、従来は炉を冷却し炉内寸法を測定する、もしくは鉄皮温度の上昇具合を見て補修を判断する等の方法が取られている。
一方、特許文献1に示されるような冷却構造のプローブ内にカメラをセットした熱間観察装置を使用して、操業の合間に炉内間に炉内温度が約1000℃以上と高温な状態のままで炉内状況を確認する方法もある。
また、特許文献2に見られるようにコークス炉において距離計測手段を炉内に挿入して挿入装置から炉壁までの距離をレーザー距離計等を用いて計測し表面の凹凸を確認する方法がある。
【0003】
【特許文献1】特公平4−72155号公報
【特許文献2】特開2004−354241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のRH炉内観察装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、炉を冷却し炉内寸法を測定する方法では、ライニングの寸法を直接測定できる上、損傷状況も直接確認できるため、補修時期は的確に判断できるが、炉体の冷却に時間を要する上、昇温するための熱ロスが大きく現実的ではない。
また、鉄皮温度の上昇具合を見る方法は、操業条件の変化等により、鉄皮温度が変化するため、確実な減寸予測ができず、耐火物の寿命を全うする前に取り替えることが多く、ロスが大きい。
一方RH炉では、特許文献1のような熱間観察装置をRH炉の還流管より挿入し、炉を冷却することなく内部状況を観察する方法が行われている。しかしこの方法では炉内状況は確認できるが、耐火物がどの程度減寸しているかを数値で判断することが出来ないため、寿命予測には使用できない。
また特許文献2は炉壁面に平行に挿入装置を操作することにより凹凸を確認するものであり、コークス炉のような地面に据え付けられ炉壁面が平面で構成されている窯炉には有効であるが、RH炉のように移動可能であり炉断面が楕円形状をしている上、挿入可能位置が還流管に限られるような場合、観察装置と炉体との相対位置関係を正確に割り出す必要があり、適用が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるRH炉内観察装置は、台車により移動自在に設けられたRH炉の下方に位置する走行台車と、前記走行台車上にサーボモータを介して回転自在に設けられたプローブ回転装置と、前記プローブ回転装置上に設けられ直立する直立ガイドを介して上下駆動部により上下動自在に設けられたプローブ昇降軸と、前記プローブ昇降軸の上端に設けられた観察プローブと、前記観察プローブに設けられた観察用カメラ、照明装置及びレーザー距離センサと、前記走行台車上に設けられた総合制御装置とを備え、前記観察プローブ上に前記RH炉が移動して停止時に、前記観察プローブのプローブ中心位置と前記RH炉の還流管の管中心位置の位置ずれ分を前記総合制御装置によって測定し、前記観察プローブを前記RH炉内に挿入した時に測定する前記RH炉と観察プローブとの間の距離測定データを前記位置ずれ分を用いて補正するようにした構成であり、また、前記上下駆動部は、エンコーダを有するリニアアクチュエータよりなる構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるRH炉内観察装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、RH炉の還流管の中へ観察プローブを挿入し、還流管の管中心とプローブ中心位置との位置ずれ分を用いてRH炉と観察プローブとの間の距離データを補正しているため、観察プローブのレーザー距離センサを用いて煉瓦の残厚を高精度に測定することができる。
従って、RH炉操業合間に炉内状況観察及び煉瓦の残存状況測定が可能となることから、的確な耐火物補修時期が設定できる。また、耐火物損傷が予想外に進行した場合も本装置により、定期的に観察していることにより早めの対処が可能となり、設備トラブルを未然に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、観察用カメラを有する観察プローブをRH炉内に挿入し、レーザー距離センサを用いて煉瓦の残厚を測定する場合、RH炉と観察プローブの各中心位置の位置ずれを検出して補正することにより、測定精度を向上させるようにしたRH炉内観察装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0008】
以下、図面と共に本発明によるRH炉内観察装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、台車2によって左右方向に水平往復移動可能な熱間炉であるRH炉であり、このRH炉1の内壁にはライニングである煉瓦3による内張りが形成され、この内張りは楕円筒状をなしている。
【0009】
前記RH炉1内には一対の第1、第2還流管4,5が設けられており、このRH炉1の下方位置には、RH内観察装置10が走行台車11を介して矢印Aの方向に沿って水平方向に往復することができるように構成されている。
【0010】
前記走行台車11上には、エンコーダ付のサーボモータ12を介し直交変換装置13によって回転自在に設けられたプローブ回転装置14が回転自在に配設されている。
【0011】
前記プローブ回転装置14上の中心軸からずれた位置には、図示しないエンコーダを有する周知のリニアアクチュエータ等からなる上下駆動部15及びリニアガイド15aによって上下動自在なプローブ昇降軸16を有する直立ガイド17が植立して設けられている。
【0012】
前記直立ガイド17は、前記プローブ回転装置14の回転中心Pからずれた偏心位置P1に固定されており、この直立ガイド17に設けられた前記プローブ昇降軸16の上端の観察プローブ18のプローブ中心位置19は前記回転中心Pと一致するように構成されている。
【0013】
前記観察プローブ18には、CCDからなる観察用カメラ20、照明装置21及びレーザー距離センサ22が設けられており、前記観察用カメラ20によって前記煉瓦3の内壁3aの状態を照明装置21で照明しつつ観察し、前記レーザー距離センサ22によって煉瓦3の内壁3a迄の距離をレーザーによって測定することができるように構成されている。
【0014】
前記プローブ回転装置14上には、柱部30を介してパソコンからなる総合制御装置31が設けられており、この総合制御装置31は、前記観察プローブ18の観察用カメラ20からの画像信号の取り込み、前記レーザー距離センサ22からの距離信号の取り込み、前記上下駆動部15による観察プローブ18の上下動制御、前記プローブ回転装置14の回転制御等を行い、RH炉1内の内壁3aの残厚測定を行うために必要とする動作等の制御を総合的に行うことができるようなプログラムが設定されている。
【0015】
従って、プローブ昇降軸16を上昇させることにより、RH炉1の何れかの還流管4又は5より観察プローブ18を挿入し、測定したいレベルにおいて観察プローブ18を回転させながら、炉内状況の観察及び距離測定ができるようにされ、昇降軸16はその上昇位置が測定できるように上下駆動部15にエンコーダを取り付け、測定したい煉瓦3の内壁3aの所要のレベルまで来たときに自在に停止できるように構成されている。
【0016】
また、前記プローブ回転装置14は、測定される前記内壁3aが前述のように楕円形状になっているため、わずかな角度ずれが生じても前記レーザー距離センサ22によって測定する煉瓦3の内壁3a迄の距離である距離測定データが大きく違うことになるため、エンコーダ付のサーボモータ12により予め設定したプログラムに基づいて制御している。
前記RH炉は台車2上にセットされて移動し、RH内観察装置10の設置位置まで移動するが、その都度停止位置が全く同じとはならず、一対の第1、第2還流管4,5を交互に観察するため、観察プローブ18も移動する必要があるため、還流管4,5の各管中心位置4a,5aと観察プローブ18のプローブ中心位置19が必ずしも一致するとは限らない。このため本観察装置には前記総合制御装置31を搭載しており、前記観察プローブ18上にRH炉1本体が移動し停止すると、前記プローブ中心位置19と前記還流管4又は5の管中心位置4a又は5aとの位置ずれ分ΔX、ΔYを前記総合制御装置31にて測定する。
【0017】
前記位置ずれ分ΔX、ΔYは、その検出手段としては種々あるが、1例として、台車2上の管中心位置4a及び5aを予め設定して総合制御装置31に取り込んでおき、台車2を水平方向に図示しないサーボモータによって移動させた時のパルス数と前記プローブ中心位置19とが一致するように設定し、実際にRH炉1を移動させた場合、図2で示されるように、測定基準である管中心位置5aとプローブ中心位置19にずれ(ΔX,ΔY)が生じた場合、測定目標地点Pは同一点を測ることから、本来の測定角度Cに対し、実際の測定角度Dは前記ずれ(ΔX,ΔY)に応じて補正(周知の三角形の定理から計算可能)をかける必要がある。
前述の補正をかけた実際の測定角度Dを用いて実際の距離である実際の測定値Bを測定し、前述のように、前記ずれ(ΔX,ΔY)による補正をかけると本来の測定値Aを算出することができる。
【0018】
次に、実際の内壁3aの観察及びプローブ内壁距離測定は、次のように行われる。
まず、RH炉1本体が観察可能位置まで台車2によって移動し、停止する。次に、RH内観察装置10は第1、第2還流管4,5のどちらか測定したい側の下に移動して停止する。次に、総合制御装置31にてRH内観察装置10とRH炉1本体の位置関係を前述のようにして測定する。次に、前述のように、前記位置ずれ分の有無に関する位置関係データは総合制御装置31に転送され、前記プローブ内距離測定データに補正を掛ける。次に、観察プローブ18を上昇させ、測定したいレベルまで達した状態で停止する。さらに、プローブ回転装置14にて回転させつつ測定したい位置にて前記プローブ内距離測定データに基づいて煉瓦3の残厚の寸法測定を行う。また、炉内状況を観察用カメラ20によって任意に撮影する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、RH炉に限ることなく、例えば、他の炉に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるRH炉内観察装置を示す構成図である。
【図2】図1の炉内測定の補正を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 RH炉
2 台車
3 煉瓦
3a 内壁
4 第1還流管
5 第2還流管
4a,5a 管中心位置
ΔX,ΔY 位置ずれ分
10 RH内観察装置
11 走行台車
12 サーボモータ
14 プローブ回転装置
15 上下駆動部
16 プローブ昇降軸
17 直立ガイド
18 観察プローブ
19 プローブ中心位置
20 観察用カメラ
21 照明装置
22 レーザー距離センサ
31 総合制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車(2)により移動自在に設けられたRH炉(1)の下方に位置する走行台車(11)と、前記走行台車(11)上にサーボモータ(12)を介して回転自在に設けられたプローブ回転装置(14)と、前記プローブ回転装置(14)上に設けられ直立する直立ガイド(17)を介して上下駆動部(15)により上下動自在に設けられたプローブ昇降軸(16)と、前記プローブ昇降軸(16)の上端に設けられた観察プローブ(18)と、前記観察プローブ(18)に設けられた観察用カメラ(20)、照明装置(21)及びレーザー距離センサ(22)と、前記走行台車(11)上に設けられた総合制御装置(31)とを備え、
前記観察プローブ(18)上に前記RH炉(1)が移動して停止時に、前記観察プローブ(18)のプローブ中心位置(19)と前記RH炉(1)の還流管(4又は5)の管中心位置(4a又は5a)の位置ずれ分(ΔX,ΔY)を前記総合制御装置(31)によって測定し、前記観察プローブ(18)を前記RH炉(1)内に挿入した時に測定する前記RH炉(1)と観察プローブ(18)との間の距離測定データを前記位置ずれ分(ΔX,ΔY)を用いて補正するように構成したことを特徴とするRH炉内観察装置。
【請求項2】
前記上下駆動部(15)は、エンコーダを有するリニアアクチュエータよりなることを特徴とする請求項1記載のRH炉内観察装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−299314(P2006−299314A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120000(P2005−120000)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】