説明

クロック切替回路

【課題】位相が異なるクロックを非同期の切替信号に基づき切り替えても出力クロックに、切り替え時の短パルスが発生しないクロック切替回路を提供すること。
【解決手段】クロック切替回路1は、外部クロックCLKT、CLKBが入力されそれぞれPLL回路2、3と、PLL回路3の出力PLBかPLL回路2の出力PLTの反転信号を選択出力するマルチプレクサ14と、CLKB、PLBとは非同期のLock判定信号12aに基づきマルチプレクサ14を切り替え制御するクロック制御回路13とを有する。クロック制御回路13は、Lock判定信号12aが入力されるとPLBの位相を所定値オフセットさせたオフセットクロックPLQBに同期してマルチプレクサ14の出力を切り替えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相が異なる複数のクロックを切り替え出力するクロック切替回路に関し、特に切り替え対象のクロックとは非同期のタイミングでクロックを切り替えるクロック切替回路に関する。
【背景技術】
【0002】
QDR(Quad Data Rate)SRAMは、通常のSRAMでは共通の端子であるデータ入力とデータ出力を分離し、1クロックあたり2回の読み出しまたは書き込みができるそれぞれをDDR(Double Data Rate)方式の超高速な動作が可能なSRAMである。従来仕様のシンクロナスSRAM製品より高速なデータ転送が可能であり、高機能な次世代ネットワーク・スイッチ、ルータなどに最適である。
【0003】
このようなQDR製品には、位相が180度異なるTrue/Bar(以下、True:T、Bar:Bという。)2つのクロックが外部クロックとして入力され、各外部クロックに対応した2つのPLL回路が搭載されたクロック切替回路が適用される。このクロック切替回路は、PLLイネーブル信号により、外部クロックと、PLL回路から出力されたクロック(以下、PLLクロック)とを切り替えることができる。
【0004】
図12は、QDR製品で使用されるクロック切替回路を含む周辺回路を示すブロック図である。クロック切替回路101は、外部クロックCLKT、CLKBを入力とするPLL回路102,103、遅延を揃えるトランスファ116、PLL回路102の出力PLTを反転するインバータ115、インバータ115の出力又はPLL回路103の出力を選択出力するマルチプレクサ114、外部から入力されるT/Bクロック(CLKT、CLKB)とチップ内部で生成するPLL出力クロック(PTOUT、PBOUT)とをチップ外部からの制御信号(DLLE)で切り替えるマルチプレクサ144、146を有する。クロック切替回路101から出力されるクロックCKT、CKBは、それぞれクロックツリー105、109を経てレジスタ121、122などに供給され内部回路動作に使用される。
【0005】
ここで、PLL回路は、電源投入後、ある一定サイクル期間、出力が安定するまでの待ち時間(ロックアップタイム)を必要とする。ここで、PLL回路に基本クロックが入力されてから、PLL回路の出力クロックが所定の周波数に安定するまでの状態をアンロック状態といい、所定の周波数に同期し安定した状態をロック状態という。アンロック状態からロック状態までの待ち時間の間は、外部クロック(CLKT、CLKB)のT/B位相が180°取れた場合でもPLL出力(PLT、PLB)の位相はT/B(180°)とならない状態があり、この状態が発生することにより、後段の回路で、誤動作や貫通電流を流すなどの問題を引き起こしてしまう。そのため、B側のクロック(CLKB)のPLL出力を使う代わりに、T側の反転クロック(PLTB)を使うことができるようマルチプレクサ114を設けている。このマルチプレクサ114は、例えば、Fuseなどを切り替えることで、どちらかの出力が選択固定できるようになっている。なお、内部クロックPTOUTは、PLL回路102の出力PLTである。
【0006】
このようなクロック切替回路101において、制御信号(DLLE)が切り替えようとするクロックに対して非同期で入力されるため、マルチプレクサ144、146が非同期に切り替えられてしまう。また、マルチプレクサ114を固定とせず、PLL回路103のロックアップタイム後にPLL回路103の出力PLBに切り替えるよう制御すると、ロック検出されるタイミングもPLBと非同期であり、マルチプレクサ114も非同期に切り替えられてしまう。このように、マルチプレクサ114、144、146において、クロックの選択切り替えが選択出力するクロックとは非同期に行なわれると、切り替え時に短パルス(glitch)が発生してしまい、後段の回路動作に影響を与えてしまうという問題が生じる。この短パルスが発生する場合のタイミングチャートを図13に示す。図13に示すように、制御信号DLLEが外部クロックCLKT、CLKB、PLL出力PLT、PLBに非同期なタイミングでクロックを切り替えるため、Aに示すように、出力クロックCKT、CKBに短パルスが発生してしまう。
【0007】
すなわち、外部制御ピン(DLLE)で外部クロックから内部クロックに非同期で切り替えたり、PLL回路のロックアップ前後でT側の反転信号からB側のクロックに切り替えたりしても、後段の出力クロックに、切り替え時の短パルスが発生しない回路構成とすることが必要である。
【0008】
ところで、従来のクロック切替回路としては次に説明するものが公知である。先ず、特許文献1には、予備の発振子を発振させる回路を追加することなく、クロック出力の長期間の停止を回避できると共に、PLL回路の短期間のロック外れが発生しても、後段の回路の正常な動作を図ったクロック発生回路が開示されている。図14は、特許文献1に記載のクロック発生回路を示すブロック図であり、図15(a)はセレクタ回路215に入力203を設けない場合には、出力クロック201gに非常に短いパルスが発生することを示すタイミングチャートであり、図15(b)はセレクタ回路215に入力203を設けた場合には、出力クロック201gに非常に短いパルスが発生しないことを示すタイミングチャートである。
【0009】
図14に示すように、クロック発生回路210は、PLL回路211、ロック検出回路212、カウンタ回路213、セレクタ制御回路214、セレクタ回路215を備え、さらに、入力クロック201aが入力される入力端子210Aとセレクタ回路215が出力する出力クロック201gを出力する出力端子215Dを有する。このクロック発生回路210の出力端子215Dは、論理回路216のクロック入力端子216Aに接続されている。
【0010】
クロック発生回路210の入力端子210Aには、入力クロック201aが入力され、PLL回路211のクロック入力211Aに入力クロック201aが入力される。このPLL回路211は、入力クロック201aの周波数を逓倍した高速なクロックをPLLクロック201bとして逓倍クロック出力211Bからセレクタ回路215の入力201およびロック検出回路212の比較信号入力212Bに出力する。
【0011】
ロック検出回路212は、基準信号入力212Aに入力された入力クロック201aの位相と比較信号入力212Bに入力されたPLLクロック201bの位相とを比較して、PLL回路211がアンロック状態にあるかロック状態にあるかを判定し、その判定結果を示すアンロック信号201cをアンロック出力212Cから出力する。このアンロック信号201cは、PLL回路211がアンロック状態であり、ロックが外れている場合にはアクティブとなる。ロック検出回路212が出力したアンロック信号201cは、カウンタ回路213のイネーブル入力213Aとセレクタ制御回路214の条件入力221に入力される。
【0012】
カウンタ回路213では、アンロック信号201cが上記アンロック状態を表しているアクティブである期間をカウントして、PLL回路211がアンロック状態(ロック外れの状態)にある期間をカウントする。また、カウンタ回路213のイネーブル入力213Aにはアンロック信号201cが入力されており、このアンロック信号201cがアクティブである期間にはクロック入力213Bに接続された入力クロック201aによりカウント動作が実行され、アンロック信号201cがノンアクティブになるとカウント値が初期値に戻される。
【0013】
また、セレクタ回路215は、セレクト入力215Eに入力されるセレクト信号201fの値に基き、入力201に入力されたPLLクロック201b、入力202に入力された入力クロック201a、入力203に入力された論理値である固定値"0"のいずれか1つを出力215Dに対して択一的に導出する。
【0014】
セレクタ回路215のセレクト入力215Eには、セレクタ制御回路214のセレクト出力214Bが接続され、セレクト出力214Bからセレクト信号201fが入力される。このセレクタ回路215では、後述するように、入力201と入力202との間の切り替え、つまり、周期の異なるPLLクロック201bと入力クロック201aを切り替える際に、一旦、入力203(固定値0)を経由することで、後段の論理回路が誤動作することを防ぐようにしている。
【0015】
クロック発生回路210において、セレクタ回路215が、仮に、出力215Dへの接続を入力201から入力202に直接切り替えた場合、図15(a)に示すように、PLLクロック201b(入力201)と入力クロック201a(入力202)との位相がずれていると、出力215Dに出力クロック201gとして非常に短いパルスが出力されて後段の論理回路216が誤動作することがある。
【0016】
これに対し、セレクタ回路215において入力203を設けて入力201と入力202の切り替え時に入力203を経由させることにより、図15(b)に示すように、PLLクロック出力期間と入力クロック出力期間との間に固定値0の出力期間を介在させ、図15(a)のような非常に短いパルスの発生を防ぐことができ、誤動作を防ぐようにしている。
【0017】
すなわち、このクロック発生回路210では、セレクタ回路215は、セレクタ制御回路214からのセレクト信号201fによって制御されている。PLL回路211がアンロック状態にある期間が所定値を超えた場合には、PLLクロック201bに替えて入力クロック201aを出力する。したがって、予備の発振子を発振させる回路を追加する必要がなくなる上に、従来のような頻繁なクロック切り替えの発生を回避して、後段の回路の動作を不安定にすることを防止している。
【0018】
また、特許文献2には、IDLEモード時の消費電流の低減を図るとともにIDLEモード解除時、CPUによるプログラム実行への復帰までの時間の短縮を図ったマイクロコンピュータが開示されている。図16は、特許文献2に記載のマイクロコンピュータを示すブロック図である。この従来のマイクロコンピュータは、発振回路301、PLL回路302、二分周器304、第1のAND回路303、第2のAND回路305、セレクタ306、及びRSフリップ・フロップ307を備えている。
【0019】
発振回路301において、端子X1、X2は例えば外部水晶発振子の端子にそれぞれ接続されると共に容量を介して接地される。発振回路301は、端子X1、X2間に並列接続された反転回路及び帰還抵抗と、反転回路の出力を波形整形して出力する回路とを備えた水晶発振回路として構成することができる。STOP(ストップ)モード時には、論理1となるSTOP制御信号を入力する。STOP制御信号は、例えば、帰還抵抗の一端と端子X1間もしくは帰還抵抗の他端と端子X2間に接続されたスイッチの制御信号となり、STOP制御信号が論理1のとき該スイッチをオフすることで発振動作を停止させる。
【0020】
PLL回路302は、基準信号と、電圧制御発振回路(VCO)の発振出力を分周器で分周した信号とを入力とする位相差検出回路と、チャージポンプ回路と、ループフィルタと、電圧制御発振回路とを備える。STOP制御信号が論理1のとき、例えば電圧制御発振回路のリングオシレータのパスを切断することで、発振動作を停止する。
【0021】
二分周器304は、PLL回路302からの出力クロックのデューティ比を整形する。第1のAND回路303は、IDLE(アイドル)モード時論理1とされるIDLE制御信号の反転値とPLL回路302の出力とを入力し、IDLE制御信号が論理1であるIDLEモード時に、PLL回路302の出力を二分周器304へ伝達しないで内部回路へのクロック供給をマスクする。第2のAND回路305は、STOPモード解除後の発振安定待ちの間論理1の値をとる制御信号の反転値と、二分周器304の出力とを入力する。そして、STOPモードからSTOPモード解除後の発振安定時間までの間、二分周器304の出力を、内部回路への内部クロックとして伝達しないようマスクする。
【0022】
さらにPLL回路302から出力されるUNLOCK(アンロック)フラグは、PLL回路302がアンロック状態かロック状態であるかを示すステータス・フラグであり、一般にPLL回路302の状態を示すステータス・レジスタ等に割り付けられる。PLL回路302内において位相差検出回路からの出力に基づきロック状態/アンロック状態が検出され、PLL回路302内のステータス・レジスタに設定される。
【0023】
RSフリップ・フロップ307のS(セット)入力端には、IDLEモード時論理1となるIDLE制御信号の負論理信号が入力される。R(リセット)入力端には、PLL回路302から出力されるUNLOCKフラグの負論理信号が入力される。出力Qは、セレクタ306の切替信号として使用される。セレクタ306は、発振回路301のクロック(逓倍前のクロック)と、発振回路301の出力をPLL回路302で4逓倍した後、二分周器304で二分周したクロックとが供給されいずれかを選択出力する。すなわち、上記切替信号が論理0の時、第2のAND回路305の出力を選択出力し、切替信号が論理1の時、発振回路301の出力を選択出力する。
【0024】
更に、特許文献3に記載の低消費電力処理装置におけるクロック切替マルチプレクサにおいては、高速、低速クロックを切り替える際、切替信号の切り替えタイミングに適当なディレイを持たせ、高速、低速クロックレベルが共に安定してハイレベルにあるときに切り替えるよう制御している。
【0025】
更にまた、特許文献4に記載のクロック切替回路においは、マスタクロックを分周した第1のクロックと第2のクロックとを切り替えるタイミングを、対応するクロックの所定論理値になるようにずらすことで、グリッチの発生を防止している。
【特許文献1】特開2004−240818号公報
【特許文献2】特開2000−137699号公報
【特許文献3】特開2001−202155号公報
【特許文献4】特開平7−38398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、切り替え時に一度出力クロックを"0"に固定(201fセレクト信号[1:0]が01の状態)してクロックを切り替えているため、切り替え時の周波数変動が大きくなる(図17参照)。また、この特許文献1では、T/Bで位相が180°異なる2つのクロックをPLL回路が各々ロックしている状態において、T側の反転信号から、B側のクロックに切り替えた場合、B側のクロックに短パルスが発生して、後段の回路の動作を不安定にさせる場合があるという問題点がある。
【0027】
また、特許文献2に記載の技術においては、切り替えタイミングがRSフリップ・フロップ307で構成されているため、アンロックフラグの変化を受けて、直ちにクロックが切り替えられる。このため、切り替え時に短い凸パルスが発生してしまう可能性がある。更に、T/Bの上記切り替えを実施した場合、T/Bの各クロック信号が、PLL回路302によりロックするまでの期間、お互いの位相が180°とならない問題が生じる。すなわち、位相差は180°とならないことによって、後段の回路が不安定となり、例えば出力データがunknownなデータとなったり、出力レジスタにて一時的に貫通電流が流れたりなどの問題が生じてしまう。
【0028】
さらに、特許文献3に記載の技術においては、切り替える2つのクロック(高速クロックと低速クロック)は、互いに周波数逓倍されたクロックであり、当該切り替え対象のクロックのRiseエッジ/Fallエッジが揃っている。すなわち、上述の図12に示すクロック切替回路のように、切り替え対象のクロックのRiseエッジ/Fallエッジが揃っていない場合、上述したように、短パルスが発生してしまう場合がある。
【0029】
更にまた、特許文献4に記載の技術においては、切り替え時にグリッヂは発生しないものの、クロック切り替え時に周波数変動が生じるという問題点がある。すなわち、特許文献4に記載のクロック切替回路は、マスタクロックの立下り、立ち上がりでそれぞれ動作するフリップフロップ(FF)を有し、これらのFFからの出力に応じて選択回路を制御してクロックを切り替えるものであるが、いずれのクロックも選択しない期間が発生してしまい、マスタクロックの半周期分のロウレベル固定区間が発生して出力CLKに現れてしまうという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明にかかるクロック切替回路は、位相が異なる複数のクロックを切り替え出力するクロック切替回路であって、第1の外部クロックが入力され第1の位相調整クロックを出力する第1の位相調整回路と、前記第1の位相調整クロック、又は当該第1の位相調整クロックとは位相が異なる他のクロックを選択出力する選択部と、前記第1の位相調整クロック及び他のクロックとは非同期の非同期切替指示信号に基づき前記選択部を切り替え制御する切替制御部とを有し、前記切替制御部は、前記非同期切替指示信号が入力されると、前記第1の位相調整クロックの位相を所定値オフセットさせたオフセットクロックに同期して前記選択部の出力を切り替えさせるものである。
【0031】
本発明においては、第1の位相調整クロックの位相を所定値オフセットさせたオフセットクロックに同期して選択部の出力を切り替えることで、切り替え時のパルス幅を当該オフセットさせた位相分とることができる。
【0032】
本発明にかかる他のクロック切替回路は、第1の外部クロック又は第1の内部クロックを選択出力する第1の外内クロック選択部と、前記第1の外部クロックとは位相が異なる第2の外部クロックが入力されPLLクロックを出力するPLL回路と、前記第2の外部クロック又は前記第1の内部クロックとは位相が異なる第2の内部クロックである前記PLLクロックを選択出力する第2の外内クロック選択部と、前記第1及び第2の外部クロックとは非同期で外部から供給される非同期切替指示信号に基づきそれぞれ前記第1及び第2の外内クロック選択部の切り替えを制御するそれぞれ第1及び第2の切替制御部とを有し、前記第1及び第2の切替制御部は、前記非同期切替指示信号が入力されると、それぞれ前記第1及び第2のPLLクロックの位相を所定値オフセットさせたそれぞれ第1及び第2のオフセットクロックに同期して、前記第1及び第2の外内クロック選択部の出力を切り替えさせるものである。
【0033】
本発明においては、外部クロックと内部クロックを、これらに非同期の非同期切替指示信号に基づき切り替える際、第1、第2のPLLクロックの位相を所定値オフセットさせたクロックに同期させて切り替えることで、切り替え時のパルス幅を当該オフセットさせた位相分とることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、位相が異なるクロックを非同期の切替信号に基づき切り替えても出力クロックに、切り替え時の短パルスが発生しないクロック切替回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を、位相が180度異なるT/B2つの外部クロックが供給され、これに対応したPLL回路を搭載したクロック切替回路に適用したものである。このようなクロック切替回路は、QDRなど高速SRAMのデータ読出し等に好適に使用することができる。
【0036】
実施の形態1.
本実施の形態においては、上述の図12に示した従来のクロック切替回路において、短パルスを発生させないようクロック切り替えを制御する制御部を設けるものである。図1は、本発明の実施の形態にかかるクロック切替回路1を示すブロック図である。入力信号CLKTとCLKBは、お互いの位相が180°異なる外部入力クロック信号である。CLKT、CLKBの入力に対し、それぞれPLL回路2、3が1台ずつ、合計2台搭載されている。以下、CLKTが入力されるPLL回路をT側PLL回路2、CLKBが入力されるPLL回路をB側PLL回路3という。B側PLL回路3は、第1の位相調整回路又は第1のPLL回路として、T側PLL回路2は、第2の位相調整回路又は第2のPLL回路として設けられる。
【0037】
このクロック切替回路1は、内部クロックPLTT、PLTB、PLBTを出力する。第1の内部クロックとしての内部クロックPLTTは、T側PLL回路2の出力PLT(第2のPLLクロック)からバッファ4、クロックツリー5及び出力バッファ18を経由し、例えばSRAMの読出し等、内部の動作クロックとして使用される。また、クロック切替回路1は、クロックツリー17、出力バッファ18と同様の遅延を有するクロックツリー5及び出力バッファ6と、レプリカ遅延用の遅延回路(delay)7とを有する。
【0038】
内部クロックPLTBは、T側PLL回路2の出力PLTの反転信号か、又はB側PLL回路3の出力PLB(第2のPLLクロック)のいずれかが選択出力されたものである。このため、クロック切替回路1は、PLTを反転するインバータ15と、トランスファゲート(スイッチ)16と、マルチプレクサ14とを有する。トランスファゲート16は、ここではインバータ15と遅延を揃えるために挿入されている。マルチプレクサ14は、インバータ15の出力、すなわちPLTの反転信号か、トランスファゲート16を介したPLBが入力され、これを後述する切替選択信号SWTBにより選択出力する。これが第1の内部クロックとしての内部クロックPLTBとなる。内部クロックPLTBは、上記内部クロックPLTTとは位相が180度異なる信号である。この内部クロックPLTBもクロックツリー17及び出力バッファ18を経由し、SRAMの読出し等の内部動作クロックとして使用される。
【0039】
クロック切替回路1は、B側においても同様に、クロックツリー17、出力バッファ18と同様の遅延を有するクロックツリー9及び出力バッファ10と、レプリカ遅延用の遅延回路(delay)11とを有する。
【0040】
遅延回路7は、クロックツリー5乃至出力バッファ18までの遅延と同じ遅延量(レプリカ遅延)の遅延回路となっており、この遅延回路7を経由した帰還信号RPTがT側PLL回路2に帰還されている。また、遅延回路11は、外部クロックCLKTのRiseエッジと、出力バッファ18、6、10の出力遷移点とが一致したタイミングとなるよう調整された遅延量(レプリカ遅延)の遅延回路となっており、この遅延回路11を経由した帰還信号RPBがB側PLL回路3に帰還されている。これらの帰還パスにより、出力バッファ18から出力される内部クロックPLTT及びPLTBは、外部クロックCLKT、CLKBと所定の位相差を有するものとなっている。
【0041】
クロック切替回路1はさらに、外部クロックCLKB及びB側PLL回路3の出力PLBを入力とし、B側PLL回路3のロック状態を検出するLock判定回路(ロック状態検出回路)12を有する。このLock判定回路12によって、B側PLL回路3がロック状態にあるか否かを判定する。更に、クロック切替回路1は、Lock判定回路12の出力と、B側PLL回路3の出力クロックPLBに対し位相オフセットを有する後述するクロック(以下、オフセットクロックという。)PLQBとを入力とするクロック制御回路13を有する。クロック制御回路13は、上述の切替選択信号SWTBを生成し、マルチプレクサ14の切り替えを制御する。
【0042】
図2は、T側PLL回路2、B側PLL回路3の回路構成の一例を示すブロック図である。T側PLL回路2、B側PLL回路3は、電圧制御発振器24からオフセットクロックPLQBを出力するか否かのみが異なる。ここでは、B側PLL回路3として説明する。
【0043】
図2に示すように、B側PLL回路3は、CLKB及び帰還クロックRPBが入力する周波数位相比較器(PFD)21を有する。更に、チャージポンプ回路(CP)22、ローパスフィルタ(LPF)23、及び電圧制御発振器(VCO)24を有する。このB側PLL回路3においては、位相差比較器21は、UP及びDN(Down)の2信号をチャージポンプ回路22へ入力する。この位相差比較器21は、入力される2つのクロック(内部クロックCLKB及び帰還クロックRPB)の立ち上がりエッジの位相差を比較し、これを一致させる方向に、UP又はDNを活性化する。このUP又はDN信号を受けたチャージポンプ回路22は、一定の電流を流し、±両方向に電荷をチャージ(UPであれば+方向、DNであれば−方向に電荷をチャージ)する。この動作を繰り返すことでローパスフィルタ23の容量素子は出力周波数に対応した電圧となり、この電圧を電圧制御発振器24に入力する。電圧制御発振器24は入力された電圧に応じた周波数で発振する。この信号が必要に応じて分周され位相比較器21に帰還入力され閉ループを形成する。この閉ループは位相比較器21に入力される2つのクロック周波数が等しくなると安定する。
【0044】
図3(a)は、B側PLL回路3の電圧制御発振器24を示す図である。電圧制御発振器24は、インバータを含む遅延セル4つ(24a〜24d)によりリングオシレータ部を構成している。ここで、オフセットクロックPLQBは、外部クロックCLKBに基づきB側PLL回路3にて生成されるPLLクロックPLBに対し一定位相オフセットされたクロックある。リングオシレータ部の各遅延セル24a〜24dの出力をクロックCK1〜CK4とすると、各クロックCK1〜CK4は、図3(b)に示すように、それぞれ45°ずつ位相が異なるクロックとなっている。本例においては、これらのうち、例えば、クロックPLBとは位相が90°異なるクロックCK3をオフセットクロックPLQBとして使用している。なお、本実施の形態においては、CK3をオフセットクロックPLQBとして使用する例について説明したが、PLLクロックPLBに対し一定位相オフセットされたクロックであればよい。よって、オフセットクロックPLQBを、例えば、PLLクロックPLBの遅延出力によって生成することも可能である。
【0045】
図1に戻って、クロック制御回路13は、Lock判定回路12にロック状態と判定された際のLock判定信号(検出信号)12aが入力されると、オフセットクロックPLQBに同期させた切替信号SWTBを生成し、マルチプレクサ14へ出力する。Lock判定回路12のLock判定信号12aは、PLLクロックPLT、PLBとは非同期の信号であり、この信号に基づきマルチプレクサ14を切り替える非同期切替指示信号として機能する。なお、後述するように、非同期切替指示信号としては、このLock判定信号12aの他、外部から入力されるPLLイネーブル信号DLLE等が含まれる。
【0046】
マルチプレクサ14は、内部クロックPLTBとして、B側PLL回路3がロックする前はT側PLL回路2のPLLクロックPLTの反転信号を出力する。そして、B側PLL回路3がロックした後はB側PLL回路3のPLLクロックPLBを出力する。なお、本例においては、トランスファゲート16はインバータ15と同一遅延となるよう構成され、バッファ4、8は、インバータ15又はトランスファゲート16からマルチプレクサ14までの遅延と同一となるよう構成されている。従って、T側PLL回路2のPLLクロックPLT〜内部クロックPLTT、B側PLL回路3のPLLクロックPLB〜内部クロックPLTB、及びPLB〜内部クロックPLBTの遅延が全て同じとなる。
【0047】
このクロック切替回路1においては、PLL回路3がロックするまでのサイクル期間、T/B2つの出力クロックは、互いの位相が180度異なることを保証することができない。そこで、ロックされるまでの期間、B側の180度位相を保証するために、T側のPLL回路2の出力クロックを反転した信号をB側のクロックとして代用する。そして、B側のPLL回路3がロックされたら、T側のPLL回路2の反転信号をB側PLL回路3の出力クロックに切り替える。このクロックの切り替え時に、PLL回路3の出力クロックPLBに対し、例えば90度、270度など、ある一定値に位相オフセットされたオフセットクロックPLQBを使用し、このオフセットクロックPLQBに同期して、上記切り替えを制御する。このことにより、切り替え時の周波数変動もなく、短パルスの発生もなく、広い切り替えタイミング幅(valid window)を確保することができる。
【0048】
次に、本実施の形態にかかるクロック切替回路の動作について説明する。図4は、電源投入から、PLL回路がロックして、内部のクロックに切り替わるまでの動作を示すフローチャートである。また、図5は、そのときのタイミングチャートを示す図である。
【0049】
先ず、電源投入され、外部クロックCLKT、CLKBが供給される(ステップS1)。内部クロックPLTBとして電源投入後、B側PLL回路3がロックするまでは、T側PLL回路2のPLLクロックPLTの反転信号が出力される(ステップS2)。Lock判定回路12は、PLL回路3がロック状態になるのを検出する(ステップS3)。そして、Lock判定回路12がロック状態を検出したタイミングt1でLock判定信号12aが例えばハイになり、クロック制御回路13へ供給される。クロック制御回路13は、このLock判定信号12aに基づきオフセットクロックPLQBに同期した切替選択信号SWTBを生成する(ステップS4)。こうして、オフセットクロックPLQBに同期化された切替信号SWTBはマルチプレクサ14に入力される。この切替信号SWTBにより、タイミングt2にてマルチプレクサ14の出力PLTBがT側PLL回路2の反転信号からB側PLL回路3の出力PLBに切り替えられる(ステップS5)。
【0050】
本実施の形態においては、T側PLL回路2の反転信号からB側PLL回路3の出力PLBに切り替える際、先ず反転信号とPLBとの位相を揃える。そして、両者を切り替える切り替え回路(マルチプレクサ)に使用する切替選択信号SWTBを、B側PLL回路3内部に構成されるリングオシレータから、PLLクロックPLBとは一定位相(例えば90°)ずらしたオフセットクロックに同期化させる。この切替信号を使用することで、外部クロックCLKT、CLKBの周波数に依存せず、常にPLLクロックPLBに対し一定の位相ズレを保ったタイミングで、マルチプレクサ14を切り替え制御することができるため、切り替え時の短パルスなどの発生を防止することができる。
【0051】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態においては、PLLイネーブル信号DLLEにより、外部クロックCLKT、CLKBと、内部クロックPLTT、PLTBとを切り替えるものである。PLLイネーブル信号は、外部クロックCLKT、CLKBや、内部クロックPLTT、PLTBとは非同期に外部から入力され、クロックの切り替えを指示する非同期切替指示信号である。
【0052】
図6は、本実施の形態にかかるクロック切替回路31を示すブロック図である。なお、図6に示す本実施の形態にかかるクロック切替回路31、及び後述する図11に示す実施の形態3において、図1に示すクロック切替回路1と同一構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、本実施の形態にかかるクロック切替回路31は、図1に示すクロック切替回路1のクロック制御回路13の代わりに、第1の切替制御部としてのクロック制御回路33を有する。クロック制御回路33は、Lock判定回路12の判定信号12aのほか、PLLイネーブル信号DLLEが入力される。また、クロック制御回路33は、切替信号SWTBの他、切替信号SWB1、SWB2を生成する。
【0054】
クロック切替回路31は、さらに、切替信号SWB1により、外部クロックCLKB又は内部クロックPLTBを選択してクロックCKTBとして出力する、第1の外内クロック選択部としてのマルチプレクサ46を有する。また、遅延回路11の出力RPB又はB側PLL回路3の出力(PLLクロックPLB)を選択し、帰還信号FRBとしてB側PLL回路3へ帰還する、第1の帰還パス選択部としてのマルチプレクサ47を有する。さらに、マルチプレクサ46と同じ遅延量に構成されたトランスファゲート48を有する。また、クロック切替回路31は、T側についても、B側と対応する、Lock判定信号42aを出力するLock判定回路42、第2の切替制御部としてのクロック制御回路43、第2の外内クロック選択部としてのマルチプレクサ44、第2の帰還パス選択部としてのマルチプレクサ45を有する。
【0055】
クロック制御回路33は、内部クロックPLTT、PLTBで動作中にPLLイネーブル信号DLLEが入力されると、オフセットクロックPLQBに同期化したマルチプレクサ14の切替信号SWTBを生成し、マルチプレクサ14の出力を、PLBからPLTの反転信号に切り替える。また、切替信号SWTBより例えば1クロック遅いタイミングでマルチプレクサ47の切替信号SWB2を生成し、マルチプレクサ47の出力を遅延回路11の出力RPBからPLL回路3の出力PLBに切り替え、帰還パスを切り替える。これによりB側PLL回路3はアンロック状態になる。所定経過後ロック状態になると、PLL回路2、3の出力PLT、PLBと外部クロックCLKT、CLKBの位相が揃う。すると、Lock判定回路12によりLock判定信号12aが出力され、クロック制御回路33は、このLock判定信号12aをオフセットクロックPLQBに同期化したマルチプレクサ46の切替信号SWB1を生成し、マルチプレクサ46の出力を内部クロックPLTBから外部クロックCLKBに切り替える。T側についても、マルチプレクサ14がPLTの反転信号に切り替わった後は同様に、帰還ループを切り替え、PLL回路2がロックしたら内部クロックPLTTから外部クロックCLKTに切り替える。
【0056】
一方、外部クロックCLKT、CLKBで動作中にPLLイネーブル信号が入力されると、クロック制御回路33、43は、帰還ループをレプリカ遅延回路からの出力側に切り替え、外部クロックCLKT、CLKBを内部クロックPLTT、PLTBに切り替え、PLL回路3がロックしたらマルチプレクサ14の出力をPLTの反転信号からPLBに切り替える。内部クロックPLTT、PLTBから外部クロックCLKT、CLKBに切り替える際、PLTの反転信号とPLBとを切り替えて内部クロックPLTBを得る際に、各マルチプレクサ14、44、45は、すべてオフセットクロックPLQT、PLQBに同期化された切替信号にて切り替え制御されるため、短パルスが発生することがない。
【0057】
次に、本実施の形態にかかるクロック切替回路の動作について説明する。先ず、クロックイネーブル信号DLLEに基づき内部クロックから外部クロックに切り替える動作について説明する。図7は、PLL出力に基づく内部クロックから外部クロックに切り替える際の動作のフローチャート、図8は、これに対応したタイミングチャートである。なお、マルチプレクサ44、45の切り替え制御はマルチプレクサ46、47と同様であるので、ここではマルチプレクサ46、47の切り替え制御について説明する。内部PLLクロックで動作中(ステップS11)に、ユーザにより外部からPLLイネーブル信号DLLEがオフされる(ステップS12、図8のタイミングt11)。すると、先ずマルチプレクサ14の出力PLTBをB側PLL回路3の出力PLBからT側PLL回路2の反転信号に切り替える(ステップS13、図8のタイミングt12)。このため、クロック制御回路33は、PLLイネーブル信号DLLEが入力されるとオフセットクロックPLQBに同期してマルチプレクサ14を切り替える切替信号SWTBを生成し、PLTBをT側PLL回路2の反転信号に切り替える。
【0058】
次に、B側PLL回路3への帰還信号FRBを遅延回路11の出力RPBからB側PLL出力PLBに帰還ループを切り替える(ステップS14、図8のタイミングt13)。このため、クロック制御回路33は、マルチプレクサ14の切り替え後であって、オフセットクロックPLQBに同期したマルチプレクサ47を切り替える切替信号SWB2を生成し、帰還信号FRBをB側PLL出力PLBに切り替える。帰還信号FRBの切り替えに応じてB側PLL回路3はアンロック状態となり、Lock判定信号12aがロウになる。ロックアップ期間の経過後、Lock判定回路12がロックアップを検出する(図8のタイミングt14)と、Lock判定信号12aがハイになる。クロック制御回路33は、このLock判定信号12aを受け取るとオフセットクロックPLQBに同期化した切替信号SWB1を生成する(ステップS16)。この切替信号SWB1によりマルチプレクサ46の選択が内部PLLクロックから外部クロックCLKBに切り替わる(ステップS17、図8のタイミングt15)。
【0059】
次に、PLLイネーブル信号に基づき外部クロックから内部クロックに切り替える動作について説明する。図9は、外部クロックから内部のPLLクロックに切り替える動作を示すフローチャート、図10は、それに対応したタイミングチャートである。ここでは外部クロックCLKBから内部クロックPLTBに切り替える動作について説明するが、これは、外部クロックCLKBから内部クロックPLTBに切り替わり、更に内部クロックPLTBがT側PLL2の反転信号からB側PLL3の出力(PLLクロックPLB)に切り替わるまでの一連の動作となる。
【0060】
外部クロックで動作中の場合(ステップS21)、PLLイネーブル信号がハイになりPLLがイネーブルにされると(ステップS22、図10のタイミングt21)、先ず、B側PLL回路3への帰還信号FRBをB側PLL回路3の出力から遅延回路11の出力RPBに切り替える(ステップS23)。同時に、マルチプレクサ46の選択を外部クロックCLKBから内部クロックPLTBとし、これをクロックCKTBとして出力させる(ステップS24)。このため、クロック制御回路33は、PLLイネーブル信号DLLEがハイになると、オフセットクロックPLQBに同期してマルチプレクサ47、46を切り替える切替信号SWB2、SWB1を生成する(図10のタイミングt22)。なお、これらの切り替えタイミングは、オフセットクロックPLQBに同期したものであれば同時でなくてもよい。タイミングt22までは帰還信号FRBとしてB側PLL回路3の出力を使用しているため、外部クロックCLKBとB側PLLの出力PLBとは同位相になっている。また、内部クロックに切り替えられるタイミングt22では、内部クロックPLTBは、マルチプレクサ14によりT側PLL回路2の反転信号が選択されている。
【0061】
帰還信号FRBの切り替えによりB側PLL回路3はアンロック状態となり、Lock判定信号12aがロウになる(図10のタイミングt23)。B側PLL回路3はロックアップ動作を開始する(ステップS25)。そして、ロック状態になると、Lock判定回路12がこれを検出してLock判定信号12aが再びハイになる(図10のタイミングt24)。これを受けてクロック制御回路33は、このLock判定信号12aをオフセットクロックPLQBに同期化し、切替信号SWTBを生成する(ステップS26)。そして、内部クロックPLTBを出力しているマルチプレクサ14の選択をT側PLL回路2の反転信号からB側PLL回路3の出力に切り替える(ステップS27、図10のタイミングt25)。これにより、外部クロックCLKBから、B側PLL回路3を経由された内部クロックPLTBに切り替わる。なお、外部クロックCLKTから内部クロックPLTTも同様に切り替わる。
【0062】
本実施の形態においては、外部クロックCLKT、CLKBと内部クロックPLTT、PLTBの切り替えを行う際に、PLL回路2、3へ帰還する帰還信号FRT、FRB(帰還ループ)を切り替えて、外部クロックCLKT、CLKBとPLL回路2、3の出力クロックPLT、PLBの位相を一度合わせ、その後クロックツリーへの切り替えを行う。外部クロックCLKT、CLKBと内部クロックPLTT、PLTBの位相が合致することで、実施の形態1と同様な切り替えを行うことができる。すなわち、PLL出力の一定位相オフセットされたクロックPLQT、PLQBに同期させて切り替えを行うことで、クロックツリーに短パルスを発生させることがない。また、内部クロックPLTT、PLTBから外部クロックCLKT、CLKBに切り替えるとき同様である。
【0063】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態は、外部クロックが停止された時にも、同様な切り替え回路により短パルスが発生させることがないクロック切替回路にかかる。図11は、本実施の形態にかかるクロック切替回路を示すブロック図である。本実施の形態かかるクロック切替回路51においては、図6に示すクロック切替回路の各外部クロックに対し、第1、第2の停止制御部としてのクロック・リセット判定回路52、54を設けたものである。また、本実施の形態にかかるクロック制御回路53、55は、実施の形態2にかかるクロック制御回路43、33と異なり、クロック・リセット判定回路52、54からのそれぞれクロック・リセット信号CRST、CRSBが供給される。
【0064】
クロック・リセット判定回路52、54は、外部クロックCLKT、CLKBが供給され、この外部クロックCLKT、CLKBの周波数が、基準となる一定周波数よりも低い周波数となった場合に、これをクロック停止と判断し、クロック・リセット信号CRST、CRSBを活性化させる。すなわち、例えば、クロック停止と判断した時点で例えばハイとなるクロック・リセット信号CRSTをクロック制御回路53、55に供給する。クロック制御回路53、55は、クロック・リセット信号CRST、CRSBが供給されると、実施の形態2と同様な切り替え制御を行う。このことにより、外部クロックが停止した時にも、内部で短パルスを発生させることなくクロックの停止を実現することができる。
【0065】
すなわち、クロック制御回路53、55は、クロック・リセット信号CRST、CRSBが供給されると、先ずクロック制御回路55がマルチプレクサ14の出力をPLBからPLTの反転信号に切り替える。その後、帰還パスを切り替えるため、クロック制御回路53、55がそれぞれマルチプレクサ45、47の出力をPLL出力に切り替える。そして、ロックアップが検出され、PLL回路2、3の出力PLT、PLBと外部クロックCLKT、CLKBの位相が揃ったら、クロック制御回路53、55は、マルチプレクサ44、46の出力を内部クロックPLTT、PLTBから外部クロックCLKT、CLKBに切り替える。
【0066】
本実施の形態においても、2つの異なる位相のクロックを切り替える際に、PLLの特性を用いて、互いのクロックを予め同位相にロックさせ、その状態でPLL自身から出力される一定値位相がずれた別クロックによって、同期切り替えを行う。この一連の切り替手順により、切り替え時のハザードや短パルスなどを発生させることがない。
【0067】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上述の実施の形態では、位相調整回路をPLLとして説明したが、DLL(Delay Locked Loop)として構成することも可能である。また、実施の形態1においては、Lock判定回路12及びクロック制御回路13をB側に設けるものとして説明したが、T側に設けることは勿論、双方に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるクロック切替回路を示すブロック図である。
【図2】T側PLL回路の一例を示すブロック図である。
【図3】B側PLL回路の電圧制御発振器を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるクロック切替回路の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるクロック切替回路のタイミングチャートを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるクロック切替回路を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかるクロック切替回路の動作を示す図であって、内部クロックから外部クロックに切り替える動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2にかかるクロック切替回路の動作を説明する図であって、内部クロックから外部クロックに切り替える際のタイミングチャートを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかるクロック切替回路の動作を示す図であって、外部クロックから内部クロックに切り替える動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2にかかるクロック切替回路の動作を説明する図であって、外部クロックから内部クロックに切り替える際のタイミングチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3にかかるクロック切替回路を示すブロック図である。
【図12】QDR製品で使用される従来のクロック切替回路の周辺を示すブロック図である。
【図13】従来のクロック切替回路において短パルスが発生する場合を示すタイミングチャートである。
【図14】特許文献1に記載のクロック発生回路を示すブロック図である。
【図15】(a)はセレクタ回路215に入力203を設けない場合には、出力クロック201gに非常に短いパルスが発生することを示すタイミングチャートであり、(b)はセレクタ回路215に入力203を設けた場合には、出力クロック201gに非常に短いパルスが発生しないことを示すタイミングチャートである。
【図16】特許文献2に記載のマイクロコンピュータを示すブロック図である。
【図17】特許文献1に記載の切替後のクロックを説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1,31,51 クロック切替回路
2,3 PLL回路
4,8 バッファ
5,9,17 クロックツリー
6,10,18 出力バッファ
7,11 遅延回路
12,42 Lock判定回路
13,33,43,53,55 クロック制御回路
14,44,45,46,47 マルチプレクサ
15 インバータ
16,48 トランスファゲート
21 位相比較器
22 チャージポンプ回路
23 ローパスフィルタ
24 電圧制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相が異なる複数のクロックを切り替え出力するクロック切替回路であって、
第1の外部クロックが入力され第1の位相調整クロックを出力する第1の位相調整回路と、
前記第1の位相調整クロック、又は当該第1の位相調整クロックとは位相が異なる他のクロックを選択出力する選択部と、
前記第1の位相調整クロック及び他のクロックとは非同期の非同期切替指示信号に基づき前記選択部を切り替え制御する切替制御部とを有し、
前記切替制御部は、前記非同期切替指示信号が入力されると、前記第1の位相調整クロックの位相を所定値オフセットさせたオフセットクロックに同期して前記選択部の出力を切り替えさせるクロック切替回路。
【請求項2】
前記第1の外部クロックとは位相が異なる第2の外部クロックが入力され第2の位相調整クロックを出力する第2の位相調整回路を有し、
前記選択部は、前記第1の位相調整クロック、又は前記第2の位相調整クロックの反転信号を選択出力する
ことを特徴とする請求項1記載のクロック切替回路。
【請求項3】
前記第1及び第2の位相調整回路は、それぞれ第1のPLLクロックを出力する第1のPLL回路、及び第2のPLLクロックを出力する第2のPLL回路であって、
前記第1のPLL回路のロック状態を検出するロック状態検出回路を有し、
前記ロック状態検出回路は、前記第1のPLL回路がロック状態になったことを検出すると前記非同期切替指示信号として検出信号を出力し、
前記切替制御部は、前記検出信号が入力されると、前記オフセットクロックに同期して前記選択部の出力を、前記第2のPLLクロックの反転信号から前記第1のPLLクロックに切り替えさせる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のクロック切替回路。
【請求項4】
前記第1の外部クロックは前記第2の外部クロックとは位相が180°異なるクロックである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のクロック切替回路。
【請求項5】
前記第1及び第2のPLL回路は、それぞれ前記第1及び第2の外部クロックとは所定の位相差を有するそれぞれ前記第1及び第2のPLLクロックを出力させる帰還パスを有する
ことを特徴とする請求項2又は3記載のクロック切替回路。
【請求項6】
第1の外部クロック又は第1の内部クロックを選択出力する第1の外内クロック選択部と、
前記第1の外部クロックとは位相が異なる第2の外部クロックが入力されPLLクロックを出力するPLL回路と、
前記第2の外部クロック又は前記第1の内部クロックとは位相が異なる第2の内部クロックである前記PLLクロックを選択出力する第2の外内クロック選択部と、
前記第1及び第2の外部クロックとは非同期で外部から供給される非同期切替指示信号に基づきそれぞれ前記第1及び第2の外内クロック選択部の切り替えを制御するそれぞれ第1及び第2の切替制御部とを有し、
前記第1及び第2の切替制御部は、前記非同期切替指示信号が入力されると、それぞれ前記第1及び第2のPLLクロックの位相を所定値オフセットさせたそれぞれ第1及び第2のオフセットクロックに同期して、前記第1及び第2の外内クロック選択部の出力を切り替えさせるクロック切替回路。
【請求項7】
前記第1の内部クロックは、前記PLLクロックの反転信号である
ことを特徴とする請求項6記載のクロック切替回路。
【請求項8】
前記第1の外部クロックが入力され第1のPLLクロックを出力する第1のPLL回路と、
前記第1の内部クロックを選択出力する選択部とを有し、
前記PLL回路は、第2のPLLクロックを出力する第2のPLL回路であって、
前記選択部は、前記第1のPLLクロック又は前記第2のPLLクロックの反転信号を前記第1の内部クロックとして選択出力する
ことを特徴とする請求項6記載のクロック切替回路。
【請求項9】
前記第1のPLL回路のロック状態を検出する第1のロック状態検出回路を有し、
前記第1のロック状態検出回路は、前記第1のPLL回路がロック状態を検出すると前記第1のPLLクロックとは非同期の検出信号を出力し、
前記第1の切替制御部は、前記検出信号が入力されると、前記第1のオフセットクロックに同期して前記選択部の出力を、前記第2のPLLクロックの反転信号から第1のPLLクロックに切り替えさせる
ことを特徴とする請求項8記載のクロック切替回路。
【請求項10】
前記第1及び第2のPLL回路は、
前記外部クロックとは所定の位相差を有するPLLクロックを出力するよう帰還する第1の帰還パスと、前記外部クロックと同相になるよう帰還する第2の帰還パスと、前記第1及び第2の帰還パスを切り替える帰還パス選択部とを有し、
第1及び第2の切替制御部は、前記非同期切替指示信号が入力されると、それぞれ前記第1及び第2のオフセットクロックに同期して、それぞれ第1のPLL回路の帰還パス選択部、及び第2のPLL回路の帰還パス選択部の切り替えを制御する
ことを特徴とする請求項8又は9項記載のクロック切替回路。
【請求項11】
前記第1の外部クロックは前記第2の外部クロックとは位相が180°異なるクロックである
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載のクロック切替回路。
【請求項12】
前記第2のPLL回路のロック状態を検出する第2のロック状態検出回路を有し、
前記第1及び第2内部クロックを出力中に前記非同期切替指示信号が入力されると、前記第1の切替制御部は、前記選択部の選択を前記第1のPLLクロックから前記第2のPLLクロックの反転信号に切り替えさせ、
前記第1及び第2の切替制御部は、それぞれ第1及び第2の帰還パス選択部に前記第2の帰還パスを選択させ、
前記第1及び第2のロック検出回路がそれぞれロック状態を検出して検出信号を出力すると、前記第1及び第2の切替制御部は、前記第1及び第2の外内クロック選択部にそれぞれ第1及び第2の外部クロックを選択出力させる
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載のクロック切替回路。
【請求項13】
前記第1及び第2の外部クロックを出力中に前記非同期切替指示信号が入力されると、前記第1及び第2の切替制御部は、それぞれ第1及び第2の帰還パス選択部に前記第1の帰還パスを選択させ、前記第1及び第2の外内クロック選択部にそれぞれ前記第1及び第2の外部クロックを選択出力させ、
前記第1のロック検出回路がロック状態を検出して検出信号を出力すると、前記第1の切替制御部は、前記選択部の選択を前記第2のPLLクロックの反転信号から第1のPLLクロックに切り替えさせる
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載のクロック切替回路。
【請求項14】
前記第1及び第2の外部クロックの周波数を検出するそれぞれ第1及び第2の停止制御部を有し、
前記第1及び第2の停止制御部は、それぞれ前記第1及び第2の外部クロックの周波数が所定値未満になるとこれを検出してそれぞれ第1及び第2の停止制御信号を出力し、
前記第1及び第2の切替制御部は、それぞれ前記第1及び第2の停止制御信号に基づき、前記第1及び第2のオフセットクロックに同期してそれぞれ前記第1及び第2のPLL回路が停止するよう制御する
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載のクロック切替回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−316723(P2007−316723A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142733(P2006−142733)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】