説明

スイッチング回路

【課題】従来の電力用半導体装置では、還流ダイオードが発生する逆回復電流により、回路内で電流、電圧の振動現象が生じるおそれがあったため、電流電圧の振動現象を抑制するスイッチング回路を提供する
【解決手段】ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102とが同じ方向に並列接続された並列回路と、前記並列回路に接続されたスイッチング素子103とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
還流ダイオードにキャパシタを並列接続させ、還流ダイオードの発振現象を抑制する電力用半導体装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−281462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電力用半導体装置では、振動現象の発生自体を抑制することができないため、発生した振動現象が減衰するまでは、周辺回路への悪影響を与える虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、振動現象の発生を抑制するスイッチング回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユニポーラダイオードとバイポーラダイオードを並列接続させたスイッチング回路によって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユニポーラダイオードとバイポーラダイオードの並列回路にスイッチング素子を接続させ、当該ユニポーラダイオードとバイポーラダイオードに電流を流すことで、逆回復電荷を少なく保ちつつ、電流、電圧の振動現象の発生を抑制し、周辺回路への悪影響を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発明の実施形態に係る駆動回路を示す回路図である。
【図2】比較例1における、ユニポーラダイオード及びスイッチング素子の時間―電流特性を示す図である。
【図3】比較例2における、バイポーラダイオード及びスイッチング素子の時間―電流特性を示す図である。
【図4】図1のユニポーラダイオードとバイポーラダイオードとの並列回路及びスイッチング素子の時間―電流特性を示す図である。
【図5】図1のユニポーラダイオードとバイポーラダイオードの電圧―電流特性を示す図である。
【図6】発明の他の実施形態に係る駆動回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、誘導性負荷を持つスイッチング測定回路である。誘導性負荷を持つ実用回路としては、モータを接続したインバータ回路や、DC/DCコンバータなどが挙げられる。図2に示すスイッチング測定回路は、それらの実用回路に用いられる半導体デバイスのスイッチング特性を測定するためのものであり、実用回路における半導体デバイスや回路の動作を、単純な回路で再現できるものである。図2は比較例1の駆動回路における、ユニポーラダイオード及びスイッチング素子の時間に対する電流特性を説明するための図であり、図3は比較例2の駆動回路における、パイポーラダイオード及びスイッチング素子の時間に対する電流特性を説明するための図である。図4は、本例の駆動回路におけるユニポーラダイオードとバイポーラダイオードとの並列回路及びスイッチング素子の時間に対する電流特性を説明するための図である。
【0010】
図1に示す駆動回路は、ユニポーラダイオード101と、ユニポーラダイオード101に並列接続されたバイポーラダイオード102と、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102に接続されるスイッチング素子103と、負荷インダクタンス21と、パルスジェネレータ22と、スイッチング素子103の開閉により負荷インダクタンス21に電流を供給する直流電源24と、平滑コンデンサ25とを有する。またスイッチング回路10は、ユニポーラダイオード101と、バイポーラダイオード102と、スイッチング素子103により形成される。
【0011】
ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102は同じ方向を向いて並列に接続され、負荷インダクタンス21は当該ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102との並列回路に並列接続される。本例のスイッチング素子103はIGBTを用いており、スイッチング素子103のコレクタ端子は、ユニポーラダイオード101のアノード端子及びバイポーラダイオード102のアノード端子に接続される。またスイッチング素子103のゲート端子は、スイッチング素子103にON・OFF動作をさせるためのパルスジェネレータ22が接続される。スイッチング素子103とパルスジェネレータ22との間の抵抗23は、ゲート抵抗である。直流電源24の正極端子と負極端子の間に平滑コンデンサ25が接続される。直流電源24の正極端子は、ユニポーラダイオード101のカソード端子及びバイポーラダイオード102のカソード端子に接続され、直流電源24の負極端子は、スイッチング素子のエミッタ端子に接続される。図1に示す駆動回路の各素子間は寄生インダクタンス26を有する。
【0012】
次に、本例の駆動回路の動作を説明する。パルスジェネレータ22の信号に応じて、電圧がスイッチング素子103のゲートーエミッタ間に加わると、スイッチング素子103がON状態となり、直流電源24からの電流がスイッチング回路10及び負荷インダクタンス21へ流れ出す。ここで、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102は当該直流電源24からの電流に対して逆方向に接続されているため、直流電電24からの電流は、負荷インダクタンス21を経由して、スイッチング素子103を流れる。
【0013】
スイッチング素子103がON状態からOFF状態となると、負荷インダクタンス21は、蓄積されたエネルギーによって電流を流し続けるようとする。この時、スイッチング素子103はオフ状態のため、当該電流は、スイッチング素子103のコレクタ−エミッタ間には電流は流れず、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102へ還流電流として流れ出し、当該還流電流がユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102と、負荷インダクタンス21との閉回路に流れる。
【0014】
次に、還流電流が流れている状態で、スイッチング素子103をオフ状態からオン状態にした時の、スイッチング回路10の動作を、比較例1として図2を、比較例2として図3を、本例として図4を参照しつつ説明する。
【0015】
比較例1の駆動回路は、図1に示す本例のスイッチング回路10においてユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路の代わりにユニポーラダイオード101のみを接続した場合の駆動回路である。そして、図2は比較例1の駆動回路のユニポーラダイオード101及びスイッチング素子103の時間―電流特性を示し、(a)はユニポーラダイオード101に流れる電流を、(b)はスイッチング素子103に流れる電流を示す。
【0016】
比較例1の駆動回路において、ユニポーラダイオード101に還流電流が流れている状態で、スイッチング素子103がOFF状態からON状態になると、直流電源24からの電流がスイッチング素子103に流れ出し、ユニポーラダイオード101に流れていた還流電流はゼロに向かう(時間t1)。当該還流電流が導通から遮断する過程において、空乏層の伸びに従いユニポーラダイオード101内部の多数キャリアが電荷として排出される(以下、逆回復電荷と称す)。その結果、ユニポーラダイオード101に対して逆方向の電流が流れる(以下、逆回復電流と称す。)なお図2に示す(q)の斜線部が逆回復電荷に相当する。
【0017】
ユニポーラダイオード101は多数キャリアのみで逆回復電荷を形成するため、バイポーラダイオードと比較して、逆回復電荷は少ない。しかしユニポーラダイオード101の逆回復電荷はバイポーラダイオードと比較して早く排出されるため、逆回復電流のピーク値(時間t2)からゼロ(時間t3)に向かうまでの遮断速度(dIr/dt)が大きくなる。そして、逆回復電流の遮断速度と、駆動回路内の寄生インダクタンス26のインダクタンス成分(Lp)により、サージ電圧(Lp×dIr/dt)が発生する。これにより、当該サージ電圧はユニポーラダイオード101に印加される、比較例1の駆動回路において、ユニポーラダイオード101に過度な負荷がかかる。
【0018】
またユニポーラダイオード101がオフ状態になると、ユニポーラダイオード101のドリフト層に空乏層が広がり、空乏容量が発生するため、ユニポーラダイオード101はコンデンサとして動作する。当該コンデンサと、寄生インダクタンス26のインダクタンス成分により、LC共振回路が形成され、LC共振が発生する。このLC共振が電流、電圧の振動現象の原因である。この電流、電圧の振動現象はノイズの発生源となり、周辺回路の誤作動の原因となる。
【0019】
比較例2の駆動回路は、図1に示す本例のスイッチング回路10においてユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路の代わりにバイポーラダイオード102のみを接続した場合の駆動回路である。そして、図3は比較例2の駆動回路のバイポーラダイオード102及びスイッチング素子103の時間―電流特性を示し、(a)はバイポーラダイオード102に流れる電流を、(b)はスイッチング素子103に流れる電流を示す。
【0020】
比較例1と同様に、バイポーラダイオード102に還流電流が流れている状態で、スイッチング素子103がOFF状態からON状態になると(時間t1)、還流電流はゼロに向かう。バイポーラダイオードは導通状態において、少数キャリアがドリフト層中に注入されている。従って、当該還流電流が導通から遮断する過程において、少数キャリアと多数キャリアの両方が逆回復電荷として排出される。
【0021】
このようにバイポーラダイオード102は小数キャリア及び多数キャリアで逆回復電荷を形成するため、逆回復電荷が比較例1のユニポーラダイオード101で形成される逆回復電荷の量に比べて多くなる。図3において(q)の部分が逆回復電荷を示すが、 図3の(q)の部分が図2の(q)の部分と比較して大きくなっている。そして、図3(b)に示すように、スイッチング素子103に流れる逆回復電流のピーク値は比較例1と比較して高くなり、スイッチング素子103に損失が発生してしまう。バイポーラダイオード102から排出される逆回復電荷の量は、バイポーラダイオード102に流れる還流電流の電流密度が高い場合により増加するため、損失も増加する。
【0022】
一方、逆回復電流のピーク値(時間t2)からゼロ(時間t3)に向かうまでの遮断速度(dIr/dt)は、比較例1のユニポーラダイオード101の場合と比べ、遅いため、比較例1のような電流、電圧の振動現象は生じにくい(図2の(a)を参照)。
【0023】
このように、電流・電圧の振動現象の発生を抑制するには、逆回復電流の遮断速度dIr/dtを緩和することが重要であるが、逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度dIr/dtを緩和することは困難であった。
【0024】
本例の駆動回路は、同一方向であるユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路を有するため、スイッチング素子103をオンからオフ状態(時間t1)にすることにより発生する還流電流は、ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102の両方に流れる。そして、スイッチング素子103がON状態になり、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102が遮断されると、逆回復電流が、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路から流れる。逆回復電荷は、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の両方からから排出されるため、ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102に流れる電流の割合を調節したり、バイポーラダイオード102のチップ面積を調節することで、比較例2のようにバイポーラダイオード102のみを接続する場合と比較して、逆回復電荷の量を少なくすることが出来る(図4の(q)を参照)。そのため、スイッチング素子に流れる逆回復電流も抑制することができる(図4の(b)を参照)。
【0025】
また、逆回復電流の遮断速度が小さいバイポーラダイオード102から排出される逆回復電荷が、逆回復電流の遮断速度が大きいユニポーラダイオード101から排出される逆回復電荷に足し合わされるため、寄生インダクタンス26に流れ込む逆回復電流の遮断速度は、バイポーラダイオード102により律速され、図4の(a)に示すように緩やかになる。そして、図4に示すように、スイッチング素子103とユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に流れる逆回復電流のピーク値(時間t2)は抑えられ、またピーク値に達し減少する過程において、逆回復電流は緩やかにゼロ(時間t3)に向かって収束する。これにより、本例の駆動回路は、逆回復電流の遮断による電流、電圧の振動現象を抑制しつつ、スイッチング素子103を含む各回路素子の損失を抑制できる。
【0026】
本例において、バイポーラダイオードの代わりにソフトリカバリダイオードを用いることも出来る。ソフトリカバリダイオードはバイポーラダイオードの一種であり、逆回復電荷が緩やかに切れ、逆回復電流の遮断速度が緩和されるようにドリフト層中の少数キャリアライフタイムが制御されているため、dIr/dtが緩和された電流波形となり、サージ電圧の発生も小さく、電流、電圧の振動現象の発生をさらに抑制することが出来る。
【0027】
次に、本例のスイッチング回路10において、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧と、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に流れる電流との関係を、図5を用いて説明する。
【0028】
図5(a)〜(f)において、(I)はユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に流れる還流電流を、(II)はユニポーラダイオード101に流れる還流電流を、(III)はバイポーラダイオード102に流れる還流電流を示す。またImaxは、本例の駆動回路を設計する際に考慮される、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に流れる最大電流値を示す。ダイオードは、ある程度の順方向電圧を印加すると、急激に電流が立ち上がる電圧が存在する。本例ではその電圧を立ち上がり電圧と呼ぶ。またダイオードに立ち上がり電圧以上の順方向電圧が印加された場合を、そのダイオードが導通状態であると呼ぶ。
【0029】
ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102の電流電圧特性の関係にはさまざまな組み合わせが存在するが、図5(a)〜(f)に示す関係であれば、逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度dIr/dtを緩和する効果を発揮することができる。図5(a)〜(f)に共通しているのは、ユニポーラダイオード101およびバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧が、並列回路が最大電流に達したときの電圧降下値より低い点である。
【0030】
図5(a)は、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧をバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧よりも低く設定した例である。図5(a)の場合、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧以上の電圧領域において、逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流・電圧の振動現象を抑制することができる。
【0031】
図5(b)は、上述した図5(a)に対して、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧がバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧よりも低い点に変わりはないが、バイポーラダイオード102の電圧―電流特性の傾きをユニポーラダイオード101の電圧―電流特性の傾きより大きく設定した点が異なる。
【0032】
これにより、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102に流れる還流電流が大きい時、ユニポーラダイオード101よりバイポーラダイオード102の方がより大きな電流が流れるため、バイポーラダイオード102による逆回復電流の緩やかな遮断によって、本例は電流、電圧の振動現象を抑制できる。
【0033】
図5(c)及び(d)は、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧がユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧と同じ電圧に設定した例であり、これによればユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に還流電流が流れる時、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102に還流電流が流れる。そのため、本例によれば、還流電流が所定の最大電流(Imax)以下の全領域において、逆回復電流による電流、電圧の振動現象を抑えつつ、逆回復電荷の量を低減することができる。
【0034】
また、図5(c)に示す本例のスイッチング回路10において、還流電流が多く流れるとバイポーラダイオード102よりユニポーラダイオード101の方に多く電流が流れるため、より逆回復電荷の量を抑制することができる。
【0035】
また図5(d)示す本例のスイッチング回路10において、還流電流が多く流れるとユニポーラダイオード101よりバイポーラダイオード102の方に多く電流が流れるため、逆回復電流の遮断速度を緩和する効果が大きくなり、より電流、電圧の振動現象を抑制することができる。
【0036】
図5(e)は、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧が ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧よりも低く設定した例であり、これによりユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路に還流電流が流れる時には、少なくともバイポーラダイオード102に還流電流が流れる。そのため、本例によれば、還流電流が所定の最大電流(Imax)以下の全領域において、電流、電圧の振動現象を抑えつつ、逆回復電荷の量を低減することができる。また還流電流が大きい時、本例によれば、ユニポーラダイオード101の方に多く還流電流を流すため、より逆回復電荷の量を抑え、逆回復電流を抑制できる。
【0037】
また、ユニポーラダイオード101の電圧が立ち上がる時点で、バイポーラダイオード102が、高注入状態になるように、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧を設定することで、より逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流、電圧の振動現象を抑制することができる。バイポーラダイオード、特にソフトリカバリダイオードは、少数キャリアがドリフト層中に高濃度に注入されることで逆回復電流の遮断速度を緩和している。したがって、ある程度の電流密度に達し、少数キャリアが高注入状態になることで、より効果的に逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流・電圧の振動現象を抑制することができる。ここでの高注入状態とは、ドリフト層中の少数キャリア濃度が、ドリフト層の不純物濃度以上になることである。
【0038】
図5(f)は、上述した図5(e)に対して、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧がユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧よりも低い点に変わりはないが、バイポーラダイオード102の電圧―電流特性の傾きがユニポーラダイオード101の電圧―電流特性の傾きより大きく設定した点が異なる。
【0039】
これにより、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102に流れる還流電流が大きい時、ユニポーラダイオード101よりバイポーラダイオード102の方がより大きな電流が流れるため、バイポーラダイオード102により逆回復電流の遮断速度を緩和できるため、本例のスイッチング回路10は電流、電圧の振動現象をより抑制できる。
【0040】
図5(a)〜(f)に示すそれぞれの特性は、本例のスイッチング回路10が組み込まれる駆動回路、測定回路の有するインダクタンス特性や、還流電流の大きさ等により適宜選択され、本例のスイッチング回路10に組み込まれる。
【0041】
バイポーラダイオード102をPNダイオードとした場合、PNダイオードの立ち上がり電圧はバンドギャップに依存する。したがって、バイポーラダイオード102を形成する半導体材料を、ユニポーラダイオード101を形成する半導体材料よりバンドギャップが狭い材料にすることで、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧を、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧より低く設定することが出来る。このように、バイポーラダイオード102の立ち上がり電圧を、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧より低く設定することによって、全電流域において逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流・電圧の振動現象を抑制することができる。 本例のスイッチング回路10のユニポーラダイオード101は、炭化珪素、窒化ガリウム、ダイヤモンドの基体材料に金属を接合したショットキーダイオードにより形成することができる。これらの基体材料は、通常用いられるシリコンよりバンドギャップが広く、より高耐圧で低損失なスイッチング回路を提供することができる。
【0042】
また本例のユニポーラダイオード101は、炭化珪素、窒化ガリウム、ダイヤモンド基体上にそれらの基体材料よりバンドギャップが狭いヘテロ半導体を接合した、ヘテロ接合ダイオードにより形成されてもよい。これらの基体は、通常用いられるシリコンよりバンドギャップが広く、より高耐圧で低損失なスイッチング回路を提供することができる。また、ヘテロ接合ダイオードは、ヘテロ半導体材料の種類や、ヘテロ半導体中の不純物濃度を制御することで、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧を制御することができるため、ユニポーラダイオード101の立ち上がり電圧をバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧より高く設定することができる。これにより、本例のスイッチング回路10は、全電流域において逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流・電圧の振動現象を抑制できる。
【0043】
なお、ヘテロ接合ダイオードのヘテロ半導体として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素などを用いてもよい。
【0044】
また本例のバイポーラダイオード102は、シリコン、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウムのPNダイオードにより形成される。これらの材料は、炭化珪素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどの材料に比べてバンドギャップが狭いため、よりバイポーラダイオード102の立ち上がり電圧を下げることができる。これにより、本例のスイッチング回路10は、全電流域において逆回復電荷の量を少なく保ちつつ、逆回復電流の遮断速度を緩和し、電流・電圧の振動現象を抑制できる。
【0045】
《第2実施形態》
図6は、発明の他の実施形態に係る駆動回路である。本例では上述した第1実施形態に対して、本例のスイッチング回路10〜60を用いて三相インバータ回路を形成し駆動回路とする。
【0046】
図6に示す三相インバータ回路は、本例のスイッチング回路10及びスイッチング回路20を直列接続した上下アーム回路と、スイッチング回路30及びスイッチング回路40を直列接続した上下アーム回路と、スイッチング回路50及びスイッチング回路60を直列接続した上下アーム回路と、直流電源24と、三相同期モータ27と、平滑コンデンサ25と、リレースイッチ28とを有している。スイッチング回路10は、スイッチング素子203のドレイン端子に、ユニポーラダイオード101のアノード端子およびバイポーラダイオード102のアノード端子が接続されているのに対して、スイッチング回路20は、スイッチング素子103のソース端子に、ユニポーラダイオード201のカソード端子およびバイポーラダイオード202のカソード端子が接続されている点が異なるが、基本的な動作は同じである。スイッチング素子30〜60に関しても同様である。
【0047】
3個の上下アーム回路は並列に接続され、当該三並列させた上下アーム回路と平滑コンデンサ25は直流電源24の正極端子と負極端子の間にリレースイッチ28を介して接続され、三相同期モータ25の三相の端子が三並列された上下アーム回路の中間接続点にそれぞれ接続される。これにより、本例のスイッチング回路10〜60は、PWM(Pulse Width Modulation)回路を形成し、三相同期モータ27にPWM信号を出力する。なお、本例の三相同期モータ27が本発明の負荷インダクタンスに相当する。
【0048】
またスイッチング素子103、203(他のスイッチング回路30〜60も同じ)はシリコン、ゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムを含むMOSFETにより形成されており、当該MOSFETに内蔵される寄生PNダイオードをバイポーラダイオード102、202に利用している。ユニポーラダイオード101、201は、スイッチング素子103、203とそれぞれ並列に接続されて、スイッチング素子103、203の寄生ダイオードであるバイポーラダイオード102、202とそれぞれ同じ向きで接続される。
【0049】
本例の駆動回路において、スイッチング回路40及びスイッチング回路10のスイッチング素子がON状態になると、直流電源24より電流が、V−U相で流れ出す。次にスイッチング回路10のスイッチング素子203がOFF状態になると、三相モータ27が有するインダクタンス成分により、還流電流がユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102に流れる。そして、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102が通電から遮断状態になると、逆回復電流が発生するが、本例のスイッチング回路10〜60は、ユニポーラダイオード101及びバイポーラダイオード102の並列回路を有するため、当該逆回復電流による電流、電圧の振動現象を抑制でき、また逆回復電荷の量を少なくし、回路素子への損失を軽減できる。
【0050】
また、本例のスイッチング回路10〜60は、スイッチング素子の寄生ダイオードをバイポーラダイオードとしているため、別途バイポーラダイオードを設けなくてよく、ダイオードのチップを削減でき、低コスト化、小型化を図ることができる。
【0051】
また本例の駆動回路において、ユニポーラダイオード101を複数チップで形成し、その複数のユニポーラダイオードチップの間にバイポーラダイオード102を配置することができる。ユニポーラダイオード101とバイポーラダイオード102では、電流電圧特性や逆回復電荷の量が異なるため、発熱に差が出る。このような配置にすることによって、駆動回路の熱分布をより均一化することができ、より信頼性が高い駆動回路を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、20、30、40、50、60…スイッチング回路
101、201…ユニポーラダイオオード
102、202…バイポーラダイオード
103、203…スイッチング素子
21…負荷インダクタンス
22…パルスジェネレータ
23…ゲート抵抗
24…直流電源
25…平滑コンデンサ
26…寄生インダクタンス
27…三相モータ
28…リレースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニポーラダイオードとバイポーラダイオードとが同じ方向に並列接続された並列回路と、
前記並列回路に接続されたスイッチング素子とを備えた
スイッチング回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子がオンからオフになることで発生する還流電流は、前記並列回路に流れ、前記ユニポーラダイオード及び前記バイポーラダイオードを導通状態にすることを特徴とする
請求項1記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記バイポーラダイオードの立ち上がり電圧は、前記ユニポーラダイオードの立ち上がり電圧以下であることを特徴とする
請求項1又は2記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記ユニポーラダイオード及び前記バイポーラダイオードが導通状態の時、
前記ユニポーラダイオードに流れる電流は、前記バイポーラダイオードに流れる電流より大きいことを特徴とする
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記バイポーラダイオードは、ソフトリカバリダイオードであることを特徴とする
請求項1〜4のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記バイポーラダイオードを形成する半導体材料は、
前記ユニポーラダイオードを形成する半導体材料よりバンドギャップが狭い
ことを特徴とする
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記ユニポーラダイオードは、炭化珪素もしくは窒化ガリウムの基体材料に金属を接合したショットキーダイオードであることを特徴とする
請求項1〜6のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項8】
前記ユニポーラダイオードは、炭化珪素もしくは窒化ガリウムの基体材料に前記基体材料よりバンドギャップが狭い半導体をヘテロ接合したヘテロ接合ダイオードであることを特徴とする
請求項1〜6のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項9】
前記バイポーラダイオードは、シリコン、シリコンゲルマニウム又はゲルマニウム材料を含むPNダイオードであることを特徴とする
請求項7〜8のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項10】
前記バイポーラダイオードはシリコン、もしくはシリコンゲルマニウムもしくはゲルマニウムのMOSFETに内蔵された寄生PNダイオードであることを特徴とする
請求項1〜8いずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項11】
多数キャリアが逆回復電荷となる第1のダイオードと多数キャリアと小数キャリアの両方が逆方向電荷となるダイオードとが同じ方向に並列接続された並列回路と、
前記並列回路に接続されたスイッチング素子とを備えた
スイッチング回路。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された負荷インダクタンスとを備えた駆動回路において、
前記スイッチング回路がオンになることにより、直流電流が前記負荷インダクタンスに流れ、
前記スイッチング回路がオフになると、前記並列回路が導通し前記負荷インダクタンスと閉回路を形成することを特徴とする
駆動回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−200585(P2010−200585A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45852(P2009−45852)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】