説明

タングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法及び成膜装置

【課題】 タングステン膜又は酸化タングステン膜上に酸化シリコン膜を形成しても、酸化シリコン膜のインキュベーション時間を短縮することが可能なタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法を提供すること。
【解決手段】 被処理体上にタングステン膜又は酸化タングステン膜を形成する工程(ステップ1)と、タングステン膜又は酸化タングステン膜上にシード層を形成する工程(ステップ2)と、シード層上に酸化シリコン膜を形成する工程(ステップ3)と、を具備し、上記シード層をタングステン膜又は酸化タングステン膜上に、被処理体を加熱し、タングステン膜又は酸化タングステン膜の表面にアミノシラン系ガスを供給して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいて、タングステン膜上に酸化シリコン(SiO)膜を形成する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、タングステン等の金属上に、酸化シリコン膜を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−54432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タングステン(W)膜、又は酸化タングステン(WO)膜上に酸化シリコン膜を成膜した場合、成膜初期段階において、タングステン、又は酸化タングステンの表面へのシリコンの吸着レートが遅いため、酸化シリコン膜が成長しだすまでのインキュベーション時間が長くなる、という事情がある。インキュベーション時間が長いため、タングステン以外の下地上に形成される酸化シリコン膜に比較して膜厚が薄くなったり、また、成膜初期段階のようにシリコンの吸着が不十分な状態のとき、酸化剤がタングステンに直接接触するためにタングステンが酸化され、酸化タングステンが増膜してしまったり、という事情がある。
【0006】
この発明は、タングステン膜又は酸化タングステン膜上に酸化シリコン膜を形成しても、酸化シリコン膜のインキュベーション時間を短縮することが可能なタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法、及びその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上に酸化シリコン膜の成膜方法は、(1)被処理体上にタングステン膜又は酸化タングステン膜を形成する工程と、(2)前記タングステン膜又は酸化タングステン膜上にシード層を形成する工程と、(3)前記シード層上に酸化シリコン膜を形成する工程と、を具備し、前記(2)の工程が、前記被処理体を加熱し、前記タングステン膜又は酸化タングステン膜の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記タングステン膜又は酸化タングステン膜上にシード層を形成する工程である。
【0008】
この発明の第2の態様に係る成膜装置は、タングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜を成膜する成膜装置であって、前記タングステン膜又は酸化タングステン膜が形成された被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に、アミノシラン系ガス及びシリコン原料ガスの少なくとも一方、並びに酸化剤を含むガスを供給するガス供給機構と、前記処理室内を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気装置と、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記処理室内において、請求項1から請求項10いずれか一項に記載されたタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法が、前記被処理体に対して実行されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、タングステン膜又は酸化タングステン膜上に酸化シリコン膜を形成しても、酸化シリコン膜のインキュベーション時間を短縮することが可能なタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法、及びその成膜方法を実施することが可能な成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aはこの発明の一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法の一例を示す流れ図、図1Bは図1A中のステップ3の一例を示す流れ図
【図2】図2A〜図2Cは、図1A及び図1Bに示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図
【図3】堆積時間とシリコン層の膜厚との関係を示す図
【図4】図3中の破線枠A内を拡大した拡大図
【図5】A図は図面代用写真(SEM)、B図は膜厚を示した図
【図6】A図は図面代用写真(SEM)、B図は膜厚を示した図
【図7】A図は図面代用写真(SEM)、B図は膜厚を示した図
【図8】半導体集積回路装置内の構造体(ゲート電極)を示す断面図
【図9】図9A〜図9Cはステップ3の他例を示す流れ図
【図10】一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図一
【発明を実施するための形態】
【0011】
(成膜方法)
図1Aはこの発明の一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の酸化物膜の成膜方法の一例を示す流れ図、図1Bは図1A中のステップ3の一例を示す流れ図、図2A〜図2Cは、図1A及び図1Bに示すシーケンス中の被処理体の状態を概略的に示す断面図である。
【0012】
まず、図1A中のステップ1に示すように、被処理体上にタングステン膜又は酸化タングステン膜を形成する。酸化タングステン膜としては、被処理体上に直接酸化タングステン膜を形成するようにしても良いし、被処理体上に形成されたタングステン膜の表面上に形成された自然酸化膜であっても良い。また、本例では、被処理体として半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハWを用いた。このシリコンウエハWのシリコン基板1上に、本例ではタングステン膜2を形成した(図2A)。
【0013】
次に、図1A中のステップ2に示すように、タングステン膜2上にシード層3を形成する(図2B)。本例では、シード層3を次のようにして形成した。
【0014】
まず、タングステン膜2が形成されたシリコンウエハWを成膜装置の処理室内に搬入する。次いで、処理室内の温度を上げ、タングステン膜2が形成されたシリコンウエハWを加熱し、加熱されたタングステン膜2の表面にアミノシラン系ガスを供給する。これにより、タングステン膜2の表面上にシード層3を形成する。
【0015】
アミノシラン系ガスの例としては、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、
DEAS(ジエチルアミノシラン)、
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
等を挙げることができる。本例では、DIPASを用いた。
【0016】
ステップ2における処理条件の一例は、
DIPAS流量: 500sccm
処 理 時 間: 5min
処 理 温 度: 25℃
処 理 圧 力: 532Pa(4Torr)
である。ステップ2の工程を、本明細書では以下プリフローと呼ぶ。
【0017】
ステップ2は、シリコン原料を、タングステン膜2に吸着させやすくする工程である。なお、本明細書では、ステップ2においてシード層3を形成する、と記載しているが、実際にはほとんど成膜されることはない。シード層3の厚さは、好ましくは単原子層レベルの厚さ程度であることが良い。具体的なシード層3の厚さを言及すれば、0.1nm以上0.3nm以下である。
【0018】
次に、図1A中のステップ3に示すように、シード層3上に酸化物膜、本例では、酸化シリコン膜4を形成する(図2C)。
【0019】
ステップ3の一例を図1Bに示す。本例では、酸化シリコン膜4の成膜に、シリコンを含むシリコン原料ガスと、シリコンを酸化させる酸化剤を含むガスとを交互に供給しながら成膜する、いわゆるALD(Atomic Layer Deposition)法、又はMLD(Molecular Layer Deposition)法を採用した。酸化剤としては、O、O、HO、又はそれらをプラズマにより活性化させた活性種を挙げることができる。本例ではOプラズマで生成したOラジカルを用いた。
【0020】
まず、ステップ31に示すように、処理室内に不活性ガス、例えば、窒素(N)ガスを供給し、アミノシラン系ガスをパージする。
【0021】
次に、ステップ32に示すように、シリコン原料ガスを処理室内に供給し、シード層3上にシリコン層を形成する。シリコン原料ガスの例としては、ステップ2で用いたアミノシラン系ガスの他、アミノ基を含まないシラン系ガスを挙げることができる。アミノ基を含まないシラン系ガスとしては、
SiH
SiH
SiH
Si
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及び
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスを挙げることができる。
【0022】
なお、本例では、アミノシラン系ガス、例えば、DIPASを用いた。
【0023】
ステップ32における処理条件の一例は、
DIPAS流量: 500sccm
処 理 時 間: 0.1min
処 理 温 度: 25℃
処 理 圧 力: 532Pa(4Torr)
である。
【0024】
次に、ステップ33に示すように、処理室内に不活性ガス、例えば、窒素ガスを供給し、シリコン原料ガスをパージする。
【0025】
次に、ステップ34に示すように、酸化剤を含むガスを処理室内に供給し、ステップ32で形成されたシリコン層を酸化し、酸化シリコン膜4を形成する。ステップ34においても酸化剤としては、O、O、HO、又はそれらをプラズマにより活性化させた活性種を挙げることができる。本例ではOプラズマで生成したOラジカルを用いた。
【0026】
次に、ステップ35に示すように、処理室内に不活性ガス、例えば、窒素ガスを供給し、酸化剤を含むガスをパージする。
【0027】
次に、ステップ36に示すように、繰り返し回数が設定回数か否かを判断する。
【0028】
設定回数に達していない場合(NO)、ステップ32に戻り、ステップ32からステップ35を繰り返す。
【0029】
設定回数に達した場合(YES)、図1Aに示すように、処理終了となる。
【0030】
(インキュベーション時間)
図3に、堆積時間とシリコン層の膜厚との関係を示す。図3に示す結果は下地を酸化シリコン(SiO)とした場合であるが、下地が酸化シリコンであってもタングステンであっても酸化タングステンであっても、同様の傾向を示す。なぜなら、プリフロー、即ちアミノシラン系ガスが熱分解されることで得られたシード層3は下地上に形成されるからである。シリコン層は、あくまでシード層3上に吸着されて成膜される。
【0031】
本例で用いたプリフローにおける処理条件は、
DIPAS流量: 500sccm
処 理 時 間: 5min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 53.2Pa(0.4Torr)
である。
【0032】
同じく本例で用いたシリコン層を成膜するための処理条件は、
モノシラン流量: 500sccm
堆 積 時 間: 30min/45min/60min
処 理 温 度: 500℃
処 理 圧 力: 53.2Pa(0.4Torr)
である。
【0033】
シリコン層の膜厚は、堆積時間を30minとしたとき、45minとしたとき、及び60minとしたときの3点で測定した。
【0034】
図3中の線Iはプリフロー有りの場合、線IIはプリフロー無しの場合の結果を示している。線I、IIは、測定された3つの膜厚を最小二乗法で直線近似した直線であり、式は次の通りである。
【0035】
線I : y = 17.572x − 20.855 …(1)
線II : y = 17.605x − 34.929 …(2)
図3に示すように、プリフロー有りの場合、プリフロー無しに比較してシリコン層4の膜厚が増す傾向が明らかとなった。
【0036】
上記(1)、(2)式をy=0、即ち、シリコン層の膜厚を“0”としたとき、線I、IIと堆積時間との交点を求めたものを図4に示す。なお、図4は図3中の破線枠A内を拡大した拡大図である。
【0037】
図4に示すように、プリフロー有りのとき、シリコン層の堆積が処理開始から約1.2min(x≒1.189)から始まる。対して、プリフロー無しのシリコン層のときには、シリコン層の堆積が処理開始から約2.0min(x≒1.984)から始まる。
【0038】
このように、下地に対してアミノシラン系ガスのプリフローを行うことで、インキュベーション時間を、約2.0minから約1.2minに短縮することができる。
【0039】
(酸化シリコン膜のSEM観察)
次に、酸化シリコン膜をSEM観察した結果を示す。
【0040】
図5は上記一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法を用いて酸化シリコン膜4を形成した場合であり、A図はSEM写真、B図は膜厚を示した図である。図6は比較例であり、プリフロー無し場合である。酸化シリコン膜4は、成膜する際の繰り返し回数をともに20サイクルとして成膜した。なお、タングステン膜2の表面上には、双方とも薄い酸化タングステン(WO)膜5が形成されている。この酸化タングステン膜5は大気中の酸素と触れることで自然に形成された自然酸化膜である。もちろん、酸化タングステン膜5は無くてもよい。
【0041】
図5A及び図5Bに示すように、上記一実施形態によれば、タングステン膜2上に、膜厚1.3nmの酸化タングステン膜5を介して膜厚3.9nm(シード層3の酸化膜厚込み)の酸化シリコン膜4が形成される。
【0042】
対して、図6A及び図6Bに示すように、プリフロー無しの比較例によれば、タングステン膜2上に、膜厚1.5nmの酸化タングステン膜5を介して膜厚3.0nmの酸化シリコン膜4しか形成されていない。
【0043】
このように、上記一実施形態によれば、プリフローをしない場合に比較して、インキュベーション時間が短縮され、同じ20サイクルでも、約30%膜厚が厚い酸化シリコン膜4を、タングステン膜2上に形成することができた。
【0044】
また、上記一実施形態によれば、酸化タングステン膜5の膜厚が1.3nmであるが、比較例では、酸化タングステン膜5の膜厚が1.5nmに増膜している。
【0045】
このことから、上記一実施形態によれば、タングステン膜2上への酸化シリコン膜4の成膜に際し、界面の酸化タングステン膜5の増膜をも抑制できる、という利点も併せて得ることができる。これは、上記一実施形態では、シード層3がタングステン膜2の表面上に形成されるため、酸化剤が直接にタングステン膜2や酸化タングステン膜5に接触することを抑制できるためである、と考えられる。
【0046】
図7はシリコン基板1上に酸化シリコン膜4を形成した場合であり、A図はSEM写真、B図は膜厚を示した図である。本例において、酸化シリコン膜4は、処理条件を同じとし、繰り返し回数も20サイクルで同じとして成膜した。なお、シリコン基板1の表面上には膜厚1nmの自然酸化膜(SiO)6が形成されている。
【0047】
図7A及び7Bに示すように、この場合、シリコン基板1上に、自然酸化膜6を介して膜厚4.1nmの酸化シリコン膜4が形成される。
【0048】
このことから、上記一実施形態によれば、次のような利点も得ることができる。
【0049】
図8A〜8Cは、半導体集積回路装置内の構造体、例えば、ゲート電極を示す断面図である。
【0050】
図8Aに示すように、ゲート電極の中には、ポリシリコン層7上にタングステン膜2を積層した、いわゆるポリメタル構造のゲート電極がある。このポリメタル構造のゲート電極の側壁上に、酸化シリコン膜4を形成する場合、プリフロー無しの場合には、酸化シリコン膜4の、ポリシリコン層7上の膜厚とタングステン膜2上の膜厚との差が大きくなる(図8B)。例えば、図6Bに示したように、プリフロー無しの比較例では、酸化シリコン膜4の膜厚はタングステン膜2の上で3.0nmであった。このため、酸化シリコン膜4の膜厚のばらつきが大きくなる。
【0051】
対して、図5Bに示したように、上記一実施形態によれば、酸化シリコン膜4の膜厚はタングステン膜2の上で3.9nmであった。このため、酸化シリコン膜4の、ポリシリコン層7上の膜厚とタングステン膜2上の膜厚との差を、比較例に比較して小さくすることができる(図8C)。
【0052】
このように、上記一実施形態によれば、インキュベーション時間を短くでき、短時間、あるいは繰り返しサイクル数が少ない場合でも、より厚い膜厚の酸化シリコン膜4を、タングステン膜2上に形成できる、という利点に加えて、シリコンとタングステンとの双方が露出しているような半導体集積回路装置内の構造体上に酸化シリコン膜4を形成した場合に、酸化シリコン膜の膜厚を、ばらつきを小さくすることも可能になる、という利点も得ることができる。
【0053】
また、酸化シリコン膜4の成膜に際し、界面の酸化タングステン膜5の増膜も抑制できる。これは、上記一実施形態によれば、酸化タングステン膜5又はタングステン膜2の表面にシード層3が形成される。このシード層3は、酸化シリコン膜4の成膜中、特に、酸化シリコン膜4の成膜初期段階において酸化剤の拡散を防ぐ障壁となる。このため、酸化タングステン膜5又はタングステン膜2が、酸化剤に直接に触れ難くなり、酸化タングステン膜5の増膜が抑制される。
【0054】
(成膜方法の他例)
次に、タングステン膜上への酸化物膜の成膜方法の他例を説明する。
【0055】
図9A〜9Cは、図1B中のステップ3の他例を示す流れ図である。
【0056】
(第1例)
図9Aに示すように、第1例は、図1Bに示したステップ32、33と、ステップ34、35とを、入れ替えた例である。このように、アミノシラン系ガスをパージ(ステップ31)した後、酸化剤を供給(ステップ34)するようにしても良い。
【0057】
(第2例)
図9Bに示すように、第2例は、アミノシラン系ガスをパージする工程を省略し、アミノシラン系ガスを供給した後、所定の処理時間経過後、シリコン原料ガスを供給するように例である。このように、アミノシラン系ガスをパージする工程は省略することも可能である。
【0058】
(第3例)
図9Cに示すように、第3例は、酸化シリコン膜4を、シリコンを含むシリコン原料ガスと、シリコンを酸化させる酸化剤を含むガスとを同時に供給しながら成膜する、いわゆるCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて成膜するようにした例である。このように、酸化シリコン膜4の成膜には、CVD法を利用することも可能である。
【0059】
(成膜装置)
次に、上記一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例を説明する。
【0060】
図10は、一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0061】
図10に示すように、成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理室101を有している。処理室101の全体は、例えば、石英により形成されている。処理室101内の天井には、石英製の天井板102が設けられている。処理室101の下端開口部には、例えば、ステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材104を介して連結されている。
【0062】
マニホールド103は処理室101の下端を支持している。マニホールド103の下方からは、被処理体として複数枚、例えば、50〜100枚の半導体ウエハ、本例では、シリコンウエハWを多段に載置可能な石英製のウエハボート105が処理室101内に挿入可能となっている。ウエハボート105は複数本の支柱106を有し、支柱106に形成された溝により複数枚のシリコンウエハWが支持されるようになっている。
【0063】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107を介してテーブル108上に載置されている。テーブル108は、マニホールド103の下端開口部を開閉する、例えば、ステンレススチール製の蓋部109を貫通する回転軸110上に支持される。回転軸110の貫通部には、例えば、磁性流体シール111が設けられ、回転軸110を気密にシールしつつ回転可能に支持している。蓋部109の周辺部とマニホールド103の下端部との間には、例えば、Oリングよりなるシール部材112が介設されている。これにより処理室101内のシール性が保持されている。回転軸110は、例えば、ボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム113の先端に取り付けられている。これにより、ウエハボート105および蓋部109等は、一体的に昇降されて処理室101内に対して挿脱される。
【0064】
成膜装置100は、処理室101内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構114と、処理室101内に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構115と、を有している。
【0065】
処理ガス供給機構114は、アミノシラン系ガス供給源117、シリコン原料ガス供給源118、酸化剤を含むガス供給源119を含んでいる。アミノシラン系ガスの一例はジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)、シリコン原料ガスの一例はジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)、酸化剤を含むガスの一例は酸素(O)ガスである。なお、アミノシラン系ガスとシリコン原料ガスとが同じ場合には、アミノシラン系ガス供給源117及びシリコン原料ガス供給源118を供用し、いずれか一方のみを設けるようにしても良い。
【0066】
不活性ガス供給機構115は、不活性ガス供給源120を含んでいる。不活性ガスは、パージガス等に利用される。不活性ガスの一例は窒素(N)ガスである。
【0067】
アミノシラン系ガス供給源117は、流量制御器121a及び開閉弁122aを介して、分散ノズル123に接続されている。分散ノズル123は石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル123の垂直部分には、複数のガス吐出孔124が所定の間隔を隔てて形成されている。アミノシラン系シリコンガスは、各ガス吐出孔124から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0068】
また、シリコン原料ガス供給源118も、流量制御器121b及び開閉弁122bを介して、例えば、分散ノズル123に接続される。
【0069】
酸化剤を含むガス供給機構119は、流量制御器121c及び開閉弁122cを介して、分散ノズル125に接続されている。分散ノズル125は石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル125の垂直部分には、複数のガス吐出孔126が所定の間隔を隔てて形成されている。アンモニアを含むガスは、各ガス吐出孔126から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0070】
不活性ガス供給源120は、流量制御器121d及び開閉弁122dを介して、ノズル128に接続されている。ノズル128は、マニホールド103の側壁を貫通し、その先端から不活性ガスを、水平方向に処理室101内に向けて吐出させる。
【0071】
処理室101内の、分散ノズル123及び125と反対側の部分には、処理室101内を排気するための排気口129が設けられている。排気口129は処理室101の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理室101の排気口129に対応する部分には、排気口129を覆うように断面がコの字状に成形された排気口カバー部材130が溶接により取り付けられている。排気口カバー部材130は、処理室101の側壁に沿って上方に延びており、処理室101の上方にガス出口131を規定している。ガス出口131には、真空ポンプ等を含む排気機構132が接続される。排気機構132は、処理室101内を排気することで処理に使用した処理ガスの排気、及び処理室101内の圧力を処理に応じた処理圧力とする。
【0072】
処理室101の外周には筒体状の加熱装置133が設けられている。加熱装置133は、処理室101内に供給されたガスを活性化するとともに、処理室101内に収容された被処理体、本例ではシリコンウエハWを加熱する。
【0073】
成膜装置100の各部の制御は、例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ150により行われる。コントローラ150には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース151が接続されている。
【0074】
コントローラ150には記憶部152が接続されている。記憶部152は、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ150の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納される。レシピは、例えば、記憶部152の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。レシピは、必要に応じて、ユーザーインターフェース151からの指示等にて記憶部152から読み出され、読み出されたレシピに従った処理をコントローラ150が実行することで、成膜装置100は、コントローラ150の制御のもと、所望の処理が実施される。
【0075】
本例では、コントローラ150の制御のもと、上記一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法、例えば、図1A、図1B、図9A〜図9Cに示したステップに従った処理を順次実行する。
【0076】
上記一実施形態に係るタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法は、図10に示すような成膜装置100によって実施することができる。
【0077】
以上、この発明を一実施形態に従って説明したが、この発明は、上記一実施形態に限定されることは無く、種々変形可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0078】
例えば、酸化剤に酸素ガスの代わりに、HOガスやオゾン(O)ガスを用いることもでき、オゾンガスの場合には酸化剤を含むガス供給源119にオゾンガスを発生させるオゾナイザーを備えるようにしても良い。
【0079】
また、O、O、HOをプラズマにより活性化させ、これらを活性化させた活性種をシリコンウエハWなどの被処理体上に吐出しても良い。この場合、処理室101の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生機構を、例えば、処理室101の内部に設けるようにしても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、シリコン原料ガスとしてアミノシラン系ガスを説明したが、シード層3上へのシリコン層の形成に際しては、シラン系ガスを用いることもできる。中でも、Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及びSi2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物については、
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれ、
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくともいずれか一つから選ぶこともできる。
【0081】
また、上記一実施形態では本発明を複数のシリコンウエハWを搭載して一括して成膜を行うバッチ式の成膜装置に適用した例を示したが、これに限らず、一枚のウエハ毎に成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用することもできる。
【0082】
また、被処理体としては、半導体ウエハに限定されず、LCDガラス基板等の他の基板にも本発明を適用することができる。
【0083】
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…シリコン基板、2…タングステン膜、3…シード層、4…酸化シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 被処理体上にタングステン膜又は酸化タングステン膜を形成する工程と、
(2) 前記タングステン膜又は酸化タングステン膜上にシード層を形成する工程と、
(3) 前記シード層上に酸化シリコン膜を形成する工程と、を具備し、
前記(2)の工程が、前記被処理体を加熱し、前記タングステン膜又は酸化タングステン膜の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記タングステン膜又は酸化タングステン膜上にシード層を形成する工程であることを特徴とするタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項2】
前記アミノシラン系ガスが、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)
DEAS(ジエチルアミノシラン)
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、及び
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項3】
前記酸化シリコン膜が、シリコンを含むシリコン原料ガスと、シリコンを酸化させる酸化剤を含むガスとを交互に供給しながら成膜されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項4】
前記酸化シリコン膜が、シリコンを含むシリコン原料ガスと、シリコンを酸化させる酸化剤を含むガスとを同時に供給しながら成膜されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項5】
前記シリコン原料ガスが、アミノシラン系ガス、又はアミノ基を含まないシラン系ガスであることを特徴とする請求項4に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項6】
前記アミノシラン系ガスが、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)
DEAS(ジエチルアミノシラン)
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、及び
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
の少なくとも一つを含むガスから選ばれ、
前記アミノ基を含まないシラン系ガスが、
SiH
SiH
SiH
Si
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及び
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項5に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項7】
前記Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれ、
前記Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくともいずれか一つから選ばれることを特徴とする請求項6に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項8】
前記被処理体が半導体ウエハであり、前記成膜方法が、半導体装置の製造プロセスに用いられることを特徴とする請求項1から請求項7いずれか一項に記載のタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法。
【請求項9】
タングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜を成膜する成膜装置であって、
前記タングステン膜又は酸化タングステン膜が形成された被処理体を収容する処理室と、
前記処理室内に、アミノシラン系ガス及びシリコン原料ガスの少なくとも一方、並びに酸化剤を含むガスを供給するガス供給機構と、
前記処理室内を加熱する加熱装置と、
前記処理室内を排気する排気装置と、
前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラが、前記処理室内において、請求項1から請求項8いずれか一項に記載されたタングステン膜又は酸化タングステン膜上への酸化シリコン膜の成膜方法が、前記被処理体に対して実行されるように、前記ガス供給機構、前記加熱装置、前記排気装置を制御することを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−138500(P2012−138500A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290565(P2010−290565)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】