ナビゲーション装置及びナビゲーションプログラム
【課題】自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することを可能とし、それにより使用者に対してより適切な案内を行うことができるナビゲーション装置等を提供する。
【解決手段】複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段19を備えたナビゲーション装置1であって、経路探索手段19は、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備える。
【解決手段】複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段19を備えたナビゲーション装置1であって、経路探索手段19は、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能を備えたナビゲーション装置、及びそのようなナビゲーション装置に用いられるナビゲーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能に関して、例えば下記の特許文献1には、以下のようなナビゲーション装置の技術が開示されている。このナビゲーション装置は、経路探索の条件として、推奨経路探索、距離優先探索、有料道優先探索、一般道優先探索、車速・交通量優先探索のいずれかを選択できる構成となっている。ここで、推奨経路探索は、各道路リンクのリンク長、幅員、道路種別等に基づいて設定されたリンクコストの出発地から目的地までの合計が最小となる経路探索する探索条件である。距離優先探索は、出発地から目的地までの距離が近い経路を優先する探索条件である。有料道優先探索は、高速道路等の有料道を経路に含めることを優先する探索条件である。一般道優先探索は、一般道を経路に含めることを優先する探索条件である。車速・交通量優先探索は、車速が高く、交通量が少なく、旅行時間が短い経路を優先する探索条件である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−214868号公報(第6頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナビゲーション装置の本質的な機能として、出発地から設定された目的地までの最適な経路に従って自車両の使用者を目的地まで導く経路案内機能がある。このような経路案内は、地図上に自車位置を表示するとともに、道路情報に基づいて予め探索された経路とGPS信号等から取得される自車両の現在位置とに基づいて、自車両が進路変更を行う地点まで所定距離の位置に到達した際等に進路の案内を行うことにより実現される。したがって、自車両の現在位置を表す情報の精度が高いほど、すなわち、自車両の進行方向の位置や走行レーンを高精度に特定できているほど、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になる。このような適切な案内は、使用者が行ったことのない目的地までの経路案内を行う際に、特に有用とされる。
【0005】
そして、このような自車両の現在位置を表す情報の精度は、自車両が走行する経路によって異なる場合がある。すなわち、例えば道路上に設置された施設から車両へ向けて発せられる光ビーコンや電波ビーコン等のように、自車両の進行方向の位置や走行レーンを高精度に特定するために利用可能な情報を取得できる道路を経路とした場合には、そのような情報を取得できない道路を経路とした場合と比べて、自車両の位置を高精度に特定することが可能となる。自車両の位置を高精度に特定できれば、上述のとおり、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になる。しかし、これまでに用いられてきた経路探索の条件には、時間、距離、費用などに関する条件に従って経路を探索するものはあったが、より適切なタイミングで適切な内容の案内を行うために自車両の位置を高精度に特定できる経路を優先して探索する技術は存在しなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することを可能とし、それにより使用者に対してより適切な案内を行うことができるナビゲーション装置及びナビゲーションプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備えたナビゲーション装置の特徴構成は、前記経路探索手段が、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備える点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定し、経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。これにより、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になり、車両の安全な走行にも寄与することができるとともに、適切な案内による安心感を使用者に与えることもできる。
【0009】
ここで、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに対して前記高精度補正係数を乗算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成とすると好適である。
【0010】
この構成によれば、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストの値を反映しつつ、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを、同じ基本リンクコストの値を有する他の道路リンクのリンクコストよりも小さく設定することが可能となる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0011】
また、前記高精度補正係数は、自車両の進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の走行レーンを高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、が予め定められていると好適である。
【0012】
この構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクが、具体的にいずれの方向の自車位置を高精度に特定できるのかに応じて、適切な高精度補正係数を設定することが可能となる。したがって、高精度補正係数による補正後のリンクコストをより適切に設定することが可能となる。
【0013】
また、前記高精度補正係数は、各道路リンクを走行する際に自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて、各道路リンクについて予め定められていると好適である。
【0014】
この構成によれば、各道路リンクについて個別に適切な高精度補正係数を設定することにより、高精度補正係数による補正後のリンクコストをより適切に設定することが可能となる。
【0015】
また、前記高精度補正係数は、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定されると好適である。
【0016】
この構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って、高精度補正係数による補正後のリンクコストを小さくすることができる。したがって、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高い道路ほど優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0017】
また、前記基本リンクコストは、各道路リンクの道路長及び道路属性に応じて設定されると好適である。
【0018】
この構成によれば、各道路リンクの道路長と、例えば制限速度、レーン数、道路種別等の道路属性とに応じて設定された適切な基本リンクコストを用いて経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路も適切に探索することが可能となる。
【0019】
また、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも大きい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストから前記高精度補正係数を引算した結果、又は自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに前記高精度補正係数を加算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成としても好適である。
【0020】
この構成によれば、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストの値を反映しつつ、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを、同じ基本リンクコストの値を有する他の道路リンクのリンクコストよりも小さく設定することが可能となる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0021】
或いは、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクについて、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成としても好適である。
【0022】
この構成によれば、高精度優先経路探索機能を実行する際に、予め設定された高精度優先用リンクコストをリンクコストとして用いることにより、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0023】
また、地物の位置情報及び属性情報を含む地物情報を記憶した地物データベースを参照し、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と前記地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を更に備え、前記地物データベースに記憶された地物情報に基づいて、前記自車位置特定手段による自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる地物及び自車両の走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとすると好適である。
【0024】
この構成によれば、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と地物データベースに記憶された地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を備える場合において、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクを適切に設定することができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0025】
また、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を更に備え、前記特定情報を受信可能な道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとすると好適である。
【0026】
この構成によれば、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を備える場合において、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクを適切に設定することができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0027】
また、前記経路探索手段は、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストに基づいて、前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う構成とすると好適である。
【0028】
この構成によれば、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストも考慮して、より適切に経路探索を行うことが可能となる。
【0029】
また、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う一又は二以上の経路探索機能を選択可能に備えている構成とすると好適である。
【0030】
この構成によれば、ナビゲーション装置の使用者が、必要に応じて、高精度優先経路探索機能と、他の経路探索機能とを使い分けることが可能となる。したがって、使用者の利便性をより高めることができる。
【0031】
本発明に係るナビゲーションプログラムの特徴構成は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能であって、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能をコンピュータに実現させる点にある。
【0032】
この特徴構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定し、経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。これにより、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になり、車両の安全な走行にも寄与することができるとともに、適切な案内による安心感を使用者に与えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置1について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、このナビゲーション装置1が搭載された自車両Cを示す図である。このナビゲーション装置1は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索し、当該経路に沿って走行するための案内を使用者(自車両Cの運転者)に対して行う。この経路探索に関して、このナビゲーション装置1は、高精度優先経路探索機能、推奨経路探索機能、及び距離優先探索機能の3つの経路探索機能を選択可能に備えている。また、本実施形態においては、ナビゲーション装置1は、自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識結果と地物データベースDB2に記憶された地物情報Fとを照合することにより、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定する機能及び自車両Cの走行レーンを特定する機能を備えている。前記高精度優先経路探索機能は、これらの機能により自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する経路探索機能である。
【0034】
図1に示すナビゲーション装置1の各機能部、具体的には、画像情報取得部12、自車位置情報取得部13、表示処理部17、マップマッチング処理部18、経路探索処理部19、案内処理部21、検索処理部22、画像認識部23、外部情報受信部24、自車位置補正部25、及び走行レーン特定部26は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。そして、これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、地図データベースDB1及び地物データベースDB2は、例えば、ハードディスクドライブ、DVD−ROMを備えたDVDドライブ、CD−ROMを備えたCDドライブ等のように、情報を記憶可能な記録媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウェア構成として備えている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
1.地図データベース
地図データベースDB1は、所定の区画毎に分けられた地図情報Mが記憶されたデータベースである。図3は、地図データベースDB1に記憶されている地図情報Mの構成の例を示す図である。この図に示すように、地図情報Mは、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rを含んでいる。道路ネットワークは、道路リンクkと、2つの道路リンクkの接続点にあたる交差点ノードnとにより構成される。交差点ノードnは現実の道路における交差点に対応し、道路リンクkは、各交差点間を結ぶ道路に対応している。各交差点ノードnは、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各道路リンクkは、リンク属性情報として、基本リンクコストCL、道路長、道路種別、道路幅、レーン数、リンク形状を表現するための形状補間点等の情報を有している。ここで、基本リンクコストCLは、道路長や道路種別等の道路属性に応じて各道路リンクに予め設定されたリンクコストであり、経路探索の際に用いられる情報である。また、道路種別は、例えば、高速道路、国道、県道、一般道、細街路、導入路等のように、道路を複数の種別に区分した際の道路種別の情報である。交差点ノードnは、ノード属性情報として、ノードコストCN、通行規制、信号の有無等の情報を有している。なお、図3においては、一つの区画の道路情報Rのみを図示し、他の区画の道路情報Rは省略して示している。基本リンクコストCL及びノードコストCNに関しては後で詳細に説明する。
【0036】
この道路情報Rは、後述するマップマッチングや、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内等のために用いられる。また、図示は省略するが、地図情報Mには、このような道路情報Rの他に、地図の表示に必要な各種の情報を有する描画情報、交差点の詳細情報から成る交差点情報等が含まれている。また、この描画情報には、道路形状、建物、河川等を表示するために必要な背景情報、市町村名や道路名等を表示するために必要な文字情報などが含まれている。
【0037】
2.地物データベース
地物データベースDB2は、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物の情報、すなわち地物情報Fが記憶されたデータベースである。この地物データベースDB2に地物情報Fが記憶される地物には、道路の路面に設けられた道路標示(ペイント標示)が含まれている。図4は、地物データベースDB2に記憶されている道路標示の地物情報Fの例を示す図である。このような道路標示に係る地物としては、例えば、横断歩道、停止線、最高速度等を表す速度標示、ゼブラゾーン、道路に沿って各レーンを区分する区画線(実線、破線、二重線等の各種区画線を含む。)、各レーンの進行方向を指定する進行方向別通行区分標示(矢印標示、例えば、直進矢印、右折矢印等を含む)等が含まれる。なお、地物情報Fが記憶される地物としては、このような道路標示のほか、信号機、標識、陸橋、トンネル、マンホール等の各種の地物も含めることができる。
【0038】
また、地物情報Fは、その内容として各地物の位置情報と、それに関連付けられた地物属性情報とを含んでいる。ここで、位置情報は、道路情報Rを構成する道路リンクk又は交差点ノードn等と関連付けられた各地物の代表点の地図上の位置(座標)、及び各地物の向きの情報を有している。本例では、代表点は、各地物の長さ方向及び幅方向の中央部付近に設定される。また、地物属性情報は、各地物を他の地物と識別するための識別情報(地物ID)、各地物の地物種別を表す種別情報、或いは、地物の形状、大きさ、色彩等の地物形態情報等を含んでいる。ここで、地物種別は、具体的には、「横断歩道」、「停止線」、「速度標示(30km/時)」等のような、基本的に同じ形態を有する地物の種別を表す情報である。
【0039】
3.入出力装置
表示入力装置27は、表示装置と入力装置が一体となった装置である。表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、CRT(cathode-ray tube)ディスプレイ等の公知の各種の表示装置を用いることができる。また、入力装置としては、表示装置の表示画面上に配置されたタッチパネルや、表示画面の横に配置された操作スイッチ等がある。音声出力装置28は、スピーカやアンプ等を有して構成される。
【0040】
4.画像情報取得部
画像情報取得部12は、撮像装置11により自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gを取得する画像情報取得手段として機能する。ここで、撮像装置11は、撮像素子を備えた車載カメラ等であって、少なくとも自車両Cの周辺の道路の路面を撮像可能な位置に設けられている。このような撮像装置11としては、例えば、図2に示すような自車両Cの後方の路面を撮像するバックカメラを用いると好適である。画像情報取得部12は、撮像装置11により撮像した撮像情報をフレームメモリ(不図示)等を介して所定の時間間隔で取り込む。この際の画像情報Gの取り込みの時間間隔は、例えば、10〜50ms程度とすることができる。これにより、画像情報取得部12は、撮像装置11により撮像した複数フレームの画像情報Gを連続的に取得することができる。ここで取得された画像情報Gは、画像認識部23へ出力される。
【0041】
5.自車位置情報取得部
自車位置情報取得部13は、自車両Cの現在位置を表す自車位置情報Pを取得する自車位置情報取得手段として機能する。ここでは、自車位置情報取得部13は、GPS受信機14、方位センサ15、及び距離センサ16と接続されている。ここで、GPS受信機14は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、自車位置情報取得部13へ出力される。自車位置情報取得部13では、GPS受信機14で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、自車両Cの現在位置(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ15は、自車両Cの進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ15は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成される。そして、方位センサ15は、その検出結果を自車位置情報取得部13へ出力する。距離センサ16は、自車両Cの車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ16は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、自車両Cの加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ16は、その検出結果としての車速及び移動距離の情報を自車位置情報取得部13へ出力する。
【0042】
そして、自車位置情報取得部13は、これらのGPS受信機14、方位センサ15及び距離センサ16からの出力に基づいて、公知の方法により自車両Cの位置を特定する演算を行う。このようにして取得される自車位置情報Pは、各センサ14〜16の検出精度等に起因する誤差を含んだ情報となっている。また、このようにして取得される自車位置情報Pは、自車両Cが走行中の道路が複数レーンを有している場合において自車両Cが走行中である走行レーンまでを特定する情報とはなっていない。そこで、本実施形態においては、後述するように、マップマッチング処理部18により、自車位置情報Pに示される自車両Cの位置を地図情報Mに示される道路上とする補正を行う。また、自車位置補正部25により、画像情報G及び地物情報Fを用いて自車位置情報Pに示される自車両Cの進行方向の位置を補正する。更に、走行レーン特定部26により自車両Cの走行レーンを特定する。これにより、自車位置情報取得部13は、自車両Cの走行レーンの情報を含む高精度な自車位置情報Pを取得する。
【0043】
6.画像認識部
画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対する画像認識処理を行う画像認識手段として機能する。すなわち、画像認識部23は、撮像装置11により自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識処理を行う。この際、画像認識部23は、地物データベースDB2に記憶されている地物情報Fを用いて画像認識処理を行う。具体的には、画像認識部23は、自車位置情報Pに基づいて撮像装置11による撮像領域に含まれることになる地物を対象地物とし、当該対象地物の地物情報Fを地物データベースDB2から取得する。そして、画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該画像情報Gに含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部23は、抽出された地物の輪郭情報と、地物データベースDB2から取得した対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。地物の輪郭情報と対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とが一致する場合には、対象地物の画像認識に成功したと判定し、その画像認識結果を自車位置補正部25へ出力する。なお、対象地物の画像認識に失敗した場合には、自車位置補正部25へは画像認識結果が出力されず、したがって自車位置補正部25による自車位置情報Pの補正も行われない。
【0044】
また、画像認識部23は、走行レーン特定部26における自車両Cの走行レーンの特定のために、地物データベースDB2に記憶されている自車両Cが進行中の道路における自車位置周辺の区画線の地物情報Fを用いて、自車両Cの周辺の区画線の画像認識を行う。具体的には、画像認識部23は、自車位置情報Pに基づいて撮像装置11による撮像領域に含まれることになる区画線を対象地物とし、当該対象地物の地物情報Fを地物データベースDB2から取得する。そして、画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該画像情報Gに含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部23は、抽出された地物の輪郭情報と、地物データベースDB2から取得した区画線の地物情報Fに含まれる形態情報とに基づいて、自車両Cの周辺の区画線の位置及び区画線の種別の認識を行う。そして、画像認識部23は、そのような区画線の画像認識結果を、走行レーン特定部26へ出力する。
【0045】
7.外部情報受信部
外部情報受信部24は、自車両Cの位置の特定に用いることができる特定情報を、自車両Cの外部から受信する情報受信手段として機能する。このような特定情報としては、例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)からの情報、具体的には道路の各レーン上に設けられた発信器からの光ビーコンや電波ビーコンからの情報がある。これらの情報には、当該発信器が設置されているレーンを特定することができる情報が含まれている。この外部情報受信部24により受信した情報は、後述する走行レーン特定部26へ送られ、自車両Cの走行レーンの特定に用いられる。
【0046】
8.自車位置情報補正部
自車位置補正部25は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて自車位置情報Pを補正する自車位置情報補正手段である。本実施形態では、自車位置補正部25は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて、自車両Cの進行方向に沿って自車位置情報Pを補正する。具体的には、自車位置補正部25は、まず、画像認識部23による画像認識結果と、撮像装置11の取付位置、取付角度、及び画角等に基づいて、対象地物の画像を含む画像情報Gの取得時における自車両Cと対象地物との位置関係を演算する。例えば、図5に示す状況で画像情報Gが取得された場合、自車位置補正部25は、画像情報Gの画像認識結果に基づいて自車両Cと対象地物ftとしての横断歩道との位置関係(例えば距離d)を演算する。次に、自車位置補正部25は、この自車両Cと対象地物ftとの位置関係の演算結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて、自車両Cの進行方向における対象地物ftの位置情報(地物情報F)を基準とする高精度な自車両Cの位置情報を演算して取得する。そして、自車位置補正部25は、このようにして取得した高精度な自車両Cの位置情報に基づいて、自車位置情報取得部13で取得した自車位置情報Pに含まれる、自車両Cの進行方向の現在位置の情報を補正する。その結果、自車位置情報取得部13は、このような補正後の高精度な自車位置情報Pを取得することになる。よって、本実施形態においては、この自車位置補正部25及び自車位置情報取得部13が、自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識結果と地物情報Fとを照合して自車両Cの位置を高精度に特定する自車位置特定手段29として機能する。
【0047】
9.走行レーン特定部
走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンを特定する走行レーン特定手段として機能する。ここで、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fとに基づいて自車両Cの走行レーンを特定する処理を行う。そのために、走行レーン特定部26は、例えば、画像情報取得部12により取得した画像情報Gに含まれる区画線の画像の画像認識部23による画像認識結果と、地物データベースDB2に記憶されている自車両Cが走行中の道路における自車位置周辺の区画線の地物情報Fとを用いる。具体的には、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識結果に示される自車両Cの周辺の区画線の種別(実線、破線、二重線等の線種)及び配置と、自車位置周辺の区画線の地物情報Fに含まれる形態情報とに基づいて、自車両Cの走行レーンを特定する。例えば、図6に示すような画像情報Gが取得された場合において、図7に示すような自車両Cの周辺の地物情報Fが取得された場合には、自車両Cが走行中のレーンは、3レーンの中の中央レーンであると特定することができる。すなわち、図6に示す画像情報Gに示される画像中では、自車両Cの位置である画像の幅方向中央に対して両側に破線の区画線があり、更にその両外側にそれぞれ実線の区画線がある。一方、図7に示す地物情報Fによれば、自車両Cが走行している道路は3レーンを有し、道路の幅方向両側には実線の区画線の地物情報Fが存在し、道路の幅方向中央側には各レーンを区切る破線の区画線の地物情報Fが存在していることがわかる。したがって、走行レーン特定部26は、これらの情報を対比することにより、自車両Cの走行レーンが3レーンの中の中央レーンであると特定することができる。
【0048】
道路のレーン数が4レーン以上である場合であっても、例えば図8に示すように、各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なる場合には、画像情報Gに含まれる区画線の画像認識結果と、地物データベースDB2から取得される区画線(対象地物ft)の地物情報Fとを対比することにより、自車両Cの走行レーンを特定することができる。また、例えば図9に示すように、両側の区画線の種別の組み合せが同じレーンが複数存在する場合であっても、各レーンに異なる種別や形態の地物(対象地物ft)が存在する場合には、自車両Cの走行レーンを特定することができる。図9の例では、各レーンに互いに異なる進行方向別通行区分標示の地物が設けられている。したがって、地物データベースDB2から取得されるこれらの地物(対象地物ft)の地物情報Fと、画像情報Gに含まれる区画線の画像認識結果とを対比することにより、画像認識された地物と一致する地物が設けられているレーンを自車両Cの走行レーンとして特定することができる。
【0049】
また、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識結果に示される区画線の位置情報に基づいて、自車両Cが区画線を跨いだか否かによりレーン変更の有無を判定し、自車両Cの走行レーンを特定する。なお、走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンの特定が必要な場合、すなわち自車両Cが進行中の道路が進行方向(片側)に複数レーンを有している場合にのみレーンを特定する演算を行う。そして、走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンを特定する情報を自車位置情報取得部13へ送る。これにより、自車位置情報取得部13は、上記のとおり、自車両Cの走行レーンの情報を含む自車位置情報Pを生成する。したがって、本実施形態においては、走行レーン特定部26は、自車位置補正部25及び自車位置情報取得部13とともに自車位置特定手段29として機能する。
【0050】
10.ナビゲーション機能を実現するための処理部
このナビゲーション装置1は、基本的なナビゲーション機能を実現するためのナビゲーション用演算処理部として、表示処理部17、マップマッチング処理部18、経路探索処理部19、案内処理部21、及び検索処理部22を備えている。ここで、表示処理部17は、表示入力装置27の表示画面に自車位置や目的地等の周辺の地図表示や当該地図上への自車位置表示等を行うための演算処理を行う処理部である。マップマッチング処理部18は、自車位置情報取得部13により取得された自車位置情報Pに示される自車位置が、地図データベースDB1に記憶された道路情報Rに含まれる道路上となるように、自車位置情報Pを補正するマップマッチング処理を行うための処理部である。経路探索処理部19は、例えば自車位置等の出発地から表示入力装置27により入力された目的地までの案内経路を探索するための演算処理を行う処理部である。本願は、この経路探索処理部19による経路探索処理に特徴がある。したがって、この点については後で詳細に説明する。案内処理部21は、経路探索処理部19により探索された出発地から目的地までの経路に従って、表示入力装置27の表示画面による案内表示や音声出力装置28による音声案内等により、使用者に対して適切な経路案内を行うための演算処理を行う処理部である。検索処理部22は、目的地や地図表示のための地点等を、住所、電話番号、施設名称、ジャンル等に基づいて検索するための演算処理を行う処理部である。
【0051】
11.経路探索処理部の機能
次に、本発明の特徴構成となる経路探索処理部19の機能について詳細に説明する。経路探索処理部19は、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段として機能する。本実施形態においては、経路探索処理部19は、互いに異なる条件により経路探索を行う複数の経路探索機能を選択可能に備えている。したがって、このナビゲーション装置1では、例えば自車位置情報Pに示される自車両Cの現在位置等を出発地とし、表示入力装置27を用いて使用者により目的地が入力された際に、これら複数の経路探索機能を選択可能に表示入力装置27に表示する。図10は、このような複数の経路探索機能を選択可能に表示した表示画面である探索機能選択画面の例を示す図である。この図に示すように、本実施形態においては、経路探索処理部19は、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、及び高精度優先経路探索機能の3つの経路探索機能を選択可能に備えている。
【0052】
推奨経路探索機能は、各道路リンクkのリンク属性情報として予め設定されている基本リンクコストCLの情報をそのまま用い、経路の全体での基本リンクコストCLの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。ここで、基本リンクコストCLは、各道路リンクkに対応する実際の道路を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、各道路リンクkの道路長(道路リンク長)及び道路属性に応じて設定される。道路属性としては、例えば、制限速度、道路種別、レーン数等に応じた値が設定されている。この場合、基本リンクコストCLは、道路長が短いほど小さく、制限速度が高いほど小さく、道路種別やレーン数に示される道路の規模が大きいほど小さく設定されると好適である。また、本実施形態においては、道路リンクk間の各交差点ノードnにも同様に、ノードコストCNが設定されている。したがって、本実施形態における推奨経路探索機能では、基本リンクコストCLに加えてノードコストCNも考慮し、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う。ここで、ノードコストCNは、各交差点ノードnに対応する実際の交差点を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、当該交差点での進行方向(右折、左折、直進等)、信号の有無等に応じた値が設定されている。この場合、ノードコストCNは、進行方向に関して直進、左折、右折の順に大きく(左側通行の場合)、信号がある交差点は信号がない交差点よりも大きく設定されると好適である。したがって、この推奨経路探索機能により、出発地から目的地まで比較的短時間で快適に到達可能な経路を探索することができる。
【0053】
距離優先探索機能は、各道路リンクkのリンク属性情報として予め設定されている道路長の情報を用い、経路の全体での道路長の合計が最小となるように経路探索を行う機能である。したがって、この距離優先探索機能により、出発地から目的地までの最短距離の経路を探索することができる。
【0054】
高精度優先経路探索機能は、各道路リンクkに設定されるリンクコストに基づいて経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(以下「高精度リンクkh」という)のリンクコストを他の道路リンクk(以下「通常リンクko」という)よりも相対的に小さく設定する機能である。すなわち、高精度優先経路探索機能は、高精度リンクkhのリンクコストを高精度リンクkh以外の通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することにより、自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する経路探索機能である。ここでは、高精度リンクkhのリンクコストを、同じ基本リンクコストCLの値を有する通常リンクkoのリンクコストよりも小さく設定することにより、高精度リンクのリンクコストを通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することとしている。本実施形態においては、このようなリンクコストの補正のために、経路探索処理部19は、コスト補正演算部20を備えている。なお、以下の説明において「道路リンクk」というときは、「高精度リンクkh」及び「通常リンクko」を総称するものとする。
【0055】
高精度リンクkhは、各道路リンクkに固有の情報を取得して利用することにより、通常リンクkoよりも高精度に自車両Cの位置を特定できる可能性がある道路リンクkである。各道路リンクkに固有の情報としては、例えば各道路リンクkに対応する道路に設けられた地物の地物情報Fや、当該道路に設けられた発信器等から発信される特定情報等がある。本実施形態においては、地物データベースDB2に記憶された地物情報Fに基づいて、自車位置補正部25による自車両Cの進行方向の高精度な位置の特定に用いることができる地物、及び走行レーン特定部26による自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクkを高精度リンクkhとする。更に、外部情報受信部24により自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる特定情報を受信可能な道路リンクkも高精度リンクkhとする。
【0056】
上記のとおり、自車位置補正部25は、画像認識部23による地物の画像認識結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて自車位置情報Pを補正する。したがって、自車位置補正部25による自車両Cの進行方向の高精度な位置の特定に用いることができる地物が存在する道路リンクkは、画像認識部23により画像認識することが可能な地物が存在し、かつ当該地物の地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されていることが条件となる。したがって、例えば、図5に示すように、道路の路面に横断歩道の地物(対象地物ft)が画像認識可能に存在し、当該地物についての地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されている場合には、当該道路リンクkは高精度リンクkhである。なお、このような自車位置補正部25における自車位置情報Pの補正に用いることができる地物の地物種別は、横断歩道に限定されるものではなく、地物データベースDB2に地物情報Fが格納されている各種の地物種別が対象となる。
【0057】
また、上記のとおり、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fとに基づいて自車両Cの走行レーンを特定する。具体的には、走行レーン特定部26は、各レーンを区分する区画線の画像認識結果と当該区画線の地物情報Fとを用い、区画線の種別の組み合せによって自車両Cの走行レーンを特定する。また、走行レーン特定部26は、各レーンにそれぞれ設けられた互いに異なる種別や形態の地物の画像認識結果と当該地物の地物情報Fとを用い、画像認識された地物と一致する地物が設けられているレーンを自車両Cの走行レーンとして特定する。したがって、走行レーン特定部26による自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる地物が存在する道路リンクkは、画像認識部23により画像認識することが可能な地物が存在するとともにそれらの地物の地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されており、かつ各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なるか、或いは各レーンに互いに異なる種別や形態の地物が存在することが条件となる。したがって、例えば、図7〜図9に示すような区画線や進行方向別通行区分標示等の地物(対象地物ft)が画像認識可能に存在し、当該地物についての地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されている場合には、当該道路リンクkは高精度リンクkhである。
【0058】
また、上記のとおり、外部情報受信部24は、例えばVICS情報等の車両Cの位置の特定に用いることができる特定情報を、自車両Cの外部から受信する。したがって、このようなVICS情報等の特定情報を自車両Cが受信可能な道路に対応する道路リンクk、具体的には、そのような特定情報を発信する発信器等が設置されている道路に対応する道路リンクkは、高精度リンクkhとなる。
【0059】
経路探索処理部19は、高精度優先経路探索機能を実行する際には、地図データベースDB1及び地物データベースDB2を参照し、経路の候補となる道路リンクkのそれぞれについて、高精度リンクkhであるか通常リンクkoであるかを判定する。更に、経路探索処理部19は、高精度リンクkhと判定された各道路リンクkについて、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhか、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhか、それらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhかを判定する。
【0060】
経路探索処理部19のコスト補正演算部20は、上記のとおり、高精度リンクkhのリンクコストを、同じ基本リンクコストCLの値を有する他の道路リンクkのリンクコストよりも小さく設定するように、リンクコストの補正を行う。本実施形態においては、コスト補正演算部20は、高精度優先経路探索機能を実行する際に、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに対して高精度補正係数Aを乗算し、各道路リンクkの補正リンクコストを演算する。そして、経路探索処理部19は、高精度優先経路探索機能を実行する際には、そのようなコスト補正演算部20により演算された補正リンクコストを用いて経路探索を行う。
【0061】
図11は、高精度補正係数Aの設定値の一例を示す図である。この図に示すように、高精度補正係数Aは、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さくされている。更に、本実施形態においては、高精度補正係数Aは、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、自車両Cの進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、がそれぞれ別個に定められている。具体的には、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.8」、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.8」、自車両Cの進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.64」に設定されている。なお、進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは、進行方向の位置を特定できる場合の高精度補正係数A「0.8」と、走行レーンを特定できる場合の高精度補正係数A「0.8」とを乗算することにより、その都度求める構成としても好適である。
【0062】
また、上記のとおり、本実施形態においては、道路リンクk間の各交差点ノードnにも同様に、ノードコストCNが設定されている。したがって、本実施形態における高精度優先経路探索機能では、経路探索処理部19は、基本リンクコストCLを補正して求めた補正リンクコストに加えてノードコストCNも考慮し、経路の全体での補正リンクコスト及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う。
【0063】
次に、経路探索処理部19により実行される、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、及び高精度優先経路探索機能の3つの経路探索機能の相違について、具体例を用いて説明する。図12は、この具体例の説明に用いる道路情報Rの一例を示す図である。この図において、丸で囲まれたa〜hは、それぞれ交差点ノードnを示し、各交差点ノードn間を結ぶ直線は、それぞれ道路リンクkを示している。また、「CL=×××」は各道路リンクkの基本リンクコストCLの値を示し、「CN=××」は各交差点ノードnのノードコストCNの値を示している。「L=×××」は各道路リンクkの道路長(道路リンク長)を示している。四角形の枠で囲まれた「進」の記号は、当該記号が隣接配置された道路リンクkが、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhであることを示している。四角形の枠で囲まれた「レ」の記号は、当該記号が隣接配置された道路リンクkが、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhであることを示している。この図に示す例では、出発地aから目的地hまでの経路として、「a−b−e−h」、「a−c−f−h」、及び「a−d−g−h」の3つの経路が存在する。
【0064】
ここで、使用者により推奨経路探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計を演算し、その合計コストが最小となる経路を探索経路として決定する。本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計コストは、以下の式(1)で求められる。
合計コスト=300+50+500+0+300=1150・・・(1)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計コストは、以下の式(2)で求められる。
合計コスト=200+100+400+100+300=1100・・・(2)
また、経路「a−d−g−h」の合計コストは、以下の式(3)で求められる。
合計コスト=200+0+400+50+400=1050・・・(3)
したがって、経路探索処理部19は、合計コストが最も小さい経路「a−d−g−h」を、推奨経路探索機能による探索経路として決定する。
【0065】
また、使用者により距離優先探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、経路の全体での道路長Lの合計を演算し、その合計道路長が最小となる経路を探索経路として決定する。本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計道路長は、以下の式(4)で求められる。
合計道路長=200+600+300=1100・・・(4)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計道路長は、以下の式(5)で求められる。
合計道路長=200+300+400=900・・・(5)
また、経路「a−d−g−h」の合計道路長は、以下の式(6)で求められる。
合計道路長=300+500+200=1000・・・(6)
したがって、経路探索処理部19は、合計道路長が最も小さい経路「a−c−f−h」を、距離優先探索機能による探索経路として決定する。
【0066】
一方、使用者により高精度優先経路探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、各経路を構成する道路リンクkが高精度リンクkhか通常リンクkoかを判定する。そして、通常リンクkoについては基本リンクコストCLをそのまま用い、高精度リンクkhについては基本リンクコストCLを高精度補正係数Aにより補正して補正リンクコストを演算する。この際、図11に示すように、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、及びそれらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhのそれぞれに設定されている値の高精度補正係数Aを用いる。従って、例えばa−bリンクのように、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.8」の高精度補正係数Aを乗算する。また、例えばe−hリンクのように、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.8」の高精度補正係数Aを乗算する。また、例えばb−eリンクのように、進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.64」の高精度補正係数Aを乗算する。そして、経路の全体での補正リンクコスト(通常リンクkoについてそのまま用いる基本リンクコストCLを含む)及びノードコストCNの合計を演算し、その合計コストが最小となる経路を探索経路として決定する。
【0067】
本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計コストは、以下の式(7)で求められる。
合計コスト=300*0.8+50+500*0.64+0+300*0.8=850・・・(7)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計コストは、以下の式(8)で求められる。
合計コスト=200+100+400*0.8+100+300=1020・・・(8)
また、経路「a−d−g−h」の合計コストは、以下の式(9)で求められる。
合計コスト=200*0.8+0+400+50+400=1010・・・(9)
したがって、経路探索処理部19は、合計コストが最も小さい経路「a−b−e−h」を、高精度優先経路探索機能による探索経路として決定する。以上のような経路探索処理を行うことにより、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することができる。
【0068】
12.経路探索処理の手順
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置1において実行される経路探索処理の手順について説明する。図13は、本実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理の手順は、上記の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、ナビゲーション装置1が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成するナビゲーションプログラムを実行するコンピュータとして動作する。以下、フローチャートに従って説明する。
【0069】
図13に示すように、ナビゲーション装置1における経路探索処理においては、経路探索処理部19は、まず、目的地の入力があったか否かについて判定する(ステップ#01)。ここで、目的地の入力は、使用者が表示入力装置27を操作して、所定の条件を入力して検索した中から選択し、或いは地図上の地点を指定することにより行う。なお、出発地は、使用者により特に指定されない限り、自車位置情報Pに示される自車両Cの現在位置とする。そして、目的地の入力があった場合には(ステップ#01:Yes)、例えば図10に示すような、複数の経路探索機能を選択可能に表示した探索機能選択画面を表示入力装置27に表示する(ステップ#02)。
【0070】
そして、この探索機能選択画面において、「高精度優先」が選択された場合には(ステップ#03:Yes)、経路探索処理部19は高精度優先経路探索機能を実行する(ステップ#04)。上記のとおり、高精度優先経路探索機能は、高精度リンクkhのリンクコストを高精度リンクkh以外の通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することにより、自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する機能である。また、探索機能選択画面において、「推奨」が選択された場合には(ステップ#05:Yes)、経路探索処理部19は推奨経路探索機能を実行する(ステップ#06)。上記のとおり、推奨経路探索機能は、各道路リンクkの基本リンクコストCLの情報をそのまま用い、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。また、探索機能選択画面において、「距離優先」が選択された場合には(ステップ#07:Yes)、経路探索処理部19は距離優先探索機能を実行する(ステップ#08)。上記のとおり、距離優先探索機能は、各道路リンクkの道路長の情報を用い、経路の全体での道路長の合計が最小となるように経路探索を行う機能である。
【0071】
以上のように、いずれかの経路探索機能が選択されて経路探索が実行され、その結果としての探索経路が決定された場合には(ステップ#09)、ナビゲーション装置1は、案内処理部21により、当該決定された経路に従って、使用者に対して適切な経路案内を行う。この経路案内は、上記のとおり、表示入力装置27の表示画面による案内表示や音声出力装置28による音声案内等により行う。以上で経路探索処理の手順を終了する。
【0072】
13.その他の実施形態
(1)上記の実施形態においては、高精度リンクkhが、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、及びそれらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの3種類のいずれであるかを判定し、それぞれについて予め定められた高精度補正係数Aの値を用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、各道路リンクkについて個別に、予め定めた高精度補正係数Aの値を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度補正係数Aの値は、各道路リンクkに個別の値を設定することができるので、各道路リンクkを走行する際に自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性に応じて適切な値を設定することが可能となる。また、このような高精度補正係数Aの情報は、各道路リンクkに個別情報となるので、例えば各道路リンクkのリンク属性情報として地図データベースDB1に記憶させた構成とすると好適である。
【0073】
(2)上記の実施形態においては、高精度補正係数Aが、自車両Cの位置を進行方向に特定できるか、自車両Cの走行レーンを特定できるか、或いはそれらの双方を特定できるかによって異なる値となる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、高精度補正係数Aを、自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて異なる値とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度補正係数Aは、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定されると好適である。高精度補正係数Aをこのように設定すれば、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って、高精度補正係数Aによる補正後の補正リンクコストを小さくすることができる。したがって、高精度優先経路探索機能により、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高い道路ほど優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0074】
(3)上記の実施形態においては、高精度優先経路探索機能を実行する際に、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに対して高精度補正係数Aを乗算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行う場合を例として説明した。しかし、このような高精度補正係数Aの設定方法及び補正リンクコストの演算方法は単なる一例に過ぎない。したがって、例えば、高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)に設定される値が、その可能性がない道路リンクk(通常リンクko)に設定される値よりも大きい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLから高精度補正係数Aを引算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行うことも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、例えば、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)に設定される値が、その可能性がない道路リンクk(通常リンクko)に設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに高精度補正係数を加算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行うことも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0075】
(4)上記の実施形態においては、経路探索処理部19が高精度優先経路探索機能を実行する際に、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLを高精度補正係数Aにより補正することにより補正リンクコストを演算し、この補正リンクコストを用いて経路探索を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、このような高精度補正係数Aを用いるものに限定されない。したがって、例えば、経路探索処理部19が高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)について、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記補正リンクコストと同様に用いて経路探索を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度優先用リンクコストの値は、各道路リンクkに個別の値を設定することができるので、各道路リンクkを走行する際に自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性に応じて適切な値を設定することが可能となる。また、このような高精度優先用リンクコストの情報は、各道路リンクkに個別情報となるので、例えば各道路リンクkのリンク属性情報として地図データベースDB1に記憶させた構成とすると好適である。
【0076】
(5)上記の実施形態においては、経路探索処理部19が、高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う推奨経路探索機能及び距離優先探索機能の2つの経路探索機能を選択可能に備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、上記3つの経路探索機能の他に、有料道優先探索機能及び一般道優先探索機能を選択可能に備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、高精度優先経路探索機能に加えて、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、有料道優先探索機能、及び一般道優先探索機能、或いはこれら以外の経路探索機能の中から選択した1つ又は3つ以上の経路探索機能を選択可能に備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。ここで、有料道優先探索機能は、有料道の道路リンクkについてのリンクコストを他の道路リンクkよりも相対的に小さく設定し、経路の全体でのリンクコストの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。また、一般道優先探索機能は、一般道の道路リンクkについてのリンクコストを他の道路リンクkよりも相対的に小さく設定し、経路の全体でのリンクコストの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。
【0077】
(6)上記の実施形態においては、情報受信手段としての外部情報受信部24が、車両の走行レーンの特定に用いることができる特定情報(VICSのビーコン情報)を外部から受信する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、他の特定情報を外部から受信する構成とすることも当然に可能である。したがって、例えば、道路の路面に設けられた発信器から自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる特定情報を外部情報受信部24が受信する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、これらを組み合せ、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能を備えたナビゲーション装置に好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図
【図2】ナビゲーション装置が搭載された自車両を示す図
【図3】地図データベースに記憶されている地図情報の構成の例を示す図
【図4】地物データベースに記憶されている道路標示の地物情報の例を示す図
【図5】対象地物を画像認識して自車位置情報を補正する際の自車両の状況の例を示す図
【図6】自車両の走行レーンの特定に用いる画像情報の例を示す図
【図7】自車両の走行レーンの特定に用いる自車両の周辺の地物情報の例を示す図
【図8】各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なる場合の例を示す図
【図9】、各レーンに異なる種別や形態の地物が存在する場合の例を示す図
【図10】複数の経路探索機能を選択可能に表示した探索機能選択画面の例を示す図
【図11】高精度補正係数の設定値の一例を示す図
【図12】複数の経路探索機能の相違を説明するための道路情報の一例を示す図
【図13】経路探索処理の手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1:ナビゲーション装置
19:経路探索処理部(経路探索手段)
24:外部情報受信部(情報受信手段)
29:自車位置特定手段
C:自車両
R:道路情報
k:道路リンク
n:交差点ノード
CL:基本リンクコスト
CN:ノードコスト
L:道路長
A:高精度補正係数
DB2:地物データベース
F:地物情報
G:画像情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能を備えたナビゲーション装置、及びそのようなナビゲーション装置に用いられるナビゲーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能に関して、例えば下記の特許文献1には、以下のようなナビゲーション装置の技術が開示されている。このナビゲーション装置は、経路探索の条件として、推奨経路探索、距離優先探索、有料道優先探索、一般道優先探索、車速・交通量優先探索のいずれかを選択できる構成となっている。ここで、推奨経路探索は、各道路リンクのリンク長、幅員、道路種別等に基づいて設定されたリンクコストの出発地から目的地までの合計が最小となる経路探索する探索条件である。距離優先探索は、出発地から目的地までの距離が近い経路を優先する探索条件である。有料道優先探索は、高速道路等の有料道を経路に含めることを優先する探索条件である。一般道優先探索は、一般道を経路に含めることを優先する探索条件である。車速・交通量優先探索は、車速が高く、交通量が少なく、旅行時間が短い経路を優先する探索条件である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−214868号公報(第6頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナビゲーション装置の本質的な機能として、出発地から設定された目的地までの最適な経路に従って自車両の使用者を目的地まで導く経路案内機能がある。このような経路案内は、地図上に自車位置を表示するとともに、道路情報に基づいて予め探索された経路とGPS信号等から取得される自車両の現在位置とに基づいて、自車両が進路変更を行う地点まで所定距離の位置に到達した際等に進路の案内を行うことにより実現される。したがって、自車両の現在位置を表す情報の精度が高いほど、すなわち、自車両の進行方向の位置や走行レーンを高精度に特定できているほど、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になる。このような適切な案内は、使用者が行ったことのない目的地までの経路案内を行う際に、特に有用とされる。
【0005】
そして、このような自車両の現在位置を表す情報の精度は、自車両が走行する経路によって異なる場合がある。すなわち、例えば道路上に設置された施設から車両へ向けて発せられる光ビーコンや電波ビーコン等のように、自車両の進行方向の位置や走行レーンを高精度に特定するために利用可能な情報を取得できる道路を経路とした場合には、そのような情報を取得できない道路を経路とした場合と比べて、自車両の位置を高精度に特定することが可能となる。自車両の位置を高精度に特定できれば、上述のとおり、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になる。しかし、これまでに用いられてきた経路探索の条件には、時間、距離、費用などに関する条件に従って経路を探索するものはあったが、より適切なタイミングで適切な内容の案内を行うために自車両の位置を高精度に特定できる経路を優先して探索する技術は存在しなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することを可能とし、それにより使用者に対してより適切な案内を行うことができるナビゲーション装置及びナビゲーションプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備えたナビゲーション装置の特徴構成は、前記経路探索手段が、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備える点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定し、経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。これにより、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になり、車両の安全な走行にも寄与することができるとともに、適切な案内による安心感を使用者に与えることもできる。
【0009】
ここで、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに対して前記高精度補正係数を乗算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成とすると好適である。
【0010】
この構成によれば、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストの値を反映しつつ、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを、同じ基本リンクコストの値を有する他の道路リンクのリンクコストよりも小さく設定することが可能となる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0011】
また、前記高精度補正係数は、自車両の進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の走行レーンを高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、が予め定められていると好適である。
【0012】
この構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクが、具体的にいずれの方向の自車位置を高精度に特定できるのかに応じて、適切な高精度補正係数を設定することが可能となる。したがって、高精度補正係数による補正後のリンクコストをより適切に設定することが可能となる。
【0013】
また、前記高精度補正係数は、各道路リンクを走行する際に自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて、各道路リンクについて予め定められていると好適である。
【0014】
この構成によれば、各道路リンクについて個別に適切な高精度補正係数を設定することにより、高精度補正係数による補正後のリンクコストをより適切に設定することが可能となる。
【0015】
また、前記高精度補正係数は、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定されると好適である。
【0016】
この構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って、高精度補正係数による補正後のリンクコストを小さくすることができる。したがって、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高い道路ほど優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0017】
また、前記基本リンクコストは、各道路リンクの道路長及び道路属性に応じて設定されると好適である。
【0018】
この構成によれば、各道路リンクの道路長と、例えば制限速度、レーン数、道路種別等の道路属性とに応じて設定された適切な基本リンクコストを用いて経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路も適切に探索することが可能となる。
【0019】
また、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも大きい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストから前記高精度補正係数を引算した結果、又は自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに前記高精度補正係数を加算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成としても好適である。
【0020】
この構成によれば、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストの値を反映しつつ、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを、同じ基本リンクコストの値を有する他の道路リンクのリンクコストよりも小さく設定することが可能となる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0021】
或いは、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクについて、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う構成としても好適である。
【0022】
この構成によれば、高精度優先経路探索機能を実行する際に、予め設定された高精度優先用リンクコストをリンクコストとして用いることにより、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0023】
また、地物の位置情報及び属性情報を含む地物情報を記憶した地物データベースを参照し、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と前記地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を更に備え、前記地物データベースに記憶された地物情報に基づいて、前記自車位置特定手段による自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる地物及び自車両の走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとすると好適である。
【0024】
この構成によれば、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と地物データベースに記憶された地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を備える場合において、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクを適切に設定することができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0025】
また、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を更に備え、前記特定情報を受信可能な道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとすると好適である。
【0026】
この構成によれば、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を備える場合において、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクを適切に設定することができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を適切に探索することが可能となる。
【0027】
また、前記経路探索手段は、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストに基づいて、前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う構成とすると好適である。
【0028】
この構成によれば、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストも考慮して、より適切に経路探索を行うことが可能となる。
【0029】
また、前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う一又は二以上の経路探索機能を選択可能に備えている構成とすると好適である。
【0030】
この構成によれば、ナビゲーション装置の使用者が、必要に応じて、高精度優先経路探索機能と、他の経路探索機能とを使い分けることが可能となる。したがって、使用者の利便性をより高めることができる。
【0031】
本発明に係るナビゲーションプログラムの特徴構成は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能であって、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能をコンピュータに実現させる点にある。
【0032】
この特徴構成によれば、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定し、経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行うことができる。したがって、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することが可能となる。これにより、使用者に対してより適切なタイミングで適切な内容の案内を行うことが可能になり、車両の安全な走行にも寄与することができるとともに、適切な案内による安心感を使用者に与えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置1について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、このナビゲーション装置1が搭載された自車両Cを示す図である。このナビゲーション装置1は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索し、当該経路に沿って走行するための案内を使用者(自車両Cの運転者)に対して行う。この経路探索に関して、このナビゲーション装置1は、高精度優先経路探索機能、推奨経路探索機能、及び距離優先探索機能の3つの経路探索機能を選択可能に備えている。また、本実施形態においては、ナビゲーション装置1は、自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識結果と地物データベースDB2に記憶された地物情報Fとを照合することにより、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定する機能及び自車両Cの走行レーンを特定する機能を備えている。前記高精度優先経路探索機能は、これらの機能により自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する経路探索機能である。
【0034】
図1に示すナビゲーション装置1の各機能部、具体的には、画像情報取得部12、自車位置情報取得部13、表示処理部17、マップマッチング処理部18、経路探索処理部19、案内処理部21、検索処理部22、画像認識部23、外部情報受信部24、自車位置補正部25、及び走行レーン特定部26は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。そして、これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、地図データベースDB1及び地物データベースDB2は、例えば、ハードディスクドライブ、DVD−ROMを備えたDVDドライブ、CD−ROMを備えたCDドライブ等のように、情報を記憶可能な記録媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウェア構成として備えている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
1.地図データベース
地図データベースDB1は、所定の区画毎に分けられた地図情報Mが記憶されたデータベースである。図3は、地図データベースDB1に記憶されている地図情報Mの構成の例を示す図である。この図に示すように、地図情報Mは、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rを含んでいる。道路ネットワークは、道路リンクkと、2つの道路リンクkの接続点にあたる交差点ノードnとにより構成される。交差点ノードnは現実の道路における交差点に対応し、道路リンクkは、各交差点間を結ぶ道路に対応している。各交差点ノードnは、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各道路リンクkは、リンク属性情報として、基本リンクコストCL、道路長、道路種別、道路幅、レーン数、リンク形状を表現するための形状補間点等の情報を有している。ここで、基本リンクコストCLは、道路長や道路種別等の道路属性に応じて各道路リンクに予め設定されたリンクコストであり、経路探索の際に用いられる情報である。また、道路種別は、例えば、高速道路、国道、県道、一般道、細街路、導入路等のように、道路を複数の種別に区分した際の道路種別の情報である。交差点ノードnは、ノード属性情報として、ノードコストCN、通行規制、信号の有無等の情報を有している。なお、図3においては、一つの区画の道路情報Rのみを図示し、他の区画の道路情報Rは省略して示している。基本リンクコストCL及びノードコストCNに関しては後で詳細に説明する。
【0036】
この道路情報Rは、後述するマップマッチングや、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内等のために用いられる。また、図示は省略するが、地図情報Mには、このような道路情報Rの他に、地図の表示に必要な各種の情報を有する描画情報、交差点の詳細情報から成る交差点情報等が含まれている。また、この描画情報には、道路形状、建物、河川等を表示するために必要な背景情報、市町村名や道路名等を表示するために必要な文字情報などが含まれている。
【0037】
2.地物データベース
地物データベースDB2は、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物の情報、すなわち地物情報Fが記憶されたデータベースである。この地物データベースDB2に地物情報Fが記憶される地物には、道路の路面に設けられた道路標示(ペイント標示)が含まれている。図4は、地物データベースDB2に記憶されている道路標示の地物情報Fの例を示す図である。このような道路標示に係る地物としては、例えば、横断歩道、停止線、最高速度等を表す速度標示、ゼブラゾーン、道路に沿って各レーンを区分する区画線(実線、破線、二重線等の各種区画線を含む。)、各レーンの進行方向を指定する進行方向別通行区分標示(矢印標示、例えば、直進矢印、右折矢印等を含む)等が含まれる。なお、地物情報Fが記憶される地物としては、このような道路標示のほか、信号機、標識、陸橋、トンネル、マンホール等の各種の地物も含めることができる。
【0038】
また、地物情報Fは、その内容として各地物の位置情報と、それに関連付けられた地物属性情報とを含んでいる。ここで、位置情報は、道路情報Rを構成する道路リンクk又は交差点ノードn等と関連付けられた各地物の代表点の地図上の位置(座標)、及び各地物の向きの情報を有している。本例では、代表点は、各地物の長さ方向及び幅方向の中央部付近に設定される。また、地物属性情報は、各地物を他の地物と識別するための識別情報(地物ID)、各地物の地物種別を表す種別情報、或いは、地物の形状、大きさ、色彩等の地物形態情報等を含んでいる。ここで、地物種別は、具体的には、「横断歩道」、「停止線」、「速度標示(30km/時)」等のような、基本的に同じ形態を有する地物の種別を表す情報である。
【0039】
3.入出力装置
表示入力装置27は、表示装置と入力装置が一体となった装置である。表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、CRT(cathode-ray tube)ディスプレイ等の公知の各種の表示装置を用いることができる。また、入力装置としては、表示装置の表示画面上に配置されたタッチパネルや、表示画面の横に配置された操作スイッチ等がある。音声出力装置28は、スピーカやアンプ等を有して構成される。
【0040】
4.画像情報取得部
画像情報取得部12は、撮像装置11により自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gを取得する画像情報取得手段として機能する。ここで、撮像装置11は、撮像素子を備えた車載カメラ等であって、少なくとも自車両Cの周辺の道路の路面を撮像可能な位置に設けられている。このような撮像装置11としては、例えば、図2に示すような自車両Cの後方の路面を撮像するバックカメラを用いると好適である。画像情報取得部12は、撮像装置11により撮像した撮像情報をフレームメモリ(不図示)等を介して所定の時間間隔で取り込む。この際の画像情報Gの取り込みの時間間隔は、例えば、10〜50ms程度とすることができる。これにより、画像情報取得部12は、撮像装置11により撮像した複数フレームの画像情報Gを連続的に取得することができる。ここで取得された画像情報Gは、画像認識部23へ出力される。
【0041】
5.自車位置情報取得部
自車位置情報取得部13は、自車両Cの現在位置を表す自車位置情報Pを取得する自車位置情報取得手段として機能する。ここでは、自車位置情報取得部13は、GPS受信機14、方位センサ15、及び距離センサ16と接続されている。ここで、GPS受信機14は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、自車位置情報取得部13へ出力される。自車位置情報取得部13では、GPS受信機14で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、自車両Cの現在位置(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ15は、自車両Cの進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ15は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成される。そして、方位センサ15は、その検出結果を自車位置情報取得部13へ出力する。距離センサ16は、自車両Cの車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ16は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、自車両Cの加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ16は、その検出結果としての車速及び移動距離の情報を自車位置情報取得部13へ出力する。
【0042】
そして、自車位置情報取得部13は、これらのGPS受信機14、方位センサ15及び距離センサ16からの出力に基づいて、公知の方法により自車両Cの位置を特定する演算を行う。このようにして取得される自車位置情報Pは、各センサ14〜16の検出精度等に起因する誤差を含んだ情報となっている。また、このようにして取得される自車位置情報Pは、自車両Cが走行中の道路が複数レーンを有している場合において自車両Cが走行中である走行レーンまでを特定する情報とはなっていない。そこで、本実施形態においては、後述するように、マップマッチング処理部18により、自車位置情報Pに示される自車両Cの位置を地図情報Mに示される道路上とする補正を行う。また、自車位置補正部25により、画像情報G及び地物情報Fを用いて自車位置情報Pに示される自車両Cの進行方向の位置を補正する。更に、走行レーン特定部26により自車両Cの走行レーンを特定する。これにより、自車位置情報取得部13は、自車両Cの走行レーンの情報を含む高精度な自車位置情報Pを取得する。
【0043】
6.画像認識部
画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対する画像認識処理を行う画像認識手段として機能する。すなわち、画像認識部23は、撮像装置11により自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識処理を行う。この際、画像認識部23は、地物データベースDB2に記憶されている地物情報Fを用いて画像認識処理を行う。具体的には、画像認識部23は、自車位置情報Pに基づいて撮像装置11による撮像領域に含まれることになる地物を対象地物とし、当該対象地物の地物情報Fを地物データベースDB2から取得する。そして、画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該画像情報Gに含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部23は、抽出された地物の輪郭情報と、地物データベースDB2から取得した対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。地物の輪郭情報と対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とが一致する場合には、対象地物の画像認識に成功したと判定し、その画像認識結果を自車位置補正部25へ出力する。なお、対象地物の画像認識に失敗した場合には、自車位置補正部25へは画像認識結果が出力されず、したがって自車位置補正部25による自車位置情報Pの補正も行われない。
【0044】
また、画像認識部23は、走行レーン特定部26における自車両Cの走行レーンの特定のために、地物データベースDB2に記憶されている自車両Cが進行中の道路における自車位置周辺の区画線の地物情報Fを用いて、自車両Cの周辺の区画線の画像認識を行う。具体的には、画像認識部23は、自車位置情報Pに基づいて撮像装置11による撮像領域に含まれることになる区画線を対象地物とし、当該対象地物の地物情報Fを地物データベースDB2から取得する。そして、画像認識部23は、画像情報取得部12で取得された画像情報Gに対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該画像情報Gに含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部23は、抽出された地物の輪郭情報と、地物データベースDB2から取得した区画線の地物情報Fに含まれる形態情報とに基づいて、自車両Cの周辺の区画線の位置及び区画線の種別の認識を行う。そして、画像認識部23は、そのような区画線の画像認識結果を、走行レーン特定部26へ出力する。
【0045】
7.外部情報受信部
外部情報受信部24は、自車両Cの位置の特定に用いることができる特定情報を、自車両Cの外部から受信する情報受信手段として機能する。このような特定情報としては、例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)からの情報、具体的には道路の各レーン上に設けられた発信器からの光ビーコンや電波ビーコンからの情報がある。これらの情報には、当該発信器が設置されているレーンを特定することができる情報が含まれている。この外部情報受信部24により受信した情報は、後述する走行レーン特定部26へ送られ、自車両Cの走行レーンの特定に用いられる。
【0046】
8.自車位置情報補正部
自車位置補正部25は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて自車位置情報Pを補正する自車位置情報補正手段である。本実施形態では、自車位置補正部25は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて、自車両Cの進行方向に沿って自車位置情報Pを補正する。具体的には、自車位置補正部25は、まず、画像認識部23による画像認識結果と、撮像装置11の取付位置、取付角度、及び画角等に基づいて、対象地物の画像を含む画像情報Gの取得時における自車両Cと対象地物との位置関係を演算する。例えば、図5に示す状況で画像情報Gが取得された場合、自車位置補正部25は、画像情報Gの画像認識結果に基づいて自車両Cと対象地物ftとしての横断歩道との位置関係(例えば距離d)を演算する。次に、自車位置補正部25は、この自車両Cと対象地物ftとの位置関係の演算結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて、自車両Cの進行方向における対象地物ftの位置情報(地物情報F)を基準とする高精度な自車両Cの位置情報を演算して取得する。そして、自車位置補正部25は、このようにして取得した高精度な自車両Cの位置情報に基づいて、自車位置情報取得部13で取得した自車位置情報Pに含まれる、自車両Cの進行方向の現在位置の情報を補正する。その結果、自車位置情報取得部13は、このような補正後の高精度な自車位置情報Pを取得することになる。よって、本実施形態においては、この自車位置補正部25及び自車位置情報取得部13が、自車両Cの周辺を撮影した画像情報Gに含まれる地物の画像認識結果と地物情報Fとを照合して自車両Cの位置を高精度に特定する自車位置特定手段29として機能する。
【0047】
9.走行レーン特定部
走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンを特定する走行レーン特定手段として機能する。ここで、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fとに基づいて自車両Cの走行レーンを特定する処理を行う。そのために、走行レーン特定部26は、例えば、画像情報取得部12により取得した画像情報Gに含まれる区画線の画像の画像認識部23による画像認識結果と、地物データベースDB2に記憶されている自車両Cが走行中の道路における自車位置周辺の区画線の地物情報Fとを用いる。具体的には、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識結果に示される自車両Cの周辺の区画線の種別(実線、破線、二重線等の線種)及び配置と、自車位置周辺の区画線の地物情報Fに含まれる形態情報とに基づいて、自車両Cの走行レーンを特定する。例えば、図6に示すような画像情報Gが取得された場合において、図7に示すような自車両Cの周辺の地物情報Fが取得された場合には、自車両Cが走行中のレーンは、3レーンの中の中央レーンであると特定することができる。すなわち、図6に示す画像情報Gに示される画像中では、自車両Cの位置である画像の幅方向中央に対して両側に破線の区画線があり、更にその両外側にそれぞれ実線の区画線がある。一方、図7に示す地物情報Fによれば、自車両Cが走行している道路は3レーンを有し、道路の幅方向両側には実線の区画線の地物情報Fが存在し、道路の幅方向中央側には各レーンを区切る破線の区画線の地物情報Fが存在していることがわかる。したがって、走行レーン特定部26は、これらの情報を対比することにより、自車両Cの走行レーンが3レーンの中の中央レーンであると特定することができる。
【0048】
道路のレーン数が4レーン以上である場合であっても、例えば図8に示すように、各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なる場合には、画像情報Gに含まれる区画線の画像認識結果と、地物データベースDB2から取得される区画線(対象地物ft)の地物情報Fとを対比することにより、自車両Cの走行レーンを特定することができる。また、例えば図9に示すように、両側の区画線の種別の組み合せが同じレーンが複数存在する場合であっても、各レーンに異なる種別や形態の地物(対象地物ft)が存在する場合には、自車両Cの走行レーンを特定することができる。図9の例では、各レーンに互いに異なる進行方向別通行区分標示の地物が設けられている。したがって、地物データベースDB2から取得されるこれらの地物(対象地物ft)の地物情報Fと、画像情報Gに含まれる区画線の画像認識結果とを対比することにより、画像認識された地物と一致する地物が設けられているレーンを自車両Cの走行レーンとして特定することができる。
【0049】
また、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識結果に示される区画線の位置情報に基づいて、自車両Cが区画線を跨いだか否かによりレーン変更の有無を判定し、自車両Cの走行レーンを特定する。なお、走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンの特定が必要な場合、すなわち自車両Cが進行中の道路が進行方向(片側)に複数レーンを有している場合にのみレーンを特定する演算を行う。そして、走行レーン特定部26は、自車両Cの走行レーンを特定する情報を自車位置情報取得部13へ送る。これにより、自車位置情報取得部13は、上記のとおり、自車両Cの走行レーンの情報を含む自車位置情報Pを生成する。したがって、本実施形態においては、走行レーン特定部26は、自車位置補正部25及び自車位置情報取得部13とともに自車位置特定手段29として機能する。
【0050】
10.ナビゲーション機能を実現するための処理部
このナビゲーション装置1は、基本的なナビゲーション機能を実現するためのナビゲーション用演算処理部として、表示処理部17、マップマッチング処理部18、経路探索処理部19、案内処理部21、及び検索処理部22を備えている。ここで、表示処理部17は、表示入力装置27の表示画面に自車位置や目的地等の周辺の地図表示や当該地図上への自車位置表示等を行うための演算処理を行う処理部である。マップマッチング処理部18は、自車位置情報取得部13により取得された自車位置情報Pに示される自車位置が、地図データベースDB1に記憶された道路情報Rに含まれる道路上となるように、自車位置情報Pを補正するマップマッチング処理を行うための処理部である。経路探索処理部19は、例えば自車位置等の出発地から表示入力装置27により入力された目的地までの案内経路を探索するための演算処理を行う処理部である。本願は、この経路探索処理部19による経路探索処理に特徴がある。したがって、この点については後で詳細に説明する。案内処理部21は、経路探索処理部19により探索された出発地から目的地までの経路に従って、表示入力装置27の表示画面による案内表示や音声出力装置28による音声案内等により、使用者に対して適切な経路案内を行うための演算処理を行う処理部である。検索処理部22は、目的地や地図表示のための地点等を、住所、電話番号、施設名称、ジャンル等に基づいて検索するための演算処理を行う処理部である。
【0051】
11.経路探索処理部の機能
次に、本発明の特徴構成となる経路探索処理部19の機能について詳細に説明する。経路探索処理部19は、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段として機能する。本実施形態においては、経路探索処理部19は、互いに異なる条件により経路探索を行う複数の経路探索機能を選択可能に備えている。したがって、このナビゲーション装置1では、例えば自車位置情報Pに示される自車両Cの現在位置等を出発地とし、表示入力装置27を用いて使用者により目的地が入力された際に、これら複数の経路探索機能を選択可能に表示入力装置27に表示する。図10は、このような複数の経路探索機能を選択可能に表示した表示画面である探索機能選択画面の例を示す図である。この図に示すように、本実施形態においては、経路探索処理部19は、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、及び高精度優先経路探索機能の3つの経路探索機能を選択可能に備えている。
【0052】
推奨経路探索機能は、各道路リンクkのリンク属性情報として予め設定されている基本リンクコストCLの情報をそのまま用い、経路の全体での基本リンクコストCLの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。ここで、基本リンクコストCLは、各道路リンクkに対応する実際の道路を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、各道路リンクkの道路長(道路リンク長)及び道路属性に応じて設定される。道路属性としては、例えば、制限速度、道路種別、レーン数等に応じた値が設定されている。この場合、基本リンクコストCLは、道路長が短いほど小さく、制限速度が高いほど小さく、道路種別やレーン数に示される道路の規模が大きいほど小さく設定されると好適である。また、本実施形態においては、道路リンクk間の各交差点ノードnにも同様に、ノードコストCNが設定されている。したがって、本実施形態における推奨経路探索機能では、基本リンクコストCLに加えてノードコストCNも考慮し、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う。ここで、ノードコストCNは、各交差点ノードnに対応する実際の交差点を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、当該交差点での進行方向(右折、左折、直進等)、信号の有無等に応じた値が設定されている。この場合、ノードコストCNは、進行方向に関して直進、左折、右折の順に大きく(左側通行の場合)、信号がある交差点は信号がない交差点よりも大きく設定されると好適である。したがって、この推奨経路探索機能により、出発地から目的地まで比較的短時間で快適に到達可能な経路を探索することができる。
【0053】
距離優先探索機能は、各道路リンクkのリンク属性情報として予め設定されている道路長の情報を用い、経路の全体での道路長の合計が最小となるように経路探索を行う機能である。したがって、この距離優先探索機能により、出発地から目的地までの最短距離の経路を探索することができる。
【0054】
高精度優先経路探索機能は、各道路リンクkに設定されるリンクコストに基づいて経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(以下「高精度リンクkh」という)のリンクコストを他の道路リンクk(以下「通常リンクko」という)よりも相対的に小さく設定する機能である。すなわち、高精度優先経路探索機能は、高精度リンクkhのリンクコストを高精度リンクkh以外の通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することにより、自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する経路探索機能である。ここでは、高精度リンクkhのリンクコストを、同じ基本リンクコストCLの値を有する通常リンクkoのリンクコストよりも小さく設定することにより、高精度リンクのリンクコストを通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することとしている。本実施形態においては、このようなリンクコストの補正のために、経路探索処理部19は、コスト補正演算部20を備えている。なお、以下の説明において「道路リンクk」というときは、「高精度リンクkh」及び「通常リンクko」を総称するものとする。
【0055】
高精度リンクkhは、各道路リンクkに固有の情報を取得して利用することにより、通常リンクkoよりも高精度に自車両Cの位置を特定できる可能性がある道路リンクkである。各道路リンクkに固有の情報としては、例えば各道路リンクkに対応する道路に設けられた地物の地物情報Fや、当該道路に設けられた発信器等から発信される特定情報等がある。本実施形態においては、地物データベースDB2に記憶された地物情報Fに基づいて、自車位置補正部25による自車両Cの進行方向の高精度な位置の特定に用いることができる地物、及び走行レーン特定部26による自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクkを高精度リンクkhとする。更に、外部情報受信部24により自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる特定情報を受信可能な道路リンクkも高精度リンクkhとする。
【0056】
上記のとおり、自車位置補正部25は、画像認識部23による地物の画像認識結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fに含まれる対象地物の位置情報とに基づいて自車位置情報Pを補正する。したがって、自車位置補正部25による自車両Cの進行方向の高精度な位置の特定に用いることができる地物が存在する道路リンクkは、画像認識部23により画像認識することが可能な地物が存在し、かつ当該地物の地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されていることが条件となる。したがって、例えば、図5に示すように、道路の路面に横断歩道の地物(対象地物ft)が画像認識可能に存在し、当該地物についての地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されている場合には、当該道路リンクkは高精度リンクkhである。なお、このような自車位置補正部25における自車位置情報Pの補正に用いることができる地物の地物種別は、横断歩道に限定されるものではなく、地物データベースDB2に地物情報Fが格納されている各種の地物種別が対象となる。
【0057】
また、上記のとおり、走行レーン特定部26は、画像認識部23による画像認識処理の結果と、地物データベースDB2から取得した地物情報Fとに基づいて自車両Cの走行レーンを特定する。具体的には、走行レーン特定部26は、各レーンを区分する区画線の画像認識結果と当該区画線の地物情報Fとを用い、区画線の種別の組み合せによって自車両Cの走行レーンを特定する。また、走行レーン特定部26は、各レーンにそれぞれ設けられた互いに異なる種別や形態の地物の画像認識結果と当該地物の地物情報Fとを用い、画像認識された地物と一致する地物が設けられているレーンを自車両Cの走行レーンとして特定する。したがって、走行レーン特定部26による自車両Cの走行レーンの特定に用いることができる地物が存在する道路リンクkは、画像認識部23により画像認識することが可能な地物が存在するとともにそれらの地物の地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されており、かつ各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なるか、或いは各レーンに互いに異なる種別や形態の地物が存在することが条件となる。したがって、例えば、図7〜図9に示すような区画線や進行方向別通行区分標示等の地物(対象地物ft)が画像認識可能に存在し、当該地物についての地物情報Fが地物データベースDB2に記憶されている場合には、当該道路リンクkは高精度リンクkhである。
【0058】
また、上記のとおり、外部情報受信部24は、例えばVICS情報等の車両Cの位置の特定に用いることができる特定情報を、自車両Cの外部から受信する。したがって、このようなVICS情報等の特定情報を自車両Cが受信可能な道路に対応する道路リンクk、具体的には、そのような特定情報を発信する発信器等が設置されている道路に対応する道路リンクkは、高精度リンクkhとなる。
【0059】
経路探索処理部19は、高精度優先経路探索機能を実行する際には、地図データベースDB1及び地物データベースDB2を参照し、経路の候補となる道路リンクkのそれぞれについて、高精度リンクkhであるか通常リンクkoであるかを判定する。更に、経路探索処理部19は、高精度リンクkhと判定された各道路リンクkについて、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhか、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhか、それらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhかを判定する。
【0060】
経路探索処理部19のコスト補正演算部20は、上記のとおり、高精度リンクkhのリンクコストを、同じ基本リンクコストCLの値を有する他の道路リンクkのリンクコストよりも小さく設定するように、リンクコストの補正を行う。本実施形態においては、コスト補正演算部20は、高精度優先経路探索機能を実行する際に、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに対して高精度補正係数Aを乗算し、各道路リンクkの補正リンクコストを演算する。そして、経路探索処理部19は、高精度優先経路探索機能を実行する際には、そのようなコスト補正演算部20により演算された補正リンクコストを用いて経路探索を行う。
【0061】
図11は、高精度補正係数Aの設定値の一例を示す図である。この図に示すように、高精度補正係数Aは、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さくされている。更に、本実施形態においては、高精度補正係数Aは、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、自車両Cの進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhに設定される値と、がそれぞれ別個に定められている。具体的には、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.8」、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.8」、自車両Cの進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは「0.64」に設定されている。なお、進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの高精度補正係数Aは、進行方向の位置を特定できる場合の高精度補正係数A「0.8」と、走行レーンを特定できる場合の高精度補正係数A「0.8」とを乗算することにより、その都度求める構成としても好適である。
【0062】
また、上記のとおり、本実施形態においては、道路リンクk間の各交差点ノードnにも同様に、ノードコストCNが設定されている。したがって、本実施形態における高精度優先経路探索機能では、経路探索処理部19は、基本リンクコストCLを補正して求めた補正リンクコストに加えてノードコストCNも考慮し、経路の全体での補正リンクコスト及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う。
【0063】
次に、経路探索処理部19により実行される、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、及び高精度優先経路探索機能の3つの経路探索機能の相違について、具体例を用いて説明する。図12は、この具体例の説明に用いる道路情報Rの一例を示す図である。この図において、丸で囲まれたa〜hは、それぞれ交差点ノードnを示し、各交差点ノードn間を結ぶ直線は、それぞれ道路リンクkを示している。また、「CL=×××」は各道路リンクkの基本リンクコストCLの値を示し、「CN=××」は各交差点ノードnのノードコストCNの値を示している。「L=×××」は各道路リンクkの道路長(道路リンク長)を示している。四角形の枠で囲まれた「進」の記号は、当該記号が隣接配置された道路リンクkが、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhであることを示している。四角形の枠で囲まれた「レ」の記号は、当該記号が隣接配置された道路リンクkが、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhであることを示している。この図に示す例では、出発地aから目的地hまでの経路として、「a−b−e−h」、「a−c−f−h」、及び「a−d−g−h」の3つの経路が存在する。
【0064】
ここで、使用者により推奨経路探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計を演算し、その合計コストが最小となる経路を探索経路として決定する。本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計コストは、以下の式(1)で求められる。
合計コスト=300+50+500+0+300=1150・・・(1)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計コストは、以下の式(2)で求められる。
合計コスト=200+100+400+100+300=1100・・・(2)
また、経路「a−d−g−h」の合計コストは、以下の式(3)で求められる。
合計コスト=200+0+400+50+400=1050・・・(3)
したがって、経路探索処理部19は、合計コストが最も小さい経路「a−d−g−h」を、推奨経路探索機能による探索経路として決定する。
【0065】
また、使用者により距離優先探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、経路の全体での道路長Lの合計を演算し、その合計道路長が最小となる経路を探索経路として決定する。本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計道路長は、以下の式(4)で求められる。
合計道路長=200+600+300=1100・・・(4)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計道路長は、以下の式(5)で求められる。
合計道路長=200+300+400=900・・・(5)
また、経路「a−d−g−h」の合計道路長は、以下の式(6)で求められる。
合計道路長=300+500+200=1000・・・(6)
したがって、経路探索処理部19は、合計道路長が最も小さい経路「a−c−f−h」を、距離優先探索機能による探索経路として決定する。
【0066】
一方、使用者により高精度優先経路探索機能が選択された場合には、経路探索処理部19は、以下のようにして経路探索を行い、探索経路を決定する。すなわち、経路探索処理部19は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、各経路を構成する道路リンクkが高精度リンクkhか通常リンクkoかを判定する。そして、通常リンクkoについては基本リンクコストCLをそのまま用い、高精度リンクkhについては基本リンクコストCLを高精度補正係数Aにより補正して補正リンクコストを演算する。この際、図11に示すように、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、及びそれらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhのそれぞれに設定されている値の高精度補正係数Aを用いる。従って、例えばa−bリンクのように、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.8」の高精度補正係数Aを乗算する。また、例えばe−hリンクのように、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.8」の高精度補正係数Aを乗算する。また、例えばb−eリンクのように、進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhについては、基本リンクコストCLに「0.64」の高精度補正係数Aを乗算する。そして、経路の全体での補正リンクコスト(通常リンクkoについてそのまま用いる基本リンクコストCLを含む)及びノードコストCNの合計を演算し、その合計コストが最小となる経路を探索経路として決定する。
【0067】
本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計コストは、以下の式(7)で求められる。
合計コスト=300*0.8+50+500*0.64+0+300*0.8=850・・・(7)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計コストは、以下の式(8)で求められる。
合計コスト=200+100+400*0.8+100+300=1020・・・(8)
また、経路「a−d−g−h」の合計コストは、以下の式(9)で求められる。
合計コスト=200*0.8+0+400+50+400=1010・・・(9)
したがって、経路探索処理部19は、合計コストが最も小さい経路「a−b−e−h」を、高精度優先経路探索機能による探索経路として決定する。以上のような経路探索処理を行うことにより、自車位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索することができる。
【0068】
12.経路探索処理の手順
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置1において実行される経路探索処理の手順について説明する。図13は、本実施形態に係る経路探索処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理の手順は、上記の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、ナビゲーション装置1が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成するナビゲーションプログラムを実行するコンピュータとして動作する。以下、フローチャートに従って説明する。
【0069】
図13に示すように、ナビゲーション装置1における経路探索処理においては、経路探索処理部19は、まず、目的地の入力があったか否かについて判定する(ステップ#01)。ここで、目的地の入力は、使用者が表示入力装置27を操作して、所定の条件を入力して検索した中から選択し、或いは地図上の地点を指定することにより行う。なお、出発地は、使用者により特に指定されない限り、自車位置情報Pに示される自車両Cの現在位置とする。そして、目的地の入力があった場合には(ステップ#01:Yes)、例えば図10に示すような、複数の経路探索機能を選択可能に表示した探索機能選択画面を表示入力装置27に表示する(ステップ#02)。
【0070】
そして、この探索機能選択画面において、「高精度優先」が選択された場合には(ステップ#03:Yes)、経路探索処理部19は高精度優先経路探索機能を実行する(ステップ#04)。上記のとおり、高精度優先経路探索機能は、高精度リンクkhのリンクコストを高精度リンクkh以外の通常リンクkoよりも相対的に小さく設定することにより、自車両Cの位置を高精度に特定することが可能な道路を優先的に通るような経路を探索する機能である。また、探索機能選択画面において、「推奨」が選択された場合には(ステップ#05:Yes)、経路探索処理部19は推奨経路探索機能を実行する(ステップ#06)。上記のとおり、推奨経路探索機能は、各道路リンクkの基本リンクコストCLの情報をそのまま用い、経路の全体での基本リンクコストCL及びノードコストCNの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。また、探索機能選択画面において、「距離優先」が選択された場合には(ステップ#07:Yes)、経路探索処理部19は距離優先探索機能を実行する(ステップ#08)。上記のとおり、距離優先探索機能は、各道路リンクkの道路長の情報を用い、経路の全体での道路長の合計が最小となるように経路探索を行う機能である。
【0071】
以上のように、いずれかの経路探索機能が選択されて経路探索が実行され、その結果としての探索経路が決定された場合には(ステップ#09)、ナビゲーション装置1は、案内処理部21により、当該決定された経路に従って、使用者に対して適切な経路案内を行う。この経路案内は、上記のとおり、表示入力装置27の表示画面による案内表示や音声出力装置28による音声案内等により行う。以上で経路探索処理の手順を終了する。
【0072】
13.その他の実施形態
(1)上記の実施形態においては、高精度リンクkhが、自車両Cの進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、自車両Cの走行レーンを高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkh、及びそれらの双方を高精度に特定できる可能性がある高精度リンクkhの3種類のいずれであるかを判定し、それぞれについて予め定められた高精度補正係数Aの値を用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、各道路リンクkについて個別に、予め定めた高精度補正係数Aの値を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度補正係数Aの値は、各道路リンクkに個別の値を設定することができるので、各道路リンクkを走行する際に自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性に応じて適切な値を設定することが可能となる。また、このような高精度補正係数Aの情報は、各道路リンクkに個別情報となるので、例えば各道路リンクkのリンク属性情報として地図データベースDB1に記憶させた構成とすると好適である。
【0073】
(2)上記の実施形態においては、高精度補正係数Aが、自車両Cの位置を進行方向に特定できるか、自車両Cの走行レーンを特定できるか、或いはそれらの双方を特定できるかによって異なる値となる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、高精度補正係数Aを、自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて異なる値とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度補正係数Aは、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定されると好適である。高精度補正係数Aをこのように設定すれば、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って、高精度補正係数Aによる補正後の補正リンクコストを小さくすることができる。したがって、高精度優先経路探索機能により、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性が高い道路ほど優先的に通るような経路を探索することが可能となる。
【0074】
(3)上記の実施形態においては、高精度優先経路探索機能を実行する際に、高精度リンクkhに設定される値が、通常リンクkoに設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに対して高精度補正係数Aを乗算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行う場合を例として説明した。しかし、このような高精度補正係数Aの設定方法及び補正リンクコストの演算方法は単なる一例に過ぎない。したがって、例えば、高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)に設定される値が、その可能性がない道路リンクk(通常リンクko)に設定される値よりも大きい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLから高精度補正係数Aを引算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行うことも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、例えば、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)に設定される値が、その可能性がない道路リンクk(通常リンクko)に設定される値よりも小さい高精度補正係数Aを用い、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLに高精度補正係数を加算した結果を補正リンクコストとして用いて経路探索処理部19が経路探索を行うことも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0075】
(4)上記の実施形態においては、経路探索処理部19が高精度優先経路探索機能を実行する際に、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLを高精度補正係数Aにより補正することにより補正リンクコストを演算し、この補正リンクコストを用いて経路探索を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態は、このような高精度補正係数Aを用いるものに限定されない。したがって、例えば、経路探索処理部19が高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクk(高精度リンクkh)について、各道路リンクkに予め設定された基本リンクコストCLよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記補正リンクコストと同様に用いて経路探索を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、高精度優先用リンクコストの値は、各道路リンクkに個別の値を設定することができるので、各道路リンクkを走行する際に自車両Cの位置を高精度に特定できる可能性に応じて適切な値を設定することが可能となる。また、このような高精度優先用リンクコストの情報は、各道路リンクkに個別情報となるので、例えば各道路リンクkのリンク属性情報として地図データベースDB1に記憶させた構成とすると好適である。
【0076】
(5)上記の実施形態においては、経路探索処理部19が、高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う推奨経路探索機能及び距離優先探索機能の2つの経路探索機能を選択可能に備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、上記3つの経路探索機能の他に、有料道優先探索機能及び一般道優先探索機能を選択可能に備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、高精度優先経路探索機能に加えて、推奨経路探索機能、距離優先探索機能、有料道優先探索機能、及び一般道優先探索機能、或いはこれら以外の経路探索機能の中から選択した1つ又は3つ以上の経路探索機能を選択可能に備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。ここで、有料道優先探索機能は、有料道の道路リンクkについてのリンクコストを他の道路リンクkよりも相対的に小さく設定し、経路の全体でのリンクコストの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。また、一般道優先探索機能は、一般道の道路リンクkについてのリンクコストを他の道路リンクkよりも相対的に小さく設定し、経路の全体でのリンクコストの合計が最小となるように経路探索を行う機能である。
【0077】
(6)上記の実施形態においては、情報受信手段としての外部情報受信部24が、車両の走行レーンの特定に用いることができる特定情報(VICSのビーコン情報)を外部から受信する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、他の特定情報を外部から受信する構成とすることも当然に可能である。したがって、例えば、道路の路面に設けられた発信器から自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる特定情報を外部情報受信部24が受信する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、これらを組み合せ、自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能を備えたナビゲーション装置に好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図
【図2】ナビゲーション装置が搭載された自車両を示す図
【図3】地図データベースに記憶されている地図情報の構成の例を示す図
【図4】地物データベースに記憶されている道路標示の地物情報の例を示す図
【図5】対象地物を画像認識して自車位置情報を補正する際の自車両の状況の例を示す図
【図6】自車両の走行レーンの特定に用いる画像情報の例を示す図
【図7】自車両の走行レーンの特定に用いる自車両の周辺の地物情報の例を示す図
【図8】各レーンの両側の区画線の種別の組み合せが互いに異なる場合の例を示す図
【図9】、各レーンに異なる種別や形態の地物が存在する場合の例を示す図
【図10】複数の経路探索機能を選択可能に表示した探索機能選択画面の例を示す図
【図11】高精度補正係数の設定値の一例を示す図
【図12】複数の経路探索機能の相違を説明するための道路情報の一例を示す図
【図13】経路探索処理の手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1:ナビゲーション装置
19:経路探索処理部(経路探索手段)
24:外部情報受信部(情報受信手段)
29:自車位置特定手段
C:自車両
R:道路情報
k:道路リンク
n:交差点ノード
CL:基本リンクコスト
CN:ノードコスト
L:道路長
A:高精度補正係数
DB2:地物データベース
F:地物情報
G:画像情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備えたナビゲーション装置であって、
前記経路探索手段は、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに対して前記高精度補正係数を乗算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記高精度補正係数は、自車両の進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の走行レーンを高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、が予め定められている請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記高精度補正係数は、各道路リンクを走行する際に自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて、各道路リンクについて予め定められている請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記高精度補正係数は、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定される請求項2から4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記基本リンクコストは、各道路リンクの道路長及び道路属性に応じて設定される請求項2から5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも大きい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストから前記高精度補正係数を引算した結果、又は自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに前記高精度補正係数を加算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクについて、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
地物の位置情報及び属性情報を含む地物情報を記憶した地物データベースを参照し、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と前記地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を更に備え、
前記地物データベースに記憶された地物情報に基づいて、前記自車位置特定手段による自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる地物及び自車両の走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとする請求項1から8のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を更に備え、
前記特定情報を受信可能な道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとする請求項1から9のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記経路探索手段は、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストに基づいて、前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う請求項1から10のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う一又は二以上の経路探索機能を選択可能に備えている請求項1から11のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能であって、
各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能をコンピュータに実現させるためのナビゲーションプログラム。
【請求項1】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備えたナビゲーション装置であって、
前記経路探索手段は、各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに対して前記高精度補正係数を乗算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記高精度補正係数は、自車両の進行方向の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の走行レーンを高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、自車両の進行方向の位置及び走行レーンの双方を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値と、が予め定められている請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記高精度補正係数は、各道路リンクを走行する際に自車両の位置を高精度に特定できる可能性に応じて、各道路リンクについて予め定められている請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記高精度補正係数は、自車両の位置を高精度に特定できる可能性が高くなるに従って小さい値となるように設定される請求項2から4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記基本リンクコストは、各道路リンクの道路長及び道路属性に応じて設定される請求項2から5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも大きい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストから前記高精度補正係数を引算した結果、又は自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクに設定される値が、その可能性がない道路リンクに設定される値よりも小さい高精度補正係数を用い、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストに前記高精度補正係数を加算した結果を、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能を実行する際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクについて、各道路リンクに予め設定された基本リンクコストよりも小さい値に設定された高精度優先用リンクコストを、前記リンクコストとして用いて経路探索を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
地物の位置情報及び属性情報を含む地物情報を記憶した地物データベースを参照し、自車両の周辺を撮影した画像情報に含まれる地物の画像認識結果と前記地物情報とを照合して自車両の位置を高精度に特定する自車位置特定手段を更に備え、
前記地物データベースに記憶された地物情報に基づいて、前記自車位置特定手段による自車両の進行方向の位置の特定に用いることができる地物及び自車両の走行レーンの特定に用いることができる地物の一方又は双方が存在する道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとする請求項1から8のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
自車両の進行方向の位置及び自車両の走行レーンの一方又は双方の特定に用いることができる特定情報を自車両の外部から受信する情報受信手段を更に備え、
前記特定情報を受信可能な道路リンクを、前記自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクとする請求項1から9のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記経路探索手段は、前記リンクコストに加えて、各交差点ノードに設定されるノードコストに基づいて、前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う請求項1から10のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記経路探索手段は、前記高精度優先経路探索機能に加えて、当該高精度優先経路探索機能とは異なる条件により経路探索を行う一又は二以上の経路探索機能を選択可能に備えている請求項1から11のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能であって、
各道路リンクに設定されるリンクコストに基づいて前記経路の全体での合計コストが最小となるように経路探索を行う際に、自車両の位置を高精度に特定できる可能性がある道路リンクのリンクコストを他の道路リンクよりも相対的に小さく設定する高精度優先経路探索機能をコンピュータに実現させるためのナビゲーションプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−162518(P2009−162518A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339574(P2007−339574)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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