説明

ハイブリッド車両の制御装置および車両のエネルギー演算装置

【課題】自車両のエネルギー制御を適正に行う。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置10Aは、走行予定経路の走行区分において走行した車両の速度の変動量と、走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、走行区分における平均勾配とを含む外部情報を取得し、外部情報と、それぞれの外部情報に対応する予め設定された自車両のパラメータとを用いて、走行区分における走行エネルギーを算出する走行エネルギー演算部および自車傾向補正部と、走行エネルギーを用いて、走行区分におけるモータ12のみで走行可能となるEV上限出力値を設定するEV上限出力値設定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置および車両のエネルギー演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、所定走行区間を走行した他車両のエネルギー制御情報(例えば、走行エネルギー、制動エネルギー、速度など)を取得して、自車両が所定走行区間を走行する際のエネルギー制御をおこなう装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2005−218178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る装置においては、取得した他車両のエネルギー制御情報に対する解析および自車両のエネルギー制御への適用などについて詳細に検討されておらず、単に、他車両のエネルギー制御情報として他車両の速度などを用いることが記載されているだけであって、自車両のエネルギー制御を適正に行うことができない虞がある。
例えば同一の走行区間を走行する場合であっても、車両の種類によってエネルギー制御情報は異なり、たとえ、同一車種であっても、運転者毎の運転操作や走行環境などによってエネルギー制御情報は変動してしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両のエネルギー制御を適正に行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置および車両のエネルギー演算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジン(例えば、実施の形態での内燃機関11)と、モータ(例えば、実施の形態でのモータ12)と、該モータに電力の授受を行う蓄電装置(例えば、実施の形態での高圧バッテリ15)と、を備え、少なくとも前記エンジンまたは前記モータの何れか一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両の制御装置であって、車両の走行予定経路を設定する走行予定経路設定手段(例えば、実施の形態でのナビゲーション装置25)と、前記走行予定経路に対応し、所定の条件に基づいて区分された走行区分において走行した車両の外部情報を取得する情報取得手段(例えば、実施の形態でのFI/MG/CVTECU16)と、を備え、前記情報取得手段は、前記走行区分において走行した車両の速度の変動量と、前記走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、前記走行区分における平均勾配とを含む前記外部情報を取得し、前記外部情報と、それぞれの前記外部情報に対応する予め設定された自車両のパラメータとを用いて、前記走行区分における走行エネルギーを算出するエネルギー算出手段(例えば、実施の形態での走行エネルギー演算部63および自車傾向補正部62)と、前記走行エネルギーを用いて、前記走行区分における前記モータのみで走行可能となるEV上限出力値を設定するEV上限出力値設定手段(例えば、実施の形態でのEV上限出力値設定部64)と、を備える。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記走行エネルギーは、前記走行区分を走行するのに必要な駆動エネルギーと、前記走行区分を走行したときに発生する減速エネルギーとで構成され、前記エネルギー算出手段は、前記駆動エネルギーと前記減速エネルギーとを、それぞれ異なる前記パラメータを用いて算出する。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記EV上限出力値設定手段は、前記駆動エネルギーまたは前記減速エネルギーが大きくなることに伴い前記EV上限出力値が増大傾向に変化するように設定する。
【0008】
さらに、本発明の第4態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、前記自車両が過去に前記走行区分を走行したときの前記速度の変動量及び前記平均速度をそれぞれ記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での記憶部61)を備え、前記エネルギー算出手段は、前記走行予定経路における前記走行区分において前記情報取得手段によって取得した前記速度の変動量及び前記平均速度と、前記記憶手段により記憶された前記自車両が過去に走行した前記速度の変動量及び前記平均速度とから前記自車両の特徴値を算出し、該特徴値を用いて前記走行エネルギーを補正する。
【0009】
さらに、本発明の第5態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記情報取得手段は、さらに、現在から所定時間以内に前記走行予定経路における前記走行区分を過去に走行した車両の速度の変動量及び平均速度及び台数を取得し、前記エネルギー算出手段は、前記情報取得手段から取得した現在から所定時間以内に前記走行予定経路における前記走行区分を走行した車両の前記速度の変動量及び前記平均速度及び台数とから補正値を算出し、該補正値を用いて前記走行エネルギーを補正する。
【0010】
さらに、本発明の第6態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記エネルギー算出手段は、前記走行予定経路における前記走行区分の前記走行エネルギーから、前記走行区分毎の前記蓄電装置の充電量及び放電量及び残容量を算出し、前記EV上限出力値設定手段は、前記走行予定経路の前記充電量が前記放電量より大きい場合かつ、前記残容量が前記走行区分において所定の上下限値に達していない場合に、前記走行予定経路における前記走行区分のEV上限出力値を補正する。
【0011】
さらに、本発明の第7態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記平均勾配は、上り勾配と下り勾配とで、それぞれ異なる前記パラメータが設定されている。
【0012】
さらに、本発明の第8態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、アクセルペダル開度に応じて目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段(例えば、実施の形態でのFI/MG/CVTECU16)を備え、該目標駆動力設定手段は、前記走行エネルギーのうち、前記速度の変動量および、前記平均速度および、前記平均勾配の要素において、それぞれが占める割合を算出し、該算出された各々の割合のうち、前記速度の変動量の割合が所定値を超えた場合に、前記アクセルペダル開度に対する前記目標駆動力の応答が小さくなるように変更する。
【0013】
さらに、本発明の第9態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、前記走行エネルギーのうち、前記速度の変動量および、前記平均速度および、前記平均勾配の要素がそれぞれが占める割合を算出し、該算出された各々の割合において、前記平均速度の割合が所定値を超えた場合に、運転者に対して、現在の前記走行区分における燃料消費量が小さくなるような速度を報知する報知制御手段(例えば、実施の形態でのFI/MG/CVTECU16)を備える。
【0014】
さらに、本発明の第10態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記所定の条件は、少なくとも、交差点の有無、所定の距離が離れているか、所定の勾配変化のいずれか1つである。
【0015】
さらに、本発明の第11態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記情報取得手段は、外部に設置された外部情報蓄積サーバから前記外部情報を取得する。
【0016】
さらに、本発明の第12態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記情報取得手段は、自車両と他車両との間の車車間通信によって前記外部情報を取得する。
【0017】
また、本発明の第13態様に係る車両のエネルギー演算装置は、所定の走行区分の走行に係るエネルギーを演算する車両のエネルギー演算装置であって、前記走行区分において走行した車両の外部情報を取得する情報取得手段(例えば、実施の形態でのFI/MG/CVTECU16)を備え、前記情報取得手段は、前記走行区分において走行した車両の速度の変動量と、前記走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、前記走行区分における平均勾配とを含む前記外部情報を取得し、取得した前記外部情報と、それぞれの前記外部情報に対応する予め設定された車両のパラメータとを用いて、下記数式(1)により、前記走行区分における走行エネルギーを算出するエネルギー算出手段(例えば、実施の形態での走行エネルギー演算部63および自車傾向補正部62)を備え、下記数式(1)において、走行エネルギーME、速度の変動量AAEE、平均速度Vcar、平均勾配(上り勾配)Grade(+)、平均勾配(下り勾配)Grade(−)、P1〜P6:パラメータに対して、前記パラメータP1,P5,P6は車両重量の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化し、前記パラメータP2,P3,P4は車両の走行に係る抵抗の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化する。
【0018】
【数1】

【発明の効果】
【0019】
本発明の第1態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、予め設定あるいは予測された車両の走行予定経路に対して、所定の走行区分を走行した車両(自車両あるいは他車両、又は自車両および他車両)の外部情報として、車両の速度(車速)の変動量と、車両走行時の平均車速(つまり、車速がゼロとなる車両停止状態を除外して算出した車速の平均値)と、勾配情報とを用いて、走行エネルギーを算出して自車両のEV上限出力値(つまり、モータのみで走行可能となる出力値の上限値であって、これを超える出力には内燃機関の駆動が必要となることを示すしきい値)を設定することから、EV上限出力値を走行区分毎に最適化して設定することができ、自車両のエネルギー制御を精度良くおこなうことができる。
また、予め設定された自車両に固有のパラメータを用いることで、他車両の外部情報を用いた場合であっても、自車両に対して最適なエネルギー予測をおこなうことができる。
【0020】
さらに、本発明の第2態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、駆動エネルギーと減速エネルギーとを、それぞれ異なるパラメータを用いて算出することで、より一層、精度良くエネルギー予測をおこなうことができる。
【0021】
さらに、本発明の第3態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、走行区分における駆動エネルギーまたは減速エネルギーに応じてEV上限出力値を設定できるので、モータのみで走行できる出力値を走行予定経路に応じて適宜に設定することができる。
【0022】
さらに、本発明の第4態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、自車両の過去の情報に基づく特徴量によって走行エネルギーを補正することから、例えば運転者の運転傾向などを走行エネルギーに反映させることができ、運転者の運転傾向を考慮しつつ、燃費を向上させることが出来る。
【0023】
さらに、本発明の第5態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、現在から所定時間以内の直近の情報に基づく補正値によって走行エネルギーを補正することから、より精度の良い道路状況を考慮して、自車両のエネルギー制御を精度良くおこなうことができる。
【0024】
さらに、本発明の第6態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、算出した走行エネルギーに加えて、蓄電装置の充電量及び放電量と残容量との相対関係に応じて、走行区分毎のEV上限出力値を補正することから、モータのみでの走行を最大限に有効利用して、燃費を適正に向上させることができる。
【0025】
さらに、本発明の第7態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、上り勾配と下り勾配とで、それぞれ異なるパラメータを用いることにより、より一層、精度良くエネルギー予測をおこなうことができる。
【0026】
さらに、本発明の第8態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、速度の変動量の割合が所定値を超えて過剰となる場合には、アクセルペダル開度に対する目標駆動力の応答が小さくなるように変更する(例えば、アクセルペダル開度の増大に伴う目標駆動力の増大量を低減したり、アクセルペダル開度の変化に対する目標駆動力の変化の応答性を低下させたり、アクセルペダル開度の変化に対する目標駆動力の変化の分解能を低下させるなど)ことにより、速度変動に伴う燃費の悪化を防止することが出来る。
【0027】
さらに、本発明の第9態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、平均速度の割合が所定値を超えて過剰となる場合には、燃料消費量がより小さくなるような速度を運転者に報知することから、運転者が維持する車速によって不必要に燃費が悪化してしまうことを防止することができる。
【0028】
さらに、本発明の第10態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、交差点の有無や、所定の間隔の有無や、所定の勾配変化の何れかに応じて走行区分を設定することにより、自車両のエネルギー制御を、より一層、詳細に精度良くおこなうことができる。
【0029】
さらに、本発明の第11態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、外部情報蓄積サーバに外部情報を蓄積することにより、多量の外部情報の蓄積や解析を容易におこなうことができる。
【0030】
さらに、本発明の第12態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、自車両と他車両との間の車車間通信によって外部情報を取得することにより、自車両のエネルギー制御を、より一層、詳細に精度良くおこなうことができる。
【0031】
また、本発明の第13態様に係る車両のエネルギー演算装置によれば、自車両の走行以前であっても、他車両の走行に基づく外部情報(車速の変動量と、平均車速と、勾配情報)に基づき、所定の走行区分での走行エネルギーを精度良く算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置および車両のエネルギー演算装置ついて添付図面を参照しながら説明する。
【0033】
この発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置10Aおよび車両のエネルギー演算装置10Bはハイブリッド車両1に搭載されており、このハイブリッド車両1は、例えば図1に示すように、内燃機関(ENG)11と、モータ(MOT)12と、トランスミッション(例えば、CVT)13とを直列に直結したパラレル型のハイブリッド車両であり、内燃機関11およびモータ12の両方の駆動力は、トランスミッション13およびディファレンシャル(図示略)を介して左右の駆動輪W,Wに配分されて伝達される。
また、ハイブリッド車両1の減速時に駆動輪W側からモータ12側に駆動力が伝達されると、モータ12は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。さらに、ハイブリッド車両1の運転状態に応じて、モータ12は内燃機関11の出力によって発電機として駆動され、発電エネルギーを発生するようになっている。
【0034】
モータ12は、例えば3相(U相、V相、W相)のDCブラシレスモータ等とされ、このモータ12の駆動および発電を制御するパワードライブユニット(PDU)14に接続されている。
PDU14は、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備えて構成されている。
【0035】
PDU14には、モータ12と電力(例えば、モータ12の駆動またはアシスト動作時にモータ12に供給される供給電力や、回生作動または昇圧駆動によるモータ12の発電時にモータ12から出力される出力電力)の授受を行う高圧バッテリ15が接続されている。
そして、PDU14は、FI/MG/CVTECU16からの制御指令を受けてモータ12の駆動および発電を制御する。例えばモータ12の駆動時には、FI/MG/CVTECU16から出力されるトルク指令に基づき、高圧バッテリ15から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータ12へ供給する。一方、モータ12の発電時には、モータ12から出力される3相交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ15を充電する。
【0036】
このPDU14の電力変換動作は、FI/MG/CVTECU16からモータ制御系通信網NAを介してPWMインバータのブリッジ回路を構成する各トランジスタのゲートに入力されるパルス、つまりパルス幅変調(PWM)により各トランジスタをオン/オフ駆動させるためのパルスに応じて制御され、このパルスのデューティ、つまりオン/オフの比率のマップ(データ)は予めFI/MG/CVTECU16に記憶されている。
【0037】
また、各種補機類からなる電気負荷を駆動するための12Vバッテリ18は、DC−DCコンバータ(図示略)を具備するダウンバータ(DV)19に接続され、DV19はPDU14および高圧バッテリ15に並列に接続されている。
HVECU20により電力変換動作が制御されるDV19は、例えば双方向のDC−DCコンバータを備え、高圧バッテリ15の端子間電圧、あるいは、モータ12を回生作動または昇圧駆動した際のPDU14の端子間電圧を、所定の電圧値まで降圧して12Vバッテリ18を充電すると共に、高圧バッテリ15の残容量(SOC:State Of Charge)が低下している場合には、12Vバッテリ18の端子間電圧を昇圧して高圧バッテリ15を充電可能である。
なお、HVECU20は、モータ制御系通信網NAを介してFI/MG/CVTECU16と相互に通信可能に接続され、例えばモータ12およびPDU14および高圧バッテリ15およびDV19などからなる高圧電装系の監視および保護やPDU14およびDV19の動作制御をおこなう。
【0038】
また、空調装置21は、例えば内燃機関11を駆動源とする内燃機関駆動コンプレッサ(図示略)と電動コンプレッサ(図示略)とを備えるハイブリッドタイプの空調装置であって、内燃機関駆動コンプレッサおよび電動コンプレッサの両方、あるいは、何れか一方が駆動されることにより車両内の温度を調節する。
内燃機関駆動コンプレッサは、内燃機関11のクランクシャフトに連結されたプーリと内燃機関駆動コンプレッサの回転軸に連結されたプーリとに掛け渡された駆動ベルトを介して内燃機関11から内燃機関駆動コンプレッサへと動力が伝達される。
また、電動コンプレッサは、PDU14および高圧バッテリ15に並列に接続された空調装置用インバータ22によって駆動制御され、この空調装置用インバータ22は、PDU14あるいは高圧バッテリ15から出力される直流電力を3相交流電力に変換して電動コンプレッサへ供給する。空調装置用インバータ22の電力変換動作は、FI/MG/CVTECU16から出力されてモータ制御系通信網NAを介して空調装置用インバータ22に入力される指令信号(例えば、空調装置用インバータ22の各トランジスタをオン/オフ駆動させるためのパルスなど)に応じて制御される。
【0039】
DBW(Drive By Wire)装置23は、FI/MG/CVTECU16により制御され、運転者のアクセルペダルの踏み込みによってアクセルペダルのストローク量がアクセルペダル開度センサにより電気的に検出されると、この検出結果の電気信号に応じて、スロットルバルブを駆動する電磁アクチュエータ(例えば、スロットルバルブ駆動モータ)に制御電流を通電して、アクセルペダルのストローク量に応じたバルブ開度となるようにスロットルバルブを電子制御する。
【0040】
なお、FI/MG/CVTECU16は、例えば内燃機関11への燃料供給や点火タイミングなどを制御すると共に、後述するエネルギーマネジメントの制御と、トランスミッション13の変速制御とをおこなう。
FI/MG/CVTECU16は、制御系通信網NBを介して、ブレーキ回生協調システム24を構成するBRK(ブレーキ)ECU24aおよびVSA(VSA:Vehicle Stability Assist)ECU24bと、ナビゲーション装置25と、報知装置26と、各種の状態量を表示するメータからなる計器類27と接続されている。
【0041】
BRK(ブレーキ)ECU24aおよびVSA(VSA:Vehicle Stability Assist)ECU24bは、FI/MG/CVTECU16と相互に通信可能に接続され、例えばVSAECU24bは、ブレーキデバイス28を駆動制御するBRKECU24aに制御指令を出力して、車両の走行挙動を安定化させる。
【0042】
ナビゲーション装置25は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信すると共に、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角など)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレートなど)を検出するジャイロセンサおよび車両の速度(車速)を検出する車速センサから出力される検出信号を取得し、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレートなどの検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0043】
また、ナビゲーション装置25は、表示装置(図示略)に地図を表示するための地図表示用のデータおよび自車両の現在位置に基づくマップマッチングの処理に必要とされる道路座標データに加えて、経路探索や経路誘導などの処理に必要とされるデータ、例えば交差点および分岐点などの所定位置の緯度および経度からなる点であるノードと各ノード間を結ぶ線であるリンクとからなる道路データを地図データとして備えており、さらに、ノードおよびリンクには各種の情報が付加されている。
例えば、各ノードに対しては、緯度および経度および標高に加えて、信号機の有無や複数の道路の交差角度や形状などの交差点情報や、分岐点での分岐路の形状あるいはジャンクションでの道路の形状などの情報が付加され、各リンクには、道路種別(例えば、高速道路、一般道など)などの情報が付加されている。
【0044】
そして、ナビゲーション装置25は、道路データに対して、測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れか一方から得られる自車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正する。
また、ナビゲーション装置25は、例えば車両の経路探索や経路誘導などの処理を実行し、道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を表示装置(図示略)へ出力する。
【0045】
そして、ナビゲーション装置25は、自車両の外部の他車両および情報サーバと相互に通信可能であって、例えば所定の条件に基づいて区分された走行区分において走行した車両の外部情報(車速の変動量および平均車速および平均勾配など)、あるいは、例えば車両の外部情報に基づき算出される駆動エネルギーおよび減速エネルギーなどの各種情報の授受(つまり、他車両および情報サーバからの取得および他車両および情報サーバへの出力)をおこなう。
【0046】
報知装置26は、例えばスピーカなどを備え、FI/MG/CVTECU16の制御により、所定音声の出力などをおこなう。
【0047】
また、各種の状態量を表示するメータからなる計器類27は、車体系通信網NCに接続され、この車体系通信網NCには、例えばヒータ制御器29などが接続されている。
【0048】
本実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置10Aおよび車両のエネルギー演算装置10Bは上記構成を備えており、次に、ハイブリッド車両の制御装置10Aおよび車両のエネルギー演算装置10Bの動作、特に、FI/AT/MGECU36によるエネルギーマネジメントの制御動作について説明する。
【0049】
FI/MG/CVTECU16は、所定の条件に基づいて区分された走行区分での車両の走行エネルギーMEを算出する。
この走行エネルギーMEは、例えば下記数式(2)および(3)に示すように、質量mと加速度aとの乗算による加速成分(m×a)と、平均車速Vcarと係数α,βとによる走行抵抗成分(α×Vcar+β×Vcar)と、勾配角θによる勾配成分(m×sinθ)との加算による駆動力FNに対して、駆動力FNと平均車速Vcarとの乗算値(FN×Vcar)を時系列で積算して得た値として定義される。
【0050】
【数2】

【0051】
【数3】

【0052】
また、走行エネルギーMEは、例えば下記数式(4)に示すように、車両の加速に係るエネルギー((1/2)×m×Vcar)と、走行抵抗に係るエネルギーREと、重力加速度および高さhにより記述される勾配に係るエネルギー(m×g×h:位置エネルギー)とを加算して得た値として記述することができる。
【0053】
【数4】

【0054】
これにより、FI/MG/CVTECU16は、走行エネルギーとして、走行区分を走行するのに必要な駆動エネルギーAEを、例えば下記数式(5)に示すように記述し、走行区分を走行したときに発生する減速エネルギーDEを、例えば下記数式(6)に示すように記述する。
【0055】
【数5】

【0056】
【数6】

【0057】
上記数式(5)、(6)において、車両の加速に係るエネルギーは第1項であり、走行抵抗に係るエネルギーは第2〜4項であり、勾配に係るエネルギーは第5、6項である。
【0058】
車両の加速(減速)に係るエネルギーは、加速エネルギー当量AAEEと、パラメータA,Gとを乗算して得た値(AAEE×A、または、AAEE×G)とされ、パラメータA,Gは、車両に固有の値を有し、車両重量の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化し、駆動エネルギーAEでのパラメータAの符号は正であり、減速エネルギーDEでのパラメータGの符号は負となる。
加速エネルギー当量AAEEは、単位距離あたりの加速エネルギー当量であって、加速エネルギー当量AEEは、任意の自然数iによる各サンプリング周期毎の車速νにより、例えば下記数式(7)に示すように記述される。
【0059】
【数7】

【0060】
つまり、例えば図2に示すような車速変化においては、加速エネルギー当量AEEは、例えば下記数式(8)に示すように記述され、車両の速度エネルギー量の増加分となる。
そして、上記数式(7)に示すように記述される加速エネルギー当量AEEを走行距離によって除算して得た値が加速エネルギー当量AAEEとなる。
【0061】
【数8】

【0062】
この加速エネルギー当量AAEEは、車両の走行開始から走行終了までの期間毎に対して単位距離当りの走行エネルギーと単位距離当りの加速エネルギー当量との対応関係を車速毎に示した試験結果のグラフ図(例えば図3)から認められるように、走行エネルギーMEとの間に線形の対応関係を有している。
なお、加速エネルギー当量AAEEは、自車両の外部(例えば、情報サーバ、あるいは、他車両など)から取得してもよいし、あるいは他車両から車車間通信により取得した車速の時系列データから算出してもよい。
【0063】
また、上記数式(5)、(6)において、走行抵抗に係るエネルギーは、平均車速Vcarと、車両に固有の値を有する各パラメータB,C,D,H,I,Jとにより記述され、パラメータB,Hは、車両の抗力係数あるいは前方投影面積の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化し、正の符号を有し、パラメータC,Iは、走行抵抗の車速の1次の項と同様の傾向を示し、符号は正または負となるが主に負となり、パラメータD,Jは、車両の転がり抵抗係数が大きいほど、増大傾向に変化し、正の符号を有する。
平均車速Vcarは、車両走行時の速度の平均値、つまり車速がゼロとなる車両停止状態を除外して算出した車速の平均値であって、例えば図4に示すように、全計測時間Tから、車両停車時間(TS1+TS2+TS3)を減算して得た実走行時間TRによって、走行距離を除算して得た値となる。
【0064】
走行路の勾配が無視できる平地での走行に対しては、例えば図5に示すように、走行エネルギーMEは、車速の変動(つまり、車両の加速および減速)に係るエネルギーと、平均車速Vcarによる走行抵抗に係るエネルギーとにより構成される。
ここで、例えば図3に示すように、適宜の単位距離当りの加速エネルギー当量に対応する単位距離当りの走行エネルギーは、車速に応じたばらつき(誤差)を有しており、例えば図6に示すように、加速エネルギー当量AAEEを補正(つまり、加速エネルギー当量AAEEによる寄与を除外)して得た単位距離当りの走行エネルギーと平均車速Vcarとの対応関係を示す試験結果のグラフ図においては、単位距離当りの走行エネルギーを平均車速Vcarの2次式で記述可能となる。
なお、一般に、車両の走行抵抗は、空気抵抗係数、転がり抵抗係数などを用いて、車速の2次式で記述可能であり、走行エネルギーは、走行抵抗と車速との乗算となることから、走行エネルギーを、平均車速Vcarの3次式で記述することも可能である。
なお、平均車速Vcarは、自車両の外部(例えば、情報サーバ、あるいは、他車両など)から取得してもよいし、あるいは他車両から車車間通信により取得した車速の時系列データから算出してもよい。
【0065】
また、上記数式(5)、(6)において、勾配に係るエネルギーは、走行区分での上り勾配に係る平均勾配Grade(+)および下り勾配に係る平均勾配Grade(−)と、車両に固有の値を有する各パラメータE,F,K,Lとにより記述され、各パラメータE,F,K,Lは、車両重量の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化し、正の符号を有する。
なお、各平均勾配Grade(+),Grade(−)は、自車両のナビゲーション装置25に記憶されている地図データあるいは自車両の外部(例えば、情報サーバなど)から取得した道路データを用いて各走行区分毎に対して算出してもよいし、あるいは、例えば図7に示すように他車両から車車間通信により取得した車速および勾配推定値の時系列データから、各走行区分毎に走行距離と標高との対応関係を示すマップを作成して、このマップに基づき算出してもよい。
【0066】
勾配が無視できない走行区分での走行エネルギーMEから、車速の変動(つまり、車両の加速および減速)に係るエネルギーと平均車速Vcarによる走行抵抗に係るエネルギーとを減算して得た、補正後走行エネルギーと、この走行区分での平均勾配との対応関係を示す試験結果のグラフ図は、例えば図8(A)に示すようになり、この試験結果に対して、仮想的に勾配を変化させて得た試験結果のグラフ図は、例えば図8(B)に示すようになる。
これらの試験結果のから、勾配に係るエネルギーは、下り勾配に係る平均勾配Grade(−)と、上り勾配に係る平均勾配Grade(+)とに対して、異なる1次式で記述することができ、例えば下り勾配に係る平均勾配Grade(−)に対しては、下り勾配の増大に伴い、ゼロに漸近する直線で記述可能であり、上り勾配に係る平均勾配Grade(+)に対しては、上り勾配の増大に伴い、相対的に大きな増大率を示す直線で記述可能である。
【0067】
なお、上記数式(5)、(6)において、走行抵抗に係るエネルギーを平均車速Vcarの2次式で記述するとしたが、これに限定されず、平均車速Vcarの1次式で記述してもよい。
また、上記数式(5)、(6)において、勾配に係るエネルギーを、下り勾配に係る平均勾配Grade(−)と、上り勾配に係る平均勾配Grade(+)とに対して、異なる1次式で記述するとしたが、これに限定されず、単一の1次式で記述してもよい。
また、上記数式(6)に示す減速エネルギーDEにおいて、平均車速Vcarの項は相対的に寄与が小さいことから、例えば下記数式(9)に示すように、平均車速Vcarの項は無視し、上記数式(6)での各パラメータG,J,K,Lと同等の各パラメータによって減速エネルギーDEを記述してもよい。
【0068】
【数9】

【0069】
FI/MG/CVTECU16は、上記数式(5)、(6)に基づき走行エネルギーを算出する場合には、自車両が将来走行する走行区分(例えば、走行経路上に順次設定された走行区分のうち、次に走行する走行区分など)に対して予め走行エネルギーを算出する。
上記数式(5)、(6)において、加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および下り勾配に係る平均勾配Grade(−)は、交通環境を示す変数であって、情報サーバあるいは車車間通信により他車両から取得される、他車両の情報あるいは過去に自車両から情報サーバに送信された情報である。
また、各パラメータA,…,Lは、自車両の緒元を示す、自車両に固有の定数である。
このため、交通環境を示す変数と、自車両の緒元を示す定数とによって、自車両が相応していない走行区分であっても、自車両の走行時における走行エネルギーを精度良く算出することができる。
【0070】
例えば図9、図10に示すように、各車両(自車両および他車両)にて車速信号(車速センサなどから出力される車速の時系列データなど)および勾配予測値(例えば、車両のクルーズコントロールなどにおける予測値など)に基づき、加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および下り勾配に係る平均勾配Grade(−)を算出する場合には、各車両(自車両および他車両)は、車速信号から平均車速Vcarを演算する平均車速演算部41と、AAEE演算部42と、平均勾配演算部43とを備えている。
【0071】
そして、情報サーバは、例えば蓄積データサーバ51と、リアルタイム補正サーバ52と、勾配値サーバ53と、リアルタイム補正部54とを備えている。
蓄積データサーバ51は、各車両(自車両および他車両)にて演算され、無線通信などにより出力された、走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarを、例えば時間帯、曜日、季節などの日時情報毎に平均化して蓄積する。
リアルタイム補正サーバ52は、各車両(自車両および他車両)にて演算され、無線通信などにより出力された、走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarのうち、特に、現在時刻の直近の所定期間(例えば、30分前までなど)のデータを平均化して蓄積する。
勾配値サーバ53は、各車両(自車両および他車両)にて演算され、無線通信などにより出力された、走行区分毎の平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を平均化して蓄積したり、走行区分毎の平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を取得可能な地図データを格納する。
【0072】
リアルタイム補正部54は、情報サーバの蓄積データサーバ51のデータをリアルタイム補正サーバ52のデータによって補正しており、例えば蓄積データサーバ51のデータ(例えば、加速エネルギー当量AAEE_Aおよび平均車速Vcar_A)に対して所定の基準定数N0(例えば、10など)を設定し、この基準定数と、リアルタイム補正サーバ52に格納されているデータ(例えば、加速エネルギー当量AAEE_Bおよび平均車速Vcar_B)に寄与した車両の台数Ncarとに応じて、例えば下記数式(10),(11)に基づき、各データサーバ51,52のデータに対して重み付けをおこなう。
【0073】
【数10】

【0074】
【数11】

【0075】
走行エネルギーを演算する車両(自車両)は、平均車速演算部41と、AAEE演算部42と、平均勾配演算部43とに加えて、自車両において演算した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を記憶する記憶部61と、自車傾向補正部62と、走行エネルギー演算部63と、EV上限出力値設定部64とを備えている。
【0076】
自車傾向補正部62は、例えば図10に示すように、AAEE特徴値演算部62Aと、平均車速特徴値演算部62Bと、重み付け補正係数算出部62Cとを備えている。
【0077】
AAEE特徴値演算部62Aは、走行区分毎に、情報サーバから取得された加速エネルギー当量AAEEと、記憶部61から取得した自車両の加速エネルギー当量AAEEとの比を算出する。
平均車速特徴値演算部62Bは、走行区分毎に、情報サーバから取得された平均車速Vcarと、記憶部61から取得した自車両の平均車速Vcarとの比を算出する。
【0078】
重み付け補正係数算出部62Cは、AAEE特徴値演算部62Aから出力される加速エネルギー当量AAEEの比と、平均車速特徴値演算部62Bから出力される平均車速Vcarの比とに基づき、情報サーバのデータに対して自車両の走行傾向を反映させるための重み付け補正係数を算出し、加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップと、平均車速Vcarの特徴値マップとを作成する。
【0079】
例えば図11に示すように、平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上においては、車両の走行状態に応じた各種領域を設定することができ、例えば平均車速Vcarが相対的に小さく、かつ、加速エネルギー当量AAEEが相対的に大きい領域は、市街地などにおける低速の渋滞区間を走行する状態であると判定することができる。
また、例えば平均車速Vcarが相対的に大きく、かつ、加速エネルギー当量AAEEが相対的に小さい領域は、高速道路などにおける高速の走行区間を走行する状態であるのに対して、例えば平均車速Vcarが相対的に大きく、かつ、加速エネルギー当量AAEEが相対的に大きい領域は、高速道路などでの渋滞区間を走行する状態であると判定することができる。
【0080】
車両の走行状態は、走行環境に加えて運転者の運転傾向なども反映されており、AAEE特徴値演算部62Aにて算出された加速エネルギー当量AAEEの比の分布を、走行区分毎に対応する加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarによって、平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上に示すと、例えば図12に示すような分布図となる。
また、平均車速特徴値演算部62Bにて算出された平均車速Vcarの比の分布を、走行区分毎に対応する加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarによって、平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上に示すと、例えば図13に示すような分布図となる。
【0081】
例えば図12,図13に示すような傾向を有する車両では、高速道路などにおける高速の走行区間を走行する際に、加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarが、情報サーバに格納されている値よりも大きくなる傾向があり、高速道路などでの渋滞区間では、平均車速Vcarは情報サーバに格納されている値とほぼ同等であるのに対して、加速エネルギー当量AAEEは情報サーバに格納されている値よりも大きくなる傾向があることがわかる。
【0082】
重み付け補正係数算出部62Cは、例えば図14に示すように、平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上を所定メッシュ間隔により区画し、情報サーバから取得した各走行区分毎に対応する平均車速Vcarおよび加速エネルギー当量AAEEの組み合わせによる座標位置が、何れの区画領域に含まれるかを検知し、検知した区画に平均車速特徴値演算部62Bにて算出された平均車速Vcarの比を格納することで、例えば図15に示すような、平均車速Vcarの特徴値マップを作成し、検知した区画にAAEE特徴値演算部62Aにて算出された加速エネルギー当量AAEEの比を格納することで、例えば図16に示すような、加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップを作成する。
【0083】
例えば図14〜図16に示す状態では、適宜の走行区分に対して、情報サーバから取得した平均車速Vcarの値が50、かつ、加速エネルギー当量AAEEの値が250であって、この走行区分での自車両の記憶部61に格納されている平均車速Vcarの値が70、かつ、加速エネルギー当量AAEEの値が200であって、自車両の平均車速Vcarは情報サーバの平均車速Vcarに対して1.4倍となり、自車両の加速エネルギー当量AAEEは情報サーバの加速エネルギー当量AAEEに対して0.8倍となる。
【0084】
なお、平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上の各区画において、平均車速Vcarの比または加速エネルギー当量AAEEの比の値が存在しない場合には、初期値として「1」が設定されることになる。
また、各区画において、平均車速Vcarの比または加速エネルギー当量AAEEの比の複数の値が得られた場合には、これら複数の値の平均値などが算出されることになる。
【0085】
そして、走行エネルギー演算部63は、情報サーバから加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を取得して、上記数式(5)、(6)に基づき駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEを算出する際に、平均車速Vcarの特徴値マップおよび加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップを参照して、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarを補正する。
【0086】
そして、EV上限出力値設定部64は、走行エネルギー演算部63にて算出された駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに基づき、予め作成した所定のEV上限出力目標値マップに対するマップ検索などにより、自車両のEV上限出力値(つまり、モータ12のみで走行可能となる出力値の上限値であって、これを超える出力には内燃機関11の駆動が必要となることを示すしきい値)を取得する。
例えば、EV上限出力値は、単位距離当たりの駆動エネルギーまたは減速エネルギーが大きいほど、大きな値となる。
【0087】
なお、所定の条件に基づいて区分される走行区分は、例えば距離、交差点位置、勾配の変化などの少なくとも何れか1つに応じて設定され、この走行区分を設定する処理では、例えば図17に示すように、先ず、ステップS01において、適宜の対象位置が直前の区切位置(つまり、走行区分の始点または終点)から所定距離以上離れているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
【0088】
そして、ステップS02においては、対象位置が交差点であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS04に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
そして、ステップS03においては、対象位置を区切位置に設定し、エンドに進み、処理を終了する。
【0089】
また、ステップS04においては、直前の区切位置に比べて勾配変化が検知されたか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS03に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進み、処理を終了する。
【0090】
なお、上述したステップS04において、勾配変化の有無を判定するための判定閾値を適宜に変更することによって、この勾配変化に応じて過剰に区切位置が設定されてしまうことを防止することができる。
また、複数の経路に対して区切位置を設定して走行区分を設定する場合には、例えば道路種別などに応じた処理順で走行区分を設定する。例えば複数の国道および県道が存在する場合には、先ず、国道の番号が小さい順に走行区分を設定し、次に、県道の番号が小さい順に走行区分を設定する。
【0091】
以下に、走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)からの要求に応じて加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を送信する情報サーバの動作について説明する。
先ず、例えば図18に示すステップS11においては、走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を要求するデータ要求が入力されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進む。
【0092】
そして、ステップS12においては、走行区分毎に地図データから平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を取得する。
そして、ステップS13においては、蓄積データサーバ51から加速エネルギー当量AAEE_Aおよび平均車速Vcar_Aを取得する。
そして、ステップS14においては、リアルタイム補正サーバ52から加速エネルギー当量AAEE_Bおよび平均車速Vcar_Bを取得する。
そして、ステップS15においては、上記数式(10),(11)に基づき、リアルタイム補正後の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarを算出し、これらの算出結果と共に、平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を送信し、エンドに進み、処理を終了する。
【0093】
以下に、走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)からの要求に応じて、自車両の重み付け補正係数を送信する自車傾向補正部62の動作について説明する。
先ず、例えば図19に示すステップS21においては、自車両の重み付け補正係数を要求するデータ要求が入力されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
【0094】
そして、ステップS22においては、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarを取得する。
そして、ステップS23においては、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarに応じて、加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップをマップ検索して、加速エネルギー当量AAEEに対する自車両の重み付け補正係数を取得する。
そして、ステップS24においては、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarに応じて、平均車速Vcarの特徴値マップをマップ検索して、平均車速Vcarに対する自車両の重み付け補正係数を取得する。
そして、ステップS25においては、加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarに対する自車両の重み付け補正係数を送信し、エンドに進み、処理を終了する。
【0095】
以下に、走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)の走行エネルギー演算部63およびEV上限出力値設定部64の動作について説明する。
先ず、例えば図20に示すステップS31においては、自車両の走行経路においてモータ12のみで走行するEV領域が設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS32に進む。
【0096】
そして、ステップS32においては、走行経路の経路情報(例えば、位置)を取得する。
そして、ステップS33においては、情報サーバに対して走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))の送信を要求する。
そして、ステップS34においては、情報サーバから走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を取得する。
【0097】
そして、ステップS35においては、自車傾向補正部62に対して自車両の重み付け補正係数の送信を要求する。
そして、ステップS36においては、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarを自車傾向補正部62に送信する。
そして、ステップS37においては、自車両の重み付け補正係数を自車傾向補正部62から取得する。
【0098】
そして、ステップS38においては、情報サーバから取得した加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcar毎に自車両の重み付け補正係数を乗算して補正をおこなう。
そして、ステップS39においては、上記数式(6)に基づき、走行経路の走行区分毎に減速エネルギーDEを算出する。
そして、ステップS40においては、上記数式(5)に基づき、走行経路の走行区分毎に駆動エネルギーAEを算出する。
そして、ステップS41においては、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに基づき、所定のEV上限出力目標値マップに対するマップ検索により自車両のEV上限出力値を取得する。
そして、ステップS42においては、EV上限出力値に応じて走行経路の走行区分毎にEV領域を設定し、エンドに進み、処理を終了する。
【0099】
なお、上述した図18でのステップS11〜ステップS15および図19でのステップS31〜ステップS42の処理においては、走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)は、走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を、情報サーバから取得するとしたが、これに限定されず、例えば走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)は、複数の他車両との間の車車間通信によって各他車両から、所望の走行区分の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を取得してもよい。
この場合、走行区分の走行エネルギーを算出する車両(自車両)は、複数の他車両から取得したデータを平均化することによって、各加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)を算出すればよい。また、例えば上記数式(10),(11)に基づき、所望の走行区分を過去に走行した他車両から得たデータによる走行経路情報(例えば、加速エネルギー当量AAEE_Aおよび平均車速Vcar_A)と、所望の走行区分を現在時刻の直近の所定期間(例えば、30分前までなど)に走行した他車両から得たデータによる走行経路情報(例えば、加速エネルギー当量AAEE_Bおよび平均車速Vcar_B)とに対して重み付けをおこなってもよい。
【0100】
上述したように、本実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置10Aおよび車両のエネルギー演算装置10Bによれば、予め設定あるいは予測された自車両の走行経路に対して、所定の走行区分を走行した車両(過去の自車両あるいは他車両、又は、過去の自車両および他車両)の外部情報として、加速エネルギー当量AAEEと、平均車速Vcarと、平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−)とを用いて、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEを算出して自車両のEV上限出力値(つまり、モータ12のみで走行可能となる出力値の上限値であって、これを超える出力には内燃機関11の駆動が必要となることを示すしきい値)を設定することから、EV上限出力値を走行区分毎に最適化して設定することができ、自車両のエネルギー制御を精度良くおこなうことができる。
また、予め設定された自車両に固有の各パラメータA,…,Lを用いることで、他車両の外部情報を用いた場合であっても、自車両に対して最適なエネルギー予測をおこなうことができる。
【0101】
さらに、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEを、それぞれ異なる各パラメータA,…,Lを用いて算出することで、より一層、精度良くエネルギー予測をおこなうことができる。
さらに、走行区分における駆動エネルギーAEまたは減速エネルギーDEに応じてEV上限出力値を設定できるので、モータ12のみで走行できる出力値を走行経路に応じて適宜に設定することができる。
さらに、自車両の過去の情報に基づく平均車速Vcarの特徴値マップおよび加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップによって、情報サーバから取得した平均車速Vcarおよび加速エネルギー当量AAEEを補正することから、例えば運転者の運転傾向などを駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに反映させることができ、運転者の運転傾向を考慮しつつ、燃費を向上させることが出来る。
【0102】
さらに、現在から所定時間(例えば、30分など)以内の直近のデータを駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに反映させることができ、より精度の良い道路状況を考慮して、自車両のエネルギー制御を精度良くおこなうことができる。
さらに、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに対して、上り勾配と下り勾配とで、それぞれ異なるパラメータを用いることにより、より一層、精度良くエネルギー予測をおこなうことができる。
【0103】
さらに、交差点の有無や、所定の間隔の有無や、所定の勾配変化の何れかに応じて走行区分を設定することにより、自車両のエネルギー制御を、より一層、詳細に精度良くおこなうことができる。
さらに、情報サーバに外部情報(走行経路情報、例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を蓄積することにより、多量の外部情報の蓄積や解析を容易におこなうことができる。
さらに、自車両と他車両との間の車車間通信によって外部情報(走行経路情報、例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を取得することにより、自車両のエネルギー制御を、より一層、詳細に精度良くおこなうことができる。
また、自車両の走行以前であっても、他車両の走行に基づく外部情報(走行経路情報、例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))に基づき、所定の走行区分での走行エネルギーを精度良く算出することができる。
【0104】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図20のステップS41に示すように、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEに基づきEV上限出力値を取得するとしたが、これに限定されず、例えば図21に示す変形例のように、上述した図20でのステップS41、ステップS42を省略し、これらの代わりに、ステップS43において、走行エネルギーを低減して車両のエネルギー効率を増大させる制御(エネルギー最適制御)を実行してもよい。
【0105】
このエネルギー最適制御として、例えば走行経路の走行区分毎において、走行エネルギーを最適化する場合には、例えば図22に示すように、走行エネルギーにおける各エネルギー成分(車両の加速に係るエネルギーと、走行抵抗に係るエネルギーと、勾配に係るエネルギー)の割合を算出し、この割合に応じて、削減可能なエネルギー成分を判定して、この判定結果に応じた制御をおこなう。
例えば図22に示す状況S1においては、加速エネルギー当量AAEE、つまり車両の加速に係るエネルギーの割合が高く、このエネルギーを低減することで、走行エネルギーを削減し易くなる。また、例えば状況S2においては、平均車速Vcarつまり走行抵抗に係るエネルギーの割合が高く、このエネルギーを低減することで、走行エネルギーを削減し易くなる。
【0106】
例えば、車両の走行環境(例えば、市街地での走行、高速道路での走行など)などに応じて、各エネルギー成分の最適な割合を示すモデルデータを保持しておき、このモデルデータに応じた割合となるような制御を行う。
例えば平均車速Vcarつまり走行抵抗に係るエネルギーの割合を低減する処理では、図23に示すステップS51において、先ず、走行エネルギーにおける平均車速Vcarに係るエネルギーの割合ΔVを算出する。
そして、ステップS52においては、平均車速Vcarに係るエネルギーの割合ΔVがモデルデータに応じた所定割合VAよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進み、処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS53に進む。
そして、ステップS53においては、車両の走行環境などに応じた最適な車速を運転者に報知して、エンドに進み、処理を終了する。
【0107】
また、例えば加速エネルギー当量AAEE、つまり車両の加速に係るエネルギーの割合を低減する処理では、図24に示すステップS61において、先ず、走行エネルギーにおける加速エネルギー当量AAEEに係るエネルギーの割合ΔEを算出する。
そして、ステップS62においては、加速エネルギー当量AAEEに係るエネルギーの割合ΔEがモデルデータに応じた所定割合EAよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進み、処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS63に進む。
そして、ステップS63においては、例えば図25に示すように、運転者によるアクセルペダルAPの踏み込み操作に係るアクセルペダル開度に対する目標駆動力の応答が小さくなるように変更し、エンドに進み、処理を終了する。ここでは、例えば図25に示すように、アクセルペダル開度(AP開度)の増大に伴う目標駆動力の増大量を低減したり、アクセルペダル開度の変化に対する目標駆動力の変化の応答性を低下させたり、アクセルペダル開度の変化に対する目標駆動力の変化の分解能を低下させる。また、カーブ通過の前後における速度変化(カーブ侵入前の減速およびカーブ通過後の加速)が過剰となることを抑制するために、例えば図26に示すように、アクセルペダルAPの踏み込み操作が解除されたときの減速回生量を低減させる。
【0108】
これにより、燃料消費量がより小さくなるような車速を運転者に報知することから、運転者が維持する車速によって不必要に燃費が悪化してしまうことを防止することができ、加速エネルギー当量AAEEに伴う燃費の悪化を防止することが出来る。
【0109】
また、エネルギー最適制御として、例えば走行経路の走行区分毎ではなく、走行経路全体において走行エネルギーを最適化する場合には、例えば図27に示すステップS71において、EV領域オフセット値Poffにゼロを設定して初期化する。
次に、ステップS72においては、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEとEV上限出力値Pobjとの対応関係を示す所定マップをマップ検索することにより、EV上限出力値Pobjを取得する。
【0110】
そして、ステップS73においては、EV上限出力値PobjにEV領域オフセット値Poffを加算して得た値を、新たにEV上限出力値Pobjとして設定する。
そして、ステップS74においては、走行経路の走行区分毎のバッテリ充電量の予測量を、走行区分毎の減速エネルギーDEに所定の定数(Const)を乗算して算出する。
そして、ステップS75においては、走行経路の走行区分毎のEV放電量の予測量を、走行区分毎の駆動エネルギーAEおよびEV領域に基づき算出する。
【0111】
そして、ステップS76においては、走行区分毎のバッテリ充電量の予測量を積算することによって、走行経路全体でのバッテリ充電量の予測量(全区間バッテリ予測充電量総和Pchg)を算出する。
そして、ステップS77においては、走行区分毎のEV放電量の予測量を積算することによって、走行経路全体でのEV放電量の予測量(全区間EV予測放電量総和Pev)を算出する。
そして、ステップS78においては、全区間バッテリ予測充電量総和Pchgが全区間EV予測放電量総和Pevよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS81に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS79に進む。
【0112】
そして、ステップS79においては、バッテリ算容量SOCの推移が所定の上限値または下限値を超えていないか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS81に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS80に進む。
そして、ステップS80においては、EV領域オフセット値Poffに所定加算値Stepを加算して得た値を、新たにEV領域オフセット値Poffとして設定し、上述したステップS73に戻る。
【0113】
また、ステップS81においては、EV上限出力値PobjからEV領域オフセット値Poffを減算して得た値を、新たにEV上限出力値Pobjとして設定する。
そして、ステップS82においては、この時点で設定されているEV上限出力値Pobjを出力し、エンドに進み、処理を終了する。
【0114】
この場合には、走行経路全体において高圧バッテリ15のバッテリ充電量とバッテリ放電量とを均衡させることにより、バッテリ算容量SOCが上限値または下限値を超えてしまうことを防止しつつ、高圧バッテリ15でのエネルギー収支を一定に維持することができ、モータ12のみでの走行を最大限に有効利用して、走行経路全体での燃費を向上させることができる。
【0115】
なお、自車両の走行経路の設定状態に応じた処理として、例えば予めナビゲーション装置25において目的地などが設定されている場合には、車両の走行開始直後に目的地までのすべての走行区分毎の走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を情報サーバから受信する。これと同時に、駆動エネルギーAEおよび減速エネルギーDEの算出をおこない、例えば走行経路の走行区分毎において走行エネルギーを最適化するようにして、あるいは、走行経路全体において走行エネルギーを最適化するようにして、各走行区分毎に実行するべき制御内容を予め設定しておく。
また、例えば現在時刻の直近の所定期間(例えば、30分前までなど)でのリアルタイムの他車両の情報は、一定時間ごとに更新をおこない、改めて各走行区分毎に実行するべき制御内容を更新する。
【0116】
また、例えば予め目的地などは設定されていない状態であっても、走行頻度が高い走行経路であると判定される場合には、車両の走行開始直後に、進行方向に存在する複数の走行路毎の走行回数のデータを取得し、このデータに基づき、各走行路の走行確率を算出する。そして、この走行確率に基づき、自車両の走行経路を予測し、この予測走行経路でのすべての走行区分毎の走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を情報サーバから受信する。この走行経路の予測では、予測精度の低下を抑制するために、自車両の現在位置から所定走行確率(例えば、10%など)以上の範囲までを予測走行経路として設定する。
【0117】
また、例えば予め目的地などは設定されていない状態であって、かつ、現在までに走行したことが無い走行経路であると判定される場合には、車両の走行開始直後の進行方向に近い方向ほど走行確率を高く設定して自車両の走行経路を予測し、この予測走行経路でのすべての走行区分毎の走行経路情報(例えば、走行経路の走行区分毎の加速エネルギー当量AAEEおよび平均車速Vcarおよび平均勾配Grade(+)および平均勾配Grade(−))を情報サーバから受信する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車速の時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両の走行開始から走行終了までの期間毎に対して単位距離当りの走行エネルギーと単位距離当りの加速エネルギー当量との対応関係を車速毎に示した試験結果のグラフ図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車速の時間変化に対する全計測時間Tと実走行時間TRとの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る平地での走行に対する走行エネルギーを構成する各エネルギーの成分を示すグラフ図である。
【図6】本発明の実施形態に係る加速エネルギー当量AAEEを補正(つまり、加速エネルギー当量AAEEによる寄与を除外)して得た単位距離当りの走行エネルギーと平均車速Vcarとの対応関係を示す試験結果のグラフ図である。
【図7】本発明の実施形態に係る他車両から車車間通信により取得した車速および勾配推定値の時系列データの例を示すグラフ図と、走行距離と標高との対応関係を示すマップとの例を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施形態に係る補正後走行エネルギーと平均勾配との対応関係を示す試験結果のグラフ図である。
【図9】本発明の実施形態に係るFI/MG/CVTECUの構成図である。
【図10】本発明の実施形態に係る自車傾向補正部の構成図である。
【図11】本発明の実施形態に係る平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上での車両の走行状態に応じた各種領域の例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上での加速エネルギー当量AAEEの比の分布図である。
【図13】本発明の実施形態に係る平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上での平均車速Vcarの比の分布図である。
【図14】本発明の実施形態に係る平均車速Vcarと加速エネルギー当量AAEEとの2次元座標上での区画の例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る平均車速Vcarの特徴値マップの一例を示す図である。
【図16】本発明の実施形態に係る加速エネルギー当量AAEEの特徴値マップの一例を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る走行区分を設定する処理を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施形態に係る情報サーバの動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施形態に係る自車傾向補正部の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施形態に係る走行エネルギー演算部およびEV上限出力値設定部の動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の実施形態の変形例に係るFI/MG/CVTECUの動作を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施形態の変形例に係る走行エネルギーにおける各エネルギー成分(車両の加速に係るエネルギーと、走行抵抗に係るエネルギーと、勾配に係るエネルギー)の割合の例を示す図である。
【図23】本発明の実施形態の変形例に係る平均車速Vcarつまり走行抵抗に係るエネルギーの割合を低減する処理を示すフローチャートである。
【図24】本発明の実施形態の変形例に係る加速エネルギー当量AAEE、つまり車両の加速に係るエネルギーの割合を低減する処理を示すフローチャートである。
【図25】本発明の実施形態の変形例に係るアクセルペダル開度と目標駆動力との対応関係の一例を示すグラフ図である。
【図26】本発明の実施形態の変形例に係る減速回生量と車速との対応関係の一例を示すグラフ図である。
【図27】本発明の実施形態の変形例に係る走行経路全体において走行エネルギーを最適化する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0119】
11 内燃機関(エンジン)
12 モータ
15 高圧バッテリ(蓄電装置)
16 FI/MG/CVTECU(情報取得手段、目標駆動力設定手段、報知制御手段)
25 ナビゲーション装置(走行予定経路設定手段)
61 記憶部(記憶手段)
62 自車傾向補正部(エネルギー算出手段)
63 走行エネルギー演算部(エネルギー算出手段)
64 EV上限出力値設定部(EV上限出力値設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、該モータに電力の授受を行う蓄電装置と、を備え、少なくとも前記エンジンまたは前記モータの何れか一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
車両の走行予定経路を設定する走行予定経路設定手段と、
前記走行予定経路に対応し、所定の条件に基づいて区分された走行区分において走行した車両の外部情報を取得する情報取得手段と、を備え、
前記情報取得手段は、前記走行区分において走行した車両の速度の変動量と、前記走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、前記走行区分における平均勾配とを含む前記外部情報を取得し、
前記外部情報と、それぞれの前記外部情報に対応する予め設定された自車両のパラメータとを用いて、前記走行区分における走行エネルギーを算出するエネルギー算出手段と、
前記走行エネルギーを用いて、前記走行区分における前記モータのみで走行可能となるEV上限出力値を設定するEV上限出力値設定手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記走行エネルギーは、前記走行区分を走行するのに必要な駆動エネルギーと、前記走行区分を走行したときに発生する減速エネルギーとで構成され、
前記エネルギー算出手段は、前記駆動エネルギーと前記減速エネルギーとを、それぞれ異なる前記パラメータを用いて算出することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記EV上限出力値設定手段は、前記駆動エネルギーまたは前記減速エネルギーが大きくなることに伴い前記EV上限出力値が増大傾向に変化するように設定することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記自車両が過去に前記走行区分を走行したときの前記速度の変動量及び前記平均速度をそれぞれ記憶する記憶手段を備え、
前記エネルギー算出手段は、前記走行予定経路における前記走行区分において前記情報取得手段によって取得した前記速度の変動量及び前記平均速度と、前記記憶手段により記憶された前記自車両が過去に走行した前記速度の変動量及び前記平均速度とから前記自車両の特徴値を算出し、該特徴値を用いて前記走行エネルギーを補正することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記情報取得手段は、さらに、現在から所定時間以内に前記走行予定経路における前記走行区分を過去に走行した車両の速度の変動量及び平均速度及び台数を取得し、
前記エネルギー算出手段は、前記情報取得手段から取得した現在から所定時間以内に前記走行予定経路における前記走行区分を走行した車両の前記速度の変動量及び前記平均速度及び台数とから補正値を算出し、該補正値を用いて前記走行エネルギーを補正することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記エネルギー算出手段は、前記走行予定経路における前記走行区分の前記走行エネルギーから、前記走行区分毎の前記蓄電装置の充電量及び放電量及び残容量を算出し、
前記EV上限出力値設定手段は、前記走行予定経路の前記充電量が前記放電量より大きい場合かつ、前記残容量が前記走行区分において所定の上下限値に達していない場合に、前記走行予定経路における前記走行区分のEV上限出力値を補正することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記平均勾配は、上り勾配と下り勾配とで、それぞれ異なる前記パラメータが設定されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
アクセルペダル開度に応じて目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段を備え、
該目標駆動力設定手段は、前記走行エネルギーのうち、前記速度の変動量および、前記平均速度および、前記平均勾配の要素において、それぞれが占める割合を算出し、該算出された各々の割合のうち、前記速度の変動量の割合が所定値を超えた場合に、前記アクセルペダル開度に対する前記目標駆動力の応答が小さくなるように変更することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記走行エネルギーのうち、前記速度の変動量および、前記平均速度および、前記平均勾配の要素がそれぞれが占める割合を算出し、該算出された各々の割合において、前記平均速度の割合が所定値を超えた場合に、運転者に対して、現在の前記走行区分における燃料消費量が小さくなるような速度を報知する報知制御手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記所定の条件は、少なくとも、交差点の有無、所定の距離が離れているか、所定の勾配変化のいずれか1つであることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項11】
前記情報取得手段は、外部に設置された外部情報蓄積サーバから前記外部情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項12】
前記情報取得手段は、自車両と他車両との間の車車間通信によって前記外部情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項13】
所定の走行区分の走行に係るエネルギーを演算する車両のエネルギー演算装置であって、
前記走行区分において走行した車両の外部情報を取得する情報取得手段を備え、
前記情報取得手段は、前記走行区分において走行した車両の速度の変動量と、前記走行区分において走行した車両の走行時における平均速度と、前記走行区分における平均勾配とを含む前記外部情報を取得し、取得した前記外部情報と、それぞれの前記外部情報に対応する予め設定された車両のパラメータとを用いて、下記数式(1)により、前記走行区分における走行エネルギーを算出するエネルギー算出手段を備え、
下記数式(1)において、走行エネルギーME、速度の変動量AAEE、平均速度Vcar、平均勾配(上り勾配)Grade(+)、平均勾配(下り勾配)Grade(−)、P1〜P6:パラメータに対して、
前記パラメータP1,P5,P6は車両重量の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化し、
前記パラメータP2,P3,P4は車両の走行に係る抵抗の増大に伴い絶対値が増大傾向に変化することを特徴とする車両のエネルギー演算装置。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−52652(P2010−52652A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221903(P2008−221903)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】