説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】 エンジン回転数の急上昇を伴うことなく大きな減速度を得ることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 駆動輪に駆動力を出力すると共に回生制動力を作用させるモータジェネレータと、目標車速を達成するように前記モータジェネレータの制駆動力を制御する自動走行制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記駆動輪に対して前記回生制動力を限界まで作用させたにも関わらず前記目標車速を上回った場合に下り勾配と判定する下り勾配走行判定手段と、下り勾配と判定した場合に前記モータジェネレータの回生制動力限界値を前記回生制動力が大きくなるように変更する限界値変更手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行制御システムを備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動走行制御装置として特許文献1が開示されている。この公報には、目標車速を設定し、この目標車速を維持するための制駆動力を制御する手段として、自動変速機の変速比を変更し、エンジンブレーキ力を制御している。
【特許文献1】特開平5−162565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術にあっては、急な下り勾配を走行する場合、大きな減速度を得るためにダウンシフトを行うため、エンジン回転数が急上昇し運転者に違和感を与えるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、エンジン回転数の急上昇を伴うことなく大きな減速度を得ることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明におけるハイブリッド車両の制御装置では、駆動輪に駆動力を出力すると共に回生制動力を作用させるモータジェネレータと、目標車速を達成するように前記モータジェネレータの制駆動力を制御する自動走行制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記駆動輪に対して前記回生制動力を限界まで作用させたにも関わらず前記目標車速を上回った場合に下り勾配と判定する下り勾配走行判定手段と、下り勾配と判定した場合に前記モータジェネレータの回生制動力限界値を前記回生制動力が大きくなるように変更する限界値変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
回生制動力を限界まで作用させ、それでも加速した場合に回生制動力限界値を変更することで、シフトダウンを行うことなく目標車速を維持することが可能となり、エンジン回転数上昇による違和感を運転者に与えることを防止することができる。また、勾配センサや前後加速度センサ等を用いることなく下り勾配を判定するため、コスト増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1のギア保護制御装置が適用されたハイブリッド車両の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、出力スプロケットOS、動力分割機構TM(特許請求の範囲に記載の変速機構に相当)と、を有する。
【0009】
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
【0010】
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、パワーコントロールユニット3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
【0011】
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を「回生」と呼ぶ)。
【0012】
前記動力分割機構TMは、サンギアSと、ピニオンPと、リングギアRと、ピニオンキャリアPCと、を有する単純遊星歯車により構成されている。そして、単純遊星歯車の3つの回転要素(サンギアS、リングギアR、ピニオンキャリアPC)に対する入出力部材の連結関係について説明する。前記サンギアSには、第1モータジェネレータMG1が連結されている。前記リングギアRには、第2モータジェネレータMG2と出力スプロケットOSとが連結されている。前記ピニオンキャリアPCには、エンジンダンパEDを介してエンジンEが連結されている。なお、前記出力スプロケットOSは、チェーンベルトCBや図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右前輪に連結されている。
【0013】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3(強電ユニット)と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
【0014】
前記統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第2モータジェネレータトルクセンサ27と、運転者の操作により目標車速を設定するクルーズコントロール操作スイッチ30から入力情報がもたらされる。なお、車速センサ8と第2モータジェネレータ回転数センサ11は、同じ動力分割機構TMの出力回転数を検出するもであるため、車速センサ8を省略し、第2モータジェネレータ回転数センサ11からのセンサ信号を車速信号として用いても良い。
【0015】
前記ブレーキコントローラ5には、前左車輪速センサ12と、前右車輪速センサ13と、後左車輪速センサ14と、後右車輪速センサ15と、操舵角センサ16と、マスタシリンダ圧センサ17と、ブレーキストロークセンサ18と、横加速度センサ28と、から入力情報がもたらされる。
【0016】
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
【0017】
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をパワーコントロールユニット3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報を用いる。
【0018】
前記パワーコントロールユニット3は、より少ない電流で両モータジェネレータMG1,MG2への電力供給が可能な電源系高電圧による強電ユニットを構成するもので、ジョイントボックスと、昇圧コンバータと、駆動モータ用インバータと、発電ジェネレータ用インバータと、コンデンサと、を有する。前記第2モータジェネレータMG2のステータコイルには、駆動モータ用インバータが接続される。前記第1モータジェネレータMG1のステータコイルには、発電ジェネレータ用インバータが接続される。また、前記ジョイントボックスには、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続される。
【0019】
前記ブレーキコントローラ5は、低μ路制動時や急制動時等において、4輪のブレーキ液圧を独立に制御するブレーキ液圧ユニット19への制御指令によりABS制御を行い、また、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時、統合コントローラ6への制御指令とブレーキ液圧ユニット19への制御指令を出すことで回生ブレーキ協調制御を行う。
【0020】
このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報が入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、前記ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。
【0021】
前記統合コントローラ6は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担う。具体的には、加速走行時等において、エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジン動作点制御を行う。また、停止時や走行時や制動時等において、モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータ動作点制御を行う。また、クルーズコントロール演算部300が備えられ、クルーズコントロール操作スイッチ30により設定された目標車速となるように要求トルクを算出し、指令トルク演算部600を介してエンジンコントローラ1及びモータコントローラ2へ制御指令を出力する。
【0022】
この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
【0023】
次に、車両モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車両での車両モードとしては、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
【0024】
「停車モード」では、エンジンEと第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は止まっている。「発進モード」では、モータジェネレータMG2のみの駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、エンジンスタータとしての機能を持つ第1モータジェネレータMG1によって、サンギアSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータジェネレータMG2の駆動力を加え、加速する。
【0025】
なお、後退走行は、「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、第1モータジェネレータMG1の回転数を上げると、モータジェネレータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
【0026】
始動時は、イグニッションキーを回すとエンジンEが始動し、エンジンEを暖機した後、直ぐにエンジンEは停止する。発進時や軽負荷時は、発進時やごく低速で走行する緩やかな坂を下るときなどは、エンジン効率の悪い領域は燃料をカットし、エンジンは停止して第2モータジェネレータMG2により走行する。
【0027】
通常走行時は、エンジンEの駆動力は、動力分割機構TMにより一方は車輪を直接駆動し、他方は第1モータジェネレータMG1を駆動し、第2モータジェネレータMG2をアシストする。全開加速時は、バッテリ4からパワーが供給され、さらに、駆動力を追加する。
【0028】
減速時や制動時には、車輪が第2モータジェネレータMG2を駆動し、発電機として作用することで回生発電を行う。回収した電気エネルギはバッテリ4に蓄えられる。バッテリ4の充電量が少なくなると、第1モータジェネレータMG1をエンジンEにより駆動し、充電を開始する。車両停止時には、エアコン使用時やバッテリ充電時等を除き、エンジンEを自動的に停止する。
【0029】
図2は統合コントローラ6内の制御構成を表すブロック図である。統合コントローラ6内には、アクセル開度AP及び車速VSPに基づいて動力源であるエンジンEと各モータジェネレータMG1,MG2に対する指令トルクを演算する指令トルク演算部600と、クルーズコントロール操作スイッチ30によって設定された目標車速の達成に必要な駆動力もしくは制動力を表す要求トルクを演算するクルーズコントロール演算部300と、下り勾配を判定し、下り勾配のときは回生制動力の限界値補正演算を行う下り勾配時回生制動力限界値補正演算部301から構成されている。
【0030】
指令トルク演算部600には、アクセル開度に基づいて要求トルクを演算する要求トルク演算部601と、現在の変速比において各モータジェネレータMG1,MG2の回転速度を変更せずに回生トルクによって得られる回生制動力限界値を演算する回生制動力限界値演算部602が設けられている。
【0031】
クルーズコントロール演算部300は、クルーズコントロール操作スイッチ30によって設定された目標車速と現在の車速との偏差に基づいて要求トルクを算出する車速追従フィードバック制御を実行する。クルーズコントロールスイッチ30が操作されると、指令トルク演算部600において、クルーズコントロール演算部300において車速追従フィードバック制御により算出された要求トルクが、要求トルク演算部601においてアクセル開度AP等に基づいて演算された要求トルクと置き換えられる。指令トルク演算部600では、この置き換えられた要求トルクに基づいてモータコントローラ2及びエンジンコントローラ1に指令信号が出力される。
【0032】
次に、実施例1の下り勾配時における回生制動力限界値補正制御処理について説明する。図3は回生制動力限界値補正制御処理を表すフローチャートである。尚、本制御は、クルーズコントロールが実行される際に行われる処理であり、フローチャート中の要求トルクは、クルーズコントロール演算部300において演算された要求トルクである。
【0033】
ステップ101では、入力処理として、車速センサ8から車速信号VSPを読み込み、指令トルク演算部600から回生制動力限界値、要求トルク(駆動力、制動力)を読み込む。
【0034】
ステップ102では、回生制動力限界判定を行う。具体的には、要求トルク≦回生制動力限界値か否かを判定し、要求トルク>回生制動力限界値のときはステップ104に進み回生制動力に余裕があると判定する。一方、要求トルク≦回生制動力限界値のときはステップ105に進み、既に回生制動力が限界に到達していると判定する。
【0035】
ステップ105では、回生制動力が限界に到達しているか否かを判定し、限界に到達しているときは特に目標車速の更新は行わず目標車速として前回値を保持する。一方、回生制動力に余裕があると判定したときはステップ107へ進み、回生制動時目標車速として現在の車速を代入する。
【0036】
ステップ106では、現在の車速と目標車速との車速偏差を算出する。尚、回生制動時に余裕があると判定されているときは車速偏差は0となる。
【0037】
ステップ108では、回生制動力が限界に到達し、かつ、車速偏差が正か否かを判定する。車速偏差が正とは、現在車速が目標車速よりも高いことを意味している。よって、このステップでは、回生制動力を限界まで作用させているにもかかわらず車両が加速している状態を判定している。条件を満たしたときは、ステップ109において下り勾配を走行していると判定する。一方、条件を満たしていないときは、ステップ110において平坦路を走行していると判定する。
【0038】
ステップ111では、回生制動力拡大実行許可判断を行う。具体的には、現在の回生制動力限界値が各モータジェネレータMG1,MG2の定格下限に到達しているか否かを判定し、到達していないときは拡大を許可し、到達しているときは拡大を禁止する。
【0039】
ステップ112では、回生制動力拡大補正量を車速偏差に応じて設定する。具体的には、車速偏差が大きいときほど補正量を大きく設定する。
【0040】
ステップ113では、回生制動力拡大量をクリアし、補正量を0として設定する。これ以上の補正は定格下限を下回る可能性があり、異常の原因となるおそれがあるからである。
【0041】
ステップ114では、要求トルクを設定する。具体的には、回生制動力限界値に回生制動力拡大補正量を加算した値を要求トルクとして設定する。
【0042】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。まず、クルーズコントロールが実行されている場合、クルーズコントロール演算部300において要求トルクが演算され、この要求トルクを達成すべく指令トルク演算部600においてエンジンE、各モータジェネレータMG1,MG2の動作点制御指令が出力される。
【0043】
このとき、回生制動力が既に回生制動力限界値に到達しているか否かを判定し、到達していないときは、必要に応じて更に回生制動力を上昇させればよいため問題はない。そこで、目標車速を現在車速として代入し、車速偏差が0と演算されるように設定する。これにより、不要に回生制動力限界値を補正することがない。
【0044】
一方、回生制動力が回生制動力限界値に到達していると、これ以上の回生制動力は得られないため、要求トルクが更なる減速を求めたとしても所望の減速を達成することができない。この場合は、各モータジェネレータMG1,MG2の定格下限の範囲内で回生制動力限界値の補正を行う。
【0045】
このとき、補正量は車速偏差に応じた補正量に設定される。すなわち、現在の車速が目標車速よりも大幅に高いときには大きな減速度が必要であり、言い換えると、更に大きな回生制動力が必要となる。一方、現在の車速が目標車速よりも若干高いときにはさほど大きな減速度は必要でなく、言い換えると、さほど大きな回生制動力は必要としない。
【0046】
そこで、車速偏差に応じて補正量を設定し、回生制動力限界値にこの回生制動力拡大補正量を加算した値を要求トルクとして設定する。これにより、この要求トルクに応じた指令トルクが演算され、所望の減速を得ることができる。
【0047】
以上説明したように、実施例1では下記に列挙する作用効果を得ることができる。
【0048】
(1)駆動輪に対して回生制動力を限界まで作用させたにも関わらず目標車速を上回った場合に下り勾配と判定し、各モータジェネレータMG1,MG2の回生制動力限界値を回生制動力が大きくなるように変更した。
【0049】
よって、回生制動力を限界まで作用させ、それでも加速した場合に回生制動力限界値を変更することで、シフトダウンを行うことなく目標車速を維持することが可能となり、エンジン回転数上昇による違和感を運転者に与えることを防止することができる。また、勾配センサや前後加速度センサ等を用いることなく下り勾配を判定するため、コスト増大を抑制することができる。
【0050】
(2)駆動輪とモータジェネレータとの間に変速機構である動力分割機構TMを有し、この動力分割機構TMの変速比を一定として回生制動力限界値尾変更した。よって、エンジン回転数が上昇することがなく、運転者に与える違和感を防止することができる。
【0051】
(3)変更後の回生制動力限界値を目標車速と現在の車速との偏差に基づいて設定することとした。
【0052】
よって、必要な量だけ回生量を変化させることができる。また、車速偏差が負のときには目標車速を現在の車速に代入することで回生制動力限界値を補正することがなく、不要な変更を回避することができる。
【0053】
以上、実施例1について説明したが、例えば、回生制動力限界値を変更するだけでなく、バッテリの充電限界値を充電量が大きくなるように変更するように構成してもよい。すなわち、バッテリには充電限界が設定されており、所定の充電量に到達したときはバッテリの耐久性等の観点からこれ以上の充電は行わないようにしている。このとき、下り勾配を走行時に所定の制動力を確保する観点からバッテリの充電限界値を一時的に変更することで十分な制動力を確保することができる。
【0054】
また、実施例1では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータと動力分割機構を備えた前輪駆動によるハイブリッド車両への適用例を示したが、駆動輪に対してモータジェネレータ連結されたハイブリッド車両であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラにて実行される制御構成を表すブロック図である。
【図3】実施例1の統合コントローラにて実行される回生制動力限界値補正制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ(発電用モータ)
MG2 第2モータジェネレータ(駆動用モータ)
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構(遊星ギア機構)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
27 第2モータジェネレータトルクセンサ
28 横加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に駆動力を出力すると共に回生制動力を作用させるモータジェネレータと、
目標車速を達成するように前記モータジェネレータの制駆動力を制御する自動走行制御手段と、
を備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記駆動輪に対して前記回生制動力を限界まで作用させたにも関わらず前記目標車速を上回った場合に下り勾配と判定する下り勾配走行判定手段と、
下り勾配と判定した場合に前記モータジェネレータの回生制動力限界値を前記回生制動力が大きくなるように変更する限界値変更手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記駆動輪と前記モータジェネレータとの間に変速機構を有し、
前記限界値変更手段は、前記変速機構の変速比を一定とすることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記限界値変更手段は、変更後の前記限界値を前記目標車速と現在の車速との偏差に基づいて設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記限界値変更手段は、バッテリの充電限界値を充電量が大きくなるように変更することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24010(P2008−24010A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194977(P2006−194977)
【出願日】平成18年7月15日(2006.7.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】