説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させ、燃費を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置10は、運転者によるブレーキペダルおよびアクセルペダルの踏み込み操作が無く、エンジンブレーキによる自車両の減速状態での燃料供給の停止時には、電動機Mの運転状態(つまり、回生量および駆動量)を変更することで、自車両の実減速度が目標減速度G_reqに一致するように、または、先行車両に対する車間距離が目標車間距離DIST_reqに一致するようにして、単独減速制御または追従減速制御を実行し、単独減速制御または追従減速制御の実行時に運転者によるブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作が有る場合には、単独減速制御または追従減速制御の実行を停止して、目標減速度G_reqまたは目標車間距離DIST_reqを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば先行車両に対して所定の車間距離を維持して追従するクルーズ走行時に、先行車両の減速に対する自車両の減速特性を運転者の入力操作により切換可能な制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−291685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る制御装置においては、自車両の減速特性を切り換えるために運転者による操作スイッチの操作が必要とされ、煩雑な手間が掛かるという問題が生じる。
しかも、クルーズ走行時に限らず通常走行時であっても、運転者による操作スイッチの操作が無い場合には、自車両の減速挙動に運転者の意思が反映されないことから、減速時に運転者による過剰なブレーキ操作や不要なアクセル操作が行われてしまう虞があり、燃費を向上させることが困難となる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させ、燃費を向上させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、車両の駆動力を発生する駆動源として、内燃機関および電動機を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、自車両の速度を検出する車速検出手段(例えば、実施の形態での車速センサ31)と、自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段(例えば、実施の形態での車間距離センサ33)と、運転者によるブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段(例えば、実施の形態でのブレーキペダルセンサ34)と、運転者によるアクセル操作を検出するアクセル操作検出手段(例えば、実施の形態でのアクセルペダルセンサ32)と、自車両の減速走行時に前記内燃機関への燃料供給を停止する減速時燃料供給停止手段(例えば、実施の形態でのFIECU21)と、前記車速検出手段により検出された速度に基づき自車両の目標減速度を設定し、自車両の実減速度が前記目標減速度に一致するように前記電動機の運転状態を制御する単独減速制御、または、前記車速検出手段により検出された速度に基づき自車両と先行車両との目標車間距離を設定し、前記車間距離検出手段により検出される車間距離が前記目標車間距離に一致するように前記電動機の運転状態を制御する追従減速制御を実行する実行手段(例えば、実施の形態でのFIECU21が兼ねる)とを備え、前記実行手段は、前記減速時燃料供給停止手段による燃料供給の停止時において前記ブレーキ操作検出手段および前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作および前記アクセル操作が無いことが検出された場合に、前記車間距離検出手段により検出された車間距離に基づき前記単独減速制御または前記追従減速制御を実行する。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、前記実行手段による前記単独減速制御の実行時において前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作または前記アクセル操作が有ることが検出された場合に、前記実行手段による前記単独減速制御の実行を停止して、前記単独減速制御において設定される前記目標減速度を補正する補正手段(例えば、実施の形態でのステップS18、ステップS24)を備える。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記実行手段による前記追従減速制御の実行時において前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作または前記アクセル操作が有ることが検出された場合に、前記実行手段による前記追従減速制御の実行を停止して、前記追従減速制御において設定される前記目標車間距離を補正する補正手段(例えば、実施の形態でのステップS16、ステップS22)を備える。
【0008】
さらに、本発明の第4態様に係るハイブリッド車両の制御装置は、前記補正手段は、前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により検出された前記ブレーキ操作または前記アクセル操作の操作状態と、前記車速検出手段により検出される速度とに基づき、前記目標減速度を補正する。
【0009】
さらに、本発明の第5態様に係るハイブリッド車両の制御装置では、前記補正手段は、前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により検出された前記ブレーキ操作または前記アクセル操作の操作状態と、前記車速検出手段により検出される速度とに基づき、前記目標車間距離を補正する。
【発明の効果】
【0010】
第1態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、自車両の減速状態での燃料供給の停止時に運転者によるブレーキ操作およびアクセル操作が無い場合には、電動機の運転状態を変更することで、自車両の実減速度が目標減速度に一致するように、または、先行車両に対する車間距離が目標車間距離に一致するようにして、単独減速制御または追従減速制御を実行することから、燃料供給の停止状態が解除されることを防止して燃費を向上させつつ、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0011】
さらに、第2態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、単独減速制御の実行時に運転者によるブレーキ操作およびアクセル操作が有る場合には、運転者の減速意思と単独減速制御による車両の減速挙動との間に乖離が生じていると判断して、単独減速制御の実行を停止して目標減速度を補正することから、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0012】
さらに、第3態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、追従減速制御の実行時に運転者によるブレーキ操作およびアクセル操作が有る場合には、運転者の減速意思と追従減速制御による車両の減速挙動との間に乖離が生じていると判断して、追従減速制御の実行を停止して目標車間距離を補正することから、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0013】
さらに、第4態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、運転者によるブレーキ操作およびアクセル操作の操作状態と、自車両の速度とに基づき、目標減速度を補正することから、運転者の減速意思に応じた適切な目標減速度を設定することができる。
【0014】
さらに、第5態様に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、運転者によるブレーキ操作およびアクセル操作の操作状態と、自車両の速度とに基づき、目標車間距離を補正することから、運転者の減速意思に応じた適切な目標車間距離を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
この実施形態によるハイブリッド車両の制御装置10は、例えば図1に示すように、駆動源として内燃機関Eおよび電動機Mを搭載したハイブリッド車両1を制御するものであって、例えば処理装置11と、DBW(Drive By Wire)ドライバ12と、DBW13とを備えている。
このハイブリッド車両1において内燃機関Eの吸気系は吸入空気量を調整するスロットル弁(図示略)を備え、このスロットル弁の弁開度(スロットル開度)は、DBWドライバ12およびDBW13を介して、処理装置11により電子制御される。
【0016】
例えば、DBW13はスロットル弁を開閉駆動する電磁アクチュエータ(図示略)を備え、処理装置11は、スロットル弁のスロットル開度に対する指令(TH開度指令)をDBWドライバ12に出力し、DBWドライバ12はTH開度指令に応じてスロットル弁を開閉駆動するための制御電流をDBW13に出力し、DBW13は電磁アクチュエータの駆動によりTH開度指令に応じたスロットル開度となるようにスロットル弁を開閉駆動する。
また、DBW13は、スロットル弁のスロットル開度を検出するセンサ(図示略)を備え、このセンサの出力値(TH開度検出値)をDBWドライバ12に出力し、DBWドライバ12は、TH開度検出値に基づき、TH開度指令に対応した実際のスロットル開度(実TH開度)を算出し、この実TH開度を処理装置11に出力する。
【0017】
このハイブリッド車両1は、例えば内燃機関Eと、電動機Mと、トランスミッションTとを直列に直結したパラレル型のハイブリッド車両であり、内燃機関Eおよび電動機Mの両方の駆動力は、トランスミッションTを介して駆動輪Wに伝達される。また、ハイブリッド車両1の減速時に駆動輪W側から電動機M側に駆動力が伝達されると、電動機Mは発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。さらに、ハイブリッド車両1の運転状態に応じて、電動機Mは内燃機関Eの出力によって発電機として駆動され、発電エネルギーを発生するようになっている。
【0018】
電動機Mは、例えば3相(U相、V相、W相)のDCブラシレスモータ等とされ、この電動機Mの駆動および発電を制御するパワードライブユニット(PDU)14に接続されている。
パワードライブユニット14は、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備えて構成されている。
【0019】
パワードライブユニット14には、電動機Mと電力の授受を行う高圧バッテリ15が接続されている。
そして、パワードライブユニット14は、処理装置11からの制御指令を受けて電動機Mの駆動および発電を制御する。例えば電動機Mの駆動時には、処理装置11から出力されるトルク指令に基づき、高圧バッテリ15から出力される直流電力を3相交流電力に変換して電動機Mへ供給する。一方、電動機Mの発電時には、電動機Mから出力される3相交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ15を充電する。
【0020】
このパワードライブユニット14の電力変換動作は、処理装置11からPWMインバータのブリッジ回路を構成する各トランジスタのゲートに入力されるパルス、つまりパルス幅変調(PWM)により各トランジスタをオン/オフ駆動させるためのパルスに応じて制御され、このパルスのデューティ、つまりオン/オフの比率のマップ(データ)は予め処理装置11に記憶されている。
【0021】
また、各種補機類からなる電気負荷を駆動するための12Vバッテリ16は、DC−DCコンバータ17を介して、パワードライブユニット14および高圧バッテリ15に対して並列に接続されている。
処理装置11により電力変換動作が制御されるDC−DCコンバータ17は、例えば双方向のDC−DCコンバータであって、高圧バッテリ15の端子間電圧、あるいは、電動機Mを回生作動または昇圧駆動した際のパワードライブユニット14の端子間電圧を、所定の電圧値まで降圧して12Vバッテリ16を充電すると共に、高圧バッテリ15の残容量(SOC:State Of Charge)が低下している場合には、12Vバッテリ16の端子間電圧を昇圧して高圧バッテリ15を充電可能である。
【0022】
そして、処理装置11は、内燃機関Eの吸気系での吸入空気量に加えて、例えば燃料供給や点火タイミング等を制御するFIECU21と、例えば各種のマップ等を記憶する記憶部22と、パワードライブユニット14の電力変換動作を制御するMOTECU23と、例えば電流積算法等により高圧バッテリ15の残容量SOCを検知すると共にDC−DCコンバータ17の電力変換動作を制御するBATECU24とを備えて構成され、各ECU21,23,24は、例えば所定の車両制御用ネットワークからなる通信システム18によって通信接続されている。
なお、FIECU21は、例えば車速VPが所定下限車速VPLよりも速く、かつ、所定上限車速VPH未満である走行状態において、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作が無く、かつ、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作が無い場合に、内燃機関Eへの燃料供給を停止する。
【0023】
この処理装置11には、例えば自車両の従動輪の車輪速に基づき自車両の速度(車速)VPを検出する車速センサ31から出力される検出信号と、自車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作(つまり、踏み込み操作の有無および踏み込み量)に係るアクセルペダル開度APを検出するアクセルペダルセンサ32から出力される検出信号と、例えばレーザ光やミリ波等の電磁波によるレーダ装置等を具備する車間距離センサ33から出力される自車両の進行方向前方に存在する先行車両と自車両との車間距離DISTの検出信号と、自車両の運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作(つまり、踏み込み操作の有無および踏み込み量)を検出するブレーキペダルセンサ34から出力される検出信号とが入力されている。
【0024】
この実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置10は上記構成を備えており、次に、このハイブリッド車両の制御装置10の動作について説明する。
【0025】
先ず、例えば図2に示すステップS01においては、車速センサ31により検出される車速VPを取得する。
そして、ステップS02においては、車速VPが、所定下限車速VPLよりも速く、かつ、所定上限車速VPH未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
【0026】
そして、ステップS03においては、自車両の運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作が有ることを示すブレーキスイッチフラグF_BKSWのフラグ値が「0」であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS20に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
そして、ステップS04においては、自車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作が無いことを示すアクセルペダル操作フラグF_AP_OPENのフラグ値が「0」であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS13に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合、つまりエンジンブレーキによる自車両の減速状態であって、FIECU21により内燃機関Eへの燃料供給が停止される状態には、ステップS05に進む。
【0027】
そして、ステップS05においては、車速VPに応じて持ち替える追従減速モード判定閾値DIST0を、例えば所定マップに対するマップ検索等により取得する。
そして、ステップS06においては、車間距離センサ33により検出される車間距離DISTが追従減速モード判定閾値DIST0よりも長いか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS10に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
なお、この所定マップは、車速VPと追従減速モード判定閾値DIST0との対応関係を示すマップであり、例えば車速VPが増大することに伴い、追従減速モード判定閾値DIST0が増大傾向に変化するように設定されている。
【0028】
そして、ステップS07においては、先行車両に拘らずに単独で減速を行う単独減速制御の実行を示すフラグF_単独減速モードのフラグ値に「1」を設定する。
そして、ステップS08においては、車速VPに基づく所定の車速−減速度マップに対するマップ検索により、目標減速度G_reqを取得する。
そして、ステップS09においては、自車両の減速度が目標減速度G_reqに一致するようにして、電動機Mの回生量を制御することで車速VPを変化させ、一連の処理を終了する。
【0029】
また、ステップS10においては、先行車両に追従しつつ減速を行う追従減速制御の実行を示すフラグF_追従減速モードのフラグ値に「1」を設定する。
そして、ステップS11においては、車速VPに基づく所定の車速−車間距離マップに対するマップ検索により、目標車間距離DIST_reqを取得する。
そして、ステップS09においては、車間距離が目標車間距離DIST_reqに一致するようにして、電動機Mの回生量および駆動量を制御することで車速VPを変化させ、一連の処理を終了する。
【0030】
また、ステップS13においては、前回の処理にてアクセルペダルセンサ32により検出されたアクセルペダル開度APがゼロであるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
そして、ステップS14においては、前回の処理から今回の処理におけるアクセルペダル開度APの増大量ΔAPが所定値ΔAP1未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合、つまり急加速の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、例えば図3に示すステップS15に進む。
【0031】
そして、ステップS15においては、フラグF_単独減速モードのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS16に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS18に進む。
ステップS16においては、所定の車速−車間距離マップの特性を車速センサ31により検出された車速VPおよび車間距離センサ33により検出された車間距離DISTに基づきマイナス側に補正する。
つまり、例えば図4に示すように、車速−車間距離マップにおいて、車速がゼロに向かい減少することに伴い、減少傾向に変化する目標車間距離に対し、目標車間距離の減少度合いがより大きくなるようにして、例えば図4に示す補正前目標車間距離から補正後目標車間距離へと、補正を行う。
そして、ステップS17においては、フラグF_追従減速モードのフラグ値に「0」を設定し、一連の処理を終了する。
【0032】
また、ステップS18においては、所定の車速−減速度マップの特性を車速センサ31により検出された車速VPおよび車速VPの変化に応じた減速度に基づきマイナス側に補正する。
つまり、例えば図5に示すように、車速−減速度マップにおいて、車速がゼロに向かい減少することに伴い、減少傾向に変化する目標減速度に対し、目標減速度の減少度合いがより大きくなるようにして、例えば図5に示す補正前目標減速度から補正後目標減速度へと、補正を行う。
そして、ステップS19においては、フラグF_単独減速モードのフラグ値に「0」を設定し、一連の処理を終了する。
【0033】
また、例えば図2に示すステップS20においては、前回の処理から今回の処理におけるブレーキペダルの踏み込み操作の増大量ΔBKが所定値ΔBK1未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合、つまり急減速の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、例えば図6に示すステップS21に進む。
【0034】
そして、ステップS21においては、フラグF_単独減速モードのフラグ値が「1」であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS22に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS24に進む。
ステップS22においては、所定の車速−車間距離マップの特性を車速センサ31により検出された車速VPおよび車間距離センサ33により検出された車間距離DISTに基づきプラス側に補正する。
つまり、車速−車間距離マップにおいて、車速がゼロに向かい減少することに伴い、減少傾向に変化する目標車間距離に対し、目標車間距離の減少度合いがより小さくなるようにして、補正を行う。
そして、ステップS23においては、フラグF_追従減速モードのフラグ値に「0」を設定し、一連の処理を終了する。
【0035】
また、ステップS24においては、所定の車速−減速度マップの特性を車速センサ31により検出された車速VPおよび車速VPの変化に応じた減速度に基づきプラス側に補正する。
つまり、車速−減速度マップにおいて、車速がゼロに向かい減少することに伴い、減少傾向に変化する目標減速度に対し、目標減速度の減少度合いがより小さくなるようにして、補正を行う。
そして、ステップS25においては、フラグF_単独減速モードのフラグ値に「0」を設定し、一連の処理を終了する。
【0036】
上述したように、本実施の形態によるハイブリッド車両の制御装置10によれば、運転者によるブレーキペダルおよびアクセルペダルの踏み込み操作が無く、エンジンブレーキによる自車両の減速状態での燃料供給の停止時には、電動機Mの運転状態(つまり、回生量および駆動量)を変更することで、自車両の実減速度が目標減速度G_reqに一致するように、または、先行車両に対する車間距離が目標車間距離DIST_reqに一致するようにして、単独減速制御または追従減速制御を実行することから、燃料供給の停止状態が解除されることを防止して燃費を向上させつつ、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0037】
さらに、単独減速制御の実行時に運転者によるブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作が有る場合には、運転者の減速意思と単独減速制御による車両の減速挙動との間に乖離が生じていると判断して、単独減速制御の実行を停止して目標減速度G_reqを補正することから、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0038】
さらに、追従減速制御の実行時に運転者によるブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作が有る場合には、運転者の減速意思と追従減速制御による車両の減速挙動との間に乖離が生じていると判断して、追従減速制御の実行を停止して目標車間距離DIST_reqを補正することから、自車両の減速挙動に運転者の減速意思を適切に反映させることができる。
【0039】
しかも、目標減速度G_reqおよび目標車間距離DIST_reqは、運転者によるブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作の操作状態と、車速VPとに基づき補正されることから、運転者の減速意思に応じた適切な補正を行うことができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態において、内燃機関Eの吸気系は吸入空気量を調整するスロットル弁を備えるとしたが、これに限定されず、例えばスロットル弁を省略し、吸気弁のリフト量を変更可能な可変機構を備え、吸気弁のリフト量を、DBWドライバ12およびDBW13を介して、処理装置11により電子制御することで、吸入空気量を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る目標車間距離と車速との対応関係の一例を示すグラフ図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る目標減速度と車速との対応関係の一例を示すグラフ図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
10 ハイブリッド車両の制御装置
21 FIECU(実行手段、減速時燃料供給停止手段)
31 車速センサ(車速検出手段)
32 アクセルペダルセンサ(アクセル操作検出手段)
33 車間距離センサ(車間距離検出手段)
34 ブレーキペダルセンサ(ブレーキ操作検出手段)
ステップS16、ステップS22 補正手段
ステップS18、ステップS24 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を発生する駆動源として、内燃機関および電動機を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
自車両の速度を検出する車速検出手段と、
自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
運転者によるブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
運転者によるアクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
自車両の減速走行時に前記内燃機関への燃料供給を停止する減速時燃料供給停止手段と、
前記車速検出手段により検出された速度に基づき自車両の目標減速度を設定し、自車両の実減速度が前記目標減速度に一致するように前記電動機の運転状態を制御する単独減速制御、または、前記車速検出手段により検出された速度に基づき自車両と先行車両との目標車間距離を設定し、前記車間距離検出手段により検出される車間距離が前記目標車間距離に一致するように前記電動機の運転状態を制御する追従減速制御を実行する実行手段とを備え、
前記実行手段は、前記減速時燃料供給停止手段による燃料供給の停止時において前記ブレーキ操作検出手段および前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作および前記アクセル操作が無いことが検出された場合に、前記車間距離検出手段により検出された車間距離に基づき前記単独減速制御または前記追従減速制御を実行することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記実行手段による前記単独減速制御の実行時において前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作または前記アクセル操作が有ることが検出された場合に、前記実行手段による前記単独減速制御の実行を停止して、前記単独減速制御において設定される前記目標減速度を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記実行手段による前記追従減速制御の実行時において前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により前記ブレーキ操作または前記アクセル操作が有ることが検出された場合に、前記実行手段による前記追従減速制御の実行を停止して、前記追従減速制御において設定される前記目標車間距離を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により検出された前記ブレーキ操作または前記アクセル操作の操作状態と、前記車速検出手段により検出される速度とに基づき、前記目標減速度を補正することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記ブレーキ操作検出手段または前記アクセル操作検出手段により検出された前記ブレーキ操作または前記アクセル操作の操作状態と、前記車速検出手段により検出される速度とに基づき、前記目標車間距離を補正することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−90734(P2009−90734A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261172(P2007−261172)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】