説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】 バッテリSOCの高低に関わらず、MWSC走行モードからWSC走行モードへ移行することができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 モータスリップ走行制御とエンジン使用スリップ走行制御とを切り換えるときに、目標駆動トルクが大きいほど、モータジェネレータの回転数上昇の変化率を高く設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報では、MWSC走行モードからWSC走行モードへ移行するときに、第2クラッチ伝達トルク容量を増加させるとともに、モータジェネレータ回転数をエンジンアイドル回転数まで上昇させて第1クラッチを完全締結させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、MWSC走行モードからWSC走行モードに移行するとき、第2クラッチ伝達トルク容量をバッテリSOCを考慮することなく上昇させている。しかしながら、バッテリSOCが低いときにはモータジェネレータの出力トルクは制限されるため、モータジェネレータの上限出力トルクに対して、第2クラッチ伝達トルク容量が大きすぎると第2クラッチをスリップ制御させた状態を維持することができず、MWSC走行モードからWSC走行モードへ移行することができないおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、バッテリSOCの高低に関わらず、MWSC走行モードからWSC走行モードへ移行することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、モータスリップ走行制御とエンジン使用スリップ走行制御とを切り換えるときに、目標駆動トルクが大きいほど、モータジェネレータの回転数上昇の変化率を高く設定するようにした。
【発明の効果】
【0006】
よって、バッテリSOCの高低に関わらず、MWSC走行モードからWSC走行モードへ移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラの制御ブロック図である。
【図3】実施例1の目標駆動トルクマップである。
【図4】実施例1のモードマップ選択部の選択ロジックを表す概略図である。
【図5】実施例1の通常モードマップである。
【図6】実施例1のMWSCモードマップである。
【図7】実施例1の目標充放電量マップである。
【図8】実施例1のWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図である。
【図9】実施例1のWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
【図10】実施例1のエンジン回転数マップである。
【図11】実施例1の走行モード切り換え処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例1のMWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施例1の目標第2クラッチ伝達トルク容量を算出する目標第2クラッチ伝達トルク容量算出部の制御ブロック図である。
【図14】実施例1のオフセットトルクマップである。
【図15】実施例1の目標モータジェネレータ回転数変化率マップである。
【図16】実施例1の各要素のタイムチャートである。
【図17】実施例1の各要素のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
〔駆動系構成〕
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1の後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0009】
実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0010】
エンジンEは、例えばガソリンエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。尚、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
【0011】
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されたクラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
【0012】
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。尚、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
【0013】
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装されたクラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
【0014】
自動変速機ATは、前進5速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。尚、詳細については後述する。
【0015】
そして、自動変速機ATの出力軸は、車両駆動軸としてのプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。尚、前記第1クラッチCL1と第2クラッチCL2には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いている。
【0016】
このハイブリッド駆動系には、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて3つの走行モードを有する。第1走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と略称する。)である。第2走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と略称する。)である。第3走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成可能なモードである。尚、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を締結し、モータジェネレータMGのトルクを用いてエンジン始動を行う。
【0017】
また、路面勾配が所定値以上における上り坂等で、運転者がアクセルペダルを調整し車両停止状態を維持するアクセルヒルホールドが行われるような場合、WSC走行モードでは、第2クラッチCL2のスリップ量が過多の状態が継続されるおそれがある。エンジンEをアイドル回転数より小さくすることができないからである。そこで、実施例1では、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、モータジェネレータMGを作動させつつ第2クラッチCL2をスリップ制御させ、モータジェネレータMGを動力源として走行するモータスリップ走行モード(以下、「MWSC走行モード」と略称する)を備える。尚、詳細については後述する。
【0018】
上記「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有する。
【0019】
「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
【0020】
定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる。また、減速運転時は、制動エネルギを回生してモータジェネレータMGにより発電し、バッテリ4の充電のために使用する。
【0021】
また、更なるモードとして、車両停止時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる発電モードを有する。
【0022】
〔制御系構成〕
次に、ハイブリッド車両の制御系構成を説明する。実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。尚、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いの情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0023】
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne:エンジン回転数,Te:エンジントルク)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。更に詳細なエンジン制御内容については後述する。尚、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0024】
モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm:モータジェネレータ回転数,Tm:モータジェネレータトルク)を制御する指令をインバータ3へ出力する。尚、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態を表すバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0025】
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。尚、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0026】
ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18と運転者の操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチからのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。尚、アクセルペダル開度APOと車速VSPとインヒビタスイッチの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0027】
ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(摩擦ブレーキによる制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
【0028】
統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23と、ブレーキ油圧センサ24と、第2クラッチCL2の温度を検知する温度センサ10aと、前後加速度を検出する前後加速度センサ10bからの情報およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。
【0029】
また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ1への制御指令によるエンジンEの動作制御と、モータコントローラ2への制御指令によるモータジェネレータMGの動作制御と、第1クラッチコントローラ5への制御指令による第1クラッチCL1の締結・開放制御と、ATコントローラ7への制御指令による第2クラッチCL2の締結・開放制御と、を行う。
【0030】
〔統合コントローラの構成〕
図2は統合コントローラ10の制御ブロック図である。以下に、図2を用いて、実施例1の統合コントローラ10にて演算される制御を説明する。例えば、この演算は、制御周期10[msec]毎に統合コントローラ10で演算される。統合コントローラ10は、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を有する。
【0031】
図3は目標駆動トルクマップである。目標駆動トルク演算部100では、図3に示す目標駆動トルクマップを用いて、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標駆動トルクtFoOを演算する。
【0032】
モード選択部200は、前後加速度センサ10bの検出値に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定演算部201を有する。路面勾配推定演算部201は、車輪速センサ19の車輪速加速度平均値等から実加速度を演算し、この演算結果とGセンサ検出値との偏差から路面勾配を推定する。
【0033】
更に、モード選択部200は、推定された路面勾配に基づいて、後述する二つのモードマップのうち、いずれかを選択するモードマップ選択部202を有する。図4はモードマップ選択部202の選択ロジックを表す概略図である。モードマップ選択部202は、通常モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g2以上になると、MWSC対応モードマップに切り換える。一方、MWSC対応モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g1(<g2)未満になると、通常モードマップに切り換える。すなわち、推定勾配に対してヒステリシスを設け、マップ切り換え時の制御ハンチングを防止する。
【0034】
次に、モードマップについて説明する。モードマップとしては、推定勾配が所定値未満のときに選択される通常モードマップと、推定勾配が所定値以上のときに選択されるMWSC対応モードマップとを有する。図5は通常モードマップ、図6はMWSCモードマップを表す。
【0035】
通常モードマップ(図5)内には、EV走行モードと、WSC走行モードと、HEV走行モードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標モードを演算する。但し、EV走行モードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEV走行モード」を目標モードとする。
【0036】
図5の通常モードマップにおいて、HEV→WSC切換線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動トルクを要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1'領域までWSC走行モードが設定されている。尚、バッテリSOCが低く、EV走行モードを達成できないときには、発進時等であってもWSC走行モードを選択するように構成されている。
【0037】
アクセルペダル開度APOが大きいとき、その要求をアイドル回転数付近のエンジン回転数に対応したエンジントルクとモータジェネレータMGのトルクで達成するのは困難な場合がある。ここで、エンジントルクは、エンジン回転数が上昇すればより多くのトルクを出力できる。このことから、エンジン回転数を引き上げてより大きなトルクを出力させれば、例え下限車速VSP1よりも高い車速までWSC走行モードを実行しても、短時間でWSC走行モードからHEV走行モードに遷移させることができる。この場合が図5に示す下限車速VSP1'まで広げられたWSC領域である。
【0038】
MWSCモードマップ(図6)内には、EV走行モード領域が設定されていない点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域として、アクセルペダル開度APOに応じて領域を変更せず、下限車速VSP1のみで領域が規定されている点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域内にMWSC走行モード領域が設定されている点で通常モードマップとは異なる。MWSC走行モード領域は、下限車速VSP1よりも低い所定車速VSP2と所定アクセル開度APO1よりも高い所定アクセル開度APO2とで囲まれた領域に設定されている。尚、MWSC走行モードの詳細については後述する。
【0039】
図7は、目標充放電量マップである。目標充放電演算部300では、図7に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
【0040】
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動トルクtFoOと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標モータジェネレータトルクと目標第2クラッチ伝達トルク容量と自動変速機ATの目標変速段と第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときにエンジンEを始動するエンジン始動制御部が設けられている。
【0041】
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ伝達トルク容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。尚、シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。
【0042】
〔WSC走行モードについて〕
次に、WSC走行モードの詳細について説明する。WSC走行モードとは、エンジンEが作動した状態を維持している点に特徴があり、要求駆動トルク変化に対する応答性が高い。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、第2クラッチCL2を要求駆動トルクに応じた伝達トルク容量としてスリップ制御し、エンジンE及び/又はモータジェネレータMGの駆動トルクを用いて走行する。
【0043】
実施例1のハイブリッド車両では、トルクコンバータのように回転数差を吸収する要素が存在しないため、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2を完全締結すると、エンジンEの回転数に応じて車速が決まってしまう。エンジンEには自立回転を維持するためのアイドル回転数による下限値が存在し、このアイドル回転数は、エンジンの暖機運転等によりアイドルアップを行っていると、更に下限値が高くなる。また、要求駆動トルクが高い状態では素早くHEV走行モードに遷移できない場合がある。
【0044】
一方、EV走行モードでは、第1クラッチCL1を解放するため、上記エンジン回転数による下限値に伴う制限はない。しかしながら、バッテリSOCに基づく制限によってEV走行モードによる走行が困難な場合や、モータジェネレータMGのみで要求駆動トルクを達成できない領域では、エンジンEによって安定したトルクを発生する以外に手段がない。
【0045】
そこで、上記下限値に相当する車速よりも低車速領域であって、かつ、EV走行モードによる走行が困難な場合やモータジェネレータMGのみでは要求駆動トルクを達成できない領域では、エンジン回転数を所定の下限回転数に維持し、第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジントルクを用いて走行するWSC走行モードを選択する。
【0046】
図8はWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図、図9はWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
【0047】
WSC走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作すると、図9に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定される。そして、図8に示すエンジン動作点設定処理によって目標エンジン回転数に対応した目標エンジントルクが演算される。
【0048】
ここで、エンジンEの動作点をエンジン回転数とエンジントルクにより規定される点と定義する。図8に示すように、エンジン動作点は、エンジンEの出力効率が高い動作点を結んだ線(以下、α線)上で運転することが望まれる。
【0049】
しかし、上述のようにエンジン回転数を設定した場合、運転者によるアクセルペダル開度APO(要求駆動トルク)によってはα線から離れた動作点を選択することとなる。そこで、エンジン動作点をα線に近づけるために、目標エンジントルクは、α線を考慮した値にフィードフォワード制御される。
【0050】
一方、モータジェネレータMGは、設定されたエンジン回転数を目標回転数とする回転数フィードバック制御が実行される。今、エンジンEとモータジェネレータMGは直結状態とされていることから、モータジェネレータMGが目標回転数を維持するように制御されることで、エンジンEの回転数も自動的にフィードバック制御されることとなる。
【0051】
このとき、モータジェネレータMGが出力するトルクは、α線を考慮して決定された目標エンジントルクと要求駆動トルクとの偏差を埋めるように自動的に制御される。モータジェネレータMGでは、上記偏差を埋めるように基礎的なトルク制御量(回生・力行)が与えられ、更に、目標エンジン回転数と一致するようにフィードバック制御される。
【0052】
あるエンジン回転数において、要求駆動トルクがα線上の駆動トルクよりも小さい場合、エンジン出力トルクを大きくした方がエンジン出力効率は上昇する。このとき、出力を上げた分のエネルギをモータジェネレータMGにより回収することで、第2クラッチCL2に入力されるトルク自体は運転者の要求トルクとしつつ、効率の良い発電が可能となる。
【0053】
ただし、バッテリSOCの状態によって発電可能なトルク上限値が決定されるため、バッテリSOCからの要求発電出力(SOC要求発電電力)と、現在の動作点におけるトルクとα線上のトルクとの偏差(α線発電電力)との大小関係を考慮する必要がある。
【0054】
図8(a)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも大きい場合の概略図である。SOC要求発電電力以上にはエンジン出力トルクを上昇させることができないため、α線上に動作点を移動させることはできない。ただし、より効率の高い点へ移動させることで燃費効率を改善する。
【0055】
図8(b)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも小さい場合の概略図である。SOC要求発電電力の範囲内であれば、エンジン動作点をα線上に移動させることができるため、この場合は、最も燃費効率の高い動作点を維持しつつ発電することができる。
【0056】
図8(c)は、エンジン動作点がα線よりも高い場合の概略図である。要求駆動トルクに応じた動作点がα線よりも高いときは、バッテリSOCに余裕があることを条件として、エンジントルクを低下させ、不足分をモータジェネレータMGの力行により補う。これにより、燃費効率を高くしつつ要求駆動トルクを達成することができる。
【0057】
次に、WSC走行モード領域を、推定勾配に応じて変更している点について説明する。図10は車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数マップである。
【0058】
平坦路において、アクセルペダル開度がAPO1よりも大きな値の場合、WSC走行モード領域は下限車速VSP1よりも高い車速領域まで実行される。このとき、車速の上昇に伴って図9に示すマップのように徐々に目標エンジン回転数は上昇する。そして、VSP1'に相当する車速に到達すると、第2クラッチCL2のスリップ状態は解消され、HEV走行モードに遷移する。
【0059】
推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きい勾配路において、上記と同じ車速上昇状態を維持しようとすると、それだけ大きなアクセルペダル開度となる。このとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2は平坦路に比べて大きくなる。この状態で、仮に図5に示すマップのようにWSC走行モード領域を拡大してしまうと、第2クラッチCL2は強い締結力でのスリップ状態を継続することとなり、発熱量が過剰となるおそれがある。そこで、推定勾配が大きい勾配路のときに選択される図6のMWSC対応モードマップでは、WSC走行モード領域を不要に広げることなく、車速VSP1に相当する領域までとする。これにより、WSC走行モードにおける過剰な発熱を回避する。
【0060】
〔MWSC走行モードについて〕
次に、MWSC走行モード領域を設定した理由について説明する。推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きいときに、例えば、ブレーキペダル操作を行うことなく車両を停止状態もしくは微速発進状態に維持しようとすると、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求される。自車両の荷重負荷に対向する必要があるからである。
【0061】
第2クラッチCL2のスリップによる発熱を回避する観点から、バッテリSOCに余裕があるときはEV走行モードを選択することも考えられる。このとき、EV走行モード領域からWSC走行モード領域に遷移したときにはエンジン始動を行う必要があり、モータジェネレータMGはエンジン始動用トルクを確保した状態で駆動トルクを出力するため、駆動トルク上限値が不要に狭められる。
【0062】
また、EV走行モードにおいてモータジェネレータMGにトルクだけを出力し、モータジェネレータMGの回転を停止もしくは極低速回転すると、インバータのスイッチング素子にロック電流が流れ(電流が1つの素子に流れ続ける現象)、耐久性の低下を招くおそれがある。
【0063】
また、1速でエンジンEのアイドル回転数に相当する下限車速VSP1よりも低い領域(VSP2以下の領域)において、エンジンE自体は、アイドル回転数より低下させることができない。このとき、WSC走行モードを選択すると、第2クラッチCL2のスリップ量が大きくなり、第2クラッチCL2の耐久性に影響を与えるおそれがある。
【0064】
特に、勾配路では、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求されていることから、第2クラッチCL2に要求される伝達トルク容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されることは、第2クラッチCL2の耐久性の低下を招きやすい。また、車速の上昇もゆっくりとなることから、HEV走行モードへの遷移までに時間がかかり、更に発熱するおそれがある。
【0065】
そこで、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を運転者の要求駆動トルクに制御しつつ、モータジェネレータMGの回転数が第2クラッチCL2の出力回転数よりも所定回転数高い目標回転数にフィードバック制御するMWSC走行モードを設定した。
【0066】
言い換えると、モータジェネレータMGの回転状態をエンジンのアイドル回転数よりも低い回転数としつつ第2クラッチCL2をスリップ制御するものである。同時に、エンジンEはアイドル回転数を目標回転数とするフィードバック制御に切り換える。WSC走行モードでは、モータジェネレータMGの回転数フィードバック制御によりエンジン回転数が維持されていた。これに対し、第1クラッチCL1が解放されると、モータジェネレータMGによってエンジン回転数をアイドル回転数に制御できなくなる。よって、エンジンE自体によりエンジン回転数フィードバック制御を行う。
【0067】
MWSC走行モード領域の設定により、以下に列挙する効果を得ることができる。
1) エンジンEが作動状態であることからモータジェネレータMGにエンジン始動分の駆動トルクを残しておく必要が無く、モータジェネレータMGの駆動トルク上限値を大きくすることができる。具体的には、要求駆動トルク軸で見たときに、EV走行モードの領域よりも高い要求駆動トルクに対応できる。
【0068】
2) モータジェネレータMGの回転状態を確保することでスイッチング素子等の耐久性を向上できる。
3) アイドル回転数よりも低い回転数でモータジェネレータMGを回転することから、第2クラッチCL2のスリップ量を小さくすることが可能となり、第2クラッチCL2の耐久性の向上を図ることができる。
【0069】
〔走行モード切換処理〕
図11は、走行モード切り換え処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、通常モードマップが選択されているか否かを判断し、通常モードマップが選択されているときはステップS2へ進み、MWSC対応モードマップが選択されているときはステップS11へ進む。
【0070】
ステップS2では、推定勾配が所定値g2よりも大きいか否かを判断し、大きいときはステップS3へ進み、それ以外のときはステップS15へ進んで通常モードマップに基づく制御処理を実行する。
【0071】
ステップS3では、通常モードマップからMWSC対応モードマップに切り換える。
ステップS4では、現在のアクセルペダル開度と車速により決定される動作点がMWSC走行モード領域内にあるか否かを判断し、領域内にあると判断したときはステップS5へ進み、領域内にないと判断したときはステップS8へ進む。
【0072】
ステップS5では、バッテリSOCが所定値Aよりも大きいか否かを判断し、所定値Aよりも大きいときはステップS6へ進み、所定値A以下であるときはステップS9へ進む。ここで、所定値Aとは、モータジェネレータMGのみによって駆動トルクを確保することが可能か否かを判断するための閾値である。SOCが所定値Aよりも大きいときはモータジェネレータMGのみによって駆動トルクを確保できる状態であり、所定値A以下のときはバッテリ4への充電が必要であるため、MWSC走行モードの選択を禁止する。
【0073】
ステップS6では、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が所定値B未満か否かを判断し、所定値B未満のときはステップS7へ進み、所定値Bよりも大きいときはステップS9へ進む。ここで、所定値Bとは、モータジェネレータMGに過剰な電流が流れないことを表す所定値である。モータジェネレータMGは回転数制御されるため、モータジェネレータMGに発生するトルクは、モータジェネレータMGに作用する負荷以上となる。
【0074】
言い換えると、モータジェネレータMGは第2クラッチCL2をスリップ状態となるように回転数制御されるため、モータジェネレータMGには第2クラッチ伝達トルク容量TCL2よりも大きなトルクが発生する。よって、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が過剰なときは、モータジェネレータMGに流れる電流が過剰となり、スイッチング素子等の耐久性が悪化する。この状態を回避する為に所定値B以上のときはMWSC走行モードの選択を禁止する。
【0075】
ステップS7では、MWSC制御処理を実行する。具体的には、エンジン動作状態のまま第1クラッチCL1を解放し、エンジンEをアイドル回転数となるようにフィードバック制御とし、モータジェネレータMGを第2クラッチCL2の出力側回転数Ncl2outに所定回転数αを加算した目標回転数(ただし、アイドル回転数よりも低い値)とするフィードバック制御とし、第2クラッチCL2を要求駆動トルクに応じた伝達トルク容量とするフィードバック制御とする。尚、通常モードマップにはMWSC走行モードは設定されていないことから、ステップS7におけるMWSC制御処理にはEV走行モードもしくはWSC走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
【0076】
ステップS8では、現在のアクセルペダル開度と車速により決定される動作点がWSC走行モード領域内にあるか否かを判断し、領域内にあると判断したときはステップS9へ進み、それ以外のときはHEV走行モード領域内にあると判断してステップS10へ進む。
【0077】
ステップS9では、WSC制御処理を実行する。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、エンジンEを目標トルクに応じたフィードフォワード制御とし、モータジェネレータMGをアイドル回転数となるフィードバック制御とし、第2クラッチCL2を要求駆動トルクに応じた伝達トルク容量とするフィードバック制御とする。尚、MWSC対応モードマップにはEV走行モードが設定されていないことから、ステップS9におけるWSC制御処理にはEV走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
【0078】
ステップS10では、HEV制御処理を実行する。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、エンジンE及びモータジェネレータMGを要求駆動トルクに応じたトルクとなるようにフィードフォワード制御し、第2クラッチCL2を完全締結する。尚、MWSC対応モードマップにはEV走行モードが設定されていないことから、ステップS10におけるHEV制御処理にはEV走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
【0079】
ステップS11では、推定勾配が所定値g2未満か否かを判断し、g2未満のときはステップS12へ進み、それ以外のときはステップS4に進んでMWSC対応モードマップによる制御を継続する。
【0080】
ステップS12では、MWSC対応モードマップから通常モードマップに切り換える。
ステップS13では、マップ切り換えに伴って走行モードが変更されたか否かを判断し、変更されたと判断したときはステップS14へ進み、それ以外のときはステップS15に進む。MWSC対応モードマップから通常モードマップに切り換えると、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移、WSC走行モードからEV走行モードへの遷移、HEV走行モードからEV走行モードへの遷移が生じうるからである。
【0081】
ステップS14では、走行モード変更処理を実行する。具体的には、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移時には、モータジェネレータMGの目標回転数をアイドル回転数に変更し、同期した段階で第1クラッチCL1を締結する。そして、エンジン制御をアイドル回転数フィードバック制御から目標エンジントルクフィードフォワード制御に切り換える。
【0082】
WSC走行モードからEV走行モードへの遷移のときは、第1クラッチCL1を解放し、エンジンEを停止し、モータジェネレータMGを回転数制御から要求駆動トルクに基づくトルク制御に切り換え、第2クラッチCL2を要求駆動トルクに基づくフィードバック制御から完全締結に切り換える。
【0083】
HEV走行モードからEV走行モードへの遷移のときは、第1クラッチCL1を解放し、エンジンEを停止し、モータジェネレータMGは要求駆動トルクに基づくトルク制御を継続し、第2クラッチCL2を要求駆動トルクに基づくフィードバック制御から完全締結に切り換える。
ステップS15では、通常モードマップに基づく制御処理を実行する。
【0084】
〔MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理〕
次に、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理について説明する。図12は、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
ステップS21では、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移が行われるか否かを判断し、遷移が行われるときはステップS22へ進み、遷移が行われないときは本制御のフローを終了する。この遷移は、例えば、MWSC走行モードで走行中にSOCが所定値Aを下回ったとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が所定値Bを上回ったとき、MWSC対応モードマップ内でアクセルペダル開度APOと車速VSPにより決定される点がWSC走行モード領域に移動したとき、もしくはMWSC対応モードマップから通常モードマップに切り換えられたときにMWSC走行モードからWSC走行モードに遷移する場合が想定される。
【0086】
ステップS22では、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との差が閾値以上であるか否かを判定して、回転数差が閾値以上のときはステップS23へ進み、回転数差が閾値未満であるときはステップS28に進む。回転数差が閾値以上であるときにはMWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移の中でも前半のフェーズである第1クラッチCL1の締結を行わないモード遷移(1)の状態を示し、回転数差が閾値未満であるときには後半のフェーズである第1クラッチCL2の締結を行うモード遷移(2)の状態を示している。
【0087】
ステップS23では、目標第2クラッチ伝達トルク容量を設定する。モード遷移(1)では、第1クラッチCL1が解放されているため、駆動輪側へ出力する駆動トルクはモータジェネレータMGのみで出力されている。そのため、第2クラッチCL2をスリップ制御するためには、モータジェネレータMGは、第2クラッチ伝達トルク容量に加えて第2クラッチCL2をスリップさせるトルクを出力する必要がある。
【0088】
しかしながら、モータジェネレータMGは、バッテリSOCやインバータの出力制限により出力できる上限トルクが制限されている。そのため、第2クラッチCL2をスリップ制御するためには、第2クラッチ目標伝達トルク容量は、モータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクを引いた値より小さな値に設定される必要がある。そこでステップS23では、第2クラッチ目標伝達トルク容量を、要求駆動トルクに応じた目標駆動トルク、またはモータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルク(オフセットトルク)を引いた値のうち小さな値に設定している。
【0089】
図13はモード遷移(1)のときに、動作点指令部400における目標第2クラッチ伝達トルク容量を算出する目標第2クラッチ伝達トルク容量算出部40の制御ブロック図である。図13に示すように、目標第2クラッチ伝達トルク容量算出部40は、モータジェネレータ上限トルク算出部41と、オフセットトルク演算部42と、加減算部43と、比較器44とを有している。
【0090】
モータジェネレータ上限トルク算出部41は、バッテリSOCとモータ回転数Nmからモータジェネレータ上限トルクを算出する。このモータジェネレータ上限トルクは、バッテリSOCとモータ回転数Nmのみからではなく、インバータ3による印加電圧制限を考慮するようにしても良い。
【0091】
図14はオフセットトルクマップである。オフセットトルク演算部42は、図14のオフセットトルクマップから目標駆動トルクに応じたオフセットトルクを演算する。加減算部43は、モータジェネレータトルク上限値からオフセットトルクを引いた値を算出する。比較器44は、モータジェネレータトルク上限値からオフセットトルクを引いた値と、目標駆動トルクを比較し、小さい方の値を目標第2クラッチ伝達トルク容量として出力する。
【0092】
ステップS24では、目標モータジェネレータ回転数を設定する。図15は、目標モータジェネレータ回転数変化率マップである。図15の目標モータジェネレータ回転数変化率マップに基づいて、目標駆動トルクに応じた目標モータジェネレータ回転数変化率が設定される。この設定した変化率でモータジェネレータMGの回転数を上昇させるように、目標モータジェネレータ回転数を設定する。
【0093】
ステップS25では、ステップS23で設定した目標第2クラッチ伝達トルク容量に応じて第2クラッチCL2を制御する。
【0094】
ステップS26では、モータジェネレータMGの回転数が、ステップS23で設定した目標モータジェネレータ回転数となるようにフィードバック制御を行う。
【0095】
ステップS27では、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との差が閾値未満となったか否かを判定して、回転数差が閾値未満のときはステップS28に進み、回転数差が閾値以上であるときはステップS26に進む。回転数差が閾値未満であるときは後半のフェーズである第1クラッチCL2の締結を行うモード遷移(2)に移行する。
【0096】
ステップS28では、目標第2クラッチ伝達トルク容量を設定する。モード遷移(2)では、第1クラッチCL1の締結が開始されるため、駆動輪側へ出力する駆動トルクはエンジンEおよびモータジェネレータMGで出力されている。そのため、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を、モード遷移(1)よりも高くしても第2クラッチCL2のスリップ制御を行うことができる。ステップS28では、第2クラッチ目標伝達トルク容量を、目標駆動トルク、またはモータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクを引いた値のうち小さな値に設定している。この第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクは、自動変速機AT内の油温、モータジェネレータ回転数、モード遷移(1)からモード遷移(2)に移行したときの駆動トルクの急激な上昇を抑えることも考慮して設定されている。
【0097】
ステップS29では、目標エンジントルクを設定する。目標エンジントルクは、要求駆動トルクに応じた目標駆動トルクと、モータジェネレータMGにより発電を行うための発電トルクと、第1クラッチCL1を締結した際にモータジェネレータMGの回転数を上昇させるためのトルクの和に設定される。
【0098】
ステップS30では、目標第1クラッチ伝達トルク容量を設定する。目標第1クラッチ伝達トルク容量は、アクセルペダル開度APOに応じた目標駆動トルクと、モータジェネレータMGにより発電を行うための発電トルクと、第1クラッチCL1を締結した際にエンジンEによりモータジェネレータMGの回転数を上昇させるためのトルクの和に設定される。すなわち、目標第1クラッチ伝達トルク容量は、目標エンジントルクに等しく設定される。
【0099】
ステップS31では、目標モータジェネレータ回転数を設定する。目標モータジェネレータ回転数は、一定の変化率でモータジェネレータ回転数を上昇させるように設定する。
【0100】
ステップS32では、ステップS28で設定した第2クラッチ伝達トルク容量に応じて第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を制御する。
ステップS33では、ステップS29で設定した目標エンジントルクに応じてエンジンEを制御する。
【0101】
ステップS34では、ステップS30で設定した目標第1クラッチ伝達トルク容量に応じて第1クラッチCL1を締結制御する。
ステップS35では、モータジェネレータMGの回転数が、ステップS31で設定した目標モータジェネレータ回転数となるようにフィードバック制御を行う。
【0102】
ステップS36では、モータジェネレータ回転数がエンジン回転数とほぼ同じになったか否かを判定し、ほぼ同じになったときにはステップS37に進み、同じになっていないときにはステップS35に進む。モータジェネレータ回転数とエンジン回転数がほぼ同じになると、モード遷移(2)が終了しWSC走行モードとなる。
【0103】
ステップS37では、目標第2クラッチ伝達トルク容量を、要求駆動トルクに応じた目標駆動トルクを設定する。
ステップS38では、目標モータジェネレータ回転数を設定する。前述の通り、WSC走行モードでは図9に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定され、モータジェネレータMGを回転数制御することにより、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように制御されている。すなわち、目標モータジェネレータ回転数は目標エンジン回転数に一致するように設定される。
【0104】
ステップS39では、目標エンジントルクを設定する。前述の通り、WSC走行モードでは、目標エンジン回転数に応じて図8のα線に乗るように目標エンジントルクが設定される。
【0105】
ステップS40では、目標第1クラッチ伝達トルク容量を完全締結トルク容量に設定する。
ステップS41では、ステップS37で設定した目標第2クラッチ伝達トルク容量に応じて第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を制御する。
【0106】
ステップS42では、ステップS39で設定した目標エンジントルクに応じてエンジンEを制御する。
ステップS43では、第1クラッチCL1を完全締結する。
ステップS44では、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるようにモータジェネレータMGを回転数制御する。
【0107】
〔走行モード切換処理動作〕
図11に示す走行モード切換処理の動作を説明する。
現在のモードマップが通常モードマップであり、推定勾配がg2より大きいときには、図11のフローチャート上でステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4に進む。ステップS3では、モードマップを通常モードマップからMWSCモードマップに変更する。または、現在のモードマップがMWSCモードマップであり、推定勾配がg1以下であるときには、ステップS1→ステップS11→ステップS4に進む。
【0108】
このとき、現在のアクセルペダル開度APOと車速により決定される動作点がMWSC走行モード領域内にあり、バッテリSOCが所定値Aよりも大きく、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が所定値B未満であるときには、ステップS5→ステップS6→ステップS7に進み、MWSC走行モードによる制御が行われる。
【0109】
またステップS4に進んだ時点で、現在のアクセルペダル開度APOと車速により決定される動作点がWSC走行モード領域内にあり、またはバッテリSOCが所定値A以下であり、または第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が所定値B以上であるときには、ステップS9に進み、WSC走行モードによる制御が行われる。
【0110】
またステップS4に進んだ時点で、現在のアクセルペダル開度APOと車速により決定される動作点がHEV走行モード領域内にあるときには、ステップS8→ステップS10に進み、HEV走行モードによる制御が行われる。
【0111】
現在のモードマップがMWSCモードマップであり、推定勾配がg1より小さいときには、図11のフローチャート上でステップS1→ステップS11→ステップS12→ステップS13に進む。ステップS12では、モードマップをMWSCモードマップから通常モードマップに変更する。
【0112】
ステップS13では、マップ切り換えに伴って走行モードが変更されたか否かを判断し、変更されたと判断したときはステップS14→ステップS15に進み、変更されていないと判断したときにはステップS15に進む。またステップS2で推定勾配がg2以下であるときには、ステップS15に進む。ステップS15では、通常モードマップに基づく制御処理が行われる。
【0113】
〔MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理動作〕
図12に示すMWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移処理の動作を説明する。
MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移が行われると判断され、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との差が閾値以上であるときは、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25→ステップS26→ステップS27に進む(モード遷移(1))。ステップS25において第2クラッチCL2をスリップ制御しながら、ステップS26においてモータジェネレータ回転数が第1目標モータジェネレータ回転数となるようにフィードバック制御を行う。
【0114】
エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との回転数差が閾値未満であるときには、ステップS28→ステップS29→ステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS36に進む(モード遷移(2))。ステップS32において第2クラッチCL2をスリップ制御しながら、ステップS33において目標エンジントルクに応じてエンジントルクを上昇させ、ステップS34において第1クラッチCL1の締結制御を行う。また、ステップS35においてモータジェネレータ回転数がエンジン回転数とほぼ一致するように制御される。
【0115】
エンジン回転数とモータジェネレータ回転数とがほぼ一致したときには、ステップS37→ステップS38→ステップS39→ステップS40→ステップS41→ステップS42→ステップS43に進む(WSC走行モード)。ステップS41において第2クラッチCL2をスリップ制御しながら、ステップS42において目標エンジントルクに応じてエンジンEを制御し、ステップS43において第1クラッチCL1を完全締結する。また、ステップS44において通常の目標モータジェネレータ回転数に応じてモータジェネレータMGを制御する。
【0116】
〔作用〕
MWSC走行モードにおいて、エンジンEはアイドル回転数となるように制御され、モータジェネレータMGはエンジンEのアイドル回転数よりも低い回転数で制御されている。一方、WSC走行モードにおいて、モータジェネレータMGはエンジンEのアイドル回転数よりも高い回転数で制御され、エンジンEはモータジェネレータMGの回転数制御によりアイドル回転数よりも高い回転数とされている。つまり、MWSC走行モードからWSC走行モードに移行するときには、モータジェネレータ回転数をアイドル回転数に同期させて第1クラッチCL1を締結する必要がある。
【0117】
ところで第2クラッチCL2をスリップ制御するときには、通常は目標第2クラッチ伝達トルク容量を目標駆動トルクに応じて設定している。しかしながら、MWSC走行モードからWSC走行モードに移行するときに、目標第2クラッチ伝達トルク容量を目標駆動トルクに応じて設定してしまうと、モータジェネレータMGの上限トルクに対して、第2クラッチ伝達トルク容量TCL2が高くなりすぎてモータジェネレータ回転数を上昇させることができず、走行モード移行を行うことができないおそれがある。
【0118】
また、モータジェネレータMGの上限トルクを考慮して、モータジェネレータ回転数をゆっくり上昇させることも考えられるが、走行モード移行に時間がかかり、要求駆動トルクへの応答性が悪化してしまう。
【0119】
そこで実施例1では、MWSC走行モードからWSC走行モードに移行するときに、目標駆動トルクが高いほどモータジェネレータ回転数変化率を高く設定し、設定した変化率でモータジェネレータ回転数を上昇させるようにした。
【0120】
また実施例1では、MWSC走行モードからWSC走行モードに移行する場合に、目標駆動トルクが高いほどオフセットトルクを高く設定し、モータジェネレータ上限トルクから設定したオフセットトルクを引いた値が、目標駆動トルクより小さいときには、この値を目標第2クラッチ伝達トルク容量とするようにした。
【0121】
図16、図17は、実施例1における目標駆動トルク、目標第2クラッチ伝達トルク容量、実エンジン回転数、目標モータジェネレータ回転数、実モータジェネレータ回転数、目標エンジントルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、モータジェネレータ上限トルクのタイムチャートである。図16は目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より大きいとき、図17は目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より小さいときのタイムチャートを示している。
【0122】
まず図16を用いて、目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より大きいときの走行モード移行について説明する。アクセルペダル開度APOが大きくなり、時間t1でMWSC走行モードからWSC走行モードに移行するトルクに達し、走行モードの移行が開始される。
【0123】
時間t1から、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との回転数差が閾値未満となる時間t2まで(モード遷移(1))は、目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より大きくなる。このとき、目標第2クラッチ伝達トルク容量をモータジェネレータMGの上限トルクからオフセットトルクを引いた値に設定しつつ、目標駆動トルクに応じて設定した目標モータジェネレータ変化率でモータジェネレータ回転数を上昇させる。これにより、目標駆動トルクが大きいときには早く走行モードを移行することができ、要求駆動トルク上昇の応答性を確保することができる。また、早期にモータジェネレータ回転数を上昇させるために、目標第2クラッチ伝達トルク容量を小さくしたため、第2クラッチCL2をスリップ制御させたまま、モータジェネレータMGの回転数を上昇させることができ、確実の走行モードを移行することができる。
【0124】
時間t2において、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との回転数差が閾値未満となると、目標エンジントルクおよび目標第1クラッチ伝達トルク容量を、アクセルペダル開度APOに応じた目標駆動トルクと、モータジェネレータMGにより発電を行うための発電トルクと、第1クラッチCL1を締結した際にモータジェネレータMGの回転数を上昇させるためのトルクの和に設定する。
【0125】
時間t2から、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数がほぼ同じとなる時間t4まで(モード遷移(2))は、目標第2クラッチ伝達トルク容量をモータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクを引いた値に設定しつつ、モータジェネレータ回転数を上昇させていく。時間t3において、モータジェネレータ回転数がエンジンEにより持ち上げられる。このときエンジン回転数は減少し、またエンジンEおよびモータジェネレータMGの全体から出力されるトルクは減少するが、目標第2クラッチ伝達トルクを、モータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクを引いた値に設定しているため、トルクや回転数の変動が駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)側に伝達しない。そのため、走行モード移行時のトルクや回転数変動によるショックを抑制することができる。
【0126】
次に図17を用いて、目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より小さいときの走行モード移行について説明する。アクセルペダル開度APOが大きくなり、時間t11でMWSC走行モードからWSC走行モードに移行するトルクに達し、走行モードの移行が開始される。
【0127】
時間t11から、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との回転数差が閾値未満となる時間t12まで(モード遷移(1))は、目標駆動トルクがモータジェネレータ上限トルクからオフセットトルクを引いた値より小さくなる。このとき、目標第2クラッチ伝達トルク容量を目標駆動トルクに設定しつつ、目標駆動トルクに応じて設定した目標モータジェネレータ変化率でモータジェネレータ回転数を上昇させる。これにより、目標駆動トルクが小さいときには、目標駆動トルクの出力を確保しつつ走行モードを移行することができ、要求駆動トルク上昇の応答性を確保することができる。
【0128】
時間t12において、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数との回転数差が閾値未満となると、目標エンジントルクおよび目標第1クラッチ伝達トルク容量を、アクセルペダル開度APOに応じた目標駆動トルクと、モータジェネレータMGにより発電を行うための発電トルクと、第1クラッチCL1を締結した際にモータジェネレータMGの回転数を上昇させるためのトルクの和に設定する。
【0129】
時間t12から、エンジン回転数とモータジェネレータ回転数がほぼ同じとなる時間t14まで(モード遷移(2))においても、目標第2クラッチ伝達トルク容量を目標駆動トルクに設定しつつ、モータジェネレータ回転数を上昇させていく。時間t13において、モータジェネレータ回転数がエンジンEにより持ち上げられる。このときエンジン回転数は減少し、またエンジンEおよびモータジェネレータMGの全体から出力されるトルクは減少するが、目標第2クラッチ伝達トルク容量はモータジェネレータMGの上限トルクから第2クラッチCL2をスリップ制御するために必要なトルクを引いた値よりも小さな目標駆動トルクに設定されているため、トルクや回転数の変動が駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)側に伝達しない。そのため、走行モード移行時のトルクや回転数変動によるショックを抑制することができる。
【0130】
〔効果〕
次に、実施例1により得られる効果を下記に記載する。
(1)エンジンEと、車両の駆動トルクを出力すると共にエンジンEの始動を行うモータジェネレータMGと、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されエンジンEとモータジェネレータMGとを断接する第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)との間に介装されモータジェネレータMGと駆動輪とを断接する第2クラッチCL2と、アクセルペダル開度に応じて目標駆動トルクを設定する目標駆動トルク演算部100と、エンジンEを所定回転数で作動させたまま第1クラッチCL1を解放し、モータジェネレータMGを所定回転数よりも低い回転数として第2クラッチCL2をスリップ締結するモータスリップ走行制御(MWSC)から、第1クラッチCL1を締結し、エンジンEが所定回転数以上となるようにモータジェネレータMGを制御して第2クラッチCL2をスリップ締結するエンジン使用スリップ走行制御(WSC)に切り換えるときに、目標駆動トルクが大きいほど、モータジェネレータの回転数上昇の変化率を高く設定するようする統合コントローラ10と、を設けた。
よって、目標駆動トルクが大きいときには早く走行モードを移行することができ、要求駆動トルク上昇の応答性を確保することができる。
【0131】
(2)統合コントローラ10は、目標駆動トルクが大きいほど、オフセットトルクを大きく演算し、モータジェネレータMGの出力可能な上限トルクからオフセットトルクを引いた値を目標第2クラッチ伝達トルク容量に設定するようにした。
よって、目標駆動トルクが大きいほど目標第2クラッチ伝達トルク容量は小さくなるため、第2クラッチCL2をスリップ制御させたまま、モータジェネレータMGの回転数を早く上昇させることができ、早期に走行モードを移行することができる。
【0132】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0133】
例えば、実施例1では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。
【符号の説明】
【0134】
E エンジン
MG モータジェネレータ
CL1 第1クラッチ(第1締結要素)
CL2 第2クラッチ(第2締結要素)
10 統合コントローラ(オフセットトルク演算手段、目標モータジェネレータ回転数設定手段、目標第2締結要素伝達トルク容量設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
車両の駆動トルクを出力すると共に前記エンジンの始動を行うモータジェネレータと、
前記エンジンと前記モータジェネレータとの間に介装され前記エンジンと前記モータジェネレータとを断接する第1締結要素と、
前記モータジェネレータと駆動輪との間に介装され前記モータジェネレータと前記駆動輪とを断接する第2締結要素と、
アクセルペダル開度に応じて目標駆動トルクを設定する目標駆動トルク設定手段と、
前記エンジンを所定回転数で作動させたまま前記第1締結要素を解放し、前記モータジェネレータを前記所定回転数よりも低い回転数として前記第2締結要素をスリップ締結するモータスリップ走行制御から、前記第1締結要素を締結し、前記エンジンが前記所定回転数以上となるように前記モータジェネレータを制御して前記第2締結要素をスリップ締結するエンジン使用スリップ走行制御に切り換えるときに、前記目標駆動トルクが大きいほど、前記モータジェネレータの回転数上昇の変化率を高く設定する目標モータジェネレータ回転数設定手段と、
を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記目標駆動トルクが大きいほど、オフセットトルクを大きく演算するオフセットトルク演算手段と、
前記モータジェネレータの出力可能な上限トルクから前記オフセットトルクを引いた値を前記第2締結要素の目標伝達トルク容量に設定する目標第2締結要素伝達トルク容量設定手段と、
を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−91719(P2012−91719A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241743(P2010−241743)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】