説明

ハイブリッド車両の動力出力装置

【課題】 遊星歯車機構によってエンジンおよびモータの動力分割を行なう動力出力装置において、モータ回転不良時の故障部位を装置の分解を伴うことなく判別する。
【解決手段】 遊星歯車機構で構成された動力分割機構60は、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン10の間で動力を伝達する。エンジン10は、専用のスタータを設けることなく、モータジェネレータMG1の回転駆動力によって起動される。ECU90は、エンジン起動時に、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン10の回転数データを監視することにより、モータジェネレータMG1の回転異常を検出する。さらに、当該回転異常の検出時には、モータジェネレータMG2からの動力による走行状態時での上記回転数データの解析により、故障個所がモータジェネレータMG1および遊星歯車機構のいずれに存在するのかを判別する故障診断走行モードが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両の動力出力装置に関し、より特定的には、遊星歯車機構によってエンジンおよびモータの動力分割を行なう動力出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの低燃費化を図るために、エンジンおよびモータを動力源とする動力出力装置を搭載したハイブリッド車両が提案されている。このようなハイブリッド方式の動力出力装置には、シリーズ方式、パラレル方式など各種の方式が提案されているが、遊星歯車機構によってエンジンおよび2つのモータを連結した、シリーズ−パラレルハイブリッド方式が提案されている。このようなシリーズ−パラレルハイブリッド方式では、遊星歯車機構によって構成された動力分割機構によって、エンジンおよびモータの動力の入出力が制御される(たとえば特許文献1および2)。
【特許文献1】特開2000−184506号公報
【特許文献2】特開平11−301291号公報
【特許文献3】特開2004−159393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような動力出力装置では、エンジンおよびモータが協調的に動作するので、モータの回転不良が検知された場合に、モータ自体が異物等の噛み込みにより回転不良となっているのか、あるいは遊星歯車機構が潤滑不良等により焼付きを起こして回転不良となっているのかを、外部から検知することが困難である。
【0004】
したがって、このような不良が発生した場合には、動力出力装置の分解による故障部位の特定および部品交換が必要となるため、故障状況の迅速なユーザ通知および修理時間短縮の面で問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、遊星歯車機構によってエンジンおよびモータの動力分割を行なう動力出力装置において、モータ回転不良時の故障部位を装置の分解を伴うことなく一次的に特定することである。
【0006】
また、この発明の他の目的は、装置を分解することなく車両走行中に発生した遊星歯車機構の故障を正確かつ早期に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による動力出力装置は、駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の動力出力装置であって、3軸式の動力分割機構と、エンジンと、第1のモータジェネレータと、第2のモータジェネレータと、始動手段と、異常検出手段と、故障診断モード移行手段と、故障診断モード移行手段と、故障個所判別手段とを備える。3軸式の動力分割機構は、第1から第3の軸と結合された遊星歯車機構で構成され、第3の軸に駆動軸が結合されるとともに、第1ないし第3の軸のうちのいずれか2軸に対し動力が入出力されたときに、その入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸に対して入出力する。エンジンは、第1の軸にその回転軸が結合し、燃料の燃焼により第1の回転軸に対し動力を出力する。第1のモータジェネレータは、第2の軸にその回転軸が結合し、第2の軸に対し動力を入出力することが可能である。第2のモータジェネレータは、第3の軸にその回転軸が結合し、第3の軸に対し動力を入出力することが可能である。始動手段は、第1のモータジェネレータにより動力分割機構を介してエンジンを回転駆動することにより該エンジンを始動させる。異常検出手段は、始動手段によって第1のモータジェネレータの駆動指令が発せられた際に、第1のモータジェネレータの速度監視に基づいて、第1のモータジェネレータの回転異常を検出する。故障診断モード移行手段と、異常検出手段による異常検出
時に、エンジンを駆動させることなく第2のモータジェネレータからの動力によって、車両を所定速度パターンで走行させる故障診断モードへの移行を指示する。故障個所判別手段は、故障診断モードの実行時に、エンジン、第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータの回転数に基づいて、第1のモータジェネレータおよび遊星歯車機構のいずれで故障が発生しているかを判別する。
【0008】
上記の動力出力装置によれば、エンジン起動時に第1のモータジェネレータの回転異常を回転数に基づいて自動的に検出するとともに、当該回転異常の検出時には、故障診断モードに実行により、回転数に基づいて故障箇所が第1のモータジェネレータおよび遊星歯車機構(動力分割機構)のいずれであるかを判別できる。このため、動力出力装置を分解することなく、第1のモータジェネレータ回転異常時の故障情報を運転者へ迅速に通知できるとともに、当該故障情報に基づく修理時間の短縮が可能となる。
【0009】
好ましくは、この発明の動力出力装置において、故障個所判別手段は、第1の故障判定手段と、第2の故障判定手段とを含む。第1の故障判定手段は、故障診断モードの実行時に、第1のモータジェネレータの回転数が所定値まで上昇せず、かつ、エンジンの回転数が第2のモータジェネレータの回転数に応じて上昇する第1の故障状態が発生しているかどうかを判定する。第2の故障判定手段は、第1の故障判定手段によって第1の故障状態の発生が判定された場合に、第1のモータジェネレータにさらに駆動指令を発するとともに、第1のモータジェネレータの回転数が該駆動指令に応じて上昇しないときに、第1のモータジェネレータの故障を検知する。
【0010】
上記の動力出力装置によれば、第1のモータジェネレータの回転異常検出時に、第1のモータジェネレータ自体での故障が疑われる場合に、第1のモータジェネレータに起動指令を発した状態とした上で回転不良が発生しているかどうかを判定する構成としている。このため、回転数データに基づいたソフトウェア処理による第1のモータジェネレータの故障検出について、誤検出の危険性を抑制して信頼性を高めることができる。
【0011】
さらに好ましくは、この発明の動力出力装置において、故障個所判別手段は、第3の故障判定手段をさらに含み、第3の故障判定手段は、第1の故障判定手段によって第1の故障状態の非発生が判定された場合に、エンジン、第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータの回転数が共通の所定範囲内であるときに、遊星歯車機構の故障を検知する。
【0012】
上記の動力出力装置によれば、第1のモータジェネレータの回転異常検出時に、第1のモータジェネレータ自体に故障がないと判定した場合に、遊星歯車機構に故障が発生しているかどうかを、回転数データに基づいて高信頼性で判定できる。
【0013】
また好ましくは、この発明の動力出力装置において、故障個所判別手段は、第3の故障判定手段を含み、第3の故障判定手段は、故障診断モードの実行時に、エンジン、第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータの回転数が共通の所定範囲内であるときに、遊星歯車機構の故障を検知する。
【0014】
上記の動力出力装置によれば、第1のモータジェネレータの回転異常検出時に、遊星歯車機構に故障があるかどうかを、回転数データに基づいて高信頼性で判定できる。
【0015】
さらに好ましくは、この発明の動力出力装置において、第2の故障判定手段は、駆動指令を与えられた第1のモータジェネレータの回転数が所定速度以下であるときに、第1のモータジェネレータの故障を検知し、かつ、該回転数が所定速度を超えるときには、再び異常検出手段が作動される。
【0016】
上記の動力出力装置によれば、第1のモータジェネレータの故障が確信できなかった場合には、第1のモータジェネレータの回転異常検出を再度実行する構成としているので、第1のモータジェネレータの故障について誤検出の危険性を低下できる。
【0017】
また、さらに好ましくは、この発明の動力出力装置において、第3の故障判定手段は、エンジン、第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータの回転数が所定範囲内であるときに遊星歯車機構の故障を検知する一方で、該回転数が所定範囲外であるときには、再び異常検出手段が作動される。
【0018】
上記の動力出力装置によれば、遊星歯車機構の故障が確信できなかった場合には、第1のモータジェネレータの回転異常検出を再度実行する構成としているので、遊星歯車気候の故障について誤検出の危険性を低下できる。
【0019】
あるいは、さらに好ましくは、この発明の動力出力装置において、異常検出手段は、第1のモータジェネレータに駆動指令が発せられた状態において、第1のモータジェネレータの回転数と所定速度との比較を所定周期で所定の複数回繰り返し実行し、かつ、複数回の比較において継続的に回転数が所定速度以下であるときに、第1のモータジェネレータの回転異常を検出する。
【0020】
上記の動力出力装置によれば、所定の異常検出条件が所定期間継続して発生している場合に始めて第1のモータジェネレータの回転異常を検出する構成としているので、第1のモータジェネレータの回転異常について誤検出の危険性を低下できる。
【0021】
また、さらに好ましくは、異常検出手段は、ハイブリッド車両の停止時において、始動手段によって第1のモータジェネレータの駆動指令が発せられた際に作動する。
【0022】
上記のハイブリッド車両の動力出力装置によれば、第1のモータジェネレータの回転異常原因となる故障(遊星歯車機構や第1のモータジェネレータのロータにおける潤滑不良による焼付き等)が走行時に突発的に起こるケースは考え難く、停車時の低温状態に部品間が固着することによって発生する可能性が高い点を考慮して、効率的な故障検出を行なうことができる。
【0023】
この発明の他の構成による動力出力装置は、駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の動力出力装置であって、3軸式の動力分割機構と、エンジンと、第1のモータジェネレータと、第2のモータジェネレータと、故障仮検出手段と、エンジン運転点変更指示手段と、故障検出手段とを備える。3軸式の動力分割機構は、第1から第3の軸と結合された遊星歯車機構で構成され、第3の軸に駆動軸が結合されるとともに、第1ないし第3の軸のうちのいずれか2軸に対し動力が入出力されたときに、その入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸に対して入出力する。エンジンは、第1の軸にその回転軸が結合し、燃料の燃焼により第1の回転軸に対し動力を出力する。第1のモータジェネレータと、第2の軸にその回転軸が結合し、第2の軸に対し動力を入出力することが可能に構成される。第2のモータジェネレータと、第3の軸にその回転軸が結合し、第3の軸に対し動力を入出力することが可能に構成される。故障仮検出手段は、ハイブリッド車両の走行中に、エンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる状態が所定期間継続したときに、遊星歯車機構の故障を一次的に検出する。エンジン運転点変更指示手段は、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出されたときに、エンジンの回転数指令値を変更するようにエンジンの運転点の変更を指示する。故障検出手段は、エンジン運転点変更指示手段によるエンジンの運転点変更指示後において、エンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の回転数が遊星歯車機構故障時に想定される異常状態に該当するかどうかに基いて遊星歯車機構の故障を検出する。
【0024】
上記の動力出力装置によれば、遊星歯車機構の故障検出時に発生する、エンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の速度差極小状態(揃速状態)が通常運転状態でも発生し得る点を考慮して、走行中に揃速状態が検出された場合には、エンジンの運転点(回転数領域)変更を指示した上で、運転点変更指示後におけるエンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の速度状態が遊星歯車機構故障時に想定される異常状態に該当するかどうかに基いて遊星歯車機構の故障検出を確定する。
【0025】
したがって、揃速状態の発生監視のみに基づく故障診断方式と比較して誤検出を防止した上で、走行中に発生した遊星歯車機構の故障検出を早期に行なうことが可能となる。
【0026】
好ましくは、この発明の他の構成による動力出力装置では、エンジン運転点変更指示手段は、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点におけるエンジンの回転数が所定回転数以上であるときに、エンジンの回転数が所定回転数より低くなるようにエンジン回転数指令値を変更する手段を含む。故障検出手段は、エンジン運転点変更指示手段による前記エンジン回転数指令値の変更後において、エンジン回転数指令値の変更に追従してエンジン回転数が変化できない第1の状態と、エンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる第2の状態との両方が所定時間継続して発生したときに、遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む。
【0027】
また、好ましくは、エンジン運転点変更指示手段は、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点において、エンジンが非停止状態であり、かつ、エンジンの回転数が所定回転数未満であるときに、エンジンを停止させるようにエンジン回転数指令値を変更する手段を含む。故障検出手段は、エンジン運転点変更指示手段によるエンジン回転数指令値の変更後において、エンジン回転数指令値の変更に追従してエンジン回転数が変化できない第1の状態と、エンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる第2の状態との両方が所定時間継続して発生したときに、遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む。
【0028】
上記の動力出力装置によれば、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点でエンジンが非停止状態であるときには、エンジン回転数指令値の変更に伴って想定される異常状態、具体的には、遊星歯車機構にロック故障が発生していると駆動軸に質量が掛かり第1のモータジェネレータおよびエンジンの回転が駆動軸に引き摺られるために、エンジン回転数が回転数変更後の指令値に追従できなくなる状態(第1の状態)と、その際に第1のモータジェネレータがトルクを出力してエンジン回転数を変更後の指令値に追従させようとしてもエンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の速度差が極小となる状態(第2の状態)との発生を検知することによって、遊星歯車機構の故障を正確に検出できる。
【0029】
さらに好ましくは、この発明の他の構成による動力出力装置は、動力出力維持手段をさらに備える。動力出力維持手段は、エンジン運転点変更指示手段によるエンジンの運転点変更時に、運転点変更によるエンジンの出力低下を補償するように第2のモータジェネレータの出力増加を指示する。
【0030】
上記の動力出力装置によれば、遊星歯車機構の故障検出のためのエンジン運転点変更に伴うエンジンの出力低下を第2のモータジェネレータの出力増によって補償できるので、車両の運転性を維持できる。
【0031】
好ましくは、この発明の他の構成による動力出力装置では、エンジン運転点変更指示手段は、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点においてエンジンが停止している場合に、エンジンに始動指示を発する手段を含む。さらに、動力出力装置は、車速上昇手段をさらに備える。車速上昇手段は、エンジン運転点変更指示手段によって始動指示が発せられてもエンジンが始動できない場合に、第2のモータジェネレータからの動力出力によりハイブリッド車両の速度を上昇させる。また、故障検出手段は、車速上昇手段によるハイブリッド車両の速度上昇後において、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる状態が所定時間継続したときに、遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む。
【0032】
上記の動力出力装置によれば、故障仮検出手段により遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点でエンジンが停止状態であるときには、エンジンの始動指令を発生しても駆動軸に質量が掛かり第1のモータジェネレータおよびエンジンの回転が駆動軸に引き摺られるために発生する異常状態、具体的には、始動指令を発生してもエンジンが始動不可となり、かつ、第2のモータジェネレータ出力による車速上昇後にもエンジン、第1のモータジェネレータおよび駆動軸の速度差極小状態が発生することによって、遊星歯車機構の故障を正確に検出できる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によるハイブリッド車両の動力出力装置によれば、遊星歯車機構によってエンジンおよびモータの動力分割を行なう構成において、モータ回転不良時の故障部位を回転数データに基づくソフトウァア処理によって、装置の分解を伴うことなく一次的に特定することができる。
【0034】
また、この発明によるハイブリッド車両の動力出力装置によれば、装置の分解を伴うことなく車両走行中に発生した遊星歯車機構の故障を正確かつ早期に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下において、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下において図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的として繰返さないものとする。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、この発明によるハイブリッド車両の動力出力装置(以下、「ハイブリッド動力出力装置」と称する)の構成を示すブロック図である。
【0037】
図1を参照して、この発明の実施の形態によるハイブリッド動力出力装置100は、エンジン10と、バッテリ20と、インバータ30と、車輪40aと、トランスアクスル50と、ECU(Electronic Control Unit)90とを備える。
【0038】
エンジン10は、ガソリン等の燃料の燃焼エネルギを源として駆動力を発生する。バッテリ20は、電力ライン51へ直流電力を供給する。バッテリ20は、充電可能な二次電池で構成され、代表的にはニッケル・水素蓄電池やリチウムイオン二次電池や大容量コンデンサ(キャパシタ)等が適用される。
【0039】
インバータ30は、電力ライン51にバッテリ20から供給された直流電力を交流電力に変換して電力ライン53へ出力する。あるいは、インバータ30は、電力ライン52,53に供給された交流電力を直流電力に変換して電力ライン51へ出力する。
【0040】
トランスアクスル50は、トランスミッションとアクスル(車軸)とを一体構造として備えており、動力分割機構60と、減速機70と、モータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2とを有する。
【0041】
動力分割機構60は、エンジン10によって生じた駆動力を、減速機70を介して車輪40a駆動用の駆動軸45へ伝達する経路と、モータジェネレータMG1へ伝達する経路とに分割可能である。なお、減速機70に代えてギア比を複数段階に切換え可能な変速機を設けてもよい。
【0042】
モータジェネレータMG1,MG2の各々は、発電機としても電動機としても機能し得るが、モータジェネレータMG1は概ね発電機として動作することが多いため「発電機」と呼ばれることがあり、モータジェネレータMG2は主として電動機として動作するため「電動機」と呼ばれることがある。
【0043】
モータジェネレータMG1は、動力分割機構60を介して伝達されたエンジン10からの駆動力によって回転されて発電する。モータジェネレータMG1による発電電力は、電力ライン52を介してインバータ30に供給され、バッテリ20の充電電力として、あるいはモータジェネレータMG2の駆動電力として用いられる。
【0044】
モータジェネレータMG2は、インバータ30から電力ライン53に供給された交流電力によって回転駆動される。モータジェネレータMG2によって生じた駆動力は、減速機70を介して駆動軸45へ伝達される。なお、駆動軸45にて駆動される車輪40a以外の車輪(図示せず)については、単なる従動輪としてもよいが、さらに図示しない別のモータジェネレータにて駆動されるように構成して、いわゆる電動の四輪駆動システムを構成するようにしてもよい。
【0045】
また、回生制動動作時にモータジェネレータMG2が車輪40aの減速に伴って回転される場合には、モータジェネレータMG2に生じた起電力(交流電力)が電力ライン53へ供給される。この場合には、インバータ30が電力ライン53へ供給された交流電力を直流電力に変換して電力ライン51へ出力することによりバッテリ20が充電される。
【0046】
ECU90は、ハイブリッド動力出力装置100が搭載された自動車を運転者の指示に応じて運転させるために、自動車に搭載された機器・回路群の全体動作を制御する。ECU90は、代表的には、予めプログラムされた所定シーケンスおよび所定演算を実行するためのマイクロコンピュータおよびメモリ(RAM,ROM等)で構成される。
【0047】
次に、図2および図3を用いて、動力分割機構60による遊星歯車を利用した駆動力の機械分配について説明する。なお、図3は、図2に示される遊星歯車機構150の断面図である。
【0048】
図2および図3を参照して、動力分割機構60を構成する遊星歯車機構150は、複数のピニオンギア160と、サンギア170と、リングギア180とを有する。サンギア170およびリングギア180は回転軸が同軸のギアである。
【0049】
サンギア170の回転力が入出力されるサンギア軸172は、モータジェネレータMG1の回転軸(すなわちロータ)と接続される。また、リングギア180の回転力が入出力されるリングギア軸182は、モータジェネレータMG2の回転軸(すなわちロータ)と結合される。
【0050】
リングギア軸182は、減速機70を構成するチェーンドライブスプロケット190とさらに連結されている。チェーンドライブスプロケット190は、チェーン195によってチェーンドリブンスプロケット192と連結されている。チェーンドリブンスプロケット192は、駆動軸45と結合されたカウンタドライブギア198と連結されている。これにより、リングギア180の回転は、減速機70の所定の減速比(ギア比)に従って、駆動軸45へ伝達される。
【0051】
複数のピニオンギア160は、サンギア170およびリングギア180との間に配置され、各々が、サンギア170の外周を自転しながら公転する。各ピニオンギア160の公転力は、プラネタリキャリア軸162によりプラネタリキャリア165の回転力として与えられる。プラネタリキャリア軸162は、エンジン回転軸110と連結される。
【0052】
遊星歯車機構150では、上記のサンギア軸172、リングギア軸182およびプラネタリキャリア軸162の3軸のうちいずれか2軸の回転数およびこれらの軸に入出力されるトルクが決定されると、対応の1軸の回転数およびその回転軸に入出力されるトルクが決定されるという性質を有している。
【0053】
図3を参照して、複数のピニオンギア160は、エンジン回転軸110による回転力がプラネタリキャリア165を回転させることによって、サンギア170の外周を自転しながら公転する。プラネタリキャリア165の回転に伴ってサンギア170およびリングギア180が回転することにより、エンジン回転軸110からの動力が、ピニオンギア160を通じて外周のリングギア180および内側のサンギア170へ伝達される。これにより、エンジン10による駆動力が、駆動軸45の回転駆動力と、モータジェネレータMG1の回転駆動力とに分割される。
【0054】
なお、図2および図3に示した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、プラネタリキャリア軸162がこの発明における「動力分割機構における第1の軸」に相当し、サンギア軸172がこの発明における「動力分割機構における第2の軸」に相当し、リングギア軸182がこの発明における「動力分割機構における第3の軸」に相当する。また、駆動軸45がこの発明における「駆動軸」に相当する。また、モータジェネレータMG1がこの発明における「第1のモータジェネレータ」に相当し、モータジェネレータMG2がこの発明における「第2のモータジェネレータ」に相当する。
【0055】
上記のハイブリッド動力出力装置100を有するハイブリッド車両は、走行時において、駆動軸45に出力すべき要求パワーに相当する動力をエンジン10から出力し、出力された動力を動力分割機構60を介して駆動軸45に伝達している。このとき、たとえば、駆動軸45から出力すべき要求回転数および要求トルクに対し、エンジン回転軸110が高回転数かつ低トルクで回転している場合には、エンジン10の出力している動力の一部を動力分割機構60を介してモータジェネレータMG1に伝達する。モータジェネレータMG1は伝達された動力により発電し、その発電電力によりモータジェネレータMG2が駆動される。モータジェネレータMG2の駆動により、リングギア180を介して駆動軸45にトルクが付加される。
【0056】
逆に、駆動軸45から出力すべき要求回転数および要求トルクに対し、エンジン回転軸110が低回転数かつ高トルクで回転している場合には、エンジン10の出力している動力の一部を動力分割機構60を介してモータジェネレータMG2に伝達し、モータジェネレータMG2により電力を回収する。この回収した電力によって、モータジェネレータMG1が駆動されて、サンギア170にトルクが付加される。
【0057】
上記のように、モータジェネレータMG1およびMG2を介して電力の形でやり取りされる動力を調整することにより、エンジン10から出力された動力を所望の回転数およびトルクとして駆動軸45から出力することができる。なお、モータジェネレータMG1またはMG2によって回収された電力の一部は、バッテリ20に蓄積することが可能である。また、バッテリ20に蓄積された電力を用いて、モータジェネレータMG1またはMG2を駆動することも可能である。
【0058】
上記のような動作原理に基づき、定常走行時には、たとえばエンジン10を主駆動源としつつ、モータジェネレータMG2の動力を用いて走行する。このように、エンジン10とモータジェネレータMG2の双方を駆動源として走行することにより、必要なトルクおよびモータジェネレータMG2で発生し得るトルクに応じて、エンジン10を運転効率の高い動作点にて運転できる。したがって、ハイブリッド車両は、エンジン10のみを駆動源とする車両に比べて、省資源性および排気浄化性に優れている。
【0059】
一方、エンジン回転軸110の回転を、動力分割機構60を介してモータジェネレータMG1に伝達することができるため、エンジン10の運転によりモータジェネレータMG1で発電しつつ走行することも可能である。
【0060】
図4は、ハイブリッド動力出力装置100の各運転状況における動作を説明する共線図である。
【0061】
図4を参照して、符号210に示される車両停止時には、エンジン10およびモータジェネレータMG1,MG2の各々は停止している。
【0062】
符号220に示されるエンジン起動時には、発電機であるモータジェネレータMG1をスタータとして使うことによりエンジン10が始動される。エンジン10が始動されるとモータジェネレータMG1はその回転数が上昇して発電を始めるとともに、発電した電力はモータジェネレータMG2に供給され加速に使用される。
【0063】
符号230に示される定常走行時には、主としてエンジン10の出力で走行するので、発電は殆ど不要となり、モータジェネレータMG1の回転数は低下する。
【0064】
定常走行から加速を行なう場合には、符号240に示すように、エンジン10の回転数を上げるとともに、モータジェネレータMG1に発電させることによって、モータジェネレータMG2の駆動力を加えて加速を行なう。このように、モータジェネレータMG1の回転を制御することにより、エンジン回転数を変えることができるとともに、エンジン出力の一部をモータジェネレータMG1(発電機)を介してモータジェネレータMG2(電動機)に伝達することができる。すなわち、動力分割機構60に無段変速機の機能を持たせている。
【0065】
ハイブリッド車両では、エンジン10は、車両停止時には自動的に停止される一方で、その始動タイミングは、運転状況に応じてECU90によって制御される。
【0066】
具体的には、発進時ならびに低速走行時あるいは緩やかな坂を下るとき等の軽負荷時に
は、エンジン効率の悪い領域を避けるために、エンジン10を始動させることなく、モータジェネレータMG2による駆動力で走行する。そして、一定以上の駆動力が必要な運転状態となったときには、エンジン10が始動される。但し、暖気等のためにエンジン10の駆動が必要な場合には、エンジン10は発進時に無負荷状態で始動されて、所望の暖気が実現するまでアイドリング回転数で駆動される。
【0067】
また、ECU90は、バッテリ20が一定の充電状態を維持する制御を行なっており、SOC(State of Charge)の監視等によって、バッテリ充電量の低下を検知すると、上
記の基本的なエンジン10およびモータジェネレータMG2の作動条件に加えて、モータジェネレータMG1の駆動によってバッテリ20を充電するためにエンジン10を作動させる。
【0068】
エンジン10が、モータジェネレータMG1により動力分割機構60を介して始動される構成とすることにより、始動専用のスタータが不要となるため部品点数が少なくなって動力出力装置が安価となる。しかしながら、このような構成では、モータジェネレータMG1に起動トルク指令を与えても回転数が上がらない、いわゆる「MG1ロック異常」が発生すると、エンジンを正常に起動させることができない。
【0069】
MG1ロック異常時には、通常走行が不能となるので車両修理の必要がある。しかしながら、当該MG1ロック異常の原因が、モータジェネレータMG1のロータ焼付きによる回転不良なのか、動力分割機構60を構成する遊星歯車機構内の歯車間焼付きによる回転不良なのかの判別、すなわち、故障個所を判別しなければ、動力出力装置の分解による故障個所判別後に改めて修理作業を行なう必要があるので、修理時間が長期化する。
【0070】
このため、装置の分解を伴うことなく、外部からの回転数監視等によりソフトウェア的に故障個所の一次的な判別を行なうことが望まれるが、この場合には、異常の誤検出によって運転者に不信感を与えないように十分配慮する必要がある。
【0071】
以下においては、この発明によるハイブリッド動力出力装置における、MG1ロック異常に関する故障診断方式について説明する。
【0072】
なお、MG1ロック異常の原因には、遊星歯車機構における潤滑不良による焼付きの可能性や、モータジェネレータMG1におけるロータ焼付きの可能性が存在するが、いずれも、走行中に突発的に発生する可能性は低く、停車時の低温状態に部品間が固着することによって発生する可能性が高い。このため、MG1ロック異常は、車両起動時に検出することが効率的である。
【0073】
したがって、この発明によるハイブリッド動力出力装置におけるMG1ロック故障診断は、車両起動時にエンジン始動が併せて指示された場合に、ECU90に予めプログラムされた起動シーケンスの一環として実行される。
【0074】
図5および図6は、この発明によるハイブリッド動力出力装置におけるMG1ロック故障診断方式を説明するフローチャートである。
【0075】
図5を参照して、上記のように、エンジン始動時にはモータジェネレータMG1によってエンジンを始動するため、モータジェネレータMG1のトルク指令値が所定トルクTsに設定される(ステップS100)。
【0076】
エンジン始動が指令されると、モータジェネレータMG1の回転挙動に異常があるかどうか、すなわちMG1ロック異常の有無を判定する異常検出ステップS110が実行され
る。異常検出ステップS110は、モータジェネレータMG1の回転数に基づきモータジェネレータMG1系の異常を検出するステップS114と、ステップS114による異常検出回数を管理するためのステップS112,S116,S118とを含む。
【0077】
異常検出ステップS110の最初に、判定カウント値Cjがゼロクリアされる(ステップS112)。
【0078】
ステップS114では、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Rmg1およびRmg2の絶対値|Rmg1|,|Rmg2|の監視により、MG1ロック異常が発生しているかどうかを判定する。
【0079】
図7に示すように、エンジン始動時にトルク指令値Tsが与えられると、MG1ロック異常が発生していないときには、符号260に示すように、モータジェネレータMG1の回転数Rmg1は、所定レベルまで上昇していく。一方、MG1ロック異常が発生しているときには、符号265に示すように、モータジェネレータMG1の回転不良によりトルク指令が出ているにも関わらず回転数Rmg1は上昇しない。
【0080】
図7で説明した異常を検出するために、ステップS114では、以下の条件(i)〜(iii)が成立しているかどうかが判定される。
【0081】
(i)MG1トルク指令>Ta(Ta<Ts)によって、モータジェネレータMG1によりエンジン始動に十分なトルク指令が出されているかの判定、
(ii)|Reg|<Raにより、図7の符号265のようなモータジェネレータMG1の回転不良が発生しているかどうかの判定、および
(iii)|Rmg2|<Rbにより車両起動時(停車からの起動)であることの確認。
【0082】
これらの条件(i)〜(iii)のすべてが成立しているときに、MG1ロック異常を検出する。ステップS114において、条件(i)〜(iii)の少なくとも1つが成立していない場合には、「MG1ロック異常無」と判定されて、故障診断は終了する(ステップS160)。
【0083】
なお、車両走行中にエンジンが始動された場合には、上記条件(iii)が不成立となるので、故障診断は実質的に実行されない。
【0084】
一方、ステップS114で、MG1ロック異常が検出された場合には、異常検出の精度を上げるために、すなわち異常誤検出を防止するために、ステップS114の判定が所定周期で複数回繰返される。
【0085】
すなわち、ステップS114の判定により、MG1ロック異常が検出されるごとに判定カウント値Cjをインクリメントするとともに(ステップS116)、判定カウント値Cjが、所定の判定しきい値Cthを超えるまで(ステップS118)、ステップS114による異常検出判定が繰返し実行される。
【0086】
MG1ロック異常が所定回数以上、すなわち所定時間以上、連続的に検出された場合に始めて、MG1ロック異常が発生しているものと判断し、異常箇所を特定するための故障診断モードへの移行が指示される(ステップS120)。なお、故障診断モードでは、MG1ロックによりエンジン始動が不能であること、および故障診断モードを実行することを警告灯等によって運転者に通知するとともに、モータジェネレータMG2による設定車速パターン(微速)でのEV走行が実行される。
【0087】
図8を参照して、符号250に示すように、正常なモータ走行時には、エンジン10の回転が停止したまま(Reg=0)で、モータジェネレータMG2の回転数Rmg2が上昇し、モータジェネレータMG1は逆方向に回転することになる。
【0088】
これに対して、モータジェネレータMG1に故障が発生している、たとえばロータが回転不能となっている状態では、図9で符号270に示すように、モータジェネレータMG2の回転数Rmg2が上昇するのに伴い、正常時には停止状態を維持するエンジンの回転数Regが上昇してしまう。
【0089】
一方、遊星歯車機構に故障が発生している場合には、図10で符号280に示すように、ピニオンギア160、サンギア170およびリングギア180が回転不良を起こすため、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン10は、揃って低速回転する。
【0090】
したがって、以上説明した図9および図10に示した故障状態が発生しているかどうかを検出するという観点で、回転数データ(Rmg1,Rmg2,Reg)に基づく判定を行なうことにより、装置の分解を伴うことなく故障個所の判別を高信頼性で行なうことができる。
【0091】
図5,6を参照して、故障診断モード(ステップS120)の実行によりモータジェネレータMG2による所定速度パターンの走行が指示された下で、MG1ロック異常がモータジェネレータMG1の故障によるものか、あるいは遊星歯車機構の故障によるものかを判別するための故障個所判別ステップS130が実行される。
【0092】
故障個所判別ステップS130は、以下に説明するステップS132,S134,S136,S138を含む。
【0093】
ステップS132では、図9で説明した故障状態が発生しているかどうかを判定するために、モータジェネレータMG2の回転数Rmg2が設定車速に対応する設定回転数Rd(図9)に達したときのエンジン回転数Regが監視される。
【0094】
すなわち、ステップS132では、以下の条件(iv)〜(vi)が成立しているかどうかが判定される。
【0095】
(iv)モータジェネレータMG2の回転数が故障診断モードでの設定速度に達しているか、すなわち|Rmg2|≒Rdに達しているかの判定(たとえば、図9に示した範囲272とRmg2の比較による判定)、
(v)モータジェネレータMG1が回転不良を起こしているか、すなわち|Rmg1|<Rc(図9)が成立しているかの判定、および
(vi)モータジェネレータMG1の回転不良に伴い、エンジン回転数Regが、Rmg2の上昇に伴って上昇しているかどうか、すなわち|Reg|∝|Rmg2|となっていることの判定(たとえば、図9に示した範囲274とエンジン回転数Regとの比較による判定)。
【0096】
これらの条件(iv)〜(vi)のすべて(図6では、総括的に「条件X」と表記)が成立しているときには、モータジェネレータMG1のトルク指令値をTs♯に設定し、さらにモータジェネレータMG1が強制的に回転するような状態を作りだす(ステップS134)。
【0097】
さらに、この状態でも、ステップS132における条件(iv)〜(vi)、少なくと
も条件(iv)が成立しているかどうかが判定される(ステップS136)。
【0098】
ステップS136によって、モータジェネレータMG1が継続的に回転していないことが確認された場合には、モータジェネレータMG1故障を検出し、すなわちMG1ロック異常の原因がモータジェネレータMG1に存在することを判別した上で、故障診断が終了される(ステップS140)。
【0099】
一方、ステップS136により、モータジェネレータMG1が回転していること、すなわち少なくとも|Rmg1|>Rcであることが検出された場合には、MG1ロック異常の検出が正しいかどうかを再確認するために、再び異常検出ステップS110が実行される。
【0100】
一方、ステップS132において、条件(iv)〜(vi)の少なくとも1つが不成立であるときには、図9に示した故障状態は発生していないと判定し、遊星歯車機構に故障が発生しているかどうかを確認するためのステップS138が実行される。
【0101】
ステップS138では、図10に示した故障状態が発生しているかどうかを判定するために、|Rmg1|,|Rmg2|,|Reg|の各々が、共通の低速範囲内であるか、具体的には、|Rmg1|,|Rmg2|,|Reg|<Re(図10)が成立するかどうかが判定される。
【0102】
図10に示した故障状態の発生時には、遊星歯車機構での回転不良により、|Rmg1|,|Rmg2|,|Reg|の間の速度差も極小となるので、当該速度差についても一定範囲282(図10)内であることを判定条件に用いてもよい。
【0103】
エンジン回転数|Reg|およびモータジェネレータ回転数|Rmg1|,|Rmg2|が所定範囲内である場合には、遊星歯車機構の故障を検出して、すなわちMG1ロック異常の原因が遊星歯車機構に存在することを判別した上で、故障診断が終了される(ステップS150)。
【0104】
一方、ステップS138で、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン10の回転数が極低速で揃わない場合、すなわち|Rmg1|,|Rmg2|,|Reg|が共通の所定範囲内に収まっていない場合には、再び、異常検出ステップS110が実行される。
【0105】
すなわち、図5および図6に示したフローチャートと、この発明の対応関係を説明すれば、ステップS100がこの発明における「始動手段」に相当し、ステップS110がこの発明における「異常検出手段」に相当し、ステップS120がこの発明における「故障診断モード移行手段」に相当し、ステップS130がこの発明における「故障箇所判別手段」に相当する。
【0106】
さらに、図6のステップS132はこの発明における「第1の故障判定手段」に相当し、ステップS136はこの発明における「第2の故障判定手段」に相当する。また、ステップS138は、この発明における「第3の故障判定手段」に相当する。
【0107】
また、図6に示したフローチャートにおいて、故障個所判別ステップS130内部での故障診断フローを変更することも可能である。たとえば、遊星歯車機構の故障有無を判定するステップS138の実行後に、ステップS132,S134,S136を実行する故障診断フローとすることも可能である。
【0108】
以上説明したように、この発明によるハイブリッド動力出力装置によれば、車両起動の際のエンジン始動時にMG1ロック異常を自動的に検出できるとともに、MG1ロック異常検出時には、通常走行が不能であることを運転者に検知するとともに、故障診断モードに実行により故障箇所がモータジェネレータMG1および遊星歯車機構(動力分割機構60)のいずれであるかを判別できる。このため、故障情報の運転者への迅速な通知および当該故障情報に基づく修理時間の短縮が可能となる。
【0109】
特に、モータジェネレータMG1および遊星歯車機構の故障判別を、装置の分解を伴うことなくソフトウェア処理のみによって簡易に実行できる。さらに、所定の異常検出条件(ステップS114)が所定期間継続して発生している場合に、始めてMG1ロック異常を検出する機構としているので、異常を誤検出する危険性が低い。
【0110】
さらに、図6に示したステップS136およびステップS138で、MG1回転不良または遊星歯車機構回転不良が確信できなかった場合には、再び図5に示した異常検出ステップS110を実行する構成としているので、さらに誤検出の危険性が低い。
【0111】
[実施の形態2]
実施の形態1では、MG1ロック異常は車両停止時の低温状態時に発生する可能性が高い点に考慮して、車両起動時に実行されるMG1ロック故障診断方式を説明した。しかしながら、遊星歯車機構については、走行中にも異物噛み込みや完全な潤滑油切れ等によって焼き付きが発生してロックする可能性がある。したがって、実施の形態2では、車両走行中に発生した遊星歯車機構の故障を効率的に検知可能な故障診断方式について説明する。
【0112】
図11は、この発明によるハイブリッド動力出力装置における実施の形態2に従う遊星歯車機構故障診断方式を説明するフローチャートである。ECU90は、車両走行中に、予め格納されたプログラムの実行により、図11のフローチャートに従う処理を所定周期毎に実行する。
【0113】
図11を参照して、車両走行中には、エンジン回転数の絶対値|Reg|、モータジェネレータMG1の回転数の絶対値|Rmg1|および駆動軸(プロペラシャフト)45の回転数の絶対値|Rps|の速度が揃った状態が所定時間継続したかどうかが検出される(ステップS200)。なお、駆動軸45の回転速度Rpsは、減速機70(または変速機)のギア比とモータジェネレータMG2の回転数Rmg2の積によって定義される。
【0114】
ステップS200における判定は、|Reg|,|Rmg1|,|Rps|の速度差ΔRdが図12に示すように極小となった状態が、所定時間継続して発生したことを検出する。図12に示した共線図は、図10と同様の遊星歯車機構での回転不良による故障状態が、車両走行中に発生している状態に対応する。
【0115】
すなわち、ステップS200では、以下の条件(vii)が成立しているかどうかが判定される。
【0116】
(vii)|Reg−Rmg1|≦Rjかつ|Rmg1−Rps|≦Rjが所定時間Tj以上継続していること(Rj,Tjは、適宜定めた所定の判定値)。
【0117】
車両走行中に、|Reg|、|Rmg1|および|Rps|の揃速状態(速度差極小状態)が所定時間継続する現象が発生した場合、すなわちステップS200のYES判定時には、ECU90は、遊星歯車機構の故障を仮検出する(ステップS210)。
【0118】
一方、このような現象が発生しなかった場合、すなわちステップS200のNO判定時には、ECU90は、故障検出することなく(ステップS260)、遊星歯車機構故障診断を終了する。
【0119】
ECU90は、ステップS210により遊星歯車機構の故障が仮検出された場合には、ステップ群S221〜S226で構成される運転点変更指示ステップS220を実行して、エンジン回転数Regの領域を変更するように、エンジン10の運転点変更を指示する。
【0120】
ECU90は、故障仮検出時には、その時点におけるエンジン回転数Regが高回転域であるかどうかを、その時点のエンジン回転数Regと所定の基準回転数Rthとの比較によって判定する(ステップS221)。基準回転数Rthは、たとえば2000rpmに設定される。
【0121】
ECU90は、ステップS221のNO判定時(Reg<Rth)には、ステップS223により、エンジン10が低回転域および停止状態のいずれであるかを判定する。エンジン回転数が低回転数域(0<Reg<Rth)であるときにはステップS223はYES判定とされ、停止状態(Reg=0)であるときには、ステップS223はNO判定とされる。
【0122】
エンジン回転数Regが高回転域であるとき(ステップS221のYES判定時)には、ECU90は、エンジン回転数Regが低回転域(Reg<Rth)まで減少するように、エンジン10の回転数指令値Reg♯の変更により運転点変更指示を発生する(ステップS222)。
【0123】
また、エンジン回転数Regが低回転域であるとき(ステップS223のYES判定時)には、ECU90は、エンジン10が停止するように、エンジン10の回転数指令値Reg♯の変更(Reg♯=0)による運転点変更指示を発生する(ステップS224)。
【0124】
一方、故障仮検出時点においてエンジン停止状態であるとき(ステップS223におけるNO判定時)には、ECU90は、エンジン10に対して始動指令が発生されて、モータジェネレータMG1を用いたクランキング制御が実施される(ステップS226)。
【0125】
このように、ECU90は、ステップS220では、ステップS210による遊星歯車機構の故障仮検出時におけるエンジン回転数Regに応じて、エンジン回転数域を変更するように、エンジン10の運転点を変更する。
【0126】
ECU90は、ステップS222またはステップS224の実行時、すなわち故障仮検出においてエンジンが非停止状態である場合には、ステップS222およびS224によるエンジン10の運転点変更に伴うエンジン出力低下を補償するように、モータジェネレータMG2の出力を増加させてもよい(ステップS230)。この場合には、エンジン10の出力減に対応してモータジェネレータMG2の出力が増加するように、モータジェネレータMG2のトルク指令値が増加されて、車両運転性の維持が図られる。
【0127】
さらに、ECU90は、ステップS240では、ステップS220におけるエンジン10の運転点変更完了後における速度状態(Rmg1,Reg,Rps)が遊星歯車機構故障時に想定される異常状態に該当するかどうかに基いて、遊星歯車機構の故障判定を行なう。
【0128】
ステップS220でのエンジン回転数変更により、エンジン回転数指令値Reg♯が変更される。この際に、遊星歯車機構にロック故障が発生していると、速度状態(Rmg1,Reg,Rps)に以下のような異常状態が発生することが想定される。まず、駆動軸45に質量が掛かり、Rmg1およびRegがRpsに引き摺られるため、エンジン回転数Regが指令値Reg♯に追従できなくなる。また、モータジェネレータMG1がトルクを出力してエンジン回転数Regを指令値Reg♯に追従させようとするので、モータジェネレータMG1のトルク指令値も一定値以上に増加するが、ステップS200と同様のReg,Rmg1,Rpsの揃速状態(速度差極小状態)が再現される。
【0129】
上記異常状態を検出するために、ステップS240では、下記の条件(viii)〜(xi)が成立しているかどうかが判定される。
【0130】
(viii)|Reg−Reg♯|>Rxによる(Rx:判定値)、ステップS220による運転点変更後の指令値Reg♯にエンジン回転数Regが追従できていないことの判定、
(ix)|Reg−Rmg1|≦Rjかつ|Rmg1−Rps|≦Rjの成立による、|Reg|、|Rmg1|および|Rps|の揃速状態(速度差極小状態)が発生していることの判定、
(x)モータジェネレータMG1が一定値以上のトルクを出力していることの判定、
(xi)車速が一定速度(たとえば15km/h程度)以上であることの判定。
【0131】
これらの条件(viii)〜(xi)のすべてが所定時間継続して成立しているときに、ステップS240はYES判定とされ、ECU90は、ステップS250により遊星歯車機構の故障検出を確定して、故障診断を終了する。
【0132】
ステップS250により遊星歯車機構の故障検出が確定されると、通常走行が可能であることを運転者に通知するとともに、故障箇所が遊星歯車機構であることを特定するダイアグモニタに表示することができる。これにより、故障情報の運転者への迅速な通知および当該故障情報に基づく修理時間の短縮が可能となる。
【0133】
これに対して、ステップS240において、条件(viii)〜(xi)の少なくとも1つが成立していない場合には、ECU90は、故障検出することなく(ステップS260)、故障診断を終了する。
【0134】
一方、遊星歯車機構の故障仮検出時においてエンジンが停止状態(Reg=0)であるとき(ステップS223のNO判定時)には、ステップS226によってエンジン始動が指令された後、以下に示す処理により、遊星歯車機構の故障診断が実行される。
【0135】
ステップS226でエンジン始動が指令され、モータジェネレータMG1をスタータとして用いるクランキング制御が実施されると、ECU90は、ステップS235により、クランキング制御によるエンジン始動が不可能かどうかを判定する。
【0136】
すなわち、ステップS235では、下記の条件(xii)および(xiii)が判定される。
【0137】
(xii)MG1トルク指令値>Taによって、モータジェネレータMG1によりエンジン始動に十分なトルク出力指示が出されているかの判定、
(xiii)|Reg|<Rxによりエンジン停止状態が継続しているかどうかの判定、ここで、基準回転数Rxは、エンジンが停止しているかどうかを検出するための回転数(たとえば100rpm程度)に設定される。
【0138】
条件(xii)および(xiii)の少なくとも一方が不成立であるときには、「モータジェネレータMG1によるクランキングトルクが発生しているにもかかわらずエンジン10の始動不可」との異常現象が検出されないため、ECU90は、遊星歯車機構の故障検出をすることなく(ステップS260)、故障診断が終了される。
【0139】
一方、条件(xii)および(xiii)の両方が所定時間継続して成立しているときに、ステップS235はYES判定とされる。この場合には、エンジン10が始動不可であるため、モータジェネレータMG2の出力によって、車速を上昇させるような故障診断走行が指示される(ステップS237)。
【0140】
ECU90は、ステップS237により車速が上昇した後に、ステップS200と同様のReg,Rmg1,Rpsの揃速状態(速度差極小状態)が再び発生するかどうかを判定する(ステップS240♯)。
【0141】
すなわち、ステップS240♯では、下記の条件(xiv)および(xv)が判定される。
【0142】
(xiv)車速が所定速度Vs以上であること(VsはステップS237での指令に対応して定められる所定速度であり、たとえば15km/h程度)、
(xv)|Reg−Rmg1|≦Rjかつ|Rmg1−Rps|≦Rjが成立していること(上記条件(ix)と同様、ただし判定値Rjは共通でも別個でも可)。
【0143】
条件(xiv)および(xv)の両方が所定時間継続して成立しているときに、ステップS240♯はYES判定とされる。ステップS240♯がYES判定である場合には、ECU90は、遊星歯車機構の故障検出を確定して(ステップS250)、故障診断を終了する。
【0144】
一方、ECU90は、ステップS240♯がNO判定である場合には、ステップ210により遊星歯車機構の故障を仮検出とした上で、上述したエンジン10の運転点変更指示を伴うステップS220以降の故障診断を実行する。
【0145】
以上説明したように、実施の形態2に従う故障診断によれば、図12に示すような遊星歯車機構の故障検出時に発生する共線図パターン(揃速状態)が、通常運転状態でも発生し得る点を考慮して、一旦図12に示す揃速状態が検出された場合には、エンジンの運転点(回転数領域)を変更した上で、運転点変更完了後における速度状態(Rmg1,Reg,Rps)が遊星歯車機構故障時に想定される異常状態に該当するかどうかに基いて遊星歯車機構の故障検出を確定する。
【0146】
この結果、特に、図12の共線図パターンの発生についての監視のみに基づく故障診断方式と比較して誤検出を防止した上で、走行中に発生した遊星歯車機構の故障検出を早期に行なうことが可能となる。
【0147】
すなわち、図11に示したフローチャートと、この発明の対応関係を説明すれば、ステップS200およびS210が本発明の「故障仮検出手段」に対応し、ステップS220が本発明の「エンジン運転点変更指示手段」に対応し、ステップS240、S240♯およびS250が本発明の「故障検出手段」に対応する。また、ステップS230は本発明の「動力出力維持手段」に対応し、ステップS237は本発明の「車速上昇手段」に対応する。
【0148】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】この発明によるハイブリッド車両の動力出力装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した動力分割機構の構成を示す図である。
【図3】遊星歯車機構の断面図である。
【図4】ハイブリッド動力出力装置100の各運転状況における動作を説明する共線図である。
【図5】この発明によるハイブリッド動力出力装置における実施の形態1に従うMG1ロック故障診断方式を説明する第1のフローチャートである。
【図6】この発明によるハイブリッド動力出力装置における実施の形態1に従うMG1ロック故障診断方式を説明する第2のフローチャートである。
【図7】エンジン起動指令時のモータジェネレータMG1の回転数挙動を説明する図である。
【図8】正常なモータ走行時におけるハイブリッド動力出力装置の挙動(故障状態)を説明する共線図である。
【図9】MG1回転不良時におけるハイブリッド動力出力装置の挙動(故障状態)を説明する共線図である。
【図10】遊星歯車機構不良時におけるハイブリッド動力出力装置の挙動(故障状態)を説明する共線図である。
【図11】実施の形態2に従う車両走行中での遊星歯車機構の故障診断方式を説明するフローチャートである。
【図12】車両走行中での遊星歯車機構不良時におけるハイブリッド動力出力装置の挙動(故障状態)を説明する共線図である。
【符号の説明】
【0150】
10 エンジン、20 バッテリ、30 インバータ、40a 車輪、45 駆動軸、50 トランスアクスル、51,52,53 電力ライン、60 動力分割機構、70 減速機、80 モータ、100 ハイブリッド動力出力装置、110 エンジン回転軸、150 遊星歯車機構、160 ピニオンギア、162 プラネタリキャリア軸、165
プラネタリキャリア、170 サンギア、172 サンギア軸、180 リングギア、182 リングギア軸、MG1 モータジェネレータ(発電機,エンジン始動)、MG2 モータジェネレータ(電動機)、Reg エンジン回転数、Rmg1,Rmg2 回転数(モータジェネレータ)、Rps 回転数(駆動軸)、S110 異常検出ステップ、S130 故障個所判別ステップ、S220 運転点変更指示ステップ、ΔRd 速度差(エンジン、MG1、駆動軸間)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の動力出力装置であって、
第1から第3の軸と結合された遊星歯車機構で構成され、前記第3の軸に前記駆動軸が結合されるとともに、前記第1ないし第3の軸のうちのいずれか2軸に対し動力が入出力されたときに、その入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸に対して入出力する3軸式の動力分割機構と、
前記第1の軸にその回転軸が結合し、燃料の燃焼により前記第1の回転軸に対し動力を出力するエンジンと、
前記第2の軸にその回転軸が結合し、前記第2の軸に対し動力を入出力することが可能な第1のモータジェネレータと、
前記第3の軸にその回転軸が結合し、前記第3の軸に対し動力を入出力することが可能な第2のモータジェネレータと、
前記第1のモータジェネレータにより前記動力分割機構を介して前記エンジンを回転駆動することにより該エンジンを始動させる始動手段と、
前記始動手段によって前記第1のモータジェネレータの駆動指令が発せられた際に、前記第1のモータジェネレータの速度監視に基づいて、前記第1のモータジェネレータの回転異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段による異常検出時に、前記エンジンを駆動させることなく前記第2のモータジェネレータからの動力によって、車両を所定速度パターンで走行させる故障診断モードへの移行を指示する故障診断モード移行手段と、
前記故障診断モードの実行時に、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記第2のモータジェネレータの回転数に基づいて、前記第1のモータジェネレータおよび前記遊星歯車機構のいずれで故障が発生しているかを判別するための故障個所判別手段とを備える、ハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項2】
前記故障個所判別手段は、
前記故障診断モードの実行時に、前記第1のモータジェネレータの回転数が所定値まで上昇せず、かつ、前記エンジンの回転数が前記第2のモータジェネレータの回転数に応じて上昇する第1の故障状態が発生しているかどうかを判定する第1の故障判定手段と、
前記第1の故障判定手段によって前記第1の故障状態の発生が判定された場合に、前記第1のモータジェネレータにさらに駆動指令を発するとともに、前記第1のモータジェネレータの回転数が該駆動指令に応じて上昇しないときに、前記第1のモータジェネレータの故障を検知する第2の故障判定手段とを含む、請求項1記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項3】
前記故障個所判別手段は、前記第1の故障判定手段によって前記第1の故障状態の非発生が判定された場合に、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記第2のモータジェネレータの回転数が共通の所定範囲内であるときに、前記遊星歯車機構の故障を検知する第3の故障判定手段をさらに含む、請求項2記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項4】
前記故障個所判別手段は、前記故障診断モードの実行時に、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記第2のモータジェネレータの回転数が共通の所定範囲内であるときに、前記遊星歯車機構の故障を検知する第3の故障判定手段を含む、請求項1記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項5】
前記第2の故障判定手段は、前記駆動指令を与えられた前記第1のモータジェネレータの回転数が所定速度以下であるときに、前記第1のモータジェネレータの故障を検知し、かつ、該回転数が前記所定速度を超えるときには、再び前記異常検出手段が作動される、請求項2または3記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項6】
前記第3の故障判定手段は、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記第2のモータジェネレータの回転数が所定範囲内であるときに前記遊星歯車機構の故障を検知する一方で、該回転数が前記所定範囲外であるときには、再び前記異常検出手段が作動される、請求項3または4記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項7】
前記異常検出手段は、前記第1のモータジェネレータに駆動指令が発せられた状態において、前記第1のモータジェネレータの回転数と所定速度との比較を所定周期で所定の複数回繰り返し実行し、かつ、前記複数回の比較において継続的に前記回転数が前記所定速度以下であるときに、前記第1のモータジェネレータの回転異常を検出する、請求項1から6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項8】
前記異常検出手段は、前記ハイブリッド車両の停止時において、前記始動手段によって前記第1のモータジェネレータの駆動指令が発せられた際に作動する、請求項1から7のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項9】
駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の動力出力装置であって、
第1から第3の軸と結合された遊星歯車機構で構成され、前記第3の軸に前記駆動軸が結合されるとともに、前記第1ないし第3の軸のうちのいずれか2軸に対し動力が入出力されたときに、その入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸に対して入出力する3軸式の動力分割機構と、
前記第1の軸にその回転軸が結合し、燃料の燃焼により前記第1の回転軸に対し動力を出力するエンジンと、
前記第2の軸にその回転軸が結合し、前記第2の軸に対し動力を入出力することが可能な第1のモータジェネレータと、
前記第3の軸にその回転軸が結合し、前記第3の軸に対し動力を入出力することが可能な第2のモータジェネレータと、
前記ハイブリッド車両の走行中に、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる状態が所定期間継続したときに、前記遊星歯車機構の故障を一次的に検出する故障仮検出手段と、
前記故障仮検出手段により前記遊星歯車機構の故障が一次的に検出されたときに、前記エンジンの回転数指令値を変更するように前記エンジンの運転点の変更を指示するエンジン運転点変更指示手段と、
前記エンジン運転点変更指示手段による前記エンジンの運転点変更指示後において、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記駆動軸の回転数が遊星歯車機構故障時に想定される異常状態に該当するかどうかに基いて前記遊星歯車機構の故障を検出する故障検出手段とを備える、ハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項10】
前記エンジン運転点変更指示手段は、
前記故障仮検出手段により前記遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点における前記エンジンの回転数が所定回転数以上であるときに、前記前記エンジンの回転数が前記所定回転数より低くなるようにエンジン回転数指令値を変更する手段を含み、
前記故障検出手段は、
前記エンジン運転点変更指示手段による前記エンジン回転数指令値の変更後において、前記エンジン回転数指令値の変更に追従して前記エンジン回転数が変化できない第1の状態と、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる第2の状態との両方が所定時間継続して発生したときに、前記遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む、請求項9記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項11】
前記エンジン運転点変更指示手段は、
前記故障仮検出手段により前記遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点において、前記エンジンが非停止状態であり、かつ、前記エンジンの回転数が所定回転数未満であるときに、前記エンジンを停止させるようにエンジン回転数指令値を変更する手段を含み、
前記故障検出手段は、
前記エンジン運転点変更指示手段による前記エンジン回転数指令値の変更後において、前記エンジン回転数指令値の変更に追従して前記エンジン回転数が変化できない第1の状態と、前記エンジン、前記第1のモータジェネレータおよび前記駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる第2の状態との両方が所定時間継続して発生したときに、前記遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む、請求項9記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項12】
前記エンジン運転点変更手段による前記前記エンジンの運転点変更指示時に、前記運転点変更による前記エンジンの出力低下を補償するように前記第2のモータジェネレータの出力増加を指示する動力出力維持手段をさらに備える、請求項10または11記載のハイブリッド車両の動力出力装置。
【請求項13】
前記エンジン運転点変更指示手段は、
前記故障仮検出手段により前記遊星歯車機構の故障が一次的に検出された時点において前記エンジンが停止状態である場合に、前記エンジンに始動指示を発する手段を含み、
前記動力出力装置は、
前記エンジン運転点変更指示手段によって前記始動指示が発せられても前記エンジンが始動できない場合に、前記第2のモータジェネレータからの出力により前記ハイブリッド車両の速度を上昇させる車速上昇手段をさらに備え、
前記故障検出手段は、
前記車速上昇手段による前記ハイブリッド車両の速度上昇後において、前記第1のモータジェネレータおよび前記駆動軸の間の回転数差が所定範囲内となる状態が所定時間継続したときに、前記遊星歯車機構の故障を検出する手段を含む、請求項9記載のハイブリッド車両の動力出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−52833(P2006−52833A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115958(P2005−115958)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】