説明

ハードマスク材料

【課題】集積回路製造工程のバックエンドプロセス、およびフロントエンドプロセスにおいて利用することができる、高硬度、且つ低応力のハードマスク膜を提供する。
【解決手段】ハードマスク膜は、応力が約−600MPaから600MPaの範囲内であり、硬度は少なくとも約12Gpaである。ハードマスク膜は、PECVD処理チャンバにおいて、高密度化プラズマ後処理を複数回行うことによって、ドープ済または未ドープのシリコンカーバイドの副層を複数成膜することによって得られる。ハードマスク膜は、Si、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される高硬度のホウ素含有膜を含む。ハードマスク膜は、ゲルマニウム含有率が少なくとも約60原子パーセントと、ゲルマニウム含有率が高いGeNハードマスク材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスで利用するハードマスク膜に関する。本発明はまた、当該ハードマスク膜を形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードマスク膜は通常、ダマシン処理のトレンチ形成および/またはビア形成等のリソグラフィーパターニング処理において、犠牲層として利用される。ダマシン処理では通常、パターニングを行う必要がある誘電体層上にハードマスク膜を成膜する。ハードマスク膜の上方にフォトレジスト層を成膜し(任意で、ハードマスクとフォトレジストとの間には反射防止層を設けるとしてもよい)、フォトレジストを所望に応じてパターニングする。パターンの位置を下方の構造の位置に合わせる際にはレーザを通常利用するので、ハードマスクは、位置合わせ用の波長において略透明でなければならない。フォトレジストを現像した後、パターンの下方に露出しているハードマスク膜を除去し、露出している誘電体をエッチングして、必要な寸法を持つ凹状のフィーチャーを形成する。ハードマスクの残った部分は、エッチング処理中において残しておく必要がある誘電体の一部分を保護する。このため、ハードマスクの材料は、誘電体に対して相対的に、エッチングの選択性が良好な材料でなければならない。反応性イオンエッチング(RIE)は、ハロゲンをベースとするプラズマ化学反応を利用するエッチングであり、誘電体エッチングに通常用いられる技術である。
【0003】
そして、エッチングで形成された凹状のフィーチャーを銅を始めとする導電材料で充填して、集積回路の導電経路を形成する。通常は、凹状のフィーチャーを充填した後、製造途中の半導体基板からハードマスク材料を完全に除去する。
【0004】
この分野で現在ハードマスク材料として一般的に用いられているのは、物理化学気相成長法(PVD)によって成膜される窒化チタンである。また、シリコンカーバイドもハードマスク材料として利用されることが、米国特許第6,455,409号および米国特許第6,506,692号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハードマスク膜の特性および製造方法を改善する。リソグラフィー技術では、圧縮応力または引張応力が高い材料では基板上に形成されるハードマスク膜がバックリングまたは層間剥離してしまい、リソグラフィーにおけるパターンの位置合わせの精度が低くなるので、応力が低いハードマスク材料が必要である。応力が低いことに加えて、下方に位置する材料を適切に保護するべく、硬度が高いこと、および/または、ヤング率が高いこともハードマスク材料には求められる。これは、硬度およびヤング率とエッチングの選択性との間には通常、高い相関関係が見られるためである。
【0006】
低応力および高硬度(または高ヤング率)を同時に実現することは、材料の硬度が高くなると通常は圧縮応力が大きくなるので、特に困難である。例えば、従来利用されている窒化チタンは、比較的高硬度の材料であり、圧縮応力は約1,000MPaを超える。このように圧縮応力が高いハードマスクを、特に軟性の超低誘電率(low−k)(k=2.8以下)の誘電体と共に、特にアスペクト比が高いフィーチャー(例えば、アスペクト比が2:1以上のフィーチャー)を画定する際に用いると、位置合わせが上手くいかず、形成された構造にはねじれが発生するという問題が生じる。シリコンカーバイドは一般的に、物理特性が広範囲にわたり、本発明に係る特別な成膜処理を利用して用意しなければ、応力を低く抑えつつ硬度を高く上げることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一部の側面によると、低応力且つ高硬度のハードマスク材料が提供される。一部の実施形態によると、本発明に係る膜は、硬度が少なくとも約12GPaで、好ましくは少なくとも約16GPaで、例えば、少なくとも約20GPaであり、応力が約−600MPaから600MPaの範囲内であり、例えば、約−300MPaから300MPaの範囲内であり、最も好ましいのは約0MPaから300MPaの範囲内である。本発明に係る膜は通常、金属をほとんど含んでおらず、ドーピングはされていてもいなくてもいが、高硬度且つ低応力のシリコンカーバイドであるSi、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される材料を含む。これらの材料は、プラズマ化学気相成長(PECVD)およびその他のCVDをベースとする処理によって形成され得る。本発明によって得られるハードマスクは、フロントエンドおよびバックエンドの半導体プロセスのさまざまなリソグラフィー工程で利用することができる。低応力且つ高硬度という特性を得るための成膜条件を説明している。このような特性に対応する膜の構造特性も記載している。
【0008】
一側面によると、高硬度且つ低応力のハードマスク膜を半導体基板に形成する方法は、プラズマ化学気相成長(PECVD)処理チャンバに半導体基板を導入する段階と、
プラズマ高密度化処理を複数回実行することによって、ドープされている多層シリコンカーバイド膜またはドープされていない多層シリコンカーバイド膜を成膜する段階とを備える。プラズマ高密度化処理は、シリコンカーバイドの副層がそれぞれ成膜された後に実行することが好ましい。一部の実施形態によると、シリコン含有前駆体(テトラメチルシラン)を含む処理ガスを処理チャンバに導入し、プラズマを形成してシリコンカーバイドハードマスク膜の第1の副層を成膜する段階を備える。続いて、例えば、パージガスで処理チャンバをパージすることによって、処理チャンバからシリコン含有前駆体を除去する。この後、処理チャンバにプラズマ処理ガスを導入して、プラズマを形成して、シリコンカーバイドの副層をプラズマ処理して高密度化する。プラズマ処理ガスおよびパージガスは、同じガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。パージおよび/またはプラズマ処理に適したガスとしては、不活性ガス(例えば、He、Ar)、CO、N、NH、およびHがある。一部の実施形態によると、He、Ar、H、または、これらのさまざまな混合ガスは、パージおよびプラズマ処理の双方について利用が好ましい。シリコンカーバイドの第1の副層をプラズマ処理した後、成膜、パージ、および、プラズマ処理を繰り返して、シリコンカーバイドの副層を複数層形成して高密度化する。それぞれの副層は通常、高密度化を容易にするべく、厚みが約100Å未満であり、例えば、約50Å未満である。一部の実施形態に係る方法によれば、10層以上、例えば、20層以上の副層を成膜および高密度化してハードマスク膜を形成し、一部の実施形態に係る当該ハードマスク膜は、厚みが約1,000Åから約6,000Åの範囲内である。
【0009】
プラズマ処理を複数回実施することによって、一層のシリコンカーバイド膜に比べて、硬度が改善される。一部の実施形態によると、このように形成された高硬度且つ低応力の膜は、Si−C結合の含有率が高い非ドープのシリコンカーバイド膜を含む。一部の実施形態によると、Si−Hに対する赤外スペクトルにおけるSi−Cのピーク面積の割合は、少なくとも約20である。一部の実施形態によると、C−Hに対する赤外スペクトルにおけるSi−Cのピーク面積の割合は、少なくとも約50である。形成されるシリコンカーバイド膜は通常、密度が少なくとも約2g/cmである。一部の実施形態によると、高周波無線周波(HFRF)および低周波無線周波(LFRF)によるプラズマ生成に基づきプラズマ後処理を実行するのが好ましい。この場合、LF/HFの電力比は少なくとも約1.5であり、例えば、少なくとも約2である。
【0010】
本発明の別の側面によると、高硬度且つ低応力の膜を形成する方法は、Si、Si、Si、B、およびBから成る群から選択されるホウ素含有膜を成膜する段階を備える。当該膜は、適切なシリコン含有前駆体、炭素含有前駆体、または、ホウ素含有前駆体を用いてPECVDによって成膜することができる。例えば、一実施形態によると、Siを成膜する場合、ホウ素含有前駆体(例えば、B)ならびに炭素およびシリコンを含む前駆体(例えば、テトラメチルシラン)をPECVD処理チャンバに供給して、プラズマ内でSi膜を形成する。高硬度且つ低応力の膜を形成する際には、LF/HF電力比が少なくとも約1.5、例えば、少なくとも約2である二重周波数プラズマを利用することが好ましい。一部の実施形態によると、当該膜はホウ素の含有率が高く、赤外スペクトルにおける対応するピーク面積によって決まるBC/[BC+SiC]の割合が少なくとも約0.35である。一部の実施形態によると、高硬度でホウ素含有率が高いSi膜は、Bを流量をテトラメチルシランの流量の少なくとも約2倍にして流入させることによって得られる。ホウ素含有膜は、一般的に親水性でCMPの化学反応に可溶であるので、パターニング完了後に化学機械研磨(CMP)で容易に除去できるという利点がある。
【0011】
本発明の別の側面によると、GeNハードマスク膜を形成する方法が提供される。一部の実施形態によると、当該方法は、PECVD処理チャンバに半導体基板を導入する段階と、GeNハードマスク膜を形成する段階とを備える。当該膜は、ゲルマニウム含有前駆体および窒素含有前駆体をPECVD処理チャンバに流入させ、プラズマを形成することによって形成することができる。一部の実施形態によると、形成されたGeN膜は、ヤング率が少なくとも約100GPaであり、ゲルマニウム含有率が高い。一部の実施形態によると、このようにゲルマニウム含有率が高い膜は、少なくとも約60原子パーセント、好ましくは、70原子パーセントのゲルマニウムを含む(水素を除く)。膜の密度は、4g/cmを超えるとしてよい。GeNは、リソグラフィーパターニングで利用される位置合わせ波長において略透明であるという利点を持つ(例えば、スペクトルの可視波長領域および近赤外領域の波長)。一部の実施形態によると、GeN膜は、ゲルマン、アンモニア、および窒素を含む処理ガスにおいてプラズマを形成することによって成膜される。尚、ゲルマン/アンモニアの流量比は少なくとも約0.05である。一部の実施形態によると、二重周波数プラズマ源を用いてGeN膜を成膜することが好ましい。一部の実施形態によると、成膜時のLF/HFの電力比は、少なくとも約1である。GeN膜は、上記の他の膜と同様に、バックエンドおよびフロントエンドの半導体プロセスの数多くの処理工程において利用することができる。
【0012】
一部の実施形態によると、ハードマスク膜(例えば、上述した膜のうち任意のもの)は誘電体、例えば、誘電率が約3未満、例えば、約2.8未満である誘電体の層に成膜される。ハードマスク膜の上には通常、フォトレジスト層が成膜される(しかし、必ずしもハードマスクと直接接触させて成膜されるものではなく、間に反射防止層を設けるとしてもよい)。この後リソグラフィーパターニングを実行して、誘電体層内に凹状のフィーチャー(ビアおよび/またはトレンチ)を形成する。パターニングが完了してフィーチャーを金属で充填した後、ハードマスクを(例えば、CMPによって)除去する。一部の実施形態によると、誘電体に対するハードマスク膜のエッチング選択性は、通常はRIEプロセスであるが、ビアおよび/またはトレンチをエッチングする際に利用される化学反応を参照すれば、少なくとも約8:1である。
【0013】
他の実施形態によると、ハードマスク膜(例えば、上記の膜のうち任意のもの)は、フロントエンドプロセスにおいてポリシリコン層上に成膜され、さまざまな処理工程においてポリシリコンを保護する膜として利用される。一部の実施形態によると、ハードマスク材料は、除去されることはなく、製造後の完成品であるデバイスにも残る。
【0014】
本発明の上記およびその他の特徴および利点は、対応する図面を参照しつつ、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1B】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1C】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1D】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1E】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1F】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1G】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1H】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1I】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1J】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図1K】例えば、半導体デバイス製造のバックエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図2A】例えば、半導体デバイス製造のフロントエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図2B】例えば、半導体デバイス製造のフロントエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図2C】例えば、半導体デバイス製造のフロントエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図2D】例えば、半導体デバイス製造のフロントエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図2E】例えば、半導体デバイス製造のフロントエンドリソグラフィープロセスにおいて、本明細書に記載するハードマスクを用いて形成されるデバイス構造を示す断面図である。
【図3】本明細書に記載するハードマスクを利用することが適切なバックエンドリソグラフィープロセスを説明するための処理フローチャートである。
【図4】本明細書に記載するハードマスクを利用することが適切なフロントエンドリソグラフィープロセスを説明するための処理フローチャートである。
【図5A】本明細書に記載する実施形態に応じたシリコンカーバイドのハードマスクを成膜する方法を説明するための処理フローチャートである。
【図5B】プラズマ高密度化後処理を複数回実施することによって得られる多層シリコンカーバイド膜の赤外スペクトルを、単層シリコンカーバイド膜の赤外スペクトルと比較して示す図であり、Si−Cピークがより顕著になっていることが分かる。
【図5C】多層シリコンカーバイド膜の応力特性および硬度特性の実験結果を、単層膜と比較して示す図である。
【図5D】多層シリコンカーバイド膜の応力特性およびヤング率特性の実験結果を、単層膜と比較して示す図である。
【図6A】本明細書に記載する実施形態に応じたホウ素含有ハードマスクを利用する処理方法の一例を示す処理フローチャートである。
【図6B】ハードマスクとしての用途に適切なホウ素含有膜の応力特性および硬度特性の実験結果を示す図である。
【図6C】ハードマスクとしての用途に適切なホウ素含有膜の応力特性およびヤング率特性の実験結果を示す図である。
【図6D】Si膜の硬度がPECVD処理時のB/テトラメチルシランの流量比にどの程度左右されるかを示す実験結果を示す図である。
【図6E】Si膜のヤング率および応力パラメータがBC/[BC+SiC]の赤外ピーク面積の比にどの程度左右されるかを示す実験結果を示す図である。
【図6F】Si膜のヤング率および応力パラメータがBN/[BN+SiN]の赤外ピーク面積の比にどの程度左右されるかを示す実験結果を示す図である。
【図6G】Si膜に関する接触角疎水性試験の結果を、非ドープのシリコンカーバイド膜と比較して示す実験結果図であり、Si膜の方がより親水性が高いことが分かる。
【図7】本明細書に記載する実施形態に係るGeNハードマスクを利用する処理方法の一例を示す処理フローチャートである。
【図8】本発明の一部の実施形態に係るハードマスク膜を成膜する際に利用され得る低周波(LF)無線周波数プラズマ源および高周波(HF)無線周波数プラズマ源を利用することができるPECVD装置を示す概略図である。
【図9】本発明の一部の実施形態に係るハードマスク膜を形成するのに適している、マルチステーションPECVD装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<序論および概論>
バックエンドおよびフロントエンドの半導体プロセスで利用されるハードマスク膜を説明する。ハードマスク膜は、SiC(ドープされているとしてもよいし、ドープされていないとしてもよい)、Si、Si、Si、B、B、GeNから成る群から選択される材料を含む。
【0017】
当該材料は、基本的にそれぞれの化学式に記載されている元素を含み、任意で水素を含が、水素は明示されていない。下付き文字のx、y、zおよびwは、当該材料が必ずしも化学量論的でないことを意味している。当該材料は、ドーパントが含まれていることが明記されている場合に限って、ドーパントを含む。例えば、本明細書に記載するドープされていないSiC(シリコンカーバイド)は、基本的にシリコンおよび炭素から形成されており(割合は必ずしも化学量論的ではない)、任意で水素を含む。ドープされているSiCはさらに、ホウ素、酸素、リン、または窒素といったドーパント元素を含む。
【0018】
一部の実施形態によると、本明細書に記載する材料には、高硬度、高ヤング率、および、低応力といった有利な特性のうち1以上がある。好ましい実施形態によると、当該材料は、高硬度および低応力を同時に実現するので、機械的強度が低い超低誘電率(low−k)(ULK)の誘電体のパターニング、および、アスペクト比が2:1以上(例えば、4:1以上)の凹部の形成を実行する高機能技術ノード(例えば、45nm以下、例えば、22nmの技術ノード)におけるハードマスクとしての用途に特に適している。
【0019】
一部の実施形態によると、ハードマスク材料は、硬度が少なくとも約12GPaであり、例えば少なくとも約16GPa、例えば少なくとも約18GPa、または、少なくとも約20GPaである。硬度は、材料工学の分野では明確に定義されている特性であり、例えば、ナノ圧痕デバイスを有する任意の適切な装置によって信頼性の高い測定結果が得られる。一部の実施形態によると、本明細書に記載するハードマスク材料は、高硬度に加えて、応力が低く、約−600から600MPaの範囲内、例えば、約−300MPaから300MPaの範囲内、約0から600MPaの範囲内、および、最も好ましいのは約0MPaから300Mpaの範囲内である。
【0020】
圧縮応力および引張応力は1つの尺度で測定し、正の値が引張応力に対応し、負の値が圧縮応力に対応する。この尺度では、大きい圧縮応力ほどより小さい負の値で表され、大きい引張応力ほどより大きい正の値で表される。残留応力がゼロの膜は、この尺度においてゼロに対応する。応力は、明確な定義を持つパラメータであり、例えば、KLA−Tencor Corporation社製の「Flexus」というツールを用いて測定が可能である。
【0021】
圧縮応力が高い材料は基板の座屈を生じさせる可能性があるが、(材料同士の間の接着力が弱い場合は特に)引張応力の高い材料は層間剥離を生じさせる可能性がある。応力は、どちらの種類であっても、高い値を持つことはハードマスク材料では望ましくない。しかし、本明細書に記載するホウ素含有材料の一部の持つ程度の低い引張応力および中程度の引張応力(例えば、200から600MPa)であれば、同じ大きさの圧縮応力よりは、許容され得る。
【0022】
一部の実施形態によると、本明細書に記載するハードマスク膜は、ヤング率が少なくとも約100Mpaで、例えば、少なくとも約125MPaであり、例えば、150Mpa以上である。ヤング率は、ナノ圧痕デバイスを利用する標準的な方法を用いて測定することができる。
【0023】
本明細書に記載するハードマスク材料は通常、誘電体拡散バリア層およびエッチストップ層として利用される材料とは明確に異なることを理解されたい。誘電体拡散バリア層およびエッチストップ層の材料は通常、硬度が約10GPa未満と比較的軟性の材料で、誘電率が約5未満である。拡散バリア層は完成品である集積回路構造に残り、誘電率は低くなければならない。これに対して、本明細書に記載するハードマスク材料は、誘電率を低くする必要は必ずしもなく、通常は誘電率が約4を超え、約5を超えたり、または、約6を超えたりすることもある。これは、多くの実施形態に係るハードマスクは犠牲層であり、パターニング終了後には構造から完全に除去されるので、最終的な完成品である集積回路の電気特性に影響を及ぼさないためである。完成品にハードマスクが残る実施形態では、誘電率を低くする必要がない箇所、または、誘電率が比較的高い材料も許容する箇所にハードマスクを配置する。また、PECVDで成膜されるハードマスク材料は通常、より軟性且つ低誘電率(low−k)の拡散バリア層の材料よりもはるかに高いプラズマ生成電力で成膜される。構造については、ハードマスク材料は通常、より密に詰め込まれて、より軟性且つ低誘電率(low−k)の拡散バリア層の材料よりも密度が高くなる。
【0024】
多くの実施形態に係るハードマスク材料は、パターニング位置合わせに用いられるレーザの波長(スペクトルの可視領域および近赤外領域の波長、例えば633nm)において略透明である。
【0025】
成膜するハードマスク膜の厚みは多くのパラメータに応じて変動し、例えば、特定のハードマスク材料とその下方にある材料との間のエッチング選択性、エッチングを必要とする下方の材料の厚み、および、エッチングに利用される化学反応等に応じて変動する。一般的には、ハードマスク材料の硬度が高くなり、且つ、エッチング選択性が高くなるにつれて、硬度がより低くエッチング選択性がより低い材料に比べて、成膜される膜は薄くなるとしてよい。また、硬度およびエッチング選択性が共に高い材料によって薄いハードマスク層が形成されると、ハードマスク膜が薄くなると透明度が比較的高くなるので、光学的位置合わせがより良好に行われるようになるという利点がある。一部の実施形態によると、ハードマスク膜は、約100から10,000Åの範囲内、例えば、約500から6,000Åの範囲内の厚みまで成膜される。
【0026】
本発明に係る膜は、ビアおよび/またはトレンチのエッチングで利用される化学反応において、誘電体(例えば、誘電率が3.0以下、例えば、2.8以下、または、2.4以下の誘電体)に対するエッチング選択性が高い。エッチングの化学反応の例を挙げると、C(例えば、CF)、不活性ガス(例えば、Ar)、および、酸化剤(例えば、O)を含む処理ガスで形成されるプラズマを用いるRIEがある。他のドライエッチング、例えば、ClおよびNを含む処理ガスを用いるプラズマエッチングを利用するとしてもよい。一部の実施形態によると、上述のCを含むプラズマエッチング化学反応について、エッチング選択率は、少なくとも約5:1、例えば、少なくとも約8:1(つまり、誘電体のエッチング速度は、ハードマスク材料のエッチング速度に比べて、少なくとも8倍である)になるとしてよい。一部の実施形態に係る膜は、ウェットエッチングでハードマスクとして用いられるとしてもよく、例えば、酸化シリコンベースの材料に対してフッ化物のウェットエッチング化学反応で選択的なウェットエッチングを実行する際のハードマスクとして用いられるとしてもよい。
【0027】
本明細書に記載するハードマスク材料が露出した状態でエッチングを実施することができる誘電体としては、酸化シリコン、炭素がドープされた酸化シリコン(SiCOH)、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)を用いて成膜された酸化物、さまざまなケイ酸塩ガラス、HSQ(水素シルセスキオキサン、hydrogen silsesquioxane)、MSQ(メチルシルセスキオキサン、methylsilsesquioxane)、ならびに、ポリイミド、ポリノルボルネン、ベンゾシクロブテン等の多孔質および/または有機の誘電体がある。本明細書に記載するハードマスクは、誘電率が2.8以下、例えば、2.4以下であり、機械的強度が低い有機および/または多孔質の誘電体をパターニングする際に用いられることで最も大きな有用性を発揮する。
【0028】
本明細書に記載されているハードマスク材料は通常、CVDおよびPVDをベースとする様々な方法を用いて成膜されるとしてよい。特に好ましい成膜方法としてPECVD法があり、二重周波数プラズマ生成を行うPECVD法はさらに好ましい。高周波電源および低周波電源を備える装置としては、ノベルス・システムズ(Novellus Systems、米国カリフォルニア州サンノゼ)社製のSEQUEL(登録商標)およびVECTOR(登録商標)がある。低周波無線周波数(RF)電力とは、周波数が100kHzから2MHzの範囲内であるRF電力を意味する。LFプラズマ源の周波数範囲は通常、約100kHzから500kHzの範囲内であり、例えば、400kHzの周波数が利用されるとしてよい。ハードマスク層を成膜している間、LF電力密度は通常、約0.001から1.3W/cmの範囲内にあり、特定の実施形態では、約0.1から0.7W/cmである。HF電力の場合は通常、約0.001から1.3W/cmの範囲内であり、特定の実施形態では、約0.02から0.28W/cmの範囲内である。高周波電力とは、周波数が2MHzを超えるRF電力を意味する。HFRF電力の周波数は通常、約2MHzから30MHzの範囲内にある。よく用いられるHFRFの周波数値には、13.56MHzおよび27MHzがある。特定の実施形態によると、ハードマスクを成膜する際には、LF/HF電力比を少なくとも約1、例えば、少なくとも約1.5、例えば、少なくとも約2に設定する。
【0029】
PECVD法によって成膜する際、反応ガスまたは蒸気は通常、流量を0.001sccmから約10,000sccmの範囲内、好ましくは、約1sccmから約1000sccmの範囲内に設定して、処理チャンバに供給され、基板の台の温度は、約摂氏20度から約摂氏500度、好ましくは、約摂氏200度から約摂氏450度の範囲内とされる。一部の実施形態によると、ハードマスクを成膜する場合は、温度を約摂氏400度未満(例えば、約摂氏200度から約摂氏400度)にすることが好ましい。圧力は、約10mTorrから約100Torrの範囲内とするとしてよく、約0.5Torrから5Torrの範囲内とすることが好ましい。前駆体の流量は、基板およびチャンバのサイズに応じて変動するものと理解されたい。
【0030】
<バックエンドプロセスにおける利用>
本明細書に記載する膜は、さまざまなハードマスクとして利用され得る。バックエンドプロセスにおけるハードマスク膜の利用の一例を、図1Aから図1Kに示す構造および図3に示す処理フローチャートを参照しつつ説明する。図3に示す処理フローの一例を参照しつつ説明すると、処理301において誘電体層が露出している基板を用意することから開始される。基板は通常、1以上の材料層(例えば、導電体層または誘電体層)が設けられている半導体(例えば、シリコン)ウェハである。基板の露出部には、ビアおよびトレンチをパターニングする必要がある誘電体層が含まれている。本明細書に記載されているハードマスクは通常、上記で列挙したさまざまな誘電材料をパターニングする際に利用することができる。本明細書に記載するハードマスク材料は、誘電率が2.8以下、例えば、2.4以下のULK誘電体、例えば、機械的強度がより低い多孔質および有機の誘電体をパターニングする際に用いると特に有用性が高い。上述したように、多くの実施形態に係るハードマスクは、応力が非常に低く、機械的強度が低いULK誘電体をパターニングする際に高応力のハードマスク材料を利用した場合には発生することが多い座屈およびパターン位置合わせのミスを大幅に低減することができる。尚、一部の実施形態によると、脆弱なULK誘電体とハードマスクとの間に機械的強度がより高い材料からなるバッファ層を形成することに留意されたい。このように、一部の実施形態によると、供給される基板では、ULK材料の層の上にバッファ層(例えば、機械的強度がより高い誘電体から成る層)が形成されており、露出している。例えば、kが2.8よりも高い誘電体を含むバッファ層を、誘電率がより低く機械的強度がより低い誘電体の上に形成するとしてよい。例えば、炭素がドープされた酸化シリコン(SiCOH)、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)を用いて成膜された酸化物、さまざまなケイ酸塩ガラス、HSQ(水素シルセスキオキサン、hydrogen silsesquioxane)、MSQ(メチルシルセスキオキサン、methylsilsesquioxane)から成る群から選択される材料を含むバッファ層を、ポリイミド、ポリノルボルネン、ベンゾシクロブテン等の多孔質および/または有機の誘電体の上に形成するとしてよい。ULK誘電体およびバッファ層用の誘電体は、例えば、スピンオン法またはPECVD法によって成膜されるとしてよい。一部の実施形態によると、ULK誘電体および/またはバッファ層は、その上に成膜されるハードマスク層と同じPECVDモジュールで成膜される。この点は、成膜にPVDモジュールが必要な窒化チタンのハードマスクに比べて、さらなる利点となる。処理303では、PECVD処理チャンバにおいて誘電体層(または、同じく誘電体で通常形成されるバッファ層)の上にハードマスク材料を成膜する。続いて、1以上の反射防止層、例えば、裏面反射防止コーティング(BARC)を任意で成膜して、その後に処理305においてハードマスクの上方にフォトレジストを成膜する。尚、ハードマスクとフォトレジストとの間に通常1以上の反射防止層が形成されるので、フォトレジストは必ずしもハードマスク材料と直接接触している必要はない。次の処理307では、成膜したハードマスクおよびリソグラフィーパターニング技術を用いて、誘電体層内にビアおよび/またはトレンチをエッチングする。適切なエッチング方法としては、上述したRIEがある。RIEによると、エッチングの選択性が高いハードマスクが露出した状態で、誘電体材料をエッチングする。
【0031】
さまざまなリソグラフィー工程には、複数のフォトレジスト層の成膜および除去、充填層の成膜等が含まれ、これらに基づき所望のパターンの凹状のフィーチャーを形成する。このようなリソグラフィー工程は、公知であり、詳細な説明を省略する。トレンチをまず画定した後に部分ビアを形成する工程を、一例として、図1Aから図1Kで示す。しかし、バックエンドプロセスではこれら以外にもさまざまな工程が実施されるものと理解されたい。ビアおよび/またはトレンチが形成された後、処理309において、ビアおよび/またはトレンチに金属を充填(例えば、銅または銅合金を電着)し、処理311において、例えばCMPまたは適切なウェットエッチングあるいはドライエッチングによって、ハードマスク膜を除去する。一部の実施形態によると、過酸化物を含むウェットエッチング用合成物またはCMP用合成物(例えば、過酸化水素を含む酸性スラリー)を用いてハードマスクを除去することが好ましい。
【0032】
図1Aから図1Kは、処理工程の一例に係る、バックエンド処理時の製造途中の半導体基板を示す概略断面図である。図1Aは、第1の誘電体層103(例えば、ULK誘電体層)に銅層101が埋設されている半導体基板(下層を成すシリコン層および能動素子は不図示)の一部分を示す図である。尚、拡散バリア層105(例えば、Ta、Ti、W、TaN、TiN、WN、または、これらの混合物を含む)が、誘電体層と銅層との間の界面に設けられている。窒化シリコンまたは窒素でドープされたシリコンカーバイドから成る誘電体拡散バリア層(エッチストップ層とも呼ばれる)107が、銅101および誘電体103の上に設けられている。第2の誘電体層109(例えば、スピンオン法またはPECVD方で成膜されるULK誘電体)が、誘電体拡散バリア層107の上に設けられている。誘電体層109は機械的強度が低く、ハードマスク成膜時に損傷を受ける可能性があるので、機械的強度がより高い誘電体バッファ層111、例えば、TEOS誘電体または炭素でドープされている酸化シリコン(SiCOH)を層109上に成膜する。ハードマスク層113は、本明細書で記載される高硬度材料を含み、PECVD法によってバッファ層111上に成膜される。誘電体拡散バリア層107とは違い、ハードマスク層113は、金属が露出していない面に成膜される。ハードマスク層113上には、スピンオン法でフォトレジスト層115を成膜する。ハードマスクとフォトレジストとの間には通常、1以上の反射防止層を即座に成膜する。反射防止層は、分かりやすさを優先して、図示していない。
【0033】
フォトレジスト115は、成膜した後に標準的なリソグラフィー技術を用いてパターニングされ、後にトレンチを形成する際に利用される幅tの開口が形成される。フォトレジスト層115にパターニングを実施した結果を図1Bに示す。続いて、除去されたフォトレジストの下方にあるハードマスク層113を開口(エッチング)して、図1Cに示すように、誘電体111を露出させたパターンを形成する。ハードマスクの残りの部分は、フォトレジストを除去する際および後に誘電体をエッチングする際に誘電体を保護する役目を持つ。続いて、フォトレジスト層115を、例えば、アッシングによって除去し、パターニングされたハードマスク113が露出している構造を形成する。この段階において、ビアを形成するためのパターニングを開始する。ビアのパターニングでは、HSQまたはMSQ等の除去が容易な誘電体を含む充填層117を構造表面に成膜して、図1Eに示すようにハードマスクの開口を充填する。続いて、充填層117の上に第2のフォトレジスト層119を成膜して(任意で間に反射防止層を設けるとしてもよい)、図1Fに示す構造を形成する。この後、フォトレジスト119をパターニングして、図1Gに示すように、ビアの形成に利用される幅Vの開口を形成する。続いて、例えばRIEを用いて、フォトレジストパターンの下方のハードマスクを除去して、誘電体109をエッチングしてビアの一部を形成する。フォトレジスト119および充填層117を除去して、図1Hに示すように、一部分がエッチングで形成されたビアおよび画定されたトレンチを含む構造を形成する。続いて、図1Iに示すように、ビアがエッチストップ層107に到達するまで誘電体層111および109のエッチングを実施して、その後もビアの底部に金属層101が露出するまでエッチングを続ける。この後、PVDを用いて形状に沿って拡散バリア材料層105を成膜して、基板のうち凹状のフィーチャーの内部およびフィールド領域を被覆させる。この後、凹状のフィーチャーを金属121で充填(例えば、銅または銅合金を電着)すると、ある程度は過剰部分がフィールドに形成されることが多く、図1Jに示す構造が得られる。続いて、当該構造のフィールド領域から、過剰に形成された金属部分、拡散バリア材料層105、ハードマスク層113、および、誘電バッファ層111を除去して、図1Kに示すように、low−k誘電体層109内に金属インターコネクトが形成されている製造途中デバイスを形成する。別の処理方法によると、バッファ層111は除去されず、基板上に残る。
【0034】
図1Aから図1Kに示すような部分ビアを形成する工程を含む処理工程は、low−k誘電体の場合に利用可能なパターニング方法の一例を説明するために挙げている。本明細書に記載するハードマスク材料は、ビアを先に形成する場合、および、トレンチを先に形成する場合のどちらをも含む、上記以外にもさまざまな処理方法で利用することが可能である。
【0035】
<フロントエンドプロセスでの利用>
本明細書に記載するハードマスクの利用の別の一例として、フロントエンドプロセスにおいてポリシリコンを保護するために用いる場合がある。ポリシリコンは、半導体ウェハ上に能動素子(例えば、トランジスタ)を形成する際に広く利用されている。一部の実施形態によると、本明細書に記載するハードマスク材料は、ポリシリコン上に成膜され、能動素子を製造する際に利用されるさまざまな処理工程を実施する際にポリシリコンを保護する役割を果たす。多くの実施形態によると、本明細書に記載されるハードマスク層は、フロントエンドプロセスにおいて利用される場合、犠牲層として利用されるのではなく、ポリシリコンと接触した状態で最終デバイスにも残ることに留意されたい。
【0036】
フロントエンドプロセスの一例は、図4の処理フローチャートに示すと共に、図2Aから図2Eに示す製造途中の構造の概略断面図でもさらに図示する。図4を参照しつつ説明すると、処理401から開始され、酸化物(例えば、酸化シリコン、酸化ハフニウム等)の層の上にポリシリコン層が設けられて露出している基板を供給する。他の実施形態によると、ポリシリコンは他の能動層の上に設けられているとしてもよい。酸化物は通常、単結晶シリコン層の上に設けられている。酸化物層およびポリシリコン層をパターニングする際には、ポリシリコン層の上にハードマスク層を2層成膜する。第1のハードマスクは、処理403に示すように、ポリシリコン層の上に直接成膜され、SiC(ドープされているとしてもよいし、ドープされていないとしてもよい)、Si、Si、Si、B、B、および、GeN等の本明細書に記載する材料を含む。ハードマスクの成膜は、CVD法、より好ましくはPECVD法を用いて実施する。続いて、処理405に示すように、第1のハードマスク層の上にアッシング可能ハードマスク(例えば、基本的に炭素から成り、任意で水素が含まれているハードマスク)を成膜する。アッシング可能ハードマスクの成膜もまた、CVD法、例えば、炭化水素前駆体を用いたPECVD成膜法によって実施されるとしてよい。続いて、処理407に示すように、アッシング可能ハードマスクの上方にフォトレジスト層を成膜して、当該フォトレジストを所望のパターンに応じてパターニングする。アッシング可能ハードマスクとフォトレジストとの間には1以上の反射防止層を任意で成膜するとしてもよいが、このような反射防止層は分かりやすいように図示を省略している。パターニング前のフォトレジストを含む構造の一例を図2Aに示す。尚、層201は単結晶シリコン層である。シリコン層201の上に設けられている層203は、酸化物層である。酸化物層203の上に設けられている層205は、ポリシリコン層である。本明細書に記載されているハードマスク材料207は、ポリシリコン205の上に直接設けられており、アッシング可能ハードマスク(例えば、炭素ハードマスク)209は、第1のハードマスク層207の上に設けられている。アッシング可能ハードマスク209の上にはフォトレジスト層211が設けられている(間に任意で設けられる反射防止層は図示していない)。フォトレジストをパターニングした後の構造を図2Bに示すが、フォトレジストから2つの部分が除去されており、その間の部分が残っている。
【0037】
図4を参照した説明に戻ると、続く処理409では、アッシング可能ハードマスクを用いてパターニングを行って、ポリシリコン層および酸化物層にエッチングを実施して所望のパターンを形成する。この様子は図2Cから2Eに示す。図2Cに示す構造では、アッシング可能ハードマスク層209は、フォトレジストパターニングで露出した部分が開口(エッチング)されている。続いて、フォトレジスト211を全て除去して、第1のハードマスク層207、ポリシリコン層205、および酸化物層203のうち、アッシング可能ハードマスク層209で保護されていない部分をエッチングすると、図2Dに示す構造が得られる。
【0038】
図4を参照した説明に戻ると、処理411において、SiC(ドープされているとしてもよいし、ドープされていないとしてもよい)、Si、Si、Si、B、B、および、GeNから成る群から選択される材料を含む第1のハードマスク層をポリシリコン層の上に残しつつ、例えば、酸素プラズマ処理によってアッシング可能ハードマスクを除去する。この結果得られる構造は図2Eに示す。ハードマスク層207は、この後のフロントエンドプロセスでも除去されることなく残り、結晶シリコンへドーパントを注入する際など、さまざまな後続の処理においてポリシリコンを保護する役割を果たす。尚、上述した処理手順において、本明細書に記載するハードマスク材料は実際のマスキング処理を行うものではなく(実際のマスキング処理はアッシング可能ハードマスク209が担う)、主にポリシリコンを保護するために用いられることに留意されたい。集積化方法によっては、ハードマスク207は、後続のフロントエンドの処理、例えば、洗浄のためのドライエッチングあるいはウェットエッチング、または、ゲートを画定するための酸化物エッチングでマスキング処理を行うべく利用されるとしてもよい。本明細書に記載するハードマスク材料は、利用される集積化方法に応じて、完成品であるデバイスからは最終的に除去されるとしてもよいし、残されるとしてもよい。
【0039】
上述したバックエンドプロセスおよびフロントエンドプロセスは一例として記載したものであり、本明細書に記載する材料は、上記以外にも、下方の層を保護するために高硬度の材料が求められるさまざまな処理で利用可能であると理解されたい。
【0040】
適切なハードマスク材料の準備について以下で詳細に説明する。
【0041】
<多層シリコンカーバイド膜>
一実施形態によると、高硬度且つ低応力の多層シリコンカーバイド膜が提供される。具体的には、一部の実施形態によると、多層シリコンカーバイド膜は、硬度が約12GPaよりも高く、例えば、約18GPaよりも高く、応力は、約−600MPaから600MPaの範囲内であり、例えば、約−300MPaから300MPaの範囲内である。多層シリコンカーバイド膜は、ドープされているシリコンカーバイド材料、または、ドープされていないシリコンカーバイド材料の副層を複数成膜して、副層を成膜する度に高密度化プラズマ後処理を実行することによって形成される。
【0042】
シリコンカーバイドの成膜はさまざまな方法を用いて実行することができるが、一部の実施形態によると、副層の成膜およびプラズマ後処理を1つのPECVD装置で実行することが好ましい。それぞれの副層の厚みは通常、材料をより完全に高密度化するべく約100Å未満、例えば、約50Å未満である。成膜処理では、適切な厚みのハードマスクを形成する任意の数の副層を形成して、プラズマ処理を実行する。一部の実施形態によると、少なくとも2層の副層、例えば、少なくとも10層の副層、または、少なくとも約20層の副層を成膜する。
【0043】
多層シリコンカーバイド膜を形成するための処理フローチャートの一例を図5Aに示す。処理501では、半導体基板(例えば、誘電体層またはポリシリコン層が露出している基板)をPECVD処理チャンバに供給する。PECVD処理チャンバは、前駆体導入口と、プラズマ生成器とを備える。一部の実施形態によると、HF生成部およびLF生成部を有する二重周波数RFプラズマ生成器が好ましい。
【0044】
処理503では、ドープされているシリコンカーバイドまたはドープされていないシリコンカーバイドから成る第1の副層を形成する。当該成膜処理では、シリコン含有前駆体を処理チャンバ内に注入してプラズマを形成する。一例を挙げると、HFRF周波数が約13.56MHzで、LFRF周波数が400kHzである二重周波数プラズマが利用される。本例によると、HF電力密度は約0.04から0.2W/cmの範囲内であり、LF電力密度は約0.17から0.6W/cmの範囲内である。
【0045】
さまざまなシリコン含有前駆体を利用するとしてよいが、例えば、アルキルシラン、アルケニルシラン、および、アルキニルシラン等の有機シリコン前駆体を利用するとしてよい。一部の実施形態によると、テトラメチルシラン、トリイソプロピルシラン、および、1,1,3,3−テトラメチル1,3−ジシラシクロブタン等の飽和した前駆体が好ましい。
【0046】
一部の実施形態に係るシリコン含有前駆体は、上述の例のように炭素を含む。他の実施形態によると、炭素を含まないシリコン含有前駆体(例えば、シラン)と、これとは別に用意した炭素含有前駆体(例えば、炭化水素)とを処理ガスに含めて利用するとしてよい。また、一部の実施形態によると、処理ガスは、炭化水素および有機シリコン前駆体を含むとしてもよい。
【0047】
シリコン含有前駆体は通常、キャリアガスと共に、例えば、He、Ne、Ar、KrまたはXe等の不活性ガスと共に処理チャンバに導入される。一部の実施形態によると、Hを成膜用の処理ガスに含めるとしてもよい。一例によると、成膜用の処理ガスは基本的に、テトラメチルシラン(流量は約500から2,000sccmの範囲内)およびヘリウム(流量は約3から5slm)から成る。
【0048】
ドープされたシリコンカーバイドの層を形成する必要がある場合、適切なドーパントを処理ガスに追加する。例えば、N、NH、N、アミン、または、別の窒素含有前駆体を処理ガスに追加して、窒素ドープされているシリコンカーバイドを形成する。ジボラン等のホウ素含有前駆体を追加して、ホウ素含有シリコンカーバイドを形成するとしてもよい。リン含有前駆体(例えば、PH)を追加して、リンドープされたシリコンカーバイドを形成するとしてもよい。
【0049】
プラズマを生成してシリコンカーバイドの副層を所望の厚みまで形成すると、処理505において、シリコン含有前駆体を処理チャンバから除去する。シリコン含有前駆体の除去は、一部の実施形態によると、不活性ガス(例えば、He、Ar)、CO、N、NH、Hおよび、これらの混合ガスから成る群から選択されるガスを含むパージガスで処理チャンバをパージすることによって行われる。一部の実施形態によると、He、Ar、H、または、これらのさまざまな混合ガスがパージガスとして好ましい。処理507において、シリコン含有前駆体を全て除去した後、プラズマ処理用のガス(パージガスと同じガスであってもよいし異なるガスであってもよい)を処理チャンバに導入して、第1の副層をプラズマで処理する。この場合、LF/HF電力比が少なくとも約1.5、例えば、少なくとも約2となる条件でプラズマ処理を行うことが好ましい。処理509では、成膜およびプラズマ後処理を繰り返し実施して、少なくとも副層を2層、例えば、少なくとも10層含む多層膜を形成する。副層それぞれに対するプラズマ後処理は、膜の高密度化に必要な時間にわたって実行され、副層の厚みに応じて決まるとしてよい。一部の実施形態によると、それぞれの副層に対するプラズマ後処理は、約5から25秒間、例えば、約8から15秒間にわたって実行される。
【0050】
この結果得られる多層シリコンカーバイド膜は、構造および特性が従来のシリコンカーバイド膜とは明らかに異なることが分かっている。高密度化プラズマ後処理を複数回実行して得られる多層膜は、従来の成膜方法では無理であったが、高硬度且つ低応力を同時に実現することができるという予想外の事実が判明している。
【0051】
このような多層膜の構造特性評価によると、赤外(IR)スペクトルの特徴として、Si−C/Si−Hピーク比およびSi−C/C−Hピーク比が高い。これらのピーク比は、対応するIRピーク面積の比であり、中心は約760−800cm−1(Si−C)、2070−2130cm−1(Si−H)、および、2950−3000cm−1(C−H)にある。
【0052】
一部の実施形態によると、IRスペクトルにおけるC−Hピークの面積に対するSi−Cピークの面積の比は、少なくとも約50であり、Si−C/Si−H比は少なくとも約20である。また、本明細書に記載する膜の密度は通常、少なくとも約2g/cmである。
【0053】
図5Bは、プラズマ後処理を実施せずに得られた単層型のドープされていないシリコンカーバイド膜のIRスペクトル(曲線a)および高密度化プラズマ処理を複数回行って得られた多層型のドーピングされていないシリコンカーバイド膜のIRスペクトル(曲線b)を示す図である。単層膜は、テトラメチルシラン(流量は1,000sccm)およびヘリウム(流量は3,000sccm)を含む処理ガスを2.1Torrの圧力で注入することによって300mmのウェハに成膜された。成膜時には、LF電力密度を約0.25W/cmでHF電力密度を約0.13W/cmに設定した二重周波数プラズマを用いた。多層膜の場合は、副層を成膜する際には同じ条件で成膜したが、副層を成膜する度にプラズマ後処理を追加で実行した。プラズマ後処理では、流量は3slm、チャンバ圧力は2.1Torrにして後処理ガスとしてアルゴンを処理チャンバに導入して、LF電力密度を約0.25W/cm、HF電力密度を約0.13W/cmとした二重周波数プラズマを形成した。この結果得られた単層膜は、SiC/SiH面積比が約15となった。高密度化プラズマ処理を複数回行って形成した多層膜は、SiC/SiHのIRピーク面積比が約24となった。多層膜は、ヤング率が約170GPaで、硬度は約20.4GPaであるが、単層膜は、ヤング率が約95Gpaで、硬度は約12GPaに過ぎなかった。応力値については、単層膜は−20MPa、多層膜は179MPaとなった。
【0054】
図5Cは、高密度化プラズマ後処理を複数回行って得られる多層型のドープされていない2種類のシリコンカーバイド膜の応力値および硬度値、ならびに、後処理を実行することなく形成された単層型のドープされていない2種類のシリコンカーバイド膜についての応力値および硬度値を示す図である。図5Dは、上記と同じシリコンカーバイド膜の応力およびヤング率を示す図である。表1は、それぞれのシリコンカーバイド膜の成膜条件および後処理条件をまとめたものである。
【表1】

【0055】
いずれのシリコンカーバイド膜も、成膜処理ガスとしてテトラメチルシランおよびヘリウムの混合ガスを利用して、圧力は約2Torrに設定して得られた。いずれのシリコンカーバイド膜を成膜する場合にも、二重周波数プラズマ生成を利用した。HFプラズマ電力密度およびLFプラズマ電力密度を表に記載しているが、電力密度は、電力を基板面積で除算して算出している。膜Aおよび膜Dは、プラズマ後処理を実行することなく形成された単層膜である。膜Aおよび膜Dは高硬度および低応力を同時には実現できていないことが分かる。例えば、膜Aは、硬度は比較的高い(22.4GPa)が、圧縮応力が−830MPaと非常に高い。膜Dは、応力は低い(−20MPa)が、12GPaという硬度は中程度に過ぎない。
【0056】
膜Bおよび膜Cは、多層膜であり、シリコンカーバイドの副層が成膜される度にプラズマ後処理が実行されて形成された。プラズマ処理ガスとしてはアルゴンが利用され、圧力は約2Torrとされた。プラズマ後処理では、二重周波数プラズマ生成が利用された。HFプラズマおよびLFプラズマの電力密度はそれぞれ表に記載している。予想外であるが、多層膜は、高硬度(および/または高ヤング率)ならびに低応力を同時に実現することが分かった。例えば、膜Bは、硬度が20.86GPaで応力は−412MPa(膜Aの応力の2分の1未満)である。また、多層膜である膜Cは、硬度が20.4GPaと高く、引張応力は179MPaである。膜Cの硬度は、膜Dの硬度の1.5倍以上である。尚、プラズマ後処理の有無を除いては、膜Cおよび膜Dは同じ条件下で成膜されていることに留意されたい。プラズマ後処理を実行することによって、膜の圧縮応力を増加させてしまうことなく膜の硬度を高くできることが分かる。
【0057】
一部の実施形態によると、LF電力をHF電力よりも大きく設定して、LF/HF電力比が少なくとも約1.5、または、少なくとも約2になるように設定する二重周波数プラズマを利用した後処理を、シリコンカーバイドの副層に対して実行することが好ましい。予想外の結果であったが、後処理を実行する際に利用するLF電力/HF電力の比を大きくすると、形成されるシリコンカーバイド膜の特性が改善される。LF電力/HF電力の比を大きくすると、形成されるシリコンカーバイド膜の硬度と正の相関関係があるパラメータである屈折率が大きくなる。一部の実施形態によると、屈折率が少なくとも約2.25、例えば、少なくとも約2.30である多層シリコンカーバイド膜が得られる。LF/HF電力比の増加に伴いシリコンカーバイド膜の屈折率が増加する様子を表2に示す。
【表2】

【0058】
<ホウ素含有ハードマスク膜>
別の側面によると、ホウ素含有ハードマスク膜が提供される。ボロン含有膜は、Si、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される材料を含む。一部の実施形態によると、上記の材料は、硬度が高くなり(例えば、少なくとも約12GPa、好ましくは少なくとも約16GPa)、且つ、応力が低く(例えば、約−600から600MPaの範囲内、好ましくは、約−300から300MPaの範囲内)なるように調整されている。一部の実施形態には、圧縮応力がゼロであるホウ素含有膜、例えば、引張応力が非常に低い(例えば、約0−300Mpaの範囲内の)膜が得られるという利点がある。また、ホウ素含有膜は通常、ドープされていないシリコンカーバイド膜よりも親水性が高く、(例えば、過酸化水素を含む酸性スラリーを利用した)CMPによる除去がより容易に行うことができる。一般的には、ホウ素含有ハードマスクは、CVDおよびPVDをベースとする方法を含むさまざまな方法によって用意することができる。一部の実施形態によると、ホウ素含有ハードマスクを用意する際にはPECVDを利用することが好ましい。
【0059】
図6Aは、バックエンドプロセスにおいてホウ素含有ハードマスクを利用する処理フローの一例である。処理601において、PECVD処理チャンバに誘電体層が露出している半導体基板を供給することから開始される。当該誘電体層は、例えば、超低誘電率(low−k)誘電体層(例えば、kは約2.8未満、例えば、約2.4未満)、または、これより誘電率が高いバッファ誘電体層であってよい。
【0060】
処理601において、Si、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される、高硬度且つ低応力のホウ素含有ハードマスク膜を成膜する。成膜は、適切な前駆体を含む処理ガスを処理チャンバに導入してプラズマを形成することによって実行される。一部の実施形態によると、二重周波数プラズマが好ましい。一部の実施形態によると、LFプラズマの電力密度をHFプラズマの電力密度よりも大きくして、例えば、LF/HF電力比を少なくとも約1.5、例えば、少なくとも約2にすると、ハードマスク膜のパラメータが特に良好になる。
【0061】
ホウ素含有ハードマスク膜を成膜した後、処理605において、例えば、図1Aから図1Kを参照しつつ説明したように、誘電体をパターニングして、トレンチおよび/またはビアを形成する。ホウ素含有膜は、RIEで誘電体をドライエッチングする場合に、ハードマスクの役割を果たす。続いて、処理607において、ビアおよび/またはトレンチは、誘電体に形成された後、金属で充填される。この後、処理609において、通常は金属の過剰部分を除去した後に、CMPによってホウ素含有ハードマスクを除去する。
【0062】
PECVDを利用したSiの成膜は、シリコン含有前駆体、ホウ素含有前駆体、および、炭素含有前駆体を含む処理ガスを用いて実行することができる。これらの前駆体のうち1以上の前駆体は、同じ分子であってよい。例えば、テトラアルキルシランは、炭素含有前駆体およびシリコン含有前駆体の両方の機能を持つ。ホウ素含有前駆体として通常利用されるのはジボランであり、シリコン含有前駆体および炭素含有前駆体として利用され得るのは、アルキルシラン(例えば、テトラメチルシラン)、アルケニルシラン、および、アルキニルシランがある。また、炭素含有前駆体としては飽和炭化水素および不飽和炭化水素(C)を利用でき、シリコン含有前駆体としてはSiHを利用することができる。
【0063】
Siの成膜は、シリコン含有前駆体、ホウ素含有前駆体、炭素含有前駆体(上記と同様)、および窒素含有前駆体を含む処理ガスにおいてプラズマを形成することによって、実行される。窒素含有前駆体には、アンモニア、ヒドラジン、N、および、これらの混合物がある。また、窒素含有前駆体は、炭素含有前駆体と同じであってよく、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、および、トリアルキルアミン等のアミンを含むとしてよい。窒素含有前駆体は、ホウ素含有前駆体と同じであってよく、トリメチルボラジンを含むとしてよい。窒素含有前駆体はさらに、シリコン含有前駆体と同じであってよく、例えば、シラザンであってよい。
【0064】
Siの成膜は、シリコン含有前駆体(例えば、SiH)、ホウ素含有前駆体(例えば、ジボラン)、および、窒素含有前駆体(例えば、アンモニア、イドラジン、N、および、これらのさまざまな混合ガス)を含む処理ガスにおいてプラズマを形成することによって実行することができる。
【0065】
の成膜は、ホウ素含有前駆体(例えば、ジボラン)および窒素含有前駆体(例えば、アンモニア、イドラジン、N、および、これらのさまざまな混合ガス)を含む処理ガスを用いて実行することができる。
【0066】
の成膜は、ホウ素含有前駆体(例えば、ジボラン)および炭素含有前駆体(例えば、飽和炭化水素または不飽和炭化水素)を含む処理ガスを利用して実行することができる。ホウ素含有膜の成膜時の処理ガスの一部として、ヘリウムまたはアルゴン等の不活性キャリアガスを通常利用する。一部の実施形態によると、Hもまた処理ガスに含まれる。
【0067】
図6Bは、PECVD法を用いて成膜されたさまざまなSi膜、Si膜、Si膜に関する硬度および応力のパラメータを示す。図6Cは、これらの膜に関するヤング率および応力のパラメータを示す。これらの膜の成膜条件および特性を表3に示す。
【表3】

【0068】
いずれの膜も、HFRF電力密度が約0.08から約0.30W/cmの範囲内で、LFRF電力密度が約0.10から約0.24W/cmの範囲内で二重周波数プラズマを利用して、圧力を約2から約4torrの範囲内に設定して、300mmのウェハに成膜した。
【0069】
一実施形態によると、Si膜は、基本的にB、テトラメチルシラン(4MS)、およびHeから成る処理ガスを用いて成膜される。Bの流量は、約2,000から4,000sccmの範囲内、好ましくは約3,500から4,000sccmの範囲内であり、テトラメチルシランの流量は、約1,000から1,500sccmの範囲内であるとしてよい。キャリアガス(例えば、He)の流量は、約3から8slmの範囲内で設定するのが好ましい。一部の実施形態では、HFRF電力密度を約0.04から0.26W/cmの範囲内、LFRFの電力密度を約0.14から0.53W/cmの範囲内とする二重周波数プラズマを利用する。
【0070】
このようにして得られるホウ素含有膜の硬度は、Bとテトラメチルシラン(4MS)との比に大きく左右されるという予想外の結果が出た。硬度が高く、ホウ素含有率が高い膜を得るためには、B/4MSの流量比を少なくとも約2、例えば、少なくとも約3とすることが好ましい。
【0071】
図6Dは、B/4MSの流量比の関数としてSi膜の硬度を示す図である。流量比が約0.5から約3.5に上昇すると、硬度が約2倍に増加していることが分かる。流量比を変化させた場合の硬度および応力の値を表3に示している。
【0072】
構造について説明すると、硬度が高くヤング率が高い膜の場合は、B−C結合の含有率が高いことを特徴とする。一部の実施形態では、BC/[BC+SiC]の赤外ピーク面積の比が少なくとも約0.35である高硬度の膜が好ましい。この比は、それぞれ約1120から1160cm−1(B−C)および760から800cm−1(Si−C)を中心とするIRピーク面積の比である。
【0073】
図6Eは、さまざまなSi膜のヤング率および応力パラメータがBC/[BC+SiC]の面積比にどの程度左右されるかを示す図である。BC/[BC+SiC]が約0.3未満である膜は、B−C結合含有率が高い膜よりもはるかに硬度が低いことが分かる。表4は、3種類のSi膜に関して得られたデータをまとめたものである。これら3種類の膜は全て、B(流量は500から3,500sccmの範囲内)、4MS(流量は1,000sccm)、およびHe(流量は3,000sccm)から成る処理ガスを用いて、HFRF電力密度を約0.12W/cmに設定してLFRF電力密度を約0.22W/cmに設定した二重周波数プラズマを利用し、圧力を2.1Torrとして成膜された。表4では、硬度、応力、および、ヤング率のパラメータを、B−C結合含有率の関数として示している。
【表4】

【0074】
一部の実施形態によると、Si膜の成膜は、LF電力をHF電力よりも高く設定して、LF/HF電力比を少なくとも約1.5、少なくとも約2、例えば、少なくとも約3とした二重周波数プラズマを用いて行うことが好ましい。成膜時のLF/HFの電力比が高くなると、形成される膜の特性が改善されることが分かった。LF/HF電力比が高くなると、形成される膜の硬度と正の相関関係を持つ屈折率が上昇する。一部の実施形態によると、屈折率が少なくとも約2.3、例えば、少なくとも約2.5、例えば、少なくとも約2.6であるSi膜が得られる。LF/HF電力比の増加に伴い膜の屈折率が増加する様子を表5に示す。
【表5】

【0075】
Si膜の重要な構造上の特徴は、B―N結合の含有率である。当該含有率は、IRスペクトルにおけるピーク面積の比であるBN/[BN+SiN]に基づき算出される。尚、この比は、それぞれ約1400cm−1(B−N)および820から850cm−1(Si−N)を中心とするIRピーク面積の比である。
【0076】
図6Fは、当該パラメータに応力およびヤング率が共に大きく左右されることを示す図である。具体的に説明すると、圧縮応力は、B−N結合の含有率が高くなると、急激に増加する。一部の実施形態によると、Si膜の場合は、BN/[BN+SiN]を約0.7未満、例えば、約0.6未満とするのが好ましい。B−N結合含有率は、シリコン含有前駆体およびホウ素含有前駆体の流量を適切に変更することによって、必要に応じて調整することができる。表6は、BN/[BN+SiN]比を変化させた場合の膜の特性を示す。
【表6】

【0077】
上述したように、ホウ素含有膜は、ハードマスクとして使用されるのに非常に適している。ホウ素含有膜の顕著な利点の1つとして、親水性およびCMPによる除去の容易さが挙げられる。図6Gは、膜に水滴を載置して行われる接触角試験の結果に基づき、さまざまなSi膜の親水性を、ドープされていないシリコンカーバイド膜と比較して示す。膜に対する水滴の接触角を測定し、接触角が小さいほど、親水性が高くなる。表3に挙げたSi膜の4から6に対して試験を行うと、接触角は38度から42度となった。これとは対照的に、ドープされないシリコンカーバイド膜は、非常に疎水性が高く、その証拠に接触角は66度と非常に高くなっている。
【0078】
<窒化ゲルマニウムのハードマスク膜>
別の側面によると、GeNハードマスク膜が提供される。一部の実施形態によると、GeNハードマスク膜は、ヤング率が少なくとも約100GPa、例えば、少なくとも約130GPaと高く、密度も高い(例えば、約4g/cmより高密度)ことを特徴とする。GeN膜は、さまざまなバックエンド処理方法およびフロントエンド処理方法においてハードマスクとして利用することができ、レーザによるパターニング位置合わせで利用される波長において十分に透明であり、利用後はCMPまたはウェットエッチングによって基板から容易に除去することができる。
【0079】
一部の実施形態によると、ゲルマニウム含有率が高いGeNハードマスク膜を利用することが好ましい。このようにゲルマニウム含有率が高い膜では、水素を除いて、ゲルマニウム濃度が少なくとも約60原子パーセント、例えば、少なくとも約70原子パーセント、例えば、少なくとも約75原子パーセントである。窒化ゲルマニウム膜は、ゲルマニウム含有率が高いと、パターニングにおいて利用された後、CMPおよびウェットエッチングによる除去を行い易い。一部の実施形態によると、窒化ゲルマニウム膜の除去は、CMP処理またはウェットエッチング処理において、過酸化水素を含む合成物に当該ハードマスクを接触させることによって実行される。例えば、過酸化水素を含むCMP用酸性スラリーを利用するとしてよい。
【0080】
一例によると、ゲルマニウム濃度が約79原子パーセント、ヤング率が約144GPa、密度が約4.4g/cmであるGeNハードマスク膜が用意された。
【0081】
窒化ゲルマニウムハードマスクは通常、さまざまなCVD法およびPVD法を用いて用意することができる。そのうち、PECVD法を一例として説明する。図7に示すバックエンド処理フローチャートを参照しつつ説明すると、誘電体層が露出している半導体基板をPECVD処理チャンバに供給する処理701から開始される。処理703において、ゲルマニウム含有率が少なくとも約60原子パーセントであるGeNハードマスク膜を成膜する。成膜は、ゲルマニウム含有前駆体(例えば、ゲルマン)および窒素含有前駆体(例えば、NH、N、N、および、これらのさまざまな混合ガス)を含む処理ガスを処理チャンバに導入して、プラズマを形成して、窒化ゲルマニウム層を成膜することによって実行される。成膜用の処理ガスは任意で、ヘリウムまたはアルゴン等の不活性ガスを含むとしてもよい。窒素含有前駆体およびゲルマニウム含有前駆体の流量比は、ゲルマニウム含有率の高い窒化ゲルマニウム膜が形成されるように選択される。前駆体がゲルマンおよびアンモニアである場合を一例に挙げると、ゲルマンとアンモニアとの比は少なくとも約0.05とする。
【0082】
一例として説明すると、GeNハードマスクは、基本的にゲルマン(流量は、約50から100sccmの範囲内)、NH(流量は約600から1,200sccmの範囲内)、およびN(流量は約12slm)から成る処理ガスを処理チャンバに導入して、二重周波数プラズマを形成して、台の温度を約摂氏350度から450度の範囲内に設定して、窒化ゲルマニウム膜を基板に成膜することによって、300mmのウェハに形成される。この例では、成膜時の圧力は、約2.5から4Torrの範囲内である。この成膜処理の例では、HFRF成分の周波数は約13.56MHz(電力密度は約0.18W/cm)で、LFRF成分の周波数は約400kHz(電力密度は約0.23W/cm)とする。一部の実施形態では、HF成分よりもLF成分の電力密度を高くすることが好ましい。
【0083】
図7に示す処理フローチャートに戻ると、窒化ゲルマニウム膜が成膜された後、処理707では、例えば図1Aから図1Kを参照しつつ説明したように、誘電体をパターニングして、トレンチおよび/またはビアを形成する。窒化ゲルマニウムハードマスクは、誘電体に対する反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングによるパターニングで利用することができる。例えば、GeNハードマスクを露出させた状態で、C(例えば、CF)、不活性ガス(例えば、Ar)、および酸化剤(例えば、O)を含む処理ガスを利用して、露出したハードマスク層および誘電体層を備える基板とプラズマとを接触させることによって、ビアおよび/またはトレンチを誘電体にエッチングによって形成することができる。これ以外のドライエッチング、例えば、ClおよびNを含む処理ガスを利用するプラズマエッチング等を利用するとしてもよい。
【0084】
誘電体をパターニングした後、処理707において、ビアおよび/またはトレンチを金属で充填する。例えば、銅を凹状のフィーチャーに電着によって成膜するとしてよい。続いて、処理709において、CMPによってハードマスクを除去する。例えば、銅の過剰部分および拡散バリア材料をCMPによって除去することによって、ハードマスクの除去も行うとしてよい。一部の実施形態によると、pHが酸性であり、過酸化物(例えば、過酸化水素)を含むCMPスラリーを用いてGeNハードマスクを除去する。他の実施形態によると、GeNハードマスク膜の除去は、(例えば、HSOおよびHを3:1の割合で含む溶液を用いる)ウェットエッチングで行うとしてもよい。
【0085】
図7の処理フローチャートは、バックエンドプロセスを説明するためのものである。GeN膜は、フロントエンドプロセスでもハードマスクとして利用することができる。また、窒化ゲルマニウム膜は、ウェットエッチング時のハードマスクとしても利用が可能で、例えば、酸化シリコンをベースとする材料をフッ化物含有ウェットエッチング化学反応でパターニングする際にも利用することができる。
【0086】
<装置>
本明細書に記載するハードマスク材料の成膜は一般的に、さまざまな種類の装置、例えば、CVD装置およびPVD装置で実施することができる。好ましい実施形態によると、HFRF電源およびLFRF電源を備えるPECVD装置を利用する。適切な装置の例を挙げると、ノベルス・システムズ(Novellus Systems,Inc.、米国カリフォルニア州サンノゼ)社製のSEQUEL(登録商標)およびVECTOR(登録商標)がある。
【0087】
一般的に、1以上のウェハを収納し、ウェハ処理に適したチャンバまたは「反応器」(複数のステーションを含む場合もある)を1以上備える装置を利用する。各チャンバには、処理対象のウェハを1以上収納するとしてよい。1以上のチャンバは、ウェハを1以上の所定の位置に保持する(それぞれの位置では、例えば、回転、振動等の動きを見せるとしてもよいし、動きがなく静止しているとしてもよい)。一部の実施形態によると、ハードマスク層の成膜が行われるウェハは、処理中に反応器内でステーション間を移動させられる。処理中、各ウェハは、台、ウェハチャック、および/または、その他のウェハ保持装置によって定位置に保持される。装置は、ウェハを加熱する処理のために、加熱板等のヒータを備えるとしてもよい。
【0088】
図8は、本発明を実施するべく適切に構成されたPECVD反応器のさまざまな構成要素を示す簡略ブロック図である。同図に示すように、反応器800は処理チャンバ824を備える。処理チャンバ824は、反応器のその他の構成要素を内部に収納し、接地されたヒータブロック820と協働するシャワーヘッド814を有するキャパシタ型のシステムが生成したプラズマを内部に留める。高周波RF生成器804および低周波RF生成器802は、整合ネットワーク806に接続されており、整合ネットワーク806は、シャワーヘッド814に接続されている。
【0089】
反応器内で、ウェハ台818は基板816を支持する。台は通常、成膜反応期間中および成膜反応期間同士の間に基板を保持および移動させるためのチャック、フォーク、または、リフトピンを有する。チャックは、静電チャック、機械チャック、または、産業界および/または学究界で利用可能なその他のさまざまな種類のチャックであってよい。
【0090】
処理ガスは、流入口812を介して導入される。複数のソースガスライン810は、マニホルド808に接続されている。複数種類のガスを予め混合させておくとしてもよいし、そうしないとしてもよい。成膜時およびプラズマ処理時に正しくガスが分配されるように、適切な弁機構および質量流量制御機構を用いる。化学前駆体を液相で分配する場合、液体流量制御機構を利用する。そして、液体状態の前駆体を気化して、成膜チャンバに到達するまでに、沸点より高い温度まで加熱したマニホルドで輸送する間に他の処理ガスと混合させる。
【0091】
処理ガスは、流出口822を介してチャンバ824から排出される。真空ポンプ826(例えば、一段階式または二段階式の機械ドライポンプおよび/またはターボ分子ポンプ)は通常、絞り弁または振子弁等の閉ループ制御流量制限デバイスによって、処理ガスを引き出して、反応器内の圧力を適切な低圧に維持する。
【0092】
一実施形態によると、マルチステーション装置を用いてハードマスク層を成膜するとしてよい。マルチステーション反応器によれば、複数チャンバで同一または異なる処理を同時に実行できることから、ウェハ処理効率が改善される。マルチステーション装置の一例を図9に示す。概略上面図を示す。装置チャンバ901は、4つのステーション903−909を有する。一般的なマルチステーション装置の1つのチャンバ内に設けるステーションの数は任意に決めることができる。ステーション903は、基板ウェハの出し入れに利用される。ステーション903−909は、機能が同じであってもよいし異なるとしてもよく、一部の実施形態によると、異なる処理条件下で(例えば、異なる温度条件で)動作させることができる。
【0093】
一部の実施形態によると、ハードマスク層は、全層を装置のステーションのうちの1つで成膜する。他の実施形態によると、ハードマスク層のうち第1の部分を第1のステーションで成膜し、その後ウェハを第2のステーションに移動させ、第2のステーションで同じハードマスク層の第2の部分を成膜させる、という処理を、ウェハが第1のステーションに戻ってきて装置から取り出されるまで繰り返す。
【0094】
一実施形態によると、シリコンカーバイドの副層の成膜およびプラズマ後処理は、装置のステーションのうち1つで実行される。別の実施形態によると、副層の成膜は1以上の専用ステーションで実施され、プラズマ後処理は1以上の別のステーションで実施される。
【0095】
一実施形態によると、ステーション903、905、907、および、909は全て、ハードマスク層の成膜に利用される。割出しプレート911は、基板を台から持ち上げて、次の処理ステーションに正確に位置決めする。ウェハ基板は、ステーション903に装填された後、ステーション905、907、および909に連続して割り当てられ、各ステーションでハードマスク層の一部分が成膜される。処理が完了すると当該ウェハをステーション903から出して、新しいウェハを装填する。通常処理時には、各ステーションに別個の基板が割り当てられ、処理を繰り返す度に、これらの基板を新しいステーションへ移動させる。このように、4つのステーション903、905、907、および909を備える装置は、同時に4枚のウェハを処理することができる。
【0096】
処理条件および処理フロー自体は、制御部913によって制御することができる。制御部913は、HF電力およびLF電力、前駆体の流量、温度、圧力等の処理変数を観察、維持、および/または調整するためのプログラム命令を有する。制御部は、本明細書に記載するハードマスク成膜プロセスのうち任意のものを実行させるプログラム命令を有する。例えば、一部の実施形態によると、制御部は、シリコンカーバイドの副層を成膜させ(つまり、適切な処理ガスを導入して、必要な電力パラメータに基づいてプラズマを生成させ)、チャンバをパージガスでパージさせ、副層をプラズマ処理ガスでプラズマ処理させ、成膜およびプラズマ処理を所望回数だけ(例えば、少なくとも10層の副層が成膜および処理される回数だけ)繰り返させるプログラム命令を有する。一部の実施形態によると、制御部は、ホウ素含有ハードマスクを成膜させるプログラム命令を有しており、そのようなプログラム命令には、上述したような適切な組成の処理ガスを導入して、(例えば、LF/HF電力比を少なくとも約1.5とした)適切な電力レベルのプラズマを生成させるための命令が含まれる。他の実施形態によると、制御部は、GeNハードマスクを成膜させるためのプログラム命令を有しており、このようなプログラム命令には、ゲルマニウム含有率が少なくとも約60原子パーセントとなる膜が好ましくは形成されるような流量でゲルマニウム含有前駆体および窒素含有前駆体を含む処理ガスを導入させるための命令が含まれる。制御部が装置の各ステーションと対応付けて有している命令は、異なる命令であってもよいし、同じ命令であってもよく、ステーションはそれぞれ独立して動作することも、または、同期して動作することも可能である。
【0097】
本明細書に記載した例および実施形態は本発明を説明するための例に過ぎず、当業者であればさまざまな変形または変更を認めるものと理解されたい。説明の便宜上、詳細な事項の記載を省略したが、さまざまな代替例が可能であるとしてよい。このため、上述した例は本発明を例示するためのものであり限定するものではないと解釈すべきであり、本発明は本明細書に記述した詳細な事項に限定されるものではなく、請求項の範囲内で変形され得る。特定の実施形態では、必ずしもリソグラフィーにおけるマスキングのためにハードマスク膜を積極的に利用する必要はなく、単に下方の材料に対する硬性の保護層の役割を果たすこともあると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板にハードマスク膜を形成する方法であって、
プラズマ化学気相成長(PECVD)処理チャンバに半導体基板を挿入する段階と、
硬度が約12GPaよりも高く且つ応力が約−600MPaから600MPaの範囲内であるハードマスク膜をPECVDによって形成する段階と
備え、
前記ハードマスク膜をPECVDによって形成する段階は、
高密度化プラズマ処理を複数回実行することによって、ドープされている多層シリコンカーバイド膜またはドープされていない多層シリコンカーバイド膜を成膜する段階(i)と、
Si、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される高硬度のホウ素含有膜を成膜する段階(ii)と
から成る群から選択される処理を有する
方法。
【請求項2】
前記膜は、応力が約−300MPaから300MPaの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜は、応力が約0MPaから600MPaの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記膜は、硬度が少なくとも約16Gpaである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記膜は、弾性率が少なくとも約100GPaである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記段階(i)は、
シリコン含有前駆体を含む処理ガスを前記処理チャンバに導入し、プラズマを形成して、前記シリコンカーバイドハードマスク膜の第1の副層を成膜する段階(a)と、
前記処理チャンバから前記シリコン含有前駆体を除去する段階(b)と、
前記処理チャンバにプラズマ処理ガスを導入して、前記基板をプラズマで処理して、成膜した前記副層を高密度化する段階(c)と、
前記段階(a)、前記段階(b)、および、前記段階(c)を繰り返して、シリコンカーバイドの副層を複数さらに形成して、高密度化する段階(d)と
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコンカーバイドは、ドープされておらず、前記シリコン含有前駆体は、飽和している前駆体である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン含有前駆体は、テトラメチルシラン(MeSi)を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
成膜時に利用される前記処理ガスはさらに、He、Ne、Ar、Kr、および、Xeから成る群から選択されるキャリアガスを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ処理ガスは、He、Ar、CO、N、NH、および、Hから成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記副層のそれぞれの厚みは、約100Å未満である請求項6に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも副層を10層成膜する段階を備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコンカーバイド副層を成膜する段階は、MeSiおよび不活性ガスを含む処理ガスを導入して、二重周波数プラズマを形成する段階を有し、高周波プラズマの電力レベルは約0.04から0.2W/cmの範囲内であって、低周波プラズマの電力レベルは、約0.17から0.6W/cmの範囲内であり、
前記シリコンカーバイド前駆体を除去する段階は、Ar、He、H、および、これらの混合ガスから成る群から選択されるガスで前記処理チャンバをパージする段階を有し、
前記副層を高密度化する段階は、Ar、He、H、および、これらの混合ガスから成る群から選択される処理ガスを導入して、LF/HF電力比が少なくとも約1.5である二重周波数プラズマを形成する段階を有する請求項6に記載の方法。
【請求項14】
形成された前記シリコンカーバイド膜において、SiHに対する赤外スペクトルにおけるSiCのピーク面積の割合は、少なくとも約20であって、CHに対する赤外スペクトルにおけるSiCのピーク面積の割合は少なくとも約50である請求項6に記載の方法。
【請求項15】
形成された前記シリコンカーバイド膜は、密度が少なくとも約2g/cmである請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記段階(ii)は、高硬度のSi膜を成膜する段階を有し、
前記成膜する段階は、ホウ素含有前駆体、シリコン含有前駆体、および、キャリアガスを含む処理ガスを前記処理チャンバに導入する段階と、
LF/HF電力比が少なくとも約1.5である二重周波数プラズマを形成して、前記基板上に高硬度のSi膜を成膜する段階と
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
形成された前記高硬度のSi膜は、BC/[BC+SiC]の赤外ピーク面積の比が少なくとも約0.35である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
形成された前記ハードマスク層は、誘電率が約2.8未満の誘電体の層の上方に成膜されており、形成された前記ハードマスク膜は、ドライプラズマエッチングの場合の前記誘電体に対するエッチングの選択性が少なくとも約8:1である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
形成された前記ハードマスク層は、ポリシリコンの層の上方に成膜されている請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ハードマスクは、約摂氏400度未満の温度で形成される請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記段階(ii)は、高硬度のSi膜を形成する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
硬度が少なくとも約12GPaで応力が約−600MPaから600MPaの範囲内である、ドープされているシリコンカーバイドまたはドープされていないシリコンカーバイドを備える膜。
【請求項23】
ハードマスク膜を成膜する装置であって、
(a)プラズマを形成する処理チャンバと、
(b)ハードマスク成膜時に定位置にウェハ基板を保持する前記ウェハ基板用の支持部と、
(c)高密度化プラズマ処理を複数回実行することによって、ドープされている多層シリコンカーバイド膜またはドープされていない多層シリコンカーバイド膜を成膜する段階(i)、およびSi、Si、Si、B、およびBから成る群から選択される高硬度のホウ素含有膜を成膜する段階(ii)から成る群から選択される処理を実行させるためのプログラム命令を有するコントローラと
を備える装置。
【請求項24】
半導体基板にハードマスク膜を形成する方法であって、
プラズマ化学気相成長(PECVD)処理チャンバに半導体基板を挿入する段階と、
弾性率が少なくとも約100GPaであるGeNハードマスク膜を形成する段階と
を備える方法。
【請求項25】
(a)PECVD処理チャンバと、
(b)成膜時に定位置に前記半導体基板を保持する支持部と、
(c)ゲルマニウム含有前駆体および窒素含有前駆体を含む処理ガスを導入し、プラズマを形成して、前記基板にGeNハードマスク膜を成膜するためのプログラム命令を有するコントローラと
を備える半導体プロセス装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−139033(P2011−139033A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−256165(P2010−256165)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(501080848)ノベルス・システムズ・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】NOVELLUS SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】