説明

プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置

【課題】プラズマ処理装置内の堆積物を減少させることができるクリーニング方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、アンテナのスロット板に、軸線に対して周方向に配列されたスロットが形成されている。アンテナからは誘電体窓を介してマイクロ波が処理空間に導入される。誘電体窓には、軸線に沿って貫通孔が形成されている。このプラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法は、(a)アンテナからマイクロ波を放射させ、クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、第1のクリーニングを行なう工程と、(b)アンテナからマイクロ波を放射させ、クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、第2のクリーニングを行なう工程と、を含む。第1のクリーニングを行なう工程における処理空間の第1の圧力は、第2のクリーニングを行なう工程における処理空間の第2の圧力よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一種のプラズマ処理装置が記載されている。特許文献1に記載されたプラズマ処理装置は、処理容器、アンテナ、及び、誘電体窓を備えている。処理容器は、処理空間を画成している。アンテナは、プラズマ励起用のマイクロ波を放射する。アンテナは、スロット板を有しており、当該スロット板には、軸線に対して周方向に配列された複数のスロットが形成されている。誘電体窓は、処理空間とアンテナとの間に設けられている。誘電体窓には、処理空間にガスを供給するための貫通孔が形成されている。貫通孔は、上記軸線に沿っており、処理空間に向かうにつれてその直径が小さくなるテーパー形状を有している。
【0003】
このプラズマ処理装置では、炭素を含む処理ガス、例えば、CF系の処理ガスを用いたプラズマ処理が行なわれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−21243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなプラズマ処理装置では、処理ガスに曝される壁面等の部分に、処理ガスに含まれる成分に基づく堆積物が生成されることがある。この堆積物を除去するために、プラズマ処理装置内部のクリーニングが行なわれる。
【0006】
当技術分野においては、プラズマ処理装置内の堆積物を更に減少させることができるクリーニングが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法である。このプラズマ処理方法に用いられるプラズマ処理装置は、処理容器、マイクロ波発生器、アンテナ、誘電体窓、及び、クリーニングガス供給系を備えている。処理容器は処理空間を画成している。アンテナは、マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射する。アンテナは、スロット板を有しており、当該スロット板は、軸線に対して周方向に配列された複数のスロットを含んでいる。誘電体窓は、処理空間とアンテナとの間に設けられている。誘電体窓は、処理空間にガスを供給するための貫通孔を上記軸線に沿って画成している。貫通孔は、アンテナ側の開口及び処理空間側の開口を含んでいる。アンテナ側の開口から処理空間側の開口までの間の貫通孔の一部の面積は、アンテナ側の開口から当該一部までの間の貫通孔の他の一部の面積よりも小さくなっている。クリーニングガス供給系は、貫通孔に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する。この装置におけるプラズマ処理方法は、(a)アンテナからマイクロ波を放射させ、クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、第1のクリーニングを行なう工程と、(b)アンテナからマイクロ波を放射させ、クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して第2のクリーニングを行なう工程と、を含む。第1のクリーニングを行なう工程における処理空間の圧力、即ち、第1の圧力は、第2のクリーニングを行なう工程における処理空間の圧力、即ち、第2の圧力よりも低い。
【0008】
処理空間の圧力が比較的高い第2の圧力となるようクリーニングガスが供給された場合には、クリーニングガス中の分子は処理空間に比較的多く存在するようになる。その結果、アンテナから供給されるマイクロ波のエネルギーは、主に処理空間に存在するクリーニングガス中の分子により消費される。したがって、処理空間の圧力が第2の圧力である場合には、処理空間を画成する処理容器の壁面が主にクリーニングされる。一方、処理空間の圧力が比較的低い第1の圧力となるようクリーニングガスが供給されると、誘電体窓の貫通孔におけるクリーニングガス中の分子の量が処理空間におけるクリーニングガス中の分子の量より相対的に大きくなる。その結果、第1の圧力では、マイクロ波のエネルギーは誘電体窓の貫通孔において相対的に多く消費され、当該貫通孔において効率良くプラズマが発生され得る。したがって、第1の圧力では、貫通孔に面する部材の表面、例えば、貫通孔を画成する誘電体窓の壁面を効率良くクリーニングすることが可能である。このように処理容器の壁面に加えて、貫通孔に面する部材の表面もクリーニングされるので、このプラズマ処理方法によれば堆積物が更に減少され得る。
【0009】
一実施形態においては、第1の圧力は10mTorr以下であってもよい。このような第1の圧力によれば、誘電体窓の貫通孔において、より効率良くプラズマが発生され得る。
【0010】
一実施形態においては、第1のクリーニングを行なう工程において、アルゴンガスが貫通孔に更に供給されてもよい。アルゴンガスを貫通孔に供給することにより、当該貫通孔においてプラズマをより効率良く発生させることが可能となる。
【0011】
一実施形態においては、第1のクリーニングを行なう工程が、第2のクリーニングを行なう工程よりも、先に行なわれてもよい。貫通孔に面する部材の表面を先にクリーニングすることにより、当該表面における堆積物とクリーニングガスとの反応物を処理空間に排出し、その後に処理空間をクリーニングすることができ、プラズマ処理装置内の堆積物を更に減少させることができる。
【0012】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、上記軸線の延在方向(以下、「軸線方向」という)において誘電体窓に対面するように設けられたステージと、当該ステージと誘電体窓との間において上記軸線の周囲からガスを供給するためのガス供給部と、ガス供給部に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する別のクリーニングガス供給系と、を更に備えてもよい。第1のクリーニングを行なう工程においては、ガス供給部からも処理空間にクリーニングガスが供給されてもよい。この実施形態によれば、誘電体窓の貫通孔において消費されなかったマイクロ波のエネルギーを、別のクリーニングガス供給系からガス供給部を介して処理空間に供給されるクリーニングガスにより消費することが可能となる。これにより、貫通孔内で消費されなかったマイクロ波のエネルギーが、処理空間を画成する処理容器の壁面や処理空間内に配置された部品等にダメージを与えることを抑制し得る。
【0013】
本発明の別の側面に係るプラズマ処理装置は、処理容器、マイクロ波発生器、アンテナ、誘電体窓、クリーニングガス供給系、及び、制御部を備えている。処理容器は、処理空間を画成している。アンテナは、マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射する。アンテナはスロット板を有しており、当該スロット板は、軸線に対して周方向に配列された複数のスロットを含んでいる。誘電体窓は、処理空間とアンテナとの間に設けられている。誘電体窓は、処理空間にガスを供給するための貫通孔を上記軸線に沿って画成している。貫通孔は、アンテナ側の開口と処理空間側の開口とを含んでいる。アンテナ側の開口から処理空間側の開口までの間の貫通孔の一部の面積が、アンテナ側の開口から当該一部までの間の貫通孔の他の一部の面積よりも小さくなっている。クリーニングガス供給系は、貫通孔に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する。制御部は、マイクロ波発生器がマイクロ波を発生しているときに、第1のモードにおいて、処理空間の圧力が第1の圧力となるようクリーニングガス供給系にクリーニングガスを供給させる。また、制御部は、マイクロ波発生器がマイクロ波を発生しているときに、第2のモードにおいて、処理空間の圧力が第1の圧力より高い第2の圧力となるようクリーニングガス供給系にクリーニングガスを供給させる。
【0014】
このプラズマ処理装置では、処理空間の圧力が比較的高い第2の圧力となるようクリーニングガスが供給された場合、即ち、制御部が第2のモードで動作しているときに、処理空間を画成する処理容器の壁面が主としてクリーニングされる。一方、処理空間の圧力が比較的低い第1の圧力となるようクリーニングガスが供給された場合、即ち、制御部が第1のモードで動作しているときに、誘電体窓の貫通孔において効率良くプラズマが発生され得る。その結果、制御部が第1のモードで動作しているときに、貫通孔に面する部材の表面を効率良くクリーニングすることが可能である。したがって、このプラズマ処理装置によれば、処理容器の壁面に加えて、貫通孔に面する部材の表面もクリーニングされるので、堆積物が更に減少され得る。
【0015】
一実施形態においては、第1の圧力は10mTorr以下であってもよい。このような第1の圧力によれば、誘電体窓の貫通孔においてより効率良くプラズマが発生され得る。
【0016】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、貫通孔にアルゴンガスを供給するガス供給系を更に更に含んでいてもよい。このガス供給系によれば、アルゴンガスを貫通孔に供給することができるので、当該貫通孔においてプラズマをより効率良く発生させることが可能となる。
【0017】
一実施形態においては、制御部は、第1のモードで動作した後に第2のモードで動作してもよい。誘電体窓の貫通孔において先にクリーニングを行なうことにより、貫通孔に面する部材の表面上の堆積物とクリーニングガスとの反応物を処理空間に排出し、その後に処理空間をクリーニングすることができ、プラズマ処理装置内の堆積物を更に減少させることができる。
【0018】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、軸線方向において誘電体窓に対面するように設けられたステージと、ステージと誘電体窓との間において軸線の周囲からガスを供給するためのガス供給部と、ガス供給部に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する別のクリーニングガス供給系と、を更に備えていてもよい。制御部は、第1のモードにおいて、別のクリーニングガス供給系にクリーニングガスを供給させてもよい。この実施形態によれば、誘電体窓の貫通孔において消費されなかったマイクロ波のエネルギーを、別のクリーニングガス供給系から処理空間に供給されるクリーニングガスにより消費することが可能となる。これにより、貫通孔内で消費されなかったマイクロ波のエネルギーが、処理空間を画成する処理容器の壁面や処理空間内に配置された部品等にダメージを与えることを抑制し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び実施形態によれば、堆積物を更に減少させることが可能なプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図2】一実施形態に係るスロット板を軸線X方向から見た平面図である。
【図3】一実施形態に係るインジェクタ及び誘電体窓の貫通孔を拡大して示す断面図である。
【図4】一実施形態に係るプラズマ処理方法を示す流れ図である。
【図5】一実施形態に係るプラズマ処理装置が備え得る制御部を示す図である。
【図6】実施例及び比較例におけるプラズマの発光状態を示す画像である。
【図7】実施例及び比較例におけるクリーニング結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0022】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12、ステージ14、マイクロ波発生器16、アンテナ18、及び誘電体窓20を備えている。
【0023】
処理容器12は、被処理基体Wにプラズマ処理を行うための処理空間Sを画成している。処理容器12は、側壁12a、及び、底部12bを含み得る。側壁12aは、軸線X方向(即ち、軸線Xの延在方向)に延在する略筒形状を有している。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。底部12bには、排気用の排気孔12hが設けられている。側壁12aの上端部は開口している。
【0024】
側壁12aの上端部開口は、誘電体窓20によって閉じられている。この誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング21が介在していてもよい。このOリング21により、処理容器12の密閉がより確実なものとなる。
【0025】
マイクロ波発生器16は、例えば、2.45GHzのマイクロ波を発生する。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、チューナ22、導波管24、モード変換器26、及び同軸導波管28を更に備えている。
【0026】
マイクロ波発生器16は、チューナ22を介して導波管24に接続されている。導波管24は、例えば、矩形導波管である。導波管24は、モード変換器26に接続されており、当該モード変換器26は、同軸導波管28の上端に接続されている。
【0027】
同軸導波管28は、軸線Xに沿って延びている。この同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含んでいる。外側導体28aは、軸線X方向に延びる略円筒形状を有している。内側導体28bは、外側導体28aの内部に設けられている。この内側導体28bは、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。
【0028】
マイクロ波発生器16によって発生されたマイクロ波は、チューナ22及び導波管24を介してモード変換器26に導波される。モード変換器26は、マイクロ波のモードを変換して、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28からのマイクロ波は、アンテナ18に供給される。
【0029】
アンテナ18は、マイクロ波発生器16によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射する。アンテナ18は、スロット板30、誘電体板32、及び冷却ジャケット34を含み得る。
【0030】
スロット板30には、軸線Xを中心にして周方向に複数のスロットが配列されている。図2は、一実施形態に係るスロット板を軸線X方向から見た平面図である。一実施形態においては、図2に示すように、スロット板30は、ラジアルラインスロットアンテナを構成するスロット板であり得る。スロット板30は、導電性を有する金属製の円板から構成される。スロット板30には、複数のスロット対30aが形成されている。各スロット対30aは、互いに交差又は直交する方向に延びるスロット30bとスロット30cを含んでいる。複数のスロット対30aは、径方向に所定の間隔で配置されており、また、周方向に所定の間隔で配置されている。
【0031】
図1を再び参照する。誘電体板32は、スロット板30と冷却ジャケット34の下側表面の間に設けられている。誘電体板32は、例えば石英製であり、略円板形状を有している。冷却ジャケット34の表面は、導電性を有し得る。冷却ジャケット34は、誘電体板32及びスロット板30を冷却する。そのために、冷却ジャケット34内には、冷媒用の流路が形成されている。この冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び誘電体板32の中央部分に形成された孔を通って、スロット板30に電気的に接続されている。
【0032】
同軸導波管28からのマイクロ波は、誘電体板32に伝播され、スロット板30のスロットから誘電体窓20を介して、処理空間S内に導入される。誘電体窓20は、略円板形状を有しており、例えば石英によって構成される。この誘電体窓20は、処理空間Sとアンテナ18との間に設けられており、一実施形態においては、軸線X方向においてアンテナ18の直下に設けられている。
【0033】
一実施形態においては、同軸導波管28の内側導体28bの内孔には、導管36が通っている。導管36は、軸線Xに沿って延在しており、ガス供給系38、ガス供給系39、及び、ガス供給系40に接続され得る。
【0034】
ガス供給系38は、導管36に被処理基体Wを処理するための処理ガスを供給する。ガス供給系38によって供給される処理ガスは、炭素を含む。この処理ガスは、一実施形態では、エッチングガスであり、例えば、CFガス、又は、CHガスである。ガス供給系38は、ガス源38a、弁38b、及び流量制御器38cを含み得る。ガス源38aは、処理ガスのガス源である。弁38bは、ガス源38aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器38cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源38aからの処理ガスの流量を調整する。
【0035】
ガス供給系39は、酸素ガス(Oガス)を導管36に供給する。ガス供給系39から供給される酸素ガスはクリーニングガスを構成する。ガス供給系39は、ガス源39a、弁39b、及び流量制御器39cを含み得る。ガス源39aは、酸素ガスのガス源である。弁39bは、ガス源39aからのガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器39cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源39aからのガスの流量を調整する。
【0036】
ガス供給系40は、アルゴンガスを導管36に供給する。一実施形態においては、ガス供給系39からのクリーニングガスに加えて、ガス供給系40からアルゴンガスが供給される。ガス供給系40は、ガス源40a、弁40b、及び流量制御器40cを含み得る。ガス源40aは、アルゴンガスのガス源である。弁40bは、ガス源40aからのアルゴンガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器40cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源40aからのアルゴンガスの流量を調整する。
【0037】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、更に、インジェクタ41を更に備え得る。インジェクタ41は、導管36からのガスを誘電体窓20に形成された貫通孔20hに供給する。誘電体窓20の貫通孔20hに供給されたガスは、処理空間Sに供給される。以下の説明では、導管36、インジェクタ41、及び、貫通孔20hによって構成されるガス供給経路を、「中央ガス導入部」ということがある。
【0038】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ガス供給部42を更に備え得る。ガス供給部42は、ステージ14と誘電体窓20との間において、軸線Xの周囲からガスを処理空間Sに供給する。以下の説明では、ガス供給部42のことを、「周辺ガス導入部」ということがある。ガス供給部42は、導管42aを含み得る。導管42aは、誘電体窓20とステージ14との間において軸線Xを中心に環状に延在している。導管42aには、複数のガス供給孔42bが形成されている。複数のガス供給孔42bは、環状に配列されており、軸線Xに向けて開口しており、導管42aに供給されたガスを、軸線Xに向けて供給する。このガス供給部42は、導管46を介して、ガス供給系43、ガス供給系44、及びガス供給系45に接続されている。
【0039】
ガス供給系43は、ガス供給部42に被処理基体Wを処理するための処理ガスを供給する。ガス供給系43から供給される処理ガスは、ガス供給系38の処理ガスと同様に、炭素を含む。この処理ガスは、一実施形態では、エッチングガスであり、例えば、CFガス、又は、CHガスである。ガス供給系43は、ガス源43a、弁43b、及び流量制御器43cを含み得る。ガス源43aは、処理ガスのガス源である。弁43bは、ガス源43aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器43cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源43aからの処理ガスの流量を調整する。
【0040】
ガス供給系44は、酸素ガス(Oガス)をガス供給部42に供給する。ガス供給系44から供給されるガスはクリーニングガスを構成する。ガス供給系44は、ガス源44a、弁44b、及び流量制御器44cを含み得る。ガス源44aは、酸素ガスのガス源である。弁44bは、ガス源44aからのガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器44cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源44aからのガスの流量を調整する。
【0041】
ガス供給系45は、アルゴンガスをガス供給部42に供給する。一実施形態においては、ガス供給系44からのクリーニングガスに加えて、ガス供給系45からアルゴンガスが供給される。ガス供給系45は、ガス源45a、弁45b、及び流量制御器45cを含み得る。ガス源45aは、アルゴンガスのガス源である。弁45bは、ガス源45aからのアルゴンガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器45cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源45aからのアルゴンガスの流量を調整する。
【0042】
ステージ14は、軸線X方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。このステージ14は、誘電体窓20と当該ステージ14との間に処理空間Sを挟むように設けられている。ステージ14上には、被処理基体が載置される。一実施形態においては、ステージ14は、台14a、フォーカスリング14b、及び、静電チャック14cを含み得る。
【0043】
台14aは、筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48は、絶縁性の材料で構成されており、底部12bから垂直上方に延びている。また、筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿って処理容器12の底部12bから垂直上方に延びている。この筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
【0044】
排気路51の上部には、複数の貫通孔が設けられた環状のバッフル板52が取り付けられている。排気孔12hの下部には排気管54を介して排気装置56が接続されている。排気装置56は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。排気装置56により、処理容器12内の処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0045】
台14aは、高周波電極を兼ねている。台14aには、マッチングユニット60及び給電棒62を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、被処理基体Wに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.65MHzの高周波電力を所定のパワーで出力する。マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0046】
台14aの上面には、静電チャック14cが設けられている。静電チャック14cは、被処理基体Wを静電吸着力で保持する。静電チャック14cの径方向外側には、被処理基体Wの周囲を環状に囲むフォーカスリング14bが設けられている。静電チャック14cは、電極14d、絶縁膜14e、及び、絶縁膜14fを含んでいる。電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fの間に設けられている。電極14dには、高圧の直流電源64がスイッチ66および被覆線68を介して電気的に接続されている。静電チャック14cは、直流電源64より印加される直流電圧により発生するクーロン力によって、被処理基体Wを吸着保持することができる。
【0047】
台14aの内部には、周方向に延びる環状の冷媒室14gが設けられている。この冷媒室14gには、チラーユニット(図示せず)より配管70,72を介して所定の温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック14cの伝熱ガス、例えば、Heガスがガス供給管74を介して静電チャック14cの上面と被処理基体Wの裏面との間に供給される。
【0048】
以下、図3を参照して、インジェクタ41及び誘電体窓20の貫通孔20hについてより詳細に説明する。図3は、一実施形態に係るインジェクタ及び誘電体窓の貫通孔を拡大して示す断面図である。
【0049】
図3に示すように、誘電体窓20は、軸線Xに沿って上方から順に収容空間20s、貫通孔20hを画成している。貫通孔20hは、収容空間20sと処理空間Sとを連通させている。この貫通孔20hは、アンテナ18側の開口と処理空間S側の開口との間の一部における面積が、当該一部とアンテナ18側の開口との間の当該貫通孔20hの他の一部における面積より小さくなるように、構成されている。ここで、「面積」とは、軸線Xに直交する面での貫通孔20hの面積である。一例においては、図3に示すように、貫通孔20hは、軸線Xに沿って下方に向かうにつれてその直径が小さくなるテーパー形状を有し得る。
【0050】
収容空間20sには、インジェクタ41、及び、導管36の一端部36bが収容されている。導管36は、導電性を有する金属により構成され得る。導管36は、本体部36a及び一端部36bを含んでいる。本体部36aは、軸線Xに沿って延在する筒形状を有している。一端部36bは、略円板形状を有しており、本体部36aより大きな外径を有している。導管36には、本体部36a及び一端部36bにわたって貫通するガス供給用の内孔が設けられている。この導管36の本体部36aは、内側導体28bの内孔を通っている。
【0051】
内側導体28bは、上述したように、スロット板30に接続されている。一実施形態においては、スロット板30には、軸線Xに沿って設けられた貫通孔が形成されている。当該貫通孔を画成するスロット板30の内側縁部は、内側導体28bの下端と金属製の部材80とにより、狭持されている。この部材80は、内側導体28bの下端にねじ82によって固定されている。また、スロット板30の下面には、導管36の一端部36bの上面が接触している。このように、内側導体28b、スロット板30、及び導管36は、電気的に接続されている。
【0052】
インジェクタ41は、収容空間20s内において、導管36の一端部36bの下方に収容されている。インジェクタ41は、導電性を有しており、略円板形状を有している。インジェクタ41は、例えば、アルミニウム又はステンレス製である。
【0053】
インジェクタ41は、一端部36b側の第1の面41aと貫通孔20h側の第2の面41bとを含んでいる。インジェクタ41には、第1の面41aから第2の面41bまで延在する複数の貫通孔41hが形成されている。一実施形態においては、第2の面41bには、Yの膜が形成されていてもよい。この膜は、Yを第2の面41bにコーティングした後に、コーティングされた膜を電子ビームにより溶融させることによって形成されてもよい。
【0054】
インジェクタ41は、ねじ84により導管36の一端部36bに対して固定されており、当該一端部36bに電気的に接続している。したがって、インジェクタ41は、内側導体28b、スロット板30、及び導管36と同電位に設定され得る。インジェクタ41は、例えば、接地電位に設定され得る。
【0055】
一実施形態においては、インジェクタ41の第2の面41bと誘電体窓20との間にはOリング86が設けられ得る。Oリング86は、複数の貫通孔41hの貫通孔20h側の開口を囲むように環状に延在している。このOリング86により、インジェクタ41と誘電体窓20との間における気密が確保される。更に、インジェクタ41の第1の面41aと導管36の一端部36bとの間にはOリング88が設けられ得る。Oリング88は、複数の貫通孔41hの一端部36b側の開口を囲むように環状に延在している。これにより、インジェクタ41と導管36の一端部36bとの間の気密が確保される。
【0056】
このように構成されたプラズマ処理装置10では、導管36及びインジェクタ41の貫通孔41hを介して、誘電体窓20の貫通孔20hから処理空間S内に軸線Xに沿ってガスが供給される。また、貫通孔20hよりも下方において、ガス供給部42から軸線Xに向けてガスが供給される。さらに、アンテナ18から誘電体窓20を介して処理空間S及び/又は貫通孔20h内にマイクロ波が導入される。これにより、処理空間S及び/又は貫通孔20hにおいてプラズマが発生する。このように、プラズマ処理装置10によれば、磁場を加えずに、プラズマを発生させることができる。
【0057】
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法の一実施形態について説明する。図4は、一実施形態に係るプラズマ処理方法を示す流れ図である。図4に示すプラズマ処理方法では、まず、被処理基体Wが、処理空間S内に収容され、ステージ14上に載置される(工程S1)。
【0058】
次いで、被処理基体Wの処理が行なわれる(工程S2)。この工程では、マイクロ波発生器16からマイクロ波が発生され、ガス供給系38から処理ガスが供給される。また、ガス供給系43からも処理ガスが供給され得る。この工程S2では、マイクロ波発生器16は、マイクロ波を発生するよう動作状態に設定される。また、ガス供給系38の弁38bが開かれ、処理ガスの供給量を調整するよう流量制御器38cが制御される。更に、ガス供給系43の弁43bが開かれ、処理ガスの供給量を調整するよう流量制御器43cが制御される。これらガス供給系38及び43から供給される処理ガスは、上述したように炭素を含み、例えば、上述したようにCFガス又はCHガスといったエッチングガスであり得る。このような炭素を含む処理ガスが用いられる結果、処理容器12の内壁面や貫通孔20hに面する部材の表面上には、堆積物が生成される。なお、貫通孔20hに面する部材の表面には、例えば、貫通孔20hを画成する誘電体窓20の壁面や貫通孔20hに面するインジェクタ41の第2の面41bが含まれる。
【0059】
一実施形態においては、工程S2において、ガス供給系39、ガス供給系40、ガス供給系44、及びガス供給系45からもガスを供給してもよい。この場合には、これらガス供給系の弁が開かれ、流量制御器がガスの流量を調整するよう制御される。
【0060】
本実施形態のプラズマ処理方法では、次いで、被処理基体Wが処理容器12内から取り出される(工程S3)。
【0061】
次いで、処理容器12内に被処理基体が存在しない状態で、マイクロ波発生器16からマイクロ波が発生され、処理空間Sの圧力が第1の圧力となるように、貫通孔20h及び処理空間Sにクリーニングガスが供給される(工程S4)。この工程S4では、貫通孔20hで酸素プラズマを発生させることにより、第1のクリーニングが行なわれる。この第1のクリーニングにより、貫通孔20hに面する部材の表面における堆積物の除去が行なわれる。
【0062】
工程S4においては、クリーニングガスは、ガス供給系39から導管36、インジェクタ41、及び貫通孔20hを介して処理空間Sに供給される酸素ガスを含む。工程S4では、マイクロ波発生器16は、マイクロ波を発生するよう動作状態に設定される。また、ガス供給系39の弁39bが開かれ、酸素ガスの供給量を調整するよう流量制御器39cが制御される。
【0063】
また、一実施形態では、工程S4においては、クリーニングガスに加えて、ガス供給系40からアルゴンガスが供給され得る。ガス供給系40からアルゴンガスを供給するために、ガス供給系40の弁40bが開かれ、アルゴンガスの供給量を調整する流量制御器40cが制御される。このように、クリーニングガスに加えてアルゴンガスが供給されることにより、プラズマが効率良く生成される。
【0064】
さらに、一実施形態では、工程S4に使用されるクリーニングガスは、ガス供給系44から供給される酸素ガスも含み得る。ガス供給系44から酸素ガスを供給するために、ガス供給系44の弁44bが開かれ、酸素ガスの供給量を調整する流量制御器44cが制御される。また更に、工程S4においては、ガス供給系45からアルゴンガスが供給され得る。ガス供給系45からアルゴンガスを供給するために、ガス供給系45の弁45bが開かれ、アルゴンガスの供給量を調整する流量制御器45cが制御される。ガス供給系44及び/又はガス供給系45からガス供給部42を介して供給されるガスは、貫通孔20h内で消費されず処理空間Sに供給されたマイクロ波のエネルギーを消費し得る。これにより、貫通孔20h内で消費されなかったマイクロ波のエネルギーが、処理空間Sを画成する処理容器12の壁面や処理空間S内に配置された部品等にダメージを与えることを抑制し得る。
【0065】
なお、工程S4におけるアルゴンガスと酸素ガスの流量比は、酸素ガスの流量が1.0に対してアルゴンガスの流量が1.1以下となる流量比であり得る。このような流量比によれば、プラズマの生成効率及びクリーニングの効率が両立され得る。
【0066】
この工程S4では、処理空間Sの圧力は、工程S4に用いられるガスの供給量を流量制御器によって調整し、また、排気装置56の排気量を調整することによって、第1の圧力に調整される。この第1の圧力は、後述する第2の圧力よりも低い圧力であり、例えば、10mTorr(1.3333Pa)以下である。
【0067】
処理空間Sの圧力が第2の圧力である場合には、処理空間Sにおけるクリーニングガスの分子密度が比較的大きく、アンテナ18から供給されるマイクロ波のエネルギーは、主に処理空間Sに存在する分子によって消費される。一方、処理空間Sの圧力が第1の圧力である場合には、処理空間Sの圧力が第2の圧力である場合よりも、貫通孔20hにおけるクリーニングガスの分子密度が相対的に高くなる。これは、上述した貫通孔20hの形状、即ち、貫通孔20h内にガス溜まりが形成されるように一部においてコンダクタンスを小さくした形状に起因する。このように貫通孔20hにおけるクリーニングガスの分子密度が高められる結果、アンテナ18から供給されるマイクロ波のエネルギーは、貫通孔20hに存在するクリーニングガス中の分子によって消費される。したがって、貫通孔20hにおいて酸素プラズマが発生し、当該貫通孔20hに面する部材の表面における堆積物が除去される。
【0068】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、処理容器12内に被処理基体が存在しない状態で、マイクロ波発生器16からマイクロ波が発生され、処理空間Sの圧力が第1の圧力より大きな第2の圧力となるように、クリーニングガスが供給される(工程S5)。この工程S5においても、工程S4と同様にアルゴンガスが供給されてもよい。工程S5においても、マイクロ波発生器16はマイクロ波を発生するよう動作状態に設定される。また、工程S4で用いられたガス供給系からクリーニングガス及び/又はアルゴンガスが供給される。この工程S5により、第2のクリーニングが行なわれ、処理空間Sを画成する壁面上の堆積物が除去される。
【0069】
本実施形態のプラズマ処理方法では、工程S4の実施後に工程S5が実施されている。即ち、工程S5よりも先に工程S4が実施される。これにより、貫通孔20hに面する部材の表面における堆積物とクリーニングガスとの反応物を処理空間Sに排出し、その後に処理空間Sをクリーニングすることができ、プラズマ処理装置10内の堆積物を更に減少させることができる。
【0070】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、上述したプラズマ処理方法の工程S2、工程S4、及び工程S5における各部の動作を制御する制御部を更に備え得る。図5は、一実施形態に係るプラズマ処理装置が備え得る制御部を示す図である。プラズマ処理装置10は、図3に示す制御部90を更に備え得る。
【0071】
制御部90は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリといった記憶装置を備えるコンピュータであってもよい。制御部90は、記憶装置に記憶されたプログラムに従って種々の制御信号を出力することができる。制御部90からの種々の制御信号は、マイクロ波発生器16、排気装置56、弁38b、流量制御器38c、弁43b、流量制御器43c、弁39b、流量制御器39c、弁40b、流量制御器40c、弁44b、流量制御器44c、弁45b、及び、流量制御器45cに与えられる。
【0072】
より具体的には、工程S2を実施するために、制御部90は、マイクロ波発生器16を動作状態に設定するための制御信号を当該マイクロ波発生器16に出力する。また、制御部90は、弁38b及び弁43bが開かれるよう当該弁38b及び弁43bのそれぞれに制御信号を与える。さらに、制御部90は、ガス源38aからのガスの流量を所定の流量に調整するよう流量制御器38cに制御信号を与え、ガス源43aからのガスの流量を所定の流量に調整するよう流量制御器43cに制御信号を与える。また更に、制御部90は、排気装置56の排気量を調整するための制御信号を当該排気装置56に出力する。
【0073】
一実施形態においては、工程S2において、ガス供給系39、40、44、及び45からもガスが供給されてもよく、制御部90は、これらガス供給系それぞれの弁及び流量制御器に制御信号を出力してもよい。
【0074】
また、工程S4を実施するために、制御部90は、第1のモードで動作する。第1のモードにおいては、制御部90は、マイクロ波発生器16を動作状態に設定するための制御信号を当該マイクロ波発生器16に出力する。また、制御部90は、弁39b、流量制御器39c、弁40b、流量制御器40c、弁44b、流量制御器44c、弁45b、及び流量制御器45cのそれぞれに制御信号を出力し、更に、排気装置56の排気量を調整するための制御信号を当該排気装置56に出力して、処理空間Sの圧力を第1の圧力に設定する。これにより、工程S4が実施される。
【0075】
また、工程S5を実施するために、制御部90は、第2のモードで動作する。第2のモードにおいては、制御部90は、マイクロ波発生器16を動作状態に設定するための制御信号を当該マイクロ波発生器16に出力する。また、制御部90は、弁39b、流量制御器39c、弁40b、流量制御器40c、弁44b、流量制御器44c、弁45b、及び流量制御器45cのそれぞれに制御信号を出力し、更に、排気装置56の排気量を調整するための制御信号を当該排気装置56に出力して、処理空間Sの圧力を第2の圧力に設定する。これにより、工程S5が実施される。
【0076】
このように、制御部90を有するプラズマ処理装置10によれば、図4に従って説明したプラズマ処理方法にける工程S2、工程S4、及び工程S5の処理を実施するための当該プラズマ処理装置10の各部の動作を自動的に制御することが可能である。
【0077】
以下、上述したプラズマ処理方法の一実施例について説明する。この実施例においては上述した工程S1〜S5を順に実施した。この実施例における各工程の条件は、以下に示す通りとした。また、比較例として、工程S1、S2、S3、S5を順に実施した。比較例における各工程の条件は、実施例における対応の工程の条件と同様とした。
【0078】
(工程S2)
マイクロ波のパワー 2000W
マイクロ波の周波数 2.45GHz
高周波電源58の出力RFパワー 120W
アルゴンガスの流量 1000sccm
CHガスの流量 5sccm
酸素ガス(Oガス)の流量 2sccm
流量比(中央ガス導入部のガス流量:周辺ガス導入部のガス流量) 30:70
処理空間Sの圧力 20mTorr(2.6666Pa)
処理時間 60秒
処理空間Sの温度 上部:80℃、側壁12a内面:80℃、
ステージ14の温度 中央:30℃、周縁部:30℃、
ステージ14の冷媒温度:10℃
【0079】
(工程S4)
マイクロ波のパワー 3000W
マイクロ波の周波数 2.45GHz
高周波電源58の出力RFパワー 0W
アルゴンガスの流量 110sccm
酸素ガス(Oガス)の流量 100sccm
流量比(中央ガス導入部のガス流量:周辺ガス導入部のガス流量) 30:70
処理空間Sの圧力 5mTorr(0.6666Pa)
処理時間 90秒
処理空間Sの温度 上部:80℃、側壁12a内面:80℃、
ステージ14の温度 中央:30℃、周縁部:30℃、
ステージ14の冷媒温度:10℃
【0080】
(工程S5)
マイクロ波のパワー 3000W
マイクロ波の周波数 2.45GHz
高周波電源58の出力RFパワー 0W
アルゴンガスの流量 100sccm
酸素ガス(Oガス)の流量 100sccm
流量比(中央ガス導入部のガス流量:周辺ガス導入部のガス流量) 5:95
処理空間Sの圧力 20mTorr(2.6666Pa)
処理時間 90秒
処理空間Sの温度 上部:80℃、側壁12a内面:80℃、
ステージ14の温度 中央:30℃、周縁部:30℃、
ステージ14の冷媒温度:10℃
【0081】
図6は、実施例及び比較例におけるプラズマの発光状態を示す画像である。図6の(a)には、実施例の工程S4の実施時と同条件の環境下で、誘電体窓20直下のプラズマ発光状態を処理空間S側から撮影して得た画像が示されている。図6の(b)には、比較例の工程S5の実施時と同条件の環境下で、誘電体窓20直下のプラズマ発光状態を処理空間S側から撮影して得た画像が示されている。図6の(a)の画像中央部分の輝度から分かるように、処理空間Sの圧力を第1の圧力に設定することによって、貫通孔20hにプラズマが生成されていることが確認される。一方、図6の(b)に示すように、第2の圧力では、誘電体窓20の直下においてプラズマが発生しており、貫通孔20hにおいて十分にプラズマを発生させることができていない。
【0082】
図7は、実施例及び比較例におけるクリーニング結果を示す画像である。図7の(a)には、実施例の処理後に貫通孔20hからインジェクタ41の第2の面41bを撮影して得た画像が示されている。図7の(b)には、実施例の処理後に上方(インジェクタ41側)から貫通孔20hを撮影して得た画像が示されている。一方、図7の(c)には、比較例の処理後に貫通孔20hからインジェクタ41の第2の面41bを撮影して得た画像が示されている。また、図7の(d)には、比較例の処理後に上方(インジェクタ41側)から貫通孔20hを撮影して得た画像が示されている。図7の(c)及び(d)から分かるように、工程S4を行なわず工程S5のみによりクリーニングを行なった場合には、貫通孔20hを画成する壁面及びインジェクタ41の表面に堆積物が残存していた。一方、図7の(a)及び(b)に示すように、実施例の処理後には、貫通孔20hを画成する壁面及びインジェクタ41の表面からは堆積物が除去されることが確認された。
【0083】
以上、種々の実施形態について説明したが、これら実施形態に限定されることなく、種々の変形態様を構成することが可能である。例えば、上述した実施形態における処理ガスの一例はエッチングガスであったが、エッチングガスに代えて化学気相成長(Chemical Vapor Deposition)法における成膜用のガスが処理ガスとして用いられてもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、貫通孔20h及びガス供給部42に別個のガス供給系から同種のガスが供給されているが、当該ガスは単一のガス供給系から貫通孔20h及びガス供給部42に供給されてもよい。この場合には、貫通孔20h及びガス供給部42のそれぞれに単一のガス供給系から供給されるガスの供給量は、フロースプリッタといった要素により制御され得る。
【0085】
また、上述した実施形態では、工程S4が実施された後に工程S5が実施されているが、工程S5の実施後に工程S4が実施されてもよい。この場合には、制御部90は、第2のモードで動作した後に、第1のモードに遷移する。
【0086】
また、上述した実施形態では、一つの被処理基体Wの処理(工程S2)ごとに、工程S4及び工程S5が実施されているが、複数の被処理基体を処理した後に、工程S4及び工程S5が実施されてもよい。工程S2の実施回数に対する工程S4及び/又は工程S5の実施回数は任意であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、14…ステージ、16…マイクロ波発生器、18…アンテナ、20…誘電体窓、20h…貫通孔、22…チューナ、24…矩形導波管、26…モード変換器、28…同軸導波管、30…スロット板、32…誘電体板、34…冷却ジャケット、36…導管、38…ガス供給系、39…ガス供給系(クリーニングガス供給系)、40…ガス供給系(クリーニングガス供給系)、41…インジェクタ、42…ガス供給部、43…ガス供給系、44…ガス供給系(別のクリーニングガス供給系)、45…ガス供給系(別のクリーニングガス供給系)、90…制御部、S…処理空間、W…被処理基体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置におけるプラズマ処理方法であり、
該プラズマ処理装置は、
処理空間を画成する処理容器と、
マイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射するアンテナであり、軸線に対して周方向に配列された複数のスロットを含むスロット板を有する該アンテナと、
前記処理空間と前記アンテナとの間に設けられた誘電体窓であり、前記処理空間にガスを供給するための貫通孔を前記軸線に沿って画成しており、該貫通孔の前記アンテナ側の開口から該貫通孔の前記処理空間側の開口までの間の該貫通孔の一部の面積が、前記アンテナ側の前記開口から該貫通孔の前記一部までの間の該貫通孔の他の一部の面積よりも小さくなっている、該誘電体窓と、
前記貫通孔に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
を備え、
該プラズマ処理方法は、
前記アンテナからマイクロ波を放射させ、前記クリーニングガス供給系から前記クリーニングガスを供給して、第1のクリーニングを行なう工程と、
前記アンテナからマイクロ波を放射させ、前記クリーニングガス供給系から前記クリーニングガスを供給して、第2のクリーニングを行なう工程と、
を含み、
前記第1のクリーニングを行なう前記工程における前記処理空間の第1の圧力は、前記第2のクリーニングを行なう前記工程における前記処理空間の第2の圧力よりも低い、
プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記第1の圧力は、10mTorr(1.3333Pa)以下である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記第1のクリーニングを行なう前記工程において、前記貫通孔にアルゴンガスを更に供給する、請求項1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記第1のクリーニングを行なう前記工程が、前記第2のクリーニングを行なう前記工程よりも、先に行なわれる、請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理装置は、前記軸線の延在方向において前記誘電体窓に対面するように設けられたステージと、該ステージと前記誘電体窓との間において前記軸線の周囲からガスを供給するためのガス供給部と、前記ガス供給部に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する別のクリーニングガス供給系と、を更に備え、
前記第1のクリーニングを行なう前記工程において、前記ガス供給部からも前記処理空間に前記クリーニングガスが供給される、
請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
処理空間を画成する処理容器と、
マイクロ波発生器と、
該マイクロ波発生器によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマ励起用のマイクロ波を放射するアンテナであり、軸線に対して周方向に配列された複数のスロットを含むスロット板を有する該アンテナと、
前記処理空間と前記アンテナとの間に設けられた誘電体窓であり、前記処理空間にガスを供給するための貫通孔を前記軸線に沿って画成しており、該貫通孔の前記アンテナ側の開口から該貫通孔の前記処理空間側の開口までの間の該貫通孔の一部の面積が、前記アンテナ側の前記開口から該貫通孔の前記一部までの間の該貫通孔の他の一部の面積よりも小さくなっている、該誘電体窓と、
前記貫通孔に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記マイクロ波発生器及び前記クリーニングガス供給系を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記マイクロ波発生器がマイクロ波を発生しているときに、第1のモードにおいて、前記処理空間の圧力が第1の圧力となるよう前記クリーニングガス供給系に前記クリーニングガスを供給させ、
前記マイクロ波発生器がマイクロ波を発生しているときに、第2のモードにおいて、前記処理空間の圧力が前記第1の圧力より高い第2の圧力となるよう前記クリーニングガス供給系に前記クリーニングガスを供給させる、
プラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1の圧力は、10mTorr(1.3333Pa)以下である、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記貫通孔にアルゴンガスを供給するガス供給系を更に含む、請求項6又は7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のモードで動作した後に前記第2のモードで動作する、請求項6〜8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記軸線の延在方向において前記誘電体窓に対面するように設けられたステージと、
前記ステージと前記誘電体窓との間において前記軸線の周囲からガスを供給するためのガス供給部と、
前記ガス供給部に酸素ガスを含むクリーニングガスを供給する別のクリーニングガス供給系と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1のモードにおいて、前記別のクリーニングガス供給系にも前記クリーニングガスを供給させる、
請求項6〜9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−102048(P2013−102048A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244679(P2011−244679)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】