説明

プラズマ処理装置

【課題】 スタブ導波管を備えたスロットアンテナ方式のマイクロ波プラズマ処理装置において、スタブ導波管の直下の電界強度を高めることにより、スロットアンテナ付近の電界分布を効果的に調節し、スロットアンテナ全体に均一な電界分布を形成させる。
【解決手段】 プラズマ処理装置100は、偏平導波管を構成する平面アンテナ板31の上に形成される電界分布を調整する第2の導波管としてのスタブ43Aを備えている。スタブ43Aは、導電性のカバー部材34に設けられている。スタブ43Aは、平面アンテナ板31の最外周に配列されたスロット対を構成するスロット32と上下に重なるように配置されている。透過板28の下面には、スタブ43Aと上下に重なるように環状溝28bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスロットを有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導くことにより発生させたプラズマによって被処理体を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの被処理体に対し、酸化処理や窒化処理などのプラズマ処理を行うプラズマ処理装置として、スロットアンテナを用い、処理容器内に例えば周波数2.45GHzのマイクロ波を導入してプラズマを生成させる方式のプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。このようなマイクロ波プラズマ処理装置では、高いプラズマ密度を持つプラズマを生成させることにより、処理容器内で表面波プラズマを形成することが可能である。
【0003】
上記スロットアンテナ方式のプラズマ処理装置では、同一仕様の装置を同一の条件で稼動させても、装置間でプラズマ分布に多少の差が生じる。また、プラズマ処理装置で行なわれる処理の条件を変更しようとすると、処理容器内でのプラズマが不安定または不均一になりやすい。変更後の条件でプラズマを安定化させるには、スロットアンテナのスロットの配置や形状を変更しなければならず、プロセス毎に大掛かりな装置改変が必要になってしまうという問題があった。また、特に大型の半導体ウエハなどの基板を処理する場合に、処理容器内でプラズマが不安定または不均一になると、基板の面内で処理結果に不均一が生じやすくなる。
【0004】
特許文献3では、電子サイクロトロン共振(ECR)方式のマイクロ波プラズマ処理装置においてマイクロ波電力をプラズマ形成部の周辺近傍に均一に分布させる目的で、マイクロ波電源に結合された同軸線に沿って所定間隔でスタブを配設する提案がなされている。また、特許文献4では、100MHz〜1000MHzの高周波電力を用いるプラズマ処理装置において、放射状のロッドを有するアンテナ容器の上面に、このアンテナ容器の上面とロッドとの間で容量を形成しかつ共振状態を作るスタブを配置する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献5および特許文献6では、マイクロ波プラズマ処理装置において、低い圧力から高い圧力に亘って安定したプラズマを生成させる目的で、マイクロ波透過板の下面にテーパ状の凸部または凹部を設け、プラズマ生成条件に応じた最適な共振領域を形成させるようにした技術が提案されている。さらに、特許文献7では、プラズマ中のイオン分布を制御して面内均一性の高いプラズマ処理を実現する目的で、マイクロ波透過板のマイクロ波透過面の被処理体の周縁部に対応する部分に凹凸状部を設け、マイクロ波透過板内の半径方向に定在波が形成されることを抑制する技術が提案されている。
【0006】
本発明者らは、スロットアンテナ方式のマイクロ波プラズマ処理装置において、プラズマ処理を均一に行う目的で、スロットアンテナ全体に均一な電界分布を形成させてプラズマを均一化するために、スロットアンテナにおける電界分布を調節するスタブ導波管を設けることを提案した(特願2007−254270号)。この特願2007−254270号で提案されたスタブ導波管による電界分布の調節機能を十分効果的に発揮させるには、スタブ導波管の直下の電界を十分に強くしておくことが有効であると考えられる。しかし、特願2007−254270号では、スタブ導波管の直下の電界強度を高めるための方法について検討されておらず、改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−260594号公報
【特許文献2】特開2001−223171号公報
【特許文献3】特表2000−514595号公報
【特許文献4】特開平11−297494号公報
【特許文献5】特開2005−100931号公報
【特許文献6】特開2008−182102号公報
【特許文献7】特開2008−311438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スタブ導波管を備えたスロットアンテナ方式のマイクロ波プラズマ処理装置において、スタブ導波管の直下の電界強度を高めることによりスロットアンテナ付近の電界分布を効果的に調節し、スロットアンテナ全体に均一な電界分布を形成させることであり、さらにこれをもって当該プラズマ処理装置内で生成するプラズマを均一化し、処理の均一性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプラズマ処理装置は、
被処理体を収容する真空引き可能な処理容器と、
被処理体を支持する支持面を有し、前記処理容器内で被処理体を載置する載置台と、
前記載置台の支持面に対して向かい合う対向面を有し、前記処理容器の上部の開口に気密に装着されてプラズマ発生用のマイクロ波を透過させる透過板と、
導電性材料からなる平板状基材を貫通して形成された複数のスロットを有して前記透過板よりも上方に配置され、マイクロ波を前記処理容器内に導入する平面アンテナと、
前記平面アンテナを上方から覆う導電性のカバー部材と、
前記導電性のカバー部材の中央部を貫通して設けられ、マイクロ波発生源からのマイクロ波を前記平面アンテナへ供給する第1の導波管と、
前記第1の導波管の周囲に配置され、前記平板状基材の上面に対して直交する方向に導波路を形成して前記平面アンテナにおける電界分布を調節する第2の導波管と、
を備え、
前記透過板の前記対向面において、前記第2の導波管と上下に重なり合う径方向の位置に、前記対向面の中央部分よりも前記載置台の支持面との距離が遠くなる凹部を設けている。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置において、前記凹部は、前記載置台との対向面に形成された環状の溝であり、該環状の溝の周方向における少なくとも一部分において、前記第2の導波管と上下に重なることが好ましい。
【0011】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記第2の導波管は、前記導電性のカバー部材に装着された導電性の中空状部材を有しており、該中空状部材は前記第2の導波管の導波路の少なくとも一部分を構成していることが好ましい。
【0012】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記導電性のカバー部材は、前記平板状基材の上面に対して直交する方向に貫通した貫通開口部を有しており、該貫通開口部は前記第2の導波管の導波路の少なくとも一部分を構成していることが好ましい。
【0013】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記第2の導波管の上端部が閉塞されていることが好ましい。この場合、前記第2の導波管は、導波路の長さを可変に調整する可動体を有していることが好ましい。
【0014】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記導電性のカバー部材は、前記平板状基材の上面側に向けて開口する非貫通の開口部を有しており、該非貫通の開口部は前記第2の導波管の導波路を構成していることが好ましい。
【0015】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記凹部は、前記載置台の支持面に対して平行な第1の壁面と、前記第1の壁面を間に挟むように、前記透過板の径方向において内側に形成された第2の壁面および外側に形成された第3の壁面を有しており、該第3の壁面と前記対向面との境界が、前記カバー部材の径方向における前記第2の導波管の外周側の端部と上下に一致することが好ましい。
【0016】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記第2の導波管が、少なくとも一つの前記スロットの上方に配置されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記スロットが、前記平板状基材においてスロット対をなして同心円状に配列されており、前記第2の導波管が、前記スロット対のうちの少なくとも一方のスロットの上方に配置されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記スロットが、前記平板状基材においてスロット対をなして同心円状に配列されており、前記第2の導波管が、最外周のスロット対のうちの径方向に外側のスロットの開口の中心の上方に配置されていてもよいし、あるいは、最外周のスロット対のうちの径方向に内側のスロットの開口の中心の上方に配置されていてもよい。これらの場合において、前記第2の導波管の中心が、前記スロットの開口の中心を結ぶ円弧上に位置することが好ましく、さらに、前記第2の導波管の中心が、前記スロットの開口の中心に重なるように位置することがより好ましい。
【0019】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記第2の導波管と前記スロットの開口全体とが、上下に重なるように位置することが好ましい。
【0020】
また、本発明のプラズマ処理装置において、前記平面アンテナの上に、前記平面アンテナへ供給されるマイクロ波の波長を調整する遅波板をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のスロットを有する平面アンテナを備えたプラズマ処理装置において、平面アンテナの上面に対して直交する方向に導波路を形成して平面アンテナにおける電界分布を調節する第2の導波管を設けるとともに、該第2の導波管と上下に重なり合う位置で透過板の下面(載置台の支持面に向かい合う対向面)に凹部を設けたので、第2の導波管の下方の電界を強めて第2の導波管による電界強度の調節を効果的に行い、平面アンテナにおける電界強度を均一化することができる。その結果、処理容器内でプラズマを安定して生成できるとともに、プラズマ分布を均一にすることができる。従って、被処理体が大型基板である場合でも面内において均一な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のプラズマ処理装置における平面アンテナ板の構造を示す図面である。
【図3】図1のプラズマ処理装置の制御系統の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1の要部を拡大した断面図である。
【図5】透過板の断面図である。
【図6】透過板の下面の構造を示す図面である。
【図7】環状溝とスロットとスタブとの位置関係を説明する図面である。
【図8】スタブの構成例を示すプラズマ処理装置の要部断面図である。
【図9】スタブの別の構成例を示すプラズマ処理装置の要部断面図である。
【図10】スタブのさらに別の構成例を示すプラズマ処理装置の要部断面図である。
【図11】スタブの他の構成例を示すプラズマ処理装置の要部断面図である。
【図12】スタブのさらに他の構成例を示すプラズマ処理装置の要部断面図である。
【図13】スロットおよび環状溝に対するスタブの配置位置を説明する図面である。
【図14】スロットおよび環状溝に対するスタブの配置位置の別の例を説明する図面である。
【図15】スロットおよび環状溝に対するスタブの配置位置のさらに別の例を説明する図面である。
【図16】平面アンテナ板に対するスタブの配置個数を説明する図面である。
【図17】平面アンテナ板に対するスタブの配置個数の別の例を説明する図面である。
【図18】平面アンテナ板に対するスタブの配置個数のさらに別の例を説明する図面である。
【図19】平面アンテナ板に対するスタブの配置例を説明する図面である。
【図20】平面アンテナ板に対するスタブの配置の別の例を説明する図面である。
【図21】平面アンテナ板に対するスタブの配置のさらに別の例を説明する図面である。
【図22】プラズマ処理装置におけるスタブとスロットと環状溝の位置関係を示す平面図である。
【図23】シミュレーション実験の結果を示す図である。
【図24】成膜実験の結果を示す図である。
【図25】スロットおよび環状溝に対するスタブの配置位置の変形例を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1のプラズマ処理装置100の平面アンテナを示す平面図である。図3は、図1のプラズマ処理装置100における制御系統の概略構成例を示す図面である。
【0024】
プラズマ処理装置100は、複数のスロット状の孔を有する平面アンテナ、特にRLSA(Radial Line Slot Antenna;ラジアルラインスロットアンテナ)にて処理容器内にマイクロ波を導入してプラズマを発生させることにより、高密度かつ低電子温度のマイクロ波励起プラズマを発生させ得るプラズマ処理装置として構成されている。プラズマ処理装置100では、1×1010〜5×1012/cmのプラズマ密度で、かつ0.7〜2eVの低電子温度を有するプラズマによる処理が可能である。従って、プラズマ処理装置100は、各種半導体装置の製造過程において好適に利用できるものである。
【0025】
プラズマ処理装置100は、主要な構成として、気密に構成された処理容器1と、処理容器1内にガスを供給するガス供給装置18と、処理容器1内を減圧排気するための排気機構としての排気装置24と、処理容器1の上部に設けられ、処理容器1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入機構27と、これらプラズマ処理装置100の各構成部を制御する制御手段としての制御部50と、を備えている。なお、ガス供給装置18、排気装置24およびマイクロ波導入機構27は、処理容器1内でプラズマを生成させるプラズマ生成手段を構成している。
【0026】
処理容器1は、容器本体1Aと、後述する排気容器11およびプレート13を有している。容器本体1Aは、接地された略円筒状の容器である。なお、容器本体1Aは角筒形状に形成してもよい。容器本体1Aは、アルミニウム等の材質からなり、底壁1aと側壁1bとを有している。
【0027】
処理容器1の内部は、被処理体であるシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを水平に支持するための載置台2が設けられている。載置台2は、熱伝導性の高い材質例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。この載置台2は、排気容器11の底部中央から上方に延びる円筒状の支持部材3により支持されている。支持部材3は、例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。
【0028】
また、載置台2には、その表面全域を覆うカバー4aが設けられている。カバー4aは、例えば石英、AlN、Al、SiN等の材質で形成されている。カバー4aの上面は、ウエハWを支持する支持面2aとなっている。この支持面2aには、ウエハWの位置決めを行うためのガイド4bが設けられている。ガイド4bは、例えば石英、AlN、Al、SiN等の材質で形成された環状部材である。なお、カバー4aを設けない場合は、載置台2の上面が支持面2aとなる。
【0029】
また、載置台2には、温度調節機構としての抵抗加熱型のヒータ5が埋め込まれている。このヒータ5は、ヒータ電源5aから給電されることにより載置台2を加熱して、その熱で被処理基板であるウエハWを均一に加熱する。
【0030】
また、載置台2には、熱電対(TC)6が配備されている。この熱電対6によって温度計測を行うことにより、ウエハWの冷却もしくは加熱温度を例えば室温から900℃までの範囲で制御可能となっている。
【0031】
また、載置台2には、ウエハWを支持して昇降させるためのウエハ支持ピン(図示せず)が設けられている。各ウエハ支持ピンは、載置台2の支持面2aに対して突没可能に設けられている。
【0032】
容器本体1Aの内周には、石英からなる円筒状のライナー7が設けられている。また、載置台2の外周側には、処理容器1内を均一排気するため、多数の排気孔8aを有する石英製のバッフルプレート8が環状に設けられている。このバッフルプレート8は、複数の支柱9により支持されている。
【0033】
容器本体1Aの底壁1aの略中央部には、円形の開口部10が形成されている。底壁1aにはこの開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気容器11が設けられている。この排気容器11には、排気管12が接続されており、この排気管12を介して排気装置24に接続されている。
【0034】
容器本体1Aの上端には、処理容器1を開閉させる蓋体(リッド)としての機能を有し、開口部が形成された金属製のプレート13が配置されている。プレート13の内周下部は、内側(処理容器内空間)へ向けて突出し、環状の支持部13aを形成している。
【0035】
容器本体1Aの側壁1bには、環状をなすガス導入部15が設けられている。このガス導入部15は、図示しない配管を介して酸素含有ガスやプラズマ励起用ガスを供給するガス供給装置18に接続されている。なお、ガス導入部15はノズル状またはシャワー状に設けてもよい。
【0036】
また、容器本体1Aの側壁1bには、プラズマ処理装置100と、これに隣接する搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口16と、この搬入出口16を開閉するゲートバルブ17とが設けられている。
【0037】
ガス供給装置18は、例えばプラズマ形成用のAr、Kr、Xe、He等の希ガスや、酸化処理における酸素ガス、窒化処理における窒素ガスなどの処理ガス、CVD処理における原料ガス、さらに、処理容器内雰囲気を置換する際に用いるN、Ar等のパージガス、処理容器1内をクリーニングする際に用いるClF、NF等のクリーニングガス等を供給するガス供給源(図示せず)を有している。各ガス供給源は、図示しないマスフローコントローラおよび開閉バルブを備え、供給されるガスの切替えや流量等の制御が出来るようになっている。
【0038】
排気装置24は、例えばターボ分子ポンプなどの高速真空ポンプを備えている。前記のように、排気装置24は、排気管12を介して処理容器1の排気容器11に接続されている。処理容器1内のガスは、排気容器11内の空間11aへ均一に流れ、さらに空間11aから排気装置24を作動させることにより、排気管12を介して外部へ排気される。これにより、処理容器1内を例えば0.133Paまで高速に減圧することが可能となっている。
【0039】
次に、マイクロ波導入機構27の構成について説明する。マイクロ波導入機構27は、主要な構成として、透過板28、平面アンテナ板31、遅波板33、導電性のカバー部材34、第1の導波管としての導波管37、マッチング回路38およびマイクロ波発生装置39を備えている。また、本実施の形態に係るプラズマ処理装置100においては、マイクロ波導入機構27に、平面アンテナ板31とカバー部材34とによって形成される偏平導波管内の電界分布を調整する第2の導波管としてのスタブ43Aを少なくとも1個以上(図1では2個を例示)備えている。
【0040】
透過板28は、処理容器1の上部の開口部に気密に装着されてプラズマ発生用のマイクロ波を透過させる。具体的には、透過板28は、プレート13において内周側に張り出した支持部13a上に配備されている。透過板28は、誘電体、例えば石英やAl、AlN等のセラミックスから構成されている。この透過板28と支持部13aとの間は、シール部材29を介して気密にシールされている。したがって、処理容器1内は気密に保持される。
【0041】
透過板28は、載置台2の支持面2aと対向する対向面28aを有している。この対向面28aは、凹部としての環状溝28bを有している。透過板28の詳細な構造については、後述する。
【0042】
平面アンテナ板31は、透過板28の上方において、載置台2と平行に設けられている。平面アンテナ板31は、円板状をなしている。なお、平面アンテナ板31の形状は、円板状に限らず、例えば四角板状でもよい。この平面アンテナ板31は、プレート13の上端に係止されている。
【0043】
平面アンテナ板31は、例えば図2に示したように、基材31aと、この基材31aにおいて所定のパターンで貫通して形成された多数のスロット32とを有している。基材31aは、例えば表面が金または銀メッキされた銅板またはアルミニウム板により構成されている。個々のスロット32は、細長い形状をなしている。また、スロット32は、その長手方向が異なるように配置された二つのスロット32が対をなして同心円状に配列されている。すなわち、基材31aの径方向に対してその長手方向が所定の第1の角度をなすスロット32aと、その長手方向が所定の第2の角度をなすスロット32bとが1組になって対をなし、さらに複数のスロット対が基材31aの周方向に同心円状に1列以上、好ましくは複数の列をなして配置されている。図2においては、同心円状に形成された隣接するスロット対どうしの間隔をΔrで示している。なお、間隔Δrは、スロット対の配置により適宜調整することができる。
【0044】
なお、図2に示した平面アンテナ板31のスロット32の配置や個数、配置間隔、配置角度などは、あくまでも例示である。スロット32の長さや配列間隔は、マイクロ波の波長(λg)に応じて決定することができる。例えば、スロット32の間隔は、波長がλg/4からλgとなるように配置することが好ましい。なお、スロット32の形状は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、スロット32の配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状等に配置することもできる。なお、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用の基板を処理対象とする場合には、複数のスロットを直線状や四角い螺旋状に配列することもできる。
【0045】
偏平導波管を構成する平面アンテナ板31とカバー部材34との間には、真空よりも大きい誘電率を有する材料からなる遅波板33が設けられている。遅波板33は平面アンテナ板31を覆うように配置されている。遅波板33の材料としては、例えば、石英、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。この遅波板33は、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。
【0046】
なお、平面アンテナ板31と透過板28との間、また、遅波板33と平面アンテナ板31との間は、それぞれ接触させても離間させてもよいが、接触させることが好ましい。
【0047】
処理容器1の上部には、これら平面アンテナ板31および遅波板33を覆うように、導波路を形成する機能も有するカバー部材34が設けられている。カバー部材34は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。プレート13の上端とカバー部材34とは、マイクロ波が外部へ漏えいしないように導電性を有するスパイラルシールドリングなどのシール部材35によりシールされている。また、カバー部材34には、冷却水流路34aが形成されている。この冷却水流路34aに冷却水を通流させることにより、カバー部材34、遅波板33、平面アンテナ板31および透過板28を冷却できるようになっている。この冷却機構により、カバー部材34、遅波板33、平面アンテナ板31、透過板28およびプレート13がプラズマの熱により変形・破損することが防止される。
【0048】
カバー部材34の上壁(天井部)の中央には、開口部36が形成されており、この開口部36を貫通して導波管37の下端が挿入されている。導波管37の他端側には、マッチング回路38を介してマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置39が接続されている。この導波管37は、本発明における「第1の導波管」である。
【0049】
導波管37は、上記カバー部材34の開口部36から上方へ延出する断面円形状の同軸導波管37aと、この同軸導波管37aの上端部にモード変換器40を介して接続された水平方向に延びる矩形導波管37bとを有している。モード変換器40は、矩形導波管37b内をTEモードで伝搬するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。
【0050】
同軸導波管37aの中心には内導体41が延在している。この内導体41は、その下端部において平面アンテナ板31の中心に接続固定されている。このような構造により、マイクロ波は、同軸導波管37aの内導体41を介して偏平導波管の一部分を構成する平面アンテナ板31へ放射状に効率よく均一に伝搬される。
【0051】
スタブ43Aは、平板状基材である基材31aの上面に対して直交する方向に導波路を形成する「第2の導波管」である。スタブ43Aは、水平断面が矩形をなす中空管状部材43aを備えた方形導波管である。スタブ43Aは、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。スタブ43Aは、カバー部材34の外周部において、基材31aの上面に対して垂直な方向に導波路が形成されるように設けられている。スタブ43Aの下部は、カバー部材34を貫通して設けられた開口34bにより構成されている。つまり、スタブ43Aでは、中空管状部材43aの空洞部分と、カバー部材34の開口34bとが位置合わせされて鉛直方向に導波路を形成している。スタブ43Aの上部はカバー部材34の上面から突出して設けられている。本実施の形態のプラズマ処理装置100における第2の導波管(スタブ43A等)の形状、配置、配設数などに関しては、後に詳述する。なお、スタブ43A以外の、第2の導波管の種々の変形例についても後述するが、それらを総称して「スタブ43」と表記する場合がある。
【0052】
以上のような構成のマイクロ波導入機構27により、マイクロ波発生装置39で発生したマイクロ波が導波管37を介して平面アンテナ板31へ伝搬され、スロット32および透過板28を介して処理容器1内に導入されるようになっている。なお、マイクロ波の周波数としては、例えば2.45GHzが好ましく用いられ、他に8.35GHz、1.98GHz、915MHz等を用いることもできる。
【0053】
プラズマ処理装置100の各構成部は、制御部50に接続されて制御される構成となっている。制御部50は、図3に示したように、CPUを備えたコンピュータであるプロセスコントローラ51と、このプロセスコントローラ51に接続されたユーザーインターフェース52および記憶部53を備えている。プロセスコントローラ51は、プラズマ処理装置100において、例えば温度、ガス流量、圧力、マイクロ波出力などのプロセス条件に関係する各構成部(例えば、ヒータ電源5a、ガス供給装置18、排気装置24、マイクロ波発生装置39など)に接続され、これらを統括して制御する制御手段である。
【0054】
ユーザーインターフェース52は、工程管理者がプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。また、記憶部53には、プラズマ処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ51の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。
【0055】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース52からの指示等にて任意のレシピを記憶部53から呼び出してプロセスコントローラ51に実行させることで、プロセスコントローラ51の制御下、プラズマ処理装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。また、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどに格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0056】
このように構成されたプラズマ処理装置100では、800℃以下(特に、室温から500℃程度)の低温で下地膜等へのダメージフリーなプラズマ処理を行うことができる。また、プラズマ処理装置100は、プラズマの均一性に優れていることから、プロセスの均一性を実現できる。
【0057】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理装置100を用いたプラズマ処理の手順の一例について説明する。ここでは、処理ガスとして酸素を含有するガスを用い、ウエハ表面をプラズマ酸化処理する場合を例に挙げる。まず、例えばユーザーインターフェース52から、プラズマ処理装置100でプラズマ酸化処理を行うように指令が入力される。この指令を受けて、プロセスコントローラ51は、記憶部53に保存されたレシピを読み出す。そして、レシピに基づく条件でプラズマ酸化処理が実行されるように、プロセスコントローラ51からプラズマ処理装置100の各エンドデバイス例えばガス供給装置18、排気装置24、マイクロ波発生装置39、ヒータ電源5aなどへ制御信号が送出される。
【0058】
そして、図示しないゲートバルブを開にして搬入出口からウエハWを処理容器1内に搬入し、載置台2上に載置する。次に、処理容器1内を減圧排気しながら、ガス供給装置18から、不活性ガスおよび酸素含有ガスを所定の流量でそれぞれガス導入部15を介して処理容器1内に導入する。さらに、排気量およびガス供給量を調整して処理容器1内を所定の圧力に調節する。
【0059】
次に、マイクロ波発生装置39のパワーをオン(入)にして、マイクロ波を発生させる。そして、発生した所定周波数例えば2.45MHzのマイクロ波は、マッチング回路38を介して矩形導波管37bに導かれ、同軸導波管37aを通過し、さらに偏平導波管を構成する平面アンテナ板31に供給される。マイクロ波は、矩形導波管37b内ではTEモードで伝搬し、このTEモードのマイクロ波はモード変換器40でTEMモードに変換されて、同軸導波管37a内を平面アンテナ板31に向けて伝搬されていく。そして、マイクロ波は、平面アンテナ板31を貫通して形成された孔であるスロット32から透過板28を介して処理容器1内(ウエハWの上方空間)に放射される。
【0060】
平面アンテナ板31から透過板28を経て処理容器1内に放射されたマイクロ波により、処理容器1内で電磁界が形成され、不活性ガスおよび酸素含有ガスがそれぞれプラズマ化する。このマイクロ波励起プラズマは、マイクロ波が平面アンテナ板31の多数のスロット32から放射されることにより、略1×1010〜5×1012/cmの高密度で、かつウエハW近傍では、略1.5eV以下の低電子温度のプラズマとなる。このようにして形成されるマイクロ波励起高密度プラズマは、下地膜へのイオン等によるプラズマダメージが少ないものである。そして、プラズマ中の活性種例えばラジカルやイオンの作用によりウエハWのシリコン表面が酸化されてシリコン酸化膜SiOの薄膜が形成される。
【0061】
プロセスコントローラ51からプラズマ処理を終了させる制御信号が送出されると、マイクロ波発生装置39のパワーがオフ(切)にされ、プラズマ酸化処理が終了する。次に、ガス供給装置18からの処理ガスの供給を停止して処理容器1内を真空排気する。そして、ウエハWを処理容器1内から搬出し、1枚のウエハWに対するプラズマ処理が終了する。
【0062】
次に、本実施の形態のプラズマ処理装置100におけるスタブ43Aの詳細な構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、図1のプラズマ処理装置100のスタブ43Aを含む部分を拡大して示す要部断面図である。本実施の形態では、第2の導波管として、有効高さを変更できる複数(例えば2〜4個)のスタブ43Aが設けられている。スタブ43Aは、カバー部材34に装着された中空管状部材43aと、中空管状部材43aの内部に設けられた可動体43bと、可動体43bに連結されたハンドル43cと、可動体43bとハンドル43cを連結するシャフト43dとを備えている。また、本実施の形態では、スタブ43Aの導波路は、可動体43bによって内部空間の高さが規定された中空管状部材43aと、カバー部材34に設けられた開口部34bとにより構成される。可動体43bは、ハンドル43cを回転させることにより、例えばボルト/ナット構造(詳細な構造は図示せず)により、上下方向に移動することができる。可動体43bを上下動させることにより実質的なスタブ高さ(H)を変更することが可能であり、スタブ43Aの有効管長さを最適な範囲に設定することができる。
【0063】
スタブ43Aの高さH(つまり、導波路の長さ)は、可動体43bによって規定される中空管状部材43aの高さと、カバー部材34の厚みとの合計である。この高さHは、スタブ43A内でマイクロ波による定在波が発生するようにスタブ43A内に伝搬するマイクロ波の管内波長λg(=154mm)に対し、λg以下の範囲となるように調整することが好ましく、例えばλg/4(=38mm)、λg/2(=77mm)、3λg/4(=115.5mm)等となる高さに設定することができる。また、スタブ43Aの横断面の面積も、スタブ43A内に伝搬するマイクロ波の波長λgに応じて設定できる。
【0064】
プラズマ処理装置100のように、可動式の蓋部(可動体43b)を備えたスタブ43Aを用いることによって、スタブ43Aの有効管長さを任意に変化させることができるので、スタブ43Aの高さHを実質的に可変に調節することができる。そして、スタブ43Aの高さHを可変に調節することによって、透過板28における電界強度を容易に制御できる。従って、プラズマの均一性を高め、さらにウエハ面内での処理の均一性を向上させる観点で有利である。なお、可動体43bを上下に変位させる機構としては、特に制限はなく、ボルト/ナット構造に限らず任意の機構を採用することができる。
【0065】
以上のように、本実施の形態のプラズマ処理装置100では、スタブ43Aを設け、必要に応じてその高さを調節することにより、プラズマ処理のウエハ面内における均一性を向上させることができる。このようなスタブ43Aによる効果を最大限に引き出すため、本実施の形態のプラズマ処理装置100では、透過板28の下面に環状溝28bを設けている。
【0066】
次に、環状溝28bを有する透過板28の詳細な形状について図5および6を参照しながら説明する。図5は、透過板28の断面図であり、図6は、透過板28の下面(載置台2との対向面)を示す図面である。透過板28の下面(載置台2の支持面2aと対向する対向面28a)には、環状溝28bが形成されている。また、透過板28の対向面28aの環状溝28bより外周側には、凸状壁28cが対向面28aに対してほぼ垂直に立設されている。透過板28の対向面28aにおいて、環状溝28bおよび凸状壁28cを除く部分は、載置台2の支持面2aとほぼ平行に形成された中央領域28a1と、周縁領域28a2とを有している。中央領域28a1は、環状溝28bによって周縁領域28a2と隔てられている。載置台2の支持面2aを基準として、中央領域28a1は周縁領域28a2よりも高い位置に形成されている。つまり、透過板28の中央部分は、周縁部分よりも薄く形成され、載置台2の載置面2aとの距離(ギャップ)が大きくなっている。
【0067】
環状溝28bは、その断面が載置台2に対して拡開した形状を有している。環状溝28bは、載置台2に平行な第1の壁面201と、透過板28の径方向において第1の壁面201を間に挟むように、その内側に形成された第2の壁面202およびその外側に形成された第3の壁面203を有している。そして、第2の壁面202および第3の壁面203は、それぞれ、透過板28の下面である対向面28aに対して垂直ではなく、所定の角度で傾斜して設けられている。すなわち、第2の壁面202は、中央領域28a1の表面に対して角度α1(例えば35°〜55°)をなし、第3の壁面203は、周縁領域28a2の表面に対して角度α2(例えば50°〜70°)をなしている。第1の壁面201は、中央領域28a1および周縁領域28a2の表面に対して平行である。載置台2の支持面2aを基準として、第1の壁面201は、対向面28aの中央領域28a1よりも、さらに高い位置に形成されている。つまり、環状溝28bの第1の壁面201の部分は、透過板28の中央部分よりも、さらに薄く形成され、載置台2の載置面2aとの距離(ギャップ)が最も大きくなっている。環状溝28bの幅Lは、少なくともスタブ43Aの径方向の幅よりも広く、かつ平面アンテナ板31の径方向に、スロット32が1つ以上入るように設定することが好ましく、好ましくは2つ以上入るように設定することがより好ましい。
【0068】
次に、環状溝28bとスタブ43Aとの位置関係について、図4および図7を参照して説明する。図4および図7においては、環状溝28bとスロット32との位置関係を明らかにするため、透過板28の周縁領域28a2と環状溝28bの第3の壁面203との境界である環状溝28bの外周端をC1、第3の壁面203と第1の壁面201との境界をC2、第1の壁面201と第2の壁面202との境界をC3、第2の壁面202と中央領域28a1との境界である環状溝28bの内周端をC4の符号でそれぞれ示している。環状溝28bは、透過板28の径方向においてスタブ43Aと上下に重なり合う位置に形成されている。つまり、カバー部材34の上方から透視した場合に、スタブ43Aと透過板28の環状溝28bは、重なっている。本実施の形態のプラズマ処理装置100では、第3の壁面203と透過板28の周縁領域28a2との境界(つまり、第3の壁面203の外周端部C1)が、第2の導波管としてのスタブ43Aの外周側の端部と上下に一致するように位置合わせされている。上記のとおり、環状溝28bの幅L(C1〜C4の幅と同じ)は、スタブ43Aの径方向の幅よりも広いので、このような位置合わせを行うことにより、スタブ43Aと環状溝28bとが上下に重なり合う配置となる。さらに、スタブ43Aと環状溝28bは、平面アンテナ板31の1つ以上のスロットとも上下に重なり合う配置となる。
【0069】
本実施の形態では、環状溝28bの好ましい配置として、図7に示したようにスタブ43Aおよび透過板28の環状溝28bにおける第3の壁面203(C1〜C2間)が、ともに平面アンテナ板31の最外周のスロット対(スロット32a,32b)のうち、内側のスロット32bと上下に重なるように配置されている。この場合、スタブ43Aは、平面アンテナ板31の基材31aにおいて周方向に配列される複数のスロット32bのうち、少なくとも一つと重なればよい。さらに、本実施の形態では、透過板28の環状溝28bにおける第2の壁面202(図7のC3〜C4間)が、平面アンテナ板31の最外周から2番目のスロット対(スロット32e,32f)のうち、外側のスロット32eと上下に重なるように配置されている。
【0070】
以上のように、スタブ43Aと透過板28の環状溝28bの位置を上下に重ねることにより、環状溝28bによって透過板28の下方の電界分布を透過板28の径方向に中央付近から周縁部へ広げ、スタブ43Aの直下に電界を集中させることができるため、スタブ43Aによる電界強度の調節が効果的に行われ、処理容器1内で均一なプラズマを発生させることができる。
【0071】
透過板28において、凸状壁28cは、下方に向けて環状に突出しており、支持部13aの内周面をカバーするように配置されている。凸状壁28cによって、支持部13aとプラズマとの接触を防止して、プラズマによって支持部13aがスパッタリングされてダメージを受けたり、パーティクルが発生したりすることが防止される。
【0072】
次に、図8〜図12を参照して第2の導波管としてのスタブの変形例について説明する。図8に例示した態様のスタブ43Bでは、カバー部材34の外周部において、スタブ43Bを構成する水平断面が矩形の中空管状部材43aの下部が、カバー部材34に設けられた開口部34bに挿入されている。中空ブロック状をなす中空管状部材43aは、カバー部材34を貫通して遅波板33の上面まで達している。なお、中空管状部材43の下端は遅波材33に当接していても、離間していてもよい。また、図8では、スタブ43Bの上部がカバー部材34の上面から突出して設けられているが、突出していなくてもよい。
【0073】
図8に示したスタブ43Bのように、上部を蓋体44によって閉塞して非開放状態としてもよいが、例えば図9に示したスタブ43Cのように、上部を開放状態としてもよい。ただし、プラズマへのマイクロ波の吸収率を大きくし、導波管37へのマイクロ波の反射を抑制するためには、図8に示したスタブ43Bのように上部を閉塞することが好ましい。なお、スタブ43の上部を閉塞する手段としては蓋体44に限らず、例えば一体成形で上部を塞いでもよい。
【0074】
図10から図12に、スタブ43のさらに別の構成例を示した。図10に例示した態様のスタブ43Dでは、その上部は、水平断面が矩形の中空管状部材43aにより構成され、その下部がカバー部材34に形成された矩形の開口34bにより構成された態様を示している。中空管状部材43aは、例えば螺子などの図示しない任意の固定手段により、カバー部材34の上面に装着されている。図10に示したスタブ43Dにおいては、中空管状部材43aの空洞部分と、カバー部材34の開口34bとが位置合わせされて鉛直方向に導波路を形成している。なお、図10に示したスタブ43Dにおいても、蓋体44の配備は任意である。
【0075】
図11に例示した態様のスタブ43Eは、カバー部材34に形成された矩形の開口34bのみによって鉛直方向に導波路が形成されている。従って、スタブ43Eの高さHは、カバー部材34の厚みに一致する。なお、図11に示したスタブ43Eにおいても、蓋体44の配備は任意である。
【0076】
図12に例示した態様のスタブ43Fは、カバー部材34の下面に形成された凹部34cにより鉛直方向に導波路が形成されている。凹部34cは、カバー部材34の下方に配置された遅波板33に向けて矩形に開口している。図12に示したスタブ43Fにおいては、スタブ43Fの高さHは、カバー部材34の厚みよりも小さい範囲で形成される。
【0077】
本実施形態のプラズマ処理装置100では、処理容器1内でプラズマを均一に生成させ、ウエハWの中央部と周縁部付近での処理の均一性を確保するため、平面アンテナ板31の周縁部近傍の上方にスタブ43を配設するとともに、透過板28のマイクロ波透過領域の外側に環状溝28bを設けた。前記のとおり、マイクロ波発生装置39で発生したマイクロ波は、同軸導波管37aの内導体41を介して平面アンテナ板31の中央部に供給され、平面アンテナ板31とカバー部材34とによって構成される導波路(偏平導波管)を放射状に伝搬していく。マイクロ波は、導波路を伝搬する距離が長くなるに従い、反射波が大きくなり、定在波が減衰する。このため、偏平導波管内においてマイクロ波により生じる電界は、同軸導波管37aの内導体41の下端部に接続されてマイクロ波が偏平導波管内に導入される部位である平面アンテナ板31の中央部で強くなり、平面アンテナ板31の周縁部近傍では弱くなる傾向がある。このように平面アンテナ板31上の電界分布が不均一になると、導波管37への反射係数が大きくなり、プラズマへのマイクロ波の吸収効率が低下する。つまり、処理容器1内に導入するマイクロ波の実効パワーが小さくなり、パワー損失が大きくなる。その結果、処理容器1内で生成するプラズマが不均一になる。特に、大径のウエハWを処理対象とすべく処理容器1を大型化すると、この問題が顕在化して容器本体1Aの側壁1b近傍のプラズマ密度が低下してウエハWの面内で均一な処理を行うことが困難になってしまう。
【0078】
このような観点から、処理容器1内にマイクロ波を効率良く供給し、均一なプラズマを生成させるためには、スタブ43を平面アンテナ板31の外周部(つまり周縁部近傍)の上方に配設し、平面アンテナ板31上の電界分布を均一に近づけることが好ましい。特に、スタブ43を平面アンテナ板31の外周部に形成されたスロット32の上方に配設することにより、スタブ43を他の場所に配置する場合に比べて、スタブ43内へマイクロ波が導入されやすくなる。そして、スタブ43によって不均一なマイクロ波(反射波など)が吸収されることにより、平面アンテナ板31上で均一な電界強度分布を形成することができる。また、偏平導波管の中央から入射したマイクロ波(入射波)が、放射状に平面アンテナ板31の径外方向に伝播する際に、偏平導波管の外周部でマイクロ波の反射(反射波)が発生しないようにすることができる。さらに、プラズマ処理装置100では、スタブ43の下方に位置合わせされた環状溝28bを有する透過板28との組み合わせによって、スタブ43による上記作用効果が最大限に発揮され、ウエハWの面内で均一なプラズマ処理が実現できる。
【0079】
次に、図13から図21を参照してスタブ43の配置について説明する。まず、スタブ43とスロット32との配置を決める際の前提となる、スタブ43の電界調節機能を十分に発揮させるための基本的な条件を説明する。スタブ43は、中空管状のスタブ43の空洞部分が平面アンテナ板31の外周部に形成されたスロット32の開口に重なるように配置することが好ましい。また、スタブ43の空洞部分が、平面アンテナ板31の外周部に形成されたスロット32の開口の中心(以下、単に「スロット32の中心」と記す)の上方に位置するようにスタブ43を配置することがより好ましい。また、平面アンテナ板31の外周部に形成されたスロット32の中心を周方向に結ぶ円弧上に、スタブ43の開口の中心(以下、単に「スタブ43の中心」と記す)を位置させることが好ましい。特に、スタブ43の中心が、平面アンテナ板31の周縁部近傍のスロット32の中心と重なるようにスタブ43を配置することがより好ましい。また、スタブ43の空洞部分とスロット32の開口全体とが上下に重なるようにスタブ43を配置することが望ましい。なお、スタブ43の空洞部分は、平面アンテナ板31の基材31aにおいて周方向に配列される複数のスロット32のうち、少なくとも一つと重なればよい。
【0080】
図13から図15は、平面アンテナ板31の径方向におけるスタブ43の配設位置の好ましい例を示している。図13から図15は、平面アンテナ板31において最外周に配列されたスロット対(スロット32aおよびスロット32b)の位置に対するスタブ43の配置を示す説明図である。各図において、スタブ43の位置を仮想線で示し、環状溝28bの外周端C1および内周端C4を点線で示した。
【0081】
図13は、平面アンテナ板31の外周部において、最外周に配列されたスロット対を構成する内側のスロット32bの中心O32bを周方向に結ぶ円弧R32b上にスタブ43の中心Osが位置するようスタブ43が配置された例を示している。図13では、特にスロット32bの中心O32bに、スタブ43の中心Osが重なるように位置合わせして配置されている。なお、図13では、スタブ43と重なる範囲内に、1個のスロット32bの全体が入る構成例を示しているが、これに限らず、スタブ43と重なる範囲内に複数のスロット32bの全体が入る(例えば、2つのスロット32bがスタブ43と重なる範囲内に入る)ように構成してもよい。また、スロット32bとスタブ43との相対的な大きさによって、スタブ43と重なる範囲内にスロット32bの一部分が入る(例えば、スロット32bが部分的にスタブ43に重なる)ように構成してもよい。
【0082】
また、図14は、平面アンテナ板31の外周部において、最外周に配列されたスロット対を構成する外側のスロット32aの中心O32aを周方向に結ぶ円弧R32a上にスタブ43の中心Osが位置するように、スタブ43を配置した例を示している。図14では、特にスロット32aの中心O32aに、スタブ43の中心Osが重なるように位置合わせしている。なお、図14では、スタブ43と重なる範囲内に、1個のスロット32aの全体が入る構成例を示しているが、これに限らず、スタブ43と重なる範囲内に複数のスロット32aの全体が入る(例えば、2つのスロット32aがスタブ43と重なる範囲内に入る)ように構成してもよい。また、スロット32aとスタブ43との相対的な大きさによって、スタブ43と重なる範囲内にスロット32aの一部分のみが入る(例えば、スロット32aが部分的にスタブ43に重なる)ように構成してもよい。
【0083】
前記のとおり、同軸導波管37aから平面アンテナ板31の中心に伝搬されたマイクロ波により、平面アンテナ板31の基材31a上に生じた表面電流は、平面アンテナ板31の径外方向へ向かって流れるが、途中でスロット32により遮られるため、スロット32の縁に電荷が誘起される。この電荷は、新たなマイクロ波の発生源となる。電荷はスロット32の長手方向の中央部付近に蓄積されやすいため、スロット32の中心には電界が集中しやすい。図13および図14に示した例では、スロット32a,32bの中心O32a,O32bの真上にスタブ43を配置して、スロット32の中心O32a,O32b付近での電界の集中を抑制した。
【0084】
図13または図14に示したように、平面アンテナ板31の最外周に配列されたスロット対を構成するスロット32aまたは32bの中心O32aもしくはO32bに、スタブ43の中心Osが重なるようにスタブ43を配置することによって、遅波板33を挟んで下方のスロット32と上方のスタブ43とが上下に重なる。図13または図14では、特に、スタブ43の空洞部分とスロット32の開口全体とが上下に重なるようにスタブ43を配置することが望ましい。以上のようなスタブ43の配置によって、スロット32付近の電界を上方へ広げることができる。これにより、平面アンテナ板31上での電界の集中や偏在が効果的に抑えられる。このように、スロット32a,32bの中心O32a,O32bに、スタブ43の中心Osが重なるようにスタブ43を配置することによって、平面アンテナ板31より下方の処理容器1内空間側の電界分布を均一に調整し、処理容器1内のプラズマの均一化を図ることが可能になる。なお、スタブ43の中心Osが、周方向において隣接する2つのスロット対の間に配置されるようにしてもよい。
【0085】
なお、図13および図14に示した例において、最外周のスロット対を構成するスロット32aまたはスロット32bの中心O32a,O32bは、平面アンテナ板31の中心Oから、内側のスロット対を構成するスロット32c,32d(図13〜図14では一対のみ図示するが、一対とは限らない)の中心O32c、O32dを通る直線Xの延長線上に位置させている。
【0086】
図15は、平面アンテナ板31の最外周に配列されたスロット対を構成するスロット32aおよびスロット32bの長手方向に直交する方向に、各スロット32a,32bの中心から、それぞれ垂線を引いた場合の交点Iに、スタブ43の中心Osを位置合わせした例を示している。つまり、スタブ43の中心Osを、交点Iに重ね、交点Iの上方にスタブ43が位置するようにスタブ43を配置している。なお、平面アンテナ板31の周方向に交点Iを結ぶ円弧R上の任意の位置に、スタブ43の中心Osが位置するようにしてもよい。例えば、スタブ43の中心Osが、周方向において隣接する2つのスロット対の間に配置されるようにしてもよい。また、図15では、スタブ43と重なる範囲内に、1対のスロット32a,32bのほぼ全体が入る構成例を示しているが、これに限らず、スタブ43と重なる範囲内に、さらに多くのスロットが入るように構成してもよいし、複数のスロット対のそれぞれ一部分が入るように構成してもよい。
【0087】
図13から図15に例示したいずれの態様でも、環状溝28bは、スタブ43と上下に重なり合うように配置されている。
【0088】
次に、図16〜図21を参照しながら、スタブ43の設置数について説明する。図16は中空ブロック状のスタブ43を1つ配設した状態、図17は中空ブロック状のスタブ43を2つ配設した状態、図18は中空ブロック状のスタブ43を3つ配設した状態を、それぞれ平面アンテナ板31に重ねて図示している。図19から図21は、スタブ43を2個配置する場合の変形例である。なお、図16〜図21では、スタブ43は導波路をなす開口の内壁面の輪郭として描いている。また、平面アンテナ板31のスロット32は、一部のみ図示し、説明に不要なスロット32は図示を省略している。さらに、各図には、透過板28における環状溝28bの位置(外周端C1および内周端C4)も破線で示している。スタブ43は、図17および図18に示したように、2つ以上配設することが好ましい。特に、図17に示したように、平面アンテナ板31の中心Oを挟んでその径方向に、2個以上のスタブ43を点対称に配置することが好ましい。平面アンテナ板31の径方向に2個以上のスタブ43を対称に配置することにより、平面アンテナ板31付近の電界分布を均一にする効果が最も高くなる。スタブ43を必要以上に多数配置しても、電界の分布を均一にする効果の向上が得られるとは限らず、逆に低下させてしまう場合がある。また、スタブ43を必要以上に多数配置することは、プラズマ処理装置100の部品点数を増加させ、装置コストを上昇させる要因になる。従って、スタブ43の配置個数は、2〜6個が好ましく、2〜4個がより好ましい。
【0089】
また、マイクロ波は、同軸導波管37aの内導体41から平面アンテナ板31の中心O付近に導入され、平面アンテナ板31とカバー部材34によって形成される導波路を径外方向に円偏波となって伝搬し、径外方向に配列されたスロット32に沿って放射状に表面電流を生じさせる。このことから、平面アンテナ板31の中心から同心円状にスロット対が配列される場合には、スロット32が径外方向になす列に沿ってスタブ43を配置することが好ましい。例えば図16〜図18では、平面アンテナ板31の中心Oから、スロット32c,32dからなる内周側のスロット対(1対のみ図示するが一対とは限らない)を通り、スロット32a,32bからなる最外周のスロット対を結ぶX−X線によって、内周側から最外周へスロット32が径外方向へなす列を示している。一方、図16〜図18に示したY−Y線は、平面アンテナ板31の中心Oから、内側のスロット対(スロット32c,32d)は通らずに、最外周のスロット対(スロット32a,32b)を結ぶ直線である。スタブ43は、X−X線上またはY−Y線上のどちらに配置してもよいが、上記理由によりX−X線上に配置することが好ましい。例えばY−Y線上に重ねて2つのスタブ43を配置した場合に対して、図17に示したようにX−X線上に重ねて2つのスタブ43を配置した場合を比較すると、X−X線上に2つのスタブ43を対向配置することがより好ましい。
【0090】
図16から図18に示した例では、最外周のスロット対のうち、内側のスロット32bの上方に中空ブロック状のスタブ43を重ねて配置した。しかし、例えば図19に示したように、最外周のスロット対を構成するスロット32aおよびスロット32bの中間位置の上方にスタブ43を配置してもよい。また、例えば図20に示したように、最外周のスロット対のうち、外側のスロット32aの上方にスタブ43を配置してもよい。さらに、例えば図21に示したように、対向する2つのスタブ43のうち、片方を最外周のスロット対の内側のスロット32bの上方に配置し、もう片方を、中心Oを挟んで反対側に位置する最外周のスロット対の外側のスロット32aの上方に配置してもよい。なお、図19から図21では、平面アンテナ板31の径方向に2個のスタブ43を対称に配置する場合を例に挙げたが、1個のスタブ43を配置する場合(図16参照)、3個以上のスタブ43を配置する場合(図18参照)も同様の配置の仕方が可能である。
【0091】
図16から図21に例示したいずれの態様でも、環状溝28bは、スタブ43と上下に重なり合うように配置されている。図16から図21では、環状溝28bの外周端C1(つまり、第3の壁面203の立ち上り部分の角)は、スタブ43Aの外周側の端部を結ぶ円と上下に位置合わせされている。ただし、環状溝28bとスタブ43とが上下に重なり合っていればよいので、例えば環状溝28bの外周端C1をスタブ43の外周端よりも径外方向に位置させてもよい。一方、環状溝28bの内周端C4(つまり、第2の壁面202の立ち上り部分の角)は、スタブ43Aの内周側の端部を結ぶ円よりも内側に入るようにすることが好ましく、さらに、最外周のスロット対の内側のスロット32bの内周側の端部を結ぶ円よりも内側に入るようにすることがより好ましい。
【0092】
次に、図1に示したプラズマ処理装置100と同様の構成のプラズマ処理装置を用い、スタブ43Aの高さを変化させて、処理容器1内のプラズマと透過板28との界面での電界分布の変化をシミュレーションにより検証した。まず、このシミュレーション実験におけるスタブ43Aと、平面アンテナ板31のスロット32と、透過板28の環状溝28bとの配置の設定について図22を参照して説明する。
【0093】
図22に示したように、平面アンテナ板31の基材31aには、外周部に24対のスロット対、中央部に8対のスロット対が形成されている。基材31aは、その外周部と中央部との間にスロット32が形成されていない中間部分を有する。スタブ43Aは、所定の直径のピッチ円上に90度間隔で配置されている。図22には、スタブ43Aの内壁面の輪郭が示されている。平面視において、平面アンテナ板31の外周部のスロット対(32a、32b)のうちの内側のスロット(32b)の中心を結ぶ円周上に、4つのスタブのそれぞれの中心が重なるようにスタブ43Aが配置されている。また、内周部のスロット対(32c、32d)の各スロットの中心と、外周部のスロット対(32a、32b)のうちの外側のスロット(32a)の中心を径外方向に結ぶ線上に、4つの各スタブ43Aの中心が重なり、かつ、外周部のスロット対(32a、32b)のうちの内側の少なくとも1つのスロット(32b)が、各スタブ43Aの内側に入るように、スタブ43Aとスロットが配置されている。環状溝28bの位置は、その外周端C1および内周端C4を破線で示したとおりであり、環状溝28bがスタブ43と上下に重なり合うように、環状溝28bの外周端C1が、スタブ43Aの外周側の端部を結ぶ円に対して上下に位置合わせされている。
【0094】
シミュレーション条件は、以下のとおりである。
使用ソフトウエア:COMSOL(商品名;COMSOL社製)
スタブ:スタブ43Aの高さは、50mm、70mmおよび90mmに設定した。なお、比較のためにスタブ43Aを設けない場合のシミュレーションも行った。
透過板:環状溝28bを設けたもの(本発明)と、下面(載置台の支持面との対向面)が全体的に凹状に湾曲したアーチ形状のもの(従来例)とを比較した。
【0095】
シミュレーション実験の結果を図23に示した。なお、図23の各マップ上では、上下左右の各位置に90°の間隔でスタブ43Aが配置されている設定である(図22を参照)。図23の原図はカラーで色分けされるとともに各色の濃淡によって電界の強弱を示しているが、ここでは白黒で示すため、黒色の部分は概ね電界が強く、白色の部分は概ね電界が弱いとの前提で大まかな傾向を読み取る目的でのみ本データは使用される。スタブ43Aと透過板28の環状溝28bが上下に重なるように配置した本発明の場合には、透過板28の周縁部にまで電界が強い部分が分布しているとともに、スタブ43Aの高さを50mm〜90mmの範囲で変化させることによって、当該周縁部を含む透過板全体でプラズマとの界面における電界強度を効果的に変化させることが出来た。一方、アーチ形状の透過板を使用した従来例の場合は、透過板28の中央部に電界の強い部分が集中しており、スタブ43Aの高さを変化させても、電界の強い部分は中央付近に集中したまま大きな変化は見られなかった。
【0096】
以上の結果から、スタブ43Aと透過板28の環状溝28bを上下に重なるように配置することにより、透過板28直下で電界が強い部分を透過板28の径外方向に周縁部まで広げることができるため、スタブ43Aによる電界強度の調節機能を有効に発揮できることが確認できた。
【0097】
次に、図1に示したプラズマ処理装置100と同様の構成のプラズマ処理装置を用いてシリコンウエハに対してプラズマ窒化処理を行った。このプラズマ窒化処理の際に、スタブ43Aの高さを変化させて、成膜された窒化珪素膜のウエハ面内の膜厚分布をエリプソメーターで測定することにより、ウエハ面内でのプラズマ窒化処理の均一性を評価した。この実験におけるスタブ43Aと、平面アンテナ板31のスロット対(32a,32b)と、透過板28の環状溝28bとの配置の設定は、図22と同様である。その結果を図24に示した。なお、スタブ43Aは、図24の各マップ中の上下左右の各位置に90°の間隔で配置されている(図22を参照)。また、スタブ43Aの高さは、70mm、80mm、90mmおよび100mmの設定で4か所同時に変化させた。
【0098】
プロセス条件は以下の通りである。
Arガス流量:1000mL/min(sccm)
ガス流量:200mL/min(sccm)
プロセス圧力:40Pa(300mTorr)
マイクロ波出力:1800W
載置台温度:400℃
【0099】
図24に示したマップにおいては、窒化珪素膜の膜厚が平均値付近の領域を「0」とし、それよりも相対的に膜厚が大きい領域を膜厚に応じて「+1、+2、・・・」、それよりも相対的に膜厚が小さい領域を膜厚に応じて「−1、−2、・・・」という値を付けて表現している。この結果から、スタブ43Aと透過板28の環状溝28bが上下に重なるように配置した本発明の場合には、スタブ43Aの高さを変化させることによって、ウエハの中央部と周縁部における膜厚を大きく変化させることが出来た。一方、アーチ形状の透過板を使用した従来例の場合は、スタブ43Aの高さを変化させても、膜厚が厚い部分はシリコンウエハの面内の中央付近に集中したままであり、膜厚を変化させる効果は小さかった。
【0100】
以上の実験結果に示したように、スタブ43Aと透過板28の環状溝28bを上下に重なるように配置することにより、透過板28直下で電界が強い部分を透過板28の径外方向に周縁部まで広げることができた。従って、透過板28に環状溝28bを設けることによってプラズマ処理装置の内部でプラズマを均一化させるスタブ43Aの効果を最大限に引き出し、プラズマ窒化処理などのプラズマ処理におけるウエハ面内での処理の均一性を向上させ得ることが確認できた。
【0101】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、平面アンテナ板31の径方向に対してスタブ43の長手方向が直交するように配置したが、これに限るものではない。例えば図25に示したように、スロット32の長手方向とスタブ43の長手方向が一致するように、スタブ43を配置してもよい。この場合も、透過板28の環状溝28bとスタブ43とは上下に重なるように配置される。また、スタブ43は、平面アンテナ板31の最外周のスロット対を構成するスロット32a,32bの上に限らず、例えば異常に電界が強い場所であれば、平面アンテナ板31のどの位置のスロットの上に配置してもよい。
【0102】
また、スタブ43の水平断面の形状は、矩形に限定されるものではなく、例えば正方形でもよいし、円形(楕円を含む)でもよい。さらに、同軸導波管37aを囲むように、スタブ43を円環状に連続した形状で形成してもよい。
【0103】
また、本発明のスタブ43を備えたプラズマ処理装置は、例えばプラズマ酸化処理装置、プラズマ窒化処理装置やプラズマCVD処理装置、プラズマエッチング処理装置、プラズマアッシング処理装置などに適用できる。さらに、本発明のスタブ43を備えたプラズマ処理装置は、被処理体として半導体ウエハを処理する場合に限らず、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイ装置用の基板を被処理体とするプラズマ処理装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0104】
1…処理容器、2…載置台、3…支持部材、5…ヒータ、12…排気管、15…ガス導入部、18…ガス供給装置、24…排気装置、27…マイクロ波導入機構、28…透過板、28a…対向面、28b…環状溝(凹部)、28c…凸状壁、29…シール部材、31…平面アンテナ板、32…スロット、37…導波管、37a…同軸導波管、37b…矩形導波管、39…マイクロ波発生装置、43A…スタブ、50…制御部、51…プロセスコントローラ、52…ユーザーインターフェース、53…記憶部、100…プラズマ処理装置、W…半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容する真空引き可能な処理容器と、
被処理体を支持する支持面を有し、前記処理容器内で被処理体を載置する載置台と、
前記載置台の支持面に対して向かい合う対向面を有し、前記処理容器の上部の開口に気密に装着されてプラズマ発生用のマイクロ波を透過させる透過板と、
導電性材料からなる平板状基材を貫通して形成された複数のスロットを有して前記透過板よりも上方に配置され、マイクロ波を前記処理容器内に導入する平面アンテナと、
前記平面アンテナを上方から覆う導電性のカバー部材と、
前記導電性のカバー部材の中央部を貫通して設けられ、マイクロ波発生源からのマイクロ波を前記平面アンテナへ供給する第1の導波管と、
前記第1の導波管の周囲に配置され、前記平板状基材の上面に対して直交する方向に導波路を形成して前記平面アンテナにおける電界分布を調節する第2の導波管と、
を備え、
前記透過板の前記対向面において、前記第2の導波管と上下に重なり合う径方向の位置に、前記対向面の中央部分よりも前記載置台の支持面との距離が遠くなる凹部を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記載置台との対向面に形成された環状の溝であり、該環状の溝の周方向における少なくとも一部分において、前記第2の導波管と上下に重なることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第2の導波管は、前記導電性のカバー部材に装着された導電性の中空状部材を有しており、該中空状部材は前記第2の導波管の導波路の少なくとも一部分を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記導電性のカバー部材は、前記平板状基材の上面に対して直交する方向に貫通した貫通開口部を有しており、該貫通開口部は前記第2の導波管の導波路の少なくとも一部分を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の導波管の上端部が閉塞されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2の導波管は、導波路の長さを可変に調整する可動体を有していることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記導電性のカバー部材は、前記平板状基材の上面側に向けて開口する非貫通の開口部を有しており、該非貫通の開口部は前記第2の導波管の導波路を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記載置台の支持面に対して平行な第1の壁面と、前記第1の壁面を間に挟むように、前記透過板の径方向において内側に形成された第2の壁面および外側に形成された第3の壁面を有しており、該第3の壁面と前記対向面との境界が、前記カバー部材の径方向における前記第2の導波管の外周側の端部と上下に一致することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2の導波管が、少なくとも一つの前記スロットの上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記スロットが、前記平板状基材においてスロット対をなして同心円状に配列されており、前記第2の導波管が、前記スロット対のうちの少なくとも一方のスロットの上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記スロットが、前記平板状基材においてスロット対をなして同心円状に配列されており、前記第2の導波管が、最外周のスロット対のうちの径方向に外側のスロットの開口の中心の上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記スロットが、前記平板状基材においてスロット対をなして同心円状に配列されており、前記第2の導波管が、最外周のスロット対のうちの径方向に内側のスロットの開口の中心の上方に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記第2の導波管の中心が、前記スロットの開口の中心を結ぶ円弧上に位置することを特徴とする請求項12または請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記第2の導波管の中心が、前記スロットの開口の中心に重なるように位置することを特徴とする請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記第2の導波管と前記スロットの開口全体とが、上下に重なるように位置することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記平面アンテナの上に、前記平面アンテナへ供給されるマイクロ波の波長を調整する遅波板をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−232493(P2010−232493A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79531(P2009−79531)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】