説明

プラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置

【課題】プラズマCVD及びプラズマエッチングの分野において、生産コストの低減に必要な、高速で基板サイズの大面積化が可能なプラズマ表面処理方法およびプラズマ表面処理装置を提供する。
【解決手段】導波管を備えた空洞共振器1と、高周波電源20と、インピーダンス整合器32と、3端子サーキュレータ50と、該3端子サーキュレータ50に接続された無反射終端器52及び反射波検知器54とから成るプラズマ表面処理装置で、インピーダンスの整合を取るに際し、供給電力のアンテナ2からの反射波が最小に、かつ、該空洞共振器内部に放射される電力が最大になるように調整可能としたことを特徴とする。リッジ61を有する導波管を用いることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用して基板の表面に所定の処理を施すプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置に関する。特に、薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ、電子写真用感光体及び半導体デバイ等に用いられる薄膜を形成するプラズマCVD装置、並びに各種電子デバイスの微細加工に用いられるプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜太陽電池の発電膜であるアモルファスSi膜及び微結晶Si膜、並びに液晶デイスプレイの等薄膜トランジスタ等の絶縁性薄膜(窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等)の形成へのプラズマCVD装置の応用では、製造する製品の生産コストの低減のために、製膜の高速化、高品質化及び基板サイズの大面積化(1mx1mを超える面積)に関するニーズが強くなっている。
また、多結晶シリコン太陽電池の反射膜及びパッシベーション膜等に用いられる窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等の形成へのプラズマCVD装置の応用においても、同様のニーズがある。
プラズマエッチング装置についても、エッチング微細加工精度の向上及び基板サイズの大面積化が求められている。
このようなニーズに対応可能なプラズマ表面処理装置には、例えば、平行平板電極を用いた容量結合型高周波プラズマ表面処理装置、アンテナを用いた誘導結合型高周波プラズマ表面処理装置及び導波管(空洞共振器)を用いたマイクロ波プラズマ表面処理装置があり、それぞれに実用化されている。
【0003】
表面処理の高速化を図るには、一般にプラズマ密度を高くすることが最も効果的である(プラズマ密度はプラズマ生成に用いる電源周波数に比例して増大する)ことから、プラズマ励起周波数をVHF帯域(30MHz〜300MHz)あるいはUHF帯域(300MHz〜3000MHz)にしたプラズマ表面処理装置が開発されている。
微結晶シリコンの製膜への応用においては、プラズマ励起周波数の増大に加えて、プラズマ生成の際の圧力を高くすることが高品質で高速の膜形成により一層、効果的であることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、プラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置の応用において、従来技術には、いろいろな課題が依然として残されている。
RF(13.56MHz)のプラズマ表面処理装置では、例えば、薄膜太陽電池の発電膜であるアモルファスSi膜及び微結晶Si膜、並びに液晶デイスプレイの等薄膜トランジスタ等の絶縁性薄膜(窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等)等の製造への応用、多結晶シリコン太陽電池の反射膜及びパッシベーション膜等の製造への応用において、大面積基板への対応は可能であるが、製膜速度が遅いという問題がある。したがって、生産コストの低減を図るというニーズには対応困難である。
【0005】
VHFのプラズマ表面処理装置では、例えば、薄膜太陽電池の発電膜であるアモルファスSi膜及び微結晶Si膜、並びに液晶デイスプレイの等薄膜トランジスタ等の絶縁性薄膜(窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等)等の製造への応用、多結晶シリコン太陽電池の反射膜及びパッシベーション膜等の製造への応用において、高品質で高速製膜が可能であるが、プラズマ生成で定在波が発生することから、一般的には大面積基板への応用が出来ないという問題がある(非特許文献2)。
電極に平行平板型を用いる場合、供給される電力の約50%が電力電送路及び電極の裏面側と側面側等で消費され、プラズマの生成に消費されるのは約50%あり、投入電力のプラズマ生成への有効活用化についての問題が指摘されている(非特許文献3)。これは、電極に平行平板型を用いるプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置の応用において、供給される電力がプラズマ生成に利用される効率が著しく悪いということを意味している。即ち、電極に平行平板型を用いる場合には供給電力の損失が大きい。
VHFプラズマによる大面積基板への対応事例として、例えば、特許文献1及び2に記載の位相変調方式によるVHFプラズマ表面処理装置がある。これは、高品質で高速製膜が可能で、1.4mx1m級大面積基板への応用も可能である。しかしながら、製膜の不均一性は±15〜20%程度であり、インピーダンスの整合が困難であることに加えて、電力供給回路に破損が生じることがあるという欠点が指摘されている(特許文献1及び2参照)。即ち、一般的に大面積化が困難であるVHFプラズマによる大面積基板の表面処理が容易に実現できるという特長があるが、供給電力を位相変調することに起因するインピーダンス整合の不適合及びそれに起因すると見られる電力供給回路のジュール熱による破損問題を抱えている。
また、VHFプラズマによる大面積基板への対応事例として、例えば、特許文献3に記載の定在波重畳方式によるVHFプラズマ表面処理装置がある。これはは、一般的に大面積化が困難であるVHFプラズマによる大面積基板の表面処理が容易に実現できる。この方式は、プラズマ生成における不均一性は±10%程度であり、インピーダンスの整合も容易であることから、実用化が期待されている。しかしながら、まだ開発段階にある(特許文献3)。
【0006】
2.45GHzのマイクロ波プラズマ表面処理装置は、主として、電子デバイスのエッチングに用いられている。基板面積は8〜12インチ程度で、薄膜太陽電池への応用(面積1mx1m級以上)に比べると、小面積である。圧力は約1KPa程度以下であり、薄膜太陽電池への応用(約1KPa程度以上)に比べると、低圧力条件である。
プラズマ生成室は、マイクロ波電力の供給手段で分けると、アンテナ型と導波管型がある(特許文献4〜9)。プラズマ処理室は、プラズマ生成室に隣接して設置され、その間に誘電体窓(例えば、石英)が配置される。プラズマ生成に必要な電磁波エネルギーは、誘電体窓からプラズマ処理室へ放射される。
なお、特許文献4には、マイクロ波伝播での波面の均一化方法及びその手段、及び定在波の電波伝播方向における減衰抑制方法が記載されている。また、特許文献5には、空洞共振器と基板処理室を連結した構造を有するプラズマ表面処理装置が記載されている。また、特許文献6には、空洞共振器に高周波電力を供給する際に用いられるアンテナの構造が記載されている。
【0007】
最近、リッジを有する導波管を用いたプラズマ表面処理装置が提案されている(特許文献7〜9)。リッジを活用することにより、導波管内部の電界分布が均一化されるとのことである。
特許文献7〜9には、リッジを有する導波管を用いたプラズマ表面処理装置のエッチングや製膜への応用に関わる装置構成が記載されている。なお、特許文献8及び9には、誘電体窓(例えば、石英)を用いないで、開口を設置してその開口から電磁波エネルギーを放射するような構成が示されている。
しかしながら、2.45GHzのマイクロ波プラズマ表面処理装置及びリッジを有する導波管を用いたプラズマ表面処理装置の大面積基板を対象にした大面積化(面積1mx1m級以上面積1mx1m級以上)への応用は、まだ実現できていない(特許文献4〜9)。
【0008】
【特許文献1】特許第4786289号(図1〜図5、図8)
【特許文献2】特開2002−110566(図1、図3)
【特許文献3】特許第4264962号(図1〜図6、図11〜12)
【特許文献4】特開平11−45799(図1〜図3、図12〜図14)
【特許文献5】特開平11−195500(図1、図2、図5〜図8)
【特許文献6】特開平08−186410(図1〜図4)
【特許文献7】特表平04−504640(図1、図5、図9、図10)
【特許文献8】特表2001−518678(図1〜図5、図6〜図8)
【特許文献9】特開2011−35327(図1、図7〜図13)
【0009】
【非特許文献1】A.Perret、P.Chabert、J.P.Booth、J.Jolly、J.Guillon and Ph.Auvray:Applied Physics Letters、Vol.83、No.2(14 July 2003)、243−245.
【非特許文献2】M.Kondo、M.Fukawa、L.Guo、A.Matsuda:High rate growth of microcrystalline silicon at low temperatures、Journal of Non−Crystalline Solids 266−269(2000)、84−89.
【非特許文献3】J.A.Baggerman、R.J.Visser、and E.J.H.Collart:Power dissipation measurements in a low−pressure N2 radio−frequency discharge、J.Appl.Phys.、Vol.76、No.2、15 July 1994、738−746.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のプラズマ表面処理装置は、プラズマ励起周波数として13.56MHzを用いると、製膜速度やエッチング速度が遅い、という問題がある。
製膜速度あるいはエッチング速度の高速化を図るには、プラズマ密度を増大化する必要があり、高密度プラズマを生成するには、励起周波数のVHF化あるいはUHF化が必要で、かつ、プラズマ生成の電力を増大させる必要がある。
励起周波数をVHF化あるいはUHF化すると、波長が短くなるので電極に定在波が発生し、均一なプラズマの生成は困難という、問題がある。電力を増大すると、反射波及び定在波等によるジュール熱により電力供給線路が破損するという問題が起こる。
その結果、面積1mx1m程度以上の大面積基板を対象にしたプラズマ表面処理の高速化は困難であるという、問題がある。
近年、薄膜太陽電池の発電膜であるアモルファスSi膜及び微結晶Si膜、並びに液晶デイスプレイの等薄膜トランジスタ等の絶縁性薄膜(窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等)の形成、多結晶シリコン太陽電池の反射膜及びパッシベーション膜の形成及びエッチング微細加工等の分野における生産コストの低減を目指した基板サイズの大面積化(1mx1mを超える面積)に関するプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置について開発研究が行われている。しかしながら、生産コスト低減の実現に必要な、高速で、かつ、基板サイズの大面積化(1mx1mを超える面積)が可能なプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置は出現していない。
したがって、製品の生産コスト低減を実現するために必要な、製膜の高速化、高品質化及び基板サイズの大面積化(1mx1mを超える面積)に関するニーズに対応できない、という課題がある。
【0011】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものである。即ち、従来のプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理方法が有する上記の問題を解消することが可能なプラズマ表面処理方法及びプラズマ表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決可能なアイデイアを見出した。
【0013】
本願に係る第1の発明のプラズマ表面処理方法は、矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスをそれぞれ整合する第1及び第2の整合器と、を具備したプラズマ表面処理装置を用いて、基板の表面をプラズマ処理するプラズマ表面処理方法において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
なお、上記無反射終端器は、反射波吸収負荷と呼ばれることもある。無反射終端器は入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。
【0015】
本願に係る第2の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第1の発明のプラズマ表面処理方法において、前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるとともに、
前記第1の3端子サーキュレータと前記第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器を配置し、前記第2の3端子サーキュレータと前記第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器を配置するとともに、該第1の電力検知器で検知される電力値及び第2の電力検知器で検知される電力値がそれぞれ最小値となるように、前記第1及び第2の整合器のリアクタンスをそれぞれに調整するようにしたことを特徴とする。
【0016】
本願に係る第3の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第1あるいは2の発明のいずれか一つの発明のプラズマ表面処理方法において、前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるとともに、
前記空洞共振器の中心軸上の前記第1のアンテナ側の端部に第1の電波検知装置を配置し、前記空洞共振器の中心軸上の前記第2のアンテナ側の端部に第2の電波検知装置を配置して、該第1の電波検知装置で検知される電波の強さ及び該第2の電波検知装置で検知される電波の強さが最大値となり、かつ、前記第1の電力検知器で検知される電力値及び前記第2の電力検知器で検知される電力値とが最小値となるように、前記第1及び第2の整合器のリアクタンスをそれぞれに調整するようにしたことを特徴とする。
【0017】
本願に係る第4の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第2の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第1のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0018】
本願に係る第5の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第2の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第2のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本願に係る第6の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第3の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第1のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第2の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0020】
本願に係る第7の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第3の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第2のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第1の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とする。
【0021】
本願に係る第8の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第2の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源の出力を前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータと前記第1のアンテナから成る第1の電力供給手段と、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータと前記第2のアンテナから成る第2の電力供給手段を用いて前記空洞共振器に供給するに際し、
該第2の整合器と該第2のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第2の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するという第1の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第1の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するという第2の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータを接続し、該第2の整合器と該第2のサーキュレータを接続し、該第1の工程及び該第2の工程で選定された該第1及び第2の整合器のリアクタンスを維持しつつ、該高周波電源の出力が該第1及び第2のアンテナから該空洞共振器へ供給されるという第3の工程と、から成ることを特徴とする。
【0022】
本願に係る第9の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第3の発明のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源の出力を前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータと前記第1のアンテナから成る第1の電力供給手段と、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータと前記第2のアンテナから成る第2の電力供給手段を用いて前記空洞共振器に供給するに際し、
該第2の整合器と該第2のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第2の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するという第1の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第1の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するという第2の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータを接続し、該第2の整合器と該第2のサーキュレータを接続し、該第1の工程及び該第2の工程で選定された該第1及び第2の整合器のリアクタンスを維持しつつ、該高周波電源の出力が該第1及び第2のアンテナから該空洞共振器へ供給されるという第3の工程と、から成ることを特徴とする。
【0023】
本願に係る第10の発明のプラズマ表面処理方法は、本願に係る第1から9までの発明のいずれか一つの発明のプラズマ表面処理方法において、前記第1及び第2のアンテナに供給される電力の電圧の位相差が零度である同相状態と、該第1及び第2のアンテナに供給される電力の電圧の位相差が180度である逆相状態とを、時間的に交互に発生させるようにしたことを特徴とする。
【0024】
本願に係る第11の発明のプラズマ表面処理装置は、プラズマを利用して気密性を有する反応容器に配置された基板の表面をプラズマ処理するプラズマ表面処理装置において、
矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、
該空洞共振器にアンテナを介して高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
排気系に接続された排気孔を有し、基板が載置される基板保持手段を備えた基板処理室と、を備え、該基板処理室が該空洞共振器に連結して設置され、該空洞共振器と該基板処理室を貫通する貫通孔を設置するとともに、該空洞共振器の壁に不活性ガスを噴出する不活性ガス噴出手段を配置し、該基板処理室側の該貫通孔の近傍に反応性ガスあるいは反応性ガスと不活性ガスを含む複数種類のガスの混合ガスを噴出する反応性ガス噴出手段を配置したことを特徴とする。
【0025】
本願に係る第12の発明のプラズマ表面処理装置は、矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスを整合する第1及び第2の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ第1及び第2の3端子サーキュレータが配置され、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ前記高周波電源の出力電力が供給され、
該第1及び第2の3端子サーキュレータに該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる第1及び第2の無反射終端器がそれぞれ接続されるとともに、
該第1のアンテナと該第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器が設置され、
該第2のアンテナと該第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器が設置されるという構造を有することを特徴とする。
【0026】
本願に係る第13の発明のプラズマ表面処理装置は、矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスを整合する第1及び第2の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ第1及び第2の3端子サーキュレータを配置されて、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ前記高周波電源の出力電力が供給され、
該第1及び第2の3端子サーキュレータに該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる第1及び第2の無反射終端器がそれぞれ接続されるとともに
該第1のアンテナと該第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器が設置され、該第2のアンテナと該第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器が設置され、
前記空洞共振器の中心軸上の該第1のアンテナ側の端部に電波の強さを検知する第1の電波検知装置が設置され、該空洞共振器の中心軸上の該第2のアンテナ側の端部に電波の強さを検知する第2の電波検知装置が設置されるという構造を有することを特徴とする。
【0027】
本願に係る第14の発明のプラズマ表面処理装置は、本願に係る第11〜13の発明のいずれか一つの発明のプラズマ表面処理装置において、前記高周波電源は前記空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置された第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相を調整する移相器を備え、前記第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相が同相である同相状態と、該前記第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相が180度である逆相状態の2つの状態を時間的に交互に切り替えるようにしたこと特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
従来技術では、励起周波数をVHF化あるいはUHF化すると、波長が短くなるので電極に定在波が発生し、均一なプラズマの生成は困難という、問題がある。プラズマ処理の高速化のために電力を増大すると、反射波及び定在波等によるジュール熱により電力供給線路が破損するという問題が起こる。その結果、面積1mx1m程度以上の大面積基板を対象にしたプラズマ表面処理の高速化は困難であるという、問題がある。
本発明によれば、電力供給線路の焼損の主たる原因であるアンテナからの反射波を無反射終端器で消滅することが可能であり、インピーダンス整合での干渉波(反射波、及び反射波と同じ方向に伝播してくる電力)を無反射終端器で消滅することが可能である。また、
プラズマ生成で最も重要であるインピーダンスの整合が確実に実施可能である。即ち、反射波及び定在波等によるジュール熱により電力供給線路が破損という問題が解消できる。
また、従来のVHFプラズマ技術での定在波によるプラズマの非一様化問題に関し、本発明では定在波重畳方式(腹の位置が異なる2つの定在波を異なる時間帯で交互に生成する方式)が応用可能であり、プラズマを一様化出来る。
したがって、本発明によれば、従来の方法及び装置では困難視されているプラズマ表面処理の高速化、大面積化、均一化、安定化が可能である。その結果、生産設備の稼働率及び製品の歩留まりが著しく向上する。この効果は産業上、極めて多大の価値を有する、と言える。
特に、半導体や電子デバイス等の分野における大面積基板を対象にした高速、高品質シリコン系膜製造での生産性向上及び製造コストの低減に寄与できる効果は著しく大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な外観図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な説明図(基板処理室と空洞共振器の断面図、高周波電力供給手段のブロック図)である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、空洞共振器の壁と基板処理室の壁を貫通した貫通孔を示す平面図(空洞共振器内部から見たもの)である。
【図4】図4は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、空洞共振器の壁と基板処理室の壁の間に設置された反応性ガスあるいは反応性ガスと不活性ガスの混合ガスを噴出する反応性ガス噴出孔を示す平面図(基板処理室内部から見たもの)である。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、電力導入部を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、第1及び第2のアンテナと電流導入端子と同軸ケーブルの接続を示す断面図である。
【図7】図7は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的なブロック図で、高周波電源から供給された電力の伝播経路を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材である空洞共振器の内部を伝播する電磁波を模式的に示す説明図である。
【図9】図9は本発明の第1及び第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材である空洞共振器の内部に発生する電波の定在波を示す模式的な説明図である。
【図10】図10は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な説明図(基板処理室と空洞共振器の断面図、高周波電力供給手段のブロック図)である。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、電力導入部を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な外観図である。
【図13】図13は図12のA−A線の断面図であり、基板処理室と空洞共振器の説明図である。
【図14】図14は図12のB−B線の断面図であり、基板処理室と空洞共振器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施例での説明では、プラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理装置を用いたシリコン膜の製造方法の一例として、シリコン系薄膜を製作する装置及び方法が記載されているが、本願の発明対象が下記の例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理装置を用いたシリコン系膜の製造方法を図1〜図9を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な外観図である。図2は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な説明図(基板処理室と空洞共振器の断面図、高周波電力供給手段のブロック図)である。図3は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、空洞共振器の壁と基板処理室の壁を貫通した貫通孔を示す平面図(空洞共振器内部から見たもの)である。図4は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、空洞共振器の壁と基板処理室の壁の間に設置された反応性ガスあるいは反応性ガスと不活性ガスの混合ガスを噴出する反応性ガス噴出孔を示す平面図(基板処理室内部から見たもの)である。図5は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、電力導入部を示す断面図である。図6は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、第1及び第2のアンテナと電流導入端子と同軸ケーブルの接続を示す断面図である。図7は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的なブロック図で、高周波電源から供給された電力の伝播経路を示す説明図である。図8は本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材である空洞共振器の内部を伝播する電磁波を模式的に示す説明図である。図9は本発明の第1及び第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材である空洞共振器の内部に発生する電波の定在波を示す模式的な説明図である。
【0032】
なお、本実施例ではプラズマ表面処理装置の一例として、プラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0033】
先ず、装置の構成を、図1〜図9を参照して説明する。
符番1は空洞共振器である。空洞共振器1は、断面形状が長辺aと短辺bからなる矩形で、電磁波がTE10モードで共振する矩形導波管1aと電力導入部1aa、1abから構成される。なお、この材料はアルミニウム、アルミニウム系合金、あるいはSUS等の金属で、例えばアルミニウムである。サイズは、使用する電力の波長に依存するが、例えば、外寸法で、長さ2mx幅0.5mx高さ8cmとする。また、空洞共振器1の壁外部には図示しない冷媒を通すパイプが設置されており、空洞共振器1の温度を制御することが可能である。
この空洞共振器1には、後述の放電用ガスをプラズマ化するための電力を供給する一対のアンテナ2a、2b、即ち、空洞共振器1の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置された第1のアンテナ2a及び第2のアンテナ2bが設置されている。
また、この空洞共振器1の2つの長辺aの一方(ここでは空洞共振器の上面8と呼ぶ)には、後述の放電用ガスとしての不活性ガス、例えば、水素、酸素、窒素等を噴出する不活性ガス噴出孔3が多数設置されている。
また、この空洞共振器1には、後述の基板処理室4の壁(ここでは基板処理室の上面5と呼ぶ)と空洞共振器1の2つの長辺aの他方(ここでは空洞共振器の下面6と呼ぶ)を貫通した貫通孔7が多数設置されている。
【0034】
符番4は基板処理室で、基板9を載置する基板保持台10、及び排気管14a、14bを備えている。基板処理室4の形状は、箱形で、その材料はアルミニウム、アルミニウム系合金、あるいはSUS等の金属で、例えばアルミニウムである。サイズは、例えば、外寸法で、長さ1.6mx幅0.8mx高さ80cmとする。なお、基板処理室4の外壁は図示しない冷媒を通すパイプが設置されており、基板処理室4の温度を制御することが可能である。
符番7は貫通孔で、孔のサイズは3mmx3mm〜20mmx20mm程度(深さは10〜30mm、例えば20mmである)で、例えば5mmx5mmである。貫通孔7は、空洞共振器1と基板処理室4を貫通しているので、後述する空洞共振器1内部で発生の電力波の一部が基板処理室4へ漏洩し、電界を発生する。この電界は、後述するように、反応性ガス噴出孔13から噴出するシランガス(SiH4)や水素ガス(H2)をプラズマ化する。
符番10は基板保持台で、図示しない基板ヒータを内臓し、その上に設置される基板9の温度を100〜450℃の範囲で、任意の温度に設定可能である。なお、基板保持台10は基板ヒータの他に、冷媒を通すパイプを内蔵しており、基板保持台10の温度を制御することが可能である。また、基板保持台10の形状は、例えば、矩形で、その材料は金属で、空洞共振器1に平行に設置される。その具体的なサイズは、例えば、外寸法で、長さ約1.3mx幅約50cmx高さ約20cmとする。
符番9は基板である。基板9は、図示しない基板搬入搬出装置で、基板保持台10に設置され、また、取り出される。ここでは、この基板9に微結晶シリコン膜が形成される。
【0035】
基板9の表面と基板処理室4の上面5の間隔は、図示しない移動手段で基板保持台10を上下に作動させることにより、予め、任意に設定可能であり、5mm〜100mmの範囲で、例えば30mmに設定される。
【0036】
符番11は不活性ガス供給管で、図示しない放電用ガス供給源から供給された、例えば、水素、酸素、窒素等の不活性ガスを不活性ガス噴出孔3に搬送する。不活性ガス噴出孔3は不活性ガスを噴出させる。噴出された不活性ガスは、貫通孔7を介して基板処理室4へ搬送される。なお、空洞共振器1及び基板処理室4の内部のガスは図示しない真空ポンプにより、後述の排気孔14a、14bを介して排気される。
不活性ガス噴出孔3から噴出される不活性ガスの流量は、図示しない放電用ガス供給源に付属の不活性ガスの流量計で、0.2〜20SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で設定される。
【0037】
符番12は、反応性ガス供給管である。反応性ガス供給管12は図示しない放電用ガス供給源から供給された反応性ガス、例えば、シランガスSiHあるいはシランガスSiHと水素の混合ガスを反応性ガス噴出孔13へ搬送させる。反応性ガス噴出孔13はシランガスSiHあるいはシランガスSiHと水素の混合ガスを基板処理室4の上面5近傍に噴出させる。噴出された反応性ガスは、後述の排気孔14a、14bを介して排気される。
反応性ガス噴出孔13から噴出される反応性ガスの流量は、図示しない放電用ガス供給源に付属の反応性ガスの流量計で、0.1〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で設定される。なお、シランガスSiHと水素の混合ガスを供給する場合は、シランガスSiHと水素の混合ガスの流量比H/SiH=0.5〜50の範囲で調整される。噴出した反応性ガスは、排気管14a、14bから図示しない真空ポンプにより外部へ排出される。
符番14a、14bは排気管である。排気管14a、14bは図示しない真空ポンプと組み合わせて用いられ、空洞共振器1及び基板処理室4内のガスを排出する。
【0038】
空洞共振器1及び基板処理室4内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。
なお、ここでは、反応性ガスと不活性ガスの総流量2〜20SLMの範囲で、圧力1.333Pa(0.01Torr)〜1333Pa(10Torr)程度に調整できる。
また、放電用ガスを供給しない場合、空洞共振器1及び基板処理室4の真空到達圧力は2.66〜3.99E−5Pa(2〜3E−7Torr)程度である。
【0039】
符番20は高周波電源である。高周波電源20は、周波数10〜100MHzの任意の周波数の正弦波の信号を発生し、電力増幅して、出力する。また、高周波電源20は2つの出力(ここでは第1の出力20a及び第2の出力20bと呼ぶ)を有し、2つの出力20a、20bの電圧の位相差を、0〜180度の範囲で任意の値に調整ができる。また、パルス幅が数μ秒〜1000m秒程度の範囲でパルス変調が可能である。即ち、2つの出力20a、20bの電圧の位相が、例えば零度に保たれて、かつ、パルス変調された第1のパルス電力と、その位相差が、例えば180度に保たれて、かつつ、パルス変調された第2のパルス電力を異なる時間帯で交互に出力することが可能である。これは、高周波電源20の第1の出力20aと第2の出力20bの電圧の位相差が、例えば、0度と180度に整えられた2つのパルス電力が、異なる時間帯に交互に出力されるという意味である。
高周波電源20には、図示しない出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、その反射波による電力増幅器の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
【0040】
符番21a、符番22a、符番23a、符番51aは同軸ケーブルで、高周波数の電力を電送することができる。
符番32aは第1の整合器である。第1の整合器32aの内部には、可変インダクタと可変コンダクターが配置されている。第1の整合器32aは、同軸ケーブル21aを介して入力された高周波電源20の第1の出力20aを、同軸ケーブル22a、後述の第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル23a、後述の第1の電流導入端子25a、及び第1のアンテナ2aから成る第1の電力供給手段を介して、空洞共振器1に電力を放射する。そして、高周波電源20と第1のアンテナ2aとのインピーダンスの整合を取ることができる。なお、整合を取ることについては、以下に詳しく説明する。
【0041】
符番50aは第1の3端子サーキュレータで、第1、第2及び第3の端子を有する。第1の端子から入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第2の端子に出力される。第2の端子から入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第3の端子に出力される。第3の端子からの入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第1の端子に出力される。なお、3端子サーキュレータ50aとして、電力用途の市販品を用いることができる。
符番52aは第1の無反射終端器(反射波吸収負荷と呼ばれることもある)である。第1の無反射終端器52aは入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。なお、無反射終端は純抵抗Rのみで構成する。なお、純抵抗Rの値は同軸ケーブルのインピーダンスを考慮し、調整する。
符番53aは第1の方向性結合器である。第1の方向性結合器53aは、同軸ケーブル51a内を、第1の3端子サーキュレータ50aから第1の無反射終端52aへ伝播する電力を検知し、その信号を後述の第1の電力検知器54aに送信する。
符番54aは第1の電力検知器である。第1の電力検知器54aは、第1の方向性結合器53aから送信された電気信号を受信し、その受信信号を電力値に変換して、その値を表示する。
【0042】
なお、第1の電力検知器54aは、第1のアンテナ2aからの反射波を検出するとともに、第2のアンテナ2bから放射され、空洞共振器1を通過し、第1のアンテナ2aを介して伝搬してくる電力を検知するので、後述するように、第2の整合器の調整の際に利用される。
【0043】
符番25aは第1の電流導入端子で、空洞共振器1の気密を保持して、同軸ケーブル23aと第1のアンテナ2aを接続する。同軸ケーブル23aと第1の電流導入端子25aと第1のアンテナ2aの接続は、図6に示すように、同軸ケーブル23aの芯線24aを第1の電流導入端子25aの芯線部の凹部26aに差し込み、第1の電流導入端子25aの芯線部の凹部27aに第1のアンテナ2aを差し込む。そして、同軸ケーブル23aの袋ナット30aと第1の電流導入端子25aのネジ部31aを用いて固着する。第1の電流導入端子25aと第1のアンテナ2aはOリングを介して固着する。
符番2aは第1のアンテナである。第1のアンテナ2aは第1の電流導入端子25aを介して供給された高周波電源20の出力電力を、空洞共振器1に放射させる。なお、第1のアンテナ2aの先端部33aは空洞共振器1の電力導入部1aaに接続されている。
【0044】
高周波電源20の出力が第1のアンテナに給電されると、空洞共振器1の内部に電磁波が放射されて、強い電界が発生する。この電界により空洞共振器1内部にプラズマが生成される。
また、空洞共振器1の下面に設置された貫通孔7から電磁波が漏洩して電界が発生する。この電界により基板処理室の上面5の近傍にプラズマが生成される。
【0045】
ここで、第1の3端子サーキュレータ50a及び第1の無反射終端器52aの機能を説明する。
図2、図5、図6及び図7において、第1の整合器32aから第1の3端子サーキュレータ50aの第1の端子に入力された電力Wa(1)は第2の端子からWa(1)として出力され、同軸ケーブル23a、第1の電流導入端子25aを介して第1のアンテナ2aに供給される。そうすると、第1のアンテナ2a及びその近傍で反射波Wa(11)が発生する。その反射波Wa(11)は同軸ケーブル23aを逆流し、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。第2の端子に入射した反射波Wa(11)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端52aに入力された反射波Wa(11)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wa(11)は消滅する。
【0046】
他方、第2のアンテナ2bに入射した第2の3端子サーキュレータ50bの電力Wb(1)の一部分は、空洞共振器1を通過して、第1のアンテナ2a、第1の電流導入端子25a、同軸ケーブル23aを介して、第1の3端子サーキュレータ50aの第2の端子に入射する。その電力をWb(12)とする。これは、反射波Wa(11)と同じ方向に伝搬する電力である。
第2の端子に入射した電力Wb(12)は第3の端子から出力されて、同軸ケーブル51aを介して第1の無反射終端器52aに入力される。第1の無反射終端器52aに入力された電力Wb(12)は第1の無反射終端器52a内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wb(12)は消滅する。
したがって、第1の3端子サーキュレータ50aから第1の整合器32aへ伝搬する電力は無い。これは、第1の3端子サーキュレータ50aから上流側の電力電送線路において定在波が発生しない、ということを意味する。
また、第1のアンテナ2aと第1の3端子サーキュレータ50a間には定在波が発生しないという条件が整う。これは、第1の3端子サーキュレータ50aと第1のアンテナ2aとの間に定在波が発生しない、ということを意味する。
【0047】
符番21b、符番22b、符番23b、符番51bは同軸ケーブルで、高周波数の電力を電送することができる。
符番32bは第2の整合器である。第2の整合器32bの内部には、可変インダクタと可変コンダクターが配置されている。第2の整合器32bは、同軸ケーブル21bを介して入力された高周波電源20の第2の出力20bを、同軸ケーブル22b、後述の第2の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル23b、後述の第2の電流導入端子25b、及び第2のアンテナ2bから成る第2の電力供給手段を介して、空洞共振器1に電力を放射する。そして、高周波電源20と第2のアンテナ2bとのインピーダンスの整合を取ることができる。なお、整合を取ることについては、以下に詳しく説明する。
【0048】
符番50bは第2の3端子サーキュレータで、第4、第5及び第6の端子を有する。第4の端子から入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第5の端子に出力される。第5の端子から入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第6の端子に出力される。第6の端子からの入力された電力は矢印(図2を参照)の方向に沿って第4の端子に出力される。なお、第2の3端子サーキュレータ50bとして、電力用途の市販品を用いることができる。
符番52bは第2の無反射終端器(反射波吸収負荷と呼ばれることもある)である。第2の無反射終端器52bは入力された電力の反射を抑制し、その電力を電気抵抗で消費し、吸収するものである。なお、無反射終端は純抵抗Rのみで構成する。なお、純抵抗Rの値は同軸ケーブルのインピーダンスを考慮し、調整する。
符番53bは第1の方向性結合器である。第1の方向性結合器53bは、同軸ケーブル51b内を、第2の3端子サーキュレータ50bから第2の無反射終端52bへ伝播する電力を検知し、その信号を後述の第2の電力検知器54bに送信する。
符番54bは第2の電力検知器である。第2の電力検知器54bは、第2の方向性結合器53bから送信された電気信号を受信し、その受信信号を電力値に変換して、その値を表示する。
【0049】
なお、第2の電力検知器54bは、第2のアンテナ2bからの反射波を検出するとともに、第1のアンテナ2aから放射され、空洞共振器1を通過し、第2のアンテナ2bを介して伝搬してくる電力を検知するので、後述するように、第1の整合器の調整の際に利用される。
【0050】
符番25bは第2の電流導入端子で、空洞共振器1の気密を保持して、同軸ケーブル23bと第2のアンテナ2bを接続する。同軸ケーブル23bと第2の電流導入端子25bと第2のアンテナ2bの接続は、図6に示した第1のアンテナ2aと第1の電流導入端子25aと同軸ケーブル23aの場合と同じである。
符番2bは第2のアンテナである。第2のアンテナ2bは第2の電流導入端子25bを介して供給された高周波電源20の出力電力を、空洞共振器1に放射させる。なお、第2のアンテナ2bの先端部33bは空洞共振器1の電力導入部1abに接続されている。
なお、高周波電源20の出力が第2のアンテナ2bに給電されると、空洞共振器1の内部に電磁波が放射されて、強い電界が発生する。この電界により空洞共振器1内部にプラズマが生成される。
また、空洞共振器1の下面に設置された貫通孔7から電磁波が漏洩して電界が発生する。この電界により基板処理室の上面5の近傍にプラズマが生成される。
【0051】
ここで、第2の3端子サーキュレータ50b及び第2の無反射終端器52bの機能を説明する。
図2、図5、図6及び図7において、第2の整合器32bから第2の3端子サーキュレータ50bの第4の端子に入力された電力Wb(1)は第5の端子からWb(1)として出力され、同軸ケーブル23b、第2の電流導入端子25bを介して第2のアンテナ2bに供給される。そうすると、第2のアンテナ2b及びその近傍で反射波Wb(11)が発生する。その反射波Wb(11)は同軸ケーブル23bを逆流し、第2の3端子サーキュレータ50bの第5の端子に入射する。第5の端子に入射した反射波Wb(11)は第6の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端52bに入力された反射波Wb(11)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、反射波Wb(11)は消滅する。
【0052】
他方、第1のアンテナ2aに入射した第1の3端子サーキュレータ50aの電力Wa(1)の一部分は、空洞共振器1を通過して、第2のアンテナ2b、第2の電流導入端子25b、同軸ケーブル23bを介して、第2の3端子サーキュレータ50bの第5の端子に入射する。その電力をWa(12)とする。これは、反射波Wb(11)と同じ方向に伝搬する電力である。
第5の端子に入射した電力Wa(12)は第6の端子から出力されて、同軸ケーブル51bを介して第2の無反射終端器52bに入力される。第2の無反射終端器52bに入力された電力Wa(12)は第2の無反射終端器52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、電力Wa(12)は消滅する。
したがって、第2の3端子サーキュレータ50bから第2の整合器32bへ伝搬する電力は無い。これは、第2の3端子サーキュレータ50bから上流側の電力電送線路において定在波が発生しない、ということを意味する。
また、第2のアンテナ2bと第2の3端子サーキュレータ50b間には定在波が発生しないという条件が整う。これは、第2の3端子サーキュレータ50bと第2のアンテナ2bとの間に定在波が発生しない、ということを意味する。
【0053】
上記の装置構成では、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側に上記Wa(11)、Wb(21)、Wa(12)及びWb(12)が伝播しないので、従来の装置で起こるようなジュール熱発生による焼損(破損)問題は発生しない。
また、従来装置で問題となる定在波は発生しないので、定在波に起因する焼損(破損)問題は発生しない。
なお、既に実用化され、市販されている電力用途の3端子サーキュレータは空冷あるいは水冷機能を有しているので、3端子サーキュレータ50a、50bの破損(焼損)の問題はないと、考えられる。
【0054】
次に、上述のプラズマ表面処理装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。なお、図1〜図9を参照する。
【0055】
図2〜図4において、予め、基板9を基板保持台10に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、空洞共振器1及び基板処理室4内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源から不活性ガス供給管11及び不活性ガス噴出孔3を介して水素(H2)ガスを噴出させるとともに、シランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを反応性ガス供給管12及び反応性ガス噴出孔13を介して基板処理室4内に噴出させる。
不活性ガス噴出孔3から噴出させる水素(H2)の流量は、1〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5SLMとする。反応性ガス噴出孔13から噴出させる混合ガスは、混合比を水素(H2)/シランガス(SiH4)=10/1〜1/1の範囲、例えば、2/1とし、混合ガスの流量を、2〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5.0 SLMを供給する。空洞共振器1及び基板処理室4内部の圧力は、133.3〜533.2Pa(1〜4Torr)の範囲、例えば、133.3Pa(1Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板9のサイズは、基板保持台10のサイズに合わせて、長さ1mx幅40cm(厚み4mm)とする。
【0056】
次に、高周波電源20の出力を上記第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給する手順を、以下説明する。図2及び図7を参照する。
【0057】
第1のステップ(第1の工程):高周波電源20と第1のアンテナ2aとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bの接続を遮断する(第2の3端子サーキュレータ50bに接続された同軸ケーブル22bを引き抜く)。
(2)高周波電源の第1の出力20aの周波数を選定し、例えば70MHzとし、その出力20aの所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、その出力20aを同軸ケーブル21a、第1の整合器32a、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル23a、第1の電流導入端子25aを介して第1のアンテナ2aに供給する。
ただし、第2の出力20bはゼロに保持しておく。
(3)第1のアンテナ2aからの反射波Wa(11)を第1の検出器54aで検出し、検出された電力値が最小になるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整するとともに、第2の電力検出器54bで検出された電力値が最大となるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。即ち、第2の整合器32bと第2のサーキュレータ50bの接続を遮断した状態で、第1の電力検出器54aで検出される電力値が最小で、かつ、第2の電力検出器54bで検出される電力値が最大となるように、第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。
(4)第1の整合器32aは、この調整された状態を保持する。
(5)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bを接続する。
【0058】
第2のステップ(第2の工程):高周波電源20と第2のアンテナ2bとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)第1の整合器32aと第1の3端子サーキュレータ50aの接続を遮断する(第1の3端子サーキュレータ50aに接続された同軸ケーブル22aを引き抜く)。
(2)高周波電源の第2の出力20bを所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数は上記ステップ1と同じとし、パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、同軸ケーブル21b、第2の整合器32b、第2の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル23b、第2の電流導入端子25bを介して第2のアンテナ2bに供給する。ただし、第1の出力20aはゼロに保持しておく。
(3)第2のアンテナ2bからの反射波Wb(11)を第2の検出器54bで検出し、検出された電力値が最小になるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整するとともに、第1の電力検出器54aで検出された電力値が最大となるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。即ち、第1の整合器32aと第1のサーキュレータ50aの接続を遮断した状態で、第2の電力検出器54bで検出される電力値が最小で、かつ、第1の電力検出器54aで検出される電力値が最大となるように、第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。
(4)第2の整合器32bは、この調整された状態を保持する。
(5)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bを接続する。
【0059】
第3のステップ(第3の工程):次の手順により、高周波電源20の第1及び第2の出力20a、20bを所定の値に調整して、その出力をそれぞれ第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給する。
(1)高周波電源の第1及び第2の出力20a、20bをパルス変調し、その出力を所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数を第1及び第2のステップと同じ周波数とする。例えば70MHzとする。
(2)先ず、第1のパルス電力として、次の設定を行う。パルス幅Hwを10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧(正弦波)の位相差をゼロ度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差が零度に設定されたパルス変調された第1及び第2の出力を、第1のパルス電力と呼ぶ。
(3)次に、第2のパルス電力として、次の設定を行う。第1のパルス電力と異なる時間帯にパルス電力を出力させる。パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差を180度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、この位相差が180度に設定されてパルス変調された第1及び第2の出力を第2のパルス電力と呼ぶ。
(4)第1及び第2のパルス電力のパルス立ち上がり時間をパルス周期Toの半分の時間、例えば、0.75m秒ずらす。これにより、第1及び第2のパルス電力を時間的に交互に供給することが可能である。
(5)高周波電源20の出力を所要の電力値に、例えば、第1及び第2のパルス電力をそれぞれ、3KWに設定する。
【0060】
ところで、上記第1のパルス電力が第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給されると、アンテナ2a、2bから電力波が放射される。その様子を模式的に図8に示す。
第1及び第2のアンテナ2a、2bからパルス状に供給される電力の電圧波は、同一電源から発振され、互いに空洞共振器1内部を伝播していくので、すなわち、両者は互いに向かい合った方向から伝播しあって重なり合うので、干渉現象が発生する。
図8において、第1のアンテナ2a側から第2のアンテナ2bの方向の距離をxとし、xの正方向へ伝播する電圧波をWa(x、t)、xの負方向へ伝播する電圧波、即ち第2のアンテナ2b側から第1のアンテナ2aの方向へ伝播する電圧波をWb(x,t)とすると、次のように表現される。
Wa(x、t)=V・sin(ωt+2πx/λ)
Wb(x、t)=V・sin{ωt−2π(x−L)/λ+Δθ}
ただし、Vは電圧波の振幅、ωは電圧の角周波数、λは電圧波の波長、tは時間、Lは第1及び第2のアンテナの間隔、Δθは第1のアンテナから放出される電力の電圧波と第2のアンテナから放出される電力の電圧波の位相差である。この2つの電圧波の合成波W(x、t)は次式のようになる。
(x、t)=Wa(x、t)+Wb(x、t)
=2・Vcos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}・sin{ωt+(πL/λ+Δθ/2)
上記合成波W(x、t)は、次に示すような性質を有する。即ち、Δθ=0の場合、生成されるプラズマの強さは2つのアンテナ間の中央部(x=L/2)が強く、該中央部から離れるにしたがって弱くなる。Δθ>0の場合、プラズマの強い部分が一方の給電点側へ移動し、Δθ<0の場合、他方の給電点側へ移動する。
電力の強さは、電界の二乗に比例する。これは電圧波の振幅値の二乗に比例する、という意味である。即ち、電力の強さI(x、t)は、
(x、t)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=I(x)・・・時間的に変動しない。
と表される。
【0061】
上記第3のステップにおいて、第1及び第2のアンテナ2a、2bから、第1のパルス電力(位相差=零度)と第2のパルス電力(位相差=180度)が異なる時間帯に交互に放射されるので、空洞共振器1内部の電力の強さはその2つの電力が重畳される。
即ち、第1のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わし、第2のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わすと、次のようになる。
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ}
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ−90°}
=sin{2π(x−L/2)/λ}
この電力の強さI(x)及びI(x)を模式的に図9に示す。
空洞共振器1内部の電力の強さI(x、t)は第1及び第2のパルス電力の周期より長い時間で見ると、次式で表わされるように、波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
プラズマの強さは電力の強さに比例するので、空洞共振器1内部のプラズマの強さは一様となる、ということを示している。
また、上式は、第1及び第2のパルス電力の位相差の設定において、±5度程度のずれが生じても、空洞共振器1内部の電力の強さ、即ち、プラズマの強さはほぼ一様となることを示している。
【0062】
上記第3のステップでの第1のパルス電力及び第2のパルス電力で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板9に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
ここで、不活性ガス噴出孔3から噴出する水素(H2)及び反応性ガス噴出孔13から噴出するシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスのプラズマ化及びラデイカル種の生成について説明する。
空洞共振器1の上面に位置する不活性ガス噴出孔3から噴出した水素(H2)は第1及び第2のパルス電力でプラズマ化される。水素(H2)がプラズマ化されると、化学的に活性の励起状態の水素(H2)が多量生成され、そして、H→H+Hの反応が起こり、多量の原子状Hが生成される。その結果、空洞共振器1に生成された多量の化学的に活性の励起状態の水素(H2)と多量の原子状Hは、貫通孔7から基板処理室4に拡散し、基板処理室4に流入する。
基板処理室4の上面には、第1のパルス電力及び第2のパルス電力の貫通孔7から漏れによる電界が発生している。この電界の強さは貫通孔7の大きさに影響されるが、水素(H2)やシランガス(SiHより)をプラズマ化するには十分な強さである。なお、本実施例では、貫通孔7のサイズは5mmx5mm程度である。
【0063】
基板処理室4の上面に位置する反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスがプラズマ化されると、SiH→H+SiHの反応が起こる。この反応は、プラズマが強い場合、ジシラン(SiH+SiH→Si)やトリシラン(SiH+Si→Si)等のダスト(パウダー)が形成されるが、プラズマが弱く、かつ、大量の原子状Hがあれば、SiH→H+SiH、及びH+SiH→H+SiHの反応が起こり易い。なお、プラズマでの電子エネルギーが8.75eV以上であればSiHが生成され、9.47eV以上であればSiHが生成されることが、一般に知られている。
【0064】
基板処理室4上面近傍において、貫通孔7から流入する大量の原子状H及び反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスのプラズマ化によって、基板9に微結晶シリコン膜が堆積される。
【0065】
その膜厚分布は、空洞共振器1内部の電界分布If(x)、即ち次式に比例した形となる。
If(x)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0066】
上述のように、実施例1によれば、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び干渉波は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、インピーダンスの整合において、第1の整合器32a及び第2の整合器32bのそれぞれのリアクタンス(LとC)を調整は、時間をずらして別々に行うので、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)の影響はない。
第1の整合器32a及び第2の整合器32bを同時に用いる場合においても、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)は第1及び第2の無反射終端器52a、52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、それぞれの干渉波の影響はない。
したがって、本実施例では、従来の技術では問題視される電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)問題及びインピーダンス整合の不適合の問題は、解消される。
また、プラズマの強さが波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
したがって、基板サイズが大面積であっても製膜される膜の厚み分布は一様になる。
【0067】
(実施例2)
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理装置を用いたシリコン系膜の製造方法を図10〜図11を参照して説明する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
図10は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な説明図(基板処理室と空洞共振器の断面図、高周波電力供給手段のブロック図)である。図11は本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成部材を示す模式的な説明図で、電力導入部を示す断面図である。
なお、本実施例ではプラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0068】
先ず、電力供給系の構成を、図10及び図11を参照して説明する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
図10及び図11において、符番70a、符番71a、符番72a、符番73a、符番70b、符番71b、符番72b、及び符番73b以外は、実施例1で示した図1〜図9と同じである。装置構成部材の中で実施例1と同じものは説明を省略する。
【0069】
符番70a、符番71a、符番72a及び符番73aは、それぞれ、第1の検知用アンテナ、第3の電流導入端子、同軸ケーブル、及び第1の電波検知装置である。第1の検知用アンテナ70aは空洞共振器1の中心軸上の一方の端部に、例えば第1のアンテナに近い位置に設置される。第3の電流導入端子71aは図6図示の第1の電流導入端子と同様の構造を有する。第1の電波検知装置は第1の検知用アンテナ70aが受信した電波の信号を検知し、表示する。
第1の検知用アンテナ70a、第3の電流導入端子71a、同軸ケーブル72a、及び第1の電波検知装置73aは、組み合わせて用いることにより、後述の第2の整合器32bの調整に用いられる。
【0070】
符番70b、符番71b、符番72b及び符番73bは、それぞれ、第2の検知用アンテナ、第4の電流導入端子、同軸ケーブル、及び第2の電波検知装置である。第2の検知用アンテナ70bは空洞共振器1の中心軸上の他方の端部に、例えば第2のアンテナに近い位置に設置される。第4の電流導入端子71bは図6図示の第1の電流導入端子と同様の構造を有する。第2の電波検知装置は第2の検知用アンテナ70bが受信した電波の信号を検知し、表示する。
第2の検知用アンテナ70b、第4の電流導入端子71b、同軸ケーブル72b、及び第2の電波検知装置73bは、組み合わせて用いることにより、後述の第1の整合器32aの調整に用いられる。
【0071】
次に、上述のプラズマ表面処理装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。図10、図11を参照する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
【0072】
図10において、予め、基板9を基板保持台10に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、空洞共振器1及び基板処理室4内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源から不活性ガス供給管11及び不活性ガス噴出孔3を介して水素(H2)ガスを噴出させるとともに、シランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを反応性ガス供給管12及び反応性ガス噴出孔13を介して基板処理室4内に噴出させる。
不活性ガス噴出孔3から噴出させる水素(H2)の流量は、1〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5SLMとする。反応性ガス噴出孔13から噴出させる混合ガスは、混合比を水素(H2)/シランガス(SiH4)=10/1〜1/1の範囲、例えば、2/1とし、混合ガスの流量を、2〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5.0 SLMを供給する。空洞共振器1及び基板処理室4内部の圧力は、133.3〜533.2Pa(1〜4Torr)の範囲、例えば、133.3Pa(1Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板9のサイズは、基板保持台10のサイズに合わせて、長さ1mx幅40cm(厚み4mm)とする。
【0073】
次に、高周波電源20の出力を上記第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給するのであるが、以下に示す手順で行う。図10及び図11を参照する。また、なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
【0074】
第1のステップ(第1の工程):高周波電源20と第1のアンテナ2aとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)高周波電源の第1の出力20aを所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。その周波数を選定し、例えば70MHzとし、パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、高周波電源20の第1の出力20aの所要電力の10%〜40%、例えば1KWとし、その出力20aを同軸ケーブル21a、第1の整合器32a、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル23a、第1の電流導入端子25aを介して第1のアンテナ2aに供給する。ただし、第2の出力20bはゼロに保持しておく。
(2)第1のアンテナ2aからの反射波Wa(11)を第1の検出器54aで検出し、検出された電力値が最小になるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整するとともに、第2の検知用アンテナ70aを介して第2の電波検知装置73bで検出された電力値が最大となるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。即ち、第1の検出器54a及び第2の電波検知装置73bで検知した電力値を利用して、第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。
(3)第1の整合器32aはこの調整された状態を保持する。
【0075】
第2のステップ(第2の工程):高周波電源20と第2のアンテナ2bとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)高周波電源の第2の出力20bを所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数を上記第1ステップと同じく70MHzとし、パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、高周波電源20の第1の出力20aの所要電力の10%〜40%、例えば1KWとし、その出力20aを同軸ケーブル21a、第1の整合器32a、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル23a、第1の電流導入端子25aを介して第1のアンテナ2aに供給する。ただし、第1の出力20aはゼロに保持しておく。
(2)第2のアンテナ2bからの反射波Wb(11)を第2の検出器54bで検出し、検出された電力値が最小になるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整するとともに、第1の検知用アンテナ70bを介して第1の電波検知装置73aで検出された電力値が最大となるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。即ち、第2の検出器54b及び第1の電波検知装置73aで検知した電力値を利用して、第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。
(3)第2の整合器32bはこの調整された状態を保持する。
【0076】
第3のステップ(第3の工程):次の手順により、高周波電源20の第1及び第2の出力20a、20bを所定の値に調整して、その出力をそれぞれ第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給する。
(1)高周波電源の第1及び第2の出力20a、20bをパルス変調し、その出力を所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数を第1及び第2のステップと同じ周波数とする。例えば70MHzとする。
(2)先ず、第1のパルス電力として、次の設定を行う。パルス幅Hwを10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧(正弦波)の位相差をゼロ度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差が零度に設定されたパルス変調された第1及び第2の出力を、第1のパルス電力と呼ぶ。
(3)次に、第2のパルス電力として、次の設定を行う。第1のパルス電力と異なる時間帯にパルス電力を出力させる。パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差を180度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、この位相差が180度に設定されてパルス変調された第1及び第2の出力を第2のパルス電力と呼ぶ。
(4)第1及び第2のパルス電力のパルス立ち上がり時間をパルス周期Toの半分の時間、例えば、0.75m秒ずらす。これにより、第1及び第2のパルス電力を時間的に交互に供給することが可能となる。
(5)高周波電源20の出力を所要の電力値に、例えば、第1及び第2のパルス電力をそれぞれ、3KWに設定する。
【0077】
ところで、上記第1のパルス電力が第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給されると、アンテナ2a、2bから電力波が放射される。その様子を模式的に図8に示す。
第1及び第2のアンテナ2a、2bからパルス状に供給される電力の電圧波は、同一電源から発振され、互いに空洞共振器1内部を伝播していくので、すなわち、両者は互いに向かい合った方向から伝播しあって重なり合うので、干渉現象が発生する。
図8において、第1のアンテナ2a側から第2のアンテナ2bの方向の距離をxとし、xの正方向へ伝播する電圧波をWa(x、t)、xの負方向へ伝播する電圧波、即ち第2のアンテナ2b側から第1のアンテナ2aの方向へ伝播する電圧波をWb(x,t)とすると、次のように表現される。
Wa(x、t)=V・sin(ωt+2πx/λ)
Wb(x、t)=V・sin{ωt−2π(x−L)/λ+Δθ}
ただし、Vは電圧波の振幅、ωは電圧の角周波数、λは電圧波の波長、tは時間、Lは第1及び第2のアンテナの間隔、Δθは第1のアンテナから放出される電力の電圧波と第2のアンテナから放出される電力の電圧波の位相差である。この2つの電圧波の合成波W(x、t)は次式のようになる。
(x、t)=Wa(x、t)+Wb(x、t)
=2・Vcos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}・sin{ωt+(πL/λ+Δθ/2)
上記合成波W(x、t)は、次に示すような性質を有する。即ち、Δθ=0の場合、生成されるプラズマの強さは2つのアンテナ間の中央部(x=L/2)が強く、該中央部から離れるにしたがって弱くなる。Δθ>0の場合、プラズマの強い部分が一方の給電点側へ移動し、Δθ<0の場合、他方の給電点側へ移動する。
電力の強さは、電界の二乗に比例する。これは電圧波の振幅値の二乗に比例する、という意味である。即ち、電力の強さI(x、t)は、
(x、t)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=I(x)・・・時間的に変動しない。
と表される。
【0078】
上記第3のステップにおいて、第1及び第2のアンテナ2a、2bから、第1のパルス電力(位相差=零度)と第2のパルス電力(位相差=180度)が異なる時間帯に交互に放射されるので、空洞共振器1内部の電力の強さはその2つの電力が重畳される。
即ち、第1のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わし、第2のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わすと、次のようになる。
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ}
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ−90°}
=sin{2π(x−L/2)/λ}
この電力の強さI(x)及びI(x)を模式的に図9に示す。
空洞共振器1内部の電力の強さI(x、t)は第1及び第2のパルス電力の周期より長い時間で見ると、次式で表わされるように、波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
プラズマの強さは電力の強さに比例するので、空洞共振器1内部のプラズマの強さは一様となる、ということを示している。
また、上式は、第1及び第2のパルス電力の位相差の設定において、±5度程度のずれが生じても、空洞共振器1内部の電力の強さ、即ち、プラズマの強さはほぼ一様となることを示している。
【0079】
上記第3のステップでの第1のパルス電力及び第2のパルス電力で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板9に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
ここで、不活性ガス噴出孔3から噴出する水素(H2)及び反応性ガス噴出孔13から噴出するシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスのプラズマ化及びラデイカル種の生成について説明する。
空洞共振器1の上面に位置する不活性ガス噴出孔3から噴出した水素(H2)は第1及び第2のパルス電力でプラズマ化される。水素(H2)がプラズマ化されると、化学的に活性の励起状態の水素(H2)が多量生成され、そして、H→H+Hの反応が起こり、多量の原子状Hが生成される。その結果、空洞共振器1に生成された多量の化学的に活性の励起状態の水素(H2)と多量の原子状Hは、貫通孔7から基板処理室4に拡散し、基板処理室4に流入する。
基板処理室4の上面には、第1のパルス電力及び第2のパルス電力の貫通孔7から漏れによる電界が発生している。この電界の強さは貫通孔7の大きさに影響されるが、水素(H2)やシランガス(SiHより)をプラズマ化するには十分な強さである。なお、本実施例では、貫通孔7のサイズは5mmx5mm程度である。
基板処理室4の上面に位置する反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスがプラズマ化されると、SiH→H+SiHの反応が起こる。この反応は、プラズマが強い場合、ジシラン(SiH+SiH→Si)やトリシラン(SiH+Si→Si)等のダスト(パウダー)が形成されるが、プラズマが弱く、かつ、大量の原子状Hがあれば、SiH→H+SiH、及びH+SiH→H+SiHの反応が起こり易い。なお、プラズマでの電子エネルギーが8.75eV以上であればSiHが生成され、9.47eV以上であればSiHが生成されることが、一般に知られている。
基板処理室4上面近傍において、貫通孔7から流入する大量の原子状H及び反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスのプラズマ化によって、基板9に微結晶シリコン膜が堆積される。
【0080】
その膜厚分布は、空洞共振器1内部の電界分布If(x)、即ち次式に比例した形となる。
If(x)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0081】
上述のように、実施例2によれば、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び干渉波は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、インピーダンスの整合において、第1の整合器32a及び第2の整合器32bのそれぞれのリアクタンス(LとC)を調整は、時間をずらして別々に行うので、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)の影響はない。
第1の整合器32a及び第2の整合器32bを同時に用いる場合においても、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)は第1及び第2の無反射終端器52a、52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、それぞれの干渉波の影響はない。
したがって、本実施例では、従来の技術では問題視される電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)問題及びインピーダンス整合の不適合の問題は、解消される。
また、プラズマの強さが波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
したがって、基板サイズが大面積であっても製膜される膜の厚み分布は一様になる。
【0082】
(実施例3)
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理装置を用いたシリコン系膜の製造方法を図12〜図14を参照して説明する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
図12は本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置の構成を示す模式的な外観図である。図13は図12のA−A線の断面図であり、基板処理室と空洞共振器の説明図である。図14は図12のB−B線の断面図であり、基板処理室と空洞共振器の説明図である。
なお、本実施例ではプラズマを利用した製膜装置、即ち、プラズマCVD装置を説明しているので、放電用ガスにシラン(SiH4)及び水素(H2)を用いているが、プラズマを利用したエッチング装置、即ち、プラズマエッチング装置の場合には、放電用ガスにエッチング用ガス、例えば、塩素(Cl2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)などが用いられる。また、プラズマによるスパッタ装置の場合には、Ar、N2、O2などが用いられる。
【0083】
先ず、装置の構成について、図12〜図14を参照して説明する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
図12〜図14において、符番60、符番61、及び符番62以外は、実施例1で示した図1〜図9と同じである。装置構成部材の中で実施例1と同じものは説明を省略する。
【0084】
符番61はリッジである。リッジ61は長辺aと短辺bを有する矩形導波管の長辺aに設けられ、該矩形導波管の中央部分の間隙を短辺b側に比べて短くする。
符番60はリッジを有する導波管である。一般に、リッジを有する導波管は電力を送信する能力がリッジの無い導波管に比べて増大するということが、知られている。リッジを有する導波管60は中心軸に直交した面での断面形状が図14に示されているように、H型をしている。そして、中央部分(Hの横棒に相当する部分)の上面と下面の間隙dと両端部(Hの縦棒に相当する部分)の間隙dはほぼ同じである。ここでは、1cm〜30cm程度の範囲で、例えば3cmとする。
リッジを有する導波管60の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にはそれぞれ第1のアンテナ2a及び第2のアンテナ2bが設置されている。
リッジを有する導波管60の上面8には不活性ガスを噴出する不活性ガス噴出孔3が設置されている。また、リッジを有する導波管60の下面6には、該下面6と基板処理室4の壁(ここでは基板処理室の上面5と呼ぶ)を貫通する貫通孔7が多数設置されている。
なお、この貫通孔7はリッジを有する導波管60内部で生成される電界の一部分を基板処理室の上面5に漏洩させるという作用を有する。
リッジを有する導波管60の材料はアルミニウム、アルミニウム系合金、あるいはSUS等の金属で、例えばアルミニウムである。サイズは、使用する電力の波長に依存するが、例えば、外寸法で、長さ2mx幅0.6mx高さ5cm(幅方向の両端部での高さ60cmとする。また、リッジを有する導波管60の壁外部には図示しない冷媒を通すパイプが設置されており、空洞共振器1の温度を制御することが可能である。
符番62はリッジ連結部である。リッジ連結部62は、リッジを有する導波管60を備えた空洞共振1器の中心軸両端部とリッジを接続する部分である。ここでは、リッジ連結部62を曲線的にしているが、階段状に接続しても良い。
【0085】
次に、上述のプラズマ表面処理装置を用いて、微結晶シリコン膜を製膜する方法を説明する。図10、図11を参照する。なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
【0086】
図13及び図14において、予め、基板9を基板保持台10に設置し、図示しない真空ポンプを稼動させ、空洞共振器1及び基板処理室4内の空気及び不純物ガス等を除去した後、放電用ガス供給源から不活性ガス供給管11及び不活性ガス噴出孔3を介して水素(H2)ガスを噴出させるとともに、シランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスを反応性ガス供給管12及び反応性ガス噴出孔13を介して基板処理室4内に噴出させる。
不活性ガス噴出孔3から噴出させる水素(H2)の流量は、1〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5SLMとする。反応性ガス噴出孔13から噴出させる混合ガスは、混合比を水素(H2)/シランガス(SiH4)=10/1〜1/1の範囲、例えば、2/1とし、混合ガスの流量を、2〜10SLM(標準状態換算でのガス流量:L/分)の範囲で、例えば5.0 SLMを供給する。空洞共振器1及び基板処理室4内部の圧力は、133.3〜533.2Pa(1〜4Torr)の範囲、例えば、133.3Pa(1Torr)に維持する。基板温度は100〜350℃の範囲、例えば220℃に保持する。
なお、基板9のサイズは、基板保持台10のサイズに合わせて、長さ1mx幅40cm(厚み4mm)とする。
【0087】
次に、高周波電源20の出力を、以下に示す手順で、第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給する。図13及び図14を参照する。また、なお、実施例1で示した図1〜図9も参照する。
【0088】
第1のステップ(第1の工程):高周波電源20と第1のアンテナ2aとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bの接続を遮断する(第2の3端子サーキュレータ50bに接続された同軸ケーブル22bを引き抜く)。
(2)高周波電源の第1の出力20aの周波数を選定し、例えば70MHzとし、その出力20aの所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、その出力20aを同軸ケーブル21a、第1の整合器32a、第1の3端子サーキュレータ50a、同軸ケーブル23a、第1の電流導入端子25aを介して第1のアンテナ2aに供給する。
ただし、第2の出力20bはゼロに保持しておく。
(3)第1のアンテナ2aからの反射波Wa(11)を第1の検出器54aで検出し、検出された電力値が最小になるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整するとともに、第2の電力検出器54bで検出された電力値が最大となるように第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。即ち、第2の整合器32bと第2のサーキュレータ50bの接続を遮断した状態で、第1の電力検出器54aで検出される電力値が最小で、かつ、第2の電力検出器54bで検出される電力値が最大となるように、第1の整合器32aのリアクタンスを調整する。
(4)第1の整合器32aは、この調整された状態を保持する。
(5)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bを接続する。
【0089】
第2のステップ(第2の工程):高周波電源20と第2のアンテナ2bとのインピーダンスの整合を次のように行う。
(1)第1の整合器32aと第1の3端子サーキュレータ50aの接続を遮断する(第1の3端子サーキュレータ50aに接続された同軸ケーブル22aを引き抜く)。
(2)高周波電源の第2の出力20bを所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数は上記ステップ1と同じとし、パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=1m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とし、同軸ケーブル21b、第2の整合器32b、第2の3端子サーキュレータ50b、同軸ケーブル23b、第2の電流導入端子25bを介して第2のアンテナ2bに供給する。ただし、第1の出力20aはゼロに保持しておく。
(3)第2のアンテナ2bからの反射波Wb(11)を第2の検出器54bで検出し、検出された電力値が最小になるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整するとともに、第1の電力検出器54aで検出された電力値が最大となるように第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。即ち、第1の整合器32aと第1のサーキュレータ50aの接続を遮断した状態で、第2の電力検出器54bで検出される電力値が最小で、かつ、第1の電力検出器54aで検出される電力値が最大となるように、第2の整合器32bのリアクタンスを調整する。
(4)第2の整合器32bは、この調整された状態を保持する。
(5)第2の整合器32bと第2の3端子サーキュレータ50bを接続する。
【0090】
第3のステップ(第3の工程):次の手順により、高周波電源20の第1及び第2の出力20a、20bを所定の値に調整して、その出力をそれぞれ第1及び第2のアンテナ2a、2bに供給する。
(1)高周波電源の第1及び第2の出力20a、20bをパルス変調し、その出力を所要電力の10%〜40%程度、例えば1KWとする。周波数を第1及び第2のステップと同じ周波数とする。例えば70MHzとする。
(2)先ず、第1のパルス電力として、次の設定を行う。パルス幅Hwを10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧(正弦波)の位相差をゼロ度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差が零度に設定されたパルス変調された第1及び第2の出力を、第1のパルス電力と呼ぶ。
(3)次に、第2のパルス電力として、次の設定を行う。第1のパルス電力と異なる時間帯にパルス電力を出力させる。パルス幅Hwは10μ〜1000m秒の範囲、例えばHw=0.5m秒、パルス周期Toは2m秒〜0.1m秒(繰り返し周波数500Hz〜10KHz)の範囲、例えばTo=1.5m秒とする。そして、第1及び第2の出力20a、20bの電圧の位相差を180度に設定する。(位相差の設定は、好ましくは、第1及び第2の電流導入端子25a、25bでの電圧の位相をモニターして、設定する)。
ここで、この位相差が180度に設定されてパルス変調された第1及び第2の出力を第2のパルス電力と呼ぶ。
(4)第1及び第2のパルス電力のパルス立ち上がり時間をパルス周期Toの半分の時間、例えば、0.75m秒ずらす。これにより、第1及び第2のパルス電力を時間的に交互に供給することが可能である。
(5)高周波電源20の出力を所要の電力値に、例えば、第1及び第2のパルス電力をそれぞれ、5KWに設定する。なお、実施例3では、実施例1及び2の場合に比べて、リッジを有する導波管61の作用により、供給電力を増大できる。
【0091】
上記第3のステップにおいて、実施例1及び2の場合と同様に、第1及び第2のアンテナ2a、2bから、第1のパルス電力(位相差=零度)と第2のパルス電力(位相差=180度)が時間的に交互に放射されるので、空洞共振器1内部の電力の強さはその2つの電力が重畳される。
即ち、第1のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わし、第2のパルス電力での空洞共振器1内部の電力の強さをI(x)と表わすと、次のようになる。
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ}
(x)∝cos{2π(x−L/2)/λ−Δθ/2}
=cos{2π(x−L/2)/λ−90°}
=sin{2π(x−L/2)/λ}
この電力の強さI(x)及びI(x)を模式的に図9に示す。
空洞共振器1内部の電力の強さI(x、t)は第1及び第2のパルス電力の周期より長い時間で見ると、次式で表わされるように、波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
プラズマの強さは電力の強さに比例するので、空洞共振器1内部のプラズマの強さは一様となる、ということを示している。
また、上式は、第1及び第2のパルス電力の位相差の設定において、±5度程度のずれが生じても、空洞共振器1内部の電力の強さ、即ち、プラズマの強さはほぼ一様となることを示している。
【0092】
上記第3のステップでの第1のパルス電力及び第2のパルス電力で、10〜20分程度の時間、プラズマを生成すると、基板9に微結晶シリコン膜が堆積する。なお、シランガスの他に大量の水素ガスが供給されるので、得られる膜はアモルファスSiではなく、微結晶膜になる。
ここで、不活性ガス噴出孔3から噴出する水素(H2)及び反応性ガス噴出孔13から噴出するシランガス(SiH4)と水素(H2)の混合ガスのプラズマ化及びラデイカル種の生成について説明する。
空洞共振器1の上面に位置する不活性ガス噴出孔3から噴出した水素(H2)は第1及び第2のパルス電力でプラズマ化される。水素(H2)がプラズマ化されると、化学的に活性の励起状態の水素(H2)が多量生成され、そして、H→H+Hの反応が起こり、多量の原子状Hが生成される。その結果、空洞共振器1に生成された多量の化学的に活性の励起状態の水素(H2)と多量の原子状Hは、貫通孔7から基板処理室4に拡散し、基板処理室4に流入する。
基板処理室4の上面には、第1のパルス電力及び第2のパルス電力の貫通孔7から漏れによる電界が発生している。この電界の強さは貫通孔7の大きさに影響されるが、水素(H2)やシランガス(SiHより)をプラズマ化するには十分な強さである。なお、本実施例では、貫通孔7のサイズは5mmx5mm程度である。
基板処理室4の上面に位置する反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスがプラズマ化されると、SiH→H+SiHの反応が起こる。この反応は、プラズマが強い場合、ジシラン(SiH+SiH→Si)やトリシラン(SiH+Si→Si)等のダスト(パウダー)が形成されるが、プラズマが弱く、かつ、大量の原子状Hがあれば、SiH→H+SiH、及びH+SiH→H+SiHの反応が起こり易い。なお、プラズマでの電子エネルギーが8.75eV以上であればSiHが生成され、9.47eV以上であればSiHが生成されることが、一般に知られている。
基板処理室4上面近傍において、貫通孔7から流入する大量の原子状H及び反応性ガス噴出孔13から噴出するSiHガスのプラズマ化によって、基板9に微結晶シリコン膜が堆積される。
【0093】
その膜厚分布は、空洞共振器1内部の電界分布If(x)、即ち次式に比例した形となる。
If(x)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
ただし、I(x)は膜の厚み、xは基板中央からその周辺方向への距離、λは使用電力の波長(プラズマ中での波長)である。
結晶化率の測定には、ラマンスペクトル分析器を用い、膜中の結晶Siピーク(517cm−1)IcとアモルファスSiピーク(470〜480cm−1)Iaを求めて、結晶化率(%)=100xIc/(Ia+Ic)と定義し、評価される。
【0094】
上述のように、実施例1によれば、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bの上流側に上記供給電力の反射波及び干渉波は戻らない。その結果、電力供給の流れで見て、第1及び第2の3端子サーキュレータ50a、50bより上流側の電力電送線路には反射波及び干渉波が戻らないので、従来の装置で起こる焼損(破損)問題は発生しない。
また、インピーダンスの整合において、第1の整合器32a及び第2の整合器32bのそれぞれのリアクタンス(LとC)を調整は、時間をずらして別々に行うので、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)の影響はない。
第1の整合器32a及び第2の整合器32bを同時に用いる場合においても、それぞれの干渉波、即ち、上記のWb(12)及びWa(12)は第1及び第2の無反射終端器52a、52b内部の電気抵抗で消費、吸収される。その結果、それぞれの干渉波の影響はない。
したがって、本実施例では、従来の技術では問題視される電力供給線路での定在波の発生に起因する装置の破損(焼損)問題及びインピーダンス整合の不適合の問題は、解消される。
また、プラズマの強さが波長λに影響されず、時間的、空間的に一定になる。
I(x、t)
∝cos{2π(x−L/2)/λ}+sin{2π(x−L/2)/λ}
=1(一定)
したがって、基板サイズが大面積であっても製膜される膜の厚み分布は一様になる。
【0095】
(実施例4)
本発明の第4の実施形態に係わるプラズマ表面処理装置及びプラズマ表面処理装置を用いたシリコン系膜の製造方法を説明する。
実施例1〜3では、図2、図10及び図13に示すように、基板製膜室4は基板9を固定して製膜する方法を説明した。
実施例4では、図示しない基板搬送装置を用いて、空洞共振器1あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器60の中心軸に直交する方向に基板を動かしながら製膜を行う。基板を動かしながら製膜を行う方法及び装置は、プラズマ発生源を除いて、特に困難な技術的問題はない。
図2、あるいは、図10、あるいは図13における基板処理室4に、空洞共振器1の軸芯に直交する方向に基板9を移動することが出来る図示ない基板搬送装置を設置する。そして、基板9を動かしながら実施例1〜3で説明した方法と同様な方法で基板に処理を行う。
この方法では、基板の移動方向における基板寸法に制限がないので、基板形状が長尺の板状の場合でも、ロール状のフイルム状の場合でも、特に問題なく、プラズマ処理が行える、という応用上のメリットがある。
【符号の説明】
【0096】
1・・・空洞共振器、
1a・・・矩形導波管、
1aa、1ab・・・第1及び第2の電力導入部、
2a、2b・・・第1及び第2のアンテナ、
3・・・不活性ガス噴出孔、
4・・・基板処理室、
7・・・貫通孔、
9・・・基板、
10・・・基板保持台、
13・・・反応ガス噴出孔、
25a、25b・・・第1及び第2の電流導入端子、
20・・・高周波電源、
32a、32b・・・第1及び第2の整合器、
50a、50b・・・第1及び第2の3端子サーキュレータ、
52a、52b・・・第1及び第2の無反射終端器、
53a、53b・・・第1及び第2の方向性結合器、
54a、54b・・・第1及び第2の電力検知器、
60・・・リッジを有する導波管、
61・・・リッジ、
70a、70b・・・第1及び第2の検知用アンテナ、
73a73b・・・第1及び第2の電波検知装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスをそれぞれ整合する第1及び第2の整合器と、を具備したプラズマ表面処理装置を用いて、基板の表面をプラズマ処理するプラズマ表面処理方法において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ表面処理方法において、前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるとともに、
前記第1の3端子サーキュレータと前記第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器を配置し、前記第2の3端子サーキュレータと前記第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器を配置するとともに、該第1の電力検知器で検知される電力値及び第2の電力検知器で検知される電力値がそれぞれ最小値となるように、前記第1及び第2の整合器のリアクタンスをそれぞれに調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項3】
請求項1あるいは2のいずれか一つに記載のプラズマ表面処理方法において、前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ、第1及び第2の3端子サーキュレータを配置し、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ電力を供給し、該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を該第1及び第2の3端子サーキュレータにそれぞれに接続された第1及び第2の無反射終端器で消費させるとともに、
前記空洞共振器の中心軸上の前記第1のアンテナ側の端部に第1の電波検知装置を配置し、前記空洞共振器の中心軸上の前記第2のアンテナ側の端部に第2の電波検知装置を配置して、該第1の電波検知装置で検知される電波の強さ及び該第2の電波検知装置で検知される電波の強さが最大値となり、かつ、前記第1の電力検知器で検知される電力値及び前記第2の電力検知器で検知される電力値とが最小値となるように、前記第1及び第2の整合器のリアクタンスをそれぞれに調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第1のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項5】
請求項2に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第2のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項6】
請求項3に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第1のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第2の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項7】
請求項3に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源と前記第2のアンテナとのインピーダンスの整合を取るに際し、前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータの接続を遮断した状態において、前記第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、前記第1の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項8】
請求項2に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源の出力を前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータと前記第1のアンテナから成る第1の電力供給手段と、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータと前記第2のアンテナから成る第2の電力供給手段を用いて前記空洞共振器に供給するに際し、
該第2の整合器と該第2のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第2の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するという第1の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第1の電力検出器で検出される電力値が最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するという第2の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータを接続し、該第2の整合器と該第2のサーキュレータを接続し、該第1の工程及び該第2の工程で選定された該第1及び第2の整合器のリアクタンスを維持しつつ、該高周波電源の出力が該第1及び第2のアンテナから該空洞共振器へ供給されるという第3の工程と、から成ることを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項9】
請求項3に記載のプラズマ表面処理方法において、前記高周波電源の出力を前記第1の整合器と前記第1のサーキュレータと前記第1のアンテナから成る第1の電力供給手段と、前記第2の整合器と前記第2のサーキュレータと前記第2のアンテナから成る第2の電力供給手段を用いて前記空洞共振器に供給するに際し、
該第2の整合器と該第2のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第1の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第2の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第1の整合器のリアクタンスを調整するという第1の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータの接続を遮断した状態で、該第2の電力検出器で検出される電力値が最小で、かつ、該第1の電波検知装置で検出される電波の強さが最大となるように、該第2の整合器のリアクタンスを調整するという第2の工程と、
該第1の整合器と該第1のサーキュレータを接続し、該第2の整合器と該第2のサーキュレータを接続し、該第1の工程及び該第2の工程で選定された該第1及び第2の整合器のリアクタンスを維持しつつ、該高周波電源の出力が該第1及び第2のアンテナから該空洞共振器へ供給されるという第3の工程と、から成ることを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載のプラズマ表面処理方法において、
前記第1及び第2のアンテナに供給される電力の電圧の位相差が零度である同相状態と、該第1及び第2のアンテナに供給される電力の電圧の位相差が180度である逆相状態とを、時間的に交互に発生させるようにしたことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項11】
プラズマを利用して気密性を有する反応容器に配置された基板の表面をプラズマ処理するプラズマ表面処理装置において、
矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、
該空洞共振器にアンテナを介して高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
排気系に接続された排気孔を有し、基板が載置される基板保持手段を備えた基板処理室と、を備え、
該基板処理室が該空洞共振器に連結して設置され、該空洞共振器と該基板処理室を貫通する貫通孔を設置するとともに、該空洞共振器の壁に不活性ガスを噴出する不活性ガス噴出手段を配置し、該基板処理室側の該貫通孔の近傍に反応性ガスあるいは反応性ガスと不活性ガスを含む複数種類のガスの混合ガスを噴出する反応性ガス噴出手段を配置したことを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項12】
矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスを整合する第1及び第2の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ第1及び第2の3端子サーキュレータが配置され、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ前記高周波電源の出力電力が供給され、
該第1及び第2の3端子サーキュレータに該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる第1及び第2の無反射終端器がそれぞれ接続されるとともに、
該第1のアンテナと該第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器が設置され、
該第2のアンテナと該第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器が設置されるという構造を有することを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項13】
矩形導波管あるいはリッジを有する導波管を備えた空洞共振器と、基板が載置される基板保持手段を備え、該空洞共振器に連結して設置される基板処理室と、該空洞共振器と該基板処理室の排気を行う排気装置と、該空洞共振器と該基板処理室に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置と、該空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置される第1及び第2のアンテナと、該第1及び第2のアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、該高周波電源から該第1及び第2のアンテナに供給された電力の反射波を遮断するサーキュレータと、該高周波電源と該第1及び第2のアンテナとのインピーダンスを整合する第1及び第2の整合器と、を具備し、生成されたプラズマを利用して基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、
前記第1の整合器と前記第1のアンテナの間及び前記第2の整合器と前記第2のアンテナの間にそれぞれ第1及び第2の3端子サーキュレータを配置されて、該第1及び第2の3端子サーキュレータを介して該第1及び第2のアンテナにそれぞれ前記高周波電源の出力電力が供給され、
該第1及び第2の3端子サーキュレータに該第1及び第2のアンテナからの反射波あるいは該反射波と同じ方向に伝播する電力を消費させる第1及び第2の無反射終端器がそれぞれ接続されるとともに
該第1のアンテナと該第1の無反射終端器の間に第1の電力検知器が設置され、該第2のアンテナと該第2の無反射終端器の間に第2の電力検知器が設置され、
前記空洞共振器の中心軸上の該第1のアンテナ側の端部に電波の強さを検知する第1の電波検知装置が設置され、該空洞共振器の中心軸上の該第2のアンテナ側の端部に電波の強さを検知する第2の電波検知装置が設置されるという構造を有することを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか一つに記載のプラズマ表面処理装置において、
前記高周波電源は前記空洞共振器の中心軸上の一方の端部及び他方の端部にそれぞれ設置された第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相を調整する移相器を備え、前記第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相が同相である同相状態と、該前記第1及び第2のアンテナに供給される高周波電力の電圧の位相が180度である逆相状態の2つの状態を時間的に交互に切り替えるようにしたこと特徴とするプラズマ表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−212921(P2012−212921A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−144107(P2012−144107)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(303034908)
【Fターム(参考)】