説明

プロセスチャンバのクリーニング

本発明は、プラズマプロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材をクリーニングガスによりクリーニングする方法であって、クリーニングガスがフッ素ガスを含み、プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、プラズマ処理、特に1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のためにプラズマを発生させるために有している、プラズマプロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材をクリーニングガスによりクリーニングする方法において、内部領域にガス状のフッ素化合物を5mbarより大の分圧で作用させることを特徴とする。プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材をクリーニングガスによりクリーニングする別の方法であって、クリーニングガスがフッ素ガスを含み、プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、特に1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のためにプラズマを発生させるために有している、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材をクリーニングガスによりクリーニングする方法において、温度調整手段により、フッ素ガスを熱活性化し、クリーニングしたい部材が<350℃の温度を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のそれぞれの上位概念部に記載の方法及びプロセスチャンバ、すなわち、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法であって、クリーニングガスがフッ素ガスを含み、プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、基板のプラズマ処理、特に1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のためにプラズマを発生させるために有している、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法、及びこの方法を実施するために調整かつ指定された、基板をプラズマ処理するためのプラズマを発生させる少なくとも1つの電極及び対応電極を備えるプロセスチャンバに関する。
【0002】
電子的又は光電子的な用途のための基板、例えば半導体素子又はソーラーセルは、好ましくはPVD法(physical vapor deposition)、CVD法(chemical vapor deposition)又はPECVD法(plasma enhanced chemical vapor deposition)によりプロセスチャンバ内で処理される。プロセスチャンバ内には、反応ガスが導入され、基板上に析出される。
【0003】
国際公開第2009/0033552号パンフレットにおいて、大面積の基板をプラズマコーティングするための処理システムが公知である。この公知の処理システムにおいて、基板表面の大きさは1m以上である場合がある。プラズマは、プロセスチャンバ内で電極と対応電極との間に形成される。電極と対応電極との間に、処理したい基板が装入されている。電極に組み込まれたガスシャワーを介して反応ガスが供給される。ガスシャワーは、多数の流出開口を備えるガスシャワー流出プレートを有している。これにより、反応ガスは均等にプロセスチャンバに導入される。
【0004】
プラズマ析出のコーティング速度及びコーティング品質は、複数のプロセスパラメータ、特に反応ガスの圧力、流動及び組成、プラズマ励起の出力密度及び周波数、基板温度、並びに電極と対応電極との間の間隔あるいは基板表面とそれぞれの対応電極との間の間隔に依存している。
【0005】
このコーティング法における欠点は、反応ガスが基板に堆積するだけでなく、その際にプロセスチャンバの部分領域もコーティングしてしまうことにある。プロセスチャンバのコーティングは、コーティングからパーティクルが分離して、基板の汚損に至らしめる場合がある。基板のこの種の汚損が発生すると、コーティングにおける品質低下を覚悟しなければならない。
【0006】
それゆえ、プロセスチャンバのコーティングをクリーニングすることが重要である。このために、クリーニングガス、好ましくはエッチング性のクリーニングガスが、プロセスチャンバに供給される。クリーニングガスは、コンタミネーション、つまり汚染が生じた面をクリーニングする。クリーニング自体の間、かつクリーニング後の所定の時間の間、真空チャンバ内でのコーティングは不可能であるので、このクリーニングを可及的迅速に実施することが望ましい。
【0007】
従来技術において、主に2つのクリーニング法が公知である。インサイチュ型のクリーニング(in−situ Reinigen)では、クリーニングガスが直接プロセスチャンバ内で励起される一方、リモートプラズマクリーニング(Remote−Plasma−Reinigen)では、クリーニングガスの励起が外部の装置で実施され、励起されたクリーニングガスが低圧でプロセスチャンバ内に供給される。
【0008】
クリーニングガスとして、現在、主に三フッ化窒素NFが使用される。三フッ化窒素の励起を介して提供されるフッ素種あるいはフッ素ラジカルは、ソーラーセルのコーティングのために使用されるケイ素化合物、例えば二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を、コンタミネーションが生じた面から分離することができる。しかし、三フッ化窒素は、環境に有害なガスであり、温室効果ガスとして働き、大気中における数百年の半減期を有している。加えて、三フッ化窒素は、近年需要が急増しているので、極めて高価である。
【0009】
三フッ素窒素の代替として、従来技術では、別のフッ素ガス混合物、例えば四フッ化メタンCF、六フッ化硫黄SF、又はアルゴン、窒素及びフッ素の混合物Ar/N/Fを使用することが提案されている。特に、欧州特許出願公開第1138802号明細書において、フッ素分子に関して少なくとも50体積%の含有量を有するクリーニングガスを使用することが公知であり、370mT〜450mTのチャンバ圧において、チャンバ、又は少なくともチャンバ内のクリーニングしたい対象物が、約450℃の昇温された温度にもたらされる。
【0010】
本発明の課題は、三フッ化窒素を使用せずとも、急速かつ効果的なクリーニングを可能にする、プロセスチャンバ内室の部材表面のクリーニングを提供することである。
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。好ましい形態は、従属請求項に係る発明である。すなわち、本発明に係る、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法は、前記クリーニングガスがフッ素ガスを含み、前記プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、基板のプラズマ処理、特に1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のためにプラズマを発生させるために有している、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法において、クリーニングしたい部材にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させ、かつ/又はフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、かつクリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整することを特徴とし、好ましい形態において、前記内部領域にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させる。好ましい形態において、クリーニングガスの作用前に、プラズマ処理により、基板に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む層をコーティングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む残留物が形成される。好ましい形態において、クリーニングガスの作用前に、プラズマ処理により、基板をエッチングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む残留物が形成される。好ましい形態において、クリーニングしたい表面として、電極、対応電極、前記電極に配設されるガス分配器、前記対応電極に配設される基板‐載置面又は前記プロセスチャンバの槽壁面の少なくとも部分領域を選択する、かつ/又はクリーニングガスの作用中、クリーニングしたい表面が、プラズマ処理中の表面の温度の最大1.8倍、好ましくは60℃未満、特に好ましくは20℃未満の温度を有しているようにする。好ましい形態において、前記電極、前記対応電極、前記ガス分配器、前記基板‐載置面及び/又は前記プロセスチャンバの槽壁面の表面領域における残留物の形成を、特に構造的‐機械的なカバー手段又は構造的‐電気的なカバー手段により阻止する。好ましい形態において、前記基板‐載置面を、好ましくは基板により、前記プラズマ処理中に前記基板‐載置面における残留物の形成が阻止されるようにカバーする。好ましい形態において、クリーニングしたい表面として、前記基板‐載置面に配設されている保持手段の少なくとも部分表面を選択する。好ましい形態において、前記フッ素ガス及び/又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化するための手段として、前記電極及び/又は該電極に配設されるガス分配器の少なくとも一部を使用する。好ましい形態において、前記フッ素ガス又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化するための手段として、前記対応電極及び/又は該対応電極に配設される基板‐載置面の少なくとも一部を使用する。好ましい形態において、前記クリーニングガス中にフッ素ガスの他、不活性ガス、特に窒素又はアルゴンを使用する。好ましい形態において、前記クリーニングガスのプラズマ励起を前記プロセスチャンバ内かつ/又は前記プロセスチャンバ外で実施する、かつ/又は熱活性化を前記プロセスチャンバ外で実施する。好ましい形態において、前記クリーニングガスの作用中、ガス分配器の、前記電極に配設されるガス流出プレートと、前記対応電極に配設される基板‐載置面との間に、2mm〜100mmの範囲の間隔を設定する。また、本発明に係る、上述の方法を実施するために調整かつ指定された、基板をプラズマ処理するためのプラズマを発生させる少なくとも1つの電極及び対応電極を備えるプロセスチャンバは、クリーニングしたい部材にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させる手段、及び/又はフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、クリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整する手段を備えることを特徴とし、好ましい形態において、前記フッ素ガス又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化する手段が、前記電極、該電極に配設されるガス分配器、前記対応電極、該対応電極に配設される基板‐載置面の少なくとも一部、及び/又は前記プロセスチャンバ外に配置される熱活性化装置を含む。好ましい形態において、プラズマ処理中の残留物の形成を阻止するカバー手段が、前記電極、前記対応電極、前記ガス分配器及び/又は前記基板‐載置面の表面領域に設けられている。好ましい形態において、前記対応電極に配設される基板‐載置面であって、基板のプラズマ処理中、好ましくは基板により、プラズマ処理中に前記基板‐載置面における残留物の形成が阻止可能であるようにカバー可能な基板‐載置面が設けられている。
【0012】
本発明に係る、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法は、クリーニングガスがフッ素ガスを含み、プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、基板のプラズマ処理のためにプラズマを発生させるために有している、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法において、
クリーニングしたい部材にフッ素ガス及び/又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧(Gesamt‐Partialdruck)で作用させ、
かつ/又は
フッ素ガス及び/又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、かつ
クリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整する、
ことを特徴としている。
【0013】
必ずというわけではないものの、特に、プロセスチャンバは、1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のために設計かつ調整されている。基板、電極及び対応電極がフラットな表面を有していると有利である。上述の表面が平たんであると有利である。基板、電極及び対応電極が凹面状又は凸面状の表面を有していてもよいことは自明である。
【0014】
アモルファスコーティング又は微結晶コーティングの製造時、100Pa〜2000Pa、特に1300Paのプロセスガス圧、及び0.01W/cm〜5W/cm、特に1W/cmの出力密度(Leistungsdichte)が有利である。HF発生器の出力(Ausgangsleistung)は、50W〜50kWの範囲、有利には1kWである。励起周波数は、1MHz〜150MHz、有利には13.56MHzの範囲にある。
【0015】
本発明は、フッ素ガスか、又はそのより容易な使用可能性に基づいてフッ素ガス混合物を、クリーニングガスとして使用することを提案する。チャンバの内部領域内の総‐分圧は、少なくともプロセスチャンバの部分領域において、5mbarより大、好ましくは20mbarより大である。好ましくはフッ素分子が使用されるが、フッ素原子が使用されてもよい。
【0016】
驚くべきことに、クリーニング率がフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物の本発明における高い分圧により顕著に向上可能であることが判った。部材の表面から、好ましくは、例えばソーラーセルの製造時に使用されるケイ素化合物、例えば二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素及び/又は窒化ケイ素によるコンタミネーションあるいはパラサイトコーティング(parasitaere Beschichtung)がクリーニングされる。しかし、別のコンタミネーションへの使用も可能である。
【0017】
20mbar〜1000mbarの総‐分圧が特に有利であることが判っている。極めて良好な結果が、既に250〜500mbarの分圧で達成可能である。クリーニングガスは、20mbar〜1000mbarのフッ素分圧で供給可能である、かつ/又はプロセスチャンバ内で20mabr〜1000mbarの言及したフッ素化合物分圧にもたらされることができる。
【0018】
クリーニングガスは、フッ素ガスとして、又はキャリアガス、例えば窒素又はアルゴン等の不活性ガス中のフッ素ガスであって、キャリアガス中で1%、10%、20%、30%以上のフッ素のモル濃度を有するフッ素ガスとして選択可能である。
【0019】
本発明の別の観点では、プロセスチャンバの内部領域に配置された少なくとも1つの部材をクリーニングする方法であって、好ましくは温度調整手段によりフッ素ガスの熱活性化を行い、クリーニングしたい部材が<350℃の温度を有するようにすること特徴とする、プロセスチャンバの内部領域に配置された少なくとも1つの部材をクリーニングする方法が提案される。つまり、本方法では、クリーニングしたい部材に、熱活性化されたフッ素を含むクリーニングガスを作用させ、通常の熱エッチングとは異なり、クリーニングしたい部材又はその表面を加熱しないか、又は加熱されるにしても、特にプラズマ処理、例えばPECVDコーティング又はCVDコーティング中の部材の加熱と比較して、比較的僅かに加熱されるにすぎないようにしている。
【0020】
本発明のこの観点によっても、部材から、ケイ素化合物、例えば二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素及び/又は窒化ケイ素等によるコンタミネーション又はコーティングがクリーニングされる。しかし、この場合も、別のコンタミネーションへの使用も可能である。
【0021】
特に、クリーニングしたい部材は、<250℃、<200℃、<150℃、<100℃の温度又は20℃〜60℃の温度を有している。クリーニングガスの熱活性化は、クリーニングガスと、クリーニングしたい部材自体よりも高い温度を有する加熱される表面との接触を介して実施可能である。熱活性化がプロセスチャンバ外で、例えば、特に>350℃の温度に加熱される管区分内においても実施可能であることは自明である(リモートサーマルアクチベーション)。
【0022】
つまり、クリーニングのためにフッ素ガスを熱活性化するが、従来慣用の熱エッチングとは異なり、クリーニングしたい部材が比較的低い温度を有しているようにすることが提案される。驚くべきことに、フッ素のこのような熱活性化が、プロセスチャンバ内部の表面をクリーニングすることを可能にし、特に、クリーニングしたい部材が適当に選択されると、残留物又はパラサイトコーティングによる基板のコンタミネーションを効果的に低減することを可能にすることが判った。プロセスチャンバのパラサイトコーティングに関して特に危険度の高い領域には、プラズマ発生のための電極、特に流出部、例えば反応ガスのための組み込まれたガスシャワーを備える電極が挙げられる。このような流出部は、コーティングが発生しやすく、それゆえ高い確実性と完全性をもってクリーニングされねばならない。
【0023】
上述の方法は、熱エッチングと組み合わせ可能である。熱エッチングとは、本明細書では、対象物あるいは表面の温度が昇温された状態で行う対象物あるいは表面のエッチングと解され、エッチングしたい表面の温度上昇にともなうエッチング率の向上が利用される。つまり、別の有利な形態では、プロセスチャンバの部分、特にプロセスチャンバの、特にパラサイトコーティングが発生しやすい部分が、クリーニング前又はクリーニング中に加熱されると、クリーニング効果は、さらに向上可能である。
【0024】
少なくとも1つのクリーニングしたい部材が、電極、対応電極及び/又はガス分配器であると、かつ/又は少なくとも1つの電極、対応電極及び/又はガス分配器が、フッ素ガスの熱活性化のための温度調整手段として使用されると、パラサイトコーティングに関して特に危険度の高い部材のクリーニングは、空間的近傍に位置する温度調整手段により実施される。それぞれ異なる部材がそれぞれ異なる温度にもたらされてもよいことは自明である。例えば、外部の温度調整手段が、昇温された温度、例えば>350℃の温度にもたらされてもよいのに対して、電極は、20℃〜80℃の範囲の温度に、対応電極は、180℃の温度にもたらされる。
【0025】
クリーニングガスの作用前に、プラズマ処理により、基板に、ケイ素を含む層をコーティングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、ケイ素を含む残留物が形成されると、これにより、コーティング及びクリーニングの統合されたプロセスを提供することができる。
【0026】
クリーニングガスの作用中、クリーニングしたい部材が、プラズマ処理中に部材の温度の最大1.8倍、好ましくは60℃未満、特に好ましくは20℃未満の温度を有していると、これにより、クリーニングしたい部材の熱負荷及びクリーニング時に必要な消費エネルギは低減可能である。
【0027】
本方法は、クリーニングガスの作用前に、ケイ素を含む層を有する基板をエッチングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、ケイ素を含む残留物が形成される場合に、使用されてもよい。
【0028】
クリーニングしたい表面として、電極、対応電極、電極に配設されるガス分配器、対応電極に配設される基板‐載置面又はプロセスチャンバの槽壁面の少なくとも部分領域を選択してもよく、かつ/又はクリーニングガスの作用中、クリーニングしたい表面が、プラズマ処理中の表面の温度の最大1.8倍、好ましくは60℃未満、特に好ましくは20℃未満の温度を有しているようにしてもよい。
【0029】
電極、対応電極、ガス分配器、基板‐載置面及び/又はプロセスチャンバの槽壁面の表面領域における残留物の形成を予防することにより、危険度の高い領域がまったくコンタミネーションを受けず、ひいてはクリーニングガスによるクリーニングを低コストに部分領域に限定して行うことができようにすることができる。カバーは、構造的‐機械的なカバー手段(konstruktiv‐mechanisches Abdeckmittel)又は構造的‐電気的なカバー手段(konstruktiv‐elektrisches Abdeckmittel)により実施可能である。構造的‐電気的なカバー手段は、プラズマが形成不能な暗室遮蔽の領域に表面があるとき、コンタミネーションが生じないことを利用している。
【0030】
基板がプラズマ処理中に載置面上に配置されると、特に基板‐載置面のカバーが実施されるので、基板‐載置面はコンタミネーションを受けない。特に基板によるカバーは、プラズマ処理中、基板‐載置面における残留物の形成が阻止されるように実施可能である。カバーは、クリーニングに要する時間を短縮し、クリーニングのために必要なガス量を低減する。さらに、好ましくは大面積の載置面は、加熱可能あるいは温度調整可能であり、これにより、クリーニングガス、特にフッ素ガスの熱活性化のための手段として働くことができる。
【0031】
特に、クリーニングしたい表面として、基板‐載置面に配設されている保持手段の少なくとも部分表面を選択してもよい。保持手段は、プラズマ処理中の基板の保持のために役立つ。特に、保持手段は、熱的かつ/又は電気的に載置面から絶縁可能である。その結果、載置面が昇温された温度、例えば>350℃の温度にもたらされる一方、保持手段は、<350℃、特に<80℃の温度、又は20℃〜60℃の範囲の温度にある。
【0032】
クリーニングガスの作用中、ガス分配器の、電極に配設されるガス流出プレートと、対応電極との間に、2mm〜100mmの範囲の間隔を設定すると、クリーニングガスは、電極の領域にも、対応電極の領域にも作用可能である。その際、対応電極が加熱される一方、電極及び/又はガス分配器がより低い温度、例えばプラズマ処理時、特にコーティング時の温度範囲の温度を有していると、特に有利である。載置面は、対応電極に配設可能であり、対応電極と同様に又は対応電極とは無関係に加熱可能であり、これにより、上述のように、特に簡単にクリーニングガスを熱活性化することができる。
【0033】
クリーニングガス中にフッ素ガスの他、不活性ガス、特に窒素又はアルゴンが使用されると、この種のガス混合物は、チャンバ要素及び出力系の腐食に関してより簡単に管理可能であるので、方法の取扱いを容易にする。加えてアルゴンは、コーティング成分、特にケイ素と化合物を形成せず、それゆえ窒素の場合に予測され得るようなダストコンタミネーションを形成しないという利点を有している。
【0034】
クリーニングガスのプラズマ励起がプロセスチャンバの内及び/又は外(リモート‐プラズマ‐クリーニング)で実施されると、励起されたフッ素種が形成され、クリーニングガスの反応性はさらに向上可能である。
【0035】
本発明に係る、基板をプラズマ処理するためのプラズマを発生させる少なくとも1つの電極及び対応電極を備えるプロセスチャンバは、上述の方法を実施するために調整かつ指定されており、
クリーニングしたい部材にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させる手段、
及び/又は
フッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、クリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整する手段、
を有している。
【0036】
基板をプラズマ処理するための本発明に係る装置は、一実施の形態において、
‐容量結合プラズマ放電を電極と対応電極との間の領域に励起する手段と、
‐少なくとも1つの活性化可能なガス種の量をプラズマ放電の領域に輸送する手段と、
を備え、
‐基板は、電極と対応電極との間に、基板の処理したい表面領域でもって配置されているか、又は配置可能である。
【0037】
プラズマ放電は、特に1MHz〜150MHz、好ましくは13.56MHzの励起周波数で実施される。好ましくは、電極又は対応電極はアース電位にあるか、又はアース電位に置くことができる。しかし、浮動電極及び/又は浮動対応電極を備えるアッセンブリも可能である。
【0038】
特に、クリーニングガスの供給及び排出のためのポンプ装置を制御し、かつ所望のフッ素分圧の調節を制御する制御装置が設けられている。
【0039】
フッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化する手段は、電極、電極に配設されるガス分配器、対応電極、対応電極に配設される基板‐載置面の少なくとも一部、及び/又はプロセスチャンバ外に配置される熱活性化装置を有していてよい。
【0040】
別の有利な形態では、クリーニングガスのフッ素種の熱励起は、択一的に又は付加的に、プロセスチャンバ外に配置される加熱手段又は温度調整手段によって実施可能である。この場合、クリーニングガスがプロセスチャンバ内への流入前に加熱可能な面を介して案内されると、特に有利である。加熱可能な面は、とりわけ、加熱可能なフィラメント又は加熱可能な導入管区分であってよい。
【0041】
クリーニングしたいプロセスチャンバにおいて、プロセスチャンバがしばしば大面積のコーティングしたいエレメント(>1m)のために設計されていることが考慮される。このことは、コーティング品質のみならず、クリーニング品質も、電極と対応電極との間の間隔に依存する場合があることを意味している。例えば、電極又は対応電極によるフッ素ガスの励起時、10〜20mmの小さな間隔が有利であることが判った。電極及び対応電極を互いに相対的に移動可能とする装置が設けられている場合、電極及び/又は対応電極のクリーニング中、両者の間隔を小さく維持することができ、この小さな間隙内に活性化されたフッ素ガスを導入することができる。その結果、電極及び対応電極の互いに面した表面には、フッ素が、熱活性化されたフッ素の比較的高い流動密度(Stromdichte)で作用する。
【0042】
さらに、プロセスチャンバは、好ましくは温度調整手段を備えるガス分配器が設けられていることを特徴とする。この種のガス分配器は、均質なプラズマ処理、例えばコーティングにとって有益である。温度調整手段は、対向して位置する電極及びその他部材のクリーニングを可能にする。本発明の有利な形態において、クリーニングガスは、電極に組み込まれたガス分配器、例えばコーティングガスのためのガス分配器を介してプロセスチャンバに導入される。プロセスチャンバへの均等なガス供給を保証するために、ガス分配器にはガス流出プレートが設けられている。ガス流出プレートは、面内に規則的に配置される多数のガス流出開口を有している。
【0043】
温度調整手段、例えば電極及び/又は対応電極に配設される温度調整手段は、好ましくは(開ループ制御又は閉ループ制御されて)温度調整され、例えば、回路内を循環する温度調整液により温度調整される。好ましくは熱媒油が使用される。熱媒油は、例えばプロセスチャンバ外に存在する循環サーモスタットにより一時的に一定の温度に維持される。
【0044】
以下に、本発明について、図面に示した実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】基板をプラズマ処理するための本発明によりクリーニングしたい装置の縦断面図である。
【図2】熱活性化されたフッ素/窒素混合物に関するエッチング率を、フッ素あるいはフッ素含有ガス成分のそれぞれ異なる総分圧において、クリーニングガスの温度と関連付けて示すグラフである。
【0046】
図1は、フラットな基板2を処理するための有利なリアクタ1の概略図である。リアクタ1は、特にPECVD‐リアクタとして形成されていてよい。リアクタ1は、プラズマを発生させるための電極4及び対応電極5を備えるプロセスチャンバ3を有している。プラズマによって、基板2の表面は処理可能、特にコーティング可能である。電極4,5は、大面積の金属プレートとして形成されており、プロセスチャンバ3内に電界を形成するために、(図1には示されていない)電圧源、有利には1mHz〜150MHz、好ましくは13.56MHzの励起周波数を有する高周波供給源に接続可能である。好ましくは、電極及びその他部材は、耐フッ素性の材料(特に金属)から形成されているか、又は耐フッ素性の材料からなるコーティングを有している。
【0047】
リアクタ1は、大面積のフラットな基板、例えば1m以上の面積を有する大面積のフラットな基板を処理するために適している。特に、リアクタ1は、高効率の薄膜ソーラーモジュール、例えばアモルファスシリコン薄膜ソーラーセル又は微結晶シリコン薄膜ソーラーセルのための高効率の薄膜ソーラーモジュールを製造する際の作業工程を実施するために適している。
【0048】
図1に看取可能であるように、両電極4,5は、プロセスチャンバ3の互いに対向して位置する2つの壁を形成している。プロセスチャンバ3は、排気可能なハウジング8を備える真空チャンバ7内に配置されている。ハウジング8は、基板の供給及び排出のためのゲートあるいは開口10を有している。チャンバ開口10は、閉鎖装置9により真空密に閉鎖可能である。外室12に対して真空チャンバ7を封止するために、シール11が設けられている。このためにシールは、好ましくは耐フッ素性の材料から形成されている。真空チャンバ7は、任意の空間形状、特に円形又は方形の横断面を有していてよい。真空チャンバ7内に配設されるプロセスチャンバ3は、特にフラットな柱体又はフラットな直方体の形状を有していてよい。本発明が、異なって形成されたリアクタ、特に異なるプロセスチャンバ幾何学形状及び/又は異なる電極幾何学形状を備えるリアクタにおいても使用可能であることは自明である。同様に、プロセスチャンバ自体が真空チャンバである実施の形態も、本発明に包含されることは自明である。
【0049】
電極4は、真空チャンバ7内に設けられた保持構造37内に配置されている。保持構造37は、図1に示した実施の形態ではハウジング背壁19により形成されている。このために電極4は、ハウジング背壁19の切欠き38内に格納されており、ハウジング背壁19から誘電体20により隔離されている。
【0050】
対応電極5は、電極4に面した側に、基板を保持する装置21を有している。好ましくは固定装置として形成された装置21は、保持手段として単数又は複数の抑え31を有している。抑え31は、基板を縁側で、対応電極5の、基板‐載置面として機能する表面5aに圧着することができる。保持手段は、フィンガ状又はフレーム状に形成可能である。特に、保持手段は、機械的に対応電極5に結合されていると同時に、電気的にかつ/又は熱的に対応電極5から絶縁されている。特に、対応電極5あるいは基板‐載置面5aの温度が>350℃であるとき、保持手段の温度は、20℃〜100℃の範囲にあることができる。
【0051】
図1に看取可能であるように、対応電極5は、処理の実行中、対応電極5の縁部領域23と切欠き38の縁部領域24との間に間隙25が形成されるように、保持構造37の切欠き38を覆っている。間隙25は、約1mmのオーダの幅を有している。間隙幅は、一方では、処理の実行中、プラズマがプロセスチャンバ3の内部に維持可能であり、他方では、プロセスチャンバ3と真空チャンバ7の他の内室との間に著しく大きな圧力勾配が形成されないように寸法設定されている。
【0052】
基板をコーティング又はエッチングするために、反応性ガスがプロセスチャンバ3内に導入される。このために反応性ガスは、源から供給通路13を介してガス分配器15に供給され、ガス分配器15からプロセスチャンバ3に流入する。本実施の形態におけるガス分配器15は、ガス室16を有している。ガス室16は、対応電極5に面した側にガス流出プレート17を有している。ガス流出プレート17は、ガスを通す多数の流出開口(図示せず)を有している。ガス流出プレート17の約1.0m〜2.0mの面積に、典型的には、数千の流出開口が設けられている。
【0053】
選択された表面あるいは部材は、プラズマ処理中、カバーされてもよい。カバーは、構造的‐機械的なカバー手段又は構造的‐電気的なカバー手段により実施可能である。構造的‐電気的なカバー手段は、プラズマが形成不能な暗室遮蔽の領域に表面があるとき、コンタミネーションが生じないことを利用している。例えば、間隙25のコンタミネーションは生じない。
【0054】
図1に示した装置において、基板2は、プラズマ処理中、基板‐載置面5a上に配置される。特に、基板‐載置面は基板によりカバーされるため、コンタミネーションは生じない。特に、基板2によるカバーは、プラズマ処理中、基板‐載置面5a上への残留物の形成が回避されるように実施可能である。本発明の、図1とは異なって形成された実施の形態では、対応電極5が、ガスシャワー(Gasdusche)の領域から張り出した端部領域23を有していないか、又は張り出していたとしても僅かにすぎない。この点においてコンタミネーションは生じない。
【0055】
真空チャンバ7の、プロセスチャンバ3外に配置されている領域は、真空管路26を介して真空ポンプ26′に接続されている。その結果、真空ポンプ26′の運転時、真空チャンバ7のより大きな容積に基づいて、簡単に、プロセスチャンバ3から間隙25を介して真空チャンバ7に流れるガス流の高い均質性が達成可能である。
【0056】
プロセスチャンバ3は、ポンプ装置及び制御装置を備える制御手段を有している。制御手段は、プロセスチャンバ3内に少なくとも一時的にかつ部分領域に、5mbarより大、好ましくは20mbar〜1000mbarの範囲のガス状のフッ素化合物の分圧で、フッ素を含有するクリーニングガスを提供するために形成されている。
【0057】
クリーニング中、一般に、基板がプロセスチャンバ内に収容されていないことは自明である。プロセスチャンバ3をクリーニングするために、又は真空チャンバ7もクリーニングするために、クリーニングガスがプロセスチャンバ3内に導入される。このためにクリーニングガスは、源14から供給通路、例えば通路13を介して好ましくはガス分配器15に供給され、ガス分配器15からプロセスチャンバ3に流入する。好ましくは、源14及び/又は供給通路は、5mbarより大、有利には20mbar、100mbar、500mbar又は1000mbarより大のフッ素‐分圧のために耐圧性に設計されている。
【0058】
方法の一態様では、クリーニング中、クリーニングガスをポンプで吐出してもよい。別の態様では、プロセスチャンバ3を、クリーニングの時間インターバル中、クリーニングガスで満たし、吐出をより後の時点で初めて行ってもよい。
【0059】
特に良好なクリーニング結果を達成するために、リアクタ1内には、加熱手段又は温度調整手段27,29,30が設けられている。これらの手段27,29,30により、クリーニングプロセス中、電極4及び/若しくは対応電極5又は載置面5aへの熱エネルギの供給が制御、つまり開ループ制御又は閉ループ制御される。実験において、温度調整装置を電極の一方、例えば電極4又は対応電極5にのみ配置すれば十分であることが判っている。温度調整される電極4又は対応電極5におけるクリーニングガスの熱励起によって、対向して位置する対応電極5又は電極4もクリーニングするのに十分な数のフッ素ラジカルが発生する。
【0060】
図1の実施の形態では、電極4,5に配設された温度調整手段が設けられている。対応電極5の温度調整手段は、真空チャンバ7内において対応電極5の下に配置されている装置29を有している。この装置29により、対応電極5、特に基板‐載置面5aは、最適なクリーニングが達成可能であるように温度調整可能である。好ましくは、基板‐載置面5aは、載置された基板2によってコンタミネーションを受けないので、これらの部材のクリーニングは実施されない。>350℃の温度に加熱された表面5aと、電極4aあるいはガス分配器15との小さな間隔により、電極4及びガス分配器15がクリーニング中20℃〜80℃の範囲より高い温度を有する必要なしに、電極4及びガス分配器15の極めて効果的なクリーニングが実施可能である。
【0061】
温度調整装置は、原則、電極4のために設けられていてもよい。
【0062】
別の形態では、装置29が電極4,5に組み込まれて形成されている電極4及び/又は対応電極5が設けられていてもよい。
【0063】
装置27,29,30の必要とされる温度調整出力の高さを求めるために、測定が実施可能である。電極4,5の互いに面した側にサーモセンサ40,40′が設けられている。これらのサーモセンサ40,40′を用いて、種々異なるHF出力、ガス流等のために、電極4,5の局所的な温度を、温度調整装置27,29,30の出力の関数として求めることができる。このような測定に基づいて、目下の温度調整出力、必要ならば温度調整装置27,29,30の幾何学的な形態も、最適化可能である。さらに、クリーニング中、サーモセンサ40,40′の測定値を得て、これらの測定値を、温度調整装置27,29,30の出力の、プロセスに付随した制御のために利用することができる。
【0064】
一方又は両方の電極4,5のために同等に使用可能な温度調整装置27,29,30の他に、電極4は、ガス分配器15を介して導入される加熱されたガスと接触されるか、又は所望の温度にもたらされてもよい。特に、このためにクリーニングガス自体が使用されると特に有利である。クリーニングガスは、例えば、温度調整手段により加熱可能な供給通路13により加熱可能であるか、又は加熱可能な面又は加熱可能なフィラメントを介して案内可能である。
【0065】
加えてガス流出プレート17が温度調整可能であってもよい。このためにガス流出プレート17は、ウェブ35により電極4に結合されていてよい。ウェブ35は、高い熱伝導性を有する材料からなっている。その結果、ガス流出プレート17は、熱的に電極4に結合されている。電極4(ひいてはガス流出プレート17)は、クリーニング中、温度調整液が電極4内に設けられた通路36を通して循環することにより温度調整されてもよい。電極4の温度調整は制御、つまり開ループ制御又は閉ループ制御されて実施可能である。特に、ガス流出プレート17の領域には、サーモセンサ40′が配置可能である。サーモセンサ40′の測定値は、電極4を通る温度調整手段流量を制御するために使用される。
【0066】
以下に、本発明に係る方法のエッチング率を従来慣用の方法のエッチング率と比較検討する。
【0067】
比較すべきエッチング法において、それぞれ、4.5μmのμc‐シリコン又はアモルファスシリコンがコーティングされている光電池のためのシリコン薄膜の析出のためのプロセスチャンバから出発する。コーティングは、一般に、ソーラーセルにおいて使用される一般的なケイ素化合物の1つ、例えば二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素及び/又は窒化ケイ素からなっていてよい。コーティングは、とりわけ、ガス分配器を含む電極4上に生じる。電極は、温度調整装置により約60℃に温度調整され、対応電極は、約200℃に温度調整される。電極相互の間隔は、コーティング時、14mmであり、電極の面積は、それぞれ約2mである。
【0068】
a)従来慣用の方法(リモート‐プラズマ、3KW、マイクロ波):
リモート‐プラズマ‐装置(R3T社;マイクロ波による励起)は、リアクタの端面にフランジ固定されている。両電極の間隔を14mmから180mmに拡大し、励起されたNFを、穴を通してプロセスチャンバに、電極面に対して平行な流れで流入させる。ガス流は、2slm(standard liters per minute)である。エッチングプロセス中のチャンバ内の圧力は、2mbarである。45分後にエッチング工程は終了した。リアクタの目視検査は、一様にクリーンな表面を示している。エッチングプロセスの時間は、残留ガス分析を介して決定され、SiFが生産されなくなった時点で、エッチングプロセスを終了した。
【0069】
b)本発明に係る方法:
電極は、14mmの間隔を有している。N中に20%のFを含むクリーニングガスをプロセスチャンバに、その際に何らかの種類の放電により励起されることなく、電極に組み込まれたガスシャワー(ガス分配器)を介して18slmの流れで流入させる。その際、プロセスガスポンプに通じる弁を、15分後に510lのプロセスチャンバ総容積において250mbarの一定のプロセスチャンバ圧が生じるまで、閉鎖する。さらに15分間、ガス混合物を18slmのガス流で槽(Kessel)内にとどめ置く。次に、ガス流を0slmにし、槽をさらに10分間排気した。その後、槽を開放して、残留したシリコンコーティングの目視検査を行った。結果は、完全によりクリーンな槽であった。驚くべきは、200℃の高温の対応電極がクリーンにエッチングされただけでなく、60℃の比較的低温の電極も完全にクリーニングされたことである。本発明により、Fガスは、高温の対応電極において励起され、その後、より低温の電極において、ここでもなお効果的にエッチングするために十分に励起されている。その際、約14mmの電極の小さな間隔が有利である。
【0070】
本発明に係る方法b)における40分の総時間(ガス流入から排気まで)後、電極及びガスシャワー上の4.5μmのコーティングは完全に除去される。これにより、本発明に係る方法は、3KWの出力及び2slmのNF流を有するR3T社リモート‐プラズマ‐装置を用いた従来慣用のクリーニングと比較して高速である。
【0071】
b)で言及したように、加熱された対応電極によるフッ素ラジカルの熱励起が、有利には高速かつ完全なクリーニング結果を提供するのに十分であることが判った。このことは、エッチングすべき表面の温度に基づくフッ素/窒素混合物のエッチング率の検査によっても証明されている。
【0072】
図2は、熱活性化されたフッ素/窒素混合物のエッチング時のエッチング率(nm/s)をy軸にとり、温度(℃)をx軸にとって示したグラフである。250mbarの分圧を有するフッ素/窒素混合物が選択されている。
【0073】
図2に示したグラフ100は、エッチング率が、250mbarの分圧時、約100℃の温度から、精々1mbarの一般的な低い圧力時のエッチングと比較して顕著に上昇すること示している。150℃を上回る値では、2nm/sより大のエッチング率が達成される。温度が200℃になると、エッチング率は既に3倍である。
【0074】
それゆえ、電極の1つを可及的高い温度に昇温することは有利である。その際、プレート型リアクタ若しくは電極又はその他構成要素の寿命を短縮しないために、構造的な設定及び制限に配慮すべきである。良好な妥協案としては、かなりのエッチング率を示す約200℃の温度であることが判った。他方の電極は、有利には、より低温、例えば20℃又は60℃〜100℃の範囲の温度、有利には基板のプラズマ処理、例えばプラズマコーティングの温度に対して最大15%の温度を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法であって、前記クリーニングガスがフッ素ガスを含み、前記プロセスチャンバが少なくとも1つの電極及び対応電極を、基板のプラズマ処理、特に1mより大の表面を有するフラットな基板のCVD処理又はPECVD処理のためにプラズマを発生させるために有している、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法において、
クリーニングしたい部材にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させ、
かつ/又は
フッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、かつ
クリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整する、
ことを特徴とする、プロセスチャンバの内部領域に配置される少なくとも1つの部材の表面をクリーニングガスの作用によりクリーニングする方法。
【請求項2】
前記内部領域にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
クリーニングガスの作用前に、プラズマ処理により、基板に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む層をコーティングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む残留物が形成される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
クリーニングガスの作用前に、プラズマ処理により、基板をエッチングし、少なくともクリーニングしたい部材上に、好ましくはケイ素又はケイ素を含有する化合物を含む残留物が形成される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
クリーニングしたい表面として、電極、対応電極、前記電極に配設されるガス分配器、前記対応電極に配設される基板‐載置面又は前記プロセスチャンバの槽壁面の少なくとも部分領域を選択する、かつ/又はクリーニングガスの作用中、クリーニングしたい表面が、プラズマ処理中の表面の温度の最大1.8倍、好ましくは60℃未満、特に好ましくは20℃未満の温度を有しているようにする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記電極、前記対応電極、前記ガス分配器、前記基板‐載置面及び/又は前記プロセスチャンバの槽壁面の表面領域における残留物の形成を、特に構造的‐機械的なカバー手段又は構造的‐電気的なカバー手段により阻止する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記基板‐載置面を、好ましくは基板により、前記プラズマ処理中に前記基板‐載置面における残留物の形成が阻止されるようにカバーする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
クリーニングしたい表面として、前記基板‐載置面に配設されている保持手段の少なくとも部分表面を選択する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記フッ素ガス及び/又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化するための手段として、前記電極及び/又は該電極に配設されるガス分配器の少なくとも一部を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記フッ素ガス又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化するための手段として、前記対応電極及び/又は該対応電極に配設される基板‐載置面の少なくとも一部を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記クリーニングガス中にフッ素ガスの他、不活性ガス、特に窒素又はアルゴンを使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記クリーニングガスのプラズマ励起を前記プロセスチャンバ内かつ/又は前記プロセスチャンバ外で実施する、かつ/又は熱活性化を前記プロセスチャンバ外で実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記クリーニングガスの作用中、ガス分配器の、前記電極に配設されるガス流出プレートと、前記対応電極に配設される基板‐載置面との間に、2mm〜100mmの範囲の間隔を設定する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施するために調整かつ指定された、基板をプラズマ処理するためのプラズマを発生させる少なくとも1つの電極及び対応電極を備えるプロセスチャンバにおいて、
クリーニングしたい部材にフッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を5mbarより大の総‐分圧で作用させる手段、
及び/又は
フッ素ガス又はガス状のフッ素化合物を熱活性化し、クリーニングしたい部材を<350℃の温度に温度調整する手段、
を備えることを特徴とする、基板をプラズマ処理するためのプラズマを発生させる少なくとも1つの電極及び対応電極を備えるプロセスチャンバ。
【請求項15】
前記フッ素ガス又は前記ガス状のフッ素化合物を熱活性化する手段が、前記電極、該電極に配設されるガス分配器、前記対応電極、該対応電極に配設される基板‐載置面の少なくとも一部、及び/又は前記プロセスチャンバ外に配置される熱活性化装置を含む、請求項14記載のプロセスチャンバ。
【請求項16】
プラズマ処理中の残留物の形成を阻止するカバー手段が、前記電極、前記対応電極、前記ガス分配器及び/又は前記基板‐載置面の表面領域に設けられている、請求項14又は15記載のプロセスチャンバ。
【請求項17】
前記対応電極に配設される基板‐載置面であって、基板のプラズマ処理中、好ましくは基板により、プラズマ処理中に前記基板‐載置面における残留物の形成が阻止可能であるようにカバー可能な基板‐載置面が設けられている、請求項16記載のプロセスチャンバ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500595(P2013−500595A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521986(P2012−521986)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003247
【国際公開番号】WO2011/012185
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(502239900)ライボルト オプティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Leybold Optics GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 88, D−63755 Alzenau, Germany
【Fターム(参考)】