説明

ポリオルガノシロキサン

【課題】電気・電子材料、例えば、半導体デバイス、多層配線基板の製造用として有用なポリオルガノシロキサン及びそれを用いた感光性樹脂組成物で、優れたキュア残膜率を有し、アルカリ現像可能な樹脂膜を形成することが可能なポリオルガノシロキサン及び感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定シラノール化合物(a)、特定アルコキシシラン(b)、及び特定酸無水物構造を含むアルコキシシラン(c)を触媒の存在下、積極的に水を添加することなく縮合させる方法で得られるポリオルガノシロキサン、及びこれを含有する感光性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子材料、例えば、半導体デバイス、多層配線基板の製造用として有用なポリオルガノシロキサン、及びそれを用いた感光性樹脂組成物、並びに該感光性樹脂組成物によって得られた樹脂絶縁膜に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は、LSIチップのバッファコート材料や再配線層を形成するための絶縁材料に好適な、ポリオルガノシロキサン、及びそれを用いた感光性樹脂組成物、並びに該感光性樹脂組成物によって得られた樹脂絶縁膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIチップのバッファコート材料や再配線層を形成するための絶縁材料に対する性能要求は、LSIの微細化に伴い厳しさを増している。具体的には、高解像、低温キュア、低応力などが求められている。特に、バッファコート材料の下地に使われるLow K材料の耐応力性、耐熱性がますます弱くなり、再配線の銅も電流密度増大で厚膜化傾向となっている。このため、バッファコート材料としては、従来の高解像度、耐薬品性、耐温度ストレス耐性などの性能に加えて、厚膜、平坦性、低応力、低温キュアを満足する材料を用いる必要がある。
そして、微細加工をする際に、アルカリ現像液で現像する事が出来れば、LSIで使用する製造ラインを使用できるため、新たな廃液のための設備を必要としない。また、有機溶剤を使用する場合と比べ、環境への負荷が低いことや、コストが抑えられるといったメリットがあるため、アルカリ現像可能な感光性樹脂が強く望まれている。
【0003】
従来は、バッファコート材料として、例えば、特許文献1〜5に見られるように感光性ポリイミドが、その代表例の1つとして使われて来た。しかし、感光性ポリイミドには問題点も多く、中でもキュア後の残膜率が低い、つまりキュア工程で膜減りが大きいという欠点があった。
また、特許文献6には、Ba(OH)(水酸化バリウム)を触媒とし、重合可能基を有する有機シラン及び加水分解反応点を有する有機シランを縮合させて得られる、ORMOCER ONE(ドイツ国 Fraunhofer ISC社製)の開示がある。ORMOCER ONEは、150℃という低温でのキュアが可能であり、その硬化物は、300℃以上の耐熱性、10Mpa以下の残留低応力、平坦性3%以内などの優れた特性を有する。しかしながら、後述する比較例に示すように、ORMOCER ONEはアルカリ現像性を持たない。
【0004】
【特許文献1】特開平06−053520号公報
【特許文献2】特開平06−240137号公報
【特許文献3】特開平09−017777号公報
【特許文献4】特開平11−297684号公報
【特許文献5】特開2002−203851号公報
【特許文献6】カナダ国特許第238756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気・電子材料、例えば、半導体デバイス、多層配線基板の製造用として有用なポリオルガノシロキサンを用いた感光性樹脂組成物であって、優れたキュア残膜率を有し、アルカリ現像可能な樹脂膜を形成することが可能なポリオルガノシロキサン及び感光性樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために、メタクリル基やアクリル基を有し、シロキサン構造を含む感光性樹脂を研究するうち、更に、酸無水物構造を有する有機シランを共重合する事で、アルカリ現像性を有する感光性樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
1.(a)下記一般式(I)で表されるシラノール化合物、(b)下記一般式(II)で表されるアルコキシシラン、及び、(c)下記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランを、触媒の存在下、積極的に水を添加することなく縮合させる方法で得られるポリオルガノシロキサン。
Si(OH) (I)
(式中、RはC6〜C20のアリール基及びC6〜C20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる一種以上の基であり、互いに同一であっても異なっていても良く、また、共有結合を介して互いに結ばれていても良い。)
【0007】
Si (OR4−a−b (II)
(式中、Rはエポキシ基及び炭素−炭素二重結合基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の基を含むC2〜C17の基である。R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。RとRは共有結合を介して互いに結ばれていても良い。aは1及び2から選ばれる整数であり、bは0及び1から選ばれる整数である。a+bは2を超えることは無い。)
−R−Si (OR (III)
(式中、Rは、酸無水物構造を含むC4〜C12の一価の有機基である。RはC1〜C6の直鎖状又は分岐状の二価の有機基である。RはC1〜C3の直鎖状又は分岐状の有機基である。)
【0008】
2. 前記触媒として、3価又は4価の金属アルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、及びNHFからなる群より選ばれる1種類以上の触媒を、(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数に対し、0.01〜10モル%添加して合成したポリオルガノシロキサンを用いることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。3.前記触媒として、B(OR、Al(OR、Ti(OR、Zr(OR、Ba(OH)、NaOH、及びNHF(ここでRは、炭素数1〜12の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基)からなる群より選ばれる1種以上の触媒を、(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数に対し、0.01〜10モル%添加して合成したポリオルガノシロキサンを用いることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【0009】
4.(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物100モルに対して(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数が90モル〜110モルであり、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシランが10モル〜90モル、(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランが20モル〜80モルの範囲の割合で縮合することを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
5.(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランにおいて、式中、RがC4〜C8の酸無水物構造を含む有機基であることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【0010】
6.(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランにおいて、式中、Rが無水コハク酸の残基で、Rがプロピレン基であることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
7. (a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物がジフェニルシランジオールであり、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシランが3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであり、(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランが(3−トリエトキシシリルプロピル)無水コハク酸であることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【0011】
8.請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部及び
光重合開始剤:0.01〜50質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
9.請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部、
光重合開始剤:0.01〜50質量部、及び
光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物:1〜100質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
10.請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部、
光重合開始剤:0.01〜50質量部、
光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物:1〜100質量部、及び
シランカップリング剤:0.1〜10質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0012】
11.上記光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物が、光重合性の不飽和結合基を2つ以上と脂環式部位とを有する化合物であることを特徴とする請求項9又は10感光性樹脂組成物。
12.基材上に請求項8〜11のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を得る工程、塗布膜に活性光線を照射し露光部を光硬化させる工程、現像液を用いて該膜の未硬化の部分を除去する工程、基材ごと加熱する工程を順に含む、硬化レリーフパターンの形成方法。
13.基材としてシリコンウエハを用い、請求項12に記載の方法によって、シリコンウエハ面上に硬化レリーフパターンを積層して得られる樹脂積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリオルガノシロキサンを含有する感光性樹脂組成物を用いることにより、電気・電子材料、例えば、半導体デバイス、多層配線基板の製造用として有用な、優れたキュア残膜率を有し、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明におけるポリオルガノシロキサンとは、
(a)下記一般式(I)で表されるシラノール化合物(以下、単にシラノール化合物ということがある)、(b)下記一般式(II)で表されるアルコキシシラン(以下、単にアルコキシシランということがある)、及び、(c)下記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシラン(以下、単に酸無水物構造を含むアルコキシシランということがある)を触媒の存在下、積極的に水を添加することなく縮合させる方法で得られるポリオルガノシロキサンである。
Si(OH) (I)
(式中、RはC6〜C20のアリール基及びC6〜C20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる一種以上の基であり、互いに同一であっても異なっていても良く、また、共有結合を介して互いに結ばれていても良い。)
Si (OR4−a−b (II)
(式中、Rはエポキシ基及び炭素‐炭素二重結合基からなる群より選ばれる少なくとも
1種以上の基を含むC2〜C17の基である。R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。RとRは共有結合を介して互いに結ばれていても良い。aは1及び2から選ばれる整数であり、bは0及び1から選ばれる整数である。a+bは2を超えることは無い。)
【0015】
−R−Si (OR (III)
(式中、Rは、酸無水物構造を含むC4〜C12の一価の有機基である。RはC1〜C6の直鎖状又は分岐状の二価の有機基である。RはC1〜C3の直鎖状又は分岐状の有機基である。)
上記ポリオルガノシロキサンを得る過程の温度は、40℃〜150℃が好ましく、50℃〜90℃がより好ましく、60℃〜90℃がさらに好ましい。縮合の反応性の観点から40℃以上が好ましく、官能基の保護の観点から、150℃以下が好ましい。上記ポリオルガノシロキサンを得る過程の反応時間は、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜5時間がより好ましく、0.5〜3時間がさらに好ましい。縮合の反応性の観点から、0.1時間以上が好ましく、官能基の保護の観点から10時間以下が好ましい。
【0016】
上記ポリオルガノシロキサンを得る過程では、触媒を用い、水を積極的に添加することは無い。触媒としては、3価もしくは4価の金属アルコキシドを用いることができる。具体的には、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−iso−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリ−iso−プロポキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリ−iso−ブトキシボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−tertブトキシボロン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−iso−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−iso−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−iso−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウム、テトラ−tert−ブトキシゲルマニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−iso−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウムが挙げられる。また、アルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムを触媒として用いてもよい。また、NHF、つまりフッ化アンモニウムを触媒として用いてもよい。中でも、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ストロンチウム、テトラ−tert−ブトキシチタン、及びテトラ−iso−プロポキシチタンが好ましい。迅速かつ均一な重合反応を達成するには反応温度領域で液状であることが好ましい。
【0017】
触媒の添加量は、(a)シラノール化合物、(b)アルコキシシラン、及び(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数に対して、0.01〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜3モル%である。
ここで、(a)シラノール化合物、(b)アルコキシシラン及び(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランの混合比は、(a)シラノール化合物100モルに対して(b)ア
ルコキシシラン及び(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数が90モル〜110モルであり、(b)アルコキシシランを10モル〜90モル、(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランを20モル〜80モルの範囲の割合が好ましい。(a)シラノール化合物100モルに対する(b)アルコキシシラン及び(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランの割合は、(b)アルコキシシラン20モル〜90モル、(c)酸無水物構造を含むアルコキシシラン20モル〜70モルが好ましく、(b)アルコキシシラン30〜90モル、(c)酸無水物構造を含むアルコキシシラン20〜60モルがより好ましい。
【0018】
上記(a)上記一般式(I)で表されるシラノール化合物の式中、RはC6〜C20のアリール基及びC6〜C20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる一種以上の基である。Rは、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。このうち好ましく用いることができるのは、フェニル基である。具体的には、ジフェニルシランジオール(以下、DPDと称する場合もある)が好ましく用いられる。
【0019】
(b)上記一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の式中、Rは、エポキシ基及び炭素−炭素二重結合基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の基を含むC2〜C17の基である。Rとしては、例えば、ビニル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)基、3−グリシドキシプロピル基、スチリル基、3−(メタ)アクリロキシプロピル基、2−(メタ)アクリロキシエチル基、(メタ)アクリロキシメチル基等を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル基及びメタクリル基を示す。以下同様である。具体的には、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ビニルエチレントリメトキシシラン、3−ビニルメチレントリメトキシシランが挙げられる。このうち、最も好ましくは3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、MEMOと称する場合もある)である。
【0020】
(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシラン化合物における式中、Rは、酸無水物構造を含むC4〜C12の一価の有機基である。Rは、Rに結合している。Rとして好ましい有機基は、例えば、Dihydro−furanyl−2,5−dione(下記、(R−1))、Hexahydro−isobenzofuranyl−1,3−dione(下記、(R−2))、4−Methyl−hexahydro−isobenzofuranyl−1,3−dione(下記、R−3)、5−Methyl−hexahydro−isobenzofuranyl−1,3−dione(下記、(R−4))、4−Oxa−tricyclo[5.2.1.02,6]decanyl−3,5−dione(下記、(R−5))、4,10−Dioxa−tricyclo[5.2.1.02,6]decanyl−3,5−dione(下記、(R−6))、Isobenzofuranyl−1,3−dione(下記、(R−7))が挙げられる。このうち、最も好ましくはDihydro−furanyl−2,5−dioneである。
【0021】
【化1】


(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシラン化合物における式中、RはC1〜C6の直鎖状又は分岐状の二価の有機基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基が挙げられる。これらの基が二重結合や三重結合を含んでいても良い。このうち、最も好ましくはプロピレン基である。
【0022】
(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシラン化合物における式中、RはC1〜C3の直鎖状又は分岐状の有機基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。このうち最も好ましくはエチル基である。
上式(c)酸無水物構造を含むアルコキシシラン化合物のうち、最も好ましくは、(3−トリエトキシシリルプロピル)コハク酸無水物(Gelest社製)である。
本発明の感光性樹脂組成物には、感光性を付与する目的で、光重合開始剤を添加することが重要である。好ましいものとしては以下の化合物が挙げられる。
【0023】
(1)ベンゾフェノン誘導体:例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン
(2)アセトフェノン誘導体:例えば、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE184)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE907)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE127)、フェニルグリオキシル酸メチル
【0024】
(3)チオキサントン誘導体:例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン
(4)ベンジル誘導体:例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール
(5)ベンゾイン誘導体:例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒド
ロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE1173)
【0025】
(6)オキシム系化合物:例えば、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)] (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE OXE01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE OXE02)
【0026】
(7)α−ヒドロキシケトン系化合物:例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン
(8)α−アミノアルキルフェノン系化合物:例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE379)
【0027】
(9)フォスフィンオキサイド系化合物:例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、DAROCURE TPO)
(10)チタノセン化合物:例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE784)
【0028】
また、これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
上記した光重合開始剤の中では、特に光感度の点で、(8)のα−アミノアルキルフェノン系化合物がより好ましい。
光重合開始剤の添加量は、上記ポリオルガノシロキサン100質量部に対して、0.01〜50質量部とするのが好ましく、0.3〜30質量部とするのがより好ましく、0.5〜10質量部が更に好ましい。添加量が実用的な硬化パターンを得る観点から、0.01質量部以上が好ましく、また、透明性の観点から、添加量は50質量部以下が好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物には、製膜特性や感光特性並びに硬化後の力学特性を改善する目的で、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物を添加することができる。このような光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としては、光重合開始剤の作用により重合可能な多官能(メタ)アクリル化合物が好ましく、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート[エチレングリコールユニットの数2〜20]、ポリエチレングリ
コールジメタクリレート[エチレングリコールユニットの数2〜20]、ポリ(1,2−プロピレングリコール)ジアクリレート[1,2−プロピレングリコールユニット数2〜20]、ポリ(1,2−プロピレングリコール)ジメタクリレート[1,2−プロピレングリコールユニット数2〜20]、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート[テトラメチレングリコールユニット数2〜10]、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート[テトラメチレングリコールユニット数2〜10]、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート[エチレングリコールユニットの数2〜20]、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリ−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート、トリ−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジグリシジルエーテル−メタクリル酸付加物、グリセロールジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−メタクリル酸付加物、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート[エチレングリコールユニットの数2〜30]、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート[エチレングリコールユニットの数2〜30]、N,N’−ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)尿素が挙げられる。また、これらの使用にあたっては、必要に応じて、単独でも2種以上を混合して用いてもかまわない。光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物を添加する場合の添加量は、上述したポリオルガノシロキサン100質量部に対して、1〜100質量部であり、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは5〜30質量部である。
【0030】
上記化合物として好ましく用いられる光重合性の不飽和結合基を2つ以上と脂環式部位とを有する化合物とは、例えば、下記一般式(1)〜(8)で表される群からなる少なくとも一種の化合物及び、一般式(1)〜(8)で表される化合物における脂環式部位の中から少なくとも2種の脂環式部位を構造中に有する化合物が挙げられる。下記一般式(6)及び(7)で表される群からなる少なくとも1種の部位を構造中に有する化合物がより好ましい。
【0031】
【化2】


(式中、R12は、−O−(CH−X、−(CO)−X、及び−(CO)−Xで表される群からなる一種の基で、Xはメタクリル基、又はアクリル基を表す。gは0〜20の整数を表す。
【0032】
上式中のR13は、C1〜C3の有機基を表す。
式中、e1は2〜5より選ばれる整数であり、f1は0〜5より選ばれる整数である。e1+f1は10を超えることは無い。
式中、e2は2〜6より選ばれる整数であり、f2は0〜6より選ばれる整数である。e2+f2は12を超えることは無い。
式中、e3は2〜7より選ばれる整数であり、f3は0〜7より選ばれる整数である。e3+f3は14を超えることは無い。
式中、e4は2〜4より選ばれる整数であり、f4は0〜7より選ばれる整数である。e4+f4は10を超えることは無い。
【0033】
式中、e5は2〜6より選ばれる整数であり、f5は0〜6より選ばれる整数である。e5+f5は12を超えることは無い。
式中、e6は2〜10より選ばれる整数であり、f6は0〜10より選ばれる整数である。e6+f6は20を超えることは無い。
式中、e7は2〜6より選ばれる整数であり、f7は0〜6より選ばれる整数である。e7+f7は14を超えることは無い。
式中、e8は2〜4より選ばれる整数であり、f8は0〜4より選ばれる整数である。e8+f8は12を超えることは無い。)
【0034】
また、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物の使用にあたっては、必要に応じて、単独でも2種以上を混合して用いてもかまわない。光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物を添加する場合の添加量は、上述したポリオルガノシロキサン100質量部に対して、1〜100質量部であり、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは5〜30質量部である。
本発明の感光性樹脂組成物には、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、下記一般式(IV)で表されるアルコキシシランが挙げら
れる。
10Si (OR11 4−c−d (IV)
(R はエポキシ基及び炭素−炭素二重結合を有する基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を含む炭素数2〜17の有機基である。R10 及びR11はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基である。cは1及び2から選ばれる整数である。dは0及び1から選ばれる整数である。c+dは2を超えることはない。)
【0035】
上記一般式(IV)で表されるアルコキシシランの具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。中でも3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GLYMOと称する場合もある)とMEMOがより好ましい。
シランカップリング剤を添加する場合の添加量は、上述したポリオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。添加量は、3〜7質量部がより好ましい。密着性の発現の観点から0.1質量部以上が好ましく、耐温度衝撃性の観点から10質量部以下が好ましい。
【0036】
本発明の組成物においては、溶媒を添加して粘度を調整することもできる。好適な溶媒としては、例えば、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、炭素数1〜6程度のアルコールが挙げられ、これらは単独または二種以上の組合せで用いることができる。これらの溶媒は、塗布膜厚、粘度に応じて、本発明の組成物に適宜加えることができるが、ポリオルガノシロキサン100質量部に対し、5〜100質量部の範囲で用いることが好ましい。
硬化レリーフパターンの形成は、少なくとも、基材上に上述した感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を得る工程、塗布膜に活性光線を照射し露光部を光硬化させる工程、現像液を用いて該膜の未硬化の部分を除去する工程、基材ごと加熱する工程を順に行う。
【0037】
具体的には、上記により得られた感光性樹脂組成物を、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機で塗布するか、スプレーコーターで噴霧塗布する方法により基板、例えば、シリコンウェハの上に塗布膜を得る。塗布膜の厚みは1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。
得られた塗布膜は、溶剤を含有する場合には、例えば、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥により乾燥する。
このようにして得られた塗布膜は、露光装置、例えば、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパーを用いて、紫外線光源により露光される。光硬化型樹脂としてのパターンの解像度及び取扱い性の点で、その光源波長はi線が好ましく、装置としてはステッパーが好ましい。
【0038】
露光した塗布膜は必要に応じて、例えばホットプレート又はオーブンによって加熱してもよい。
現像は、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法の中から任意の方法を選んで行うことができる。
使用されるアルカリ現像液としては、Tetramethyl ammonium hydroxide (以下、「TMAH」)溶液を用いる事ができる。現像液の濃度は、0.1〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましく、最も好ましくは1〜3%である。
【0039】
現像終了後、現像液を除去するために、洗浄液による洗浄(以下、リンスという)を行っても良い。リンス液としては、水を用いる事ができる。
リンス方法としては、スプレーリンス、浸漬リンス、超音波リンスなどが好例として挙
げられるが、浸漬リンス法が好ましい。 基材ごと加熱する工程では、硬化レリーフパターン付き基材を最終的に150℃以上300℃以下に加熱し、未反応二重結合又は未反応エポキシ基を更に反応させて、キュア膜を得ることができる。加熱温度は、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱時の未反応二重結合又は未反応エポキシ基の反応の進行の観点から150℃以上、熱分解の観点から300℃以下である。加熱は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンにより行うことが出来る。加熱する際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴンを用いることができる。加熱時間は未反応二重結合又は未反応エポキシ基の反応の進行の観点から0.5時間以上、熱分解の観点から8時間以下が好ましい。
【実施例】
【0040】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本願発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
1)500mlのナス型フラスコ中に(a)シラノール化合物としてDPD(ジフェニルシランジオール) 0.067モル(14.42g)、(b)アルコキシシランとしてMEMO(3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン) 0.032モル(7.91g)、(c)酸無水物構造を含むアルコキシシランとして(3−トリエトキシシリルプロピル)無水コハク酸 0.032モル(9.70g)、触媒としてテトラ−iso−プロポキシチタン 0.0015モル(0.42g)を仕込んだ。冷却器をナスフラスコに取り付けた状態で、オイルバスを用いて、室温から80℃まで徐々に昇温し、8
0℃で発生メタノールによるリフラックスを確認後1時間同温度でリフラックスを継続させた。その後、冷却器を取り除き、60℃に冷却した後、メタノールを真空引きで除去した。突沸が起こらないように徐々に真空度を上げ、1〜3torr程度になったら、60℃で攪拌しながら真空引きを2時間継続し、メタノールを除去した後、徐々に常圧に戻して透明なポリオルガノシロキサンを得た。得られたポリオルガノシロキサンを室温に冷却した後、得られたポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤IRGACURE369(チバガイギー社製) 4質量部、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてポリエチレングリコールジメタクリレート[エチレングリコールのユニット数約23](商品名 PDE−1000、日本油脂株式会社製) 20質量部、NMP(N−メチルピロリドン) 15質量部を添加し、1μm及び3μmのフィルターを2枚重ねてろ過し、感光性樹脂組成物とした。
【0041】
2)得られた感光性樹脂組成物を、シリコン基板上に滴下し、2000rpmで30秒スピンコートした。得られた塗布膜を、120℃で6分間ホットプレートを用いて加熱し、残存揮発成分を除去した。
3)i線ステッパ(NSR2005 i8A)を用いて露光を行った。露光量は表1に示す。
4)現像は、2.38質量%のTMAH溶液に2分間浸漬させて行った。リンスはイオン交換水に浸漬させて行った。
5)最後にN中で2時間、200℃の加熱を行った。
【0042】
[実施例2]
実施例1で作成したポリオルガノシロキサンに100質量部に、光ラジカル重合開始剤
IRGACURE369 4質量部(チバガイギー社製)、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてポリエチレングリコールジメタクリレート[エチレングリコールのユニット数約4](商品名 PDBE−200、日本油脂株式会社製) 20質量部、NMP 15質量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0043】
[実施例3]
実施例1で作成したポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤 IRGACURE369 4質量部(チバガイギー社製)、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(商品名 M−309、東亜合成株式会社製) 20質量部、NMP 15質量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例4]
実施例1で作成したポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤 IRGACURE369 4質量部(チバガイギー社製)、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてポリエチレングリコール水添ビスフェノールAジメタクリレート[エチレングリコールのユニット数10](商品名 MD−816、第一化学工業製薬会社製) 20質量部、NMP 10質量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0044】
[実施例5]
実施例1で作成したポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤 IRGACURE907 4質量部(チバガイギー社製)、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてMD−816ポリエチレングリコール水添ビスフェノールAジメタクリレート[エチレングリコールのユニット数10](商品名
第一化学工業製薬会社製) 20質量部、NMP 10質量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例6]
実施例1で作成したポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤 IRGACURE369 4質量部(チバガイギー社製)、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(商品名 DCP、新中村化学工業株式会社製) 20質量部、NMP 10質量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0045】
[比較例1]
300mlのナス型フラスコ中にDPD 0.1モル(21.63g)、MEMO 0.0956モル(23.74g)、触媒としてテトラ−iso−プロポキシチタン 0.0022モル(0.63g)を仕込んだ。冷却器をナスフラスコに取り付けた状態でオイルバスを用いて、室温から80℃まで徐々に昇温し、80℃で発生メタノールによるリフラックスを確認後1時間同温度でリフラックスを継続させた。その後、冷却器を取り除き、メタノールを真空引きで除去した。突沸が起こらないように徐々に真空度を上げ、3torrになったら、80℃で攪拌しながら真空引きを2時間継続し、メタノールを除去した後、徐々に常圧に戻して、透明なポリオルガノシロキサンを得た。得られたポリオルガノシロキサンを室温に冷却後、ポリオルガノシロキサン100質量部に、光ラジカル重合開始剤 IRGACURE369(チバガイギー社製) 4質量部、MEMO 3質量部、光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物としてポリエチレングリコールジメタクリレート[エチレングリコールのユニット数約23](商品名 PDE−1000 日本油脂株式会社製) 20質量部、NMP 15質量部を添加し、1μm及び3μmのフィルターを2枚重ねてろ過し、感光性樹脂組成物とした。得られた感光性樹脂組成物を用い実施例1の上記2)〜5)と同じ操作を行った。
【0046】
実施例1〜6及び比較例1の評価方法は以下の通りである。
解像度: アスペクト比1の正方形の抜きパターンを形成することが出来る最小の露光量。
現像残膜率: 塗布膜を露光し、現像を行った時の、現像前と比較した現像後の残膜率。キュア残膜率: 塗布膜を露光した後、窒素気流下のオーブンで、室温から200℃まで
5℃/minで昇温し、200℃で2時間保った後、室温まで5℃/minで冷却したキュア膜の、キュア前と比較したキュア後の残膜率。
実施例1〜6及び比較例1の評価結果は表1に示した。
【0047】
【表1】


比較例1では、解像できる画像は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリオルガノシロキサンは、電子部品の絶縁材料や半導体装置における表面保護膜、層間絶縁膜、α線遮蔽膜などの形成、及びイメージセンサやマイクロマシンあるいはマイクロアクチュエーターを搭載した半導体装置及びその形成に使用される感光性樹脂組成物に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表されるシラノール化合物、(b)下記一般式(II)で表されるアルコキシシラン、及び、(c)下記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランを、触媒の存在下、積極的に水を添加することなく縮合させる方法で得られるポリオルガノシロキサン。
Si(OH) (I)
(式中、RはC6〜C20のアリール基及びC6〜C20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる一種以上の基であり、互いに同一であっても異なっていても良く、また、共有結合を介して互いに結ばれていても良い。)
Si (OR4−a−b (II)
(式中、Rはエポキシ基及び炭素−炭素二重結合基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の基を含むC2〜C17の基である。R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基である。RとRは共有結合を介して互いに結ばれていても良い。aは1及び2から選ばれる整数であり、bは0及び1から選ばれる整数である。a+bは2を超えることは無い。)
−R−Si (OR (III)
(式中、Rは、酸無水物構造を含むC4〜C12の一価の有機基である。RはC1〜C6の直鎖状又は分岐状の二価の有機基である。RはC1〜C3の直鎖状又は分岐状の有機基である。)
【請求項2】
前記触媒として、3価又は4価の金属アルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、及びNHFからなる群より選ばれる1種類以上の触媒を、(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数に対し、0.01〜10モル%添加して合成したポリオルガノシロキサンを用いることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
前記触媒として、B(OR、Al(OR、Ti(OR、Zr(OR、Ba(OH)、NaOH、及びNHF(ここでRは、炭素数1〜12の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基)からなる群より選ばれる1種以上の触媒を、(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数に対し、0.01〜10モル%添加して合成したポリオルガノシロキサンを用いることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項4】
(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物100モルに対して(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシラン及び(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランの合計モル数が90モル〜110モルであり、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシランが10モル〜90モル、(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランが20モル〜80モルの範囲の割合で縮合することを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項5】
(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランにおいて、式中、RがC4〜C8の酸無水物構造を含む有機基であることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項6】
(c)上記一般式(III)で表される酸無水物構造を含むアルコキシシランにおいて、式中、Rが無水コハク酸の残基で、Rがプロピレン基であることを特徴とする請求
項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項7】
(a)上記一般式(I)で表わされるシラノール化合物がジフェニルシランジオールであり、(b)上記一般式(II)で表わされるアルコキシシランが3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであり、(c)上記一般式(III)で表わされる酸無水物構造を含むアルコキシシランが(3−トリエトキシシリルプロピル)無水コハク酸であることを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
【請求項8】
請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部及び
光重合開始剤:0.01〜50質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部、
光重合開始剤:0.01〜50質量部、及び
光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物:1〜100質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜7にいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン:100質量部、
光重合開始剤:0.01〜50質量部、
光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物:1〜100質量部、及び
シランカップリング剤:0.1〜10質量部、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項11】
上記光重合性の不飽和結合基を2つ以上有する化合物が、光重合性の不飽和結合基を2つ以上と脂環式部位とを有する化合物であることを特徴とする請求項9又は10感光性樹脂組成物。
【請求項12】
基材上に請求項8〜11のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を得る工程、塗布膜に活性光線を照射し露光部を光硬化させる工程、現像液を用いて該膜の未硬化の部分を除去する工程、基材ごと加熱する工程を順に含む、硬化レリーフパターンの形成方法。
【請求項13】
基材としてシリコンウエハを用い、請求項12に記載の方法によって、シリコンウエハ面上に硬化レリーフパターンを積層して得られる樹脂積層体。

【公開番号】特開2009−19093(P2009−19093A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182131(P2007−182131)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】