説明

三次元計測装置及び基板検査装置

【課題】三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測をより短時間で実現することのできる三次元計測装置及び基板検査装置を提供する。
【解決手段】基板検査装置は、プリント基板に対し光を照射する照明装置と、プリント基板上の前記照射された部分を撮像するCCDカメラと、各種制御を行う制御装置とを備えている。そして、検査対象領域が輝度飽和しない第1露光時間で第1撮像処理を行い、計測基準領域の計測に適した所定の露光時間のうち、前記第1露光時間で不足した分に相当する第2露光時間で第2撮像処理を行う。続いて、検査対象領域に関しては、第1撮像処理により得た画像データの値を用い、計測基準領域に関しては、第1撮像処理により得た画像データの値と、第2撮像処理により得た画像データの値とを合算した値を用いた三次元計測用の画像データを作成し、当該三次元計測用の画像データに基づき、三次元計測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物の三次元形状等を計測する三次元計測装置及び当該三次元計測装置を備える基板検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板は、ガラスエポキシ樹脂からなるベース基板の上に電極パターンを具備し、表面がレジスト膜によって保護されている。前記プリント基板上に電子部品を実装する場合、まず電極パターン上のレジスト膜による保護がされていない所定位置にクリームハンダが印刷される。次に、該クリームハンダの粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることでハンダ付けが行われる。昨今では、リフロー炉に導かれる前段階においてクリームハンダの印刷状態を検査する必要があり、かかる検査に際して三次元計測装置が用いられることがある。
【0003】
近年、光を用いたいわゆる非接触式の三次元計測装置が種々提案されている。例えば、位相シフト法を用いた三次元計測装置においては、照射手段によって、可視光を光源とした縞状の光強度分布を有する光パターンを対象物(この場合プリント基板)に照射する。そして、CCDカメラによって対象物を撮像し、得た画像から前記光パターンの縞の位相差を解析することで、クリームハンダの三次元形状、特に高さが計測される。
【0004】
ところが、プリント基板上のクリームハンダの印刷部分の周囲(以下、背景領域という)の色は様々である。これは、ガラスエポキシ樹脂やレジスト膜に種々の色が使用されるためである。そして、例えば黒色などの比較的暗い色の背景領域では、CCDカメラによる撮像に基づく画像データのコントラストが小さくなってしまう。つまり、画像データ上、上記光パターンの明暗の差(輝度差)が小さくなってしまうのである。そのため、背景領域の高さの計測が困難となるおそれがある。本来であれば基板上に印刷されたクリームハンダの高さをより高精度で計測するためには、その基板内に高さ基準を採ることが望ましい。しかしながら、背景領域を高さ基準面として適正に利用できないため、その基板内に高さ基準を採ることができないといった不具合を生じるおそれがある。
【0005】
そこで、例えばハンダ印刷領域(明部)に適した露光時間(例えば10ms)による撮像と、背景領域(暗部)に適した露光時間(例えば50ms)による撮像とを別々に行い、高さ基準を適切に計測する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、画像データ上、対象物の明部に対応するエリア内の画素が輝度飽和しない程度の露光時間(例えば10ms)で複数回撮像を行い、当該撮像により得た複数の画像データを合算することにより、ダイナミックレンジを拡大する技術なども提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−300539号公報
【特許文献2】特開平7−50786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように、ハンダ印刷領域(明部)用の撮像と、背景領域(暗部)用の撮像とを別々に行う構成では、所定の計測対象エリア(撮像エリア)の三次元計測を行う上で必要な全ての画像データを取得するまでに比較的長い時間を要するおそれがある。
【0009】
仮にハンダ印刷領域を計測するのに最適な露光時間を10ms、高さ基準を計測するのに最適な露光時間を50ms、各画像データを転送するのに要するデータ転送時間を16msと仮定した場合、上記特許文献1の構成では、ハンダ印刷領域用の撮像時間[10ms]+データ転送時間[16ms]+背景領域用の撮像時間[50ms]+データ転送時間[16ms]=合計[92ms]といった時間を要する。
【0010】
また、上記特許文献2のように、対象物の明部に対応するエリア内の画素が輝度飽和しない程度の露光時間で複数回撮像を行う構成においては、撮像回数が著しく増加するおそれがある。このため、上記同様の条件の下では(撮像時間[10ms]+データ転送時間[16ms])×5回=合計[130ms]といった、さらに長い時間を要することとなる。
【0011】
また、一枚のプリント基板上に計測対象エリア(撮像エリア)が多数設定されている場合や、位相シフト法を利用した三次元計測などのように1回の三次元計測を行うにあたり3〜4回の撮像を必要とする場合には、一枚のプリント基板の計測に要する計測時間はさらにその数倍となる。
【0012】
なお、上記課題は、必ずしもプリント基板上に印刷されたクリームハンダ等の高さ計測を行う場合に限らず、他の三次元計測装置の分野においても内在するものである。勿論、位相シフト法に限られる問題ではない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測をより短時間で実現することのできる三次元計測装置及び基板検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0015】
手段1.検査対象となる第1エリア(例えばハンダ印刷領域)及び当該第1エリアの高さ計測の基準となる第2エリア(例えば背景領域)を有する計測対象物に対し、三次元計測用の光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された前記計測対象物からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき、前記計測対象物の三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記第1エリア又は前記第2エリアの一方である明部に対応する箇所が輝度飽和しない第1露光時間(例えば10ms)により撮像を行う第1撮像処理と、
前記第1エリア又は前記第2エリアの他方である暗部の計測に適した所定の露光時間(例えば50ms)のうち、前記第1露光時間(例えば10ms)で不足した分に相当する第2露光時間(例えば40ms)により撮像を行う第2撮像処理と、
前記第1撮像処理により取得した画像データの輝度飽和していない箇所と、前記第2撮像処理により取得した画像データの輝度飽和していない箇所とを合成して、前記第1エリア及び前記第2エリアについて輝度飽和していない三次元計測用の画像データを作成する画像作成処理と、
前記三次元計測用の画像データを基に三次元計測を行う三次元計測処理とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0016】
上記「発明が解決しようとする課題」で述べたように、第1エリアの計測を目的とする撮像を行った場合、画像データ上、第2エリアにおいては、輝度が高すぎたり低すぎたりあるいは明暗の差(輝度差)が小さくなってしまうことがある。例えば、第2エリアの色が第1エリアに比べて暗い色である場合には、画像データ上の輝度差が比較的小さくなる。一方、第2エリアの色が第1エリアに比べて明るい色である場合には、画像データ上の輝度値が飽和するおそれがある。そのため、第2エリアを高さ基準面として、精度良く三次元計測を行うことができないおそれがある。
【0017】
この点、本手段1では、明部に対応する箇所が輝度飽和しない第1露光時間で撮像した画像データの輝度飽和していない箇所と、暗部の計測に適した所定の露光時間のうち、前記第1露光時間で不足した分に相当する第2露光時間で撮像した画像データの輝度飽和していない箇所とを合成して、第1エリア及び第2エリアについて輝度飽和していない三次元計測用の画像データを作成する。これにより、暗部に関しては、ダイナミックレンジを拡大したデータを基に三次元計測を適切に行うことができるとともに、明部に関しても、輝度飽和していないデータを基に三次元計測を適切に行うことができる。結果として、第2エリアの三次元計測を適切に行うことができ、ひいては当該第2エリアを高さ基準面として第1エリアの三次元計測を精度良く行うことができる。
【0018】
さらに、本手段によれば、所定の計測対象エリアにつき、三次元計測を行う上で必要な全ての画像データを取得するまでに要する時間を短縮することができる。
【0019】
例えば、明部(例えば第1エリア)に対応する箇所が輝度飽和しない露光時間を10ms、暗部(例えば第2エリア)の計測に適した所定の露光時間を50ms、各画像データを転送するのに要するデータ転送時間を16msと仮定した場合、本手段において必要な時間は、第1露光時間に相当する第1撮像処理の撮像時間[10ms]+データ転送時間[16ms]+第2露光時間に相当する第2撮像処理の撮像時間[40ms]+データ転送時間[16ms]=合計[82ms]となる。つまり、第1エリアの計測を目的とする撮像及び第2エリアの計測を目的とする撮像をそれぞれ1回ずつ行う上記特許文献1の構成に比べて、本手段によれば、上記第1露光時間に相当する分の[10ms(約11%)]の短縮が可能となる。同様に、上記特許文献2の構成に比べては、[48ms(約37%)]の短縮となる。
【0020】
結果として、本手段によれば、より高精度な計測をより短時間で実現できることとなる。
【0021】
手段2.前記画像作成処理にて前記三次元計測用の画像データを作成するに際し、
前記明部に対応する箇所に関しては、前記第1撮像処理により取得した画像データの値(各画素の輝度値)を用い、
前記暗部に対応する箇所に関しては、前記第1撮像処理により取得した画像データの値と、前記第2撮像処理により取得した画像データの値とを合算した値を用いることを特徴とする手段1に記載の三次元計測装置。
【0022】
上記手段2によれば、三次元計測用の画像データを作成するに際し、例えば第1エリア及び第2エリア(明部及び暗部)の両エリアに関し、第1撮像処理により取得した画像データの値と、第2撮像処理により取得した画像データの値とを合算した値を採用した場合のように、明部に対応する箇所が輝度飽和してしまうことがない。一方、暗部に対応する箇所に関しては、暗部の計測に適した所定の露光時間(第1露光時間+第2露光時間)で撮像された画像データの値と同様の値が得られる。
【0023】
これにより、三次元計測処理に際し、明部に関しては、第1撮像処理により得た画像データの値を基に三次元計測(明部計測処理)が行われ、暗部に関しては、第1撮像処理により取得した画像データの値と、第2撮像処理により取得した画像データの値とを合算した値を基に三次元計測(暗部計測処理)が行われることとなる。
【0024】
結果として、比較的簡単な処理で上記手段1の作用効果を実現することができる。
【0025】
手段3.前記計測対象物に係る設計データを記憶する記憶手段を備え、
前記画像作成処理においては、前記設計データを基に、前記第1エリア及び前記第2エリアそれぞれについて、前記第1撮像処理により取得した画像データの値、又は、前記合算した値のいずれの値を用いるかを選択することを特徴とする手段2に記載の三次元計測装置。
【0026】
上記手段3によれば、三次元計測用の画像データを作成するに際し、予め記憶された設計データを基に、第1エリア及び第2エリアそれぞれについて、第1撮像処理により取得した画像データの値、又は、前記合算した値のいずれの値を用いるのかを選択する構成となっている。これにより、例えば撮像手段によって撮像された画像データから抽出した各種情報を基に、いずれのデータを用いるのか選択する構成に比べ、処理手順の簡素化や処理速度の向上を図ることができる。結果として、計測時間のさらなる短縮を図ることができる。
【0027】
なお、本手段によれば、例えば、第2エリアの色が第1エリアに比べて暗い色である場合には、第1エリアに関しては、第1撮像処理により取得した画像データの値が用いられ、第2エリアに関しては、合算した値が用いられることとなる。
【0028】
手段4.前記画像作成処理にて前記三次元計測用の画像データを作成するに際し、
前記第1撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値と、前記第2撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値とを合算した値が輝度飽和しているか否かを各画素について判定し、
輝度飽和している場合には、当該画素に関して、前記第1撮像処理により取得した画像データの輝度値を用い、
輝度飽和していない場合には、当該画素に関して、前記合算した値を用いることを特徴とする手段1に記載の三次元計測装置。
【0029】
上記手段4によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏される。加えて、本手段4によれば、暗部のみならず、明部に対応する箇所に関しても、上記合算した値が輝度飽和していない場合には、当該値を採用することができる。CCD等の撮像素子のノイズは、受光量の平方根に依存するため、受光量が増えれば増えるほど、信号とノイズの差が大きくなり、より精度の高い画像データを取得することができる。結果として、より高精度の計測を行うことが可能となる。
【0030】
手段5.位相の異なる光を複数通り照射して得られた複数通りの前記三次元計測用の画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行うことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0031】
上記手段5の構成の下では、上記手段1等の作用効果がより奏功することとなる。位相シフト法を利用した三次元計測では、照射光の位相を複数通りに変化させ、各段階に対応する強度分布をもつ複数通りの画像データを取得する必要がある。つまり、位相を変化させる度に撮像を行わなければならず、所定の計測対象エリア(撮像エリア)につき、複数回の撮像を行う必要がある。このため、1回の撮像にかかる時間が長くなると、当該エリアの三次元計測を行う上で必要な全ての画像データを取得するのに要する時間はこの数倍となる。従って、1回の撮像にかかる時間が僅かな差であっても、全体として大きな差が生じることとなる。
【0032】
手段6.前記計測対象物は、ベース基板に対して電極パターンが形成されたプリント基板であり、
前記第1エリアは、前記電極パターン上にハンダが印刷されたハンダ印刷領域であり、
前記第2エリアは、ハンダ印刷領域以外の背景領域に設けられ、前記電極パターン、前記ベース基板、前記電極パターン上を覆うレジスト膜、あるいは、前記ベース基板上を覆うレジスト膜の領域であることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0033】
なお、ここで「ハンダが印刷されたハンダ印刷領域」は、クリームハンダを含むいわゆるハンダの領域、銀ペーストの領域、導電性接着剤の領域、バンプの領域などを含むものとする。
【0034】
手段7.手段1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【0035】
上記手段7のように、手段1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置を基板検査装置に備えることで、プリント基板の製造過程において不良品の検査を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】一実施形態における基板検査装置を模式的に示す概略斜視図である。
【図2】プリント基板の断面図である。
【図3】基板検査装置の概略を示すブロック図である。
【図4】検査対象領域及び計測基準領域を説明するための説明図である。
【図5】撮像ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図2に示すように、プリント基板1は、平板状をなし(平面を備え)、ガラスエポキシ樹脂等からなるベース基板2に、銅箔からなる電極パターン3が設けられている。さらに、所定の電極パターン3上には、クリームハンダ4が印刷形成されている。このクリームハンダ4が印刷された領域を「ハンダ印刷領域」ということにする。ハンダ印刷領域以外の部分を「背景領域」と総称するが、この背景領域には、電極パターン3が露出した領域(記号A)、ベース基板2が露出した領域(記号B)、ベース基板2上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号C)、及び、電極パターン3上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号D)が含まれる。なお、レジスト膜5は、所定配線部分以外にクリームハンダ4がのらないように、プリント基板1の表面にコーティングされるものである。本実施形態では、背景領域は黒色あるいは相対的に黒色に近い灰色となっている。
【0039】
図1は、本実施形態における三次元計測装置を具備する基板検査装置8を模式的に示す概略構成図である。同図に示すように、基板検査装置8は、プリント基板1を載置するための載置台9と、プリント基板1の表面に対し斜め上方から所定の光成分パターンを照射するための照射手段としての照明装置10と、プリント基板1上の前記照射された部分を撮像するための撮像手段としてのCCDカメラ11と、基板検査装置8内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御手段としての制御装置12とを備えている。
【0040】
前記載置台9には、モータ15,16が設けられており、該モータ15,16が制御装置12により駆動制御されることによって、載置台9上に載置されたプリント基板1が任意の方向(X軸方向及びY軸方向)へスライドさせられるようになっている。
【0041】
次に、制御装置12の電気的構成について説明する。図3に示すように、制御装置12は、基板検査装置8全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース21、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される入力装置22、CRTや液晶などの表示画面を有する表示装置23、CCDカメラ11による撮像に基づく画像データ等を記憶するための画像データ記憶装置24、CCDカメラ11による撮像に基づいてクリームハンダ4の高さや体積の計測を行う画像処理手段としての画像処理装置25、及び、ガーバデータ等の設計データや検査結果等を記憶するための記憶手段としての記憶装置26を備えている。なお、これら各装置22〜27は、CPU及び入出力インターフェース21(以下、CPU等21という)に対し電気的に接続されている。
【0042】
ここで、プリント基板1上の検査領域等について説明する。計測対象物となるプリント基板1には、ガーバデータ等の設計データに基づき、検査領域などが設定される。例えば、図4(a)に示すように、クリームハンダ4の印刷されたハンダ印刷領域に対し、検査対象となる「第1エリア」としての検査対象領域31(斜線を施して示した領域)が設定される。一方、図4(b)に示すように、背景領域に対し、高さ計測の基準となる「第2エリア」としての計測基準領域32(斜線を施して示した領域)が設定される。
【0043】
また、プリント基板1には、検査視野(計測対象エリア)が予め設定され、この検査視野に合わせて載置台9上に載置されたプリント基板1が任意の方向(X軸方向及びY軸方向)へスライドさせられ、この検査視野ごとに、照明装置10による光パターンの照射及びCCDカメラ11による撮像がなされて、検査対象領域31のクリームハンダ4の印刷状態が検査される。このとき、計測基準領域32が高さ基準面として利用される。
【0044】
次に、各検査視野ごとに行われる撮像ルーチンについて、図5のフローチャートに基づき説明する。この撮像ルーチンは、CPU等21にて実行されるものである。
【0045】
ステップS101の第1撮像処理では、照明装置10が点灯され、プリント基板1の表面に対し斜め上方から所定の光成分パターンが照射される。そして、CPU等21からの制御信号によりCCDカメラ11が照射部分を撮像する。CCDカメラ11により撮像された画像データは、画像データ記憶装置24へ転送され記憶される。
【0046】
なお、第1撮像処理における撮像は、画像データ上、明部となる検査対象領域31に対応する箇所が輝度飽和しない第1露光時間(本実施形態では10ms)で行われる。
【0047】
続くステップS102の第2撮像処理に関しても、ステップS101の第1撮像処理と同様、照明装置10が点灯され、プリント基板1の表面に対し斜め上方から所定の光成分パターンが照射される。そして、CPU等21からの制御信号によりCCDカメラ11が照射部分を撮像する。CCDカメラ11により撮像された画像データは、画像データ記憶装置24へ転送され記憶される。
【0048】
但し、ステップS101の第1撮像処理とは異なり、第2撮像処理における撮像は、暗部となる計測基準領域32の計測に適した所定の露光時間(本実施形態では50ms)のうち、前記第1露光時間(10ms)で不足した分に相当する第2露光時間(本実施形態では40ms)で行われる。
【0049】
ステップS103の画像作成処理では、ステップS101の第1撮像処理により取得した画像データと、ステップS102の第2撮像処理により取得した画像データとを合成して、検査対象領域31及び計測基準領域32について輝度飽和していない三次元計測用の画像データを作成する。
【0050】
より詳しくは、ガーバデータ等の設計データを基に、明部である検査対象領域31に対応する箇所に関しては、ステップS101の第1撮像処理により取得した画像データの値を用い、暗部である計測基準領域32に対応する箇所に関しては、ステップS101の第1撮像処理により取得した画像データと、ステップS102の第2撮像処理により取得した画像データとを合算した値を用いて、三次元計測用の画像データを作成する。
【0051】
なお、以下の前提(1),(2)の下、2回の撮像による輝度値を単純加算したことによる輝度値の信頼性の低下はない。
【0052】
(1)撮像により発生するノイズは、ほとんどが光ショットノイズ(真の光量に対する測定値のゆらぎ)であり、他のノイズ(暗電流やリードライトノイズなど)は無視できるものとする。光ショットノイズの標準偏差は、光子数の平方根に等しい。
【0053】
(2)光ショットノイズは、撮像の回数に依存することはないものとする。例えば、2回撮像して単純加算した場合は、1回目の撮像の光子数と2回目の光子数を加算した数の平方根と(標準偏差が)等しくなるものとする。
【0054】
そして、ここで作成された三次元計測用の画像データは、画像データ記憶装置24に一旦記憶される。これにて、当該検査視野に係る撮像ルーチンが終了する。
【0055】
その後、位相の異なる光成分パターンを複数通り(本実施形態では4回)照射して上記撮像ルーチンにより得られた複数通りの前記三次元計測用の画像データを基に、画像処理装置25が、位相シフト法により検査対象領域31及び計測基準領域32の三次元計測処理(高さ計測)を行う。これにより、計測基準領域32を高さ基準面として検査対象領域31のクリームハンダ4の高さや体積が計測されることになる。
【0056】
この計測値に基づいてCPU等21は、クリームハンダ4の印刷状態を検査し、良/不良の判定を行って、その検査結果を、記憶装置26へ記憶する。また、不良判定されたプリント基板1は、図示しない排出機構によって排出される。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態では、各検査視野ごとに行われる撮像ルーチンにおいて、明部となる検査対象領域(ハンダ印刷領域)31に対応する箇所が輝度飽和しない第1露光時間で第1撮像処理を行うとともに、暗部となる計測基準領域(背景領域)32の計測に適した所定の露光時間のうち、前記第1露光時間で不足した分に相当する第2露光時間で第2撮像処理を行う。
【0058】
続いて、明部である検査対象領域31に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データの値を用いるとともに、暗部である計測基準領域32に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データと、第2撮像処理により取得した画像データとを合算した値を用いた三次元計測用の画像データを作成する。
【0059】
そして、このように得られた複数通りの三次元計測用の画像データに基づき、検査対象領域31に関しては、第1撮像処理により得た輝度飽和していない画像データの値を基に三次元計測が行われ、計測基準領域32に関しては、当該計測基準領域32の計測に適した所定の露光時間(第1露光時間+第2露光時間)で撮像された画像データの値と同様の値を基に三次元計測が行われることとなる。つまり、計測基準領域32に関しては、ダイナミックレンジを拡大したデータを基に三次元計測を適切に行うことができるとともに、検査対象領域31に関しても、輝度飽和していないデータを基に三次元計測を適切に行うことができる。
【0060】
結果として、計測基準領域32の三次元計測を適切に行うことができ、ひいては当該計測基準領域32を高さ基準面としてクリームハンダ4の三次元計測を精度良く行うことができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、各検査視野につき、三次元計測を行う上で必要な全ての画像データを取得するまでに要する時間を短縮することができる。
【0062】
例えば、各画像データを転送するのに要するデータ転送時間を16msと仮定した場合、本実施形態において必要な時間は、第1露光時間に相当する第1撮像処理の撮像時間[10ms]+データ転送時間[16ms]+第2露光時間に相当する第2撮像処理の撮像時間[40ms]+データ転送時間[16ms]=合計[82ms]の4倍となる。つまり、検査対象領域31の計測を目的とする撮像及び計測基準領域32の計測を目的とする撮像をそれぞれ1回ずつ行う上記特許文献1の構成に比べて、上記第1露光時間に相当する[10ms]×4=合計[40ms]の短縮が可能となる。同様に、上記特許文献2の構成に比べて、[48ms]×4=合計[192ms]の短縮が可能となる。
【0063】
結果として、本実施形態によれば、より高精度な計測をより短時間で実現できることとなる。
【0064】
加えて、本実施形態では、三次元計測用の画像データを作成するに際し、予め記憶された設計データを基に、検査対象領域31及び計測基準領域32それぞれについて、第1撮像処理により取得した画像データの値、又は、前記合算した値のいずれの値を用いるのかを選択する構成となっている。これにより、例えばCCDカメラ11により撮像された画像データから抽出した各種情報を基に、いずれのデータを用いるのか選択する構成に比べ、処理手順の簡素化や処理速度の向上を図ることができる。結果として、計測時間のさらなる短縮を図ることができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、計測基準領域32(背景領域)が検査対象領域31(ハンダ印刷領域)よりも暗い、黒色あるいは相対的に黒色に近い灰色であるプリント基板1を計測する場合に具体化しているが、これに限らず、計測基準領域32が検査対象領域31よりも明るい、例えば背景領域が白色あるいは相対的に白色に近い灰色であるプリント基板1を計測する場合に具体化してもよい。かかる場合、検査対象領域31よりも、計測基準領域32における輝度が高くなりすぎて輝度飽和してしまうおそれが高いため、例えば明部である計測基準領域32に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データの値を用いるとともに、暗部である検査対象領域31に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データと、第2撮像処理により取得した画像データとを合算した値を用いた三次元計測用の画像データが作成されることとなる。
【0067】
(b)上記実施形態では、プリント基板1に印刷形成されたクリームハンダ4の高さ等を計測する場合に具体化したが、ウエハ基板や実装基板等の検査装置にも適用できる。例えば、ウエハ基板の場合には、酸化膜の表面を基準高さとして利用可能となり、ハンダバンプの高さ、形状、体積等を算出可能となる。
【0068】
(c)上記実施形態では、三次元計測方法として位相シフト法を採用しているが、これに代えて、例えばモアレ法など他の三次元計測方法を採用することもできる。
【0069】
(d)上記実施形態では、ガーバデータ等の設計データを基に予め、明部である検査対象領域31に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データの値を用い、暗部である計測基準領域32に対応する箇所に関しては、第1撮像処理により取得した画像データと、第2撮像処理により取得した画像データとを合算した値を用いることが設定されている。
【0070】
これに限らず、上記実施形態のように、位相シフト法による三次元計測を行うにあたり、複数回の撮像ルーチンを行う構成においては、例えば複数回の第1撮像処理により撮像された複数通りの画像データの各画素の輝度値のうち1つでも輝度飽和しているものがある場合には、第1撮像処理により取得した画像データの値に代えて、第2撮像処理により取得した画像データの値を用いる構成としてもよい。
【0071】
また、例えば、第1撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値と、第2撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値とを合算した値が輝度飽和しているか否かを各画素について判定し、輝度飽和している場合には、当該画素に関して、第1撮像処理により取得した画像データの輝度値を用い、輝度飽和していない場合には、当該画素に関して、前記合算した値を用いて、三次元計測用の画像データを作成する構成としてもよい。
【0072】
このようにすれば、暗部のみならず、明部に対応する箇所に関しても、上記合算した値が輝度飽和していない場合には、当該値を採用することができる。CCD等の撮像素子のノイズは、受光量の平方根に依存するため、受光量が増えれば増えるほど、信号とノイズの差が大きくなり、より精度の高い画像データを取得することができる。結果として、より高精度の計測を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…プリント基板、2…ベース基板、3…電極パターン、4…クリームハンダ、5…レジスト膜、8…基板検査装置、9…載置台、10…照明装置、11…CCDカメラ、12…制御装置、24…画像データ記憶装置、25…画像処理装置、26…記憶装置、31…検査対象領域、32…計測基準領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる第1エリア及び当該第1エリアの高さ計測の基準となる第2エリアを有する計測対象物に対し、三次元計測用の光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された前記計測対象物からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき、前記計測対象物の三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記第1エリア又は前記第2エリアの一方である明部に対応する箇所が輝度飽和しない第1露光時間により撮像を行う第1撮像処理と、
前記第1エリア又は前記第2エリアの他方である暗部の計測に適した所定の露光時間のうち、前記第1露光時間で不足した分に相当する第2露光時間により撮像を行う第2撮像処理と、
前記第1撮像処理により取得した画像データの輝度飽和していない箇所と、前記第2撮像処理により取得した画像データの輝度飽和していない箇所とを合成して、前記第1エリア及び前記第2エリアについて輝度飽和していない三次元計測用の画像データを作成する画像作成処理と、
前記三次元計測用の画像データを基に三次元計測を行う三次元計測処理とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【請求項2】
前記画像作成処理にて前記三次元計測用の画像データを作成するに際し、
前記明部に対応する箇所に関しては、前記第1撮像処理により取得した画像データの値を用い、
前記暗部に対応する箇所に関しては、前記第1撮像処理により取得した画像データの値と、前記第2撮像処理により取得した画像データの値とを合算した値を用いることを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項3】
前記計測対象物に係る設計データを記憶する記憶手段を備え、
前記画像作成処理においては、前記設計データを基に、前記第1エリア及び前記第2エリアそれぞれについて、前記第1撮像処理により取得した画像データの値、又は、前記合算した値のいずれの値を用いるかを選択することを特徴とする請求項2に記載の三次元計測装置。
【請求項4】
前記画像作成処理にて前記三次元計測用の画像データを作成するに際し、
前記第1撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値と、前記第2撮像処理により取得した画像データの各画素の輝度値とを合算した値が輝度飽和しているか否かを各画素について判定し、
輝度飽和している場合には、当該画素に関して、前記第1撮像処理により取得した画像データの輝度値を用い、
輝度飽和していない場合には、当該画素に関して、前記合算した値を用いることを特徴とする請求項1に記載の三次元計測装置。
【請求項5】
位相の異なる光を複数通り照射して得られた複数通りの前記三次元計測用の画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項6】
前記計測対象物は、ベース基板に対して電極パターンが形成されたプリント基板であり、
前記第1エリアは、前記電極パターン上にハンダが印刷されたハンダ印刷領域であり、
前記第2エリアは、ハンダ印刷領域以外の背景領域に設けられ、前記電極パターン、前記ベース基板、前記電極パターン上を覆うレジスト膜、あるいは、前記ベース基板上を覆うレジスト膜の領域であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の三次元計測装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の三次元計測装置を備えたことを特徴とする基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220934(P2011−220934A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92403(P2010−92403)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】