説明

不揮発性半導体メモリ

【課題】高耐圧系MISトランジスタの特性を改善でき、且つ、高耐圧系MISトランジスタを含む回路の面積を縮小できる。
【解決手段】本発明の例に関わる不揮発性半導体メモリは、表面に第1のエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21と、単結晶半導体基板21上に配置される複数のメモリセルMC及び高耐圧系トランジスタHVTrとを具備し、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、第1のエピタキシャル層22の不純物濃度よりも低いことを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体メモリに係り、特に、トランジスタを有する不揮発性半導体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不揮発性半導体メモリ、例えば、NAND型フラッシュメモリ又はNOR型フラッシュメモリは、様々な電子機器に搭載されている。
【0003】
それらのフラッシュメモリにおいて、“0”又は“1”データを記憶するメモリセルの特性を向上させるために、メモリセルの構造だけではなく、メモリセルが設けられる半導体基板に対しても、様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
メモリセルへのデータの書き込みは、FN(Fowler−Nordheim)トンネル効果やホットエレクトロン注入により、電子を、トンネル酸化膜を介して、電荷蓄積層(例えば、フローティングゲート電極)に注入する方式が採用されている。
【0005】
それゆえ、メモリセルの書き込みには、例えば、10〜20V程度の高い電圧が、必要となる。
【0006】
高電圧を生成或いは転送するための高耐圧系MIS(Metal−Insulator−Semiconductor)トランジスタは、電圧転送時に半導体基板内の空乏層を基板深く拡大させることで、ゲート下の接合容量を低減して、バックバイアス効果を高め、電圧の転送能力を向上させている。
【0007】
それゆえ、空乏層幅と不純物濃度と反比例の関係にあるため、高耐圧系MISトランジスタは、他のウェル領域よりも不純物濃度が低いウェル領域上、或いは、ウェル領域を設けずに直接半導体基板上に、配置されている。
【0008】
したがって、高耐圧系MISトランジスタが高電圧を転送する際には、それらが配置される不純物濃度の低い領域では、チャネル領域下への空乏層の広がりが、数μm以上となる。
【0009】
空乏層の広がりは、ソース/ドレイン領域及び素子分離領域下に形成される空乏層についても同様であり、それは、隣接する素子間或いはソース/ドレイン領域間のパンチスルーに起因するリークの原因となってしまう。
【0010】
しかし、パンチスルーによるリークを抑制するためには、高耐圧系MISトランジスタが配置される領域の不純物濃度を高くしなければならい。即ち、バックバイアス効果とパンチスルーの関係は、トレードオフとなっている。
【0011】
そのため、パンチスルーを抑制するために、高耐圧系トランジスタのソース/ドレイン間及び隣接する素子間の間隔が、広く確保される。
【0012】
それゆえ、高耐圧系トランジスタが設けられる領域の面積縮小が困難となっている。
【特許文献1】米国特許第6064105号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善でき、且つ、高耐圧系MISトランジスタを含む回路の面積を縮小できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の例に関わる不揮発性半導体メモリは、表面に第1のエピタキシャル層を有する単結晶半導体基板と、前記単結晶半導体基板上に配置される複数のメモリセル及び高耐圧系トランジスタとを具備し、前記単結晶半導体基板の不純物濃度は、前記第1のエピタキシャル層の不純物濃度よりも低いことを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善でき、且つ、高耐圧系MISトランジスタを含む回路の面積を縮小できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0017】
1. 概要
本発明の実施形態は、不揮発性半導体メモリに係り、特に、トランジスタを有する不揮発性半導体メモリに関する。
【0018】
本発明の実施形態においては、複数のメモリセル及び高耐圧系MISトランジスタは、表面に第1のエピタキシャル層を有する単結晶半導体基板上に配置される。
【0019】
エピタキシャル層は、MISトランジスタのパンチスルーに起因するリークを抑制できる不純物濃度で形成される。それゆえ、高耐圧系MISトランジスタのソース/ドレイン間及び隣接する素子間の間隔を広くせずともよく、例えば、昇圧回路など、高耐圧系MISトランジスタが用いられる回路の面積を縮小できる。
【0020】
また、単結晶半導体基板は、エピタキシャル層よりも不純物濃度が低く、例えば、高抵抗率基板が用いられる。
【0021】
半導体基板上に配置される高耐圧系MISトランジスタの動作時又はカットオフ状態時に、半導体基板に基板バイアス電圧(逆バイアス電圧)が印加されると、半導体基板内には空乏層が形成される。
本発明の実施形態では、基板バイアス電圧が大きくなり、空乏層がエピタキシャル層から単結晶半導体基板内に達すると、不純物濃度の低い単結晶半導体基板内では、空乏層の広がりが大きくなる。一方、従来において、素子が形成される半導体基板は、高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーを抑制できる高い不純物濃度であり、本発明の実施形態のエピタキシャル層と同程度の不純物濃度に設定される。
よって、半導体基板内に形成される空乏層の広がり、即ち、空乏層幅を、従来のものより増大できる。それゆえ、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス効果を改善できる。
【0022】
以上のように、本発明の実施形態では、高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーとバックバイアス効果とのトレードオフの関係を解消できる。即ち、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善できると共に、高耐圧系MISトランジスタが用いられる回路の面積を縮小できる。
【0023】
2. 実施の形態
次に、最良と思われるいくつかの実施の形態について説明する。
【0024】
(1) 第1の実施形態
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0025】
(a) 全体構成
図1は、本第1の実施形態に係るフラッシュメモリのメモリチップの主要部を示すブロック図である。
【0026】
フラッシュメモリのメモリチップ11は、データが記憶されるメモリセルアレイ1と、メモリセルアレイを制御する複数の周辺回路から構成される。
【0027】
データ回路2は、複数の記憶回路を含み、書き込み時及び読み出し時に、データを一時的に記憶する。
【0028】
ワード線制御回路3は、ロウアドレスデコーダ及びワード線ドライバを含んでいる。ワード線制御回路は、メモリチップ11の動作モード(書き込み、消去、読み出し)とロウアドレス信号が指定するアドレスとに基づき、メモリセルアレイ1内の複数のワード線の電位を制御する。
【0029】
カラムデコーダ4は、カラムアドレス信号に基づいて、メモリセルアレイ1のカラムを選択する。
【0030】
ロウアドレス信号は、アドレスバッファ5を経由して、ワード線制御回路3に入力される。また、カラムアドレス信号は、アドレスバッファ5を経由して、カラムデコーダ4に入力される。
【0031】
書き込み時、書き込みデータは、データ入出力バッファ7及びI/Oセンスアンプ6を経由して、選択されたカラムに属するデータ回路2内の記憶回路内に入力される。また読み出し時、読み出しデータは、選択されたカラムに属するデータ回路2内の記憶回路に一時的に記憶された後、I/Oセンスアンプ6及びデータ入出力バッファ7を経由して、メモリチップ11の外部へ出力される
ウェル/ソース線電位制御回路8は、動作モードに基づいて、メモリセルアレイ1を構成する複数のブロックに対応する複数のウェル領域の電位及びソース線の電位を、制御する。
【0032】
昇圧回路9は、書き込み時に、書き込み電圧Vpgm(例えば、20V)や中間電位Vpass(例えば、10V)を生成する。それらの電位は、メモリセルアレイ1を構成する複数のブロックのうち、選択されたブロック内の複数本のワード線に、ワード線制御回路3を経由して、供給される。
【0033】
また、昇圧回路9は、例えば、消去時に、消去電位Verase(例えば、20V)を生成し、この電位Veraseを、1つ又は2つ以上の選択されたブロックに対応するウェル領域に、ウェル/ソース線電位制御回路8を経由して、供給する。
【0034】
一括検知回路10は、書き込み時には、メモリセルに正確に所定のデータデータが書き込まれたか否かを検証し、消去時には、メモリセルのデータがきちんと消去されたか否かを検証する。
【0035】
コマンドインターフェイス回路12は、メモリチップ11とは別のチップから送信される制御信号に基づいて、データ入出力バッファ7に入力されるデータが、ホストマイコンから提供されるコマンドデータであるか否かを判断する。データ入出力バッファ7に入力されるデータがコマンドデータである場合、コマンドインターフェイス回路12は、コマンドデータをステートマシン13に転送する。
【0036】
ステートマシン13は、コマンドデータに基づいて、フラッシュメモリの動作モードを決定し、且つ、その動作モードに応じて、フラッシュメモリの全体の動作を制御する。
【0037】
上記のメモリチップ11を構成する複数の回路において、それらの回路の役割に応じて、特性の異なる複数のトランジスタが回路内に配置される。
【0038】
図2は、図1のメモリチップ11に配置される複数のトランジスタのチャネル長方向の断面構造を示す断面図である。
【0039】
メモリチップ11は、メモリセルアレイ1内に設けられる複数のメモリセルMC及び選択トランジスタSGD,SGS、周辺回路内に設けられる複数の周辺トランジスタLVTr,HVTrを主な構成素子としている。そして、それらのトランジスタは、同一の単結晶半導体基板21上に作製される。
【0040】
以下には、メモリセルMC及び選択ゲートトランジスタSGD,SGSが配置される領域をメモリセル領域、そして、周辺トランジスタが配置される領域を周辺領域と呼ぶ。
【0041】
単結晶半導体基板21は、その表面に、単結晶半導体基板21と結晶軸の揃っているエピタキシャル層22を有する。単結晶半導体基板21は、例えば、P型シリコン単結晶半導体基板であり、その表面に形成されるエピタキシャル層22は、例えば、P型シリコンエピタキシャル層である。
【0042】
エピタキシャル層22は、例えば、後述する高耐圧系MISトランジスタHVTrのパンチスルーに起因するリークを抑制できる不純物濃度で形成される。また、単結晶半導体基板21は、その不純物濃度がエピタキシャル層22の不純物濃度よりも低く、例えば、高抵抗率基板である。単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、エピタキシャル層22の不純物濃度の1/4以上から1/2以下の範囲内に設定されるのが望ましい。より好ましくは、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上、1.5×1015cm−3以下に設定されることが望ましい。
【0043】
メモリセル領域の単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内には、Nウェル領域(第1ウェル領域)N−Wellと、Nウェル領域N−Well内に形成されるPウェル領域(第2ウェル領域)P−Wellが形成され、所謂、ツインウェル構造となっている。
【0044】
メモリセルMCと選択ゲートトランジスタSGD,SGSは、Pウェル領域上に形成される。
【0045】
本実施形態においては、メモリセルMCは、積層ゲート構造を有するMISトランジスタであり、複数のメモリセルと、その一端及び他端に接続される選択ゲートトランジスタとでNANDセルユニットが構成されている。
【0046】
メモリセルMCは、エピタキシャル層22表面に形成されるゲート絶縁膜(トンネル酸化膜)30上に、フローティングゲート電極31を有する。そのフローティングゲート電極31上には、ゲート間絶縁膜としてのIPD膜(InterPoly Dielectric)32を介して、コントロールゲート電極33が積層される。コントロールゲート電極33は、ワード線として機能する。
【0047】
エピタキシャル層22内には、メモリセルMCのソース/ドレイン領域となる拡散層34が形成される。そして、チャネル長方向に隣接する複数のメモリセルMCは、拡散層34を共有して、直列接続される。
【0048】
複数のメモリセルMCの一端(ドレイン側)及び他端(ソース側)には、選択ゲートトランジスタSGD,SGSが、それぞれ設けられる。選択ゲートトランジスタSGD,SGSは、メモリセルMCと同時に形成され、選択ゲートトランジスタSGD,SGSのゲート構造も積層ゲート構造を有する。
選択ゲートトランジスタSGD,SGSのゲート電極は、ゲート絶縁膜40上の下層ゲート電極41と上層ゲート電極43が、IPD膜42に形成された開口部を介して接続する構造となっている。
【0049】
選択ゲートトランジスタSGD、SGSは、拡散層34,44D,44Sを、それぞれソース/ドレイン領域とし、隣接するメモリセルと拡散層34を共有して直列接続されている。そして、ドレイン側の選択ゲートトランジスタSGDのドレイン拡散層44Dは、絶縁層23,24内に形成されるコンタクト部BC1,BC2及び中間配線層Mを経由して、ビット線BLに接続される。また、ソース側の選択ゲートトランジスタSGSのソース拡散層44Sは、絶縁層23内に形成されるコンタクト部SCを経由して、ソース線SLに接続される。
【0050】
また、周辺回路部に用いられる複数の周辺トランジスタは、低い電圧で動作する低耐圧系MISトランジスタLVTr、或いは、高い電圧で動作する高耐圧系MISトランジスタHVTrである。低耐圧系MISトランジスタLVTr及び高耐圧系MISトランジスタHVTrは、例えば、メモリセルMCを形成するのと同時に形成される。尚、図2においては、低耐圧系MISトランジスタLVTr及び高耐圧系MISトランジスタHVTrを、それぞれ、1つずつ図示する。
【0051】
以下、周辺領域のうち、低耐圧系MISトランジスタLVTrが配置される領域を低耐圧系領域、高耐圧系MISトランジスタHVTrが配置される領域を高耐圧系領域と呼ぶ。
【0052】
低耐圧系領域において、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内には、例えば、Nウェル領域(第3ウェル領域)が形成される。そして、低耐圧系MISトランジスタLVTrは、Nウェル領域上に形成され、PチャネルMISトランジスタとなる。但し、低耐圧系MISトランジスタは、PチャネルMISトランジスタに限定されず、NチャネルMISトランジスタでもよい。その場合に、低耐圧系領域に形成されるウェル領域は、Pウェル領域となる。
【0053】
低耐圧系MISトランジスタLVTrは、ゲート絶縁膜50上の下層ゲート電極51と上層ゲート電極53が、IPD膜52に形成された開口部を介して接続する構造となっている。
【0054】
また、エピタキシャル層22内には、低耐圧系MISトランジスタLVTrのソース/ドレイン領域となるp型の拡散層54が形成される。但し、低耐圧系MISトランジスタLVTrが、NチャネルMISトランジスタの場合には、拡散層54はn型の拡散層となる。
【0055】
そして、拡散層54には、絶縁層23内に埋め込まれたコンタクト部C1を介して、配線層L1が接続される。また、上層ゲート電極53には、コンタクト部(図示せず)を介して、ゲート配線層(図示せず)が接続される。
【0056】
高耐圧系領域においては、エピタキシャル層22上に直接、高耐圧系MISトランジスタHVTrが形成される。この高耐圧系MISトランジスタHVTrは、ゲート絶縁膜60上の下層ゲート電極61と上層ゲート電極63が、IPD膜62に形成された開口部を介して接続する構造となっている。
【0057】
そして、拡散層64には、絶縁層23に埋め込まれたコンタクト部C2を介して、配線層L2が接続される。また、上層ゲート電極63には、コンタクト部(図示せず)を介して、ゲート配線層(図示せず)が接続される。
尚、高耐圧系領域において、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内に、低濃度のウェル領域を形成してもよい。
【0058】
上述のように、本発明の実施形態では、メモリセルMC及び周辺トランジスタLVTr,HVTrは、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21上に配置される。そして、単結晶半導体基板21の不純物濃度が、エピタキシャル層22の不純物濃度よりも低いことを特徴とする。
【0059】
従来のように、不純物濃度が一定の半導体基板では、高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーリークとバックバイアス効果はトレードオフの関係にあるため、バックバイアス効果を改善するために半導体基板の不純物濃度を低くすると、それは素子間及びソース/ドレイン間のパンチスルーの原因となる。そして、パンチスルーに起因するリークが、高耐圧系MISトランジスタの特性に影響を及ぼしてしまう。
【0060】
一方、本発明の実施形態のように、単結晶半導体基板21上にエピタキシャル層22を形成することにより、エピタキシャル層と単結晶半導体基板21は、それぞれ異なる不純物濃度を設定することができる。
【0061】
それゆえ、エピタキシャル層22は、素子間及びソース−ドレイン間のパンチスルーリークを抑制できる不純物濃度に設定でき、高耐圧系MISトランジスタHVTrのパンチスルーに起因するリークを抑制できる。
【0062】
したがって、パンチスルーを抑制するために、隣接する素子間の距離及びチャネル長を広く確保する必要はない。
【0063】
また、高耐圧系MISトランジスタの動作時には、逆バイアス電圧となる基板バイアス電圧が単結晶半導体基板21に印加される。
【0064】
エピタキシャル層22の膜厚は、高耐圧系MISトランジスタHVTrの動作時に、単結晶半導体基板21内に形成される空乏層幅よりも小さい、膜厚に設定されており、例えば、1μm程度である。
【0065】
それゆえ、単結晶半導体基板21内に形成される空乏層が、基板バイアス電圧の印加により、不純物濃度の高いエピタキシャル層22から、その不純物濃度よりも不純物濃度が低い単結晶半導体基板21に達すると、空乏層が不純物濃度の低い単結晶半導体基板21側でより大きく広がる。
【0066】
したがって、チャネル領域下に形成される空乏層幅を増大させることができ、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス効果を改善できる。
【0067】
尚、メモリセルMC、選択ゲートトランジスタSGD,SGS及び低耐圧系MISトランジスタLVTrも、高耐圧系MISトランジスタHVTrと同一の基板上に形成される。しかし、上述のように、メモリセル領域及び低耐圧系領域には、エピタキシャル層22よりも不純物濃度の高いウェル領域が、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内に形成される。そのため、単結晶半導体基板21とエピタキシャル層22との不純物濃度の違いによるメモリセルMC及び低耐圧系MISトランジスタLVTrの特性劣化は生じない。
メモリセル領域及び低耐圧系領域においては、単結晶半導体基板21の不純物濃度が低いことにより、ウェル−基板間の寄生容量を低減することができる。それゆえ、ウェル上に形成されるデバイスの動作速度を高速化できる。
【0068】
尚、本実施の形態において、NAND型フラッシュメモリを例として説明したが、周辺回路に高耐圧系MISトランジスタを含む不揮発性半導体メモリであれば、メモリセル領域の構造は、他のものでもよい。例えば、NOR型フラッシュメモリや、2−Tr型フラッシュメモリでもよい。
【0069】
以上のように、本発明の実施形態を用いることで、従来のようなパンチスルーとバックバイアス効果とのトレードオフの関係を解消でき、パンチスルーに起因するリークの抑制と共に、バックバイアス効果も改善できる。
つまり、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21を用い、単結晶半導体基板21の不純物濃度を、エピタキシャル層22の不純物濃度より低くすることにより、エピタキシャル層22上に配置される高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーリークを抑制でき、且つ、バックバイアス特性を改善できる。
【0070】
したがって、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善でき、さらには、高耐圧系MISトランジスタを含む回路の面積を縮小できる。
【0071】
以下、実験結果を用いて、本発明の実施形態の作用について詳細に説明する。
【0072】
(b) 作用
以下、図3乃至図5を用いて、本発明の実施形態の作用について説明する。尚、上述と同一の部材に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
図3は、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス効果のシミュレーション結果を示す図である。
【0074】
図3(a)は、本発明の実施形態の高耐圧系MISトランジスタのシミュレーション結果を示し、図3(b)は、従来例の高耐圧系MISトランジスタのシミュレーション結果を示す。
【0075】
シミュレーションの設定条件は以下のとおり、設定される。
【0076】
図3(a)において、単結晶半導体基板21は、表面にエピタキシャル層22を有し、高耐圧系MISトランジスタは、エピタキシャル層22上に配置される。エピタキシャル層22の膜厚は1μmに設定される。
単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22は、p型の不純物が導入される。エピタキシャル層22の不純物濃度は、パンチスルーを抑制できる不純物濃度に設定される。また、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、エピタキシャル層22の不純物濃度よりも低い。そして、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上、1.5×1015cm−3以下の範囲内に設定される。
【0077】
また、図3(b)においては、高耐圧系MISトランジスタは、単結晶半導体基板25上に配置される。単結晶半導体基板25の不純物濃度は、エピタキシャル層22の不純物濃度と同じ濃度に設定され、高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーを抑制できる不純物濃度に設定される。
【0078】
高耐圧系MISトランジスタのゲート電極65のサイズは、ゲート長が3.0μm、ゲート幅が10μmに設定される。また、素子分離絶縁層STIのチャネル長方向のサイズは無限大に設定される。
【0079】
そして、単結晶半導体基板21,25に印加される基板バイアス電圧は、−25Vに設定される。
【0080】
図3(a)及び図3(b)において、破線に囲まれた領域70,72内は、空乏層を示し、素子分離絶縁層STI下部の領域71,73内は、空乏層70,72内から掃き出された多数キャリアが蓄積する蓄積領域である。
【0081】
図3(a)及び図3(b)に示すように、エピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21内の空乏層72の広がりは、単結晶半導体基板25内の空乏層70の広がりよりも大きく、そのチャネル領域下の空乏層の広がりの差D、即ち、空乏層幅の差は、2μm程度となる。
【0082】
よって、図3に示すシミュレーション結果において、高耐圧系MISトランジスタが、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21上に配置し、単結晶基板21の不純物濃度を、エピタキシャル層22の不純物濃度よりも低くすることで、チャネル領域下に形成される空乏層幅を大きくできる。
【0083】
それゆえ、半導体基板内の接合容量を低減でき、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス特性を改善できる。
【0084】
また、図3(b)、即ち、従来の単結晶半導体基板25において、空乏層70のチャネル領域下への広がりが、図3(a)に示す空乏層72のチャネル領域下への広がりと同程度となるように、基板バイアス電圧を大きくした場合、空乏層70の広がりは、チャネル領域下だけでなく、素子分離絶縁層下部(横方向)への広がりも大きくなる。その横方向への広がりは、隣接する素子間のパンチスルーの原因となってしまう。
【0085】
図4を用いて、上述のようなシミュレーション結果となる作用について説明する。図4に示す矢印は、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内に形成される空乏層が広がる方向を示す。
【0086】
高耐圧系MISトランジスタHVTrが、高電圧転送状態又カットオフ状態の際、逆バイアスとなる基板バイアス電圧Vbsが、単結晶半導体基板21に印加される。それにより、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内には空乏層が形成される。
【0087】
エピタキシャル層21内に形成される空乏層は、チャネル領域下、ソース/ドレイン領域64及び素子分離領域STI下部へと広がる。ソース/ドレイン領域64及び素子分離領域STI下部への空乏層の広がりは、ゲート電極61,63直下への空乏層の広がりよりも小さい。
【0088】
エピタキシャル層22は、パンチスルーを抑制できる不純物濃度で形成されている。また、逆バイアス電圧が単結晶半導体基板21に印加されることで、単結晶半導体基板21及びエピタキシャル層22内の多数キャリアは、半導体基板表面側に引き寄せられ、空乏層外の素子分離絶縁層STI下部の領域へ蓄積する。
【0089】
それゆえ、本発明の実施形態では、素子分離絶縁層STI下部、即ち、横方向への空乏層の広がりを抑制でき、隣接する素子間及び、ソース/ドレイン間のパンチスルーを抑制することができる。
【0090】
基板バイアス電圧Vbsが増加するにつれて、空乏層は徐々に大きくなり、エピタキシャル層22内から単結晶半導体基板21内へと広がる。そして、空乏層が単結晶半導体基板21に達すると、単結晶半導体基板21内での空乏層の広がりは、エピタキシャル層22内での広がりよりも大きくなる。
これは、不純物濃度と空乏層幅は反比例の関係にあり、不純物濃度が低くなると、空乏層幅は大きくなるためである。
【0091】
それゆえ、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、エピタキシャル層22の不純物濃度よりも低いため、単結晶半導体基板21内の空乏層の広がりが、エピタキシャル層22内の空乏層の広がりよりも大きくなる。
また、単結晶半導体基板21内においても、空乏層は、素子分離絶縁層STI下部へと広がるが、単結晶半導体基板21側からエピタキシャル層22側へと広がることはない。
【0092】
したがって、図3に示すシミュレーション結果のように、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21を用いることで、基板バイアス電圧印加時に半導体基板内に形成される空乏層幅を増大できる。
【0093】
図5は、上述のシミュレーション結果に基づいて行った実験結果を示すグラフである。
【0094】
図5は、異なる半導体基板上にそれぞれ形成されたMISトランジスタの基板バイアス電圧Vbsに対するトランジスタのしきい値Vthの関係である|Vbs|1/2−Vth特性を示すグラフである。
【0095】
特性曲線Aは、単結晶半導体基板上に直接設けられたMISトランジスタの|Vbs|1/2−Vth特性を示す曲線である。そして、特性曲線B〜Dは、エピタキシャル層と単結晶半導体基板からなる半導体基板上に設けられたトランジスタの|Vbs|1/2−Vth特性を示す曲線である。
【0096】
以下、特性曲線Aに示す特性を有する高耐圧系MISトランジスタを、MISトランジスタAとし、それと同様に、特性曲線B〜Dに示す特性を有するMISトランジスタを、それぞれMISトランジスタB〜Dとして、説明する。
【0097】
MISトランジスタAは、単結晶半導体基板上に設けられ、MISトランジスタB〜Dは、単結晶半導体基板上に形成されたエピタキシャル層上に設けられる。
【0098】
MISトランジスタAが設けられる単結晶半導体基板の不純物濃度は、隣接する素子間及びソース・ドレイン間のパンチスルーに起因するリークが生じない不純物濃度に設定される。また、MISトランジスタB〜Dが設けられるエピタキシャル層の不純物濃度も、パンチスルーが生じない不純物濃度で、MISトランジスタAが設けられる単結晶半導体基板の不純物濃度と同程度に設定される。
【0099】
また、MISトランジスタB〜Dに用いられる単結晶半導体基板の不純物濃度は、エピタキシャル層の不純物濃度よりも低い。そして、それらの単結晶半導体基板の不純物濃度は、MISトランジスタBの不純物濃度が最も高く、MISトランジスタDの不純物濃度が最も低く、MISトランジスタCの不純物濃度がその間となるように設定される。
【0100】
ここでは、MISトランジスタAが設けられる単結晶半導体基板の不純物濃度は、4×1014〜3×1015cm−3に設定される。MISトランジスタBが設けられる単結晶半導体基板の不純物濃度は、MISトランジスタAの単結晶半導体基板の不純物濃度の1/2倍(2×1014〜1.5×1015cm−3)に設定される。また、MISトランジスタCでは、MISトランジスタAの不純物濃度の1/3倍(1.3×1014〜1×1015cm−3)、MISトランジスタDでは、MISトランジスタAの不純物濃度の1/4倍(1×1014〜7.5×1014cm−3)となるように、それぞれの単結晶半導体基板の不純物濃度が設定される。
【0101】
MISトランジスタB〜Dのエピタキシャル層の膜厚は、例えば、1μmである。
【0102】
尚、MISトランジスタA〜Dのそれぞれのゲート寸法及びソース/ドレインのサイズは、同じサイズになるように設定される。
【0103】
基板バイアス電圧Vbsは、逆バイアス電圧であり、0〜−25Vの範囲で変化されて、単結晶半導体基板に印加される。
【0104】
印加される基板バイアス電圧|Vbs|が小さい場合、MISトランジスタA〜Dの閾値電圧には大きな差は生じない。その理由は次のとおりである。基板バイアス電圧|Vbs|が小さい場合と、MISトランジスタB〜Dの空乏層はエピタキシャル層内でのみ広がる。そして、エピタキシャル層の不純物濃度は、MISトランジスタAが形成される単結晶半導体基板の不純物濃度と同程度であるため、不純物濃度で決まる空乏層幅は、MISトランジスタAとMISトランジスタB〜Dとで、ほぼ等しいためである。
【0105】
図5の特性曲線A〜Dに示すように、基板バイアス電圧|Vbs|が大きくなると、MISトランジスタA〜Dのしきい値電圧Vthは増加する傾向にある。この際、基板バイアス電圧Vbsに対するしきい値電圧Vthの変動量は、MISトランジスタAの変動量よりも、MISトランジスタB〜Dの変動量のほうが小さくなる。
【0106】
これは、基板バイアス電圧|Vbs|が大きくなるにつれて、半導体基板内に形成される空乏層が大きくなる。そして、MISトランジスタB〜Dにおいては、上述のように、その空乏層がエピタキシャル層を超えて、エピタキシャル層よりも不純物濃度の低い単結晶半導体基板内に達すると、空乏層の広がりが大きくなることに起因する。
それゆえ、MISトランジスタB〜Dの空乏層幅が、MISトランジスタAの空乏層幅よりも大きくなり、MISトランジスタB〜Dの接合容量は低減される。
【0107】
また、図5の特性曲線B〜Dが示すように、MISトランジスタB〜Dが形成される単結晶半導体基板の不純物濃度が低いものほど、基板バイアス電圧印加時のMISトランジスタB〜Dの閾値電圧Vthは低い。これは、不純物濃度が低いものほど、空乏層幅が大きくなるためである。
【0108】
以上のように、半導体基板を、エピタキシャル層と、エピタキシャル層よりも不純物濃度が低い単結晶半導体基板から構成することで、半導体基板内の空乏層幅を増大でき、拡散層と半導体基板による接合容量を低減できる。
【0109】
したがって、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス特性を改善できる。
【0110】
さらには、閾値電圧の変動量が小さくなることにともない、基板バイアス電圧印加時のMISトランジスタの閾値電圧が低減される。それゆえ、基板バイアス電圧印加時の高耐圧系MISトランジスタの閾値電圧を低減できることで、チップ内で扱われる電圧の上限値を低減できる。
【0111】
(c) 製造方法
以下、図2、図6及び図7を用いて、本実施形態の製造方法について説明する。
【0112】
はじめに、図6に示すように、例えば、高抵抗率のP型単結晶半導体基板21上に、P型不純物を含むエピタキシャル層22が、形成される。それにより、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21が得られる。
【0113】
このとき、エピタキシャル層22にドープされる不純物の濃度は、単結晶半導体基板21の不純物濃度よりも高くなるように設定される。そして、エピタキシャル層22の不純物濃度は、後の工程で形成される高耐圧系MISトランジスタのパンチスルーを抑制できる不純物濃度に設定される。
また、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、エピタキシャル層22の不純物濃度の1/4以上1/2以下の範囲内に設定されるのが望ましい。より好ましくは、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上、1.5×1015cm−3以下に設定されることが望ましい。
【0114】
エピタキシャル層22の形成の後、メモリセル領域及び低耐圧系領域のエピタキシャル層22内及び単結晶半導体基板21内には、所望のウェル領域が形成される。その後、半導体基板21内には、STI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離絶縁層STIが形成される。
【0115】
次に、図7に示すように、素子分離絶縁層STIに取り囲まれた素子領域上に、ゲート絶縁膜材80が形成される。続いて、フローティング電極材81、ゲート間絶縁膜としてのIPD膜材82、コントロールゲート電極材83が、ゲート絶縁膜材80上に、順次形成される。尚、選択ゲートトランジスタ及び周辺トランジスタの形成予定領域では、フローティングゲート電極材81とコントロールゲート電極材83の間のIPD膜材82の一部が除去される。
【0116】
ゲート絶縁膜材80は、例えば、酸化シリコン又はこれを含む積層構造とする。フローティングゲート電極材81は、例えば、導電性ポリシリコンのような、導電材料が用いられる。IPD膜材82は、例えば、ONO(Oxide/Nitride/Oxide)や高誘電体材料である。また、コントロールゲート電極材83は、例えば、導電性ポリシリコン、または、これとシリサイドとの積層構造のような、導電材料が用いられる。
【0117】
その後、所望のゲートサイズとなるように、フローティング電極材81、IPD膜材82、コントロールゲート電極材83、ゲート絶縁膜材80に対して、ゲート加工がなされる。
【0118】
そして、図2に示すように、ゲート加工されたゲート電極33,43,53,63をマスクとして、拡散層34,44D,44S,54,64が、エピタキシャル層22内に形成される。
よって、メモリセル領域内のPウェル領域上には、メモリセルMC及び選択ゲートトランジスタSGD,SGSが形成される。低耐圧系領域内のウェル領域上には、低耐圧系MISトランジスタLVTrが形成される。また、高耐圧系領域内のエピタキシャル層22上には、高耐圧系MISトランジスタHVTrが形成される。
【0119】
さらに、単結晶半導体基板上の全面に、絶縁層23が形成され、絶縁層23内にコンタクト部BC1,C1,C2が形成される。そして、配線層M,L1,L2が、コンタクト部BC1,C1,C2に接触して、形成される。絶縁層24が、絶縁層23上に形成された後、ビット線BLが、絶縁層24内に形成されたコンタクト部BC2と接触して、形成される。
【0120】
以上の工程により、本実施形態によるNAND型フラッシュメモリが完成する。
【0121】
以上のように、高耐圧系MISトランジスタHVTrは、パンチスルーを抑制できる不純物濃度に設定されたエピタキシャル層上に作製される。それゆえ、隣接する素子間及びソース/ドレイン間のパンチスルーに起因するリークを抑制できる高電圧MISトランジスタを作製できる。
【0122】
また、高耐圧系MISトランジスタHVTrは、表面にエピタキシャル層22を有する単結晶半導体基板21上に作製される。単結晶半導体基板21の不純物濃度は、エピタキシャル層22の不純物濃度よりも低い。それゆえ、バックバイアス効果を改善できる高耐圧系MISトランジスタを作製できる。
【0123】
したがって、特性が改善され、周辺回路の面積縮小に寄与する高耐圧系MISトランジスタを作製できる。
【0124】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、高耐圧系MISトランジスタが形成される領域の半導体基板は、単結晶半導体基板と、その単結晶半導体基板表面に形成されるエピタキシャル層から構成される。それゆえ、エピタキシャル層と単結晶半導体基板とを、異なる不純物濃度に設定できる。
【0125】
高耐圧系MISトランジスタは、エピタキシャル層上に形成され、エピタキシャル層は、隣接する素子間及びソース/ドレイン間のパンチスルーを抑制できる不純物濃度に設定でき、パンチスルーに起因するリークを抑制できる。
【0126】
また、本発明の第1の実施形態では、単結晶半導体基板の不純物濃度は、エピタキシャル層の不純物濃度よりも低いことを特徴とする。それゆえ、基板バイアス電圧を印加した際に、単結晶半導体基板内に形成される空乏層の広がりを大きくでき、空乏層幅を増大できる。よって、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス特性を改善できる。
【0127】
それゆえ、本発明の第1の実施形態では、パンチスルーリークを抑制でき、それと共に、バックバイアス特性も改善できる。
【0128】
したがって、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善できるとともに、高耐圧系MISトランジスタが用いられる回路の占有面積を縮小できる。また、それと同時に、メモリセル及び低耐圧系MISトランジスタの特性改善や、チップ内で扱われる電圧の上限の低下などの効果も得られる。
【0129】
(2) 第2の実施形態
第1の実施形態においては、単結晶半導体基板21上のエピタキシャル層が1層の場合について述べた。しかし、本発明の実施形態は、それに限定されず、複数のエピタキシャル層を単結晶半導体基板21上に、積層させてもよい。以下、高耐圧系MISトランジスタのみを図8に図示し、本実施形態について説明する。尚、第1の実施形態と同一の部材に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0130】
図8に示すように、単結晶半導体基板21は、第1のエピタキシャル層22Aと、第1のエピタキシャル22A上に形成される第2のエピタキシャル層22Bを、有する。そして、エピタキシャル層22B上に高耐圧系MISトランジスタが形成される。
【0131】
第1のエピタキシャル層22Aは、例えば、隣接する素子間のパンチスルーが抑制できる不純物濃度で、単結晶半導体基板21上に形成される。また、第1のエピタキシャル層22Aの膜厚は、例えば、1μmである。
【0132】
また、第2のエピタキシャル層22Bの不純物濃度は、第1のエピタキシャル層22Aの不純物濃度よりも高くなるように、形成される。第2のエピタキシャル層22Bの不純物濃度は、例えば、MISトランジスタの閾値調整やソース/ドレイン間のパンチスルーを抑制できる不純物濃度で形成される。第2のエピタキシャル層22Bの膜厚は、例えば、第1のエピタキシャル層22Aの膜厚よりも薄い。
【0133】
単結晶半導体基板21は、第1のエピタキシャル層22Aの不純物濃度よりも低くなるように設定されており、例えば、高抵抗率基板である。単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、エピタキシャル層22の不純物濃度の1/4以上から1/2以下の範囲内に設定される。より好ましくは、単結晶半導体基板21の不純物濃度は、例えば、1×1014cm−3以上、1.5×1015cm−3以下に設定されることが望ましい。
【0134】
上述のように、エピタキシャル層を2層構造とした場合においても、基板バイアス電圧を印加した場合に、単結晶半導体基板21の不純物濃度が低いため、単結晶半導体基板21内に形成される空乏層の広がりは大きくなる。それゆえ、高耐圧系MISトランジスタのバックバイアス効果を改善できる。
【0135】
また、第1のエピタキシャル層22Aは、素子間及びソース/ドレイン間のパンチスルーを抑制できる不純物濃度で形成されているので、パンチスルーリークを抑制できる。
【0136】
さらには、第2のエピタキシャル層22Bは、MISトランジスタの閾値電圧を調整のため不純物濃度が形成されるため、高耐圧系MISトランジスタを最適化できる。また、製造工程において、閾値調整のためのチャネルインプラ工程を省略することができる。
【0137】
したがって、高耐圧系MISトランジスタの特性を改善でき、高耐圧系MISトランジスタを含む回路の面積を縮小でき、さらには、回路動作を最適化できる。
【0138】
尚、図8においては、メモリセル及び低耐圧系MISトランジスタを図示せず省略したが、それらは、高耐圧系MISトランジスタと同様に、第2のエピタキシャル層22B上に形成される。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、エピタキシャル層及び単結晶半導体基板内に形成されたウェル領域上に形成されるため、半導体基板内の不純物濃度の違いが、メモリセル及び低耐圧系MISトランジスタの特性を劣化させることはない。
【0139】
(3) 適用例
図9を用いて、本発明の実施形態の適用例を説明する。
【0140】
本発明の実施形態で作製された高耐圧系MISトランジスタは、例えば、NAND型フラッシュメモリのワード線制御回路3や昇圧回路9に適用される。
【0141】
NAND型フラッシュメモリの書き込み動作において、例えば、25V程度の書き込み電圧Vpgmが、メモリセルMCが接続されるワード線WL1〜WLnに印加される。
【0142】
ワード線制御回路3内には、複数の高耐圧系MISトランジスタHVTr2が、書き込み電圧Vpgmをワード線WL1〜WLnに供給するために設けられる。
【0143】
書き込み選択されたメモリセルがワード線WL1に接続される場合には、ワード線WL1に接続される高耐圧系MISトランジスタHVTr1のソースに、書き込み電圧Vpgmが印加される。また、選択ワード線以外のワード線WL2〜WLnに接続される高耐圧系MISトランジスタHVTr2のソースには、例えば、10V程度の中間電位Vpassが印加される。
【0144】
書き込み電圧Vpgmを転送する際、高耐圧系MISトランジスタHVTr2のゲートには、書き込み電圧Vpgmより高いゲート電圧Vpgm+αが印加される。
【0145】
ゲート電圧Vpgm+αは、昇圧回路9内に設けられた高耐圧系MISトランジスタHVTr1を経由して、ワード線制御回路3へ供給される。高耐圧系MISトランジスタHVTr1のゲートには、ゲート電圧Vbootが印加され、また、ソースには、ソース電圧Vpが印加される。
【0146】
本発明の実施形態により、高耐圧系MISトランジスタHVTr1,HVTr2は、素子間及びソース/ドレイン間の間隔を広く確保せずとも、パンチスルーを抑制できる。それゆえ、ワード線制御回路3及び昇圧回路9の面積を縮小できる。
【0147】
また、本発明の実施形態により、高耐圧系MISトランジスタHVTr1、HVTr2は、バックバイアス効果が改善されている。それゆえ、基板バイアス電圧印加時の閾値電圧の変動量が小さく、動作時の高耐圧系MISトランジスタの閾値電圧を低減できる。
【0148】
3. その他
本発明の例は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の実施形態の全体構成の一例を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態の構造を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態のシミュレーション結果を示す図。
【図4】本発明の実施形態の作用を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態の実験結果を示す図。
【図6】第1の実施形態の製造方法の一工程を示す工程図。
【図7】第1の実施形態の製造方法の一工程を示す工程図。
【図8】第2の実施形態の構造を示す断面図。
【図9】本発明の実施形態の適用例を示す回路図。
【符号の説明】
【0150】
11:メモリチップ、1:メモリセルアレイ、2:データ回路、3:ワード線制御回路、4:カラムデコーダ、5:アドレスバッファ、6:I/Oセンスアンプ、7:データ入出力バッファ、8:ウェル/ソース線電位制御回路、9:昇圧回路、10:一括検知回路、12:コマンドインターフェイス回路、13:ステートマシン、21:単結晶半導体基板、22,22A,22B:エピタキシャル層、30;ゲート絶縁膜(トンネル酸化膜)、31:フローティングゲート電極、32,42,52,62:IPD膜、33:コントロールゲート電極、40,50,60:ゲート絶縁膜、41,51,61:下層ゲート電極、43,53,63:上層ゲート電極、65:ゲート電極、34,44D,44S,54,64:拡散層、70,72:空乏層、71,73:蓄積領域、80:ゲート絶縁膜材、81:フローティングゲート電極材、82:IPD膜材、83:コントロールゲート電極材、BC1,BC2,SC,C1,C2:コンタクト部、BL:ビット線、SL:ソース線、M:中間配線層、L1,L2:配線層、MC:メモリセル、SGD,SGS:選択ゲートトランジスタ、LVTr:低耐圧系MISトランジスタ、HVTr,HVTr1,HVTr2:高耐圧系MISトランジスタ、SGDL,SGSL:選択ゲート線、WL1〜WLn:ワード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1のエピタキシャル層を有する単結晶半導体基板と、前記単結晶半導体基板上に配置される複数のメモリセル及び高耐圧系トランジスタとを具備し、前記単結晶半導体基板の不純物濃度は、前記第1のエピタキシャル層の不純物濃度よりも低いことを特徴とする不揮発性半導体メモリ。
【請求項2】
前記エピタキシャル層の膜厚は、前記高耐圧系トランジスタの動作時に形成される空乏層幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項3】
前記半導体基板は、前記第1のエピタキシャル層上に、さらに、第2のエピタキシャル層を有し、前記第2のエピタキシャル層の不純物濃度は、前記第1のエピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項4】
前記単結晶半導体基板の不純物濃度は、1×1014cm−3以上1.5×1015cm−3以下であることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項5】
前記単結晶半導体基板の表面にさらに低耐圧系トランジスタを具備し、前記複数のメモリセルは、前記単結晶半導体基板と逆導電型の第1のウェル領域表面に形成された前記単結晶半導体基板と同導電型の第2のウェル領域内に形成され、前記低耐圧系トランジスタは、前記単結晶半導体基板と逆導電型の第3のウェル領域内に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の不揮発性半導体メモリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−198866(P2008−198866A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33949(P2007−33949)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】